説明

エステル系漂白活性化剤化合物の製造方法

本発明は、エステル系漂白活性化剤化合物を簡易かつ経済的な方法で製造する方法を提供することを課題とする。本発明は、(A)脂肪酸モノエステルを製造するステップ、(B)前記脂肪酸モノエステルを、塩基の存在下でホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択されたいずれか1つと反応させてクロロホルメートを製造するステップ、および(C)前記クロロホルメートを溶媒中でヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体、または、その塩と反応させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル系漂白活性化剤化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過ホウ酸ナトリウム四水和物、過ホウ酸ナトリウム一水和物、過炭酸ナトリウム、ウレア過オキソ水和物、過酸化ナトリウムなどの無機過酸化物を用いる洗濯方法が利用されることで、果物汁、コーヒー、ワイン、野菜汁などの漂白可能な汚染をより容易にとり除けるようになった。しかし、無機過酸化物の漂白性能は温度によって大きく変わる。たとえば、過ホウ酸ナトリウムは80℃以上で、過炭酸ナトリウムは60℃以上で効果的に漂白性能を示すため、夏季には攝氏20ないし25℃、さらに冬季には攝氏5℃程度の冷水で洗濯を行う条件においては、漂白効果を得難い。したがって、低温の水でも無機過酸化物が良好な漂白力を示せるように漂白活性化方法が導入された。
【0003】
漂白活性化剤としては、TAED(Tetra Acetyl Ethylene D
iamine)が最も一般的に使われているが、皮脂などの油染みの除去には効果的でない。また、特許文献1〜4などには、漂白活性化剤としてアシル化合物を用いた漂白剤が開示されているが、多量に使わなければならないため経済性が低下する問題点がある。また、特許文献5〜7などには、炭酸誘導体による漂白活性化方法が開示されているが、これは洗濯水中で分子構造が変わりながら漂白剤の匂い(bleach odor)を発生
させるという問題点がある。また、特許文献8〜12などには多数の有機ペルオキシカルボン酸が漂白活性化剤として開示されているが、この漂白活性化剤は熱に対する不安定性により、自らの活性酸素を喪失する傾向がある。これを解決するため、有機ペルオキシカルボン酸をコーティングおよび顆粒化する技術(特許文献13〜14参照)が導入されたが、この技術は経済効率の点で劣るだけでなく、低温水溶解性が低下するため漂白活性化剤が衣類に残留する現象が起きるという短所がある。
【0004】
上述したような理由から、無機過酸化物とともに洗濯水中においてのみ、漂白活性ペルオキシカルボン酸を放出し、特に低温でもペルオキシカルボン酸を放出でき、かつ、保存安全性があって長期保管が容易であり、親水性汚染だけではなく疎水性汚染に対する漂白力に優れ、漂白剤匂いがほとんど発生しないエステル系漂白活性化剤が望まれる。
【0005】
特許文献15には、このようなエステル系漂白活性化剤化合物を開示している。しかし、前記文献に開示されたエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法を見ると、1)ホスゲンを添加して反応させるとき、アルゴンガスを使用し、反応温度を約−78℃程度に調節しなければならず、2)ヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体、または、その塩をメチルシアニド(CH3CN)などの有機溶媒中で添加して反応させる。この場合、
製造工程が非常に複雑であるだけでなく収率も低い(約50%)という短所がある。
【特許文献1】米国特許第4412934号明細書
【特許文献2】米国特許第4483778号明細書
【特許文献3】米国特許第4606838号明細書
【特許文献4】米国特許第4671891号明細書
【特許文献5】米国特許第4686061号明細書
【特許文献6】米国特許第5043089号明細書
【特許文献7】欧州特許第0210674号明細書
【特許文献8】米国特許第4179390号明細書
【特許文献9】米国特許第4259201号明細書
【特許文献10】米国特許第5098598号明細書
【特許文献11】米国特許第5520844号明細書
【特許文献12】米国特許第5575947号明細書
【特許文献13】欧州特許第396341号明細書
【特許文献14】欧州特許第256443号明細書
【特許文献15】米国特許第5705091号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するために案出されたものである。本発明は、漂白活性化剤として多くの利点を有するエステル系化合物を簡易かつ経済的な方法で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は(A)脂肪酸モノエステルを製造するステップと、(B)前記脂肪酸モノエステルを、塩基の存在下でホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択されたいずれか1つと反応させてクロロホルメートを製造するステップと、(C)溶媒中で
前記クロロホルメートをヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体、または、その塩と反応させるステップと、を含む、下記化学式1で表されるエステル系化合物を製造する方法を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
前記化学式1において、R1は炭素数が1ないし19である直鎖状または分枝状のアル
キル基またはアルケニル基、これらが2種以上混合された混合物であり、nは1ないし10の整数であり、Lは以下の離脱基のうちの一つである。
【0010】
【化4】

【0011】
前記離脱基において、R2は炭素数が1ないし20であるアルキルまたはアルケニルで
あり、Yは水素、塩素、臭素、SO3M、CO2MまたはOSO3Mであって、Mは水素、
アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、または等価のアルカリ土類金属イオンである。
【0012】
本発明によるエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法において、(B)ステップのクロロホルメート製造ステップは塩基の存在下で行われるが、塩基としては有機塩基または無機塩基いずれも使用可能であって、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。(B)ステップの反応温度は10ないし40℃に保持することが望ましい。
【0013】
また、本発明によるエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法において、(C)ステッ
プの溶媒としては水を用いることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、エステル系漂白活性化剤化合物の簡易かつ経済的な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法について詳細に説明する。
まず、下記化学式2で表される脂肪酸モノエステル化合物を合成する。
【0016】
【化2】

【0017】
前記化学式2において、R1は炭素数が1ないし19である直鎖状または分枝状のアル
キル基またはアルケニル基であるか、これらが2種以上混合された基であり、nは1ないし10の整数である。
【0018】
前記化学式2の化合物は、脂肪酸とエチレングリコールまたは酸化エチレンとをエステル化反応させて得られる。より具体的に説明すると、脂肪酸に過剰のエチレングリコールまたは酸化エチレンを添加して酸触媒下、常圧で加温して反応させた後、生成してくる水を除去しながらエステル化反応を行う。エチレングリコールまたは酸化エチレンの望ましい添加量は、脂肪酸の1.0ないし10.0当量である。また、全体量を基準として0.0ないし0.5重量%のp−トルエンスルホン酸、硫酸、または塩酸などを酸触媒として用いることができる。反応温度は60ないし150℃、反応時間は2時間ないし10時間にすることが望ましい。
【0019】
その他に、前記化学式2の化合物は、米国特許第5,705,091号公報に開示されるように、塩化アルカノイル化合物をエチレングリコールまたは酸化エチレンと反応させて得ることもできるが、その他の公知の方法を用いてもよい。
【0020】
次いで、合成した脂肪酸モノエステルを塩基の存在下でホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンと反応させて下記化学式3で表されるクロロホルメートを製造する。
【0021】
【化3】

【0022】
前記化学式3において、R1は炭素数が1ないし19である直鎖状または分枝状のアル
キル基またはアルケニル基であるか、これらが2種以上混合された基であり、nは1ないし10の整数である。
【0023】
前述したクロロホルメートの製造ステップをさらに詳述すると次のとおりである。反応器に有機溶媒と合成した脂肪酸モノエステル及び適当な塩基を入れた後、ホスゲン、ジホスゲンまたはトリホスゲンを、たとえば、−10ないし10℃で徐々に添加する。脂肪酸
モノエステルは、ホスゲン化合物の1.0ないし4.0当量添加することが適当である。一方、塩基としては、無機塩基または有機塩基いずれも使用可能であり、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。次いで、適当な温度で撹拌して反応を進行させた後、水を用いて有機層を分離する。望ましい反応温度は10ないし40℃である。その後、無水硫酸マグネシウムなどの水分除去剤を用いて水分を除去し、有機溶媒を減圧蒸留してクロロホルメートを製造する。
【0024】
最後に、前述した方法で製造したクロロホルメートをヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体、または、その塩と反応させ、下記化学式1で表されるエステル系漂白活性化剤化合物を製造する。
【0025】
【化1】

【0026】
前記化学式1において、R1は炭素数が1ないし19である直鎖状または分枝状のアル
キル基またはアルケニル基であるか、これらが2種以上混合された混合物であり、nは1ないし10の整数であり、Lは下記化学式4で表される群から選択されたいずれか1つである。
【0027】
【化4】

【0028】
前記化学式4において、R2は炭素数が1ないし20であるアルキルまたはアルケニル
であり、Yは水素、塩素、臭素、SO3M、CO2MまたはOSO3Mであって、Mは水素
、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、または等価のアルカリ土類金属イオンである。
【0029】
クロロホルメートから前記化学式1で表されるエステル系漂白活性化剤化合物を製造する方法をさらに詳述すると、次のようになる。クロロホルメートと、ヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩とを適当な溶媒中で加温して反応させた後、室温に冷却する。溶媒としては水を用いることが望ましいが、水の投入量は、反応の容易性および反応物の濾過の容易性を考慮すると、クロロホルメート、水およびヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩を含んだ反応系全体の量を基準として、10ないし60重量%であることが望ましい。溶媒として水を用いる場合、好適な反応温度および反応時間はそれぞれ20ないし100℃および0.1ないし5時間である。生成した沈殿物を濾過または噴霧により溶媒を除去した後、乾燥過程を経て、エステル系漂白活性化剤化合物が最終的に得られる。
【0030】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は種々の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより
完全に説明するために提供されるものである。
【0031】
〔実施例〕
(A)2−デカン酸ヒドロキシエチルの製造
撹拌機、温度計、コンデンサ、蒸留器の付いた4口フラスコにデカン酸172g(1.0mol)と過剰のエチレングリコール186g(3.0mol)を投入し、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.4gを用いて常圧90℃で2時間反応させた後、圧力を30torrにして反応中に生成する水を除去しながら2時間エステル化した。反応後、反応物の分析は、A.O.C.S.分析法(Official Method Te 2a−6
4、1987)を用いた酸価の測定により行う。脂肪酸の含量は1.0%以下であった。得られた反応物に蒸留水100gを加えて10分間撹拌した後、下層を除去し、さらにここに蒸留水150gを加えて20分間撹拌した後、再び下層を除去した。水分を除去するため、75℃、30torrの圧力で20分間処理して除去し、下記化学式5で表される脂肪酸モノエステルを製造した。
【0032】
【化5】

【0033】
反応物中の脂肪酸モノエステルの含量は93%以上、脂肪酸は1%以下、水分含量は0.5%以下、ジエステルの含量は5%以下であった。これをクロロホルメートを製造する次の反応にそのまま使用した。
【0034】
(B)デカン酸2−クロロカルボニルオキシエチルの製造
前記工程で製造した化学式5の化合物(2−デカン酸ヒドロキシエチル)33gとジホスゲン17.16gとを、0ないし4℃で塩化メチレン50mLに添加して溶かした後、アミン存在下、室温で2時間反応させた。次いで、水を用いて有機層を分離した後、無水硫酸マグネシウムを用いて水分を除去した。その後、減圧蒸留して溶媒を除去して乾燥させ、下記化学式6で表される茶色の液体化合物41.7gを得た。
【0035】
【化6】

【0036】
(C)デカノイルオキシエトキシカルボニルオキシベンゼンスルホン酸塩の製造
NaOH 10.55gと4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩二水和物6
1.24gを0ないし30℃で水120mLによく溶解させた後、化学式6の化合物(デカン酸2−クロロカルボニルオキシエチル)73.45gを添加し、60℃で2時間撹拌した。次いで、室温に冷却した後、溶媒および塩を濾過により除去して乾燥させ、化学式7で表される白色固体の生成物109.43gを得た。
【0037】
【化7】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法は簡易かつ経済的であるため、漂白活性化剤として多くの長所を有する化学式1のエステル系漂白活性化剤化合物の製造に有用に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式2で表される脂肪酸モノエステルを製造するステップと、(B)前記脂肪酸モノエステルを、塩基存在下、ホスゲン、ジホスゲンおよびトリホスゲンからなる群より選択されたいずれか1つと反応させて下記化学式3で表されるクロロホルメートを製造するステップと、(C)前記クロロホルメートを溶媒中でヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩と反応させるステップと、を含むことを特徴とする下記化学式1で表されるエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法;
【化1】

【化2】

【化3】

前記化学式1、2および3において、R1は炭素数が1ないし19である直鎖状または分
枝状のアルキル基またはアルケニル基であるか、これらが2種以上混合された基であり、nは1ないし10の整数であり、Lは下記化学式4で表される群から選択されたいずれか1つである;
【化4】

前記化学式4において、R2は炭素数が1ないし20であるアルキルまたはアルケニルで
あり、Yは水素、塩素、臭素、SO3M、CO2MおよびOSO3Mからなる群より選択さ
れたいずれか1つであり、Mは水素、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオンおよび等価のアルカリ土類金属イオンからなる群から選択されたいずれか1つである。
【請求項2】
前記(A)ステップの脂肪酸モノエステルは、脂肪酸とエチレングリコールまたは酸化エチレンとを反応させて製造することを特徴とする請求項1に記載のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法。
【請求項3】
前記(B)ステップの反応温度を、10ないし40℃に保持することを特徴とする請求項1に記載のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法。
【請求項4】
前記(C)ステップの溶媒として水を用いることを特徴とする請求項1に記載のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法。
【請求項5】
前記水の投入量は、水、クロロホルメートおよびヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩の全体量を基準として、10ないし60重量%であることを特徴とする請求項4に記載のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法。
【請求項6】
前記(C)ステップの反応温度および反応時間は、それぞれ20ないし100℃および0.1ないし5時間であることを特徴とする請求項4に記載のエステル系漂白活性化剤化合物の製造方法。

【公表番号】特表2007−530668(P2007−530668A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506066(P2007−506066)
【出願日】平成16年5月25日(2004.5.25)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001243
【国際公開番号】WO2005/095323
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501264013)エルジー ハウスホールド アンド ヘルス ケア エルティーディー. (7)
【Fターム(参考)】