エスカレータの音響診断装置
【課題】エスカレータの稼動部の劣化を、稼動音と周囲音の周波数スペクトルを比較する周波数解析手段と差異検出手段を用いて容易かつ正確に診断する。
【解決手段】励磁音検出手段及び周囲音検出手段で得たハンドレールの稼動音の音響情報を、周波数解析手段によって周波数解析情報に変換し、差異検出手段において比較し、比較した結果の差異が明らかな場合に異常判定手段において異常と判定し、異常部位情報を出力する。
【解決手段】励磁音検出手段及び周囲音検出手段で得たハンドレールの稼動音の音響情報を、周波数解析手段によって周波数解析情報に変換し、差異検出手段において比較し、比較した結果の差異が明らかな場合に異常判定手段において異常と判定し、異常部位情報を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響診断技術を用いて産業機械の稼動部の劣化、特にエスカレータの劣化を検出する音響診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業機械においては使用により部品の劣化を生じる。例えばエスカレータにおいては、稼動部として乗客を乗せるステップと同期して同方向に移動するプラスチック、ゴム等からなるハンドレールを設け、このハンドレールにより乗客が転倒しないようにしている。このハンドレールにおいては、気温などによるハンドレールのゴムの伸長や、乗客による負荷でハンドレールの全長が伸び、ステップと同期しなくなるような事象を防止するために、ハンドレール内部にスチールコードなどの抗張体を設けている。
【0003】
ここで、このハンドレールを長期にわたって使用した場合、当前記ハンドレールに損傷が発生し、ハンドレールとしての寿命に到達する。ハンドレールの劣化損傷としては、ハンドレールのエスカレータのガイドレール摺動面に設けられた帆布の摩耗、ハンドレール内部に設けられたスチールコードの金属疲労などによる断線、ハンドレール内部の帆布とスチールコードとの界面における層間剥離、層間剥離の進行に伴うスチールコードの配列乱れ、帆布面の膨れ発生などの状況が挙げられる。
【0004】
エスカレータを含む一般産業産業機械においては、保守点検の効率化の観点から、診断対象機器をできるだけ分解せずに診断する非破壊形診断装置が求められている。さらに、エスカレータのように診断対象がその設置場所から移動できない設備機械については、診断装置の可搬性が重視されることから、測定・診断装置の小型化が望まれる。これらの要求を満たす観点から、音響技術を活用した対象の劣化診断が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エスカレータのハンドレールについては、特許文献1に示されているようにハンドレールに対して交番磁界をかけてスチールコードの励磁音の音響診断から劣化を検出する技術が開示されている。音響診断においては、検出音のノイズからの分離が課題となる。一般にはフーリエ変換やウェーブレット変換などの時間・周波数解析が用いられる。検出音内の特徴的な周波数領域を予め把握しておき、診断時には周波数領域におけるフィルタ処理を行いノイズを除去するような技術が採用される。
【0006】
一方、特許文献2では産業機械の内部または近接外部の要所に音響センサを配置し、別途配置された暗騒音センサの信号との相関を取って差し引くことで暗騒音(周辺ノイズ)の影響を排除する技術が開示されている。しかしながら、異常判定の具体的な判定方式について開示がなされておらず、異常部位の自動判定技術を実際に適用することができない。
【0007】
また、特許文献3では2つの感音センサを用い、周波数解析情報のうちのピーク周波数を比較して異常を検出する技術が開示されているが、予め監視位置情報を構成するための検出が必要であり、監視対象・位置ごとのデータベースを構成する必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、事前検出の必要なしに稼動部の異常位置を正確に自動判定する操作性に優れた音響診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】特開2005−8385号公報
【特許文献2】特開平6−201452号公報
【特許文献3】特開2004−177359号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、稼動部を有するエスカレータの稼動音に基づき劣化診断をする音響診断装置において、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記稼動音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、稼動部を有するエスカレータの劣化診断をする音響診断装置において、前記稼動部付近で発生する稼動音を検出する稼動音検出手段と、前記稼動部から離隔した位置で稼動部の周囲で発生する周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記稼動音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、記稼動部がエスカレータのハンドレールであることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、抗張体を有するハンドレールの励磁音と周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、前記励磁音と周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記励磁音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、抗張体を有するハンドレールの励磁音と周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、前記抗張体を電磁的に励振させて励磁音を検出する励磁音検出手段と、前記励磁音発生位置から離隔した位置で周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記励磁音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記励磁音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較して差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段による差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の音響診断装置は、エスカレータ等の産業機械において、稼動部の劣化状態を診断するために、稼動音と周囲音の周波数解析情報に基づいて、周囲環境に関わらずかつ位置情報等の事前検出の必要性なしに、リアルタイムで正確な診断および自動判定が可能となるので、過去の履歴情報のない診断対象であっても容易に異常判定が可能である。また、複数回の検出結果を比較して検出ノイズによる誤判定を防止し、診断装置の信頼性を高めることができる。さらに、特定した異常部位情報に基づいて産業機械を制御することにより、保守員の異常位置点検作業を円滑に補助することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に音響診断装置の構成を示す。音響診断装置1は、コンピュータ及びソフトウェアプログラム等からなり、その主要部として周波数解析手段103と、差異検出手段104と、異常判定手段105を有する。また前記異常判定手段105の結果を出力する出力手段106、表示手段107およびオペレータによる入力手段108、メモリ109を有する。2は診断対象であるエスカレータ、202はエスカレータの稼動音を検出する稼動音検出装置である。
【0018】
図2においてエスカレータ2には、ハンドレール201が備えられており、運搬される人が手すりとして利用することが出来る。ハンドレール201は、図3の横断面図に示す構造になっており、ハンドレール本体の内部に形状を保つためのスチールワイヤ等の抗張体301が埋め込まれている。ハンドレール201が劣化してくると、抗張体301がハンドレール本体から分離しその形状を保つことが困難になる。音響診断装置1は、本実施例では抗張体301が劣化によって固定されなくなった状態を検出することを目的とする。
【0019】
稼動音検出装置202は、図4に詳細に示すように励磁手段としての電磁石403と励磁音検出用マイク401と周囲音検出用マイク402とから構成されている。ここで電磁石403で抗張体301に励磁振動を発生させ、その振動音を励磁音検出用マイク401で検出する。周囲音検出用マイク402で同時に周囲音を検出することで、励磁音検出用マイク401で検出された音から励磁振動音のみを抽出できる。
【0020】
励磁音検出用マイク401は励磁音検出手段に相当する。周囲音検出用マイク402は周囲音検出手段に相当する。音響の測定はエスカレータ2を動作させながら連続的に稼動音を測定する。ハンドレール201は、エンドレスベルトになっているため、動作させ続けることでハンドレール全体を測定することができる。
【0021】
ここで、励磁音等の稼動音測定プロセスと音響診断プロセスは切り離すことが出来る。すなわち稼動音検出装置202及び図示しない録音装置を用いて事前に採取した稼動音を入力として与えてもよく、稼動音情報サンプル音としてあらかじめメモリ109に記憶させておいても良い。
【0022】
稼動音検出装置202を用いて入力された励磁音及び周囲音は、それぞれ周波数解析手段103によって、周波数スペクトルに逐次変換される。図5の励磁音スペクトルと周囲音スペクトルは、それぞれ励磁音と周囲音のある時間帯における周波数スペクトルの例である。抗張体301が劣化している場合には図5の励磁音スペクトルに示されるような特徴的なピークを持つスペクトル波形が現れる。このピークは励磁装置の加振周波数の倍音を含んでおり、周囲音スペクトルと明確に区別できる。
【0023】
一方、抗張体301が劣化しておらず、ハンドレール本体にしっかりと固定されている場合には図6の周波数スペクトルに示すように図5に示す特徴的な励磁音は発生せず、従って両スペクトルはほとんど同一となる。また抗張体301全体についてみれば、抗張体が劣化せず励磁音の特徴スペクトルが発生しない箇所では、励磁音の周波数スペクトルに特徴波形は現れず、同様に周囲音の周波数スペクトルとの間に大きな差は現れない。
【0024】
周波数解析手段103によって周波数スペクトルに変換された励磁音の周波数スペクトル(以下、励磁音スペクトル)と周囲音の周波数スペクトル(以下、周囲音スペクトル)は、図1の差異検出手段104によって、周波数スペクトルの差異が算出される。図7は乖離度を示す周波数解析図である。本実施例における乖離度は、差異検出手段104によって算出された励磁音スペクトルと周囲音スペクトルの差異を演算処理し正規化して、正常状態と異常状態の判別を容易にしたものである。励磁音が発生しなければ、励磁音スペクトルは周囲音スペクトルにほぼ一致するので、乖離度はほぼ1になる。
【0025】
乖離度は、例えば以下の式1にて算出される。時刻tにおける周囲音の周波数スペクトル分布をfs(t)、励磁音の周波数スペクトル分布をfr(t)、スペクトルの分解能をN、乖離度をδとすれば、
δ(t) = (Σ|fr(t)/fs(t)|)/N・・・・・[式1]
区間601において、乖離度が1を大きく超えている部分が存在しており、これは励磁音スペクトルと周囲音スペクトルとの差異が検出されていることを示している。異常判定手段105は、差異検出手段104から乖離度を受け取って乖離度が1を超えている区間を異常と判定して診断出力手段106に出力する。診断出力手段は診断結果をアラーム、警告信号等で測定者またはエスカレータの制御装置に通知する。異常と判定された区間は、測定開始から終了までにおけるどの区間で発生したかを、例えば図9に示す形態で表示手段107に表示することで測定者に通知することができる。
【0026】
上記処理のフローチャートを図8に示す。周囲音検出手段102によって入力された周囲音を周波数解析手段103が周波数スペクトルに変換し(ステップS701)、この周囲音の周波数スペクトルが差異検出手段104によって記憶される(S702)。励磁音検出手段101によって入力された励磁音を周波数解析手段103が周波数スペクトルに変換し(S703)、S702で記憶された結果とS703で変換された励磁音の周波数スペクトルから乖離度が算出される(S704)。次いで異常判定手段105で乖離度が1を超える区間を検出して異常区間を特定し(S705)、診断出力手段106で診断結果を出力するとともに表示手段107に出力する(S706)。
【実施例2】
【0027】
測定時のノイズなどによる影響を最小限にする第2の実施例について、以下図10、図11を用いて説明する。
【0028】
図10は、実施例1と同様にハンドレールの励磁音及び環境音を測定し、それらの周波数スペクトルから乖離度を算出したものである。グラフ901とグラフ902は、それぞれ同じエスカレータのハンドレールについて、2回測定し、診断した結果を示したものである。1回目(グラフ901)と2回目(グラフ902)とでは、部位903に違いがある。903は測定時の一時的なノイズなどの影響によるもので、抗張体が励磁されて発生した励磁音によって発生した乖離度ではない。このような一時的な測定ノイズによる影響を排除するために、図11に示す音響診断装置1aにはフィルタ手段10を設ける。フィルタ手段10は、音響診断装置1の異常判定手段105から異常判定結果を複数回受け取る参照手段1001と、前記複数回の異常判定結果が一致しているかを判定する一致判定手段1002とから構成される。図10の例について説明すれば、乖離度が同様に現れている部位904及び905についてのみ異常判定結果が出力され、部位903については、ノイズと判断して異常判定は出力されない。
【実施例3】
【0029】
診断した結果の異常部位を測定者に分かりやすくするため、診断結果に含まれる異常部位情報に基づいてエスカレータ2を制御し異常部位を測定位置付近に移動させる第3の実施例について、以下図12、図13を用いて説明する。
【0030】
補助制御装置11は、音響診断装置1が出力する診断結果に含まれる異常部位情報のうち異常位置指定手段1101により指定された異常部位を指定する。次いで位置算出手段1102によってエスカレータ2をどれだけ動かすかという制御情報を算出する。異常位置指定手段1101による指定は、例えば、図9のような画面を表示手段107に表示し、入力手段によって画面上の異常部位801を指定すればよい。位置算出手段1102によって算出された制御情報は、動作制御手段1103が受け取り、エスカレータ2を制御し、異常部位を所定の位置に移動させる。これによって測定者は異常部位を直接確認することができる。
【実施例4】
【0031】
実施例2と同様に、測定時のノイズなどによる影響を最小限にする第4の実施例について説明する。図14は、実施例1の音響診断装置1の構成において正常動作時のハンドレール稼動音のサンプル音保持手段102を加えたものである。実施例2では複数回の測定結果を用いることでノイズの影響を最小限にしたが、本実施例では予め正常動作時のハンドレール励磁音をサンプル音として記録保持しておき、検出した異常区間の候補について記録保持していた正常時励磁音のサンプル音と比較して、ノイズによる誤検出を回避し診断の信頼性を向上する。
【0032】
図15に本実施例の診断フローチャートを示す。図8の手順に加えて、新たに励磁音サンプル音が周波数スペクトルに変換され(S707)、測定対象の励磁音の周波数スペクトルとの乖離度が算出され(S708)、異常励磁音であるかどうかが判定され(S709)、異常励磁音である区間のみが出力される(S706)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるエスカレータの模式図である。
【図3】本発明の第1の実施例におけるエスカレータのハンドレールの横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例における稼動音検出装置202の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施例における異常検出時の診断波形図である。
【図6】本発明の第1の実施例における正常時の診断波形図である。
【図7】本発明の第1の実施例における周波数解析図である。
【図8】本発明の第1の実施例における診断処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施例における周波数解析図である。
【図10】本発明の第2の実施例における診断波形図である。
【図11】本発明の第2の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施例における補助制御装置のブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図15】本発明の第4の実施例における診断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1:音響診断装置
2:エスカレータ
11:補助制御装置
102:サンプル音保持手段
103:周波数解析手段
104:差異検出手段
105:異常判定手段
107:表示手段
201:ハンドレール
202:稼動音検出装置
401:励磁音検出用マイク
402:周囲音検出用マイク
1001:参照手段
1002:一致判定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響診断技術を用いて産業機械の稼動部の劣化、特にエスカレータの劣化を検出する音響診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、産業機械においては使用により部品の劣化を生じる。例えばエスカレータにおいては、稼動部として乗客を乗せるステップと同期して同方向に移動するプラスチック、ゴム等からなるハンドレールを設け、このハンドレールにより乗客が転倒しないようにしている。このハンドレールにおいては、気温などによるハンドレールのゴムの伸長や、乗客による負荷でハンドレールの全長が伸び、ステップと同期しなくなるような事象を防止するために、ハンドレール内部にスチールコードなどの抗張体を設けている。
【0003】
ここで、このハンドレールを長期にわたって使用した場合、当前記ハンドレールに損傷が発生し、ハンドレールとしての寿命に到達する。ハンドレールの劣化損傷としては、ハンドレールのエスカレータのガイドレール摺動面に設けられた帆布の摩耗、ハンドレール内部に設けられたスチールコードの金属疲労などによる断線、ハンドレール内部の帆布とスチールコードとの界面における層間剥離、層間剥離の進行に伴うスチールコードの配列乱れ、帆布面の膨れ発生などの状況が挙げられる。
【0004】
エスカレータを含む一般産業産業機械においては、保守点検の効率化の観点から、診断対象機器をできるだけ分解せずに診断する非破壊形診断装置が求められている。さらに、エスカレータのように診断対象がその設置場所から移動できない設備機械については、診断装置の可搬性が重視されることから、測定・診断装置の小型化が望まれる。これらの要求を満たす観点から、音響技術を活用した対象の劣化診断が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エスカレータのハンドレールについては、特許文献1に示されているようにハンドレールに対して交番磁界をかけてスチールコードの励磁音の音響診断から劣化を検出する技術が開示されている。音響診断においては、検出音のノイズからの分離が課題となる。一般にはフーリエ変換やウェーブレット変換などの時間・周波数解析が用いられる。検出音内の特徴的な周波数領域を予め把握しておき、診断時には周波数領域におけるフィルタ処理を行いノイズを除去するような技術が採用される。
【0006】
一方、特許文献2では産業機械の内部または近接外部の要所に音響センサを配置し、別途配置された暗騒音センサの信号との相関を取って差し引くことで暗騒音(周辺ノイズ)の影響を排除する技術が開示されている。しかしながら、異常判定の具体的な判定方式について開示がなされておらず、異常部位の自動判定技術を実際に適用することができない。
【0007】
また、特許文献3では2つの感音センサを用い、周波数解析情報のうちのピーク周波数を比較して異常を検出する技術が開示されているが、予め監視位置情報を構成するための検出が必要であり、監視対象・位置ごとのデータベースを構成する必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、事前検出の必要なしに稼動部の異常位置を正確に自動判定する操作性に優れた音響診断装置を提供することを目的とする。
【0009】
【特許文献1】特開2005−8385号公報
【特許文献2】特開平6−201452号公報
【特許文献3】特開2004−177359号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、稼動部を有するエスカレータの稼動音に基づき劣化診断をする音響診断装置において、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記稼動音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、稼動部を有するエスカレータの劣化診断をする音響診断装置において、前記稼動部付近で発生する稼動音を検出する稼動音検出手段と、前記稼動部から離隔した位置で稼動部の周囲で発生する周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記稼動音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、記稼動部がエスカレータのハンドレールであることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、抗張体を有するハンドレールの励磁音と周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、前記励磁音と周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記励磁音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段とを設けたことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、抗張体を有するハンドレールの励磁音と周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、前記抗張体を電磁的に励振させて励磁音を検出する励磁音検出手段と、前記励磁音発生位置から離隔した位置で周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記励磁音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記励磁音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較して差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段による差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の音響診断装置は、エスカレータ等の産業機械において、稼動部の劣化状態を診断するために、稼動音と周囲音の周波数解析情報に基づいて、周囲環境に関わらずかつ位置情報等の事前検出の必要性なしに、リアルタイムで正確な診断および自動判定が可能となるので、過去の履歴情報のない診断対象であっても容易に異常判定が可能である。また、複数回の検出結果を比較して検出ノイズによる誤判定を防止し、診断装置の信頼性を高めることができる。さらに、特定した異常部位情報に基づいて産業機械を制御することにより、保守員の異常位置点検作業を円滑に補助することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に音響診断装置の構成を示す。音響診断装置1は、コンピュータ及びソフトウェアプログラム等からなり、その主要部として周波数解析手段103と、差異検出手段104と、異常判定手段105を有する。また前記異常判定手段105の結果を出力する出力手段106、表示手段107およびオペレータによる入力手段108、メモリ109を有する。2は診断対象であるエスカレータ、202はエスカレータの稼動音を検出する稼動音検出装置である。
【0018】
図2においてエスカレータ2には、ハンドレール201が備えられており、運搬される人が手すりとして利用することが出来る。ハンドレール201は、図3の横断面図に示す構造になっており、ハンドレール本体の内部に形状を保つためのスチールワイヤ等の抗張体301が埋め込まれている。ハンドレール201が劣化してくると、抗張体301がハンドレール本体から分離しその形状を保つことが困難になる。音響診断装置1は、本実施例では抗張体301が劣化によって固定されなくなった状態を検出することを目的とする。
【0019】
稼動音検出装置202は、図4に詳細に示すように励磁手段としての電磁石403と励磁音検出用マイク401と周囲音検出用マイク402とから構成されている。ここで電磁石403で抗張体301に励磁振動を発生させ、その振動音を励磁音検出用マイク401で検出する。周囲音検出用マイク402で同時に周囲音を検出することで、励磁音検出用マイク401で検出された音から励磁振動音のみを抽出できる。
【0020】
励磁音検出用マイク401は励磁音検出手段に相当する。周囲音検出用マイク402は周囲音検出手段に相当する。音響の測定はエスカレータ2を動作させながら連続的に稼動音を測定する。ハンドレール201は、エンドレスベルトになっているため、動作させ続けることでハンドレール全体を測定することができる。
【0021】
ここで、励磁音等の稼動音測定プロセスと音響診断プロセスは切り離すことが出来る。すなわち稼動音検出装置202及び図示しない録音装置を用いて事前に採取した稼動音を入力として与えてもよく、稼動音情報サンプル音としてあらかじめメモリ109に記憶させておいても良い。
【0022】
稼動音検出装置202を用いて入力された励磁音及び周囲音は、それぞれ周波数解析手段103によって、周波数スペクトルに逐次変換される。図5の励磁音スペクトルと周囲音スペクトルは、それぞれ励磁音と周囲音のある時間帯における周波数スペクトルの例である。抗張体301が劣化している場合には図5の励磁音スペクトルに示されるような特徴的なピークを持つスペクトル波形が現れる。このピークは励磁装置の加振周波数の倍音を含んでおり、周囲音スペクトルと明確に区別できる。
【0023】
一方、抗張体301が劣化しておらず、ハンドレール本体にしっかりと固定されている場合には図6の周波数スペクトルに示すように図5に示す特徴的な励磁音は発生せず、従って両スペクトルはほとんど同一となる。また抗張体301全体についてみれば、抗張体が劣化せず励磁音の特徴スペクトルが発生しない箇所では、励磁音の周波数スペクトルに特徴波形は現れず、同様に周囲音の周波数スペクトルとの間に大きな差は現れない。
【0024】
周波数解析手段103によって周波数スペクトルに変換された励磁音の周波数スペクトル(以下、励磁音スペクトル)と周囲音の周波数スペクトル(以下、周囲音スペクトル)は、図1の差異検出手段104によって、周波数スペクトルの差異が算出される。図7は乖離度を示す周波数解析図である。本実施例における乖離度は、差異検出手段104によって算出された励磁音スペクトルと周囲音スペクトルの差異を演算処理し正規化して、正常状態と異常状態の判別を容易にしたものである。励磁音が発生しなければ、励磁音スペクトルは周囲音スペクトルにほぼ一致するので、乖離度はほぼ1になる。
【0025】
乖離度は、例えば以下の式1にて算出される。時刻tにおける周囲音の周波数スペクトル分布をfs(t)、励磁音の周波数スペクトル分布をfr(t)、スペクトルの分解能をN、乖離度をδとすれば、
δ(t) = (Σ|fr(t)/fs(t)|)/N・・・・・[式1]
区間601において、乖離度が1を大きく超えている部分が存在しており、これは励磁音スペクトルと周囲音スペクトルとの差異が検出されていることを示している。異常判定手段105は、差異検出手段104から乖離度を受け取って乖離度が1を超えている区間を異常と判定して診断出力手段106に出力する。診断出力手段は診断結果をアラーム、警告信号等で測定者またはエスカレータの制御装置に通知する。異常と判定された区間は、測定開始から終了までにおけるどの区間で発生したかを、例えば図9に示す形態で表示手段107に表示することで測定者に通知することができる。
【0026】
上記処理のフローチャートを図8に示す。周囲音検出手段102によって入力された周囲音を周波数解析手段103が周波数スペクトルに変換し(ステップS701)、この周囲音の周波数スペクトルが差異検出手段104によって記憶される(S702)。励磁音検出手段101によって入力された励磁音を周波数解析手段103が周波数スペクトルに変換し(S703)、S702で記憶された結果とS703で変換された励磁音の周波数スペクトルから乖離度が算出される(S704)。次いで異常判定手段105で乖離度が1を超える区間を検出して異常区間を特定し(S705)、診断出力手段106で診断結果を出力するとともに表示手段107に出力する(S706)。
【実施例2】
【0027】
測定時のノイズなどによる影響を最小限にする第2の実施例について、以下図10、図11を用いて説明する。
【0028】
図10は、実施例1と同様にハンドレールの励磁音及び環境音を測定し、それらの周波数スペクトルから乖離度を算出したものである。グラフ901とグラフ902は、それぞれ同じエスカレータのハンドレールについて、2回測定し、診断した結果を示したものである。1回目(グラフ901)と2回目(グラフ902)とでは、部位903に違いがある。903は測定時の一時的なノイズなどの影響によるもので、抗張体が励磁されて発生した励磁音によって発生した乖離度ではない。このような一時的な測定ノイズによる影響を排除するために、図11に示す音響診断装置1aにはフィルタ手段10を設ける。フィルタ手段10は、音響診断装置1の異常判定手段105から異常判定結果を複数回受け取る参照手段1001と、前記複数回の異常判定結果が一致しているかを判定する一致判定手段1002とから構成される。図10の例について説明すれば、乖離度が同様に現れている部位904及び905についてのみ異常判定結果が出力され、部位903については、ノイズと判断して異常判定は出力されない。
【実施例3】
【0029】
診断した結果の異常部位を測定者に分かりやすくするため、診断結果に含まれる異常部位情報に基づいてエスカレータ2を制御し異常部位を測定位置付近に移動させる第3の実施例について、以下図12、図13を用いて説明する。
【0030】
補助制御装置11は、音響診断装置1が出力する診断結果に含まれる異常部位情報のうち異常位置指定手段1101により指定された異常部位を指定する。次いで位置算出手段1102によってエスカレータ2をどれだけ動かすかという制御情報を算出する。異常位置指定手段1101による指定は、例えば、図9のような画面を表示手段107に表示し、入力手段によって画面上の異常部位801を指定すればよい。位置算出手段1102によって算出された制御情報は、動作制御手段1103が受け取り、エスカレータ2を制御し、異常部位を所定の位置に移動させる。これによって測定者は異常部位を直接確認することができる。
【実施例4】
【0031】
実施例2と同様に、測定時のノイズなどによる影響を最小限にする第4の実施例について説明する。図14は、実施例1の音響診断装置1の構成において正常動作時のハンドレール稼動音のサンプル音保持手段102を加えたものである。実施例2では複数回の測定結果を用いることでノイズの影響を最小限にしたが、本実施例では予め正常動作時のハンドレール励磁音をサンプル音として記録保持しておき、検出した異常区間の候補について記録保持していた正常時励磁音のサンプル音と比較して、ノイズによる誤検出を回避し診断の信頼性を向上する。
【0032】
図15に本実施例の診断フローチャートを示す。図8の手順に加えて、新たに励磁音サンプル音が周波数スペクトルに変換され(S707)、測定対象の励磁音の周波数スペクトルとの乖離度が算出され(S708)、異常励磁音であるかどうかが判定され(S709)、異常励磁音である区間のみが出力される(S706)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるエスカレータの模式図である。
【図3】本発明の第1の実施例におけるエスカレータのハンドレールの横断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例における稼動音検出装置202の模式図である。
【図5】本発明の第1の実施例における異常検出時の診断波形図である。
【図6】本発明の第1の実施例における正常時の診断波形図である。
【図7】本発明の第1の実施例における周波数解析図である。
【図8】本発明の第1の実施例における診断処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施例における周波数解析図である。
【図10】本発明の第2の実施例における診断波形図である。
【図11】本発明の第2の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図12】本発明の第3の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図13】本発明の第3の実施例における補助制御装置のブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施例における音響診断装置のブロック図である。
【図15】本発明の第4の実施例における診断処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1:音響診断装置
2:エスカレータ
11:補助制御装置
102:サンプル音保持手段
103:周波数解析手段
104:差異検出手段
105:異常判定手段
107:表示手段
201:ハンドレール
202:稼動音検出装置
401:励磁音検出用マイク
402:周囲音検出用マイク
1001:参照手段
1002:一致判定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
稼動部を有するエスカレータの稼動音および稼動部から離隔した周囲音に基づき劣化診断をする音響診断装置において、
前記稼動音及び周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記稼動音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項2】
稼動部を有するエスカレータの劣化診断をする音響診断装置において、
前記稼動部付近で発生する稼動音を検出する稼動音検出手段と、前記稼動部から離隔した位置で稼動部の周囲で発生する周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記稼動音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記稼動部がエスカレータのハンドレールであることを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位について、ハンドレール全体に対する位置を示す異常位置情報と、ハンドレールの異常の進行度を示す重要度情報とを表示する表示手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項5】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、複数回の検出及び異常判定を行って得られた複数回の異常部位情報を比較する参照手段と、各回で得られた異常部位情報のうち相関関係が強い異常部位情報のみを出力する一致判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項6】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、指定された異常部位情報に基づいて前記エスカレータに対する制御位置を算出する位置算出手段と、前記指定された異常部位情報の示す位置までエスカレータのハンドレールを動作させる動作制御手段を有する補助制御装置を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項7】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
音響診断装置にサンプル音保持手段を設け、前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、 前記異常部位情報に相当する区間の前記稼動音の周波数解析情報と、サンプル音保持手段が保持する正常時の稼動音サンプル音の周波数解析情報とを比較し、検出された異常部位を出力する制御手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項8】
抗張体を有するハンドレールの励磁音およびハンドレールから離隔した周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、
前記励磁音と周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記励磁音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項9】
抗張体を有するハンドレールの励磁音およびハンドレールから離隔した周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、
前記抗張体を電磁的に励振させて励磁音を検出する励磁音検出手段と、前記励磁音発生位置から離隔した位置で周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記励磁音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記励磁音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較して差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段による差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位について、前記ハンドレール全体に対する位置を示す異常位置情報と、前記ハンドレールの異常の進行度を示す重要度情報とを表示する表示手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項11】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、複数回の検出及び異常判定を行った結果として得られる複数回の異常部位情報を比較する参照手段と、それらの相関関係が強い異常部位情報のみを出力する一致判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項12】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、指定された異常部位情報に基づいて前記エスカレータに対する制御位置を算出する位置算出手段と、前記指定された異常部位情報の示す位置までエスカレータのハンドレールを動作させる補助制御装置を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項13】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
音響診断装置にサンプル音保持手段を設け、前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、前記異常部位情報に相当する区間の前記励磁音の周波数解析情報と、サンプル音保持手段が保持する正常時の励磁音サンプル音の周波数解析情報とを比較し、検出された異常部位を出力する制御手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項1】
稼動部を有するエスカレータの稼動音および稼動部から離隔した周囲音に基づき劣化診断をする音響診断装置において、
前記稼動音及び周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記稼動音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項2】
稼動部を有するエスカレータの劣化診断をする音響診断装置において、
前記稼動部付近で発生する稼動音を検出する稼動音検出手段と、前記稼動部から離隔した位置で稼動部の周囲で発生する周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記稼動音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記稼動音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、稼動部の異常部位を特定する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記稼動部がエスカレータのハンドレールであることを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位について、ハンドレール全体に対する位置を示す異常位置情報と、ハンドレールの異常の進行度を示す重要度情報とを表示する表示手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項5】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、複数回の検出及び異常判定を行って得られた複数回の異常部位情報を比較する参照手段と、各回で得られた異常部位情報のうち相関関係が強い異常部位情報のみを出力する一致判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項6】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、指定された異常部位情報に基づいて前記エスカレータに対する制御位置を算出する位置算出手段と、前記指定された異常部位情報の示す位置までエスカレータのハンドレールを動作させる動作制御手段を有する補助制御装置を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項7】
請求項3に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
音響診断装置にサンプル音保持手段を設け、前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、 前記異常部位情報に相当する区間の前記稼動音の周波数解析情報と、サンプル音保持手段が保持する正常時の稼動音サンプル音の周波数解析情報とを比較し、検出された異常部位を出力する制御手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項8】
抗張体を有するハンドレールの励磁音およびハンドレールから離隔した周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、
前記励磁音と周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記周囲音の周波数解析情報と前記励磁音の周波数解析情報を比較してその差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段を用いて得られた差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段とを設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項9】
抗張体を有するハンドレールの励磁音およびハンドレールから離隔した周囲音によりハンドレールの劣化診断を行うエスカレータの音響診断装置において、
前記抗張体を電磁的に励振させて励磁音を検出する励磁音検出手段と、前記励磁音発生位置から離隔した位置で周囲音を検出する周囲音検出手段と、前記励磁音および周囲音を周波数解析する周波数解析手段と、前記励磁音の周波数解析情報と前記周囲音の周波数解析情報を比較して差異を検出する差異検出手段と、前記差異検出手段による差異情報に基づいて異常判別を行い、前記ハンドレールの異常部位情報を出力する異常判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項10】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位について、前記ハンドレール全体に対する位置を示す異常位置情報と、前記ハンドレールの異常の進行度を示す重要度情報とを表示する表示手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項11】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、複数回の検出及び異常判定を行った結果として得られる複数回の異常部位情報を比較する参照手段と、それらの相関関係が強い異常部位情報のみを出力する一致判定手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項12】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、指定された異常部位情報に基づいて前記エスカレータに対する制御位置を算出する位置算出手段と、前記指定された異常部位情報の示す位置までエスカレータのハンドレールを動作させる補助制御装置を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【請求項13】
請求項8または9のいずれか一項に記載されたエスカレータの音響診断装置において、
音響診断装置にサンプル音保持手段を設け、前記異常判定手段によって出力された前記ハンドレールの異常部位情報について、前記異常部位情報に相当する区間の前記励磁音の周波数解析情報と、サンプル音保持手段が保持する正常時の励磁音サンプル音の周波数解析情報とを比較し、検出された異常部位を出力する制御手段を設けたことを特徴とするエスカレータの音響診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−234747(P2009−234747A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−84044(P2008−84044)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】
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