説明

エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の製造方法、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法

【課題】エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造において、エチレン−ビニルアルコール共重合体のアルコール溶液中のアルコールを効率的に水に置換する方法を提供すること。
【解決手段】エチレン−ビニルアルコール共重合体のアルコール溶液を塔型装置中で水と接触させ、アルコールの一部を水とともに装置外に導出し、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対しアルコールを10〜200重量部、水を50〜200重量部含有するエチレン-ビニルアルコール共重合体の水/アルコール混合溶液を得、次いで、攪拌容器内で攪拌しながら水と接触させてアルコールの一部または全部を水とともに容器外に導出し、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対し、アルコールを10重量部未満、水を20〜100重量部含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記する。)組成物の製造方法に関し、さらに詳しくは、EVOHの製造において、エチレンと脂肪酸ビニルエステルの共重合物をアルコール中でケン化して得られたEVOHアルコール溶液のアルコールの一部または全部を水に置換する工程に関するものである。
さらに、かくして得られたEVOH組成物を押出機にて溶融混練し、吐出後、切断することによるEVOHペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EVOHは、透明性、酸素等のガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性、機械強度などに優れており、フィルム、シート、ボトルなどに成形され、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の各種包装材料として広く用いられている。
EVOHは、通常、エチレンと酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステルとの共重合によって得られるエチレン−ビニルエステル共重合体を、アルカリ触媒の存在下、メタノールなどのアルコールを溶媒として、高温高圧下でケン化して製造される。
【0003】
従来、ケン化工程で得られた高温高圧下のEVOHアルコール溶液は、常圧で安定なEVOHの水/アルコール混合溶液とされ、水を主体とする低温の凝固浴中に押出し、ストランド状に析出させてから切断、ペレット化後乾燥されて製品とされていた。
しかしながら、かかるEVOHの製造法においては、EVOHの水/アルコール溶液を凝固浴中に押し出してストランド化する際に凝固浴にアルコールが流出し、さらにこれが空気中に揮散し、作業環境を悪化させる原因となるという問題点を有していた。
【0004】
そこで上記の問題を解決する方法として、EVOHアルコール溶液を装置に導入し、装置内で水と接触させてアルコールと水を置換し、アルコール含有量が少ないEVOH組成物とする工程(工程1)、得られたEVOH組成物を押出機にて溶融混練してEVOH樹脂とする工程(工程2)、からなるEVOH樹脂の製造方法(例えば、特許文献1参照。)や、EVOHのアルコール溶液を装置に導入し、装置内で水と接触させてアルコールと水を置換しEVOH組成物とする工程(工程1)、得られたEVOH組成物をペレット化する工程(工程2)、かかるペレットを乾燥する工程(工程3)、含水率が低減されたペレットを押出機で溶融混練する工程(工程4)、押出機から吐出されたEVOHを切断してペレットとする工程(工程5)、からなるEVOHペレットの製造方法(例えば、特許文献2参照。)が提案された。
これらの製造方法によれば、EVOHのアルコール溶液から除去されたアルコールを開放状態にさらすことなく回収することが可能であるため、作業環境を悪化させることがない。
【0005】
【特許文献1】特開2002−284811号公報
【特許文献2】WO2004/009313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の製造方法の工程1で得られるEVOH組成物の含水量は、EVOH100重量部に対して10〜1000重量部と規定されており、10重量部未満では容器内での流動性が不足するとの記載がある。さらに、工程1で用いられる装置としては、アルコール−水の置換効率が良く、連続的に処理できて、生産性に優れる塔型装置が好ましいと記載されている。しかしながら、かかる工程1において塔型装置を用いる場合、十分な流動性がないと装置内の流動および装置からの導出が困難となるため、アルコールの含有量をEVOH100重量部に対して0〜10重量部まで低減させた場合、その含水量を100重量部以下に低減させることは困難であった。例えば、かかる特許文献1の実施例においても、塔型装置を用いているため、得られたEVOH組成物の含水量は、EVOH100重量部に対して水が105重量部である。そのため、続く工程2の溶融混練において、含水量が多いEVOH組成物を処理しなければならず、押出機への導入時に水分が分離して混練が不安定になったり、水分の蒸発量が多いため、押出機に複数のベントが必要となったり、L/Dを大きく、あるいは吐出量を小さくして押出機中の滞留時間を長くして、十分に水分を除く必要があり、装置のコスト高や生産量を上げることができないなどの問題があった。
【0007】
かかる問題点の改善が目的の一つである特許文献2に記載の発明は、特許文献1における工程1と工程2との間に、工程1で得られた高含水率のEVOH組成物をペレット化して乾燥させる工程を設け、含水率が低減されたEVOH組成物を次工程で溶融混練するというものである。しかしながら、特許文献2に記載の方法の場合、工程1で得られたEVOH組成物をペレット化するための装置、およびかかるペレットを乾燥するための装置が必要となるため、製造コストの点で不利となる。
【0008】
また、乾燥工程において、EVOHに含まれる多量の水分を除くために大きな熱量が必要となるのみならず、乾燥機中に長期滞留したEVOHペレットが熱劣化しやすく、これが製品中に混入することで異物の原因となる可能性が大きいという問題点がある。
【0009】
すなわち本発明は、EVOHの製造におけるエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるEVOHアルコール溶液中のアルコールを水に置換する工程において、かかるアルコールと水との置換および含水量の低減が効率よく行われ、加熱乾燥を行うことなく低含水量のEVOH組成物を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記事情に鑑み、鋭意検討した結果、EVOH製造時のケン化工程で得られたEVOH100重量部に対し、炭素数4以下のアルコールを300重量部以上含有するEVOH溶液を塔型装置に供給し、水と接触させ、前記アルコールの一部を水とともに装置外に導出し、EVOH100重量部に対し、アルコールを10〜200重量部、水を50〜200重量部含有するEVOHの水/アルコール混合溶液を得、次いで、この溶液を攪拌容器内で攪拌しながら水と接触させ、残るアルコールの大半を容器外に導出して、EVOH100重量部に対し、アルコールを10重量部未満、水を20〜100重量部含有するEVOH組成物とする製造方法によって上述の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、ケン化工程によって得られるEVOHのアルコール溶液中のアルコールと水との置換を、まず、塔型装置で行い、次いで攪拌しながら行うことで、効率的にアルコールが水と置換され、さらに効率的に含水量が低減されることを特徴とするものである。
特に、塔型装置においては、完全にアルコールを除かず、流動性を保った状態にとどめることによって、処理効率が低下することを防止し、次いで、攪拌容器において強制的に攪拌しながら水と接触させることで、系が高濃度、高粘度となっても効率よくアルコール−水置換が進み、その結果、アルコールを含んで膨潤状態であったEVOHが、アルコール含有量の低下とともに収縮し、樹脂中からアルコールとともに水が排出され、低含水量のEVOH組成物が得られたものである。
【0012】
なお、本発明で得られる低含水量かつ低アルコール含有量のEVOH組成物を塔型装置のみで得ることは、塔の後半でEVOH溶液の粘度が高くなりすぎて流動性が低下し、置換効率が下がるとともに装置から導出できなくなるため、困難である。また、攪拌容器のみでEVOHのアルコール溶液中のアルコールの大半を水に置換しようとすると、当初の溶液粘度が低く、導入した水がEVOH溶液中に長く留まることができないため置換効率が低く、工程に時間がかかり、多量の水が必要となるため、実用的ではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法を用いれば、EVOHのアルコール溶液のアルコールを効率良く水に置換でき、さらに効率よく低含水量のEVOH組成物を得ることができるため、かかるEVOH組成物を押出機にて溶融混練、ペレット化する場合に、L/Dが大きいなどの特別な押出機を用いる必要がなく、事前に乾燥処理を行わなくても、一般的な押出機を使用することが可能である。また、かかる低含水量のEVOH組成物を凝固浴に押し出して凝固、ストランド化する場合においても、効率良く凝固が進むことから、処理効率の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明に用いられるEVOHについて説明する。
本発明に用いられるEVOHは、エチレン構造単位とビニルアルコール構造単位を主成分とし、ケン化度によって若干量のビニルエステル構造単位を含むものであり、通常、酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステルとエチレンを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られるものである。
【0016】
EVOH中のエチレン含有量としては、通常2〜80モル%のものが用いられる。
特に、EVOHに溶融成形性を求める場合には、通常10〜60モル%のものが用いられ、さらには20〜55モル%、特に25〜50モル%のものが好ましく用いられる。かかるエチレン含有量が少なすぎると熱分解温度と融点が近くなりすぎ、良好な溶融成形が困難になる傾向にあり、逆に多すぎるとガスバリヤー性が低下する傾向にある。
【0017】
また、EVOHを水溶性樹脂として使用する場合には、かかるエチレン含有量が通常2〜20モル%のものが用いられ、さらには3〜10モル%のものが好ましく用いられる。かかるエチレン含有量が多すぎると水溶性が低下する傾向にある。かかる低エチレン含有量のEVOHは、水溶液とし、ガスバリア性塗膜形成用のコート剤などとして有用である。
また、EVOH中の酢酸ビニル成分のケン化度は通常80モル%以上であり、ガスバリア性が必要とされる場合には高ケン化度のものが好ましく、通常は95モル%以上、好ましくは98モル%以上である。かかるケン化度が小さすぎるとガスバリア性や耐湿性が低下する傾向にある。
【0018】
また、EVOHの重合度は、その用途に応じて適宜選択すればよいが、溶融成形して使用する場合には、通常、そのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)値として0.5〜100g/10分であり、さらには1〜50g/10分、特には3〜35g/10分のものが好ましく用いられる。かかるMFRが小さすぎると、溶融成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難になることがあり、逆に大きすぎると、溶融成形によってえられるシートやフィルムの厚み精度を上げることが難しくなる。
かかるEVOHは、通常、脂肪酸ビニルエステル化合物とエチレンを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化して得られ、かかるエチレン−ビニルエステル共重合体は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合などの公知の重合法によって得られるものであり、中でも溶液重合が好ましく用いられる。
【0019】
かかる脂肪酸ビニルエステル系化合物としてはギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、中でも経済的にみて酢酸ビニルが好ましく用いられる。
また、共重合体中にエチレンを導入する方法としては通常のエチレン加圧重合を行えばよく、その導入量はエチレンの圧力によって制御することが可能であり、所望するエチレン含有量により一概にはいえないが、通常は25〜80kg/cm2の範囲から選択される。
【0020】
また、エチレンと脂肪酸ビニルエステル化合物以外に、EVOHに要求される特性を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3,4−ジヒドロキシ−1−ブテン、5−ヘキセン−1,2−ジオール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類や、そのエステル化物などの誘導体、例えば、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
溶液重合に使用される溶媒としては、エチレンと脂肪酸ビニルエステル化合物、およびその重合生成物であるエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解するものであることが必要であり、通常は炭素数が4以下のアルコールが用いられ、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコールなどが挙げられ、特にメタノールが好ましい。
【0022】
得られた共重合体は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体が炭素数4以下のアルコール又は含水アルコールに溶解された状態で、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。炭素数4以下のアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、重合時に用いた溶媒と同じにすると、溶媒置換の必要がなくなり、回収再利用の処理も併せて行えることから効果的であり、重合溶媒と同様のメタノールが特に好ましく用いられる。
ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられるが、通常は水酸化ナトリウムを用いることが多い。
【0023】
かかるケン化反応は、公知の方法で行うことが可能であるが、鹸化時のアルカリ触媒量が低減できることや鹸化反応が高効率で進み易い等の理由より、塔型装置を用い加熱加圧下で行わうことが好ましい。その結果、ケン化反応後のEVOHは高温高圧下のアルコール溶液として反応系から導出される。
【0024】
次に、本発明の製造方法である、EVOHのアルコール溶液中のアルコールを水に置換し、低含水量のEVOH組成物を得る方法について詳細に説明する。
かかる製造方法は、EVOHのアルコール溶液を塔型装置に供給し、水と接触させ、前記アルコールの一部を水に置換し、EVOHの水/アルコール溶液とする工程と、これを攪拌容器内で水と接触させ、残るアルコールの大半を水に置換する工程からなり、本発明においては、かかるアルコールの水への置換をこのように二段階に分けて行うことを最大の特徴とするものである。
【0025】
まず、前段階である塔型装置でのアルコール−水置換工程について述べる。
本工程で用いられるEVOHのアルコール溶液はEVOH100重量部に対し、炭素数4以下のアルコールを通常300重量部以上含有するもので、特に400〜900重量部含有するものを用いることが好ましい。かかるアルコールの含有量が多すぎると水との置換に長時間を要するため生産効率が低下する傾向があり、逆に少なすぎると高粘度となり、この場合も水との置換効率が低下したり、塔内でゲル化しやすくなるため好ましくない。かかるEVOHのアルコール溶液中のアルコール含有量は、ケン化工程で得られたEVOHのアルコール溶液をそのまま用いることが好ましいが、アルコールの含有量が上述の範囲から外れる場合には、アルコールの添加、あるいは加熱等によるアルコールの除去によって、適宜調製することが可能である。また、かかるEVOHのアルコール溶液には、この段階で若干量の水が添加されていてもよく、水を加える方法は公知の方法を用いることができる。
【0026】
本工程で用いられる塔型装置としては、多孔板塔、泡鐘塔などの棚段塔や充填塔を挙げることができるが、高分子溶液のような粘度をもつ溶液の場合、処理効率の点で棚段塔が好ましく、中でも多孔板塔が好ましく用いられ、その段数は通常2〜20段、特に5〜15段のものが好ましく用いられる。また、棚段塔以外の場合もこれと等価あるいはこれ以上の効率をもつものが用いられる。
かかる塔型装置にEVOHのアルコール溶液と水とが導入され、両者が接触することによってアルコールの一部が水に置換され、EVOHの水/アルコール溶液、および水とアルコールの混合物が塔型装置から導出される。かかるEVOHのアルコール溶液と水との接触は向流、並流のいずれでも可能であるが、置換効率の点から向流で接触させることが好ましい。
また、水としては熱水あるいは水蒸気であることが好ましく、特に水蒸気として装置中に導入されることが好ましい。
塔型装置へのEVOHのアルコール溶液、水の導入位置、およびEVOHの水/アルコール混合溶液、水/アルコール混合物の導出位置は特に限定されるものではないが、例えば、EVOHのアルコール溶液を塔上部から導入し、水蒸気を塔下部から導入して前記溶液と向流接触させ、アルコール蒸気を水蒸気とともに塔上部から導出し、EVOHの水/アルコール溶液を塔下部から導出する方法が好ましい。
なお、棚段塔を用いる場合のEVOHアルコール溶液の供給位置は、通常塔頂部よりも2〜4段下であり、かかる供給位置よりも上の段には水を供給したり、水蒸気の導出量を調整したりして棚上に水層を形成することが、塔上部から導出される水とアルコールの混合蒸気中へのEVOH等の飛沫の同伴を防ぎ、蒸気の移送管や凝縮器中の汚染を防止することができるため好ましい。また、水蒸気の供給位置は、通常、塔底部であるが、それよりも1〜2段上であっても構わない。なお、かかる塔から導出されたアルコールと水との混合蒸気は、凝縮器などを用いて液化し、分離精製して再使用することが可能である。
【0027】
本工程を経て、塔型装置から導出されるEVOHの水/アルコール溶液は、EVOH100重量部に対してアルコールを10〜200重量部含有するものであり、特に20〜150重量部、さらには30〜100重量部とすることが好ましい。また、水をEVOH100重量部に対して50〜200重量部含有するもので、特に50〜150重量部、さらには60〜100重量部とすることが好ましい。
かかるアルコールおよび水の含有量が多すぎると、次いで行われる攪拌置換工程に負担がかかるため好ましくない。また、アルコールや水の含有量が少なすぎると粘度が高くなって、塔型装置後半の置換効率が低下したり、塔型装置からの導出が困難になる傾向がある。
【0028】
かかる塔型装置から導出されるEVOHの水/アルコール溶液中のアルコール、および水の含有量は、装置に導入されるEVOHのアルコール溶液に対する水(水蒸気)の導入量、塔内の温度や圧力、などによって制御することが可能であり、用いる塔型装置の仕様、例えば、棚段の数、断面積と塔長の比率、棚段の数、多孔板の孔径や数、などによって一概に言えないが、例えば、以下に示す条件が好ましく用いられる。
【0029】
例えば、塔型装置に導入される水蒸気の導入量は、少なすぎるとアルコールとの置換効率が悪く、逆に多すぎるとコスト面で不利となるので、EVOH溶液の導入量に対して通常0.01〜30倍(重量比)であり、より好適には0.05〜10倍、さらには0.07〜5倍である。かかる水蒸気は前述の塔から導出されたアルコールと水の混合蒸気を精製したものを再使用したものであってもよく、若干量のアルコールを含む混合蒸気であっても構わないが、その含有量は水蒸気100重量部に対して10重量部以下であり、水−アルコールの置換効率の観点からは、アルコールの含有量がより少なく、理想的には全く含まないものが好ましい。
【0030】
塔型装置内の温度は、通常は40〜160℃、より好適には60〜150℃、さらには70〜140℃である。かかる温度が低すぎると、装置内でのEVOH溶液の粘度が高くなり、置換効率が低下する場合があり、逆に温度が高すぎると、EVOHが劣化する傾向がある。
塔型装置内の圧力は、通常は0〜1MPaGであり、より好ましくは0〜0.6MPaG、さらに好ましくは0〜0.3MPaGである。かかる圧力が低すぎると置換効率が低下し、また、高すぎると装置内の温度が上昇してEVOHが熱劣化しやすくなる。
【0031】
かくして得られたEVOHの水/アルコール溶液は、次の段階にて、攪拌容器中で攪拌しながら水と接触させることにより、アルコールが水に置換され、アルコールの含有量が減少するにしたがってEVOH中の水が排出され、低含水量のEVOH組成物が得られる。
【0032】
本工程にて用いられる容器としては、攪拌装置を備えているものであれば、その形状は特に限定されないが、ジャケット等の温度調節手段を備えたものや、密閉して加圧状態にすることが可能であるものが望ましい。
攪拌装置における攪拌翼の形状としては、高粘度となるEVOH組成物を攪拌できるものであれば、どのようなものであっても構わないが、例えば、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、アンカー翼、プロペラ翼、マックスブレンド翼などを挙げることができる。また、攪拌は連続であっても、断続的におこなっても構わない。
【0033】
かかる容器への水の供給は、連続あるいは断続的に行われ、熱水であっても水蒸気であってもよく、その導入量は、少なすぎるとアルコールとの置換効率が悪く、逆に多すぎると容器からの導出速度がおいつかず、非経済的なので、容器に供給されたEVOH100重量部に対して通常20〜300重量部/hr、特に40〜200重量部/hr、さらには50〜100重量部/hrである。
【0034】
なお、かかる容器内に供給された水は、樹脂中から排出されたアルコールとともに容器外に導出されるが、その機構としては、容器の上部からオーバーフローさせる方法、あるいは水とアルコールの混合蒸気として導出する方法などが挙げられ、その両方を併せて行うことが好ましい。
【0035】
容器内の温度は通常は40〜140℃、より好適には60〜120℃、さらには80〜100℃である。かかる温度が低すぎると、系の流動性が低下し、次工程への移送が困難になる場合があり、逆に高すぎると、EVOHが劣化する場合があるので好ましくない。
容器内の圧力は通常は常圧で行われるが、加圧状態にしてもよく、通常は0〜1MPaG、特に0〜0.6MPaG、さらには0〜0.3MPaGの圧力が好ましく用いられる。かかる圧力が高すぎると容器内の温度が上昇してEVOHが熱劣化しやすくなる傾向がある。
【0036】
かかる工程から得られるEVOH組成物における水の含有量は、EVOH100重量部に対して20〜100重量部であり、好ましくは20〜80重量部、さらには30〜50重量部である。また、除去しきれなかったアルコールを含有していても構わないが、その含有量は、EVOH100重量部に対して10重量部未満である。
かかるEVOH組成物中の水、およびアルコールの含有量は、上述の攪拌容器でのアルコール−水置換の各種条件によって制御することが可能であるが、通常は、攪拌容器中のEVOH組成物中のアルコールの含有量をモニターし、これがEVOH100重量部に対して10重量部未満となった時点を終点とすることが好ましい。
【0037】
なお、かかる容器内攪拌による置換は塔型装置から得られるEVOHの水/アルコール溶液を連続して供給する連続式であっても、一定量毎に供給するバッチ式であってもよく、バッチ式の場合には一段階でも十分可能であるが、容器を直列に並べ、複数段で行うことにより、滞留時間の調整や、樹脂分の微調整が可能となり、さらには、後述の添加剤の配合を容器毎に行うことができる点などから有用である。
【0038】
本発明の製造方法においては、攪拌容器内で攪拌しながら水とアルコールを置換する段階において、一般的にEVOHに添加される添加剤を添加し、これを含有させることが可能である。
例えば、EVOHには、熱安定性などの品質を向上させるために、カルボン酸化合物、ホウ素化合物、リン酸化合物などの添加剤を添加する場合がある。従来のEVOHペレットの製造法においては、EVOHをペレット化した後、これを上記添加剤を含有する水溶液に浸漬し、その後、脱水乾燥することでEVOHペレット中に含有させる方法が用いられることが多かった。しかしながら、かかる方法の場合、別途、かかる添加剤の添加工程を設ける必要があるとともに、EVOH中の添加剤の含有量を制御すること難しく、また、EVOH中に添加剤が偏在しやすいという問題点があった。本発明の製造法においては、これら添加剤の添加を前述の容器内で行うことが可能であり、別途、添加剤を添加する工程を設ける必要がなく、添加剤を定量的にEVOH中に含有させることが可能であるなど多くの利点がある。
【0039】
かかる添加剤を配合する方法としては、前工程で得られたEVOHの水/アルコール混合溶液に直接添加する方法や、これと接触する水に含有させ、水溶液の状態で系内に供給する方法が挙げられ、特に後者の方法が好ましく用いられる。
この場合の、水溶液中における各化合物の含有量は、後述する最終的なEVOH中の好ましい含有量となるように適宜調整すればよいが、通常、カルボン酸化合物が10〜500ppm、ホウ素化合物が1〜50ppm、リン酸化合物が10〜50ppmの範囲が好ましく用いられる。
【0040】
かかるカルボン酸化合物としては、通常は炭素数が2〜4のカルボン酸化合物が好ましく、また、1価あるいは2価のものが好ましく用いられる。具体的には、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸などが例示され、これらの中でも、コスト、入手の容易さなどの面から、酢酸およびプロピオン酸が好ましく用いられる。 本発明で得られるEVOHペレット中のカルボン酸の含有量は、少なすぎると溶融成形時に着色が発生することがあり、また多すぎると溶融粘度が高くなることがあるので、通常は10〜5000ppmであり、特に30〜1000ppm、さらに50〜500ppmが好ましい範囲である。
【0041】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩などのホウ酸類、水素化ホウ素類などが挙げられ、これらに限定されるものではないが、特にホウ酸あるいはホウ酸塩が好ましく用いられる。具体的には、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化合物の中でもオルトホウ酸(以下、単にホウ酸と記す。)が好ましい。本発明で得られるEVOHペレット中のホウ素化合物の含有量は、通常、ホウ素換算で10〜2000ppmであり、特に50〜1000ppmが好ましい範囲として用いられる。かかるホウ素化合物の含有量が少なすぎると熱安定性の改善効果が少なく、また、多すぎるとゲル化の原因となったり、成形性不良となる傾向がある。
【0042】
リン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸などの各種の酸やその塩などが例示される。リン酸塩としては第一リン酸塩、第二リン酸塩、第三リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、そのカチオン種も特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩であることが好ましい。中でもリン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムの形でリン酸化合物を添加することが好ましい。本発明で得られるEVOHペレット中のリン酸化合物の含有量は、通常、リン酸根換算で1〜1000ppmである。かかる範囲となるように添加することで、成形物の着色およびゲルやフィッシュアイの発生を抑制することでき、かかる含有量が少なすぎると溶融成形時が着色しやすくなる傾向が見られ、逆に多すぎると成形物のゲルやフィッシュアイが発生しやすくなる場合がある。
【0043】
かくして得られた、EVOH組成物は、従来法と同様に凝固浴に押し出してストランド状に凝固させ、これを切断してペレット化し、乾燥後、製品とすることも可能であり、含水量が少ないことから、効率的に処理できることが期待される。
しかしながら、本発明で得られたEVOH組成物は、含水量が少ないという特徴を活かす方法として、これを押出機に供給し、溶融混練した後、該組成物を押出機から吐出し、切断してペレット化することによって、容易にEVOHペレットを得ることが好ましい実施態様である。
【0044】
かかる押出機としては単軸押出機や二軸押出機が挙げられるが、中でもスクリューの回転方向が同方向の二軸押出機が適度なせん断により充分な混練が得られる点でより好ましい。かかる押出機のL/Dは、通常10〜80であり、特に15〜70、さらには15〜60であるものが好ましく用いられる。かかるL/Dが小さすぎると、練りが不充分で吐出が不安定となる傾向があり、逆に大きすぎると過度のせん断を与えることにより好ましくないせん断発熱を引き起こす傾向がある。
【0045】
押出機のスクリュー回転数は、通常、10〜400rpmであり、特に30〜300rpm、さらには50〜250rpmの範囲が好ましく用いられる。かかる回転数が小さすぎると吐出が不安定となる傾向があり、また、大きすぎると好ましくないせん断発熱によって樹脂の劣化の原因と成る場合がある。
【0046】
押出機内における樹脂温度は、通常は80〜250℃で行われる。特に、かかる押出工程において、EVOH組成物の含水率を極力低減させたい場合には、120〜250℃、好ましくは150〜230℃の温度範囲で行われる。かかる樹脂温度が高すぎるとEVOHが熱劣化しやすくなる傾向にあり、逆に低すぎるとEVOHが十分に溶融状態とならず、良好な混練がなされないため、例えば、前工程で添加した添加剤の含有状態が均一にならなかったり、押出が良好におこなわれなかったり、あるいは含水率の低減が不充分となり、押出後のストランドあるいはペレット中に水分が残存することにより、発泡の原因となる場合がある。
また、EVOHの熱劣化を極力抑制するために、含水量を維持しながら行いたい場合には、80〜105℃、特に85〜100℃、さらには90〜100℃の樹脂温度で行われる。
かかる樹脂温度の調整方法は特に限定されないが、通常は、押出機内シリンダーの温度を適宜設定する方法が用いられる。
【0047】
かかる押出機での溶融混練においては、含水状態であるEVOHを溶融混練するため、押出機の少なくとも一箇所から水あるいは水蒸気を排出することが好ましい。かかる排出手段としては、特に限定されるものではないが、押出機のシリンダーに設けられた脱水孔、ベント口あるいは脱水スリットから排出する方法が挙げられる。脱水スリットとしては、ウェッジワイヤー式脱水スリットやスクリーンメッシュ式脱水スリットが好適なものとして挙げられ、ベント口としては、真空ベントやオープンベントが挙げられる。中でも、脱水スリットは、水、水蒸気のいずれも排出することができ、樹脂の付着や漏出が少ないことから好ましく用いられる。なお、かかる排出手段は、複数用いてもよく、その場合には同一の種類のものであっても、異なるものを組み合わせて用いても良い。
【0048】
なお、前述の添加剤を押出機内で添加することも可能である。かかる添加剤を添加する場合、押出機への添加位置は、EVOHが溶融状態である位置であることが好ましく、1箇所または2箇所以上から押出機に添加することが好ましい。
また、かかる添加剤の形態は特に限定されず、粉末状やペースト状、あるいは液体に分散させた状態や溶液として添加する方法を挙げることができる。なかでも、溶液として添加する方法が、均一かつ定量的に添加できるためこのましく、かかる液体としては取扱いが容易で、安全であることから、水が好適である。
【0049】
押出機から吐出されたEVOH樹脂をペレット化する方法は特に限定されないが、前記樹脂組成物をダイスからストランド状に押出し、冷却の後、適切な長さにカットする方法が用いられる。かかる冷却の方法としては、特に限定されないが、押し出された樹脂の温度よりも低温に保持された液体に接触させる方法や、冷風を吹き付ける方法が好ましく用いられ、前述の液体としては水が好ましく用いられる。かかるペレットの形状は通常、円筒状であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、ダイスの口径は2〜6mmφ、ストランドのカット長さは1〜6mm程度が好適に用いられる。なお、押出機から吐出されたEVOHがまだ溶融状態である間に、大気中あるいは水中でカットする方法も好適に用いられる。
【0050】
かかる押出機による溶融混練で得られたペレットは、押出機内で十分に水分が除去されたものであれば、そのまま製品とすることができるが、その水分除去が不充分である場合には、乾燥工程に供することで余分な水分を除くことができる。かかる乾燥方法としては特に限定されないが、静置乾燥法、流動乾燥法などが好適な方法として挙げられ、異なる乾燥方法による多段階の乾燥工程で行うことも可能であり、特に、一段階目に流動乾燥法、二段階目に静置乾燥法で乾燥する方法が色調の点で好適である。
【0051】
なお、かかる押出機での溶融混練においては、前工程で得られたEVOH組成物として、重合度、エチレン含有量、ケン化度などが異なる二種以上のEVOH組成物をブレンドして溶融成形することも可能である。また、他の各種可塑剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、金属塩、充填剤、各種繊維などの補強剤などを適量添加して溶融混練することも可能である。
このようにして得られたEVOHペレットは、押出成形、射出成形などの溶融成形によって、フィルム、シート、カップ、ボトルなどの成形体に成形され、食品、医薬品、工業薬品、農薬などの包装用途に用いられる。
【実施例】
【0052】
以下に、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0053】
実施例1
エチレン含有量29モル%、ケン化度99.5モル%のEVOH100重量部に対し、メタノールを400重量部含むEVOHメタノール溶液を、10段の棚段塔の塔頂から2段目の棚板に80重量部/hrで連続的に供給、水蒸気を最下段の棚板から60 重量部/hrで連続的に供給し、EVOHメタノール溶液と水蒸気とを棚段塔内で向流で接触させた。塔内の温度は108℃、塔内の圧力は0.2MPaGであった。かかる棚段塔の塔頂部からメタノール蒸気と水蒸気を留去し、これらは凝縮器で凝縮し、水/メタノール混合溶液として回収した。また、棚段塔の塔底部からは、EVOH100重量部に対し、メタノールを75重量部、水を75重量部含有するEVOHの水/メタノール混合溶液を連続的に抜き出した。
【0054】
次に、このEVOHの水/メタノール混合溶液を、パドル翼式の攪拌装置を備えた容器に80重量部供給し、さらにホウ酸水溶液(3重量%)、酢酸水溶液(10重量%)、リン酸水溶液(80重量%)、リン酸カルシウム水溶液(1重量%)を、各々、EVOH100重量部に対して0.01重量部、0.05重量部、0.05重量部、0.003重量部となるように添加し、さらに水蒸気をEVOH100重量部に対して60重量部/hr供給し、攪拌しながらEVOHの水/メタノール溶液と水蒸気を接触させた。容器内の温度は100℃、圧力は0.3MPaGであった。2時間後、モチ状となったEVOH組成物(EVOH100重量部に対し、水43重量部、メタノールを3重量部含有)を得た。
【0055】
得られたEVOH組成物を二軸押出機に連続的に投入し、溶融混練を行った。EVOH組成物の単位時間あたりの投入量は4kg/hrであった。二軸押出機の仕様を以下に示す。
L/D 42
口径 30mmφ
スクリュー 同方向完全噛み合い型
回転数 90rpm
シリンダー温度 95 ℃
ダイス温度 95 ℃
ダイス口径 3.5mmφ
かかる押出機から吐出されたEVOHをウォーターバスでストランド状に冷却後、切断してEVOHペレットを得た。かかるペレットの含水率は18重量%であった。
【0056】
比較例1
実施例1において、塔型装置から導出されたEVOHの水/メタノール混合溶液をそのまま押出機に投入したところ、押出機への投入部で多量の水分が分離するとともに、溶融混練が不安定となり、ストランドが切れたり、熱劣化に起因する異物の混入が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明のEVOH組成物の製造方法は、EVOHの製造において、エチレンと脂肪酸ビニルエステルの共重合物をアルコール溶媒中でケン化して得られたEVOHのアルコール溶液から効率的にアルコールを除去することができると同時に、低含水量のEVOH組成物が得られることから、次いでかかる組成物を押出機で溶融混練してペレット化する際に、多量の水を除去する必要がなく、大きい処理速度で行うことができることから、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対し、炭素数4以下のアルコールを300重量部以上含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体のアルコール溶液を塔型装置に供給し、水と接触させて前記アルコールの一部を水とともに装置外に導出し、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対し、アルコールを10〜200重量部、水を50〜200重量部含有するエチレンビニルアルコール共重合体の水/アルコール混合溶液を得、次いで、この溶液を攪拌容器内で攪拌しながら水と接触させてアルコールの一部または全部を水とともに容器外に導出し、エチレン−ビニルアルコール共重合体100重量部に対し、アルコールを10重量部未満、水を20〜100重量部含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物とすることを特徴とする、エチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
炭素数4以下のアルコールがメタノールであることを特徴とする請求項1記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の製造方法。
【請求項3】
塔型装置が棚段塔であることを特徴とする請求項1または2記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
カルボン酸化合物、ホウ素化合物、リン酸化合物から選ばれる少なくとも一種の添加剤を攪拌容器内に存在させ、前記添加剤を含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物を得ることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載のエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の製造方法で得られたエチレン−ビニルアルコール共重合体組成物を押出機内で溶融混練し、吐出後、切断することを特徴とするエチレン−ビニルアルコール共重合体ペレットの製造方法。

【公開番号】特開2010−7041(P2010−7041A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325487(P2008−325487)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】