説明

エチレン−酢酸ビニル共重合体シート、その製造方法、並びにそれを用いた合わせガラス及び太陽電池

【課題】より高い透明性を有し、且つ製造時の生産性や使用時の成形ハンドリング性に優れたEVAシートを提供する。
【解決手段】エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として含む組成物からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体層が、少なくとも3層積層された構造を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであって、少なくとも2層のエチレン−酢酸ビニル共重合体層(外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層)7A及び7Bにより挟持されたエチレン−酢酸ビニル共重合体層(内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層)6の酢酸ビニル含有率が、前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層7A及び7Bの酢酸ビニル含有率より高いことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)シートに関し、特に、透明性が高く、且つハンドリング性に優れたEVAシート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分として含む組成物からなるシート(以下、エチレン−酢酸ビニル共重合体シート(EVAシート)と称する)は、安価であり、高い透明性を有することから、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜等として利用されている。合わせガラス用中間膜としては、図3に示すように、ガラス板21A及び21Bの間に挟持され、耐貫通性や破損したガラスの飛散防止等の機能を発揮する(特許文献1)。太陽電池用封止膜としては、図4に示すように、太陽電池用セル34とガラス基板等からなる表面側透明保護部材31との間、及び太陽電池用セル34と裏面側保護部材(バックカバー)32との間に配置され、絶縁性の確保や機械的耐久性の確保等の機能を発揮する(特許文献2)。そして、合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜の性質上、EVAシートは、より高い透明性が要求されている。
【0003】
一般に、EVAにおける酢酸ビニルの含有率を上げると、EVAシートの透明性を向上させることができる。しかしながら、EVAにおける酢酸ビニルの含有率を高い場合は、EVAシートのタック(軽い力で短時間に被接着体に粘着する力)が高くなり、EVAシート同士が付着したり、ロールに付着したりするため、EVAシートの生産性が低下する。更に、EVAシートのタックが高すぎると、べたついて合わせガラスや太陽電池の製造時にEVAシートの位置決め等する際に、ハンドリング性が悪くなり、合わせガラスや太陽電池の生産性が低下することになる。
【0004】
また、EVAにおける酢酸ビニルの含有率が高い場合は、EVAシートの流動性が上昇するため、合わせガラスや太陽電池を製造する際に、積層後にガラス板や太陽電池セルが移動してずれるため、外観不良となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−79848号公報
【特許文献2】特開2008−258255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、より高い透明性を有し、且つ製造時の生産性や使用時の成形ハンドリング性に優れたEVAシートを提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、このEVAシートの製造方法を提供することにある。
更に、本発明の目的は、このEVAシートを用いた合わせガラス用封止膜、及びそれを用いた合わせガラスを提供することにある。
【0008】
更に、本発明の目的は、このEVAシートを用いた太陽電池用封止膜、及びそれを用いた太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を主成分として含む組成物からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体層(EVA層)が、少なくとも3層積層された構造を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体シート(EVAシート)であって、少なくとも2層のエチレン−酢酸ビニル共重合体層(外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層(外側EVA層))により挟持されたエチレン−酢酸ビニル共重合体層(内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層(内側EVA層))の酢酸ビニル含有率が、前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率より高いことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体シートによって達成される。これにより、透明性が高い内側EVA層を、ハンドリング性に優れた外側EVA層で狭持することになり、単一の酢酸ビニル含有率を有するEVAシートに比べて、より高い透明性と、優れたハンドリング性を有するEVAシートを得ることができる。
【0010】
本発明に係るEVAシートの好ましい態様は以下の通りである。
(1)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層の総層数が、3層である。層数が少ない方が、より生産性が高いEVAシートを得ることができる。
(2)前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として、20〜32質量%である。この範囲の酢酸ビニル含有率のEVAからなる外側EVA層であれば、よりハンドリング性に優れたEVAシートを得ることができる。
(3)前記内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として、33〜50質量%である。この範囲の酢酸ビニル含有率のEVAからなる内側EVA層であれば、より透明性に優れたEVAシートを得ることができる。
(4)前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層各層の層厚が、0.1〜1.0mmの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
(5)前記内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の層厚が、前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層各層の層厚より厚い。これにより、より透明性の高いEVAシートを得ることができる。
【0011】
また、本発明の目的は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートの製造方法であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層が、共押出し法によって成形及び積層される工程を含むことを特徴とする製造方法によって達成できる。本発明のEVAシートを製造する場合は、各EVA層をそれぞれ成形した後、積層して製造することもできるが、タックが高く、ハンドリング性が低い内側EVA層を含むため、生産性が低くなる場合がある。共押出し法を含む製造方法は、成形及び積層を同時に行うため、ハンドリング性が低い内側EVA層を含んでいても、高い生産性で製造することができる。
【0012】
更に、本発明の目的は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜によって達成される。これにより、高い透明性を有し、ハンドリング性に優れ、且つ流動性が低く、積層したガラスがずれ難い合わせガラス用中間膜を得ることができる。
【0013】
また、本発明の目的は、本発明の合わせガラス用中間膜を用いたことを特徴とする合わせガラスによって達成される。これにより、生産性に優れ、高い透明性を有し、外観不良が生じ難い合わせガラスを得ることができる。
【0014】
更に、本発明の目的は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであることを特徴とする太陽電池用封止膜によって達成される。これにより、高い透明性を有し、ハンドリング性に優れ、且つ流動性が低く、積層した太陽電池の各部材がずれ難い太陽電池用封止膜を得ることができる。
【0015】
また、本発明の目的は、本発明の太陽電池用封止膜を用いたことを特徴とする太陽電池によって達成される。これにより、生産性に優れ、発電効率が高く、外観不良が生じ難い太陽電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のEVAシートによれば、内側EVA層は、内側EVA層を挟持する外側EVA層より透明性が高く、外側EVA層は、内側EVA層よりハンドリング性に優れ、流動性が低いので、単一の酢酸ビニル含有率を有するEVAシートに比べて、高い透明性を有し、且つ製造時や使用時におけるハンドリング性に優れたEVAシートを得ることができる。
【0017】
本発明のEVAシートを合わせガラス用中間膜として用いることにより、生産性に優れ、高い透明性を有し、外観不良が生じ難い合わせガラスを得ることができる。
【0018】
また、本発明のEVAシートを太陽電池用封止膜として用いることにより、生産性に優れ、発電効率が高く、外観不良が生じ難い太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートの代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の効果を評価する実施例に使用した、合わせガラスの構成を示す概略断面図である。
【図3】一般的な合わせガラスの概略断面図である。
【図4】一般的な太陽電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のEVAシートについて、図面を参照しながら説明する。図1は本発明のEVAシートの代表的な一例を示す概略断面図である。
【0021】
本発明のEVAシートは少なくとも3層のEVAを主成分として含む組成物(EVA組成物と称する)からなるEVA層を有し、少なくとも2層の外側EVA層及び、外側EVA層に挟持された内側EVA層により構成されている。図1においては、内側EVA層6が、外側EVA層7A及び7Bに挟持された構造が示されている。
【0022】
一般に、EVAにおける酢酸ビニル含有率が低い程、EVA組成物が硬く、タックが低くなり、透明性が低くなる傾向がある。逆に、酢酸ビニル含有率が高い程、EVA組成物の透明性が高くなり、流動性が高く、タックが高くなる傾向がある。本発明のEVAシートは、内側EVA層6の酢酸ビニル含有率が、外側EVA層7A及び7Bの酢酸ビニル含有率より高いことを特徴とする。従って、外側EVA層7A及び7Bより透明性が高いが、流動性が高く、タックが高いためハンドリング性に劣る内側EVA層6を、内側EVA層6より透明性が劣るが、タックが低くハンドリング性に優れた外側EVA層7A及び7Bで挟持することになり、EVAシート全体として、単一の酢酸ビニル含有率を有するEVAシートより透明性が高く、ハンドリング性に優れたEVAシートとすることができる。EVA層は3層以上であれば、何層でも良い。層数が少ない方がEVAシートの生産性が高い。従って、EVA層は好ましくは3〜5層であり、特に好ましくは3層である。
【0023】
本発明のEVAシートを構成する各EVA層のEVA組成物に使用するEVAの酢酸ビニルの含有率は、上記規定を満たせば特に制限はなく、EVAシートの用途に応じて設定することができる。外側EVA層の酢酸ビニルの含有率は、ハンドリング性の点で、EVAの質量を基準として、20〜32質量%が好ましく、特に、22〜28質量%が好ましい。外側EVA層の酢酸ビニルの含有率が20質量%未満では、内側EVA層との関係でEVAシート全体としての透明性が低くなる場合がある。また、32質量部%を超えると、EVAシートの硬さが不十分で、タックも高くなりハンドリング性が低くなる場合がある。一方、内側EVA層の酢酸ビニルの含有率は、透明性の点で、EVAの質量を基準として、33〜50質量%が好ましく、特に、40〜50質量%が好ましい。内側EVA層の酢酸ビニルの含有率が33質量%未満では、外側EVA層との関係で、EVAシート全体としての透明性が低くなる場合がある。また、50質量%を超えると、外側EVA層に挟持されていても、内側EVA層が流動する等、EVAシートのハンドリング性が低くなる場合がある。
【0024】
本発明のEVA組成物を構成するEVA層のEVA組成物は、EVAを主成分(樹脂成分の50質量%を超えるものをいう)として含んでいれば良く、EVAに加えて、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体等のエチレン−極性モノマー共重合体、ポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、及び塩化ビニル樹脂等を副次的に使用しても良い。
【0025】
本発明のEVAシートを構成する各EVA層の層厚は特に制限はなく、EVAシートの用途に応じて設定することができる。EVAシートの厚さとして、一般に、50μm〜2mmであるので、EVA層各層の層厚は、通常、20μmm〜1.5mmであり、成形し易い点で、好ましくは0.1〜1.0mmであり、特に、0.2〜0.8mmが好ましい。
【0026】
また、本発明のEVAシートを、より透明性の高いEVAシートとするために、内側EVA層の層厚が、外側EVA層各層の層厚より厚いことが好ましい。例えば、内側EVA層の層厚は0.2〜1.0mmが好ましく、外側EVA層各層の層厚は0.1〜0.5mmが好ましい。
【0027】
[架橋剤]
本発明のEVAシートを構成する各EVA層のEVA組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤は、EVAの架橋構造を形成することができるものである。これにより、透明性、接着性等に優れたEVAシートとすることができる。架橋剤は、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、透明性、耐湿性、耐貫通性に優れたEVAシートが得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0028】
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0029】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0030】
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。これにより、優れた絶縁性を有するEVAシートが得られる。
【0032】
前記有機過酸化物の含有量は、EVA100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部であることが好ましい。前記有機過酸化物の含有量は、少ないと得られるEVAシートの絶縁性が低下する恐れがあり、多くなると共重合体との相溶性が悪くなるおそれがある。
【0033】
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸などの安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
【0034】
前記光重合開始剤の含有量は、EVA100質量部に対して0.5〜5.0質量部であることが好ましい。
【0035】
[架橋助剤]
本発明のEVAシートを構成する各EVA層のEVA組成物は、必要に応じて、さらに架橋助剤を含んでいてもよい。前記架橋助剤は、EVAのゲル分率を向上させ、EVAシートの接着性及び耐久性を向上させることができる。
【0036】
前記架橋助剤の含有量は、EVA100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部で使用される。これにより、更に接着性に優れるEVAシートが得られる。
【0037】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0038】
[接着向上剤]
本発明のEVAシートを構成する各EVA層のEVA組成物は、用途によって、更に優れた接着力を有するのが好ましい。そのために、接着向上剤をさらに含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、優れた接着力を有するEVAシートとすることが可能となる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0039】
前記シランカップリング剤の含有量はEVA100質量部に対して0.1〜0.7質量部、特に0.3〜0.65質量部であることが好ましい。
【0040】
[その他]
本発明のEVAシートを構成する各EVA層のEVA組成物は、EVAシートの種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、本発明における化合物Iの他のアクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0041】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、EVA100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0042】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0043】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれEVA100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0044】
更に、本発明に係わるEVA組成物は、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってEVAが劣化し、EVAシートが黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0045】
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってEVAの劣化し、EVAシートが黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、EVA100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0046】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0047】
[EVAシート]
本発明のEVAシートを製造する場合は、公知の方法に準じて行うことができる。例えば、まず、上記の各EVA層(内側EVA層及び外側EVA層)のEVA組成物の材料をそれぞれ、スーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて公知の方法で混合した組成物を通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状の各EVA層を得るか、又は、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液を適当な塗布機(コーター)で適当な支持体上に塗布、乾燥して塗膜を形成することによりシート状の各EVA層を得る。次いで、これらの各EVA層を例えば、図1に示したように、外側EVA層7A/内側EVA層6/外側EVA層7Bの順に、連続又はバッチ式に積層してEVAシートを製造することができる。
【0048】
また、本発明においては、内側EVA層の酢酸ビニル含有率が高く、タックが高く装置に貼り付いたり、製品同士で付着し合ったりし、生産性が低下する場合があるので、共押出し法によって成形及び積層を同時に行う工程により製造することが好ましい。共押出し法によるEVAシートの製造方法は、例えば、内部に複数のマニホールドを有するTダイを使用し、上記各EVA層の組成物を複数の押出機から供給し、各層成形と同時に積層してEVAシートを製造する方法が挙げられる。
【0049】
尚、EVA層成形時の加熱温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、50〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。EVAシートの厚さは、特に制限はないが、一般に、50μm〜2mmの範囲である。
【0050】
[合わせガラス用中間膜]
本発明のEVAシートは、高い透明性を有するので、高い可視光透過率が要求される合わせガラス用中間膜(本発明の合わせガラス用中間膜)として、好ましく使用できる。本発明の合わせガラス用中間膜は、高い透明性を有する上、タックが低くハンドリング性に優れる。また、本発明の合わせガラス用中間膜は流動性が低いので、合わせガラスの製造時において、ガラスを積層する際に、ずれ難い。
【0051】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、本発明の合わせガラス用中間膜を用いていれば良い。上記のように本発明の合わせガラス用中間膜は、高い透明性を有し、ハンドリング性が高いので、本発明の合わせガラスは、高い可視光透過率を示し、生産性が高い合わせガラスである。また、本発明の合わせガラスは、中間膜の流動性が低いので、ガラスを位置決めして積層した後、加熱圧着する際に、ずれ難く、外観不良が生じ難い。
【0052】
本発明の合わせガラスを製造するには、例えば、図2に示したように、本発明の合わせガラス用中間膜22を2枚のガラス板21A及び21Bの間に狭持して、得られた積層体を脱気した後、加熱下に押圧する方法などが用いられる。これらの工程は、例えば、真空袋方式、ニップロール方式等を用いて行われる。これにより、合わせガラス用中間膜22が硬化して、合わせガラス用中間膜22とガラス板21A及び21Bとを接着一体化することができる。製造条件としては、例えば、上記積層体を80〜120℃の温度で予備圧着し、100〜150℃(特に130℃付近)で10分〜1時間加熱処理することによりEVAを架橋させる。また、加熱処理は加圧下で行ってもよい。このとき、積層体を1.0×10Pa〜5.0×10Paの圧力で加圧しながら行うのが好ましい。架橋後の冷却は一般に室温で行われるが、特に、冷却は速いほど好ましい。
【0053】
本発明におけるガラス板は透明基板であれば良く、例えば、グリーンガラス、珪酸塩ガラス、無機ガラス板、無着色透明ガラス板などのガラス板の他、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンブチレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック製の基板又はフィルムを用いてもよい。耐候性、耐衝撃性等の点でガラス板が好ましい。ガラス板の厚さは、1〜20mm程度が一般的である。合わせガラスにおいて両側に配置されるそれぞれのガラス板は、同一のもの用いてもよく、異なる基材を組み合わせて用いてもよい。基材の強度と合わせガラスの用途とを考慮して、組み合わせを決定する。
【0054】
本発明の合わせガラスは、建築物や乗り物(自動車、鉄道車両、船舶)用の窓ガラス、プラズマディスプレイなどの電子機器、冷蔵庫や保温装置などのような各種装置の扉や壁部など、種々の用途に使用することができる。
【0055】
[太陽電池用封止膜]
本発明のEVAシートは、高い透明性を有するので、高い光線透過率が要求される太陽電池用封止膜(本発明の太陽電池用封止膜)として、好ましく使用できる。本発明の太陽電池用封止膜は、高い透明性を有する上、タックが低くハンドリング性に優れる。また、本発明の太陽電池用封止膜は流動性が低いので、太陽電池の製造時において、各部材を積層する際にずれ難い。
【0056】
[太陽電池]
本発明の太陽電池の構造は、本発明の太陽電池用封止膜を用いていれば、特に制限されない。例えば、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、本発明の太陽電池用封止膜を介在させて架橋一体化させることにより太陽電池用セルを封止させた構造などが挙げられる。なお、本発明において、太陽電池セルの光が照射される側(受光面側)を「表面側」と称し、太陽電池セルの受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
【0057】
上記のように本発明の太陽電池用封止膜は、高い透明性を有し、ハンドリング性が高いので、本発明の太陽電池は、高い発電効率を示し、生産性が高い太陽電池である。また、本発明の太陽電池は、封止膜の流動性が低いので、太陽電池用セルや各保護部材等の各部材を位置決めして積層した後、加熱圧着する際に、ずれ難く、外観不良が生じ難い。
【0058】
本発明の太陽電池を製造するには、例えば、図1に示すように表面側透明保護部材31、表面側封止膜33A、太陽電池用セル34、裏面側封止膜33B及び裏面側保護部材32を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止膜33A及び33Bを架橋硬化させればよい。前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネータで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜33Aおよび裏面側封止膜33Bに含まれるEVAを架橋させることにより、表面側封止膜33Aおよび裏面側封止膜33Bを介して、表面側透明保護部材31、裏面側透明部材32、および太陽電池用セル34を一体化させて、太陽電池用セル34を封止することができる。
【0059】
なお、本発明の太陽電池用封止膜は、図1に示したような単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池だけでなく、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の封止膜にも使用することもできる。この場合は、例えば、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等の表面側透明保護部材の表面上に化学気相蒸着法等により形成された薄膜太陽電池素子層上に、本発明の太陽電池用封止膜、裏面側保護部材を積層し、接着一体化させた構造や、裏面側保護部材の表面上に形成された太陽電池素子上に、本発明の太陽電池用封止膜、表面側透明保護部材を積層し、接着一体化させた構造が挙げられる。
【0060】
本発明の太陽電池に使用される表面側透明保護部材11は、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0061】
本発明で使用される裏面側保護部材12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルムが好ましく用いられる。また、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルム、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムでも良い。
【0062】
なお、本発明の太陽電池(薄膜太陽電池を含む)は、上述した通り、表面側及び/又は裏面側に用いられる封止膜に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池用セルなどの前記封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0064】
[実施例1〜8、比較例1及び2]
本発明のEVAシートの効果を試験するために、図2に示したような評価用合わせガラスを作製し、透明性及びハンドリング性を評価した。
(1)EVAシートの作製
表1に示した実施例1〜8の各EVA層の、酢酸ビニルの含有率のEVAを用いて、表1に示したEVA組成物の各材料を60℃で混練して各実施例の各EVA層のEVA組成物を調製した。各EVA組成物の流動性の指標として、メルトフローレート(MFR)(JIS K7210に従う)を示した。それらのEVA組成物を、80℃で、カレンダ成形し、放冷後、表1に示した層厚の各EVA層を作製した。次いで、各EVA層を図2に示したように、外側EVA層17A/内側EVA層16/外側EVA層17Bの順に積層して各実施例のEVAシートを作製した。比較例1及び2は、表1に示した酢酸ビニル含有率及び厚さで、単一層のEVAシートを同様に作製した。
【0065】
(2)合わせガラスの作製
図2に示したように、ガラス板11A及び11B(白板ガラス(厚さ:3mm))の間に、各実施例及び比較例のEVAシートを挟持させ、90℃で2分間真空引きし、8分間プレス後、オーブンにて155℃、45分間加熱し、評価用合わせガラスを作製した。
【0066】
(3)評価方法
(i)透明性
上記で作製した、各実施例及び比較例の評価用合わせガラスの全光線透過率を、全自動直読ヘイズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。
(ii)ハンドリング性
合わせガラスを作製する際の各実施例及び比較例のEVAシートのべたつき(タック)を官能評価することで、成形ハンドリング性を評価した。評価は、べたつかず、ガラス板を積層する際に、位置決め等の作業性が極めて良好であった場合を◎、少しべたつきが認められたが、ガラス板を積層する際に、位置決め等の作業性が良好であった場合を○、べたつきがあり、ガラス板を積層する際に、位置決め等の作業性が低かった場合を△、べたつきが大きく、ガラス板を積層する際に、位置決め等の作業性が極めて低かった場合を×とした。
【0067】
(4)評価結果
各実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。実施例1〜8は、外側EVA層の酢酸ビニル含有率より、内側EVA層の酢酸ビニル含有率が高いEVAシートであり、比較例1及び2は、EVAシートとして実施例1〜8と同一の厚さの単一層で、酢酸ビニル含有率が、それぞれ、26質量%及び40質量%のEVAシートである。表1の通り、実施例1〜7のEVAシートは、比較例1のEVAシートに比べて、良好なハンドリング性は維持され、且つ透明性が向上されていた。また、比較例2のEVAシートは透明性は高いが、ハンドリング性が極めて劣っていた。一方、外側EVA層の酢酸ビニル含有率が35質量%の実施例8は、透明性が良好であったが、ハンドリング性がやや悪く、外側EVA層の酢酸ビニル含有率は、35質量%より低い方が好ましいことが示された。
【0068】
【表1】

【0069】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のEVAシートを合わせガラス用中間膜や太陽電池用封止膜として用いることで、透明性が高い合わせガラスや発電効率が高い太陽電池を、高い生産性で製造することができる。
【符号の説明】
【0071】
6、16 内側EVA層
7A、7B、17A、17B 外側EVA層
11A、11B、21A、21B ガラス板
22 合わせガラス用中間膜
31 表面側透明保護部材
32 裏面側保護部材
33A 表面側封止膜
33B 裏面側封止膜
34 太陽電池用セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分として含む組成物からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体層が、少なくとも3層積層された構造を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであって、
少なくとも2層のエチレン−酢酸ビニル共重合体層(外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層)により挟持されたエチレン−酢酸ビニル共重合体層(内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層)の酢酸ビニル含有率が、前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率より高いことを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項2】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層の総層数が、3層である請求項1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項3】
前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として、20〜32質量%である請求項1又は2に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項4】
前記内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の酢酸ビニル含有率が、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として、33〜50質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項5】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層各層の層厚が、0.1〜1.0mmの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項6】
前記内側エチレン−酢酸ビニル共重合体層の層厚が、前記外側エチレン−酢酸ビニル共重合体層各層の層厚より厚い請求項1〜5いずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シート。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートの製造方法であって、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体層が、共押出し法によって成形及び積層される工程を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであることを特徴とする合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
請求項8に記載の合わせガラス用中間膜を用いたことを特徴とする合わせガラス。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体シートであることを特徴とする太陽電池用封止膜。
【請求項11】
請求項10に記載の太陽電池用封止膜を用いたことを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152686(P2011−152686A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15077(P2010−15077)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】