説明

エスシタロプラムおよびブプロピオンを含有する安定な医薬製剤

本発明は、エスシタロプラムおよびブプロピオンの安定な医薬製剤、およびそれを中枢神経系障害、例えば気分障害(例えば大うつ病性障害)または不安障害(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害または恐慌性障害)の治療のために使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスシタロプラムおよびブプロピオンの安定な医薬製剤、およびそれを中枢神経系障害、例えば気分障害(例えば大うつ病性障害)または不安障害(例えば、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害または恐慌性障害)の治療のために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(以下SSRIと呼ぶ)、例えばラセミ体シタロプラムおよびエスシタロプラムは、主に、三環系抗うつ剤およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)と比較して優れた有効性のために、うつ病の治療における第一選択の治療になっている。SSRIは、シナプスでの神経細胞による神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン)の再取り込みを阻害することによって機能する。結果として、セロトニンがシナプス間隙に残り、受容細胞の受容体を刺激する機会を有することになる。
【0003】
エスシタロプラムはシタロプラムのS-エナンチオマーであり、以下の構造:
【0004】
【化1】

を有する。
【0005】
エスシタロプラムの製造方法は、例えば特許文献1および特許文献2および特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6に開示されており、これらは全て参照することによって本明細書に組み込まれるものである。
【0006】
参照することによって本明細書に組み込まれる特許文献7および特許文献8には、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば、過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥過活動性障害および薬物乱用を含む種々の精神障害の治療にエスシタロプラムを使用する方法が開示されている。特許文献8ではまた、慣用のSSRIでの初期治療に応答しなかった患者、特に慣用のSSRIでの初期治療に応答しなかった大うつ病性障害を有する患者の治療にエスシタロプラムを使用する方法が開示されている。
【0007】
大うつ病性障害および全般性不安障害の治療用に、シュウ酸エスシタロプラムが最近米国でLexapro(R)として上市されている。Lexapro(R)は、5、10および20 mgのエスシタロプラム即放性錠剤(シュウ酸塩として)で、および5 mg/mLの経口液剤で入手することができる。
【0008】
溶融造粒法によって製造されたシュウ酸エスシタロプラムの放出調節製剤が特許文献9に開示されている。特定の溶出プロファイルを有するSSRI、例えば臭化水素酸シタロプラムおよびシュウ酸エスシタロプラムの放出調節製剤が特許文献10に開示されている。
【0009】
エスシタロプラムに伴う副作用には、悪心、不眠、傾眠、発汗過多、疲労および性機能障害(射精障害、無オルガズム症および性欲減退を含むがこれらに限定はされない)が含まれる。
【0010】
塩酸ブプロピオンは、大うつ病性障害の治療用にWellbutrin(R)、Wellbutrin SR (R)およびWellbutrin XL(R)として、そして禁煙治療の補助剤としてZyban(R)が近年上市されている。ブプロピオンは、他の近年入手可能な抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤)とは化学的に関連性の無いアミノケトン誘導体である。抗うつ作用および禁煙効果の神経化学的メカニズムは未知であるが、ノルアドレナリン作動性経路および/またはドーパミン作動性効果が主に関連していると考えられる。ブプロピオンはモノアミンオキシダーゼを阻害せず、そしてセロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みの弱い遮断薬である。
【0011】
Wellbutrin(R) (即放性塩酸ブプロピオン製剤)は、1日に3回、好ましくは連続投与間に少なくとも6時間を有して投与される75および100 mg錠剤として供給されている。塩酸ブプロピオンの放出制御製剤も開発されている。
【0012】
例えば、特許文献11には、塩酸ブプロピオンコアならびに水不溶性、水透過性フィルム形成コーティングおよび粒状の水溶性コア形成材料からなるコーティングを含む放出制御ブプロピオン錠製剤が開示されている。しかしながら、25〜70%のブプロピオンが4時間以内に、40〜90%が6時間以内に放出されるので、通常、1日に少なくとも2回の投薬がなおも必要とされる。
【0013】
特許文献12、特許文献13および特許文献14には、塩酸ブプロピオンの分解を防ぐために安定剤を含有する塩酸ブプロピオン製剤が開示されている。
【0014】
特許文献15には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する放出制御ブプロピオン錠製剤が開示されている。ブプロピオンの半分以上が好ましくは4時間で蒸留水に放出される。この速い放出速度のために、この製剤は通常1日に多数回投与される。
【0015】
特許文献16および特許文献17には、安定剤および孔形成剤を含まない塩酸ブプロピオンの放出制御錠が開示されている。この錠剤は、塩酸ブプロピオン、結合剤、滑沢剤、および水不溶性かつ水透過性フィルム形成ポリマー、可塑剤および水溶性ポリマーから実質的になるコーティングから実質的になるコアからなる。
【0016】
特許文献18および特許文献19および特許文献20には、塩酸ブプロピオンのコートペレットを含む1日1回用の塩酸ブプロピオン製剤が開示されている。
【0017】
非特許文献1では、抗うつ薬の即放性製剤と放出制御製剤との臨床試験結果が、薬剤投与中止の原因となる悪心に関して比較されている。著者は「より安定な薬物動態プロファイルが、一部の新しい放出制御抗うつ薬を用いた場合の悪心の発生低下の原因であり得る」が「関連性は証明されていない」と述べている。
【0018】
非特許文献2(「Gerner I」)によれば、「ブプロピオンは不十分な臨床反応、SSRI性機能障害の治療用の、および併存ADDおよび恐慌性障害もしくは強迫性障害に伴ううつ病用のSSRIに加えられた」。非特許文献3(ブプロピオンSRとベンラファキシン、パロキセチンまたはフルオキセチンとの併用の薬物動態、治療および性機能障害効果)に関する研究);非特許文献4(「Gerner II」);非特許文献5(性機能障害を誘発するセロトニン再取り込み阻害剤(パロキセチン、フルオキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンまたはフルボキサミン)に関する解毒薬としてのブプロピオンの使用に関する研究);非特許文献6(SSRI誘発性性的副作用の治療としてのブプロピオン徐放性製剤に関する研究)も参照のこと。しかしながら、ブプロピオンを用いるSSRI誘発性性機能障害の治療が効果的であるとは証明されていない。非特許文献7によると、ブプロピオンを用いる強化療法を比較する二重盲検プラセボ対照試験では、プラセボと同等の性障害の改善が示された。さらに、ブプロピオンでは他の抗うつ薬と比較して発作の発生が増加した。上記Gerner II参照(過去に発作がなかったうつ病患者における、ブプロピオンとフルオキセチンまたはフルボキサミンとの併用後の大運動発作が3件報告されている);上記Gerner Iも参照。
【0019】
24%〜46%のうつ病患者が、適当な用量および期間の抗うつ薬治療に完全には応答できないことが研究により示されている。非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10では、治療抵抗性のうつ病患者において、単剤療法に切り替えた場合に対してシタロプラムおよびブプロピオンSRの併用を比較した臨床試験の結果が報告されている。著者によれば、「このコホート研究の結果は、シタロプラムおよびブプロピオンSRの併用が単剤療法に切り替えた場合よりも効果的であることを示している」。
【0020】
特許文献21には、ニューロンのモノアミン再取り込みの阻害によって改善した障害を治療するためのブプロピオン代謝産物が開示されている。ブプロピオン代謝産物は、薬学的活性化合物、例えばSSRI、5-HT3阻害剤またはニコチンとともに補助的に投与することができる。
【特許文献1】米国再発行特許発明第34,712号明細書
【特許文献2】米国特許第6,566,540号明細書
【特許文献3】国際公開第03/000672号パンフレット
【特許文献4】国際公開第03/006449号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/051861パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/083197パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/03694パンフレット
【特許文献8】国際公開第02/087566パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/22941号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2004/058299号パンフレット
【特許文献11】米国再発行特許発明第33,994号明細書
【特許文献12】米国特許第5,358,970号明細書
【特許文献13】米国特許第5,763,493号明細書
【特許文献14】米国特許第5,731,000号明細書
【特許文献15】米国特許第5,427,798号明細書
【特許文献16】米国特許第6,096,341号明細書
【特許文献17】米国特許第6,143,327号明細書
【特許文献18】米国特許第6,096,341号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2003/0161874号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2005/0147678号明細書
【特許文献21】米国特許第6,342,496号明細書
【非特許文献1】DeVane, J. Clin. Psychiatry 2003, 64 (suppl. 18):14-19
【非特許文献2】Gerner et al, Biol. Psychiatry, 1998, 43:101S, abstract 336
【非特許文献3】Kennedy et al J. Clin. Psychiatry, 2002, 63: 181-186
【非特許文献4】Gerner et al, Biol. Psychiatry, 1998, 43:99S, abstract 329
【非特許文献5】Ashton et al., J. Clin. Psychiatry, 1998, 59(3):112-115
【非特許文献6】Gitlin et ah, J. Sex & Marital Therapy 2002, 28:131-138
【非特許文献7】Sturpe et al., J. Family Practice August 2002, 51(8):1681
【非特許文献8】Fava et al, Psychiatr. Clin. North Am., 1996, 19(2): 179-200
【非特許文献9】Fava et al, Ann. Clin. Psychiatry, 2003, 15(1): 17-22
【非特許文献10】Lam et al, J. Clin. Psychiatry, 2004, 65:337-340
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来の製剤よりも副作用が少なく、治療抵抗性の患者に有効な、中枢神経系障害治療用の1日1回用製剤(once-a-day formulations)が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、エスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)およびブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)を含有する、安定な経口剤形に関する。好ましくは、前記経口剤形は1日1回用製剤であり、すなわち、1日中(24時間)にわたって患者に治療効果を付与するために1日に1回の投与のみが必要である。経口剤形におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の量は、約50〜約450 mg、より好ましくは約75〜約225 mg(塩酸ブプロピオンと同一のモル重量に基づいて計算される)の範囲である(例えば、75、150または225 mg)。経口剤形におけるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の量は、好ましくは約2.5〜約40 mgエスシタロプラム、より好ましくは約2.5〜約20 mg(エスシタロプラム遊離塩基と同一のモル重量に基づいて計算)の範囲である(例えば、2.5、5、10または20 mg)。1つの好ましい実施態様において、経口剤形は、4 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩と150 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とを含む。経口剤形は、各活性成分の即時放出または調節された放出を提供することができる。
【0023】
経口剤形におけるブプロピオンおよびエスシタロプラムは物理的に隔たれているのが好ましい。本発明者等は、予想外なことに、臭化水素酸エスシタロプラムおよびシュウ酸エスシタロプラムの慣用の製剤が保管条件下で分解することを発見した。特に、市販の製剤において約12ヶ月まで安定なシュウ酸エスシタロプラム は、塩酸ブプロピオンと密に接触させて保管するとより急速に著しく分解する。両者が密に接触している場合には、40℃および75%の相対湿度での保管の1ヶ月後に、各々の有効性が10%減少することが見出された。エスシタロプラムおよびブプロピオンは、各成分に対して離れた別個の剤形領域(例えば、異なる層)を与えることによって隔てさせることができる。あるいは、剤形は、複数個のエスシタロプラム錠剤またはビーズ、および複数個のブプロピオン錠剤またはビーズを含むこともできる(この場合には、エスシタロプラム錠剤/ビーズおよびブプロピオン錠剤/ビーズの一方または両方がコーティングされる)。
【0024】
好ましくは、前記経口剤形は、(1)40℃および75%の相対湿度での6週間の保管後において、少なくとも約80重量%が分解されないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の初期量と比較して)、(2)40℃および75%の相対湿度での6週間の保管後において少なくとも約80重量%が分解されないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩、あるいは両方を含む。前記経口剤形は、より好ましくは、同条件下で6週間保管した後に、少なくとも約90重量%、さらに好ましくは95重量%の分解されていないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および/または分解されていないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する。
【0025】
さらに別の好ましい実施態様において、前記経口剤形は、(1)40℃および75%の相対湿度での1、3または6ヶ月間の保管後において少なくとも約90重量%が分解されないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の初期量と比較して)、(2)40℃および75%の相対湿度での1、3または6ヶ月間の保管後において少なくとも約90重量%が分解されないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩、あるいは両方を含む。前記経口剤形は、より好ましくは、同条件下で1、3または6ヶ月間保管した後に、少なくとも95重量%の分解されていないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および/または分解されていないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する。
【0026】
別の好ましい実施態様において、前記経口剤形は、(1)25℃および60%の相対湿度での6ヶ月、9ヶ月または1年間の保管後において少なくとも約80重量%が分解されないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の初期量と比較して)、(2)25℃および75%の相対湿度での6ヶ月、9ヶ月または1年間の保管後において少なくとも約80重量%が分解されないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩、あるいは両方を含む。前記経口剤形は、より好ましくは、同条件下で6ヶ月、9ヶ月または1年間保管した後に、少なくとも90重量%、さらに好ましくは95重量%の分解されていないブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩および/または分解されていないエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する。
【0027】
別の実施態様においては、前記経口剤形が、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の調節された放出を提供する。好ましくは、経口剤形が、対象者による摂取において、以下のうちの1つまたはそれ以上を提供する:
(a)同量のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤よりも統計学的に有意に低い、血漿中におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩(好ましくは塩酸ブプロピオン)に関する平均変動指数、および
(b)1日の間に6時間またはそれ以上毎に1錠投与されるブプロピオンの同一形態の3つの即放性錠剤と実質的に同等なブプロピオンのバイオアベイラビリティー(前記経口剤形によって得られるブプロピオンのAUCは、3つの即放性錠剤によって得られるAUCの75%〜130%である。)。
【0028】
さらに別の実施態様において、約30%未満のブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)(経口剤形におけるブプロピオン100%を基準として)が投与後2時間以内に放出され、約60%を超えるエスシタロプラムが投与後12時間で放出される。
【0029】
さらに別の実施態様において、経口剤形は、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩のパルス型放出または持続性放出(遅延放出および徐放を含む)を提供する。1つの実施態様において、経口剤形は、患者による摂取において、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩を2回またはそれ以上のパルスで、好ましくは3回のパルスで放出する。各パルスは、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が経口剤形から実質的に放出されないパルス放出間の時間間隔で、投与後の異なる時間に放出される。各パルスは、異なる条件下、例えば、異なる時間および/または異なるpHで放出することができる。例えば、1つの実施態様において、ブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)は摂取の約2時間までに遅延し、例えばブプロピオンの20%未満が放出され、そして、摂取後約2〜約12時間において60%以上が放出される。
【0030】
さらに別の実施態様において、経口剤形はブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)の放出調節ビーズまたは錠剤を含むことにより、その調節された放出を提供する。該ビーズおよび/または錠剤は、ブプロピオンの単相または多相的放出を提供することができる。1つの実施態様において、前記ビーズおよび/または錠剤は、放出調節ブプロピオンコアおよび1つまたはそれ以上のブプロピオン放出層を含む。例えば、前記ビーズおよび/または錠剤は、即放性ブプロピオン層および放出調節ブプロピオンコアを有することができる。1つの実施態様において、前記錠剤は、約4.5〜約15 mmの範囲の直径を有する。前記ビーズおよび/または錠剤はカプセルに組み込むことができる。
【0031】
1つの実施態様において、経口剤形は、少なくとも2つの異なる放出プロファイルを有するブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)のビーズおよび/または錠剤を含む。例えば、経口剤形は、ブプロピオン即放性ビーズおよび/または錠剤とブプロピオン放出調節ビーズおよび/または錠剤とを含むことができる。
【0032】
さらに別の実施態様において、経口剤形は、USPパドル法によって(a)37℃で900 mlの水において75 rpm、または(b)37℃で900 mlの0.1 N HClにおいて100 rpmで測定した場合に、(i)2時間後に約30重量%未満のブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)が放出され、(ii)8時間後に約40%〜約90%が放出され、そして(iii)24時間後に70%以上が放出されるようなインビトロ溶出プロファイルを有する。
【0033】
上述の経口剤形は、エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の即時放出または調節された放出を提供することができる。シュウ酸エスシタロプラムの即時放出用剤形は、好ましくは、約1〜約8時間の範囲の、さらに好ましくは約5時間のTmaxを提供する。シュウ酸エスシタロプラムの調節された放出が、好ましくは、約4〜約24時間のTmaxを提供する。
【0034】
好ましい実施態様において、経口剤形は、対象者による摂取において、以下のうちの少なくとも1つを提供する:
(a)同量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)を含有する即放性錠剤の約50〜約85%である、エスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)に関する平均Cmax
(b)約4〜約12時間のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)に関するTmax
(c)同量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)を含有する即放性錠剤と実質的に同等のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)に関するバイオアベイラビリティー(例えば、前記経口剤形によって得られるエスシタロプラムのAUCは、即放性錠剤によって得られるAUCの75%〜130%である)、
(d)同量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)を含有する即放性錠剤よりも統計学的に有意に低い、血漿中におけるエスシタロプラムに関する平均変動指数(CmaxとCminとの間の差)、
(e)同量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)を含有する即放性錠剤と実質的に同等のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)に関する平均最低血中濃度(Cmin)、および
(f)同量のエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)を含有する即放性錠剤により得られる血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の約-20%〜約+30%の範囲内であるエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)に関する血中濃度-時間曲線下面積(AUC)。さらに好ましい実施態様において、例えば、8 mgの経口剤形は約200〜約350 ng・h/mlのシュウ酸エスシタロプラムに関するAUC0-24を提供する。比較的即放性である錠剤は、好ましくは4および8 mg、および5、10または20 mgシュウ酸エスシタロプラム錠剤であり、これは、米国食品医薬品局に承認された新薬申請番号21-323の対象である。
【0035】
即放性剤形は、好ましくは、80%を超える薬剤が約30分で放出されるようなインビトロでのエスシタロプラム溶出プロファイル(37℃において、900 mlの0.1 N HCl中、100 rpmでのUSPバスケット法によって測定した場合に)を有する。前記放出剤形は、好ましくは、2時間以内に約10重量%〜約50重量%のエスシタロプラムが放出され、そして8時間後に、約70重量%を超えるエスシタロプラムが放出されるようなインビトロでのエスシタロプラム溶出プロファイル(37℃において、900 mlの0.1 N HCl中、100 rpmでのUSPバスケット法によって測定した場合に)を有する。
【0036】
好ましい実施態様において、例えば約8 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む経口剤形は、患者による摂取において、約2〜約25 ng/ml、より好ましくは約3〜約15 ng/mlのエスシタロプラム平均最高血中濃度(Cmax)を提供する。
【0037】
さらに別の実施態様において、経口剤形は、エスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)の放出調節ビーズまたは錠剤を含むことにより、その調節された放出を提供する。該ビーズおよび/または錠剤は、エスシタロプラムの単相または多相的放出を提供することができる。1つの実施態様において、ビーズおよび/または錠剤は、放出調節エスシタロプラムコアおよび1層またはそれ以上のエスシタロプラム放出層を含む。例えば、ビーズおよび/または錠剤は、即放性エスシタロプラム層および放出調節エスシタロプラムコアを有することができる。1つの実施態様において、錠剤は、約4.5〜約15 mmの範囲の直径を有する。前記ビーズおよび/または錠剤はカプセルに組み込むこともできる。
【0038】
1つの実施態様において、経口剤形は、少なくとも2つの異なる放出プロファイルを有するエスシタロプラム(またはその薬学的に許容される塩)のビーズおよび/または錠剤を含む。例えば、経口剤形は、エスシタロプラム即放性ビーズおよび/または錠剤、ならびにエスシタロプラム放出調節ビーズおよび/または錠剤を含むことができる。
【0039】
さらに別の実施態様は、本発明の経口剤形を連日投与することにより、治療を必要とする患者における中枢神経系(CNS)障害(例えば気分障害または不安障害)を治療する方法である。治療できるCNS障害の例には、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、急性ストレス障害、摂食障害(例えば過食症、食欲不振および肥満)、恐怖症、気分変調、月経前症候群、月経前不快気分障害、認知障害、衝動調節障害、注意欠陥過活動性障害および薬物乱用が含まれるが、これらに限定はされない。エスシタロプラムおよびブプロピオンの併用は、慣用のSSRIを用いた初期治療に応答しなかった患者、特に慣用のSSRIを用いた初期治療に応答しなかった大うつ病性障害の患者を効果的に治療することもできる。前記併用はさらに、治療または軽減を必要とする患者における自殺念慮を治療または軽減することができ、脳卒中後の無障害生存を改善する。
【0040】
さらに別の実施態様は、本発明の経口剤形を投与することにより、治療抵抗性うつ病を患っている患者を治療する方法である。
【0041】
本発明の別の実施態様は、ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする、悪心、不眠、傾眠、発汗過多、疲労またはこれらの組み合わせを患っている患者を治療する方法である。該方法には、(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)本発明の経口剤形を用いて患者を治療すること、が含まれる。1つの実施態様において、抗うつ薬は即放性シュウ酸エスシタロプラム製剤である。
【0042】
さらに別の実施態様は、エスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩とブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩との併用以外の抗うつ薬を用いた治療を原因とする性機能障害を患っている患者の性機能障害を治療する方法である。性機能障害は射精障害、無オルガズム症および/または性欲減退であり得る。該方法には、(a)前記抗うつ薬での治療を中止すること;および(b)本発明の経口剤形を用いて患者を治療すること、が含まれる。1つの実施態様において、経口剤形は、ブプロピオン(またはその薬学的に許容される塩)の第一の放出が摂取の約2時間まで遅延する、例えば、約2〜約12時間でブプロピオンの20%未満が、そしてブプロピオンの60%以上が放出されるようなブプロピオンの放出を提供する。場合により、塩酸ブプロピオンが摂取の約4〜24時間後に放出(>80 %)されるようにパルスが放出され得る。
【0043】
<図面の簡単な説明>
図1は、実施例1に記載されるエスシタロプラムコアビーズ(200 mg/g)、および放出調節ビーズ(194.1 mg/gおよび188.7 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションを示す。
【0044】
図2は、実施例3に記載されるブプロピオンコアビーズ(600 mg/g)、および放出調節ビーズ(545.5 mg/gおよび500 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションを示す。
【0045】
図3は、USPバスケット法によって0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合の、実施例5の表14に記載される3つのカプセルのブプロピオン溶出プロファイルを示す。
【0046】
図4は、USPバスケット法によって0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合の、(1)即放性ビーズおよび放出調節ビーズを混合すること、および(2)実施例5の表14に記載される即放性および放出調節からなる単一ビーズ、により製造されたパルス型エスシタロプラムビーズの溶出プロファイルを示す。
【0047】
<発明の詳細な説明>
定義
本明細書において使用される場合に、「エスシタロプラム」という語句には、好ましくはそのR-エナンチオマーを3、2、1、0.5または0.2重量%未満(l-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-l-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリルの全重量100%を基準として)含有するl-[3-(ジメチル-アミノ)プロピル]-l-(p-フルオロフェニル)-5-フタランカルボニトリル、すなわち、97、98、99、99.5または99.8%(重量%)のエナンチオマー純度を有するS-シタロプラムが含まれる。エスシタロプラムの薬学的に許容される塩には、限定はされないが、有機および無機酸により形成される酸付加塩が含まれる。好適な有機酸の例としては、限定はされないが、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、シュウ酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、桂皮酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、イタコン酸、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸およびテオフィリン酢酸、および8-ハロテオフィリン、例えば8-ブロモテオフィリンが挙げられる。好適な無機酸の例としては、限定はされないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸が挙げられる。エスシタロプラムの好ましい薬学的に許容される塩には、限定はされないが、シュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムが含まれる。「エスシタロプラム」という語句にはまた、エスシタロプラムおよびその薬学的に許容される塩の多形体、水和物、溶媒化合物および非晶形が含まれる。エスシタロプラムおよびその薬学的に許容される塩は、特許文献1、特許文献2、および特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6(これらは参照することによってそれぞれ全体として本明細書に組み込まれる)に記載されるように製造することができる。例えば、国際公開第03/011278号パンフレット、および米国特許出願公開第2004/0167209号明細書、および米国特許出願第10/851,763号明細書および米国特許出願第10/948,594号明細書(これらは全て参照することによって本明細書に組み込まれる)に記載されているようなシュウ酸エスシタロプラムおよび臭化水素酸エスシタロプラムの結晶もまた使用することができる。本明細書で表される比較用のエスシタロプラム「即放性」錠剤は、好ましくは米国食品医薬品局に承認された等量(シュウ酸塩としての5、10および20 mgのエスシタロプラム)の新薬申請番号21-323の錠剤である。
【0048】
特に言及しない限り、エスシタロプラム塩の重量値は全て、エスシタロプラム遊離塩基に相当する重量として示す。例えば、4 mgのシュウ酸エスシタロプラムは、4 mgエスシタロプラム遊離塩基と同一モルのシュウ酸エスシタロプラムの量を表す。
【0049】
「ブプロピオン」という語句は、(±)-l-(3-クロロフェニル)-2-[(l,l-ジメチルエチル)アミノ]-l-プロパノンを表す。ブプロピオンの薬学的に許容される塩には、限定はされないが、有機または無機酸により形成される酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、メシル酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩が含まれる。「ブプロピオン」という語句にはまた、ブプロピオンおよびその薬学的に許容される塩の多形体、水和物、溶媒化合物および非晶形が含まれる。好ましいブプロピオンの薬学的に許容される塩は塩酸ブプロピオンである。本明細書で表される比較用のブプロピオン「即放性」錠剤は、好ましくは等量(50、75および100 mgの塩酸ブプロピオン)の新薬申請番号018-644の錠剤である。
【0050】
「有効量」は、状態、障害または状況を治療するために哺乳類に投与する場合に、このような治療を達成するのに十分な、活性成分および活性成分の組み合わせの量を意味する。「有効量」は、活性成分、治療される状態、障害または状況およびその重篤度、ならびに治療される哺乳類の年齢、体重、身体状態および応答性に応じて変わり得るものである。本発明の1つの実施態様において、エスシタロプラムの有効量は、中枢神経系(CNS)障害、例えば、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害またはパニック発作を治療するのに有効な量である。
【0051】
「薬学的に許容される」という語句は、通常、動物またはヒトでのインビボでの使用において生物学的にまたは薬理的に適合することを意味し、好ましくは、動物、特にヒトにおける使用に関して、連邦の規制当局または州政府によって承認されていること、または米国薬局方もしくはその他の一般的に認知される薬局方に記載されていることを意味する。
【0052】
本明細書において使用される場合に、「治療する」という語句には以下のうちの1つまたはそれ以上が含まれる:
(a)例えば中枢神経系(CNS)障害(例えば、気分障害、大うつ病性障害、全般性不安障害、社会不安障害、心的外傷後ストレス障害、およびパニック発作を含むパニック発作)を含む、対象者における障害の少なくとも1つの症状を軽減または緩和すること;
(b)限定はされないが、特定の刺激(重圧、組織障害および寒い気温)に対して応答する対象者を含む、対象者が直面する障害の発現の強度および/または期間を軽減または緩和すること;および
(c)発病(障害の臨床症状発現前の期間)を抑制すること、遅らせること、および/または障害を発現または悪化させるリスクを減少すること。
【0053】
「パニック発作」という語句には、限定はされないが、パニック発作が生じる恐慌性障害, 特定恐怖症, 社会恐怖症および広場恐怖症を含むパニック発作に関連するいずれの疾患も含まれる。これらの疾患はさらに、精神障害の診断と統計マニュアル第4版本文改訂版(DSM- IV-TR)(A. Frances(ed.)、米国精神医学会、ワシントン、2000)において定義されている。パニック発作は、多くの場合は死が差し迫っている感じを伴って、強烈な不安、恐れまたは恐怖が突然発現する個別的な期間である。発作の間は、動悸、発汗、振せん、息切れの感覚、窒息感、胸の痛みまたは不快、悪心、目眩感、非現実感、自制心を失うことへのもしくは気が狂うことへの恐れ、死への恐れ、感覚異常および悪寒または顔面紅潮が現れる。
【0054】
恐慌性障害は、パニック発作が不意に頻発し、継続的な不安が存在することによって特徴付けられる。広場恐怖症は、逃げることが困難なまたはパニック発作が生じた場合に助けられないような場所または状況に関する、あるいはこれらを避けようとする不安である。特定恐怖症および社会恐怖症(以前はともに単に恐怖症としていた)は、特定の対象物もしくは状況(飛行機、高所、動物、血を見ること)または社会的に行動する状況が存在することまたは予測されることに対しての過剰または不合理である、著しく継続的な恐れによって特徴付けられる。
【0055】
パニック発作が起こる障害は、発作の発生の予測可能性によって互いに区別され、例えば、恐慌性障害では発作は予測不能であり特定の事象と関連しないが、一方で、特定恐怖症では発作は特定の刺激が引き金となる。
【0056】
「恐慌性障害の治療」という表現には、パニック発作の数の減少または予防、および/またはパニック発作の重症度の軽減が含まれ得る。
【0057】
本明細書において使用される場合に、「気分障害」という語句には、DSM-IV-TRにおいて特定される気分障害(抑うつ障害、例えば大うつ病性障害を含むが、これらに限定はされない)が含まれる。
【0058】
本明細書において使用される場合に、「不安障害」という語句には、DSM-IV-TRにおいて特定される不安障害(広場恐怖症を伴わない恐慌性障害、広場恐怖症を伴う恐慌性障害、社会恐怖症(以前は社会不安障害として知られていた)、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害および全般性不安障害)が含まれる。
【0059】
「治療抵抗性うつ病」を患っている患者には、(1)最低でも6週間継続して投与された標準用量の抗うつ薬(例えばSSRI)に応答する(すなわち、二重盲検試験においてプラセボよりも有意に優れている)ことができない患者、および(2)最低でも12週間継続して投与された標準用量の抗うつ薬(例えばSSRI)(単剤療法)に応答することができない患者、が含まれる。患者のうつ病が抗うつ薬に対して治療抵抗性であるかどうかを決定するための1つの基準は、1(著名改善:very much improved)または2(かなり改善:much improved)の臨床全般印象-改善度(CGI-I)スコアが、6、8または12週の治験の終了までに達成されるかどうかである。CGI-I尺度は、「Guy, W. (ed.): ECDEU Assessment Manual for Psvchopharmacology. Revised, DHEW Pub. No. (ADM) 76-338, Rockville, MD, National Institute of Mental Health, 1976」に定義されている。
【0060】
本明細書において使用される場合に、「徐放」、「放出調節」および「徐放または放出調節」という語句は長期間にわたる活性成分の放出を表し、これにより、即放性製剤と比較した場合の最高血中濃度の低下およびTmaxの延長が得られる。これらの語句にはまた、一連の即放性パルスを介した期間にわたっての放出も含まれる。100 mgのWellbutrin(R) 錠剤(即放性塩酸ブプロピオン錠剤)に関する薬物動態プロファイルは、投与後約1〜2時間での最高血中濃度を示す。20 mgのシュウ酸エスシタロプラム錠剤(即放性錠剤)に関する薬物動態プロファイルは、約5時間で最高血中濃度を示す(「Physician's Desk Reference 2005, Thomson Healthcare; 59th ed. 2004」)。
【0061】
「パルス投与(pulsatile)」は、複数の薬物用量が間隙を有する時間間隔で放出されることを意味する。
【0062】
「バイオアベイラビリティー」という語句は、活性成分または活性部分、例えばエスシタロプラムが薬剤製品から吸収され、体系的に利用可能になる速度および程度を表す。
【0063】
「約」または「およそ」という語句は、当業者によって決定される特定の値に関して許容することができる誤差範囲内を意味し、それは1つにはその値が測定または決定される方法に依存する(すなわち測定システムの制約)。例えば「約」は、当技術分野の慣例によれば、1(またはそれ以上の)標準偏差以内を意味しうる。あるいは、組成物に関して「約」は10%まで、好ましくは5%までの範囲を意味することができる。
【0064】
ブプロピオンおよびエスシタロプラムの併用
経口剤形には、好ましくは、約75、150もしくは225 mgの塩酸ブプロピオンおよび約2.5、4、5、10、15もしくは20 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(例えばシュウ酸エスシタロプラムまたは臭化水素酸エスシタロプラム)が含まれる。別の好ましい実施態様において、経口剤形には、好ましくは約75、150もしくは300 mgの塩酸ブプロピオンおよび約4、8、12、16または24 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩が含まれる。
【0065】
経口剤形における各成分の好ましい量は以下の表に示すとおりであるが、これに限定はされない。
【0066】
【表1】

エスシタロプラムおよびブプロピオンの両方を含む単一の剤形は、好ましくは、エスシタロプラムおよびブプロピオンが互いに接触しないように製剤化される。
【0067】
放出調節製剤
ブプロピオンおよび/またはエスシタロプラムを含む経口剤形は、好ましくは、ブプロピオンの調節された放出およびエスシタロプラムの即時放出および/または調節された放出を提供するように製剤化することができる。ブプロピオン、エスシタロプラムまたは両者に関する放出調節プロファイルは、放出遅延および放出持続を含む徐放性製剤、およびパルス型製剤によって達成することができる。
【0068】
パルス型製剤(Pulsatile Formulations)
パルス性放出プロファイルは、2個またはそれ以上の薬剤含有投薬単位を含み、閉じられている剤形、例えば、密閉されたカプセル剤または錠剤を用いて達成することができる。該剤形は、それぞれが異なる薬剤放出プロファイルを有する1、2、3または4種またはそれ以上のタイプの投薬単位を含むことができる。各投薬単位によって、ブプロピオンおよび/またはエスシタロプラムの多相的放出が得られる。
【0069】
好ましくは、前記剤形には、少なくとも2種のタイプの投薬単位が含まれ、より好ましくは、2種または3種のタイプの投薬単位が含まれる。例えば、1つの実施態様においては、剤形の摂取に続いて実質上直ちに、第一のタイプの投薬単位が薬剤を放出し、第二のタイプが摂取後およそ1〜8時間後に薬剤を放出し、そして随意的な第三のタイプが摂取後およそ2〜24時間後に薬剤を放出する。
【0070】
別の実施態様において、約20〜60%のエスシタロプラムおよび約10〜50%のブプロピオンが第一のパルスで放出される。ブプロピオンおよび残りのエスシタロプラム(任意)の放出は、第一のパルス後の1回またはそれ以上のパルスにおいて起こる。パルスの数および放出される薬剤の量により、好ましくは、Tmaxがエスシタロプラムに関しては約4〜約24時間に、そしてブプロピオンに関しては約4〜約12時間になる。
【0071】
各投薬単位は、例えば、錠剤(例えば、圧縮されたまたは成形された)、ビーズまたは粒子であることができる。あるいは、投薬単位は、剤形(例えば、多層錠)における異なる層であってもよい。好適なパルス投与系は米国特許第6,217,904号明細書、米国特許第6,555,136号明細書、米国特許第6,793,936号明細書、米国特許第6,627,223号明細書、米国特許第6,372,254号明細書、米国特許第6,730,321号明細書、米国特許第6,500,457号明細書、米国特許第4,723,958号明細書、米国特許第5,840,329号明細書、米国特許第5,508,040号明細書および米国特許第5,472,708号明細書、米国特許出願公開第2003-124196号明細書、米国特許出願公開第2004-028729号明細書および米国特許出願公開第2003-0133978号明細書(これらの開示事項は参照することにより全体として本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0072】
錠剤投薬単位は任意のサイズでよい。1つの好ましい実施態様において、錠剤は約4.5〜約15 mmの範囲の外径を有する。1つの実施態様において、剤形(例えばカプセル剤)は2または3個の錠剤を含む。
【0073】
通常、ビーズ投薬単位は不活性支持体を、そこにコーティングされる薬剤および/または薬剤含有コアとともに含む。不活性支持体は、例えば、糖または微結晶性セルロースであることができる。薬剤は、当業者に公知の方法によって不活性支持体にコーティングすることができる。
【0074】
個々の投薬単位(例えば、ビーズおよび粒子)は、当業者に公知の方法によって、1つの錠剤またはカプセル剤に成形または圧縮することができる。
【0075】
徐放性製剤
剤形に関する徐放プロファイルは、コーティングにより、および/または上述のビーズ、粒子、および剤形中における投薬単位としての錠剤の使用により達成することができる。
【0076】
投薬単位
当業者であれば理解でき、そして関連する文書および文献に記載されるように、薬剤含有錠剤または種々の薬剤放出プロファイルを付与するその他の投薬単位の製造には、多くの方法を利用することができる。このような方法には、薬剤または薬剤含有調合物をコーティングすること、薬剤の粒子径を増加させること、薬剤をマトリックス中に置くこと、そして適当な錯化剤を用いて薬剤の錯体を形成させることが含まれる。
【0077】
パルス型製剤および徐放性製剤のための放出調節投薬単位は、例えば、薬剤または薬剤含有調合物を1種またはそれ以上の膜コーティング材料、例えば1種またはそれ以上のポリマー系材料でコーティングすることにより製造することができる。放出遅延投薬単位を得るためにコーティングを使用する場合に、特に好ましいコーティング材料には、限定はされないが生体内で分解でき、段階的に加水分解され、そして/またはpH依存的に溶解可能なポリマーが含まれる。「コーティング重量」または投薬単位あたりのコーティング材料の相対量、およびポリマーのタイプが、通常、摂取と薬剤放出との間の時間間隔を決定付ける。
【0078】
放出遅延を達成するための好適な膜コーティング材料には、限定はされないが、以下が含まれる:セルロース系ポリマー、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースエステル-エーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレートのアルカリ塩、セルロースアセテートフタレートのアルカリ土類金属塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム;好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル等から形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルのコポリマー(例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドのターポリマー(ニュージャージー州ピスカタウェイのRohm America L.L.C.からEudragit(R)として入手可能));ビニルポリマーおよびコポリマー、例えばポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、およびエチレンビニルアセテートコポリマー;およびセラック、アンモニア化セラック、セラック-アセチルアルコールおよびセラックn-ブチルステアレート。
【0079】
場合により、錠剤、ビーズまたは粒子は結腸において薬物の放出を行うのが望ましく、この場合には、結腸内で薬剤放出が可能なポリマー系材料または他の材料が使用される。これらは、前記のリストから選択することができ、または医薬製剤およびドラッグデリバリーの分野において公知である他の材料を使用することができる。例えば、ヒドロコロイドガム、例えば、グアーガム、ローカストガム、ビーンガム、ガムトラガラントおよびカラヤガムが、結腸へのデリバリーに効果的であり得る(例えば米国特許第5,656,294号明細書参照)。結腸へのドラッグデリバリーを行うのに好適な他の材料には、多糖類、ムコ多糖類、および関連化合物、例えば、ペクチン、アラビノガラクトース、キトサン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナンおよびキシランが含まれる。
【0080】
所望のパルス投与プロファイルは、複数の錠剤を含む剤形によって達成することができる。第一の錠剤がコーティング材料をほとんどまたは全く伴わずに供され、第二の錠剤がある程度のコーティング材料を伴って供され、第三の錠剤がさらなるコーティング材料等を伴って供される。同様に、薬剤含有投薬単位がビーズまたは粒子であるカプセル化剤形に関しては、ビーズまたは粒子の第一のフラクションが機能性コーティング材料をほとんどまたは全く伴わずに供され、第二のフラクションがある程度の徐放性コーティング材料を伴って供され、第三のフラクションがさらなるコーティング材料等を伴って供される。例えば、剤形が3種の錠剤(または、同様に、3つのタイプの薬剤含有粒子またはビーズ)を含有する場合には、第一の錠剤(薬剤を実質的に直ちに放出する)は約5%未満(好ましくは約3%未満)(錠剤の全重量を基準として)の全コーティング重量を有することができ、第二の錠剤は約5%〜50%(好ましくは5%〜40%)の範囲の全コーティング重量を有することができ、そして、第三の錠剤(もし存在するなら)は約25%〜60%(好ましくは25%〜50%)の範囲の全コーティング重量を有することができる。あるコーティング材料に対して好ましいコーティング重量は、当業者であれば、異なる量の種々のコーティング材料を用いて製造した投薬単位に関して個々の放出プロファイルを評価することによって容易に決定することができる。
【0081】
あるいは、放出遅延投薬単位、例えば錠剤、ビーズまたは粒子は、放出遅延特性を付与するポリマーコーティングを用いることによって製剤化することができる。不溶性プラスチックマトリックスは、例えば、塩化ポリビニルまたはポリエチレンを含むことができる。放出遅延投薬単位用のマトリックスを得るために有用な親水性ポリマーには、限定はされないが、適当なコーティング材料として上述したものが含まれる。粒子混合物は、錠剤に圧縮するかまたは個々の薬剤含有粒子に加工することができる。
【0082】
個々の投薬単位は、着色コーティングを施して提供することができ、これは、対応する放出遅延プロファイルを有する錠剤またはビーズまたは粒子フラクションの同定に使用される単一の色を有する。これは例えば、青色コーティングを即放性錠剤またはビーズまたは粒子フラクション用に使用でき、赤色コーティングを「中程度」の放出錠剤またはビーズまたは粒子フラクション用に使用できる、ということである。この方法では、製造の間の間違いを容易に回避することができる。色は、コーティング製造時に、薬学的に許容される着色剤をコーティングに組み入れることによって導入することができる。着色剤は天然または合成のいずれのものでもよい。天然着色剤には、限定はされないが、クロロフィル、anattenes、ベータ-カロチン、アリザリン、インジゴ、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、カルミン酸および6,6'-ジブロモインジゴのような顔料が含まれる。合成着色剤には、限定はされないが、酸性染料および塩基性染料の両者(例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、オキサジン類、チアジン類、ピラゾロン類、キサンテン類、インジゴイド類、アントラキノン類、アクリジン類、ローズアニリン類、フタレイン類およびキノリン類)を含む染料が含まれる。
【0083】
カプセル化錠剤に関しては、カプセル中におけるそれぞれ個々の錠剤の重量は、通常、約50 mg〜約750 mgの範囲、好ましくは約50 mg〜約600 mg、より好ましくは約60 mg〜約450 mgの範囲の範囲にある。個々の錠剤は、当業者に公知の方法によって製造することができる。本明細書における錠剤を形成させるのに好ましい方法は、粉状、結晶質もしくは粒状薬剤含有調合物の、単独でのまたは希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤または他の賦形剤と組み合わせての直接圧縮によるものである。圧縮した錠剤はまた、湿式造粒法または乾式造粒法によって製造することもできる。錠剤はまた、適当な水溶性滑沢剤を含む湿った材料とともに出発して、圧縮よりもむしろ成形することもできる。薬剤含有粒子またはビーズはまた、当業者に公知の方法、例えば流体の分散を用いる方法によって製造することもできる。
【0084】
当業者に公知のコーティング方法および装置を、投薬単位、例えば薬剤含有錠剤、ビーズまたは粒子をコーティングするために使用することができる。例えば、放出遅延コーティング組成物は、コーティングパンまたは流動層コーティング装置を用いて塗布することができる。錠剤、ビーズ、薬剤粒子および放出遅延剤形を製造するための材料、装置および方法については、「Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, eds. Lieberman et al. (New York: Marcel Dekker, Inc., 1989), and Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 6th Ed. (Media, Pa.: Williams & Wilkins, 1995)」に記載されている。
【0085】
個々の薬剤含有投薬単位に存在する任意成分には、限定はされないが、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、界面活性剤および着色剤が含まれる。
【0086】
希釈剤(「増量剤」とも呼ばれる)は通常、圧縮に関して実践的なサイズを得ることができるように錠剤のかさを増加させるために含まれるものである。好適な希釈剤には、第二リン酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、二酸化ケイ素、アルミナ、タルク、微結晶性セルロース、パウダーシュガー、およびこれらの混合物が含まれる。
【0087】
結合剤は、錠剤製剤に粘着性を付与するために使用され、これによって錠剤は圧縮後にも損なわれていない状態を維持する。好適な結合剤には、限定はされないが、デンプン(トウモロコシデンプンおよびα化デンプンが含まれる)、ゼラチン、糖類(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールを含む)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アカシア、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、セルロースおよびVeegum)および合成ポリマー(例えばポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドン)、およびこれらの混合物が含まれる。
【0088】
滑沢剤は、錠剤製造を容易化するために使用される。好適な滑沢剤の例には、限定はされないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびポリエチレンングリコールが含まれる。好ましくは、投薬単位には、約1重量%未満(投薬単位の重量に対して)の滑沢剤が含まれる。
【0089】
崩壊剤は、投与後の錠剤の崩壊または「解体(「breakup」)」を促進するために使用される。適当な崩壊剤には、限定はされないが、デンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、架橋ポリマー、およびこれらの混合物が含まれる。
【0090】
安定剤は、薬剤の分解反応(例えば、加水分解、例えばブプロピオンおよびその薬学的に許容される塩(例えば塩酸ブプロピオン)に関連する酸化反応を含む)を阻害するためまたは遅らせるために使用される。好適な安定剤には、米国特許第5,763,493号明細書、米国特許第5,731,000号明細書、米国特許第5,358,970号明細書に記載されるものが含まれる。安定剤は、有機酸、カルボン酸、アミノ酸の酸性塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物でよい。アミノ酸の酸性塩の例には、限定はされないが、塩酸塩、例えばシステイン塩酸塩、L-システイン塩酸塩、グリシン塩酸塩およびシスチン二塩酸塩が含まれる。他の安定剤の例には、限定はされないが、アスコルビン酸、リンゴ酸、イソアスコルビン酸、クエン酸および酒石酸が含まれる。
【0091】
本発明の1つの実施態様において、ブプロピオンの経口剤形は非有機溶剤を用いて製造することができる。本発明の別の実施態様において、剤形は0.2 %未満のBHT(酸化防止剤)を含む。
【0092】
好適な界面活性剤には、限定はされないが、陰イオン性、陽イオン性、両性および非イオン性界面活性剤が含まれる。好適な陰イオン性界面活性剤には、限定はされないが、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムイオンのような陽イオンとともにカルボキシレート、スルホネートおよびスルフェートイオンを含有するものが含まれる。他の好適な界面活性剤には、限定はされないが、長アルキル鎖スルホネートおよびアルキルアリールスルホネート、例えばナトリウムドデシルベンゼンスルホネート;ジアルキルナトリウムスルホスクシネート、例えばナトリウムビス-(2-エチルヘキシル)-スルホスクシネート;および硫酸アルキル、例えばラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。
【0093】
必要な場合には、錠剤は、非毒性の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤および保存剤を含むこともできる。
【0094】
本明細書において上述したように、1つの実施態様において、個々の薬剤錠剤、ビーズまたは粒子は閉じられたカプセル内に含まれる。カプセル材料は硬くても軟らかくてもよく、当業者であれば理解できるように、通常、無味で、容易に投与され、そして水溶性である化合物、例えばゼラチン、デンプンまたはセルロースを含む。好ましいカプセル材料はゼラチンである。カプセルは好ましくは例えばゼラチンバンドを用いて密閉される。例えば、摂取後短時間で溶出するようなカプセル化医薬を製造するための材料および方法が記載されている「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Easton, Pa.: Mack Publishing Co., 2000)」を参照。
【0095】
剤形
剤形は、1種またはそれ以上の放出調節剤をポリマー系コーティングまたはマトリックスの形態で含むこともできる。剤形はまた、1種またはそれ以上のキャリアー、賦形剤、付着防止剤(anti-adherants)、増量剤、安定剤、結合剤、着色剤、流動促進剤および滑沢剤を含むこともできる。
【0096】
マトリックスの親水性または疎水性に応じて、胃液と接触して、対象が消化状態にあるにも拘らず胃内での保持を促進するために十分な大きさのサイズに膨潤する材料でよい。消化状態は食物摂取によって誘導され、上部胃腸(GI)管の運動パターンの急速かつ顕著な変化を伴って開始する。該変化は、胃が受ける収縮の大きさが減少すること、および、幽門の開口が部分的に閉じた状態へ減少することからなる。結果として、篩別過程によって、液体および小さい粒子が部分的に開いた幽門を通過する一方で、幽門より大きい難消化性粒子が逆戻りし(retropelled)、胃内に留まる。体液がマトリックスを通って移動して活性物質を溶解し、これがマトリックスを通る拡散により放出され、これは同時に放出流を調節する。従って、本発明のこれらの実施態様における放出制御マトリックスは、薬剤の長期放出が腸内におけるより胃内で生じるように、逆戻りすることによって胃内に留まるのに十分な大きさのサイズに膨潤できるものとして選択される。胃内における滞留時間を長くするサイズに膨潤する経口剤形は、米国特許第5,007,790号明細書、米国特許第5,582,837号明細書、米国特許第5,972,389号明細書、国際公開第98/55107号パンフレットおよび国際公開第96/26718号パンフレットに開示されている。この段落で引用される文献はそれぞれ、引用されることによって全体として本明細書に組み込まれる。
【0097】
マトリックスは、不溶性の親水性ポリマー、例えばセルロースエステル、カルボキシビニルエステル、またはアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルからなることができる。体液との接触において、親水性マトリックスが水化され、膨潤し、非常に密なポリマーのネットワークを形成することにより、可溶性の活性成分が拡散する。さらに、マトリックスの膨潤を調節するために、脂質、特にグリセリルエステルを添加することができる。これらの調合物は、造粒、およびその後のポリマー、活性成分および種々の佐剤から形成される混合物の圧縮によって得ることができる。
【0098】
疎水性マトリックスは、高度に無害である天然源の脂質マトリックス物質、例えばミツロウからなることができる。これらの調合物は、造粒、湿式法もしくは溶媒法、およびその後の各成分を高い割合で含む圧縮により得ることができる。
【0099】
通常、膨潤性マトリックスは、水膨潤性の非毒性ポリマー結合剤を含み、水の吸収によって寸法を制限されずに膨潤し、そして薬剤を時間をかけて放出する。この記載に合致するポリマーの例には、限定はされないが、以下が含まれる:限定はされないが、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび微結晶性セルロース多糖、およびその誘導体、ポリアルキレン酸化物、ポリエチレングリコール、キトサン、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンゴム、マレイン酸無水物コポリマー、ポリ(ビニルピロリドン)、デンプンおよびデンプンを基礎とするポリマー、マルトデキストリン、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリウレタンヒドロゲルおよび架橋ポリアクリル酸、およびこれらの誘導体を含む、セルロースポリマー類およびその誘導体。さらなる例(限定を意図するものではない)としては、上記ポリマーのコポリマー(ブロックコポリマーおよびグラフトポリマーを含む)が挙げられる。コポリマーの具体的な例としては、PLURONIC(R)およびTECTONIC(R)が挙げられ、これらはポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーであり、BASF Corporation(Chemicals Div.、ワイアンドット、ミシガン州、USA)から入手可能である。さらなる例としては、一般的に「Super Slurper」として知られ、Illinois Corn Growers Association(ブルーミントン、イリノイ州、USA)から入手することが可能である加水分解デンプンポリアクリロニトリルグラフトコポリマーが挙げられる。
【0100】
マトリックス用に好適な他のポリマーとしては、ポリ(エチレンオキシド)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリ(エチレンオキシド)とヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組み合わせが挙げられる。好ましいポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。1つの実施態様において、放出調節製剤、例えば、24時間放出調節製剤は、約10重量%〜約50重量%、好ましくは約15重量%〜約45重量%の範囲の量でこのようなポリマーを含む。
【0101】
即放性と比較した場合の最高血中濃度到達時間(Tmax)の延長は、インビトロにおける薬剤の溶出・放出速度と関連している。インビトロにおける薬剤の溶出・放出速度は、マトリックスの組成に依存する。異なるセルロースマトリックスを使用することにより、約4時間〜約24時間のうちのどこへでもインビトロの放出速度(約70〜約80%以上の薬剤溶出)を操作することができる。上記製剤は、両薬剤に関して約1〜約35時間、好ましくは約4〜約30時間の範囲の最高血中濃度到達時間(平均Tmax)、および約4〜約24時間において約70〜約80%以上というインビトロ放出速度 を有する。好ましくは、上記製剤は、約30分〜約12時間において約80%以上というエスシタロプラムに関する放出速度を有する。より好ましくは、上記製剤は、使用環境(例えば胃腸管)へ導入した後の最初の1時間以内に約10%〜約40%という放出速度を有し、その後徐放され;そして、より好ましくは、上記製剤は、次の12時間以内に70%以上という放出速度を有する。
【0102】
本発明における錠剤は、慣用の混合、粉砕、および医薬品製剤分野において公知の錠剤化技術によって製造することができる。放出調節錠剤は、例えば、回転式錠剤プレス(rotary tabletting press)に適したパンチおよびダイによる直接圧縮、射出成形もしくは圧縮成形、造粒後の圧縮、あるいは、泥膏の形成および該泥膏の型中への成形または押出物の短い長さへの切り出しによって製造することができる。
【0103】
ラクトース(例えばラクトース一水和物)のような増量剤は、溶出パターンを調節するために使用される。ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルセルロースを使用した場合には、目標である調節された放出よりも溶出速度をさらに遅くすることができる。遅い放出は、形成された疎水性マトリックス錠剤がポリマーの侵食というメカニズムによって薬剤を放出することによるものである。疎水性マトリックスからの侵食は非常に遅いので、易溶性活性成分の溶出速度もまた遅くなる。しかしながら、ラクトースもまた、エスシタロプラムおよびブプロピオン錠剤に関する粉末の流れおよび圧縮性の改善に有用である、重要な増量剤成分である。
【0104】
錠剤を直接圧縮により製造する場合には滑沢剤の添加が有用であり、圧力を緩めた場合に、粉末の流れを促進するために、および錠剤のキャッピング(錠剤の一部が壊れる)を防ぐために重要である。有用な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウムおよび硬化植物油(好ましくはステアリン酸およびパルミチン酸の水素化および精製トリグリセリド)が含まれる。好ましい実施態様において、滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである。24時間放出製剤では、ステアリン酸マグネシウムが好ましくは約0.5重量%〜約3重量%、好ましくは約0.5重量%〜約2重量%の範囲の量で存在する。錠剤硬度、粉末流動性および錠剤摩損度を高めるために、ならびにダイの壁への付着を減少させるために追加の賦形剤を添加することもできる。
【実施例】
【0105】
以下の実施例を用いて本発明を説明するが、これは本発明を限定するものではない。全ての部およびパーセントは、特に言及しない限り重量によるものである。
【0106】
実施例1
エスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズ
表1および2に、それぞれエスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズを製造するための製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。それぞれの放出調節ビーズは、放出調節コーティングでコーティングされたエスシタロプラムコアビーズである。
【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

表3の処方を有するエスシタロプラムコアビーズ(200 mg/g)を製造した。
【0109】
【表4】

ビーズは、表3の成分1〜5を高せん断グラニュレーター(Disona、Fluid Air、シカゴ、イリノイ州)で混合することにより製造することができる。顆粒化された材料を押出機(Niro、Model E- 140、コロンビア、メリーランド州)を用いて押し出し、その後スフェロナイザー(spheronizer)(Niro Model S450、コロンビア、メリーランド州)を用いてビーズに球形化(spheronized)する。ビーズは場合により50℃で最大12時間乾燥する。
【0110】
表3から得られたエスシタロプラムコアビーズを、表4(プロファイルI)または5(プロファイルII)に従って放出調節コーティングでコーティングした。
【0111】
【表5】

【0112】
【表6】

表3のエスシタロプラムコアビーズ(200 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションおよび表4および5の放出調節ビーズの溶出プロファイルのシュミレーションを表1に示す。
【0113】
実施例2
パルス型エスシタロプラムカプセル剤形
実施例1に記載されるエスシタロプラムコアおよび放出調節ビーズは、パルス型放出プロファイルを達成するためにカプセルに充填することができる。例えば、カプセル充填機(MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)を用いて所定の重量のビーズをカプセルに充填することができる。4 mg力価のエスシタロプラムカプセル剤に関して、1カプセルあたりのビーズの量を表6に示す。
【0114】
【表7】

特定の力価を有するビーズを異なる量で含有するカプセル剤は、異なる溶出プロファイルをもたらす。また、多くのビーズ、例えば5、8、10、15、16、20および40 mg(全充填重量による)のビーズを用いることにより、種々の用量に比例した力価がもたらされる。
【0115】
実施例3
ブプロピオンコアおよび放出調節ビーズ
表7および8に、それぞれブプロピオンコアおよび放出調節ビーズを製造するための製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。それぞれの放出調節ビーズは、放出調節コーティングでコーティングされたブプロピオンコアビーズを含む。表9は、ブプロピオンコアビーズ(600 mg/g)に関する製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。
【0116】
【表8】

【0117】
【表9】

【0118】
【表10】

ビーズは、表9の成分1〜5を高せん断グラニュレーター(Disona、Fluid Air、シカゴ、イリノイ州)で混合することにより製造することができる。顆粒化された材料を押出機(Niro、Model E- 140、コロンビア、メリーランド州)を用いて押し出し、その後スフェロナイザー(Niro Model S450、コロンビア、メリーランド州)を用いてビーズに球形化する。ビーズは場合により50℃で最大12時間乾燥する。
【0119】
表9から得られたブプロピオンコアビーズを、表10(プロファイルI)または11(プロファイルII)に従って放出調節コーティングでコーティングした。
【0120】
【表11】

【0121】
【表12】

表9のブプロピオンコアビーズ(600 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションおよび表10および11の放出調節ビーズの溶出プロファイルのシュミレーションを表2に示す。
【0122】
表12A〜12Dは、IR、MRI、MR IIおよびパルス型製剤を製造するための製剤成分および重量パーセントの範囲を示す。
【0123】
ビーズは、成分を高せん断グラニュレーター(Disona、Fluid Air、シカゴ、イリノイ州)で混合することにより製造することができる。顆粒化された材料を押出機(Niro、Model E- 140、コロンビア、メリーランド州)を用いて押し出し、その後スフェロナイザー(Niro Model S450、コロンビア、メリーランド州)を用いてビーズに球形化する。ビーズは場合により50℃で最大12時間乾燥する。その後、ビーズを流動層コーター(fluid bed coater)(Glatt AIR、ラムジー、ニュージャージー州)において25〜30℃でシールコーティングポリマーを用いてコーティングする。
【0124】
【表13】

【0125】
【表14】

放出調節Iビーズは、流動層コーター(Glatt AIR、ラムジー、ニュージャージー州)において25〜30℃で、Eudragit懸濁液を用いてコーティングすることができる。
【0126】
【表15】

放出調節IIビーズを、流動層コーター(Glatt AIR、ラムジー、ニュージャージー州)において30〜40℃で、Eudragit懸濁液を用いてコーティングする。
【0127】
【表16】

カプセル充填機(MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)を用いるカプセル化工程の間に異なるビーズを混合することにより、カプセルを含有する2回パルス型ビーズを製造する。
【0128】
実施例4
パルス型ブプロピオンカプセル剤形
実施例3に記載されるブプロピオンコアおよび放出調節ビーズを、パルス型放出プロファイルを達成するためにカプセルに充填することができる。例えば、カプセル充填機(MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)を用いて所定の重量のビーズをカプセルに充填することができる。150 mg力価のパルス型ブプロピオンカプセル剤に関して、1カプセルあたりのビーズの量を表13に示す。
【0129】
【表17】

特定の力価を有するビーズを異なる量で含有するカプセル剤は、異なる溶出プロファイルをもたらす。また、多くのビーズ、例えば75〜450 mg(全充填重量による)のビーズを用いることにより、種々の用量に比例した力価がもたらされる。
【0130】
実施例5
パルス型エスシタロプラムおよびブプロピオンカプセル剤形
パルス型カプセル剤形は、複数個のエスシタロプラムビーズおよびブプロピオンビーズをカプセルに充填することにより製造される。150 mg力価のブプロピオン/4 mg力価のエスシタロプラムカプセル剤に関するパルス型カプセル剤形を表14に示す。
【0131】
【表18】

所望の溶出・放出プロファイルを満たすように、多数のビーズを組み合わせることができる。ビーズは、カプセル化装置(例えば、MG-2、MG America、フェアフィールド、ニュージャージー州)でビーズブレンド(bead blend)またはマルチプルホッパー(multiple hoppers)を用いて充填することができる。図3および4は、それぞれ表13に示される3つのカプセルのブプロピオンおよびエスシタロプラム溶出速度を示す。両方の図に関する溶出試験は、USPバスケット法に従って0.1 N HClにおいて100 rpmで行った。
【0132】
充填重量を変えることによって、用量に比例した力価を製造することができる。
【0133】
ブプロピオンおよびエスシタロプラムを1つの系(ビーズ)において組み合わせたコアおよび放出調節ビーズに関する製剤は、両分子の分解の影響を受ける。40℃および75%の相対湿度で1ヶ月間保管した場合に、それぞれに関して有効性の10%以上の喪失が見られることが観察された。本発明の製剤は、同一の条件下で優れた安定性を示す。この実施例において使用されるブプロピオンおよびエスシタロプラムの両者に関するビーズは、40℃および75%の相対湿度で1ヶ月間保管した場合に、有効性の10%未満の喪失を、多くの場合には有効性の5%未満の喪失を示す。
【0134】
特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコールが本願において引用されるが、これらの開示は参照されることにより全ての目的に対して全体として本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、実施例1に記載されるエスシタロプラムコアビーズ(200 mg/g)、および放出調節ビーズ(194.1 mg/gおよび188.7 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションを示す。
【図2】図2は、実施例3に記載されるブプロピオンコアビーズ(600 mg/g)、および放出調節ビーズ(545.5 mg/gおよび500 mg/g)の溶出プロファイルのシュミレーションを示す。
【図3】図3は、USPバスケット法によって0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合の、実施例5の表14に記載される3つのカプセルのブプロピオン溶出プロファイルを示す。
【図4】図4は、USPバスケット法によって0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合の、(1)即放性ビーズおよび放出調節ビーズを混合すること、および(2)実施例5の表14に記載される即放性および放出調節からなる単一ビーズ、により製造されたパルス型エスシタロプラムビーズの溶出プロファイルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩とを含む経口剤形。
【請求項2】
ブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩とエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩とが経口剤形中で物理的に隔てられている、請求項1記載の経口剤形。
【請求項3】
経口剤形が約50〜約450 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩(塩酸ブプロピオンと同一のモル重量に基づいて計算される)を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項4】
経口剤形が約75〜約225 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩(塩酸ブプロピオンと同一のモル重量に基づいて計算される)を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項5】
経口剤形が150 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項6】
経口剤形が225 mgのブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項7】
経口剤形が塩酸ブプロピオンを含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項8】
経口剤形が約2.5〜約40 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラム遊離塩基と同一のモル重量に基づいて計算される)を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項9】
経口剤形が2.5 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項10】
経口剤形が4 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項11】
経口剤形が5 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項12】
経口剤形が10 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項13】
経口剤形が20 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項14】
経口剤形がシュウ酸エスシタロプラムを含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項15】
経口剤形がブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の即時放出を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項16】
経口剤形がブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の調節された放出を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項17】
経口剤形がエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の即時放出を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項18】
経口剤形がエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の調節された放出を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項19】
経口剤形が、患者による摂取において、血漿中におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩に関する平均変動指数を同量のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤よりも統計学的に有意に低下させ、そして1日の間に6時間またはそれ以上毎に1錠投与されるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の3つの即放性錠剤と実質的に同等なブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩のバイオアベイラビリティーを提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項20】
約40%未満のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩(剤形におけるブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩100%を基準として)が投与後2時間で放出され、約60%を超えるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩が投与後12時間で放出される、請求項1記載の経口剤形。
【請求項21】
経口剤形がブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩のパルス型放出を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項22】
経口剤形が、少なくとも2つの異なる放出プロファイルを有するブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の放出調節ビーズを含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項23】
経口剤形がブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩の放出調節錠剤を含む、請求項1記載の経口剤形。
【請求項24】
USPパドル法によって37℃で900 mlの水において75 rpmで測定された場合に、(i)2時間後に約20重量%未満のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が放出され、(ii)8時間後に約10%〜約60%が放出され、そして(iii)24時間後に70%以上が放出されるようなインビトロ溶出プロファイルを有する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項25】
USPパドル法によって37℃で900 mlの0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合に、(i)2時間後に約20重量%未満のブプロピオンまたはその薬学的に許容される塩が放出され、(ii)8時間後に約10%〜約60%が放出され、そして(iii)24時間後に70%以上が放出されるようなインビトロ溶出プロファイルを有する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項26】
経口剤形が、患者による摂取において、約4〜約35時間の範囲のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関するTmaxを提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項27】
経口剤形が、患者による摂取において、約5時間のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関するTmaxを提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項28】
経口剤形が、患者による摂取において、以下:
(a)同量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤に関する平均Cmaxの約50〜約85%であるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関する平均Cmax
(b)約1〜約8時間のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関するTmax、および
(c)同量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤と実質的に同等なエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩のバイオアベイラビリティー、
を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項29】
経口剤形が、患者による摂取において、
(a)血漿中におけるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関する平均変動指数を同量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤よりも統計学的に有意に低下させ、
(b)同量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤と実質的に同等なエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩の平均最低血中濃度(Cmin)を提供し、
(c)同量のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩を含有する即放性錠剤により得られる血中濃度-時間曲線下面積(AUC)の約-20%〜約+25%の範囲内であるエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関する血中濃度-時間曲線下面積(AUC)を提供し、または
(d)これらの任意の組み合わせを提供する、
請求項1記載の経口剤形。
【請求項30】
経口剤形が約320〜約400 ng・h/mlのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関するAUC0-24を有する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項31】
USPバスケット法によって37℃で900 mlの0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合に、経口剤形が約30分後に約80重量%以上のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩が放出されるようなインビトロ溶出プロファイルを有する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項32】
USPバスケット法によって37℃で900 mlの0.1 N HClにおいて100 rpmで測定された場合に、経口剤形が(i)2時間後に約10%〜約50重量%のエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩が放出され、そして(ii)8時間後に約60%以上が放出されるようなインビトロ溶出プロファイルを有する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項33】
経口剤形が10 mgのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩(エスシタロプラム遊離塩基と同一のモル重量に基づいて計算される)を含み、そして、患者による摂取において、約1 ng/ml〜約50 ng/mlのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関する平均最高血中濃度(Cmax)を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項34】
経口剤形が、患者による摂取において、約10 ng/ml〜約18 ng/mlのエスシタロプラムまたはその薬学的に許容される塩に関する平均最高血中濃度(Cmax)を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項35】
経口剤形が患者への投与の少なくとも24時間後に治療効果を提供する、請求項1記載の経口剤形。
【請求項36】
請求項1記載の経口剤形を投与することを含む、それを必要とする患者において中枢神経系障害を治療する方法。
【請求項37】
経口剤形が1日1回投与される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
障害が気分障害である、請求項36記載の方法。
【請求項39】
気分障害が大うつ病性障害である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
障害が不安障害である、請求項39記載の方法。
【請求項41】
請求項1記載の経口剤形を投与することを含む、それを必要とする患者において性機能障害を治療する方法。
【請求項42】
性機能障害が射精障害である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
性機能障害が無オルガズム症である、請求項41記載の方法。
【請求項44】
性機能障害が性欲減退である、請求項41記載の方法。
【請求項45】
請求項1記載の経口剤形の有効量を患者に投与することを含む、治療抵抗性うつ病を患っている患者を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−511607(P2009−511607A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535807(P2008−535807)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/060010
【国際公開番号】WO2007/048080
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】