説明

エスリカルバゼピンの治療的使用

癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される難治性状態の治療における、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンの新たな応用。好ましくは、難治性状態は、少なくとも部分的に、P-gp又はMRPの過剰発現により生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤療法に関する。特に本発明は、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンの治療的使用に関する。
【0002】
本明細書において用いられる「酢酸エスリカルバゼピン」という用語は、(S)(-)-10-アセトキシ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミドを意味する。また本明細書において用いられる用語エスリカルバゼピン又はS-リカルバゼピン(S-リカルバゼピン)は、(S)(+)-10,11-ジヒドロ-10-ヒドロキシ-5Hジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミドを意味する。
【0003】
酢酸エスリカルバゼピン、(S)(-)-10-アセトキシ-10,11-ジヒドロ-5H-ジベンズ/b,f/アゼピン-5-カルボキサミドは、様々な状態(例えば、癲癇及び情動脳障害)、並びに変性疾患及び虚血後疾患の苦痛状態及び神経機能変化の治療に役立つ現在開発されている新薬である。カルバマゼピン及びオクスカルバゼピンに化学的に関連するが、酢酸エスリカルバゼピンは薬理活性を失うことなく、特定の有毒代謝物(例えば、エポキシド)の生産を回避し、かつ鏡像異性体又は代謝産物及び接合体のジアステレオ異性体の不必要な生産を回避すると考えられている(Almeidaらの文献、2005a; Almeidaらの文献、2005b; Almeidaらの文献、2002; Almeidaらの文献、2003; Almeidaらの文献、2004; Benesらの文献、1999; Bialerらの文献、2004; Soares-da-Silva、2004)。オクスカルバゼピンとは異なり、酢酸エスリカルバゼピンは、活性代謝産物エスリカルバゼピンにほぼ完全に代謝される(Almeidaらの文献、2005a; Almeidaらの文献、2005b)。
【0004】
明細書の全体にわたって、「薬耐性」という用語及びその変形体は、患者が全く医薬治療に応答しない状態を指すと理解される;
「不応性」という用語は、患者がそれらの薬物に次第に応答しなくなり、癲癇の場合、多くの発作を患う状態を指すと理解される;及び、
「難治性」という用語及びその変形体は、治療困難又は治療(薬剤)抵抗を示すと理解され、従って、薬耐性及び不応性状態を包含する。
【0005】
薬物療法(薬耐性)に対する抵抗は、癲癇(Loscherらの文献、2004)の治療の大きな課題のうちの1つである。最大耐量で2つの以上の抗癲癇薬(AED)を用いる治療にもかかわらず、すべての癲癇患者の約1/3が、発作に悩まされる。この難治性は、側頭葉癲癇患者において、さらにより高い(50-70%)(Kwanらの文献、2000; Mohanrajらの文献、2005; Schmidtらの文献、2005; Stephenらの文献、2006)。薬耐性の根拠となる要因及び機序は完全には理解されていないが、アデノシン三リン酸(ATP)-結合カセット(ABC)ファミリー(多剤輸送体)の薬剤-流出輸送体が重要な役割を担う可能性がある。P-糖タンパク質(P-gp又はABCB1又はMDR1)は、最も広く研究されている多剤輸送体である。事実、P-gpは、一般的に用いられるAEDを含む様々な生体異物を輸送する(Potschkaらの文献、2002; Potschkaらの文献、2001a; Potschkaらの文献、2001b; Rizziらの文献、2002; Sillsらの文献、2002)。
【0006】
事実、現在の普及している仮説は、反復性発作活性によって誘発される脳毛細管内皮での薬剤流出(「多剤」)輸送体の過剰発現が、脳間質液のAED濃度を低下させ、薬剤耐性に関与するということである(Kwanらの文献、2005; Loscherらの文献、2005a; Loscherらの文献、2005b; Schmidtらの文献、2005)。いくつかの研究は、P-糖タンパク質(P-gp又はMDR1)及び一部の多剤耐性タンパク質(MRP)ファミリーなどのような薬剤流出輸送体が、医学的に難治性の癲癇患者から外科的に切除された脳組織において過剰発現されることを示している(Kwanらの文献、2005; Loscherらの文献、2005a; Loscherらの文献、2005b; Schmidtらの文献、2005)。さらに、薬耐性癲癇患者からの癲癇発作性脳組織において、P-糖タンパク質(P-gp)並びにMRP1及びMRP2などの一部の多剤耐性タンパク質(MRP)ファミリーを含むいくつかの多剤輸送体の過剰発現が報告されている(Aronicaらの文献、2003; Dombrowskiらの文献、2001; Sisodiyaらの文献、2002; Tishlerらの文献、1995)。過剰発現は、血液脳関門(BBB)を形成する脳毛細管内皮細胞、並びに星状細胞及び内皮細胞を被鞘(ensheath)し、かつBBB機能に関与する星状細胞プロセス、双方において発見された。ヒトの不応性癲癇脳組織において(Aronicaらの文献、2003; Aronicaらの文献、2004; Marchiらの文献、2004; Sisodiyaらの文献、2002; Tishlerらの文献、1995)、並びに癲癇ラット脳において(van Vlietらの文献、2004; Volkらの文献、2004a; ヴォルクらの文献、2004b)、P-gpは、内皮細胞、ニューロン及び膠細胞において過剰発現される。P-gp過剰発現、特に内皮細胞における過剰発現は、脳から血液への薬剤排出を増加させることがあり、治療標的での適切なAED濃度の実現を妨げる。P-gp及びMRPなどの多剤輸送体が広範囲の薬剤を基質として受け入れるため、BBBにおけるこの種の流出輸送体の過剰発現は、難治性癲癇患者における様々なAEDに対する耐性の考えられ得る解釈の1つである(Kwanらの文献、2005; Loscherらの文献、2005a; Loscherらの文献、2005b; Schmidtらの文献、2005)。
【0007】
癲癇の放置は重症となる可能性があり、短命化、身体障害、神経心因性及び精神医学的障害、並びに社会的能力障害(Sperling, 2004)を含み得る。これらの薬剤が異なる機序によって作用するという事実にもかかわらず、大部分の不応性癲癇患者は、いくつかの(全てではないが)AED耐性を有する(Kwanらの文献、2000; Sisodiya、2003)。この多剤種の耐性は、薬耐性癲癇の主な原因として癲癇により誘発された特定薬剤標的の変化と相反し、むしろ非特異性及びおそらく適応機序を示す(Sisodiya、2003)。癲癇は、薬剤耐性が脳の多剤輸送体の発現促進に関与する、第1のCNS疾患であった(Tishlerらの文献、1995)。癲癇発作性脳組織で見出される血管を覆う星状膠細胞終足部の多剤輸送体の発現は、これらの状態下で「第2の関門」を意味する可能性がある(Abbott, 2002; Sisodiyaらの文献、2002)。いくつかの広く使われているAED (それらが脳に浸透することができるように親油性にされている)は、BBBにおけるP-gp又はMRPに対する基質である(Potschkaらの文献、2002; Potschkaらの文献、2001a; Potschkaらの文献、2003; Potschkaらの文献、2001b; Rizziらの文献、2002; Schinkelらの文献、1996; Sillsらの文献、2002; Tishlerらの文献、1995)。その結果、脳によるこれらの薬剤の取り込みは、P-gpをノックアウトするか又は防ぐことによって増加することができる。従って、癲癇発作性組織のこれらの輸送体の過剰発現は、癲癇のニューロンに達する薬剤の量を減らす可能性がある。これは、癲癇の多剤耐性のもっともらしい解釈の1つである(Sisodiya、2003)。
【0008】
難治性癲癇の多剤輸送体の仮説が生物学的にもっともらしいにもかかわらず、それは証明されていない(Loscherらの文献、2004; Sisodiya、2003)。高P-gp発現が、難治性癲癇患者から癲癇発作性脳組織に示されたという事実にもかかわらず、この組織を、AED治療に反応する患者由来の組織と直接比較することが不可能であるように(これらの患者は癲癇発作焦点の外科的切除を受ける必要はないので)、十分な制御が欠けている。従って、薬剤耐性癲癇患者のP-gp発現増加が、薬耐性の原因であるか、又は抑制されていない発作の結果、すなわち薬物反応にかかわりなく癲癇の脳組織に生じる付帯徴候の結果であるかどうかは、明らかでない。原理の直接証明のためには、P-gp阻害剤が癲癇の多剤耐性を妨げるかどうかが立証されなければならない。この示唆に沿って、近年、Summersら(Summersらの文献, 2004)は、ベラパミル及びAEDを用いる併用治療が、難治性癲癇患者の全体の発作制御及び主観的な生活の質を大きく改善したことを報告した。ベラパミルは、P-gpによって輸送されるカルシウムチャネル遮断薬であり、P-gpによる他の基質の輸送を競争的に遮断する(Schinkelらの文献、2003)。BBBでのP-gpによるその効率的な流出輸送のため、ベラパミル自体は脳に浸透しない(Kortekaasらの文献、2005)ので、ベラパミル及びAEDの同時投与に応答して実験的かつ臨床的に観察される発作制御の改善は、ベラパミルのカルシウムチャネル遮断効果に起因しない。ベラパミル及びAEDを用いる併用治療の有望な臨床結果(Summersらの文献、2004)の後、Summersらは、他の薬剤耐性癲癇患者においてAED及びベラパミルの組合せの試験を続け、再び良好な結果を得た(詳細は(Loscherらの文献、2005a)を参照されたい)。
【0009】
オクスカルバゼピンは、単独療法又は続発性汎化の有無にかかわらない部分的発症発作患者の付加療法において使われている(Mayらの文献、2003; Schmidtらの文献、2001; Shorvon、2000; Tartaraらの文献、1993)。オクスカルバゼピンは、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピン混合物への迅速な10-ケト還元を受ける。そのラセミ混合物は通常、リカルバゼピン(10-ヒドロキシ-10,11-ジヒドロカルバゼピン、10-OHCBZ又はMHD)と呼ばれる(Faigleらの文献、1990; Feldmannらの文献、1978; Feldmannらの文献、1981; Fleschらの文献、1992; Schutzらの文献、1986; Volosovらの文献、1999)。
【0010】
近年では、リカルバゼピン(10-OHCBZ)は、単純拡散によって血液脳関門を通過しない(すなわちP-gpの基質である)ことが示唆された。事実、MDR1の発現レベルが、癲癇組織の10-OHCBZ濃度と逆相関しているとわかった(Marchiらの文献、2005)。ニューロン標的でその活性代謝産物の不十分な濃度の獲得を測定することによって、P-gpがオクスカルバゼピンに対する耐性において役割を担う可能性があると結論された(Marchiらの文献、2005)。オクスカルバゼピンをリカルバゼピン(10-OHCBZ)に変換しないラットにおいて、P-gp阻害剤ベラパミルの同時投与により、ピロカルピン発作モデルのオクスカルバゼピンの抗痙攣活性が顕著に増強された(Clinckersらの文献、2005)。しかし、P-gp又はMRPがS-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンに対して同一の親和性を与えられるかどうかは、測定されないままである。
【0011】
今回本発明者らは、驚くべきことに、S-リカルバゼピンがP-糖タンパク質(P-gp)又は多剤耐性タンパク質(MRP)の基質でないということを発見した。この発見は、薬耐性癲癇及び他の状態の治療に好機を提供する。
【0012】
また本発明者らは、驚くべきことに、R-リカルバゼピンにより与えられた脳曝露に対してS-リカルバゼピンへの脳曝露の向上を発見した。癲癇発生(角膜キンドリング(corneal kindling))及び苦痛の実験的モデルにおいて、S-リカルバゼピンの増強された脳浸透は、R-リカルバゼピンに対してS-リカルバゼピンの増強された効果と正相関した。
【0013】
また本発明者らは、驚くべきことに、P-gp又はMRPの阻害剤が酢酸エスリカルバゼピン、S-リカルバゼピンの主活性代謝産物の脳浸透に干渉しないということを発見し、酢酸エスリカルバゼピンを用いる薬耐性癲癇の治療に好機を提供する発見をした。
【0014】
P-gp及びMRPなどの流出ポンプの基質として機能せず、したがって、P-gp又はMRP阻害剤の付加投与を必要としないエスリカルバゼピン(酢酸エスリカルバゼピンの主活性代謝産物)の驚くべき潜在性のため、これらの化合物は、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化に苦しむ治療困難な患者の臨床管理のための他のAEDに渡って利益を提供すると考えられる。
【発明の概要】
【0015】
本発明の一態様では、P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤の使用が治療される対象に不利益に影響を与える状況において、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される状態を治療するための医薬品の製造における、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用を提供する。
【0016】
例えば、P-糖タンパク質阻害剤(ベラパミル)の投与は、心臓病の対象に不利益に影響を与える。従って、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの心臓病患者への投与、及び前述の選択された1以上の状態の患者への投与により、その選択された状態がP-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤の投与を必要とすることなく効果的に治療され得る。
【0017】
ベラパミルの投与によって不利益に影響を受ける心臓病の例を挙げると、以下のものがある:徐脈; 第2度及び第3度房室ブロック; 心不全; ウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群; ベータ受容体遮断治療を用いている患者。
【0018】
シクロスポリンのための禁忌は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:シクロスポリンに過敏性の患者、非管理高血圧症(uncontrolled hypertension)、前悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌又はウイルス感染の患者。
【0019】
プロベネシドのための禁忌は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:プロベネシド又はコルヒチンに対する過敏症、2歳未満の患者、血液疾患、尿酸腎結石。
【0020】
従って、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの、禁忌状態の1つに苦しむ患者への投与又は前記禁忌カテゴリーの1つに分類される患者への投与、及び癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化の1つ以上に苦しむ患者への投与により、その後の状態が、P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤の投与を必要とすることなく効果的に治療され得る。
【0021】
本発明のさらなる態様では、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される薬剤耐性状態を治療するための医薬品の製造における酢酸エスリカルバゼピン又はエスリカルバゼピンの使用であって、治療される患者は、P-gp阻害剤又はMRP阻害剤と不利益に反応する薬剤の投与を必要とする状態に苦しんでいる患者である、前記使用を提供する。
【0022】
P-糖タンパク質阻害剤及び多剤耐性タンパク質阻害剤の例を挙げると、以下のものがある:シクロスポリン、ベラパミル、バルスポダル(valspodar)、ビリコダル(biricodar)、プロベネシド、エラクリダル(elacridar)、タリキダル(tariquidar) XR9576、ゾスキダル(zosuquidar) LY335979、ラニキダル(laniquidar) R101933、ONT-093。
【0023】
本発明の別の態様では、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される難治性状態を治療するための医薬品の製造におけるエスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用を提供する。
【0024】
好ましくは、難治性状態は、少なくとも部分的に、P-gp又はMRPの過剰発現によって生じる。
【0025】
好ましくは、該状態の難治性状況は、少なくとも部分的に、P-gp又はMRPの過剰発現が原因である。
【0026】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0027】
別の実施態様では、該状態の難治性状況は、患者にP-gp又はMRPの基質でない医薬を用いる治療に耐性があることに起因する。
【0028】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0029】
本発明の上記態様において、好ましくは、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンは、前記状態を治療するための単独療法として投与される。好ましくは、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンは、ベラパミルなどのP-糖タンパク質阻害剤、又はプロベネシドなどの多剤耐性タンパク質阻害剤の非存在下で投与される。
【0030】
本発明の別の態様では、P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤と不利益に反応する第二の薬剤と組み合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される状態を治療するための医薬品の製造における前記使用を提供する。
【0031】
第2の薬剤は、徐脈; 第2度及び第3度房室ブロック; 心不全; 又はウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群; 非管理高血圧症; 善悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍; 水痘又は帯状疱疹; 腎臓又は肝臓障害; 任意種の細菌又はウィルス性感染症; 血液疾患; 又は尿酸腎結石の治療のための薬剤であってもよい。
【0032】
前記状態は、難治性状態であってもよい。
【0033】
好ましくは、難治性状態は、少なくとも部分的に、P-gp又はMRPの過剰発現によって生じる。
【0034】
好ましくは、該状態の難治性状況、少なくとも部分的に、P-gp又はMRPの過剰発現が原因である。
【0035】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0036】
好ましくは、難治性状態は、不応性状態である。
【0037】
別の実施態様では、該状態の難治性状況は、患者にP-gp又はMRPの基質でない医薬を用いる治療に耐性があることに起因する。
【0038】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0039】
好ましくは、難治性状態は、不応性状態である。
【0040】
好ましくは、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピン及び第2の薬剤は、ベラパミルなどのP-糖タンパク質阻害剤、又はプロベネシドなどの多剤耐性タンパク質阻害剤の非存在下で投与される。
【0041】
本発明の別の態様では、心臓病を治療するための薬剤と組み合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、前記心臓病、並びに、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される更なる状態を治療するための医薬品の製造における前記使用を提供する。
【0042】
心臓病を治療するための薬剤は、徐脈; 第2度及び第3度房室ブロック; 心不全; 又はウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群の治療のための薬剤であってもよい。
【0043】
本発明の別の態様では、次の状態:非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性/ウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石の1つ以上を治療するための薬剤と組み合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、前記状態、並びに、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される更なる状態を治療するための医薬品の製造における、前記使用を提供する。
【0044】
癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化は、難治性であってもよく、難治性状況はP-gp及び/又はMRPの過剰発現によって生じるものであってもよい。
【0045】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0046】
好ましくは、難治性状態は、不応性状態である。
【0047】
別の実施態様では、該状態の難治性状況は、患者にP-gp又はMRPの基質でない医薬を用いる治療に耐性があることに起因する。
【0048】
好ましくは、難治性状態は、薬耐性状態である。
【0049】
好ましくは、難治性状態は、不応性状態である。
【0050】
本発明の別の態様では、酢酸エスリカルバゼピン又はエスリカルバゼピンを、P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤と不利益に反応する薬剤及び医薬として許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤と不利益に反応する薬剤は、徐脈;第2度及び第3度房室ブロック; 心不全; 又はウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群; 非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性/ウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石の治療のための薬剤であってもよい。
【0052】
本発明の別の態様に従って、酢酸エスリカルバゼピン又はエスリカルバゼピンを、以下の状態の1つ以上を治療するための薬剤及び医薬として許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物を提供する:心臓病、非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性/ウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石。
【0053】
心臓病を治療するための薬剤は、徐脈; 第2度及び第3度房室ブロック; 心不全; 又はウォルフ-パーキンソン-ホワイト症候群の治療のための薬剤であってもよい。
【0054】
医薬組成物は、錠剤又はカプセルなどの経口剤形など、任意の適切な方法において製剤化されることができる。
【0055】
上記のことから、本発明に従って、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンは、P-糖タンパク質又は多剤耐性タンパク質の基質である医薬での治療が困難であると以前に判明した種々の状態を治療するために使用することができると認められる。
【0056】
本明細書中で用いられる、用語「治療」、及び「治療する」又は「治療している」などの変形体は、ヒト又はヒト以外の動物に利益をもたらすことができる任意の療法を意味する。治療は、既存の状態に関するものであってもよく、又は予防(予防治療)であってもよい。治療は、治癒、緩和又は予防効果を含むことができる。
【0057】
特に、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンは、1種以上の医薬を用いた治療後の再発に苦しむ患者、すなわち不応性状態の患者、更には、任意の医薬を用いた治療に応答しない患者、すなわち薬耐性状態の患者を治療するために役立つ。
【0058】
癲癇において、例えば、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンは、1種以上の抗癲癇薬での治療にもかかわらず、1週間あたり5回以上の発作がある対象の治療に有用である。
【0059】
躁病などの情動障害において、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンは、P-gp又はMRP輸送体基質(例えばカルバマゼピン、オクスカルバゼピン)である1種以上の医薬の投与後の再発に苦しむ患者の治療に役立つ。
【0060】
神経因性疼痛障害において、エスリカルバゼピン及び酢酸エスリカルバゼピンは、P-gp又はMRP輸送体基質(例えばカルバマゼピン、オクスカルバゼピン)である1種以上の鎮痛薬の投与後の再発に苦しむ患者の治療に役立つ。
【0061】
また本発明は、前述の状態を治療するための方法であって、その必要がある対象に治療上有効量の有効成分を投与することを伴う前記方法を包含することが理解されるであろう。
【0062】
本発明に従って治療される対象は、好ましくはヒト対象である。
【0063】
P-gp又はMRP遮断薬を用いる付加療法の必要なく、酢酸エスリカルバゼピン又はS-リカルバゼピンで治療することができる医学的状態は、以下を含む:
1.情動障害
2.統合失調性感情障害
3.双極性障害
4.注意障害
5.不安障害
6.神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害
7.感覚運動障害
8.前庭障害
【0064】
1.情動障害は、以下を含む:
うつ病、月経前不快性障害、分娩後うつ病、閉経後うつ病、神経性食欲不振症、神経性過食症及び神経変性関連の抑うつ症状。
2.統合失調性感情障害は、以下を含む:
分裂抑うつ性症候群(Schizodepressive syndromes)、統合失調症、極度の精神病状態、分裂躁病症候群、不快性及び攻撃的挙動、挿話的コントロール不能又は間欠性爆発性障害、及び境界性人格障害。
3.双極性障害は、以下を含む:
急速な変動(急速なサイクラー(rapid cyclers))での双極性障害及び不安定双極性障害、躁鬱病の障害、急性躁病、ムード・エピソード(mood episode)、及び躁病及び低躁病エピソード。
4.注意障害は、以下を含む:
自閉症などの注意欠陥過活動性障害及び他の注意障害。
5.不安障害は、以下を含む:
社会的不安障害、外傷後ストレス障害、パニック、強迫性障害、アルコール中毒、薬剤離脱症候群、及び切望。
6.神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害は、以下を含む:
三叉神経、疱疹後疱疹、及び癆性神経痛などの神経因性疼痛及び関連する痛覚過敏、糖尿病の神経因性疼痛、片頭痛、緊張型頭痛、カウザルギー、及び腕神経叢裂離などの求心路遮断症候群。
7.感覚運動及び関連障害は、以下を含む:
不穏下肢症候群、痙性、片側顔面痙攣、夜間発作性ジストニア、運動及び感受性欠損に付随する脳虚血、パーキンソン病、及び振せん麻痺障害、抗精神病薬によって誘発された運動障害、遅発性ジスキネジー、エピソード夜間放浪(episodic nocturnal wandering)、及びミオトニー。
8.前庭障害は、以下を含む:
ニューロン損失、聴力障害、突然の難聴、めまい又はメニエール病などの、耳鳴り又は他の内耳/蝸牛興奮性関連疾患。
【図面の簡単な説明】
【0065】
添付図面を参照する:
【図1】図1は、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンについての脳/血漿比(Cmax及びAUC)を示しているグラフである;
【図2】図2は、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンについての脳血漿比に対するプロベネシド及びベラパミルの効果を示す;
【図3】図3は、酢酸エスリカルバゼピン投与後のS-リカルバゼピンの脳血漿比率に対するベラパミル及びプロベネシドの効果を示す;
【図4】図4は、キンドリングの獲得に対するS-リカルバゼピンを用いた1日2回の処置の効果を示す;
【図5】図5は、キンドリングの獲得に対するR-リカルバゼピンを用いた1日2回の処置の効果を示す;
【図6】図6は、S-リカルバゼピン、R-リカルバゼピン及びガバペンチンについてのホルマリン足試験のデータを示す。
【実施例】
【0066】
(方法及び材料)
(S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの脳アクセス)
体重30〜35gのCD-1マウスを、実験前に少なくとも5日間、制御環境条件(23〜24℃)で維持した。すべての動物処置は、European Directive number 86/609及び「実験動物のケア及び使用ガイド(Guide for the Care and Use of Laboratory Animals)」, 第7版, 1996, for Laboratory Animal Research (ILAR), Washington, DCに従って行った。実験の第1組において、マウスに、S-リカルバゼピン又はR-リカルバゼピン(350mg/kg)を胃管経由で与えた。血液及び脳サンプルを、薬剤投与後12の異なる時点(15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、10時間、16時間、24時間、48時間及び72時間)で得た。実験の第2組において、ビヒクル、ベラパミル(20mg/kg)又はプロベネシド(100mg/kg)で前処理したマウスに、30分後、腹膜内にS-リカルバゼピン又はR-リカルバゼピン(100mg/kg)を与えた。プロベネシドは、MRP1及びMRP2を阻害するが、有機陰イオン輸送体も阻害することが示されている(Gerkらの文献、2002;Schefferらの文献、2002)。より選択的なP-gp及びMRP1/2阻害剤が存在するにもかかわらず、ベラパミル及びプロベネシドはこれらの多剤輸送体の広く使われている標準阻害剤である。血液収集後、血漿を遠心によって得た。脳サンプルを、リン酸緩衝液中でホモジナイズ(pH 5; 4mL/g)し、遠心し、上澄みを収集した。血漿及び組織上澄みを、分析まで冷凍保存した。S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの分析は、固相抽出後に、HPLC-UV又はLC-MS方法を用いて実行した。
【0067】
S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの下記薬物動態学的パラメータは、濃度からの非区画分析対時間プロファイル:最大観察血漿薬剤濃度(Cmax)、Cmaxが生じた時間(tmax)、時刻ゼロから最後のサンプリング時間の血漿濃度下面積対時間曲線(AUC)(濃度は定量化限界時点又はそれより上とした。)及び時刻ゼロから無限のAUC(AUC0-∞)、排出半減期(t1/2)、及び平均滞留時間(MRT)によって得た。薬物動態学的パラメータは、WinNonlin(バージョン4.0)を用いて決定した。必要に応じて、幾何平均、算術平均、標準偏差(SD)、変動係数(CV)、中央値、最小値及び最大値を使用して、各処置及び予定のサンプリング時間の全データの要約統計量を記録した。適切と考えられる場合に、全ての計算において統計パッケージSAS Version 8.2以上(SAS Institute, Cary, USA)を使用した。
【0068】
(キンドリング手順)
ビヒクル(蒸留水中の30% DMSO)又は30%のDMSO中に溶解された化合物を、1日2回腹膜内に投与した。NMRIマウスは、12日連続で1日2回刺激した(刺激間隔6〜7時間)。3mAの電流強度及び3秒(パルス周波数50Hz)間の電子刺激を、角膜に配置された食塩水浸漬銅電極を介して適用した。試験対象のインピーダンスに関係なく、刺激装置は定電流を送達するために使用した。発作重症度は、Racinの改質システムに従ってランク付けした(Racine, 1972): 1, 軽度の顔面クローヌス及びまばたき; 2, 重度の顔面クローヌス、点頭、咀嚼; 3, 片側又は交互の前肢クローヌス; 4, 立ち上がり及び転倒を伴う両側前肢クローヌス; 5, 立ち上がり及び転倒を伴う両側前肢クローヌス; 6、強直性前肢及び/又は後肢伸張。
【0069】
(ホルマリン足試験)
鎮痛性/抗炎症性活性を検出する方法は、Wheeler-Acetoらの文献によって記載されている方法に従う(Wheeler-Acetoらの文献、1991)。NMRIマウスの後方左足に、5%のホルマリン(25μl)の足底内注射をした。この処置により、対照動物の後肢舐めを誘導した。舐め時間をホルマリン注射の開始15分後、15分間計測した。1グループあたり10匹のマウスを調査した。試験は、遮光下で行った。S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンを、試験120分前(すなわちホルマリンの100分前)に100mg/kgの経口投与量で試験し、各実験のビヒクル対照グループと比較した。
【0070】
(結果)
(S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの脳アクセス)
表1に示すように、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンは経口投与後、迅速に吸収され、15分(tmax)で血漿中のCmaxを達成する。S-リカルバゼピンの投与後では、S-リカルバゼピンのみが血漿中に存在し、一方、R-リカルバゼピン投与後では、主要な循環物質がR-リカルバゼピンであるにもかかわらず少量のS-リカルバゼピンが血漿中に検出可能に存在していた(表1)。S-リカルバゼピンとR-リカルバゼピンとの間で血漿プロファイルに違いがあるにもかかわらず、それらの全身曝露(AUC血漿(S-リカルバゼピン)/AUC血漿(R-リカルバゼピン) = 1.1)、除去半減期(t1/2≒8時間)、及び平均滞留時間(MRT≒10〜12時間)の関係において、両者の鏡像異性体に類似点が存在することは明らかである。
【0071】
脳においては、S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの投与後、R-リカルバゼピン及びS-リカルバゼピンそれぞれの存在は、ごくわずかである(表2)。これは、血漿中に観察される適正規模である。予想されるように、血漿PKプロファイルと脳PKプロファイルとの比較は、脳PKプロファイルの右方移行を示す(S-リカルバゼピンについて0.25時間〜1.00時間; R-リカルバゼピンについて0.25時間〜0.75時間)。
【0072】
S-リカルバゼピンの投与後とR-リカルバゼピンの投与後のデータ比較は、脳の比AUC脳(S-リカルバゼピン)/AUC脳(R-リカルバゼピン)は1.9であり、血漿における比(AUC血漿(S-リカルバゼピン)/AUC血漿(R-リカルバゼピン) = 1.1)より大きいことを示している。従って、脳へのS-リカルバゼピンの分布は、R-リカルバゼピンのそれより有利(ほぼ2倍)であることが示唆される。しかし、半減期及びMRTなどの他のパラメータを考慮すると、R-リカルバゼピンが脳内全体で相当問題があることは明らかである。事実、図1の脳/血漿比(Cmax又はAUCを考慮する)で観察されるように、S-リカルバゼピン脳/血漿比がR-リカルバゼピン脳血/漿より相当大きかった。これは、血液脳関門を通過するプロセスにおいて立体選択性が存在することを明らかに示している。
【0073】
S-リカルバゼピン及びR-リカルバゼピンの脳浸透の違いがP-gp又はMRPによる流出の感受性に関連があるかどうか判断するために、マウスを、ベラパミル又はプロベネシドで前処理した。図2に示すように、ベラパミル及びプロベネシドは、S-リカルバゼピン脳/血漿比に影響を及ぼすことはなかった。対照的に、プロベネシドでなく、ベラパミルは、R-リカルバゼピン脳/血漿比(図2)を著しく上昇させた。これは、S-リカルバゼピンがP-gp及びMRPの基質ではなく、一方、R-リカルバゼピンはP-gpの基質であり、MRPの基質ではないことを示している。ベラパミルの後のR-リカルバゼピン脳/血漿比が、ビヒクル処置動物におけるS-リカルバゼピンのそれと等しいという事実を強調することは興味深い(図2)。
【0074】
図3に示すように、ベラパミル及びプロベネシドは、酢酸エスリカルバゼピン(100mg/kg, i.p.)投与後のS-リカルバゼピン脳/血漿比に影響を及ぼすことはなかった。
【0075】
(キンドリングの獲得)
(S-リカルバゼピンの効果)
S-リカルバゼピン100mg/kgでの1日2回処置により、キンドリングの獲得の阻害効果を示した(図4)。ビヒクル対照グループと比較すると、平均発作重症度は、最初の3日間のすべての刺激セッションで100mg/kgのS-リカルバゼピン処置グループにおいて有意に低いことが証明された。3及び4の重症度スコアを有する発作を誘発するのに必要な刺激の数は、100mg/kgのS-リカルバゼピンの投与を受けたマウスにおいて有意に増加した(図4)。12日目の処置終了時に、ビヒクル処置動物の100%及び全ての治療動物は、キンドリングの基準(すなわち少なくとも一の全身性発作(スコア4〜6))に達した。実験中に、副作用は、S-リカルバゼピン処置動物において明らかでなかった。
【0076】
(R-リカルバゼピンの効果)
R-リカルバゼピン100mg/kgを用いた1日2回の処置では、キンドリングの獲得における阻害効果はなかった(図5)。発作重症度スコアをR-リカルバゼピン処置動物と対照動物とで比較した場合、1回の刺激セッション(すなわち8日目の午後の刺激)を除いて有意差はなかった。3、4、5、及び6の重症度スコアを有する発作を誘発するのに必要な刺激の数は、処置マウスと制御マウスとの間で違いはなかった(図5)。12日目の処置終了時に、ビヒクル処置動物の100%及び全ての処置動物はキンドリングの基準(すなわち少なくとも一の全身性発作(スコア4-6))に達した。実験中に、副作用は、R-リカルバゼピン処置動物において明らかでなかった。
【0077】
(ホルマリン足試験)
図6に示すように、試験120分前(すなわちホルマリン100分前)に経口投与した100mg/kgのS-リカルバゼピンは、ビヒクル対照と比較して、舐め時間を有意に減少させた。試験120分前(すなわちホルマリン100分前)のR-リカルバゼピンの投与(100mg/kg, 経口)後の舐め時間の減少は、ビヒクル対照と比較して、統計的有意性なかった。試験120分前(すなわちホルマリン100分前)に投与されたガバペンチン(100mg/kg, 経口)は、ビヒクル対照と比較して、舐め時間を有意に減少させた(p<0.05)。
【0078】
【表1】

【表2】

【0079】
(考察)
P-gp又はMRP基質のカテゴリーに分類されるAEDは、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェルバメート及びラモトリジンなどの癲癇患者の単独療法及び付加療法の主力治療薬である、全ての主要電位型ナトリウムチャネル遮断薬を含む。レベチラセタムは、ベラパミル及びプロベネシドによるP-gpの阻害もMRP1/MRP2の阻害も、それぞれ、レベチラセタムの脳浸透を増加させないという発見によって示唆された、P-gp又はMRP1/2の基質ではないと報告された例外である。
【0080】
レベチラセタムの開始前に少なくとも3〜4種の他のAEDを試用した薬剤耐性癲癇患者120人の最近の臨床研究において、患者の32%は、レベチラセタム療法の開始後6ヵ月、発作がなかった(Bettsらの文献、2003)。(Potschkaらの文献, 2004)によって示唆されているように、レベチラセタムを用いる治療において、治療困難な患者のこの印象的かつ持続可能な発作のない状態の割合は、新規作用機序の結果、並びにレベチラセタムの脳取込みを制限する多剤輸送体の欠如のいずれかであることが示唆されている。
【0081】
1日1回の投与された酢酸エスリカルバゼピンは、部分的な癲癇難治性患者において非常に有効であることが証明され(Maiaらの文献, 2004)、S-リカルバゼピンに優先的な代謝に関わる可能性がある特徴は、P-gp及びMRPなどの薬剤流出輸送体を回避することである。酢酸エスリカルバゼピン療法開始後1ヵ月、約25%が発作のない状態であったことは強調されるべきである(Almeidaらの文献、2007)。
【0082】
薬剤耐性を克服し、かつ高濃度のこれらの輸送体を発現する器官及び細胞へのアクセスを容易にするP-gp及び/又はMRP阻害剤の使用の利点は、まだ議論される問題である。P-gp及び/又はMRPの阻害は、P-gp及びMRP基質の薬剤輸送を容易にすることができるが、これらの輸送体は広範囲の生体異物へのアクセスを主要範囲に制限し、その幾つかは多くの不必要な作用を与えるので、安全性に関わる可能性がある(Schinkelらの文献、2003; Schinkelらの文献、1996)。従って、P-gp及び又はMRP阻害剤と組合わせてR-リカルバゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェルバメート及びラモトリジンなどの輸送体を経て輸送される薬剤を使用するよりもむしろ、P-gp及び/又はMRP阻害剤の基質でない酢酸エスリカルバゼピン及びS-リカルバゼピンなどの薬剤を使用することに相当な利点がある。
【0083】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤の使用が、治療される対象に不利益に影響を与える状況において、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害、及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される状態を治療するための医薬品の製造における、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用。
【請求項2】
前記対象が次の状態のうちの1つ以上の状態を罹患している、請求項1記載の使用: 心臓病、非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性/ウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石。.
【請求項3】
前記対象が次のうちの1つ以上に対して過敏性である、請求項1又は2記載の使用: シクロスポリン、ベラパミル、コルチン、バルスポダル、ビリコダル、プロベネシド、エラクリダル、タリキダル XR9576、ゾスキダル LY335979、ラニキダル R101933又はONT-093。
【請求項4】
前記対象が2歳未満である、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される難治性状態を治療するための医薬品の製造における、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用。
【請求項6】
前記エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンが前記状態を治療するために単独療法として投与される、請求項1、2、3、4又は5記載の使用。
【請求項7】
前記エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンがP-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤の非存在下で投与される、請求項1、2、3、4又は6記載の使用。
【請求項8】
前記状態の難治性状況がP-gp及び/又はMRPの過剰発現により生じる、請求項5〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
難治性状態が薬耐性状態である、請求項5〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
難治性状態が不応性状態である、請求項5〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
P-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤と不利益に反応する第二の薬剤と組み合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される状態を治療するための医薬品の製造における、前記使用。
【請求項12】
前記状態が難治性状態である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
前記状態の難治性状況がP-gp及び/又はMRPの過剰発現により生じる、請求項12記載の使用。
【請求項14】
難治性状態が薬耐性状態である、請求項12又は請求項13記載の使用。
【請求項15】
難治性状態が不応性状態である、請求項12又は請求項13記載の使用。
【請求項16】
前記医薬品がP-糖タンパク質阻害剤又は多剤耐性タンパク質阻害剤を含まない、請求項11〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
心臓病を治療するための薬剤と組み合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、前記心臓病、並びに、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される更なる状態を治療するための医薬品の製造における、前記使用。
【請求項18】
次の状態:非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は現悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性/ウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石の1つ以上を治療するための薬剤と組合わせた、エスリカルバゼピン又は酢酸エスリカルバゼピンの使用であって、前記状態、並びに、癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される更なる状態を治療するための医薬品の製造における、前記使用。
【請求項19】
癲癇、中枢及び末梢神経系疾患、情動障害、統合失調性感情障害、双極性障害、注意障害、不安障害、神経因性疼痛及び神経因性疼痛関連障害、感覚運動障害、前庭障害及び変性及び虚血後疾患の神経機能変化から選択される状態が難治性である、請求項17又は18記載の使用。
【請求項20】
前記状態の難治性状況がP-gp及び/又はMRPの過剰発現により生じる、請求項19記載の使用。
【請求項21】
難治性状態が薬耐性状態である、請求項19又は請求項20記載の使用。
【請求項22】
難治性状態が不応性状態である、請求項19又は請求項20記載の使用。
【請求項23】
酢酸エスリカルバゼピン又はエスリカルバゼピンを、P-gp阻害剤又はMRP阻害剤と不利益に反応する薬剤及び医薬として許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項24】
前記薬剤が次の状態の1つ以上を治療するための薬剤である、請求項23記載の組成物:心臓病、非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性又はウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石。
【請求項25】
酢酸エスリカルバゼピン又はエスリカルバゼピンを、次の状態の1つ以上を治療するための薬剤及び医薬として許容し得る担体と組み合わせて含む、医薬組成物:心臓病、非管理高血圧症、前悪性皮膚病変又は悪性腫瘍、水痘及び帯状疱疹、腎臓又は肝臓障害、任意種の細菌性又はウィルス性感染症、血液疾患及び尿酸腎結石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−515727(P2010−515727A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545512(P2009−545512)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【国際出願番号】PCT/PT2008/000002
【国際公開番号】WO2008/088233
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(596095518)バイアル−ポルテラ アンド シーエー,エス.エー. (25)
【Fターム(参考)】