説明

エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法

【課題】エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年8月20日に出願した米国仮特許出願第60/603410号の権利を主張するものである。
【0002】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法に関する。この方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることを含む。
【背景技術】
【0003】
単一の「エキソ−オレフィン」、「二置換」オレフィン又は「メチルビニリデン」末端基を含む一官能性開始剤を用いて製造された線状ポリオレフィンは、特定の末端官能基を含む重合体を製造するための有用な前駆体である。多官能性開始剤を用いて製造された重合体は、多数のエキソ−オレフィン末端基を有することになる。特定の末端基を含む重合体は潤滑油添加剤として有用である。ヘテロ原子を含む官能化重合体の一例としてポリイソブテニルコハク酸無水物がある。末端官能基は、更に反応を進めることができる重合体を製造するためにも望ましいものである。
【0004】
従来のイオン重合は、アニオン重合またはカチオン重合であると言える。アニオン重合は、塩基の存在下でカルボアニオンにより進行し、電子吸引基を持つ単量体に好都合である。カチオン重合は、酸の存在下でカルベニウムイオンとも呼ばれるカルボカチオンにより進行し、電子供与基を持つ単量体に好都合である。
【0005】
従来の重合系と同様に、リビング重合系もアニオン重合またはカチオン重合のいずれかである。従来の重合とリビング重合の相違は、理想的なリビング重合が連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しで進行することにある。リビング重合系は、単量体と開始剤の供給比を制御することで重合度を制御でき、また二種以上の異なる単量体の逐次添加によってブロック共重合体を生成させる能力が生じるから、商業的に非常に重要である。単量体を使い尽くすまで重合は続くが、重合体は将来的に何時でも追加の単量体を付加する能力を保持している。多数のそのような系が当該分野ではよく知られている。
【0006】
更に発展したものが、従来の単量体を用いる準リビングカチオン重合系である。準リビング重合では一定の限定条件、例えば無水の試薬が要求される。準リビングカチオン重合は、連鎖移動反応の速度はゼロに近いが連鎖停止反応は存在し、ただし可逆的であるという点で、真のリビング重合とは異なっている。準リビングカチオン重合の重要な一例が、イソブチレンの準リビングカチオン重合である。
【0007】
一般に、イソブチレンの準リビングカチオン重合によって狭い分子量分布が生じて、「tert−クロリド」末端基とも呼ばれる2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を含む一種類の主要な重合体生成物が生じる。ある一定条件下では、少量のオレフィン異性体が生成することもある。
【0008】
一方、従来のBF3を用いたイソブチレンの重合では二種類の主要なオレフィン異性体、例えば高反応性のエキソ−オレフィン異性体と、「三置換」異性体または「エンドオレフィン」異性体とも呼ばれる、比較的非反応性の2−メチル−1−プロペニル異性体とが生成する。さらに、従来のイソブチレンの重合では分子量分布又は多分散性指数が大きい重合体が生じる。
【0009】
エキソ−オレフィン異性体だけの製造は、これまでイソブチレンでは従来の重合条件で達成できなかった。
【0010】
エキソ−オレフィン末端基だけを含むポリイソブチレンを製造するには二つの確立された方法がある。一つの方法は、重合後反応でtert−クロリドを末端基とするポリイソブチレンから、カリウムtert−ブトキシドを用いて化学的にハロゲン化水素を取り去ることを含む(特許文献1)。もう一つの方法は、準リビングイソブチレンをメタリルトリメチルシランでその場で失活させて、活性なリビングカルベニウムイオンをエキソ−オレフィン末端基に変換することを含む(非特許文献1)。
【0011】
上記の方法を使用して多官能性開始剤を用いて、エキソ−オレフィン末端基を一個より多く含むポリイソブチレン重合体を製造することができる。
【0012】
ポリイソブチレン重合体を含むポリオレフィンの製造は当該分野ではよく知られている。多数の特許文献に、エキソ−オレフィン末端基を含むポリイソブチレン重合体の製造方法が記述されているが、ヒンダード第二級又は第三級アミンを用いて準リビングカチオン重合系を失活させることを利用する方法については全く記述が無い。
【0013】
特許文献2には、分子量分布が狭く、重量平均分子量、M(w)と数平均分子量、M(n)との比が1に近い重合体の製造方法が開示されている。
【0014】
特許文献3には、平均重合度が10乃至100で、理論上可能な末端二重結合の割合が三塩化アルミニウムを用いて製造された生成物よりも高いイソブテン重合体が開示されている。また、この特許文献には、開始剤として三フッ化ホウ素を用いてイソブテン重合体を製造する方法も開示されている。
【0015】
特許文献1には、線状重合体の場合には両末端に、あるいは星形重合体の場合には全末端に、不飽和またはヒドロキシル基のいずれかを持つポリイソブチレンの合成が開示されている。この方法は、テレケリック(末端反応性)二ハロゲンポリイソブチレンの溶液を還流する工程、カリウムt−ブトキシドなどの強塩基の溶液を添加する工程、そして撹拌してテレケリックジオレフィンポリイソブチレンを生成させる工程を含む。
【0016】
特許文献4には、予備開始剤およびカチオン重合に有効な触媒を単量体と混合して、分子量を制御しながらカチオン重合を行う方法が開示されている。その後、得られたリビングポリマーは所望通りに処理される。
【0017】
特許文献5には、第三級塩素でキャップしたポリイソブチレンを求電子置換によりアリルトリメチルシランでアリル化することにより、アリル末端ポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。合成は、三塩化ホウ素を触媒としてモノ又はオリゴ第三級クロリド「イニファ」で始まるイソブチレンの重合で開始され、次いで同じ反応容器にヘキサン、アリルトリメチルシランおよび四塩化チタンが添加される。
【0018】
特許文献6及び7には、有機酸又はそのエステルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0019】
特許文献8及び9には、有機エーテルの錯体と、ルイス酸、好ましくはオレフィン単量体に添加して錯体の分子量を200程度から百万を越えるほどに増加させることができる三塩化ホウ素とからなる触媒が開示されている。また、これらの特許文献には、ハロゲン、特にはクロリド、アリル、アクリルまたはメタクリル、アセテートまたはホルメートなどの有用な末端基を持つ種々の分子量の重合体も開示されている。
【0020】
特許文献10には、四塩化チタン、およびピリジンまたは非ヒンダードアルキルピリジンから選ばれた電子対供与体の存在下でカチオン重合により、アルファ−オレフィンまたは共役アルカジエンを含む弾性重合体を製造する方法が開示されている。重合体は分子量分布が非常に狭く単モードである。
【0021】
特許文献11には、アジド、シアノ、カルボニルアミノ又はチオカルボニルアミノ末端基など所望の窒素含有官能基で官能化した高分子物質を直接合成する方法が開示されている。重合と官能化は実質的に同時に起こる。
【0022】
特許文献12には、ポリオレフィン中間ブロックとスチレン末端ブロックを有するブロック共重合体を製造するために、リビングポリオレフィン、特にはポリイソブチレンの鎖末端から開始して、芳香族、好ましくはスチレン単量体をリビング重合させる方法が開示されている。
【0023】
特許文献13には、単一工程でリビングポリイソブチレンを硫酸アセチルでスルホン化することにより、スルホン酸末端ポリイソブチレンを一ポットで製造する方法が開示されている。この方法は、ルイス酸を用いて「イニファ」開始カルボカチオン重合を行って重合体を生成させた後、スルホン化することを含む。
【0024】
特許文献14及び15には、置換又は非置換ジフェニルアルキレン、メトキシスチレン、トランス−スチルベン、1−イソプロペニルナフタレンおよび2,4−ジメチルスチレンからなる群より選ばれる重合不可能な単量体からなる一種もしくは二種以上のキャップ化合物で、リビングポリマーをキャップすることが開示されている。
【0025】
特許文献16には、凝縮相で開始剤系の存在下でイソブテンまたはイソブテン含有単量体混合物をカチオン重合することにより、重合体鎖のうちの少なくとも60%が少なくとも1個のオレフィン不飽和末端基を持つポリイソブチレンを製造する方法が開示されている。
【0026】
特許文献17には、リビング重合条件下で好適な単量体をカチオン重合してその重合をN置換ピロールで失活させることにより、単分散テレケリック重合体を製造する方法が開示されている。N置換ピロールを含む官能化重合体は、燃料添加剤および/または潤滑油添加剤として用いることができる。
【0027】
特許文献18には、カチオン重合によりリビングカルボカチオン重合系を一種もしくは二種以上の芳香族環系と反応させて製造した重合体を官能化する方法、および該方法の置換又は非置換反応生成物を、潤滑油又は燃料組成物および添加剤濃縮物に例えば分散剤、清浄剤または酸化防止剤またはVI向上剤として使用することが開示されている。
【0028】
非特許文献2。その著者は、低純度の2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(DTBP)の存在下でエキソ−オレフィン生成を観察した後、準リビングポリイソブチレンからのβ−プロトン脱離について研究を行っている。著者は脱離が、DTBP中に6×10-6モル/リットルの濃度で存在する立体障害のある環状イミン塩基の存在によるとした。この不純度を2−tert−ブチルピリジン(TBP)を用いてシミュレートして、後者のTBPを重合の開始時に(すなわち、単量体の存在下で)反応器に添加すると、結果として3時間の反応時間後に約65%の脱離が生じてエキソ−オレフィンだけが生成することを発見した。脱離の程度が20%又はそれ以上に達すると、1H NMRとGPC両方の分析では著しいカップリングが観察された。著者(バエ及びファウスト)は、TBPなど立体障害のある塩基による脱離は望ましくなく、避けるべきであるというはっきりした考えを持っていた。この論文の最初の段落には次のように要約されている:「最後に、強塩基もβ−プロトンを脱離しうるが、回避すべきである。」その後に著者は、「その犯人」としてDTBP中の環状イミン塩基の不純度に言及している。最後に著者は論文全体を要約して、脱離工程は運動速度定数の測定を容易にするかもしれないが、重合体製造のためには回避すべきであると述べている:「明確に規定した巨大分子の合成ではβ−プロトン脱離を回避すべきであるが、一方でこの工程の拡散制御を明らかにできるなら、活性中心の濃度を決定する新規な方法となり、それから絶対生長速度定数を計算することが可能になる」。
【0029】
【特許文献1】米国特許第4342849号明細書
【特許文献2】欧州特許第341012号明細書
【特許文献3】米国特許第4152499号明細書
【特許文献4】米国特許第4393199号明細書
【特許文献5】米国特許第4758631号明細書
【特許文献6】米国特許第4910321号明細書
【特許文献7】米国特許第5122572号明細書
【特許文献8】米国特許第4929683号明細書
【特許文献9】米国特許第5066730号明細書
【特許文献10】米国特許第5219948号明細書
【特許文献11】米国特許第5336745号明細書
【特許文献12】米国特許第5428111号明細書
【特許文献13】米国特許第5448000号明細書
【特許文献14】米国特許第5637647号明細書
【特許文献15】米国特許第5677386号明細書
【特許文献16】米国特許出願第10/433439号、出願公開第2004/0015029A1号明細書
【特許文献17】米国特許出願第10/600898号、出願公開第2004/0260033A1号明細書
【特許文献18】国際出願第PCT/EP/05472号、国際公開第WO99/09074号パンフレット
【非特許文献1】M.ロス(M. Roth)及びH.メイヤー(H. Mayr)著、「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」、1996年、第29巻、p.6104、
【非特許文献2】ヤング・チェオル・バエ(Young Cheol Bae)及びルドルフ・ファウスト(Rudolf Faust)著、「イソブチレンのリビングカチオン重合における遊離塩基によるβ−プロトン脱離(β-Proton elimination by Free Bases in the Living cationic Polymerization of Isobutylene)」、マクロモレキュルズ、1997年、第30巻、p.7341−7344
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明は、エキソ−オレフィン鎖末端を含むポリオレフィンの製造方法に関する。この方法は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることを含む。また、この方法は、重合体生成物を生成させるために失活剤を添加することになるカチオン性の準リビングポリオレフィンポリマーを、ルイス酸および電子供与体または共通イオン塩又はその前駆体を使用して生成させることも含む。
【課題を解決するための手段】
【0031】
さらに詳しくは、本発明は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法に関する、ただし、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(a)トリエチルアミン、
(b)トリ−n−ブチルアミン、
(c)トリヘキシルアミン、
(d)トリイソオクチルアミン、
(e)2−フェニルピリジン、
(f)2,3−シクロドデノピリジン、
(g)ジ−p−トリルアミン、
(h)キナルジン、および
(i)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【0032】
失活を、約−130℃乃至約10℃の範囲の温度で行うことが好ましい。より好ましくは失活を約−80℃乃至約0℃の温度で行い、更に好ましくは失活を約−70℃乃至約−10℃の温度で行い、そして最も好ましくは失活を約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う。
【0033】
ポリオレフィンはポリイソブチレンであることが好ましい。
【0034】
本発明の更なる態様では、ポリオレフィンをその場で製造する。
【0035】
ヒンダード第二級又は第三級アミンは、線状第二級又は第三級アミンであってもよいし、環状第二級又は第三級アミンであってもよいし、あるいは芳香族第二級又は第三級アミンであってもよい。
【0036】
本発明の方法の好ましい態様では、失活剤は下記一般式を有するヒンダード第二級又は第三級アミンである。
【0037】
【化1】

【0038】
式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2及びR3はその一つ以下で水素であり、またR1、R2およびR3全てが炭素数約3以下の線状アルキルというわけではない。
【0039】
上記方法でヒンダードアミンは、下記一般式を有する第三級又は第二級アミンである。
【0040】
【化2】

【0041】
式中、R6は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、その各々は炭素原子数1〜約6のアルキル基で置換されていてもよく、そしてR1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数7〜30のアルカリール、または炭素原子数7〜30のアラルキルである;ただし、R1、R2、R3およびR4が水素であるときには、R5は炭素原子数約4〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、またR5が水素であるときには、R1またはR2のうちの一方、およびR3またはR4のうちの一方が炭素原子数約4〜約20の分枝アルキルでない限り、R1、R2、R3およびR4は水素ではない。
【0042】
上記方法の特に好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第二級又は第三級アミンである。
【0043】
【化3】

【0044】
式中、R5は、水素またはメチルである。
【0045】
上記方法の別の好ましい態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0046】
【化4】

【0047】
式中、Rは、水素、または炭素原子1〜約20個を含むアルキル、または炭素原子数約3〜約7の芳香族又は脂肪族環である。
【0048】
上記方法の特に好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0049】
【化5】

【0050】
上記方法の更に好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第二級アミンである。
【0051】
【化6】

【0052】
上記方法の別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0053】
【化7】

【0054】
上記方法のまた別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式の第三級アミンである。
【0055】
【化8】

【0056】
本発明の方法の別の態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0057】
【化9】

【0058】
式中、R1は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、そしてR2、R3、R4、R7、R8およびR9は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、そしてR5およびR6のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20の線状アルキルである。
【0059】
上記方法の好ましい態様では、R5およびR6のうちの一方は水素である。
【0060】
上記方法の一態様では、アミンは下記式を有する。
【0061】
【化10】

【0062】
本発明の方法のまた別の態様では、ヒンダードアミンは下記一般式の第三級アミンである。
【0063】
【化11】

【0064】
式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2が縮合脂肪族又は芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5が縮合脂肪族又は芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである。
【0065】
上記方法の別の態様では、R1、R2、R3およびR4は水素であり、そしてR5はtert−ブチルである。
【0066】
本発明の方法の別の態様では、ヒンダードアミンは下記(a)、(b)及び(c)式を有する窒素含有複素芳香族環である。
【0067】
【化12】

【0068】
(a)式中、R1およびR4のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している、
【0069】
【化13】

【0070】
(b)式中、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである、および
【0071】
【化14】

【0072】
(c)式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである。
【0073】
上記方法の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0074】
【化15】

【0075】
上記方法の更なる態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0076】
【化16】

【0077】
上記方法の更に別の好ましい態様では、ヒンダードアミンは下記式を有する。
【0078】
【化17】

【0079】
本発明の方法では、tert−クロリド鎖末端またはオレフィン鎖末端とtert−クロリド鎖末端との両方を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物を、ルイス酸の存在下でヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることにより、ポリオレフィンを製造する。
【0080】
本発明のまた別の態様では、tert−クロリド鎖末端を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物を、ルイス酸の存在下でヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることにより、ポリオレフィンを製造する。
【0081】
ルイス酸は、チタン又はホウ素のハロゲン化物であることが好ましい。より好ましくは、ルイス酸はハロゲン化チタンである。最も好ましくは、ルイス酸は四塩化チタンである。四塩化チタンの濃度は、プロトン性不純物、電子供与体、共通イオン塩又はその前駆体および失活剤又は失活剤群を一緒にした濃度を二倍以上上回ることが好ましい。
【0082】
本発明の方法を使用して得られたポリオレフィン生成物は、エキソ−オレフィン鎖末端を全鎖末端に基づき1%乃至100%の範囲で有する。好ましくは、ポリオレフィン生成物は少なくとも3%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、より好ましくは少なくとも20%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、更に好ましくは少なくとも50%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、また更に好ましくは少なくとも70%のエキソ−オレフィン鎖末端を有し、そしてまた更に好ましくは90%のエキソ−オレフィン鎖末端を有する。最も好ましくは、ポリオレフィン生成物は全鎖末端に基づき少なくとも99%のエキソ−オレフィン鎖末端を有する。
【0083】
本発明の方法で準リビングポリオレフィンポリマーは、ルイス酸の存在下、かつ準リビング重合に適した反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体を開始剤と接触させることにより生成させる。少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体は、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンのうちの少なくとも一種からなることが好ましい。より好ましくは、少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体はイソブチレンである。
【0084】
本発明の方法では、二種以上の異なるカチオン重合可能な単量体を用いることができる。
【0085】
本発明の方法で開始剤は、一官能性であっても多官能性であってもよい。好ましくは、開始剤は一官能性または二官能性である。より好ましくは、開始剤は一官能性である。
【0086】
本発明の方法で一官能性開始剤は、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセチル−2−フェニルプロパン、2−プロピオニル−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオノキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンのうちの少なくとも一種からなる。
【0087】
本発明の方法で二官能性開始剤としては、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、および1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンを挙げることができる。
【0088】
本発明の方法で多官能性開始剤の例としては、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンがある。
【0089】
本発明の方法でポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは、約1.01乃至約3.0の範囲にある。好ましくは、ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは約1.1乃至約2.0の範囲にある。より好ましくは、ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnは1.5未満である。
【0090】
また、本発明は、カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンであって、ルイス酸と予備反応させたヒンダード第二級又は第三級アミン化合物で失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法にも関する、ただし、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(a)トリエチルアミン、
(b)トリ−n−ブチルアミン、
(c)トリヘキシルアミン、
(d)トリイソオクチルアミン、
(e)2−フェニルピリジン、
(f)2,3−シクロドデノピリジン、
(g)ジ−p−トリルアミン、
(h)キナルジン、および
(i)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【0091】
上記方法の好ましい態様では、ルイス酸は四塩化チタンである。
【0092】
上記方法の更に好ましい態様では、ルイス酸は四塩化チタンであり、そしてヒンダードアミンは1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンである。
【0093】
上記方法の別の好ましい態様では、ルイス酸は四塩化チタンであり、そしてヒンダード第二級又は第三級アミンは2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【発明の効果】
【0094】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に失活剤として使用される1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンおよびN−メチルジフェニルアミンなど充分に立体障害のあるヒンダード第二級又は第三級アミン類が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることを確認した。如何なる理論にもとらわれることはないが、これらの失活剤は、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0095】
[定義]
以下の用語は、本明細書で使用するとき、特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0096】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、一般に炭素原子数1〜約20の直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基を意味する。直鎖及び分枝鎖飽和脂肪族基の幾つかの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル等がある。
【0097】
「芳香族又は脂肪族縮合環」は、本明細書で使用するとき、環の2個の隣接炭素原子で形成された環を意味し、形成された環は環に縮合している。
【0098】
「分枝アルキル」は、本明細書で使用するとき、アルキル基が分子の残部に結合している位置を表す炭素原子が、第三級又は第四級炭素原子のいずれかであるアルキル基を意味する。「第三級炭素」は、本明細書で使用するとき、3個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。「第四級炭素」は、本明細書で使用するとき、4個の別の炭素原子に結合している炭素原子を意味する。
【0099】
「カルベニウムイオン」又は「カルボカチオン」は、本明細書で使用するとき、3個のsp2結合置換基と空のp軌道を持つ正に荷電した炭素原子を意味する。
【0100】
【化18】

【0101】
「連鎖移動反応」は、本明細書で使用するとき、一つの重合鎖の生長の停止とそれに伴う別の重合鎖の起こりうる開始を意味する。
【0102】
「共通イオン塩」は、本明細書で使用するとき、生長したカルベニウムイオンと対イオンの対の解離を防ぐために、準リビングカチオン重合混合物に任意に添加されるイオン性の塩を意味する。共通イオン塩のアニオンは、生長した鎖末端の対イオンと同じである。共通イオン塩のカチオンは、一般にはテトラ−n−ブチルアンモニウムイオンのような脂肪族第四級アンモニウムカチオンであり、有機媒体への溶解度を与える。
【0103】
「共通イオン塩前駆体」は、本明細書で使用するとき、準リビングカチオン重合混合物に任意に添加されて、ルイス酸とのその場での反応により、生長した鎖末端の対アニオンと同じ対アニオンを発生させるイオン性の塩を意味する。一例として塩化テトラ−n−ブチルアンモニウムがある。
【0104】
「制御した分子量分布」は、本明細書で使用するとき、所望の分子量分布を有するポリオレフィン重合体を意味する。分子量分布又は多分散性指数(PDI)は、本明細書では重合体鎖の平均分子量を数平均分子量で割算することにより、Mw/Mnで算出される。
【0105】
「カップリング生成物」は、本明細書で使用するとき、PIBエキソ−オレフィン鎖末端にPIB末端カルベニウムイオンが付加した生成物を意味する。カップリング生成物の数平均分子量は、主重合体生成物の数平均分子量のおよそ二倍である。
【0106】
「カップリング」は、本明細書で使用するとき、ポリイソブチレンエキソ−オレフィン鎖末端にポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが付加することを意味する。
【0107】
「従来の重合」は、本明細書で使用するとき、オレフィンを含む連鎖反応重合が、連鎖伝達粒子としてイオン、アニオン又はカチオンのいずれかによって進行する重合を意味する。重合は、連鎖開始、連鎖生長、連鎖移動および連鎖停止の工程で進む。
【0108】
「二EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、2個の別個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。二EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含む。
【0109】
「二置換オレフィン」又は「エキソ−オレフィン」又は「メチルビニリデン」は、本明細書で使用するとき、下記に示すようにエキソ−オレフィン鎖末端を含むオレフィン重合体鎖を意味する。
【0110】
【化19】

【0111】
「二価炭化水素基」は、本明細書で使用するとき、その分子の残部に対して2つの結合点を持つ炭化水素基を意味する。
【0112】
「EAS生成物」は、本明細書で使用するとき、1個のポリイソブチレン末端カルベニウムイオンが単一の失活剤分子と反応して共有結合を形成したときに、結果として生じる生成物を意味する。EAS生成物は、その構造中に失活剤の残基を含む。
【0113】
「電子供与体」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて、ルイス酸と完全に錯体を作る、またはルイス酸と全く錯体を作らないのいずれかである塩基性及び/又は求核物質を意味する。電子供与体の濃度は、プロトン性不純物、例えば水の濃度を上回る。
【0114】
「求電子芳香族置換又はEAS」は、本明細書で使用するとき、EAS生成物が生成する工程を意味する。
【0115】
「gem−ジメチル炭素」は、本明細書で使用するとき、下記の構造で示すように、ポリオレフィン重合体鎖末端のカルベニウムイオンまたはクロリド結合炭素に対してアルファ位にある2個のメチル炭素を意味する。
【0116】
【化20】

【0117】
「炭化水素基」は、主として炭素と水素とからなる有機基を意味し、脂肪族、脂環式、芳香族またはそれらの組合せ、例えばアラルキルまたはアルカリールであってよい。そのような炭化水素基は、脂肪族不飽和、すなわちオレフィン又はアセチレン不飽和を含んでいてもよいし、また少量のヘテロ原子、例えば酸素または窒素、または塩素などのハロゲンを含んでいてもよい。
【0118】
「開始剤」は、本明細書で使用するとき、重合を開始して重合体鎖の先端の原子価を満たす化学部分、もしくはそのような部分を供給する分子を意味する。一官能性開始剤が使用されるなら、鎖末端(CE)濃度は開始剤の濃度に等しい。多官能性開始剤では、開始剤の官能価がxであるとき鎖末端濃度は開始剤濃度のx倍に等しい。
【0119】
「ヒンダード第二級又は第三級アミン」は、本明細書で使用するとき、ルイス酸と完全には錯体を作れないほど充分な立体障害があるものの、カルベニウムイオンとの反応は可能であるぐらいの立体障害があるように、適切に置換された化合物を意味する。ヒンダードアミンは第三級アミンであることが好ましい。
【0120】
「ルイス酸」は、本明細書で使用するとき、一対の電子を受容して共有結合を形成することができる化合物を意味する。
【0121】
「リビング重合」は、本明細書で使用するとき、測定可能な連鎖移動反応も連鎖停止反応も無しに進行する重合を意味する。
【0122】
「準リビング重合」は、本明細書で使用するとき、可逆的な連鎖停止反応は作動しうるが、不可逆的な連鎖停止反応と連鎖移動反応はゼロに近いリビング重合を意味する。
【0123】
「失活剤」は、本明細書で使用するとき、重合反応に添加されて生長鎖末端と反応する化学化合物を意味する。
【0124】
「ポリオレフィン」は、本明細書で使用するとき、一種もしくは二種以上のオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、スチレン、イソブチレン等の付加重合によって生成する重合体を意味する。
【0125】
「プロトン性不純物」は、本明細書で使用するとき、重合反応混合物中の酸性水素原子をその構造に含む不純物、例えば水を意味する。
【0126】
「位置特異的」は、本明細書で使用するとき、幾つかの可能な異性生成物のうちの一種だけ又は殆ど一種だけを与える化学反応を意味する。
【0127】
「停止」は、本明細書で使用するとき、ルイス酸の分解により重合工程または失活反応を停止させる化学反応を意味する。
【0128】
「停止剤」は、本明細書で使用するとき、重合工程または失活反応を停止させるが、同時に新たな重合体鎖を開始できない化学化合物を意味する。停止剤として多数のアルコールを使用することができる。
【0129】
「tert−クロリド」は、ポリオレフィン重合体鎖の2−クロロ−2−メチルプロピル末端基を意味する。
【0130】
特に断わらない限り、パーセントは全て質量%である。
【0131】
本発明のポリオレフィン重合体の製造に失活剤として使用される1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンおよびN−メチルジフェニルアミンなど充分に立体障害のあるヒンダード第二級又は第三級アミン類が、ポリオレフィン重合体のエンド−オレフィン鎖末端及びtert−クロリド鎖末端を、エキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換できることを確認した。如何なる理論にもとらわれることはないが、これらの失活剤は下記に示すように、ポリイソブチレン鎖末端のgem−ジメチル炭素から排他的にプロトンを取り去るのに、選択的に触媒として作用すると考えられる。
【0132】
【化21】

【0133】
本発明に使用される失活剤は、一官能性開始剤が使用されようと多官能性開始剤が使用されようとそれとは無関係に、エンド−オレフィン鎖末端とtert−クロリド鎖末端を含むポリオレフィン重合体をエキソ−オレフィン鎖末端に定量的に変換することができる。さらに、この変換速度は一官能性開始剤でも二官能性開始剤でも同じである。一官能性開始剤の2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンの添加後15分以内で、100%の変換が観察された。
【0134】
[エキソ−オレフィン末端基を高比率で鎖に含むポリオレフィン重合体の一般的な製造方法]
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造の代表的な方法を記載する。
【0135】
本発明の方法は、バッチ法、連続法、半バッチ法、もしくは当該分野の熟練者には知られている任意の方法で実施することができる。
【0136】
重合反応は不活性ガス中で実質的に無水の環境で行う。次のような反応体を反応器に充填する:
1)希釈剤、
2)開始剤、
3)電子供与体、または共通イオン塩又はその前駆体、
4)一種もしくは二種以上の単量体、および
5)ルイス酸、一般にはチタン又はホウ素のハロゲン化物からなる。
【0137】
反応混合物を、約−130℃乃至約10℃の範囲の所望の温度で平衡にする。本発明の方法は、任意の所望の圧力で、大気圧、減圧または過圧で行うことができる。
【0138】
重合反応の進行を、反応混合物中に残っている単量体の量の測定によりその場でモニタする。単量体の高度の変換を観察した後、失活剤を添加する前に失活前の鎖末端組成を測定するために一部(アリコート)を取り出す。アリコートの重合反応を所望の温度で平衡にした適当なアルコールで停止させる。
【0139】
6)ヒンダード第二級又は第三級アミンを、反応混合物に添加して重合反応を失活させる。
【0140】
所望の生成物を得るために反応体の濃度を変えることができるが、エキソ−オレフィン鎖末端を高い収量で得るためにはある一定の反応体比が重要であることが分かっている。その比を下記に記す。
【0141】
単量体と開始剤とのモル比は、約3:1乃至約20000:1の範囲にある。好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約5:1乃至約2000:1の範囲にある。より好ましくは、単量体と開始剤とのモル比は約10:1乃至150:1の範囲にある。単量体と開始剤とのモル比が、ポリオレフィンの最終的な分子量を制御する。
【0142】
ルイス酸と鎖末端とのモル比は、約0.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至約200:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と鎖末端とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0143】
ルイス酸と電子供与体とのモル比は、約1.1:1乃至約10000:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と電子供与体とのモル比は約4:1乃至30:1である。
【0144】
ルイス酸と失活剤とのモル比は、約1.1:1乃至約2500:1の範囲にある。好ましくは、ルイス酸と失活剤とのモル比は約2:1乃至約100:1の範囲にある。より好ましくは、ルイス酸と失活剤とのモル比は約2:1乃至15:1である。
【0145】
失活剤と鎖末端とのモル比は、約0.25:1乃至約20:1の範囲にある。好ましくは、失活剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至約5:1の範囲にある。より好ましくは、失活剤と鎖末端とのモル比は約0.5:1乃至4:1である。
【0146】
ポリオレフィン重合体のエキソ−オレフィン鎖末端の濃度を測定するために、失活剤を添加したのち様々な時間間隔で反応混合物から追加のアリコートを取り出す。全てのアリコート試料および残った反応混合物で、所望の温度で平衡にした適当なアルコールを用いて重合反応を停止させる。
【0147】
エキソ−オレフィン鎖末端の濃度を、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端の濃度と共に1H NMRを使用して定める。カップリング生成物の量を定性的に求めるために、GPCスペクトルも取る。
【0148】
以下に、本発明のポリオレフィン重合体の製造に使用するのに適した化合物を記載する。
【0149】
[希釈剤]
希釈剤はその極性により、生長種のイオン化平衡および交換速度に影響を及ぼし、極性はその誘電率から見積もることができる。一般に、誘電率の低い溶媒はイオン対が解離し難いので好ましい。好適な溶媒としては、これらに限定されるものではないが、凝固点がかなり低くて好ましい重合温度で使用できる低沸点のアルカン類および一又は多ハロゲン化アルキル類が挙げられる。具体的な溶媒としては、カチオン重合に使用できる代表的な液体希釈剤または溶媒の若干の例を挙げると、アルカン類(一般にはC2−C10アルカン、例えばプロパン、ノルマルブタン、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、ノルマルノナンおよびノルマルデカンなどのノルマルアルカン、およびイソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタンおよび2,3−ジメチルブタン等を含む分枝アルカン)、アルケン及びハロゲン化アルケニル類(例えば、塩化ビニル)、二硫化炭素、クロロホルム、塩化エチル、塩化N−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、二酸化硫黄、無水酢酸、四塩化炭素、アセトニトリル、ネオペンタン、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエテン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、または1,3−ジクロロプロパン、ニトロ−アルカン類(例えば、ニトロプロパン)を挙げることができる。混合溶媒(例えば、上記に挙げたものの組合せ)も使用することができる。
【0150】
[開始剤]
リビング及び準リビングカルボカチオン重合の開始剤化合物は、当該分野ではよく知られている。開始剤は、所望とする生成物に応じて一官能性であっても多官能性であってもよい。所望の重合体が線状であるなら、一官能性及び二官能性開始剤が用いられる。星形重合体を製造するには、開始剤は2個より多い反応部位を持つべきである。考えられる開始剤化合物は、一般式(X’−CRabnc(ただし、Ra、RbおよびRcは独立に、アルキル基、芳香族基、アルキル芳香族基のうちの少なくとも一種からなり、同じでも異なっていてもよく、そしてX’は、アセテート、エテレート、ヒドロキシル基またはハロゲンである)で表すことができる。Rcの価数はnであり、nは1〜4の整数である。Ra、RbおよびRcは、炭素原子1〜約20個、好ましくは炭素原子1〜約8個を含む炭化水素基であることが好ましい。X’はハロゲンであることが好ましく、より好ましくは塩素である。場合によっては、Ra、RbおよびRcの構造を生長種または単量体に似せて選択することが好ましく、例えば、ポリスチレンには1−フェニルエチル誘導体、あるいはポリイソブテンには2,4,4−トリメチルペンチル誘導体である。好適な化合物としては例えば、ハロゲン化クミル、ジクミル及びトリクミル、特には塩化物、すなわち、2−クロロ−2−フェニルプロパン、すなわち塩化クミル;1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(塩化クミル);1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(塩化クミル);2,4,4−トリメチル−2−クロロペンタン;2−アセトキシ−2−フェニルプロパン、すなわち酢酸クミル;2−プロピオノキシ−2−フェニルプロパン、すなわちプロピオン酸クミル;2−メトキシ−2−フェニルプロパン、すなわちクミルメチルエーテル;1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちジ(クミルメチルエーテル);1,3,5−トリ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、すなわちトリ(クミルメチルエーテル)、および類似化合物を挙げることができる。その他の好適な例は米国特許第4946899号明細書に見い出すことができる。特に好ましい例は、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)、1,3,5−トリ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、および1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン(bDCC)、1,3−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、および1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンである。
【0151】
全反応混合物における鎖末端の濃度は、約0.0001モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、鎖末端の濃度は約0.001モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、鎖末端の濃度は約0.005モル/リットル乃至約0.5モル/リットルの範囲にある。
【0152】
[電子供与体]
電子供与体は、従来の重合系をリビング及び/又は準リビングカチオン重合系に変えることが明らかになっている。本発明に用いられる電子供与体は、特別な化合物又は化合物の部類にはっきりと限定されるわけではない。例としては、ピリジン類およびアルキルアミン類、非プロトン性アミド類、スルホキシド類、エステル類、および金属原子に酸素原子が結合している金属化合物等を挙げることができる。ピリジン化合物としては、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、およびピリジンが挙げられる。N,N−ジメチルアニリンおよびN,N−ジメチルトルイジンも用いることができる。アミド化合物としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、およびN,N−ジエチルアセトアミドが挙げられる。スルホキシド化合物の例としてはジメチルスルホキシドがある。ジエチルエーテルはエーテル化合物の例であり、そして酢酸メチルおよび酢酸エチルはエステル化合物の例である。リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどのリン酸エステル化合物も用いることができる。チタン酸テトライソプロピルなどの酸素含有金属化合物も電子供与体として使用できる。
【0153】
全反応混合物における電子供与体の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約0.1モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、電子供与体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、電子供与体の濃度は約0.002モル/リットル乃至約0.02モル/リットルの範囲にある。
【0154】
[共通イオン塩及び共通イオン塩前駆体]
電子供与体に加えてもしくはその代わりに、共通イオン塩又は塩前駆体を任意に反応混合物に添加することができる。一般にこれらの塩は、イオン強度を高め、遊離イオンを抑え、そして配位子交換体と有利に相互作用させるために使用される。特に好ましいのは共通イオン塩前駆体、例えば塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−Bu4NCl)である。
【0155】
全反応混合物における共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は、約0.0005モル/リットル乃至約0.05モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.0005モル/リットル乃至約0.025モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、共通イオン塩又は塩前駆体の濃度は約0.001モル/リットル乃至約0.007モル/リットルの範囲にある。
【0156】
[単量体]
本発明の方法に使用するのに適した単量体は、炭化水素単量体、すなわち水素原子と炭素原子だけを含む化合物、特にはオレフィンおよびジオレフィンであり、通常は炭素原子数約2〜約20のものであるが、好ましくは約4〜約8のものである。この方法は、そのような単量体を重合して、異なってはいても分子量が均一な重合体、例えば約300乃至100万g/モルを越える重合体を生成させるのに用いることができる。そのような重合体は、分子量が約200乃至10000g/モルの低分子量液体又は粘性重合体であってもよいし、あるいは分子量が約100000乃至1000000g/モル又はそれ以上の固体ワックス状乃至塑性又は弾性物質であってもよい。好適な単量体としては、イソブチレン、スチレン、ベータピネン、イソプレン、ブタジエンなどの化合物、およびこれらの種の置換化合物等を挙げることができる。特に好ましい単量体は、イソブチレン、2−メチル−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンである。更に好ましい単量体はイソブチレンである。単量体の混合物も使用することができる。
【0157】
全反応混合物における単量体の濃度は、約0.01モル/リットル乃至約5.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、単量体の濃度は約0.1モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、単量体の濃度は約0.3モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。最も好ましくは、単量体の濃度は0.5モル/リットルである。
【0158】
[ルイス酸]
本発明のための触媒として適したルイス酸としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタン及びホウ素、特には四塩化チタンおよび三塩化ホウ素が挙げられる。ハロゲン化チタン、特には四塩化チタンを使用することが好ましい。ルイス酸の強度とその濃度は特定の単量体に対して調整すべきである。さらに、これらルイス酸の強度は求核添加剤を用いて調整することができる。場合によってはこれらルイス酸は補助開始剤とも呼ばれる。
【0159】
開始剤系に存在するルイス酸の量は変えることができる。ただし、適切な重合及び失活速度を遂行できるほどルイス酸の濃度が充分であることが望ましい。生成した重合体を沈殿させるほどルイス酸濃度を高くすべきではない。
【0160】
全反応混合物におけるルイス酸の濃度は、約0.001モル/リットル乃至約3.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.005モル/リットル乃至約1.5モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、ルイス酸の濃度は約0.05モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。
【0161】
[失活剤]
本発明のポリオレフィンの製造に使用される失活剤は、ヒンダード第二級又は第三級アミン化合物であり、例えば2−tert−ブチルピリジン、n−トリブチルアミン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、およびN−メチルジフェニルアミンがある。
【0162】
本発明に失活剤として用いられるヒンダード第二級又は第三級アミンは、下記一般式を有する。
【0163】
【化22】

【0164】
式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2およびR3はその一つ以下で水素であり、またR1、R2およびR3全てが炭素数約3以下の線状アルキルというわけではない。
【0165】
上記方法の好ましい態様では、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記一般式を有する。
【0166】
【化23】

【0167】
式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2が縮合脂肪族又は芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5が縮合脂肪族又は芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである。
【0168】
上記方法の好ましい態様では、R1は水素であり、そしてR5はtert−ブチルであり、そしてR2、R3およびR4は水素である。
【0169】
本発明の方法に用いられるヒンダードアミンは、下記(a)、(b)及び(c)式を有する窒素含有複素芳香族環であってもよい。
【0170】
【化24】

【0171】
(a)式中、R1およびR4のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している。
【0172】
【化25】

【0173】
(b)式中、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである。
【0174】
【化26】

【0175】
(c)式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである。
【0176】
本発明の方法に用いることができるその他のヒンダード第二級又は第三級アミンの構造を下記に記す。下記の構造は例としてのみ意図したものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0177】
【化27】

【0178】
本発明の方法に用いることができるその他のヒンダード第二級又は第三級の構造は、窒素原子をリン原子で置き換えることにより得ることができる。記載した構造は例としてのみ意図したものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0179】
全反応混合物における失活剤の濃度は、約0.0001モル/リットル乃至約2.0モル/リットルの範囲にあってよい。好ましくは、失活剤の濃度は約0.001モル/リットル乃至約1.0モル/リットルの範囲にある。より好ましくは、失活剤の濃度は約0.005モル/リットル乃至約0.5モル/リットルの範囲にある。
【0180】
[停止剤]
本発明の重合反応を停止させるのに、任意の可溶性アルコールを使用することができる。好ましいのは、炭素原子約1〜約8個を含むモノアルコール類である。
【実施例】
【0181】
[実施例1] 一官能性開始剤と1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを用いたポリイソブチレンの製造
頭上機械撹拌器と白金抵抗温度計を備えた250ミリリットル四つ口丸底フラスコを、ATR−FTIRプローブの端部に取り付けたが、R.F.ストレイ(R.F. Storey)及びQ.A.トーマス(Q.A. Thomas)著、「マクロモレキュルズ」、2003年、第36巻、p.5065−5071に記載されているように、プローブは導光管によりにFTIR分光計に接続されている。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のMブラウン・グローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。大気のバックグラウンド・スペクトルを取って、それ以後に収集した全てのスペクトルから差し引いた。次に、フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン113ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル75.7ミリリットル、
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.477ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.233ミリリットル。
【0182】
丸底フラスコの内容物を平衡にし、そして−60℃で平衡にしたイソブチレン8.2ミリリットルの添加に先立って、887cm-1の基準吸光度を決定するために、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)データをおよそ10分間に渡って継続して取った。
【0183】
次に、撹拌を続けながら、四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに加えた。反応を進行させ、887cm-1のイソブチレンピークをその場でフーリエ変換赤外分光法でモニタすることにより測定したところ、およそ95%の高い変換に至った。フーリエ変換赤外分光法によるモニタに用いた方法については後で記載する。失活前のアリコートおよそ5−10ミリリットルをガラスピペットを用いてフラスコから取り出し、−60℃で平衡にした無水メタノール4ミリリットルを含むシンチレーション・バイアルに入れて、重合反応を停止させた。このアリコートを用いて1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンによる失活反応の基準を決定し、また失活剤無しの場合の構造及び分子量的特徴の基準とした。
【0184】
イソブチレン変換が99%の時点で、丸底フラスコの重合反応を1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン0.71ミリリットルを添加することにより失活させた。失活後のアリコートおよそ5−10ミリリットルを、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの添加後様々な時間間隔で、−60℃で平衡にした無水メタノール4ミリリットルを含むシンチレーション・バイアルに入れることにより停止させた。
【0185】
次に、丸底フラスコには1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの添加後90分の時点で、−60℃で平衡にしたメタノールを適当な量加えて残りの重合反応混合物を停止させた。
【0186】
アリコート試料および最終的に停止させた反応混合物を室温まで放温し、揮発成分を蒸発させた。各アリコート試料にヘキサン1−2ミリリットルを加えると、重合体がメタノールに沈殿した。各アリコート試料からポリイソブチレンを回収し、そして残存する如何なる不純物も除去するために、ボルテックス混合機を用いて新鮮なメタノールと一緒にかき混ぜてメタノールをデカントした。各アリコートから回収したポリイソブチレン試料を室温の減圧オーブンに少なくとも24時間入れて、残っていた如何なる溶媒も取り除いた。
【0187】
実施例1−5および比較例A−Eで使用した希釈剤は、ヘキサンと塩化メチルの容量比60:40の混合物であった。
【0188】
以下に記載するように、1H各磁気共鳴分光法(1H NMR)およびゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を使用して、ポリイソブチレン試料の分析を行った。
【0189】
(イソブチレンのフーリエ変換赤外分光法によるモニタ方法)
重合反応の後で、887cm-1のイソブチレンピークをフーリエ変換赤外分光法によりモニタした。この方法については、R.F.ストレイ及びQ.A.トーマス著、「マクロモレキュルズ」、2003年、第36巻、p.5065−5071に記載されている。
【0190】
1H NMRデータの収集方法)
ブルカー(Bruker)AC−300(300MHz)分光光度計を使用して、試料濃度CDCl3中3%乃至5%(質量/質量)を用いて、1H NMRスペクトルを収集した。末端基の分析のために1H NMRスペクトルを使用した。以降の項に記載するように1H NMR積分を用いて、エキソ−オレフィン、エンド−オレフィン、tert−クロリドおよびカップリングオレフィンの鎖末端の割合を得た。
【0191】
(GPCデータの収集方法)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および多分散性指数(PDI)、すなわちMw/Mnを決定するためにGPCデータを使用した。オレフィンカップリング生成物を定性的に検出するためにもGPCを使用した。
【0192】
(ポリイソブチレン生成物の鎖末端の量の割合の計算方法)
ポリイソブチレン試料中のエキソ−オレフィン、エンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端、およびEAS、二EAS及びカップリング生成物の割合を、1H NMR積分を用いて定めた。これら六種で100%の鎖末端を表すと仮定した。場合によっては、1H NMRスペクトルの定性的検査によりEAS、二EAS及びカップリング生成物は存在しないと思われ、またGPCクロマトグラムで重合体主ピークの低溶離量側に肩が無いのを確認することによっても、二EAS及びカップリング生成物については存在しないと思われた。以下に、二つの方法を記す。カップリング生成物が検出されたときは「一般的方法」を使用し、カップリング生成物が存在しないと思われたときは「特別な方法」を使用した。
【0193】
(一般的方法)
エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0194】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
+2Acoupled) (1)
【0195】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは4.63ppmにおけるエキソ−オレフィン共鳴の面積であり、そしてAtert-Clは下記のようにして算出した。
【0196】

tert-Cl=(A1.65-1.72/6)−Aendo (2)
【0197】
ここで、A1.65-1.72はエンド−オレフィン及びtert−クロリド鎖末端のgem−ジメチルプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積である。EAS又は二EAS生成物が存在する場合に、その積分面積は各状況に基づいて見積り、他のピークが入り組んでいないピークに基づいて積分を求め、そしてその特徴的なピークを持つプロトンの数に基づいて面積を規格化した。方程式(1)で二EAS及びカップリング生成物両方に2の係数が見られるが、その理由はこれら生成物いずれの発生にも2個のポリイソブチレン鎖が消費される、という事実にあることに留意されたい。Acoupledは下記のようにして算出した。
【0198】

coupled=(A5.0-4.75−A4.5-4.75)/2 (3)
【0199】
ここで、A5.0-4.75はエキソ−オレフィンプロトンのうちの1個とカップリング生成物の2個の同等なプロトンに関係した入り組んだピークの積分面積であり、そしてA4.5-4.75はもう一方のエキソ−オレフィンプロトンに関係したピークの積分面積である。
【0200】
(特別な方法)
カップリング生成物が定性的に存在しない場合には、エキソ−オレフィンの量の割合を規定する下記の方程式と類似の方程式を用いて、各種類の鎖末端のモル量の割合を得た。
【0201】

F(exo)=(Aexo)/(Aexo+Aendo+Atert-Cl+AEAS+2Adi-EAS
(1)
【0202】
ここで、Aendoは5.15ppmにおける単独オレフィン共鳴の面積であり、Aexoは百万分の4.63部と4.85部における2つのエキソ−オレフィン共鳴の平均面積であり、そしてAtert-Cl、AEASおよびAdi-EASは「一般的方法」に記載したのと同じようにして算出した。
【0203】
下記第1表は、実施例1−15および比較例A−Eで使用した反応体の量をまとめて示す。
【0204】
下記第2表は、実施例1−15および比較例A−Eで使用した反応体のモル量をまとめて示す。
【0205】
下記第3表は、実施例1−15および比較例A−Eで製造したポリイソブチレン試料のエキソ−オレフィン含量をまとめて示す。データを全末端基のモル%で記す。
【0206】
下記第4表は、実施例1−15および比較例A−Eで製造したポリイソブチレン試料の全鎖末端組成をまとめて示す。
【0207】
下記第1、2、3及び4表では、反応体について以下の略語を用いている。
TMPClは、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンの略語である。
12266PMPipは、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの略語である。
NMDPAは、N−メチルジフェニルアミンの略語である。
2tBPは、2−tert−ブチルピリジンの略語である。
TPAは、トリペンチルアミン(異性体の混合物)の略語である。
DPAは、ジフェニルアミンの略語である。
TTAは、トリ−p−トリルアミンの略語である。
DMAは、N,N−ジメチルアニリンの略語である。
BETは、N−ベンジル−N−エチル−m−トルイジンの略語である。
2,3DMQは、2,3−ジメチルキノキサリンの略語である。
DDAは、10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[b,f]アゼピンの略語である。
4,6DMPは、4,6−ジメチルピリミジンの略語である。
246TTは、2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジンの略語である。
THAは、トリ−n−ヘキシルアミンの略語である。
2PPは、2−フェニルピリジンの略語である。
DTAは、ジ−p−トリルアミンの略語である。
TnBAは、トリ−n−ブチルアミンの略語である。
2266TMPipは、2,2,6,6−テトラメチルピペラジンの略語である。
NNDIPPAは、N,N−ジイソプロピル−3−ペンチルアミンの略語である。
12266TMPip/TiCl4は、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペラジンと四塩化チタンの混合物の略語である。
【0208】
【表1】

【0209】
【表2】

【0210】
【表3】

【0211】
【表4】

【0212】
[実施例2] 一官能性開始剤とN−メチルジフェニルアミンを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載したようにして第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例2の条件は、失活剤が1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの代わりに、N−メチルジフェニルアミンであったこと以外は実施例1の条件と同じであった。
【0213】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして集め、そして分析した。
【0214】
下記第3表は、失活剤の添加後様々な時間間隔で得られたデータをまとめて示す。アリコート試料を集めるのに要した実時間(分)は、第3表に記した時間のうちの数分、1〜5分以内であった。
【0215】
[実施例3] 一官能性開始剤と2−tert−ブチルピリジンを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載したようにして第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例3の条件は、失活剤が1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンの代わりに、2−tert−ブチルピリジンであったこと以外は実施例1の条件と同じであった。
【0216】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして集め、そして分析した。
【0217】
[実施例4] 一官能性開始剤と2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1に記載したようにして第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例4の条件は、失活剤が2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであったこと、そして鎖末端濃度の二倍の濃度で使用したこと以外は実施例1の条件と同様であった。
【0218】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして集め、そして分析した。
【0219】
下記第3表は、失活剤の添加後様々な時間間隔で得られたデータをまとめて示す。
【0220】
[実施例5] 一官能性開始剤と1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンを用いたポリイソブチレンの製造:失活前の1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンと四塩化チタンの予備反応
反応器の配置、ATR−FTIRプローブと導光管、FTIR分光計と分光学的方法及び分析、定温ヘプタン浴並びにグローブボックスは、実施例1に記載したのと同じであった。250ミリリットル反応フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン85.5ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル57ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、および
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル。
【0221】
887cm-1の基準吸光度を決定し、次に−60℃で平衡にしたイソブチレン8.18ミリリットルを250ミリリットル反応フラスコに加えた。
【0222】
別の500ミリリットル二つ口フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン28.5ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル19ミリリットル、および
室温で平衡にした1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン1.02ミリリットル。
両フラスコを−60℃のヘプタン浴で平衡にした。
【0223】
次に、四塩化チタン1.2ミリリットルを250ミリリットル反応フラスコに加えた。次いで、四塩化チタン0.62ミリリットルを500ミリリットルフラスコに加えた。
【0224】
33分の重合時間経過後に、失活前のアリコート(5−10ミリリットル)を250ミリリットル反応フラスコの内容物から取り出し、予備冷却したメタノール10−15ミリリットルで停止させ、次に500ミリリットルフラスコの内容物を250ミリリットル反応フラスコに注入することで重合を失活させた。1、3、5、8、15及び30分でアリコートを取り出し、予備冷却メタノールで停止させた。60分で反応器の残りの内容物を予備冷却メタノールを用いて停止させた。
【0225】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして収集し、そして分析した。
【0226】
[実施例6] 一官能性開始剤と混合異性体からなるトリペンチルアミン(TPA)を用いたポリイソブチレンの製造
250ミリリットル四つ口丸底フラスコに、頭上機械撹拌器と白金抵抗温度計を取り付けた。この組立装置を、実質的に不活性な雰囲気のグローブボックス内で乾燥窒素ガス中で、−60℃のヘプタン浴に浸漬した。次に、フラスコに下記の反応体を充填した:
−60℃で平衡にしたヘキサン108ミリリットル、
−60℃で平衡にした塩化メチル72ミリリットル、
室温で平衡にした2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン0.48ミリリットル、
室温で平衡にした2,6−ジメチルピリジン0.23ミリリットル、
−60℃で平衡にしたイソブチレン16.4ミリリットル。
丸底フラスコの内容物を−60℃で平衡にした。
【0227】
撹拌を続けながら、次に四塩化チタン1.82ミリリットルをフラスコに加えた。反応を12分間進行させた後、重合溶液20ミリリットルを4本の別々の60ミリリットル試験管に入れ、ねじ込みキャップを付した。
【0228】
各試験管で更に4分間重合を続行させ(反応は全部で16分間)、この時点で4本の試験管のうちの1本をメタノール5ミリリットルで停止させて、失活剤添加前の比較例とした。残りの3本の溶液を、時々振とうしながら8分間反応を続行させ(反応は全部で24分間)、この時点で反応重合物を含む試験管のうちの1本にトリペンチルアミン(異性体の混合物)0.1270グラムを添加した。TPAを添加した後、残りの重合物のうちの1つをメタノール5ミリリットルで停止させて、別の比較例とした。TPA失活反応を15分間進行させ、この時点で反応を停止させるためにメタノール5ミリリットルを加えた。次に、最後の未失活重合試験管をメタノール5ミリリットルで停止させて、最終比較例とした。失活剤非含有反応物を用いて失活反応の比較基準とし、また失活剤無しの場合の構造及び分子量的特徴の基準とした。
【0229】
最終反応混合物における反応体のモル量を下記第2表に記し、そして様々な時間間隔でのエキソ−オレフィンの結果を第3表にまとめて示す。
【0230】
[実施例7−14] 一官能性開始剤と種々の失活剤を用いたポリイソブチレンの製造
上記実施例6に記載した方法に従って、ただしTPA以外の種々の失活剤を用いてポリイソブチレンを製造した。次のような失活剤(実施例7−14)の評価を行って、エキソ−オレフィンPIBを生成させた:ジフェニルアミン(DPA)、トリ−p−トリルアミン(TTA)、N,N−ジメチルアニリン(DMA)、N−ベンジル−N−エチル−m−トルイジン(BET)、2,3−ジメチルキノキサリン(23DMQ)、10,11−ジヒドロ−5H−ジベンゾ[b,f]アゼピン(DDA)、4,6−ジメチルピリミジン(46DMP)、および2,4,6−トリフェニル−1,3,5−トリアジン(246TT)。
【0231】
実施例7−14の反応体の量を第1表に列挙する。最終反応混合物における反応体のモル量を下記第2表に記し、そして様々な時間間隔でのエキソ−オレフィンの結果を第3表にまとめて示す。
【0232】
[実施例15] 一官能性開始剤とN,N−ジイソプロピル−3−ペンチルアミンを用いたポリイソブチレンの製造
実施例1の方法に従って第1表に列挙した条件を用いてポリイソブチレンを製造した。実施例15の条件は、失活剤がN,N−ジイソプロピル−3−ペンチルアミンであったこと以外は実施例4の条件と同じである。
【0233】
ポリイソブチレン試料を、実施例1のポリイソブチレン試料について上述したようにして集め、そして分析した。
【0234】
下記第3表は、失活剤の添加後様々な時間間隔で得られたデータをまとめて示す。
【0235】
[比較例A−E] 一官能性開始剤と種々の失活剤を用いたポリイソブチレンの製造
実施例6に記載した方法に従って、ただしTPA以外の種々の失活剤を用いてポリイソブチレンを製造した。比較例は、対照アリコートで発生したPIBのエキソ−オレフィンより多くエキソ−オレフィンPIBを生じなかった第二級及び第三級アミンを表す。
【0236】
比較例A−Eの反応体の量を第1表に列挙する。最終反応混合物における反応体のモル量を下記第2表に記し、そして様々な時間間隔でのエキソ−オレフィンの結果を第3表にまとめて示す。
【0237】
【表5】

【0238】
【表6】

【0239】
【表7】

【0240】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンで失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法、ただし、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(a)トリエチルアミン、
(b)トリ−n−ブチルアミン、
(c)トリヘキシルアミン、
(d)トリイソオクチルアミン、
(e)2−フェニルピリジン、
(f)2,3−シクロドデノピリジン、
(g)ジ−p−トリルアミン、
(h)キナルジン、および
(i)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【請求項2】
カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系の失活が、約−130℃乃至約10℃の範囲の温度である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
失活を約−80℃乃至約0℃の範囲の温度で行う請求項2に記載の方法。
【請求項4】
失活を約−70℃乃至約−10℃の範囲の温度で行う請求項3に記載の方法。
【請求項5】
失活を約−60℃乃至約−20℃の範囲の温度で行う請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリオレフィンをその場で製造する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリイソブチレンである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ヒンダード第二級又は第三級アミンが下記一般式を有する請求項1に記載の方法:
【化1】

[式中、R1、R2およびR3は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3およびR3とR1のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1、R2およびR3は、その一つ以下が水素であり、またR1、R2およびR3全てが炭素数約3以下の線状アルキルということではない]。
【請求項9】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項8に記載の方法。
【化2】

【請求項10】
ヒンダードアミンが下記式の第二級アミンである請求項8に記載の方法。
【化3】

【請求項11】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項8に記載の方法。
【化4】


【請求項12】
ヒンダードアミンが下記式の第三級アミンである請求項8に記載の方法。
【化5】

【請求項13】
ヒンダードアミンが下記一般式を有する第三級又は第二級アミンである請求項1に記載の方法:
【化6】

[式中、R6は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、その各々は炭素原子数1〜約6のアルキル基で置換されていてもよく、そしてR1、R2、R3、R4およびR5は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである;ただし、R1、R2、R3およびR4が水素であるときには、R5は炭素原子数約4〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、そして、R5が水素であるときには、R1またはR2のいずれか、およびR3またはR4のいずれかが炭素原子数約4〜約20の分枝アルキルでない限り、R1、R2、R3およびR4は水素ではない]。
【請求項14】
ヒンダードアミンが下記式の第二級又は第三級アミンである請求項13に記載の方法:
【化7】

[式中、R5は、水素またはメチルである]。
【請求項15】
ヒンダード第二級又は第三級アミンが下記一般式を有する請求項8に記載の方法:
【化8】


[式中、R1は、炭素原子数1〜約4の二価炭化水素基であり、そしてR2、R3、R4、R7、R8およびR9は独立に、水素、炭素原子1〜約20個を含むアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、そしてR5およびR6のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20の線状アルキルである]。
【請求項16】
5およびR6のうちの一方が水素である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アミンが下記式を有する請求項15に記載の方法。
【化9】

【請求項18】
ヒンダードアミンが下記一般式の第三級アミンである請求項1に記載の方法:
【化10】

[式中、R1およびR5のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり;R2、R3およびR4は独立に、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約7のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2、R2とR3、R3とR4およびR4とR5のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1とR2が縮合脂肪族または芳香族環を形成しているときには、R5は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルであり、またR4とR5が縮合脂肪族または芳香族環を形成しているときには、R1は炭素原子数約3〜約20の分枝アルキル、炭素原子数約10〜約30のアリール、または炭素原子数約11〜約30のアラルキルである]。
【請求項19】
1が水素であって、そしてR5がtert−ブチルであり、そしてR2、R3およびR4が水素である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ヒンダードアミンが、下記(a)、(b)または(c)式を有する窒素含有複素芳香族である請求項1に記載の方法:
【化11】

[式(a)において、R1およびR4のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R2およびR3のうちの一方は水素であり、もう一方は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR1とR2およびR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している]、
【化12】


[式(b)において、R1、R2およびR4は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、R3は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであるか;あるいはR2とR3またはR3とR4のうちの少なくとも一対は組として独立に、炭素原子数5〜7の縮合芳香族環、または炭素原子数約4〜約8の縮合脂肪族環を形成している;ただし、R1が水素であるときには、R2およびR4は独立に炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルであり、さらにR2またはR4が水素であるときには、R1は炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである]、および
【化13】


[式(c)において、R1、R2およびR3は独立に、水素、または炭素原子数1〜約20のアルキル、炭素原子数約3〜約8のシクロアルキル、炭素原子数約6〜約30のアリール、炭素原子数約7〜約30のアルカリール、または炭素原子数約7〜約30のアラルキルである]。
【請求項21】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項1に記載の方法。
【化14】

【請求項22】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項20に記載の方法。
【化15】

【請求項23】
ヒンダードアミンが下記式を有する請求項20に記載の方法。
【化16】



【請求項24】
tert−クロリド鎖末端またはtert−クロリド鎖末端とオレフィン鎖末端との両方を含む準リビングポリオレフィンポリマー生成物をルイス酸の存在下で失活させることにより、ポリオレフィンを製造する請求項1に記載の方法。
【請求項25】
準リビングポリオレフィンポリマー生成物がtert−クロリド鎖末端を含んでいる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ルイス酸がハロゲン化チタン又はハロゲン化ホウ素である請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ルイス酸がハロゲン化チタンである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項26に記載の方法。
【請求項29】
準リビングポリオレフィンポリマーを、ルイス酸の存在下、かつ準リビング重合に適した反応条件下で、少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体を開始剤と接触させることにより生成させる請求項1に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体が、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、およびベータ−ピネンのうちの少なくとも一種からなる請求項29に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも一種のカチオン重合可能な単量体がイソブチレンである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
二種以上の異なるカチオン重合可能な単量体を用いる請求項31に記載の方法。
【請求項33】
開始剤が多官能性である請求項29に記載の方法。
【請求項34】
開始剤が二官能性である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
二官能性開始剤が、1,3−ジ(2−クロロ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)ベンゼン、1,3−ジ(2−アセトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)−5−tert−ブチルベンゼン、および1,4−ジ(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼンのうちの少なくとも一種からなる請求項34に記載の方法。
【請求項36】
開始剤が一官能性である請求項29に記載の方法。
【請求項37】
一官能性開始剤が、2−クロロ−2−フェニルプロパン、2−アセトキシ−2−フェニルプロパン、2−プロピオノキシ−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオノキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタンのうちの少なくとも一種からなる請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが約1.01乃至約3.0の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項39】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが約1.1乃至約2.0の範囲にある請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ポリオレフィン重合体の分子量分布、Mw/Mnが1.5未満である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
カチオン性の準リビングポリオレフィンポリマー系を、炭素、水素及び窒素原子のみを含む一種もしくは二種以上のヒンダード第二級又は第三級アミンであって、ルイス酸と予備反応させたヒンダード第二級又は第三級アミン化合物で失活させることからなる、重合体鎖に1個もしくは2個以上のエキソ−オレフィン末端基を含むポリオレフィンを製造する方法、ただし、ヒンダード第二級又は第三級アミンは下記の化合物ではない:
(a)トリエチルアミン、
(b)トリ−n−ブチルアミン、
(c)トリヘキシルアミン、
(d)トリイソオクチルアミン、
(e)2−フェニルピリジン、
(f)2,3−シクロドデノピリジン、
(g)ジ−p−トリルアミン、
(h)キナルジン、および
(i)1−ピロリジノ−1−シクロペンテン。
【請求項42】
ルイス酸が四塩化チタンである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ヒンダードアミンが1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンである請求項41に記載の方法。
【請求項44】
ルイス酸が四塩化チタンであり、そしてヒンダード第二級又は第三級アミンが2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである請求項41に記載の方法。
【請求項45】
ポリオレフィンが少なくとも20%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項46】
ポリオレフィンが少なくとも50%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項47】
生成物が少なくとも70%のエキソ−オレフィン末端基を有する請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2008−510859(P2008−510859A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528101(P2007−528101)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/030160
【国際公開番号】WO2006/023988
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【出願人】(504239353)ザ・ユニバーシティー・オブ・サザン・ミシシッピ (9)
【Fターム(参考)】