説明

エステル−アミド縮合生成物および粉末コーティングマット化剤

【課題】粉末コーティングのマット化剤として好適な縮合生成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含んでなり、そして更には限定ではないが、エポキシ、エポキシ−ポリエステル、ポリエステル−アクリル、ポリエステル−プリミド、ポリウレタン、およびアクリル粉末コーティングの製造に好適なポリマーおよび架橋体と反応性のある基を含む末端カルボン酸基または他の反応性基を含有する基に50%以上の末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を反応あるいは転化させるように、このヒドロキシアルキルアミド担持エステル−アミドと別な化合物とを反応させることにより製造されるエステル−アミド縮合生成物であり、無機固体、例えばシリカおよびアルミナ、および/またはマット活性化剤との組み合わせを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末コーティング配合物中のマット化剤としての使用に好適な生成物、特に少なくとも1つのエステル−アミド、場合によっては少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基、および少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド以外の反応性官能基を含有する縮合生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末コーティング、特に熱硬化性粉末コーティングは、コーティング業界において急速に成長するセクターの部分である。これらのコーティングは光沢のある外観で知られており、そして揮発性溶剤を含有しないメリットを有する。
【0003】
β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物が表面コーティング用のポリマーおよび架橋剤を製造する目的で特許文献に開示されてきた。水担持コーティングおよび粉末コーティングが特に挙げられている。(特許文献1)はβ−ヒドロキシアルキルアミド化学に基づく光沢のある粉末コーティングを述べている。
【0004】
Rohm & Haasのプリミド(Primid) XL552はβ−ヒドロキシアルキルアミドベースの架橋剤の例である。これは、カルボキシル担持ポリエステルベースの樹脂を硬化して、光沢のある粉末コーティングを製造することにおいて使用され、増大する成功を収めてきた。このような粉末コーティングは屋外使用に概ね意図されている。カルボン酸のジ−エステルと(特許文献1)に開示されているものなどのアミノアルコールとを反応させることにより、プリミドXL552などの化合物を得ることができる。典型的な例はジエタノールアミンまたはジイソプロパノールアミンと反応させたアジピン酸のジメチルエステルである。
【0005】
(特許文献2)は、末端およびペンダントのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有し、そして末端およびペンダントのカルボキシル基も含有するポリマーからコーティングの製造での使用に製造されるポリエステル−アミドベースのコーティングを引用している。水担持コーティングが特に挙げられ、そしてこのポリマーは高温で自己硬化能があると考えられる。このポリマーはポリオールとポリ酸を縮合させることにより得られ、そしてβ−ヒドロキシアルキルアミドの化学がN,N−ビス[2−ヒドロキシアルキル]−2−ヒドロキシエトキシアセトアミドのモノマーとしての使用から生まれる。このポリマーは線状あるいは分岐状であることができる。
【0006】
1つ以上のカルボキシルあるいは酸無水物官能基を担持するポリマーに対するモノマー型架橋剤としてのカルボン酸の飽和あるいは不飽和のモノマー型ジ−エステルとアミノアルコールとの反応生成物に加えて、(特許文献1)は、ペンダントなβ−ヒドロキシアルキルアミド基を架橋剤として含有するポリマーおよびβ−ヒドロキシアルキルアミド基とカルボン酸基の両方を含有する自己硬化性ポリマーを更に開示する。ビニル基を含有するβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物との共重合を行ったアクリレートベースのポリマーが特に議論された。これらの後者の局面に関する特許は、(特許文献3);(特許文献4);および(特許文献5)である。(特許文献6)は、カルボン酸担持のポリエステル樹脂と共に(特許文献1)に示されるタイプの架橋剤により得られる粉末コーティング組成物を述べている。
【0007】
(特許文献7)は、粉末コーティングで使用されるようなカルボン酸担持ポリマーを含む架橋剤として使用するのに、2つ以上の末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有す
る300と15000の間の分子量の線状あるいは分岐した非晶質あるいは半結晶性のコポリエステルを開示している。ヒドロキシ価は10と400mgKOH/gの間である。このポリマーは、ヒドロキシル末端のポリエステルを製造し、カルボン酸のジエステルによりエステル化し、そして引き続いてアミノアルコールと反応させることにより得られる。
【0008】
(特許文献8)は、800g/モル以上の重量平均分子量を有し、少なくとも1つのアミド基がポリマー骨格中にあり、そして少なくとも1つの末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を有する線状あるいは分岐したポリエステル−アミドを述べている。このポリマーをβ−ヒドロキシアルキルアミド基と反応することができる反応性基を含有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーにより全部あるいは一部変成してもよい。ここで、β−ヒドロキシアルキルアミド基と反応することができるただ1つの基を含有するモノマー、オリゴマーまたはポリマー、例えば単官能性カルボン酸を使用することにより、架橋を好ましくは回避する。環状酸無水物とアミノアルコールとを反応させ、引き続いて生成する官能基の間で重縮合させることにより、このポリマーを得てもよい。
【0009】
粉末コーティングにおいて6よりも大きい官能基数を有する反応性ポリマーの以前の使用が劣った外観および劣った膜の性質と通常関連しているために、開示されたポリエステル−アミドが粉末コーティングにおいて良好な流動および膜の性質を示す能力があるということは驚くべきことであるということが(特許文献8)において挙げられている。したがって、この末端β−ヒドロキシアルキルアミド基は50%未満の、好ましくは30%未満の範囲で変成される。
【0010】
(特許文献9)は、(特許文献8)に述べられているものに類似しているが、粉末コーティングで使用されるものなどの酸官能性ポリエステルを硬化する場合、環状酸無水物を放出しない架橋剤として使用されるポリマーを製造するために、ポリカルボン酸とアミノアルコールとを反応させ、続いて重縮合させることを含むポリマーを製造する方法を述べている。
【0011】
上記の参考文献は、主として、光沢のある仕上げを呈する粉末コーティングを改善するように設計され、そしてこれらの配合物を変成して、平坦あるいはマット化仕上げを得ることに対しては大部分触れない化学を述べている。事実、これらの光沢のある対応品の良好な膜の性質を保持するマット粉末コーティングにかなりの関心が存在する。
【0012】
慣用の非粉末コーティングをマット化するために、固体状粒子、例えばシリカ、カーボネートおよびタルクが広く使用される。しかしながら、慣用のコーティングのマット化は、膜形成時に溶剤放出または水担持のコーティングの場合には水の放出により厚さが収縮するコーティング層に依存する。このような溶剤の存在しないことおよびそれに伴う顕著な収縮によって、このアプローチは粉末コーティングのマット化方法として比較的有効でない方法となる。
【0013】
ワックスも慣用のコーティング用のマット化剤で使用され、そして時として粉末コーティングの光沢を低下させるために単独あるいは充填剤と組み合わせて使用されてきた。しかしながら、このアプローチは極めて有効ではなく、そしてワックスが粉末コーティングのポリマー型構成成分と非相溶性である程度に依って、ワックスの滲出によるべたべたした表面が生じる可能性がある。
【0014】
このように、慣用のマット化剤の限定された成功は、粉末コーティングに対する多数の新しいマット化機構の進展をもたらした。例えば、(1)異なる反応性または流動能を有する粉末をドライブレンドし、(2)異なる反応性または異なる反応性化学さえも有する
2つの粉末コーティング組成物を共押し出しし、(3)この粉末コーティングポリマーとの限定された混和性を有する特別な硬化剤を添加し、(4)反応性末端基と共に高度の分岐を有するポリマーバインダーを使用し、そして(5)異なる官能基を有するポリマーまたはポリマーブレンドとの反応に関与する能力があり、各々がこの架橋剤と関連する1つまたは他のこの官能性基と反応性である2つのタイプの官能基を担持する架橋剤により、粉末コーティングをマット化することができることが示されてきた。挙げられた最初の3つはエポキシ、ポリエステル−エポキシおよびポリウレタンコーティングと共に使用されてきたが、この最後の2つの例はポリウレタン粉末コーティングと共に使用されてきた。ポリエステル粉末コーティングのマット化はドライブレンドの使用に依存する傾向がある。
【特許文献1】米国特許第4,076,917号
【特許文献2】米国特許第3,709,858号
【特許文献3】米国特許第4,138,541号
【特許文献4】米国特許第4,115,637号
【特許文献5】米国特許第4,101,606号
【特許文献6】EP322834
【特許文献7】米国特許第5,589,126号
【特許文献8】WO99/16810
【特許文献9】WO01/16213
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
一定の粉末コーティングタイプの特定の配合物において現行のマット化生成物または手法を用いて、60゜で20以下の低い値の光沢を得ることができるが、膜硬化時に他の望ましい膜の性質、例えば可撓性、硬さ、耐溶剤性、屋外耐久性および耐黄化性を保持することはしばしば困難であったということが明白である。それゆえ、本発明の目的は、許容できるマット仕上げを生成するが、同時に他の望ましい膜の性質を維持することができるマット化剤を得ることである。このマット化剤中で慣用のマット化剤をなお使用することができ、それでも許容できるマット仕上げを達成し、並びに上記に挙げたこれらの望ましい膜特性を維持する方法を提供することも目標である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の化合物は、場合によっては、少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基、および少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド基以外の反応性官能基を含んでなるエステル−アミド含有縮合生成物である。このような生成物は、モノマー型エステル−アミド、および線状あるいは分岐したオリゴマー型ポリエステル−アミドまたはポリマー型ポリエステル−アミドから製造可能である。しかしながら、本発明の縮合生成物は、50%以上のこの末端のβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基が末端あるいはペンダントなカルボン酸基またはマット化対象の粉末コーティングの性状に関して他の望ましい官能基を含有する基に転換されたもののように反応させられる。合計官能基数は1分子当り少なくとも2個の官能基(同一あるいは異なる)である。
【0017】
本発明の好ましい官能基は、カルボン酸基、またはカルボン酸基とβ−ヒドロキシアルキルアミド基の組み合わせであって、後者がモル基準で全官能基の50%以下の範囲で存在するものを含んでなる。これらの化合物は、粉末コーティングで通常使用される多くのタイプのポリマーと混和性かつ反応性である。このβ−ヒドロキシアルキルアミド基の反応性が与えられれば、マット化対象の特定の粉末コーティングに依って、他の反応性基を容易に導入することができる。他の反応性基は、限定ではないが、典型的な粉末コーティングにおいてバインダーとして使用されるエポキシ、ポリエステル、エポキシ−ポリエステル、ポリエステル−プリミド、ポリウレタン、およびアクリルポリマーと反応性である
ものを含む。
【0018】
本発明の別の態様は、前に挙げた縮合生成物と無機固体、例えばシリカ、アルミナ、シリケートおよびアルミノシリケートとの組み合わせを含んでなる。このような組み合わせは、膜形成時に起こるレオロジー過程に対して更なるコントロールをもたらし、マット化を増強し、健康および安全の観点からの有機縮合生成物構成成分の取り扱いを容易とし、そして対象の望ましい有機構成成分が液体または半固体である場合には、粉末コーティングの中にこの有機構成成分を組み込みことを容易とすることができる。加えて、無機固体の存在下でのこの有機構成成分の好適な粒子サイズへのミル掛けは、更に好都合に実施可能であり、そして後者の使用はこの粉末コーティングの中に比較的容易に、かつ均一に組み込み可能な生成物を生成することができる。
【0019】
別の態様はこの縮合生成物をマット活性化剤、例えば粉末コーティングバインダーに対して好適な触媒または共反応剤と組み合わせることを含んでなる。これらの態様は、この縮合生成物を例えば触媒または共反応剤無しで使用する態様よりも改善されたマット化および膜の性質を示した。
【0020】
上記に示したように、本発明の縮合生成物は、末端あるいはペンダントなβ−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するエステル、またはエステル−アミドと他の反応性官能基を担持するか、あるいは前駆体として他の反応性官能基に作用するか、あるいはこの他の反応性基が重合反応を含むこともある更なる反応から生じるという意味で前駆体として作用する別の化合物とを反応させることにより製造される。しかしながら、この2つの構成成分は、製造時にこのゲル点に達しないか、あるいは超えないように反応される。この縮合生成物の全官能基数または1分子当りの官能基の平均数が4を超える場合には、この生成物は粉末コーティングにマット化効果を付与することが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
β−ヒドロキシアルキルアミド
本発明の縮合生成物は、末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持する化合物から製造される。末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するエステル−アミド化合物、例えばRohm & Haasからのプリミド(登録商標)添加剤は一般に既知であり、そしてこのような化合物を製造する方法の例は、内容が引用により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,076,917号;第3,709,858号;米国特許第5,589,126号およびWO99/16810に開示されている。
【0022】
このように、末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持する化合物は、例えば(1)ジカルボン酸のモノマー型ジアルキルエステル誘導体と(2)一般に、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであってもよいβ−アミノアルコールの間の反応から製造可能である。
【0023】
この方法の変形においては、モノマー型ジエステルの代わりに平均で2つ以上の末端エステル基を含有するオリゴマー型あるいはポリマー型物質を使用することができる。モノマー型あるいはポリマー型ポリオールと好適な過剰のモノマー型ジエステルとをエステル交換することにより、これらのオリゴマー型あるいはポリマー型種を得てもよい。これらのオリゴマー型あるいはポリマー型種と好適なアミノアルコールとの引き続いての反応は、2つ以上のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物を生じる。基の実際の数は、勿論、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンを使用するかどうかに依存する。
【0024】
末端エステル基を含有する種をモノマー型環状酸無水物またはポリ酸無水物の誘導体に
より置き換えてもよい。この場合には、酸無水物とアミノアルコールの間の付加反応を行って、カルボン酸基およびβ−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するモノマー型化合物を製造する。更なる反応段階においては、カルボン酸基とβ−ヒドロキシアルキルアミド基の間の縮合反応を行って、少なくとも1個の末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するポリマー型化合物を製造することにより、このモノマー型化合物を重合させてもよい。このような反応後に残存するβ−ヒドロキシアルキルアミド基の数は、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンが使用されるかどうか、そしてこの酸無水物がモノ酸無水物またはポリ酸無水物であるかどうかにも依存する。
【0025】
エステルとアミノアルコールとの反応により得られたとしても、あるいは酸無水物とアミノアルコールとの反応により得られたとしても、末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持する化合物がそれ自身ポリオールとして作用してもよいことは明白である。また、これを好適な過剰のモノマー型ジエステルと反応させて、アミノアルコールとの更なる反応のために平均で1つ以上の末端のアルキルエステル基を含有する種を製造してもよい。
【0026】
溶融形あるいは溶剤中のいずれかで、50℃〜275℃の範囲の温度で好適な触媒、例えば金属カルボキシレート、例えば酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムまたは酢酸コバルト並びに金属アルコキシド、例えばチタン酸テトライソプロピルまたはナトリウムメトキシドの存在下でジ−あるいはポリ官能性カルボン酸のモノマー型アルキルエステルをジ−あるいはポリ官能性アルコールとエステル交換することにより、ヒドロキシアルキルアミド化合物の製造に好適であるとして上記に挙げたエステル基を担持するオリゴマー型あるいはポリマー型物質を得ることができる。
【0027】
溶融形中あるいは好適な溶剤中で好適な触媒の存在下50℃〜275℃の範囲の温度でジ−あるいはポリカルボン酸のモノマー型アルキルエステルでヒドロキシル官能性ポリエステルを転化反応させることにより、末端エステル基を担持するオリゴマー型あるいはポリマー型の誘導体も得ることができる。
【0028】
ジ−およびポリ官能性カルボン酸とジ−およびポリ官能性アルコールとを含む慣用の重合法により、ヒドロキシル官能性ポリエステルを得てもよい。所望ならば引用により内容が本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第3,669,939号、米国特許第5,136,014号および米国特許第5,418,301号に述べられている方法によって好適なポリヒドロキシカルボン酸を重合させることにより、平均で高度の分岐を持つヒドロキシル官能性のポリエステルを得てもよい。
【0029】
エステル化およびエステル交換反応により、あるいはエステル交換反応により、ヒドロキシ官能性のポリエステルも製造することができる。これらの反応に対する好適な触媒は、例としてジブチルスズ酸化物またはチタンテトラブチレートを含む。
【0030】
好適なヒドロキシ官能性ポリエステル樹脂は10−500mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0031】
上記の反応に示されるポリカルボン酸のモノマー型アルキルジエステルは、テレフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチルおよびヘキサヒドロテレフタル酸ジメチルを含む。
【0032】
上記の反応における好適なジ−およびポリ官能性カルボン酸構成成分の例は、限定ではないが、脂肪族および/またはシクロ脂肪族多塩基酸、例えば1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロエンドメチレンテレフタル酸、ヘキサクロロフタル酸、C−C20ジカルボン酸、例えばアゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、マレイン酸、並びにダイ
マー脂肪酸およびこれらの酸無水物、クロリドおよびエステル誘導体と一緒に、芳香族多塩基カルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3,6−ジクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸、およびこれらの酸無水物、クロリドまたはエステル誘導体を含む。ヒドロキシカルボン酸および/またはラクトン、例えば12−ヒドロキシステアリン酸、イプシロン−カプロラクトンまたはネオペンチルグリコールのヒドロキシピバリン酸エステルを同様に使用することができる。モノカルボン酸、例えば安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸および飽和脂肪族モノカルボン酸も必要に応じて使用してもよい。
【0033】
次の脂肪族ジオールが上記に挙げた好適な二官能性アルコールの例として名を挙げられる:エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタンジオール、2,2−ジメチルプロパン1,3−ジオール(ネオペンチルグリコール)、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−[ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)]プロパン、1,4ジメチロールシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよび2,2−ビス−[4−(2−ヒドロキシ)]フェニルプロパン。
【0034】
上記に挙げた好適なポリ官能性アルコールは、グリセロール、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンおよびトリス(2−ヒドロキシ)イソシアヌレートである。ジオールまたはポリオールの代わりにエポキシ化合物を使用することができる。アルコキシル化ジオールおよびポリオールも好適である。
【0035】
2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−酪酸、2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−吉草酸、2,2,2−トリス−(ヒドロキシメチル)−酢酸および3,5−ジヒドロキシ安息香酸をポリヒドロキシルカルボン酸の例として挙げてもよい。
【0036】
上記のすべてにおいて、上記に挙げたジ−およびポリ官能性アルコールの代わりに、あるいはそれに加えて、末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する予め製造した化合物も使用してもよい。
【0037】
上記のすべてにおいて、種々のポリオール、多塩基性カルボン酸およびヒドロキシル−およびポリヒドロキシルカルボン酸の混合物またはこれらの対応するオリゴマーまたはポリマーおよびこれらの対応するエステル末端の類似物の混合物を使用することができる。
【0038】
上記において、ジエステルとヒドロキシル担持物質の間の転化反応におけるヒドロキシル基に対するエステル基の比は、このポリオールの性状、その官能基数、所望する材料およびゲル化を回避する必要性と共に変わる。例えば、このポリオールの平均官能基数が3である場合には、ジエステルに対するポリオールの最小比率は、エステル基に対するヒドロキシルの比が0.5であるようにする。例えば、このポリオールの平均官能基数が6である場合には、ジエステルに対するポリオールの最小比率は、エステル基に対するヒドロキシルの比が0.3であるようにする。
【0039】
上記に挙げたように、ジエステル誘導体の代わりにモノマー型環状酸無水物またはポリ酸無水物の誘導体を使用して、β−ヒドロキシルアルキルアミド化合物を製造することができる。
【0040】
好ましい環状酸無水物は式I
【0041】
【化1】

【0042】
によるモノ酸無水物であり、ここで、Aは下記で後に特定する意味を有する。
【0043】
好適な環状酸無水物の例は、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ナフタレンジカルボン酸無水物、2−ドデセン−1−イル−コハク酸無水物、マレイン酸無水物、(メチル)コハク酸無水物、グルタル酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物および不飽和脂肪酸のマレイン化アルキルエステルを含む。
【0044】
好ましくは、エステルまたは酸無水物と反応性のアミノアルコールは式II
【0045】
【化2】

【0046】
による化合物であり、ここで、
【0047】
【化3】

【0048】
、R、R、およびRは、お互いに独立に同一であるか、あるいは異なり、そして限定ではないが、H、または置換あるいは無置換のアルキル(線状あるいは分岐した)、(C−C10)アリール(C−C20)(シクロ)アルキル基を含んでもよい。一般に、n=1−4であるが、更に好ましくは、n=1である。
【0049】
このアミノアルコールはモノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンまたはこれらの混合物であってもよい。
【0050】
ジアルカノールアミンが好ましいが、モノアルカノールアミンを環状酸無水物との反応において使用する場合には、2以上の官能基数のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するポリマーを得るために、ポリ酸無水物を使用し、充分な官能基数を提供して、所望の官能基数を有する最終生成物を製造することが必要である。同様に、エステル基を担持するオリゴマー型あるいはポリマー型物質との反応でモノアルカノールアミンを使用する場合には、2以上の官能基数のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を担持するポリマーを製造するために、この物質は少なくとも2個のエステル基の平均官能基数を必要とする。
【0051】
比較的高い官能基数の高分岐構造を所望する場合には、ジ−あるいはトリアルカノールアミンを使用することができる。
【0052】
それゆえ、全体的には、所望の用途に依って、β−ヒドロキシアルキルアミド基を担持する線状あるいは全体的あるいは部分的に分岐したオリゴマーまたはポリマーを選ぶことができ、ここで、所望のオリゴマーまたはポリマーの製造のために選択されるアルカノールアミンによるこの構造の更なる調節を達成することができる。
【0053】
好適なモノ−β−アルカノールアミンの例は、2−アミノエタノール(エタノールアミン)、2−(メチルアミノ)−エタノール、2−(エチルアミノ)−エタノール、2−(ブチルアミノ)−エタノール、1−メチルエタノールアミン(イソプロパノールアミン)、1−エチルエタノールアミン、1−(メ)エチルイソプロパノールアミン、n−ブチルエタノールアミン、β−シクロヘキサノールアミン、n−ブチルイソプロパノールアミンおよび2−アミノ−1−プロパノールを含む。
【0054】
好適なジ−β−アルカノールアミンの例は、ジエタノールアミン(2,2’−イミノジエタノール)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ジイソブタノールアミン(ビス−2−ヒドロキシ−1−ブチル)アミン)、ジ−β−シクロヘキサノールアミンおよびジイソプロパノールアミン(ビス−2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン)である。
【0055】
好適なトリアルカノールアミンは、例えばトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。
【0056】
多くの場合、β−アルキル−置換のアルカノールアミンが好ましくは使用される。例は(ジ)イソプロパノールアミン、シクロヘキシルイソプロパノールアミン、1−(メ)エチルイソプロパノールアミン、(ジ)イソブタノールアミン、ジ−β−シクロヘキサノールアミンおよび/またはn−ブチルイソプロパノールアミンである。
【0057】
エステル:アルカノールアミンのアミン等量比は、一般に、1:0.5〜1:1.5の範囲に、更に通常には1:0.8〜1:1.2の範囲にある。
【0058】
酸無水物:アミノアルコール等量比は酸無水物に依存するが、一般に1.0:1.0と1.0:1.8の間にある。好ましくは、この比は1:1.05と1:1.5の間にある。
【0059】
酸無水物をアミノアルコールと反応させる場合には、この酸無水物およびアミノアルコールを例えば約20℃と約100℃の間の温度で反応させて、実質的にモノマー型ヒドロ
キシアルキルアミドを形成し、その後で、例えば120℃と250℃間の温度で水を蒸留により除去しながらポリエステル−アミドを重縮合により得ることにより、この反応を行うことができる。
【0060】
この手順を使用して、分子量の増加を調整する場合に、過剰なアミノアルコールを必要とすることもある。別法として、所望の最終化合物に依存して、単官能性β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物または単官能性カルボン酸化合物を使用して、この官能基数を調整することを使用してもよい。単独に、あるいは前に挙げた選択肢と組み合わせて使用してもよい更なる調整手順は、2個以上のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有するが、β−ヒドロキシアルキルアミド基と反応する能力のある他の反応性基を含有しない化合物を使用することである。これらは、例えば内容が引用により本明細書に組み込まれている米国特許第5,418,301号に述べられているように、種々の分岐度の末端のヒドロキシル基を持つポリエステルを製造するのに使用される手法に類似の手法である。
【0061】
エステル含有化合物をアミノアルコールと反応させる場合、場合によっては好適な触媒、例えば金属水酸化物、金属アルコキシド、4級アンモニウム水酸化物および4級ホスホニウム化合物の存在下20℃と200℃の間の温度で、更に通常80℃〜120℃でこの反応を行うことができる。この反応から生じるアルコールは蒸留により除去される。触媒の比率は、通常、重量で0.1%〜2%の範囲にあってもよい。
【0062】
この反応は融解相中で起こるが、水中であるいは有機溶剤中でも起こることができる。
【0063】
蒸留による水またはアルコールの除去は、1バールよりも高い圧力で、減圧下で、正常な圧力条件下で共沸的に溶剤の共蒸留と共に、あるいはガス流の助けにより起こることができる。
【0064】
上述の誘導体を用いて、下記の式(III)
【0065】
【化4】

【0066】
の特定のβ−ヒドロキシアルキルアミドを製造することができる。ここで、Aは結合、水素または飽和あるいは不飽和のアルキル基から誘導され、このアルキル基が1−60個の炭素原子、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、エイコシル、トリアコンチル、テトラコンチル、ペンタコンチル、ヘキシルコンチルなどを含有する一価あるいは多価の有機基;置換あるいは無置換のアリール、例えば、C−C24単核−および二核アリール、例えばフェニル、ナフチルなど;C−Cシクロアルキル、ジラジカル、トリ低級アルキレンアミノ、例えばトリメチレンアミノ、トリエチレンアミノなど;または1つ以上のエチレン型基[>C=C<]、例えばエテニル、1−メチルエテニル、3−ブテニル−1,3−ジ−イル、2−プロペニル−1,2−ジ−イル、カルボキシ低級アルケニル、例えば3−カルボキシ−2−プロペニルなどを含有する不飽和基;低級アルコキシカルボニル低級アルケニル、例えば3−メトキシカルボニル−2−プロペニルなどである。
【0067】
は水素、好ましくは1−5個の炭素原子のアルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチルなど、または好ましくは1−5個の炭素原子のヒドロキシ低級アルキル、例えばヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、5−ヒドロキシペンチル、4−ヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシペンチル、2−ヒドロキシペンチルおよびペンチルの異性体であり;Rは上記の式II中のYでもあることができる。
【0068】
、R、RおよびRは、好ましくは水素、好ましくは1−5個の炭素原子の直鎖あるいは分岐鎖のアルキルから選択される、同一であるか、あるいは異なる基であるか、あるいはRおよびRあるいはRおよびR基を連結して、この炭素原子と一緒に、C−C20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシルなどを形成してもよく;mは1〜4の値を有する整数であり;nは1または2の値を有する整数であり、そしてn’は0〜2の値を有する整数である。n’が0である場合には、Aは不飽和基である場合にはβ−ヒドロキシアルキルアミドから形成されるポリマーまたはコポリマー(すなわち、nは1以上、好ましくは2−12の値を有する)であることができる。
【0069】
更に特定の化合物は前出の式IIIのものであって、RがH、低級アルキル、またはHO(R)(R)C(R)(R)C−であり、nおよびn’が各々1であり、−A−は−(CH−であり、mは0−8、好ましくは2−8であり、各R基がHであり、そしてRまたはR基の1つが各々の場合Hであり、そしてもう一方がHまたはC−Cアルキルであり;すなわち式(IV)
【0070】
【化5】

【0071】
のものであり、ここで、R、R、およびmは上記に示す意味を有する。
【0072】
式IIの内に入る特定の例は、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジポアミド、ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシプロピル)]スクシンアミド、ビス[N,N−ジ([β−ヒドロキシエチル)]アゼラアミド、ビス[N,N−ジ([β−ヒドロキシプロピル)]アジパミド、およびビス[N−メチル−N−(β−ヒドロキシエチル)]オキサアミドである。好適なヒドロキシアルキルアミドを製造するための方法を図1に図示する。
【0073】
特定のβ−ヒドロキシアルキルアミドは前出の式IIIのものであって、Aが線状あるいは分岐したか、場合によっては、この鎖がエステル−アミド基を含有するポリエステルポリマー鎖であるものである。したがって、Aはポリマー型骨格に沿って交互するエステル−アミド、または分岐構造の場合には、この分岐構造の主鎖および側鎖に沿って交互するエステルおよびアミド結合を更に含んでなることができる。
他の反応性官能基
次に、選択された、そして/あるいは製造されたβ−ヒドロキシアルキルアミドを官能基を担持する化合物またはヒドロキシアルキルアミド基以外の官能基への前駆体と反応さ
せる。この化合物は、ヒドロキシアルキルアミドでない基に加えて、ヒドロキシアルキルアミド基と反応することができる少なくとも1つの官能基を含有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。ある場合には、好適なヒドロキシアルキルアミド化合物との反応後、官能基を担持する化合物または官能基への前駆体を重合にかけて、所望の官能基を担持する最終縮合生成物を製造してもよい。
【0074】
このような官能基またはこのような官能基への前駆体を担持する化合物は、1分子当り1つ以上の酸無水物基および1分子当り1つ以上の遊離カルボン酸基を含有し、β−ヒドロキシアルキルアミドとの反応後、残存する遊離カルボン酸基を生じる環状酸無水物、モノマー型あるいはポリマー型のポリカルボン酸またはポリカルボン酸無水物を含む。カルボン酸および酸無水物の特定の例は、限定ではないが、アジピン酸、デカンジカルボン酸、トリメリット酸無水物、フタル酸またはフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸またはテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ピロメリット酸、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−テトラ−ベンゾフェノンカルボン酸無水物およびこれらの組み合わせを含む。
【0075】
他の好適なカルボン酸化合物は、例えば飽和脂肪族(C−C26)酸、不飽和(C−C36)脂肪酸、ヒドロキシカルボン酸およびポリヒドロキシカルボン酸、例えば2,2−ビス−(ヒドロキシメチル)−プロピオン酸並びにα,β−不飽和酸のダイマーあるいはトリマー酸である。
【0076】
好適なα,β−不飽和酸の例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸およびイタコン酸、マレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ポリエーテルカルボン酸、およびフマル酸のモノエステルまたはモノアミドである。
【0077】
ポリカルボン酸を使用する場合には、本発明の最終縮合生成物上の官能基は主として遊離カルボン酸基である。他方、環状酸無水物またはポリカルボン酸無水物の使用によって、この遊離カルボン酸基が実質的に非反応性であるような条件下でこの酸無水物基とβ−ヒドロキシアルキルアミド基との選択的反応が可能になる。このようにして、両方のタイプの基を含有する化合物を製造することができる。図2は酸無水物を用いて本発明の最終エステル−アミド縮合生成物を製造するための方法を図示する。
【0078】
他の好適な反応性基の例は、限定ではないが、イソシアネート基、エポキシ基、アルコキシシラン基、酸クロリド基、エポキシクロロヒドリン基、アミン基、フェノール系基、メチロール化アミド基、ヒドロキシル基、メチロール基およびこれらの組み合わせを含む。
【0079】
好適なイソシアネートの例は、限定ではないが、それぞれジイソシアネート、例えば1,4−ジイソシアナト−4−メチル−ペンタン、1,5−ジイソシアナト−5−メチルヘキサン、3(4)−イソシアナトメチル−1−メチルシクロヘキシルイソシアネート、1,6−ジイソシアナト−6−メチルヘプタン、1,5−ジイソシアナト−2,2,5−トリメチルヘキサンおよび1,7−ジイソシアナト−3,7−ジメチルオクタン、および1−イソシアナト−1−メチル−4−(4−イソシアナトブテ−2−イル)−シクロヘキサン、1−イソシアナト−1,2,2−トリメチル−3−(2−イソシアナト−エチル)−シクロペンタン、1−イソシアナト−1,4−ジメチル−4−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、1−イソシアナト−1、3−ジメチル−3−イソシアナトメチル−シクロヘキサン、1−イソシアナト−n−ブチル−3−(4−イソシアナトブテ−1−イル)−シクロペンタンおよび1−イソシアナト−1,2−ジメチル−3−エチル−3−イソシアナトメチル−シクロペンタンを含む。
【0080】
オリゴマー型あるいはポリマー型のエステルを使用して、このβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を製造する場合には、モノマー型エステルを使用するときと同様にこのような誘導体を環状酸無水物、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸無水物と反応させてもよい。
【0081】
この初期に形成されるβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物が1分子当り2つ以上のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する場合、ポリカルボン酸またはポリカルボン酸無水物または他の望ましい反応性基との反応の前に単官能性カルボン酸などの好適な単官能性反応剤と反応させることにより、1つ以上のこのような基をブロックすることができる。
【0082】
このように、この方法は、末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を持つ非線状構造のモノマー型エステル−アミド、またはオリゴマー型あるいはポリマー型のエステル−アミドを製造し、そして引き続いて所望の構造および官能基に依って、少なくとも50%のこれらの末端基と環状酸無水物、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、または上述の他の好適な化合物とを反応させることを本質的に含む。
ここで、この種々の反応をよく知られた重合および順次官能化法による1つ以上の段階で行ってもよい。
縮合生成物
一般に、このβ−ヒドロキシアルキルアミドと例えば環状酸無水物とを反応させた後の1分子当りの所望の官能基平均数(モル基準)または本発明の縮合生成物中に存在する「官能基数」は、1分子当り4〜48、好ましくは少なくとも8、そして更に好ましくは8−24個の範囲の官能基の範囲にあることができるが、1分子当り官能基の全数の50%以下がβ−ヒドロキシアルキルアミド基である。言い換えれば、少なくとも50パーセントのこの官能基(モル基準で)はβ−ヒドロキシアルキルアミド基以外の基である。所望の官能基含量は重量で50〜750mgKOH/gの範囲にある。
【0083】
この最終縮合生成物の数平均分子量は300〜15,000、好ましくは1000−5000の範囲にある。
【0084】
前に示したように、この縮合生成物の最終の分子上の反応性官能基は、この生成物をマット化剤として添加する粉末コーティングの特定のポリマーバインダーに依って選択される。粉末コーティングで通常使用されるバインダーは、限定ではないが、エポキシ−ポリエステル、エポキシ、ポリエステル、ポリエステル−アクリル、ポリエステル−プリミド、ポリウレタン、およびアクリルを含む。エポキシ−ポリエステルは頻繁に使用されるバインダーであり、そしてカルボキシル官能基はこのようなバインダーに意図されるマット化剤に好ましい反応性官能基である。
【0085】
この縮合生成物を融解相で製造してもよく、あるいは好適な有機溶剤、例えばジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性溶剤中で製造してもよい。
【0086】
N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤を引き続いて蒸留により除去することができる。しかしながら、沸点および蒸発熱が高いことにより、この操作には大量のエネルギーが必要とされる。更には、溶剤と溶質の間に存在する強い相互作用によりこのような溶剤の実質的に完全な除去をこの方法で確実にすることは通常困難である。代替的な方法は、溶質がこの溶剤混合物に可溶でないように、この溶剤を第2の溶剤の中に抽出することである。本発明の場合の多くにおける好適な第2の溶剤は水であるが、例えばアルコールまたは水−アルコール混合物であってもよい。水または第2の溶剤による沈殿した生成物の更
なる向流洗浄を必要に応じて行って、第1の溶剤の実質的な除去を確実にしてもよい。
【0087】
この沈殿した生成物が実質的に粒子状物質の形で存在するように強い攪拌の下で例えば液滴として、あるいは材料の連続流れとしてこの生成物の溶剤溶液を第2の溶剤に添加してもよい。ある場合には、この方法を無機固体の存在により助けてもよい。沈殿した有機生成物が固体様の性格を持たない場合には、これは特に助けになる。この得られた生成物を100℃を超えない温度で最終的に乾燥してもよい。
【0088】
縮合生成物のガラス転移温度以上の温度での乾燥は、流動し、そして存在するいかなる無機構成成分も結合する生成物を生じ、結合した凝集物を生成することができる。この形で、この縮合生成物は好適な溶剤に容易に溶解せず、そして押し出し時にこの粉末コーティングに容易に分散しないこともある。ある態様によっては、溶剤抽出の上記の方法により純粋な状態(無機粒子状物質なしの)で縮合生成物を得ることが好ましいこともある。この場合には、この乾燥温度が高過ぎる場合には、この手順から得られる粒子状の形が失われることもある。
【0089】
これらの問題を回避するために、この生成物を乾燥する場合には、減圧下で乾燥することが好ましい。例えば真空オーブン中で、あるいは真空をかける設備を備えた回転式エバポレーター中でこれを行ってもよい。この最終の溶剤がこの有機構成成分を溶解しないように、水洗浄の後に揮発性の水混和性溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールによる最終すすぎを乾燥前に行ってもよい。別法として、この生成物を溶剤、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノールまたはイソプロパノール中に、水に、あるいはこれらの組み合わせ中に再スラリー化/再溶解し、そしてこの生成物を乾燥により回収してもよい。
【0090】
好適な粒子状物質の形を有する最終生成物を得るために、所望ならば生成物の溶液を無機固体と一緒にスプレー乾燥することによっても、上記の問題のいずれかを回避してもよい。例えばアルコール、水/アルコール混合物およびケトンから好適な溶剤を選択してもよい。
【0091】
それゆえ、全体アプローチは、相互に反応し得る2つ以上のタイプの官能基を含有する化合物を製造することを困難とする高温を回避する。この最終生成物を生成する化学反応時に使用されるいかなるエステル化およびエステル交換触媒も第2の溶剤に可溶である程度まで、そしてこれらの除去が望ましい程度まで抽出することができる。
【0092】
この縮合生成物を完全に融解相中で製造する場合には、粉末コーティングの中に組み込むためにこの生成物を好適な粒子状物質の形で得ることを上記に挙げた手法により達成することができる。例えば、この融解物を水などの攪拌した非有機溶剤の中に導入することができるか、あるいは材料を好適な溶剤に溶解し、そして生成する溶液をスプレー乾燥することができる。しかしながら、最も直裁的な手順はこの生成物を冷却し、そしてこの固化した材料を好適な粒子サイズに単に粉末化することである。
【0093】
代替的な手順においては、ある場合には、要求されるように最終生成物中に存在すべき任意の無機固体を含む水性あるいは有機溶剤相に反応剤を一緒に混入し、この生成混合物を乾燥し、そして任意の残存反応または重合段階を固体状態で完結することが可能であることもある。
【0094】
この縮合生成物を下記に述べるマット活性化剤と組み合わせる場合には、このマット活性化剤を上記の反応および加工シーケンス中の任意の好適な段階で添加してもよい。通常、このマット活性化剤は乾燥に先立つスラリー化あるいは再溶解段階時に添加される。
【0095】
上記の場合のいずれにおいても、この最終粉末コーティング混合物の中にこれを促進するために、この最終マット化剤生成物に好適な平均粒子サイズは、約1μm〜約100μm、好ましくは50μm以下の範囲にあるとみなされる。所望ならば、この最終生成物を引き続いて粉末化あるいはミル掛けしてもよい。この最終マット化剤生成物中に縮合生成物のみがある場合には、任意の最終のミル掛け段階を好適には低い温度で行うべきである。
【0096】
この粉末コーティングに添加される縮合生成物の量は、粉末配合物中に含まれる他の添加剤、例えばマット活性化剤および下記に述べる他の選択による添加剤などの他の添加剤の量に依存する。一般に、添加対象の縮合生成物の量は、この粉末コーティング配合物の全重量基準で約0.5%〜20%の範囲にあることができる。好ましくは、この量は、この粉末コーティング配合物のバインダー重量基準で約1%〜10%の範囲にあることができる。
【0097】
本発明の範囲内に入る異なる縮合生成物の混合物もこの粉末コーティング配合物で使用してもよい。
【0098】
ある場合には、この組み合わせの全体の活性官能基が50%以下のβ−ヒドロキシアルキルアミドを含んでなる限り、本発明を50%以上のβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基を含有するβ−ヒドロキシアルキルアミドと組み合わせることも好適である。
無機粒子状物質添加剤
この縮合生成物と共に組み込むのに好適な無機粒子状物質は、慣用の溶剤担持コーティングで使用されるこれらの無機ベースのマット化剤を含む。
【0099】
シリカ粒子状物質が好適である。これらの粒子状物質は、1〜20ミクロンの、好ましくは5〜10ミクロンの平均粒子サイズの範囲にある。多孔質シリカがこれらのマット化効率のために通常好ましく、そして0.5〜2.0cc/g、好ましくは1.0〜2.0cc/gの範囲の細孔容積を有する。上記に挙げた粒子サイズはCoulterカウンターを用いて報告されるものであり、そして細孔容積は窒素ポロシメーターを用いて得られるものである。好適なシリカおよびこれらを製造するための方法は、内容が引用により本明細書に組み込まれている米国特許第4,097,302号に述べられている。上記のサイズ範囲の粒子状酸化アルミニウムまたは金属シリケートおよびアルミノシリケートも好適である。
【0100】
無機粒子状物質は、縮合生成物1重量部当り0〜2重量部の範囲で存在することができる。しかしながら、このような粒子状物質を含有する態様は、更に通常には、無機粒子状物質および縮合生成物を1:1重量部の比で含有する
無機粒子状物質がこの縮合物と一緒に最終のマット化化合物中に存在する場合には、粒子状物質の形でこの縮合生成物を製造した後この2つをドライブレンドあるいは共ミル掛けを行うことができる。乾燥しているならば、シリカまたはアルミナなどの無機構成成分をこの縮合生成物を生じる反応シーケンスの任意の段階で添加することができる。上記に挙げたように、この無機構成成分も沈澱段階の直前にこの反応生成物に添加するか、あるいは最終の乾燥段階の直前に縮合生成物の溶液またはスラリーに添加してもよい。無機構成成分を縮合生成物を生じる反応シーケンスの任意の段階で添加するか、あるいは沈澱あるいは乾燥段階の前に添加する場合には、前に挙げたものなどの溶剤またはキャリア媒体の存在は流動性の理由により役に立つこともある。
【0101】
この最終生成物を必要に応じて引き続いて粉末化あるいはミル掛けしてもよい。最終生成物が最終粉末化コーティング混合物の中に促進するのに好適な平均粒子サイズを有する
までこの最終生成物をミル掛けしなければならない。最終マット化剤生成物に好適な平均粒子サイズは約1μm〜約50μmの範囲にある。
マット活性化剤
上記に示したように、マット活性化剤も本発明の縮合生成物と共に組み合わせて使用して、好ましいマット化剤を製造してもよい。マット活性化剤は、限定ではないが、当業界で既知の触媒または共反応剤などの化合物を含む。これらの活性化剤は、マット化を加速あるいは促進し、本発明品を添加し、そして所望の性質を有する膜の形成を促進する粉末コーティングの硬化を促進する。この選択される活性化剤は粉末コーティング中のバインダーに依存する。本明細書中以下で活性化剤として好適な触媒は、本発明の反応の後不変のまま残る化合物および粉末コーティングバインダーとして定義可能であり、そして比較的少量で通常使用される。種々の量で存在してもよい本明細書中以下で好適な共反応剤は、前に挙げた反応に関与し、そして通常消費されるにしたがって使い果たされる。内容が引用により本明細書に組み込まれている、EP019852または米国特許第4,048,141号に述べられているものなどの4級ホスホニウムハライドおよび4級ホスホニウムフェノキシドおよびカルボキシレートは、特に好適なマット活性化剤である。
【0102】
好ましいホスホニウムベースのマット活性化剤は式(V)
【0103】
【化6】

【0104】
により表される。ここで、各Rは独立にヒドロカルビルまたは不活性に置換されたヒドロカルビル基であり、Zはヒドロカルビルまたは不活性に置換されたヒドロカルビル基であり、そしてXは任意の好適なアニオンである。
【0105】
用語「ヒドロカルビル」は、この明細書で使用されるようにいかなる脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、または脂肪族あるいはシクロ脂肪族置換の芳香族基も意味する。この脂肪族基は飽和あるいは不飽和であることができる。芳香族でないこれらのR基は、1〜20個の、好ましくは1〜10個の、更に好ましくは1〜4個の炭素原子を含有する。
【0106】
用語「不活性に置換されたヒドロカルビル基」は、このヒドロカルビル基がこの反応に加わらず、そしてこのエポキシ化合物とこのポリエステルの間の反応を妨害しない1つ以上の置換基を含有することができるということを意味する。好適なこのような置換基は、例えばNO、Br、Cl、I、Fを含む。
【0107】
好適なアニオンは、限定ではないが、ハライド、例えばクロリド、ブロミド、イオダィドおよびこれらのカルボキシレート並びにカルボン酸錯体、例えばフォーメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、トリフルオロアセテート、フォーメートギ酸錯体、アセテート酢酸錯体、プロピオネートプロピオン酸錯体、オキサレートシュウ酸錯体、
トリフルオロアセテートトリフルオロ酢酸錯体を含む。他の好適なアニオンは、例えばホスフェート、および無機酸の共役塩基、例えばビカーボネート、ホスフェート、テトラフルオロボレートまたはビホスフェートおよびフェノールの共役塩基、例えばフェネートまたはビスフェノールAから誘導されるアニオンを含む。
【0108】
この触媒の一部は市販されているが;Danteらの前に挙げた米国特許第3,477,990号、Marshallらの前に挙げた米国特許第4,634,757号およびPhamらの前に挙げた米国特許第4,933,420号に述べられている方法により容易に製造することができないものである。上記に挙げたホスホニウム触媒の例は、なかでも、メチルトリフェニルホスホニウムイオダィド、エチルトリフェニルホスホニウムイオダィド、プロピルトリフェニルホスホニウムイオダィド、テトラブチルホスホニウムイオダィド、メチルトリフェニルホスホニウムアセテート酢酸錯体、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート酢酸錯体、プロピルトリフェニルホスホニウムアセテート酢酸錯体、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸錯体、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムイオダィド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムイオダィド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムイオダィド、テトラメチレンビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、テトラメチレンビス(トリフェニルホスホニウムブロミド)、テトラメチレンビス(トリフェニルホスホニウムイオダィド)、ペンタメチレンビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、ペンタメチレンビス(トリフェニルホスホニウムブロミド)、ペンタメチレンビス(トリフェニルホスホニウムイオダィド)、ヘキサメチレンビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、ヘキサメチレンビス(トリフェニルホスホニウムブロミド)、ヘキサメチレンビス(トリフェニルホスホニウムイオダィド)、または任意のこれらの組み合わせを含む。
【0109】
この明細書で使用可能な特に好適なホスホニウム化合物は、例えば、メチルトリフェニルホスホニウムイオダィド、エチルトリフェニルホスホニウムイオダィド、テトラブチルホスホニウムイオダィド、メチルトリフェニルホスホニウムアセテート酢酸錯体、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート酢酸錯体、テトラブチルホスホニウムアセテート酢酸錯体、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムホスフェート、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−パラ−トリルホスホニウムイオダィド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−メタ−トリルホスホニウムイオダィド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムクロリド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムブロミド、ベンジル−トリ−オルト−トリルホスホニウムイオダィドまたは任意のこれらの組み合わせを含む。
【0110】
エポキシ基とカルボキシル基含有化合物の反応を伴う粉末コーティング用のマット化剤を製造する場合には、3級アミンおよび4級アンモニウムハライド触媒が好適である。
【0111】
エステル化およびエステル交換触媒、例えば金属アルコキシドおよび金属カルボキシレートはポリエステル−プリミドコーティング用に設計された本発明のマット化剤と共に使用するのに好適である。
【0112】
上記に示したように、これらの物質は一定の添加レベルのマット化剤で得られるマット化の度合いを増進することが見出された。通常、1つ以上、例えば触媒および/または共反応剤をこの最終縮合生成物とブレンドすることにより、このマット活性化剤を添加する。このことは、一般に、1〜50重量%のこの縮合生成物および更に通常には5〜33重量%の触媒または共反応剤を100:1〜1:1、更に通常には20:1〜2.1の触媒および/または共反応剤に対する縮合生成物の比で添加することを必要とする。ほぼ4:1〜6:1の触媒および/または共反応剤に対する縮合生成物の比が好ましい。
【0113】
したがって、本発明の生成物の好ましい態様は、(1)上述のエステル−アミド縮合生成物および(2)無機固体および/またはマット活性化剤化合物を含んでなる。
選択による他の添加剤
所望ならば、慣用の粉末コーティングで使用されるものなどの添加剤は、本発明による縮合生成物と組み合わせ可能である。このような添加剤は、例えば、顔料、充填剤、脱ガス剤、流動化剤および安定剤を含む。好適な顔料は、例えば無機顔料、例えば二酸化チタン、硫化亜鉛、酸化鉄および酸化クロムであり、そして有機顔料、例えばアゾ化合物およびフタロシアニン化合物でもある。好適な充填剤は、例えば金属酸化物、シリケート、カーボネートおよびサルフェートである。
【0114】
例えば一次および/または二次の酸化防止剤、UV安定剤、例えばキノン(立体障害型)フェノール系化合物、ホスホナイト、ホスファイト、チオエーテルおよびHALS化合物(ヒンダードアミン光安定剤)を安定剤として使用することができる。
【0115】
脱ガス剤の例は、ベンゾインおよびシクロヘキサンジメタノールビスベンゾエートである。この流動化剤は、例えばポリアルキルアクリレート、ポリビニルアセチル、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、フルオロ炭化水素およびシリコーン流体を含む。
【0116】
次に、慣用の手段を用いて、任意の選択による添加剤およびこの縮合生成物をこの粉末コーティング混合物の中に混入することができる。この最終マット化剤組成物を粉末コーティングバインダーと共にドライブレンドとして組み込むか、あるいはこれらのバインダーと例えば押し出し機中で合体して、バインダー、マット化剤および押し出し機の中に導入される任意の他の添加剤を含有する粒子を形成することができる。
マット化機構
一般的にいって、主として、これらの生成物は粉末コーティングが膜を形成する機構の内での特定な機能に適合または設計されていないために、従来の溶剤担持コーティングで使用されるマット化生成物は、粉末コーティングで使用される場合広く成功を収めていない。従来のマット化生成物は、光沢を低下させることができる一方で、大抵の場合膜不完全性および他の膜破壊を起こすことが見出されてきた。
【0117】
更に特に、粉末コーティングは加熱時に流動するように設計されている。結果として、これらのコーティングに対するポリマーおよび架橋剤の選択は、この固体粉末粒子を好適な基材、通常、金属性基材に塗布した後、個別のポリマー粒子が一緒に崩壊し、そして加熱時に融合するように、分子量、分岐度および官能基数に基づく。良好な品質の平滑、連続および硬質の膜を形成するように、架橋反応が引き続いて起こる。この初期の乾燥粉末構造の粒子崩壊および流動がかなり迅速に起こることができ、そして光沢のある表面が正常な硬化温度、例えば120−200℃で1分または2分以内に観察される。
【0118】
この膜が光沢のある仕上げを最初に示す段階において、表面粗さはなお存在する。事実、この高さ粗さはこの段階でかなり大きいこともある。しかしながら、この粗さの勾配は
光沢を決めると予期され、そこでこの波長が充分に大きい場合には、光沢のある表面の認知が与えられる。更なる加熱および継続的な融合時には、この表面粗さの勾配はほぼ同一に留まり、そしてこの膜は光沢のある状態に留まる。
【0119】
他方、この粉末コーティング粒子が流動する充分な機会を持たない場合、例えば流動が物理的に損なわれる場合には、かさ高な表面が発達し、代替的には、劣った膜の性質を持つ目視的に粗い表面が得られる。従来のマット化生成物を使用して、粉末コーティングの光沢をある程度低減させてもよいが、上記に示したように60°で60単位以上の光沢レベルが許容できる場合には、このアプローチは通常低容積量に制限される。そのときに、膜の性質を損なうことが起こることもある。
【0120】
このバインダーポリマーの分子量が高過ぎる場合、あるいはこのポリマーまたは架橋剤の官能基数が高過ぎる場合には、物理的な流動が損なわれることも起こるとみなされる。このバインダーポリマーの粒子サイズも融合および引き続いての流動を損なうのに充分に大きい可能性がある。
【0121】
しかしながら、適度に妨害された流動は、この表面粗さの勾配が初期の流動および融合の段階に続く加熱時に増加することを可能とし、この段階で流動過程がなお起こっているので、初期に光沢のある表面からマット表面を作り出すことができる。
【0122】
したがって、そしていかなる特別な理論に拘束されることなく、粉末コーティングに好適なマット化剤は、膜形成時に化学反応の結果としてこの粉末コーティングの表面粗さの勾配の増加をもたらすことができなければならない。更に特に、好適なマット化剤は、粉末が初期の光沢のある状態を形成した後コーティングの流動を妨げる。このことは、好適な密度および反応性基の分布を有する分子により起こり得る。これらの方法は、これまでの典型的な充填剤およびワックスの使用と関連付けられる本質的に物理的あるいは非反応性の方法と反対に、本質的に化学的あるいは本来的に反応性として分類可能である。
【0123】
しかしながら、高度の流動阻害を生じるか、あるいは反応性であって、粉末コーティングの硬化スケジュールにおいて顕著な網目形成があまりに早く起こる化合物を導入しないように注意をはらうべきである。このことは、前に述べたように、膜の外観および膜の性質にマイナスの影響を及ぼす。図3はβ−ヒドロキシアルキルアミド基のみを含有する架橋剤により硬化された粉末コーティングの線形粘弾性的性質を示す。架橋反応が開始するしたがい、140℃の温度で位相角の初期の減少に続いて、位相角は再度増加し始め、流動性の増加を示し、その後材料が固化し、そして化学反応が完結に向かうにつれて、160℃で再度低下する。
【0124】
いかなる特別な理論に拘束されることなく、これは、遊離COOHまたはOH基がこのアミド基により近位に位置するエステル結合をエステル交換により攻撃する結果として生じ、位相角が0゜に接近することにより示されるように、高温での最終分子量増加の前に分子量の一時的な減少を生じる。このことは、1分子当り多くのβ−ヒドロキシアルキルアミド基を持つ化合物がそれにも拘わらず良好な品質の光沢のある粉末コーティング膜を製造する能力のある理由を説明する。
【0125】
それゆえ、このデータは、1分子当りの全官能基に対するβ−ヒドロキシアルキルアミド基の比率が高過ぎる場合には、マット化が可能でないということを示す。他方、1分子当りの官能基の全数の50%以下がβ−ヒドロキシアルキルアミド基であるために、本発明の組成物の官能基含量はその効果を最小化する。それゆえ、この意味するところは、本発明が充分な流動および反応性の能力を維持して、良好な外観と膜の性質を持ち、しかしながらマット化対象の粉末コーティング膜と一貫した粉末コーティング膜を製造すること
と関連するということである。本発明は、双対する官能基が一定の化合物の中に意図的に構築される限り、膜の性質の維持にも役に立つベース粉末コーティング配合物中の架橋剤に対する樹脂の比を調整する必要性も回避することができる。
【0126】
エステルおよび本発明のエステル−アミド縮合生成物の製造において使用されるアミノアルコールおよびカルボン酸化合物を変えることができ、したがって、本発明は、本発明の所望の時には双対する(dual)官能基を製造する多数の方法を提供する。したがって、本発明の化合物を上記に参照した特許に開示されているタイプの慣用のβ−ヒドロキシアルキルアミド架橋剤と組み合わせて、所望の双対する官能基を得、このようにマット化されたコーティングの膜の性質(マット以外の)をコントロールするために更なる化合物を提供することができる。
【0127】
前出の明細書で本発明の好ましい態様および操作モードを述べてきた。しかしながら、開示された特定の態様は限定的であるのではなく例示的であるとみなされるので、本明細書で保護を意図される本発明はこれらに限定されると解釈されるものでない。それゆえ、当業者ならば本発明の精神を逸脱せずに変形および変更を行うこともある。更には、特定の組の性質、条件、物理的状態またパーセントを表すものなどの本明細書または請求項で示される任意の数の範囲は、このように示された範囲の数のいかなる下位の組の範囲も含みこのような範囲内に入るいかなる数も本明細書中に文字通りかつ明瞭に組み込むように意図されている。それゆえ、下記に示す実施例は、上記で議論した化学により粉末コーティングの光沢低下を単に例示するために、本明細書中で述べ、そして下記に挙げる特定の粉末コーティング中で試験したマット化化合物の製造を単に例示するのみである。
【実施例】
【0128】
特定の実施例
使用される粉末コーティングが下記に示され、そして典型的なエポキシ−ポリエステルコーティングを表す。このマット化化合物の官能基数を適合させる必要に応じてポリエステルおよびエポキシの比率を同時に調整しながら、マット化化合物を添加して、大多数の場合このコーティング中にほぼ0.05の容積分率を与えるようした。
【0129】
参照点として、エポキシおよびポリエステル樹脂の比率を同時に調整しながら、市販の反応性マット化剤のCiba 3557を同様の方法で使用した。ポリエステル−プリミド粉末コーティングも使用した。
実施例1
1分子当り4個のβ−ヒドロキシアルキルアミド基を有する1モルのプリミド XL552をシリカの存在下固体状態で2.5モルの1,2,4,5ベンゼン−テトラカルボン酸と反応させた。この場合には、プリミド XL552は末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有し、そして前に述べたようにジエステル、実質的にアジピン酸のジメチルエステルと2モルのジエタノールアミンとを反応させることにより得られる。
【0130】
したがって、Rohm & Haasの40.3gのプリミド XL552および80gの1,2,4,5ベンゼン−テトラカルボン酸を53.8gの水に溶解した。ほぼ2cc/gの細孔容積を有する41gの(Syloid C807)シリカゲルを添加し、そしてこの混合物を室温で1時間攪拌した。真空を300mmHgまでかけながら120℃で加熱し、この時に温度を150℃まで上昇させ、そして4時間維持して、反応を起こさせることにより、過剰の水を除去した。
【0131】
この最終生成物の酸価は低く、そして279mgKOH/gの理論値に比較して変化した。この実施例で述べる酸価および以降に続く酸価を次の方法を用いて測定した:約0.5gの試料生成物を100mlのテトラヒドロフラン(THF)に添加し、そして温和な
加温(最高35℃まで)下に1時間攪拌した。この溶液をフェノールフタレイン指示薬に対して0.1MKOH水溶液により室温でピンク着色の終点まで滴定する。これから、酸価AVをAV=(5.61*V)/Sとして計算することができる。ここでVはmlでのKOH溶液の容積であり、そしてSは乾燥試料の重量である。無機に対する有機の比は重量で2.7:1であった。結合した凝集体の存在は酸価の食い違いを説明する。この最終固体生成物の密度を比重ビン法により1.57と定量した。粉末コーティング配合物を計算する目的で、この密度を理論酸価と一緒に使用した。
【0132】
この生成物(生成物A)を0.05の容積分率添加レベルで標準のポリエステル−エポキシ粉末コーティングに組み込んだ。重量基準でのこのコーティングの組成を下記の表に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
それゆえ、重量でのマット化剤のパーセント添加は5.2%であり、その3.8%はこの有機構成成分から生じたものである。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。
実施例2
再度、市販の架橋剤プリミド XL552を末端β−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物として使用した。プリミド XL552を1,2,4−ベンゼン−トリカルボン酸無水物の酸無水物官能基と反応させて、1分子当り8個の末端カルボン酸基を含有する実質的にモノマー型のエステル−アミドを製造し、そしてPural 200(γ−AlO.OH)アルミナと合体した。Pural 200アルミナの細孔容積は0.6cc/gである。
【0135】
かくして、29.67gのプリミド XL552をN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)を入れた反応容器に装填し、そして溶解後、71.16gのベンゼン−1,2,4トリカルボン酸1,2−酸無水物を攪拌下で添加した。最終濃度が重量で25%となるように、DMAの量を選択した。この混合物を90℃まで1時間加熱した。酸価を402mgKOH/gの理論値に比較して452mgKOH/gと定量した。酸価を定量する方法は約±5%の誤差を有すると予想される。
【0136】
この容器に168.05gのPural 200を装填し、そして充分混合後、この反応容器の内容物を1リットルの蒸留水にゆっくりと添加し、40℃まで予備加熱した。この沈殿物を濾過により分離し、そして40℃まで予備加熱した1リットルの蒸留水中で各回再スラリー化することにより、3回洗浄した。この最終沈殿物を90℃で16時間乾燥し、そして粉末化した。この最終生成物の酸価を151mgKOH/gの理論値に比較して100mgKOH/gと定量した。
【0137】
950℃でのこの有機構成成分の分解および除去は、有機化合物のパーセントが38%の理論値に近いことを示した。それゆえ、結合した凝集体が形成し、それにより酸価測定に影響するのかもしれない。この最終固体生成物の密度を比重ビン法により2.1と定量し、そして粉末コーティング配合物を計算する目的で、これを理論酸価と一緒に使用した。
【0138】
この生成物(生成物B)を0.05の容積分率添加レベルで標準のポリエステル−エポキシ粉末コーティングに組み込んだ。重量基準でのこのコーティングの組成を下記の表に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
それゆえ、重量でのマット化剤のパーセント添加は6.9%であり、その2.6%はこの有機構成成分から生じたものである。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。
実施例3
代替的な方法として、4.5モルのアジピン酸ジメチルと1モルのトリメチロールプロパンとをエステル交換し、引き続いて残存するエステル基と6モルのジエタノールアミンとを反応させ、続いて12モルの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物と更に反応させることにより、末端カルボン酸基および末端アミド基のみを持つ非線状ポリマー型エステル−アミドを製造した。このように、10.3gのトリメチロールプロパンを60℃の温度で融解し、そして反応器に装填した。60.1gのアジピン酸ジメチルを、続いて0.1gのエステル交換触媒をブレンドした。
【0141】
窒素雰囲気下、温度を120℃まで、次に再度150℃まで徐々に上げ、そしてそこで4時間保持した。300mmHgの真空をかけ、そして更に4時間保持した。蒸留物は1.3369の屈折率を有し、メタノールであることを示した。この反応器に48.4gのジエタノールアミンを引き続いて装填し、そして窒素雰囲気下で120℃で4時間加熱した。300mmHgの真空をかけ、そして生成する蒸留物は1.3358の屈折率を有し、メタノールであることを示した。
【0142】
296gのジメチルアセトアミドに溶解した176.8gの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物をこの反応器に添加し、そしてこの混合物を還流下90℃で4時間加熱した。酸価を377mgKOH/gの理論値に比較して399mgKOH/gと定量した。
【0143】
この容器に493gのPural 200を装填し、そして充分混合後、この反応容器の内容物を2.5Lの蒸留水に室温でゆっくりと添加した。この沈殿物を濾過により分離
し、そして2.5Lの蒸留水中で各回再スラリー化することにより、3回洗浄した。この最終沈殿物を95℃で16時間乾燥し、そして粉末化した。この最終生成物の酸価を125mgKOH/gの理論値に比較して77mgKOH/gと定量した。
【0144】
950℃でのこの有機構成成分の分解および除去は、有機化合物のパーセントが33%で、38%の理論値に近いことを示した。それゆえ、結合した凝集体が形成し、多分それにより測定された酸価が理論酸価から変動したかもしれない。この最終固体生成物の密度を比重ビン法により2.04と定量し、そして粉末コーティング配合物を計算する目的で、これを理論酸価と一緒に使用した。
【0145】
この生成物を生成物Cと標記し、そしてその挙動を標準のポリエステル−エポキシ粉末コーティング中で0.05の容積分率添加レベルで評価した。重量基準でのこのコーティングの組成を下記の表に示す。
【0146】
【表3】

【0147】
それゆえ、重量でのマット化剤のパーセント添加は6.8%であり、その2.6%はこの有機構成成分から生じたものである。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。
実施例4
触媒および共反応剤の効果を例示するために、実施例1に述べたマット化化合物および標記された生成物Aを下記に示す配合によりテトラブチルホスホニウムブロミドとの組み合わせで試験した。
【0148】
【表4】

【0149】
前のように、この有機構成成分から生じるマット化剤のパーセント添加は3.9%に達
した。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。実施例5
触媒および共反応剤の効果の更なる例示として、実施例3に述べたマット化化合物および標記された生成物Cも下記に示す配合によりテトラブチルホスホニウムブロミドとの組み合わせで試験した。
【0150】
【表5】

【0151】
前のように、この有機構成成分から生じるマット化剤のパーセント添加は2.6%に達した。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。実施例6
末端カルボン酸基を持つが、実施例3におけるよりも多量の1分子当りのアミド基を含有する非線状ポリマー型エステル−アミドの更なる例として、1モルのヘキサヒドロフタル酸無水物を1.2モルのジイソプロパノールアミンと反応させ、引き続いて1.2モルの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物と反応させた。この場合には、この材料をシリカまたはアルミナと組み合わせずに製造した。
【0152】
このようにして、77gのヘキサヒドロフタル酸を45℃の温度で加熱し、そして反応器に添加した。同一温度で40gのN−メチルピロリドンに溶解した80gのジイソプロパノールアミンを引き続いて混入した。温度を90℃まで上げ、そしてこの構成成分を一定の攪拌と共に還流下窒素雰囲気中で1時間反応させた。そこで、蒸留ヘッドをこの装置にはめ、そしてこの温度を160℃までゆっくりと上げた。<2mgKOH/gの酸価に達し、98%以上の反応を示すまで、蒸留を3時間継続した。
【0153】
この装置を還流に切り替え、232gのN−メチルピロリドンに溶解した115.2gの1,2,4−ベンゼントリカルボン酸1,2−酸無水物をこの反応器に添加し、そしてこの混合物を還流下90℃で4時間窒素雰囲気中で加熱した。この酸価を256mgKOH/gの理論値に比較して270mgKOH/gと定量した。
【0154】
この反応容器の内容物を連続流で強攪拌下室温で2.5Lの蒸留水にゆっくりと添加した。この沈殿物を濾過により分離し、そして2.5Lの蒸留水中で各回再スラリー化することにより、3回洗浄した。この最終沈殿物を真空下35℃で16時間乾燥し、そして粉末化した。この最終生成物の酸価を256mgKOH/gの理論値に比較して246mgKOH/gと定量した。
【0155】
この生成物を生成物Dと標記し、そしてその挙動を標準のポリエステル−エポキシ粉末コーティング中でテトラブチルホスホニウムブロミドと一緒に評価した。重量基準でのこのコーティングの組成を下記の表に示す。
【0156】
【表6】

【0157】
この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。
実施例7(比較1)
参照点として、市販の製品Ciba 3357を0.04の容積分率で標準のポリエステル−エポキシ粉末コーティング中で試験した。使用した配合物を下記に示す。
【0158】
【表7】

【0159】
それゆえ、この市販の製品を3.8%の重量添加レベルで試験した。
実施例8(比較2)
参照点として、標準の非マット化ポリエステル−エポキシ粉末を下記に示す配合により製造した。
【0160】
【表8】

【0161】
実施例9(比較3)
参照点として、テトラブチルホスホニウムブロミドを含有する標準の非マット化ポリエステル−エポキシ粉末を下記に示す配合により製造した。
【0162】
【表9】

【0163】
実施例10
末端のカルボン酸基を有する非線状ポリマー型エステル−アミドの代替的な実施例として、1モルのヘキサヒドロフタル酸を1モルのジエタノールアミンと、引き続いて2モルのシクロペンタンテトラカルボン酸とシリカの存在下固体状態で反応させた。このように、61.67gのヘキサヒドロフタル酸を45℃の温度で融解し、そして反応器に添加した。42.1gのジエタノールアミンを引き続いて混入した。
【0164】
温度を70℃まで上げ、そしてこの構成成分を一定の攪拌と共に還流下窒素雰囲気中で1時間反応させた。この生成物は217mgKOH/gの理論値に近い酸価を有していた。50.5gのこの反応生成物を200gの水に、続いて95.9gのシクロペンタンテトラカルボン酸およびほぼ2cc/gの細孔容積を有する88gの(Syloid C807)シリカゲルに溶解した。
【0165】
真空を300mmHgまでかけながら120℃で加熱することにより、過剰の水を除去し、この時に温度を150℃まで上昇させ、そして4時間維持して、反応を起こさせた。この最終生成物の酸価を330mgKOH/gの理論値の約3分の2の225mgKOH/gと定量した。無機に対する有機の比は重量で1.5:1であった。結合した凝集体の存在によって、測定された酸価が理論酸価から変動したかもしれない。この最終固体生成
物の密度を比重ビン法により1.57と定量し、そして粉末コーティング配合物を計算する目的で、これを理論酸価と一緒に使用した。
【0166】
この生成物を生成物Eと標記し、そして0.05の容積分率添加レベルで標準のポリエステル−プリミド粉末コーティングに組み込んだ。重量基準でのこのコーティングの組成を下記の表に示す。
【0167】
【表10】

【0168】
それゆえ、重量でのマット化剤のパーセント添加は5.2%であり、その3.1%はこの有機構成成分から生じたものである。この粉末コーティングを製造し、そして下記に後で述べる標準条件下で試験した。
実施例11(比較4)
参照点として、標準の非マット化ポリエステル−プリミド粉末を下記に示す配合により製造した。
【0169】
【表11】

【0170】
実施例12(本発明のマット化剤を入れた粉末コーティングの光沢および膜の性質)
すべての場合、上記の配合の粉末混合物を製造するための一般的な手順を次の通りであった。ポリエステルおよびエポキシ樹脂または適宜プリミド XK552架橋剤、二酸化チタン、流動および脱ガス添加剤をマット化化合物および任意の他の添加剤と一緒に、所望の量でPrism Pilot 3 プレミキサーに装填し、そして2000rpmで1分間混合した。120℃の出口温度のPrism 16mm二軸スクリュー押し出し機で押し出しを行った。この押し出し物を砕き、そしてRetschの超遠心ミルで約40μmの平均粒子サイズまでミル掛けした。振るい掛けを使用して、100μm以上の粒子
を除去した。
【0171】
次に、Gema PG1 Gunを先端電圧30kVで使用した静電噴霧によりこの白色粉末コーティングを冷間圧延試験鋼板(Q−Panel S412)に塗布した。この被覆鋼板をオーブン中で180℃で15分間硬化し、そして60−80μmの範囲の膜厚を有するこれらの鋼板を試験に選択した。
【0172】
Byk光沢メーターにより60゜で光沢を定量した。このコーティングの硬化に続く化学反応の程度を評価するために、メチルエチルケトン(MEK)に対するこの膜の抵抗性を求めた。これはこの粉末コーティング膜をMEKに浸漬した布により擦ることを含み、そしてこの抵抗性をほぼ1Kg荷重下で下地の金属表面が露出される前に必要とされる往復擦り数として表した。
【0173】
Gardner衝撃試験(ASTM G1406.01)を行って、可撓性を評価した。塗装側の面を下にして機械にかける。最初の亀裂点および接着低下が起こる点を求めた。衝撃を受けた領域から粘着テープを貼り、そして剥がし、そしてこのコーティングの部分が剥がされたか、否かを決めることにより、衝撃試験に続く接着低下を評価した。この結果を表1に示す。
【0174】
【表12】

【0175】
実施例1〜6は実施例7および実施例8により示される非マット化コーティングに比較して膜の性質のまずまずのないしは良好な保持と共に光沢の明らかな低下を示す。
【0176】
実施例1および3の実施例4および5との比較は、この明細書で述べられるマット化剤
をこのような触媒または共反応剤と合体する場合、マット化および膜の性質の両方の改善が得られることを示すが、実施例9と比較して実施例8は、非マット化粉末コーティング配合物単独へのテトラブチルホスホニウムブロミドの添加が得られる光沢レベルに対して影響を及ぼさないことを示す。
実施例13:本発明のマット化剤の添加レベルの影響
本発明のマット化剤の添加レベルを変えることにより、光沢値を調整してもよいということを例示するために、実施例6により代表される本発明の縮合生成物をマット活性化剤と一緒にエポキシ−ポリエステル粉末コーティングにおいて前のように、しかしマット活性化剤に対する縮合生成物の比を一定に保って、縮合生成物の異なる添加レベルで試験した。ポリエステルおよびエポキシ樹脂の比率を同時に調整して、このマット化化合物の官能基数を調節した。製造した配合物を下記の表に示す。ここではすべての値は重量パーセントによるものである。
【0177】
【表13】

【0178】
この4つの配合物の各々に対して得られる結果を表2に示す。
【0179】
【表14】

【0180】
このように、膜の性質の良好な保持と連動し、マット化化合物の比率の増加と共に光沢
の減少が起こり、これは上記で述べたマット化化合物の更なる望ましい特性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】図1はβ−ヒドロキシアルキルアミド化合物を製造し、そして本発明の縮合生成物を製造するために引き続いてβ−ヒドロキシアルキルアミド以外の官能基を有する化合物と反応させる方法を図示する。
【図2】図2は本発明の縮合生成物を製造するための代替的な方法を図示する。
【図3】図3は硬化時の慣用のポリエステル粉末コーティングであって、この架橋剤が慣用のヒドロキシアルキルアミド架橋剤であるもの粘弾性データを図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのエステル−アミド、
(b)少なくとも1つのβ−ヒドロキシアルキルアミド官能基、および
(c)(b)以外の少なくとも1つの反応性官能基、ただしモル基準で50%以上の(b
)が(c)に転換される、
を有する縮合生成物であって、前記縮合生成物が4〜48の範囲の全官能基数を有する、ことを特徴とする縮合生成物。
【請求項2】
(c)がカルボキシル、イソシアネート、エポキシド、β−ヒドロキシアルキルアミド以外のヒドロキシルおよびアルコキシシランから選択される請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項3】
前記縮合生成物がモノマー型エステル−アミド、オリゴマー型エステル−アミドおよびポリマー型エステル−アミドの群から選択されるエステル−アミドを含有する請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項4】
(b)が
【化1】

であり、
1、R2、R3およびR4は、相互に独立に、同一であるか、あるいは異なってもよく、H、直鎖あるいは分岐鎖のアルキル、(C6−C10)アリールであってもよく、あるいはR1およびR3またはR2およびR4は連結して(C3−C20)シクロアルキル基を形成してもよく;mは1であり、そしてR5
【化2】

であり、そして
1、R2、R3、R4およびmは請求項に定義した通りである
請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項5】
(c)がカルボキシル、イソシアネート、エポキシド、β−ヒドロキシアルキルアミド以外のヒドロキシルおよびアルコキシシランから選択される請求項4に記載の縮合生成物。
【請求項6】
前記縮合生成物の官能基が(c)からなる請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項7】
モル基準で少なくとも8の全官能基数を有する請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項8】
モル基準で8〜24の全官能基数を有する請求項1に記載の縮合生成物。
【請求項9】
請求項1に記載の縮合生成物および無機粒子状物質を含んでなる組成物。
【請求項10】
前記無機粒子状物質が無機酸化物を含んでなる請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記無機粒子状物質がシリカまたは酸化アルミニウムを含んでなる請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の縮合生成物およびホスホニウムベースのマット活性化剤を含んでなる組成物。
【請求項13】
前記マット活性化剤がヒドロカルビルホスホニウム塩である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
反応性バインダーおよび請求項1に記載の縮合生成物を含んでなる粉末コーティング組成物。
【請求項15】
前記反応性バインダーがエポキシ、エポキシ−ポリエステル、ポリエステル−アクリル、ポリエステル−プリミド、ポリウレタンおよびポリアクリルからなる群から選択されるポリマーを含んでなる請求項14に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項16】
無機粒子状物質を更に含んでなる請求項14に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項17】
前記無機粒子状物質が無機酸化物を含んでなる請求項16に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項18】
前記無機粒子状物質がシリカまたはアルミナを含んでなる請求項16に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項19】
ホスホニウムベースのマット活性化剤を更に含んでなる請求項14に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項20】
前記マット活性化剤がヒドロカルビルホスホニウム塩である請求項19に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項21】
無機粒子状物質および請求項1に記載の縮合生成物を粉末コーティング組成物に添加することを含んでなる粉末コーティングをマット化する方法。
【請求項22】
前記無機粒子状物質が無機酸化物である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記無機粒子状物質がシリカまたは酸化アルミニウムを含んでなる請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記無機粒子状物質および前記縮合生成物に加えて、ホスホニウムベースのマット活性化剤を前記粉末コーティング組成物に添加する請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記マット活性化剤が触媒/共反応剤である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記粉末コーティングが反応性バインダーを含んでなり、そしてエポキシ、エポキシ−ポリエステル、ポリエステル−アクリル、ポリエステル−プリミド、ポリウレタン、およびポリアクリルからなる群から選択されるポリマーを含んでなる請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記触媒/共反応剤が式
【化3】

のホスホニウム塩であり、ここで各Rは独立にヒドロカルビルあるいは不活性に置換されたヒドロカルビル基であり、Zはヒドロカルビルあるいは不活性に置換されたヒドロカルビル基であり、そしてXは任意の好適なアニオンである
請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記触媒/共反応剤がヒドロカルビルホスホニウム塩である請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−229418(P2010−229418A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128154(P2010−128154)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【分割の表示】特願2004−509735(P2004−509735)の分割
【原出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【出願人】(500367492)グレイス・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンジツトゲゼルシヤフト (5)
【Fターム(参考)】