説明

エチレンビニルアルコール組成物

(1)エチレンビニルアルコールコポリマーと、(2)(a)エチレンの鎖内共重合単位、(b)α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸の鎖内重合単位、(c)エチレン系不飽和ジカルボン酸またはその誘導体である少なくとも1種のコモノマーの鎖内重合単位、および任意成分である(d)アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの鎖内共重合単位、の鎖内共重合単位を含むコポリマーとを含み、存在するカルボン酸官能基が、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている、エチレン酸コポリマーおよびEVOHの組成物であって、フィルム、シート、およびチューブ、ボトル、燃料タンク、トレーなどの他の造形品を製作するために有用である組成物が開示されている。組成物は、食品、医療溶液および工業薬品の包装に用いることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、シートおよび他の造形品を製作するために有用である、エチレンビニルアルコールコポリマーと酸無水物アイオノマー(ionomer)とを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマーは、食品、医療溶液および他の製品を包装するために広く用いられている。しばしば、EVOHの機能は、包装を通した酸素などの気体の通過に対する障壁を提供することである。特に、より低い温度でのEVOHを含有するフィルムの靱性を改善することが産業において必要とされている。例えば、EVOH系多層フィルムは、冷凍庫温度でしばしば貯蔵され輸送される肉を包装する際に用いられる。
【0003】
EVOHを強化する際に様々な高分子変性剤によるアプローチがあり、その結果は様々である。望ましい靱性および剛性を生じさせることができた典型的な変性剤の添加は光学的透明度を低下させる傾向があり、EVOHを不透明フィルムに変え得る。EVOHと変性剤のブレンドは、典型的には、あるポリマーの連続相に分散された他のポリマーの微細粒子からなる。不十分に分散した粒子および/または大粒子は、光を透過させるのでなく散乱させる傾向がある。結果として、ポリマーブレンドは不透明である傾向がある。多くの食品包装用途およびヘルスケア用途のために、単層であれ多層であれ、フィルムまたは構造体の透視鮮明度および/または接触鮮明度は重要な場合がある。これらの用途は、良好な加工性、機械的特性、衝撃靱性または光学的特性を有するか、もしくは広い用途のために手頃な費用で入手できる新規材料を要求する。
【0004】
アイオノマー樹脂(アイオノマー)は、有機鎖分子に加えて金属イオンを含有する熱可塑性樹脂である。アイオノマーは、架橋ポリマーの物性の特徴と非架橋熱可塑性ポリマーの溶融二次加工特性の特徴を有する(例えば、米国特許第3,264,272号明細書参照)。アイオノマーは、エチレンなどのオレフィンと、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸および/または他の酸ならびに任意にアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートなどの軟化用コモノマーのコポリマーから調製してもよい。リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛などの少なくとも1種のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンまたはこうしたカチオンの組み合わせはコポリマー中の酸性基の多少の部分を中和するために用いられる。アイオノマーの水様の透明性および高い靱性のゆえに、SURLYNという商標でE.I.du Pont de Nemours and Company(DuPont)から入手できるものなどのアイオノマーは包装において用いるために開示されてきた。
【0005】
アイオノマーはEVOHを変性するために用いられてきた。例えば、米国特許第6,214,392号明細書および米国特許第6,333,061号明細書ならびに米国特許出願公開第2006/0228503号明細書は、ポリアミド含有アイオノマー(N−アイオノマー)により変性されたEVOHを開示している。
【0006】
最近、典型的なアイオノマーの中で用いられたモノカルボン酸に加えてモノマーとしてジカルボン酸またはそれらの誘導体を用いて中和エチレン酸コポリマーが調製されている米国特許第5,700,890号明細書においてアイオノマーの新規系統が開示された。これらの「酸無水物アイオノマー」コポリマーはアルキルアクリレートコモノマーを更に含有してもよい。
【0007】
米国特許出願公開第2005/0203253号明細書、米国特許出願公開第2005/020762号明細書および米国特許出願公開第2006/0142489号明細書は、ポリアミドが酸無水物アイオノマーにより強化されている組成物を開示している。
【0008】
この出願において開示されたように、酸無水物アイオノマー変性EVOHから製造されたフィルムは、優れた耐衝撃性(非変性EVOHより100%超良好)およびN−アイオノマーにより変性されたEVOHとは異なって酸素バリアにおいて殆ど無変化を示している。曇り度および透明性などのフィルムの光学的特性も非変性サンプルと比べて殆ど無変化を示している。接着性繋ぎ樹脂によりPEに結合された酸無水物アイオノマー変性EVOHは、N−アイオノマー変性EVOHによって示された接着力に似た接着力を有する。酸無水物アイオノマー変性EVOHを含むフィルムおよび他の造形品は、高いバリア性、靱性および透明性が要求される食品包装と非食品包装の両方において用いることが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)エチレンビニルアルコールコポリマーと、
(2)(a)エチレンの鎖内共重合単位、(b)α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸の鎖内共重合単位、(c)少なくとも1種のコモノマーの鎖内共重合単位、および任意成分である(d)アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの鎖内共重合単位を有するコポリマーを含むアイオノマーと、
を含むか、またはそれらから製造された組成物であって、存在する組み合わせたカルボン酸官能基が、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている組成物を提供する。
【0010】
組成物は、例えば、シートを押し出すか、流延するか、またはフィルムをブローするか、もしくは造形品を提供するために射出成形するか、ブロー成形するか、または異形押出することによって加工してもよい。従って、本発明は、上に記載された組成物を含む物品も提供する。物品は、単層または多層のフィルムまたはシート、パウチまたはバッグ、ボトル、トレー、タンクまたはチューブの形態を取ってもよい。本発明は、製品を含有するための上述した組成物を含む包装も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において開示されたすべての参考文献は参照により援用される。
【0012】
別段に指定されない限り、すべての百分率、部および比は重量を基準とする。更に、量、濃度もしくは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値と好ましい下方値のリストのいずれかとして与えられる時、これは、範囲が別個に開示されているかどうかにかかわらず、あらゆる上方範囲限界または好ましい上方値とあらゆる下方範囲限界または好ましい下方値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を本質的に開示しているとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書において挙げられる場合、別段に指定されない限り、その範囲は、範囲の終点、範囲内のすべての整数および端数を含むべく意図されている。範囲を定める時、挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することは意図されていない。成分が零の下限を有する範囲内で存在するとして指示される時、こうした成分は任意の成分である(すなわち、こうした成分は存在してもよいか、または存在しなくてもよい)。こうした任意の成分は、存在する時、好ましくは組成物の全重量の少なくとも約0.1重量%の有限量において含まれる。「有限量」という用語は零より大きい量を意味する。
【0013】
材料、方法または機械が「当業者に対して公知」、「従来の」という用語もしくは同義語または同義句と共に本明細書において記載される時、その用語は、本願を出願する時点で従来である材料、方法および機械が、この記述によって包含されることを意味する。現在において従来ではないが、類似の目的のために適するとして当該技術分野において認められるようになってくる場合がある材料、方法および機械も包含される。
【0014】
本明細書において用いられる「コポリマー」という用語は、2種以上のコモノマーの共重合から生じる共重合単位を含むポリマーを意味し、例えば、「エチレンとアクリル酸15%とを含むコポリマー」のように、その構成成分コモノマーまたはその構成成分コモノマーの量に関連して表現してもよい。こうした表現は、こうした表現が共重合単位としてコモノマーに言及していない点で、こうした表現がポリマーに関する従来の命名法、例えば、International Union of Pure and Applied Chemistry(IUPAC)命名法を含んでいない点で、こうした表現がproduct−by−process術語を用いていない点で、または別の理由のために非公式と考えてもよい。しかし、その構成成分コモノマーまたはその構成成分コモノマーの量に関連したコポリマーの表現は、コポリマーが指定コモノマーの(指定された時、指定された量で)共重合単位を含有することを意味する。限定された状況においてそうであると明示的に陳述されない限り、必然の結果としてコポリマーが所定の量で所定のコモノマーを含有する反応混合物の生成物ではないという結果になる。
【0015】
熱可塑性樹脂は、圧力下で加熱された時に流れることができる高分子材料である。メルトインデックス(MI)は、温度および圧力の制御された条件下で指定キャピラリーを通り抜けるポリマーの流れの質量速度である。それはASTM1238に準拠して測定される。
【0016】
(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸または両方を意味する。(メタ)アクリレートは、アクリレート、メタクリレートまたは両方を意味する。
【0017】
「シート」および「フィルム」は、組成物が単層であれ多層であれ、一般に平らな形態に加工される物品を表すために互換可能に用いてもよい。加工方法および/または厚さは、「シート」または「フィルム」という用語が本明細書において用いられるかどうかに影響を及ぼし得るが、両方の用語をこうした一般に平らな物品を表すために用いることが可能である。
【0018】
エチレンビニルアルコールコポリマーはEVOHとして一般に知られている。こうしたポリマーは、一般に約15モル%〜約60モル%の間、より好ましくは約24〜約44モル%の間のエチレン含有率を有する。EVOHは、一般に約1.12g/cm3〜約1.20g/cm3の間の範囲の密度および約142℃〜196℃の間の範囲の溶融温度を有する。EVOHポリマーは既知の調製技術によって調製することが可能であるか、または商業的な供給業者から得ることが可能である。EVOHポリマーは、エチレン酢酸ビニルコポリマーを鹸化するか、または加水分解することにより調製することが可能である。従って、EVOHは、加水分解エチレン酢酸ビニルコポリマーとしても知られている場合がある。加水分解度は、約50〜100モル%または約85〜100モル%であることが可能である。更に、反復単位の重合度および分子量から計算されたEVOH成分の重量平均分子量Mwは、約5,000Mw〜約300,000Mwまたは約50,000Mw〜約70,000Mwの範囲であってもよい。本明細書において開示された組成物の成分として用いるために適するEVOHポリマーは、EVAL(登録商標)SPのようにEVAL Company of America(EVAL(登録商標)樹脂)、EvalcaまたはクラレLtd.もしくはNoltex L.L.Cまたは日本合成(SOARNOL(登録商標))から得てもよい。
【0019】
酸無水物アイオノマーは、エチレン、α,β−不飽和C3〜C8モノカルボン酸および少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸の環式無水物および少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステル(ここで、ジカルボン酸部分の1方のカルボキシル基はエステル化され、他方はカルボン酸である)から選択された少なくとも1種のエチレン系不飽和ジカルボン酸コモノマーの鎖内共重合単位を含有するアイオノマーの系統を含み、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛などのアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンまたはこうしたカチオンの組み合わせによって少なくとも部分的に中和されている。酸無水物アイオノマーは、コポリマーの約0.5〜約12重量%、または約3重量%〜約25重量%もしくは約4重量%〜約10重量%の量でエチレン系不飽和ジカルボン酸コモノマーを含有する。不飽和ジカルボン酸コモノマーには、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、およびエチレン水素マレェートなどのマレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルまたはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0020】
コポリマーは、より柔らかいアイオノマーを形成するために中和され得るより柔らかい樹脂を提供するアルキル(メタ)アクリレートなどの他の成分も任意に含むことが可能である。ここで、アルキル基は、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびn−ブチルアクリレート(nBA)のように1〜8個の炭素原子を有する。アルキル(メタ)アクリレートは、存在する時、コポリマーの全重量を基準にして0〜約30重量%または約0.1〜約15重量%であることが可能である。これらのコポリマーは、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和され得る。
【0021】
酸無水物アイオノマーを製造するために用いられる酸コポリマーは、高圧ラジカル重合によって得ることが可能である。酸コモノマーは、すべてのモノマーを同時に添加することにより直接エチレンと共重合される。このプロセスは、モノマーに由来する「鎖内」重合単位を有するコポリマーを提供し、ここで、「鎖内」重合単位はポリマー主鎖またはポリマー鎖に導入される。これらのコポリマーは、しばしば後続のラジカル反応によって別のモノマーが既存のポリマー上にグラフトされる重合後グラフト反応を介して酸コモノマーが既存のポリマー鎖に付加されるグラフトコポリマーとは異なる。エチレン系不飽和ジカルボン酸コモノマーを含む幾つかの非中和エチレン酸コポリマーは、それらのアイオノマー誘導体(例えば、米国特許第5,700,890号明細書)のように知られている(例えば、米国特許第5,902,869号明細書)。
【0022】
コポリマーの例には、エチレン、メタクリル酸およびエチル水素マレェートのコポリマー(E/MAA/EHM)、エチレン、アクリル酸および無水マレイン酸のコポリマー(E/AA/MAH)、エチレン、メタクリル酸、エチル水素マレェートおよびエチルアクリレートのコポリマー(E/MAA/EHM/EA)、エチレン、アクリル酸、無水マレイン酸およびメチルアクリレートのコポリマー(E/AA/MAH/MA)またはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
エチレン酸コポリマーの中和は、最初にエチレン酸コポリマーを製造し、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたは遷移金属カチオンでコポリマーを処理することにより行うことが可能である。コポリマーは、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、鉛、錫、亜鉛、アルミニウムまたはこうしたカチオンの組み合わせから選択された少なくとも1種の金属イオンにより約10〜約99.5%中和することが可能である。例えば、中和は、ナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択された少なくとも1種の金属イオン、より好ましくはナトリウム、亜鉛またはマグネシウムによる中和によりイオン化された利用できるカルボン酸基約10〜約70%または約35〜約70%であってもよい。例には、中和用カチオンとしてナトリウムまたは亜鉛を含む酸無水物アイオノマーが挙げられる。コポリマーから酸無水物アイオノマーを調製する方法は当該技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,700,890号明細書)。
【0024】
例示的な組成物は、(1)組成物の全重量を基準にして約60〜約95重量%のエチレンビニルアルコールコポリマーと、(2)(a)エチレンの鎖内共重合単位、(b)α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸の鎖内共重合単位約5重量%〜約15重量%、(c)少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸の環式無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステルまたはそれらの2種以上の組み合わせを含むか、またはそれらから選択された少なくとも1種のコモノマーの鎖内共重合単位約0.5重量%〜約18重量%、(d)アルキルが1〜12個の炭素原子を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの鎖内共重合単位0〜約40重量%を含むコポリマーを含むことが可能である約5〜約40重量%の前記アイオノマーとを含むか、またはそれらから製造されている。ここで、(a)、(b)、(c)および(d)の量はコポリマーの重量を基準としており、存在する組み合わせたカルボン酸官能基は、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている。
【0025】
あるいは、組成物は、約65〜約95重量%のエチレンビニルアルコールコポリマーと、約5〜約35重量%のアイオノマー組成物とを含んでもよい。
【0026】
成分(2)(c)は、コポリマーの約4〜約16重量%またはコポリマーの約5〜約10重量%の範囲内で存在してもよい。成分(2)(c)は、コポリマーの約6〜約10重量%または約6〜約8重量%の範囲内で存在する、マレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルの共重合単位を含んでもよい。例えば、成分(2)は、エチレン、メタクリル酸およびマレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルのコポリマーであってもよく、ここで、前記コポリマーは約40〜約60%中和されており、特にマレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルは、約6〜約10重量%または約6〜約8重量%の範囲内でコポリマー中に存在する。
【0027】
組成物は、EVOH成分(1)および酸無水物アイオノマー成分(2)とブレンドされた追加の熱可塑性材料を任意に含むことが可能である。追加の成分のブレンドは、エチレン酸コポリマー中のモノマーの百分率および/または中和レベル変えることに加えて、組成物中に存在する追加の成分の量およびタイプを操作することによりEVOH含有組成物の特性をより容易に改良することを可能にする場合がある。更に、追加の熱可塑性材料のブレンドは、所望の特性を得るために後で改良され得るより少ない基本樹脂を調製することを可能にすることによりポリマー組成物のより容易且つより低コストの製造を見込むことが可能である。使用できる他の熱可塑性材料の例には、非アイオノマー熱可塑性コポリマーおよびアイオノマー熱可塑性コポリマーが挙げられる。追加の非イオン熱可塑性ポリマー成分は、ポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、無水マレイン酸グラフトポリマーなどの中から選択することが可能であり、ポリマーのこれらの類は当該技術分野において公知である(以下参照)。
【0028】
例には、成分(1)と従来のアイオノマー(ジカルボン酸コモノマーを含まないアイオノマー)を更に含む成分(2)のブレンドも挙げられる。従って、組成物は、(3)1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている1種以上のE/X/Yコポリマーを更に含む前に定義された成分(1)と成分(2)のブレンドを含む。ここで、Eはエチレンの共重合単位を表し、XはC3〜C8α,β−エチレン系不飽和モノカルボン酸の共重合単位を表し、Yは、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択されたコモノマーの共重合単位を表し、XはE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%で存在し、YはE/X/Yコポリマーの約0〜約40重量%で存在する。エチレンの共重合単位およびアクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位(E/XジポリマーまたはE/X/Yコポリマー(但し、Yは0である))から本質的になるジポリマーから調製されたアイオノマーは注目に値する。エチレンの共重合単位、アクリル酸またはメタクリル酸の共重合単位およびアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの共重合単位(ここで、YはE/X/Yコポリマーの約0.1〜約40重量%で存在する)から本質的になるターポリマーから調製されたアイオノマーも注目に値する。
【0029】
従来のアイオノマーの非限定的且つ例示的な例には、E/15MAA/Na、E/19MAA/Na、E/15AA/Na、E/19AA/Na、E/15MAA/MgおよびE/19MAA/Li(但し、Eはエチレンを表し、MAAはメタクリル酸を表し、AAはアクリル酸を表し、数値はコポリマー中に存在するモノカルボン酸の重量%を表し、原子記号は中和用カチオンを表す)が挙げられる。こうした従来のアイオノマーまたは従来のアイオノマーの組み合わせは、EVOHと酸無水物アイオノマー(ジカルボン酸コモノマーを含有するコポリマーから調製されたもの)のブレンドに添加される時、成分(2)の半分(50重量%)以下の代わりに従来のアイオノマーを使うことが可能である。
【0030】
特定の用途の要求に応じて、成分(2)中の酸無水物アイオノマーとの組み合わせにおけるこうした従来のアイオノマーまたは従来のアイオノマーの混合物の量を操作して、透明性、靱性、バリア性および衝撃強度の適切なバランスを提供することが可能である。例えば、透明性が改善された非常に強化されたEVOH組成物は、より少量の酸無水物アイオノマーと合わせた比較的より多量の従来のアイオノマーを用いることにより達成することが可能である(例えば、従来のアイオノマー30重量%および酸無水物アイオノマー5重量%)。高い透明性且つ強化されたEVOHフィルムは、より少量の従来のアイオノマーと合わせた比較的より多量の酸無水物アイオノマーを用いて調製することが可能である(例えば、酸無水物アイオノマー30重量%および従来のアイオノマー5重量%)。等量の酸無水物アイオノマーと従来のアイオノマー(例えば、酸無水物アイオノマー15重量%および従来のアイオノマー15重量%)を含む変性剤ブレンドは注目に値する。
【0031】
酸無水物アイオノマーと従来のアイオノマーとを含む組成物は、酸無水物アイオノマーと従来のアイオノマーを混合し、同時にまたは後でのいずれかで酸無水物アイオノマーおよび従来のアイオノマーとEVOHを混合することにより得ることが可能である。すなわち、モノカルボン酸単位とジカルボン酸単位の組み合わせを含む酸コポリマーおよびモノカルボン酸単位を含む酸コポリマーは別個に中和され、その後、混合される。あるいは、モノカルボン酸単位とジカルボン酸単位の組み合わせを含む酸コポリマーおよびモノカルボン酸単位を含む酸コポリマーは混合され、後で中和される。
【0032】
組成物は、無水マレイン酸グラフトポリマー(マレェート化ポリマー)を更に含むブレンドを含む。無水マレイン酸グラフトポリマーには、マレェート化ポリエチレン、マレェート化ポリプロピレン、マレェート化ポリエチレン/ポリプロピレンゴム、マレェート化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロックコポリマー、マレェート化ポリブタジエン、マレェート化エチレン/酢酸ビニルおよびマレェート化エチレン/アルキルアクリレート、またはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0033】
酸無水物グラフトポリマーは既知の技術によって得ることが可能である。例えば、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはエチレン/アルキルアクリレートコポリマーなどのポリマーを無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物およびラジカル発生剤に加えて有機溶媒に溶解させてもよく、その後、攪拌しつつ加熱する。あるいは、グラフトポリマーは、反応性成分およびポリマーを押出機にフィードして、例えば、無水マレイン酸グラフトエチレンコポリマーを提供するプロセスによって調製してもよい。これらのプロセスは、無水マレイン酸が、以前のポリマー主鎖に対する側鎖である部分を含むコポリマーを提供する。
【0034】
マレェート化ポリエチレンの調製および使用に関する追加的詳細は米国特許第6,545,091号明細書に記載されている。無水マレイン酸変性線状高密度ポリエチレンの例は、POLYBOND(登録商標)3009としてCrompton Corporationによって販売されている製品である。類似のマレェート化ポリオレフィンは、FUSABOND(登録商標)としてDuPontによって販売されている。マレェート化ポリエチレンは、0.90g/cm3未満の密度を有するマレェート化ポリエチレンを含むことが可能であり、より低い密度のマレェート化ポリエチレンは、より柔らかい変性剤であると考えられる。
【0035】
成分(2)中の酸無水物アイオノマーと組み合わせたこうしたマレェート化ポリマーの量を操作して、透明性、靱性および低温衝撃強度の適切なバランスを提供することが可能である。例えば、透明性が改善された非常に強化されたEVOH組成物は、より少量の酸無水物アイオノマーと合わせた比較的より多量のマレェート化ポリマーを用いることにより達成することが可能である(例えば、マレェート化ポリマー30重量%および酸無水物アイオノマー5重量%)。高い透明性且つ強化されたEVOHフィルムは、より少量のマレェート化ポリマーと合わせた比較的より多量の酸無水物アイオノマーを用いて調製することが可能である(例えば、酸無水物アイオノマー30重量%およびマレェート化ポリマー5重量%)。例には、等量の酸無水物アイオノマーとマレェート化ポリマー(例えば、酸無水物アイオノマー15重量%およびマレェート化ポリマー15重量%)を含むブレンドが挙げられる。
【0036】
組成物は、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解安定剤、帯電防止剤、染料または顔料、充填剤、難燃剤、潤滑剤、ガラス繊維およびガラスフレークなどの強化剤、加工助剤、粘着防止剤、離型剤、および/またはそれらの2種以上の組み合わせを含む任意の添加剤を更に含むことが可能である。添加剤はポリマー組成物の約0.001から約20重量%以下で存在してもよい。こうした量は、ポリマー組成物の基本的な特徴および新規の特徴を損なわない量であってもよい。
【0037】
組成物は当業者に対して公知の種々の手段によって造形品に成形することが可能である。例えば、組成物を押出成形し、射出成形し、圧縮成形し、ブロー成形し、一体成形し、積層し、切断し、または粉砕などして、所望の形状およびサイズ内である物品を提供することが可能である。任意に、物品を更に加工してもよい。例えば、組成物を熱、圧力および/または他の機械的力に供して造形品を製造する熱成形操作に組成物の部分(ペレット、スラグ、ロッド、ロープ、シートおよび成形品または押出品など。但し、それらに限定されない)を供してもよい。
【0038】
酸無水物アイオノマーEVOHブレンドを含む物品は他の成分を更に含んでもよい。例えば、追加の機能性を物品に提供する機能層を提供するために熱可塑性樹脂の追加の層を含んでもよい多層高分子構造体の1層以上の層として酸無水物アイオノマーEVOH組成物を含めてもよい。例には、少なくとも1層の追加の層の中にアイオノマー材料を含む多層構造体が挙げられる。酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物の層および他の高分子層を無関係に成形してもよく、その後、接着剤で互いにくっつけて物品を形成してもよい。層の一部または全部を基材上に押出被覆または積層することにより物品を製作してもよい。特に成分が相対的に同一平面上にある場合、物品の成分の幾つかを共押出によって一緒に成形してもよい。従って、物品は、多層共押出フィルムまたはシートの中で酸無水物アイオノマーEVOH組成物の層と、異なる熱可塑性材料の1層以上の追加の層とを含むフィルムまたはシートであってもよい。
【0039】
多成分構造体または多層構造体(例えば、フィルムまたはシート)の中で酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物から形成された成分に加えて物品の成分を形成するために用い得る他の熱可塑性材料の例には、非アイオノマー熱可塑性コポリマーおよび/またはアイオノマー熱可塑性コポリマーを挙げることが可能である。
【0040】
非イオン熱可塑性樹脂には、ポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−ウレア、PEBAX(登録商標)(Atochemによって商業的に供給されているポリエーテル−ブロック−アミドに基づくブロックコポリマーの系列)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー(SEBS)などの1種以上の熱可塑性エラストマー、スチレンイソプレンスチレンコポリマー(SIS)、ポリアミド(低重合体および高分子)、ポリアミド、ポリエステル;、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン/コポリマーなどを含むポリオレフィン;、酢酸ビニル、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エポキシ−官能化モノマー、COなどの種々のコモノマーとのエチレンコポリマー、共重合またはグラフトのいずれかによる無水マレイン酸、エポキシ化などにより官能化されたポリマー、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)などのエラストマー、およびメタロセン触媒PEおよびコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0041】
追加の熱可塑性ポリマー成分は、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択することが可能であり、それらのすべては当該技術分野で公知である。
【0042】
ポリアミド(ナイロン)は当業者に対して公知であり、ラクタムまたはアミノ酸から調製することが可能である(例えば、ナイロン6またはナイロン11)か、またはヘキサメチレンジアミンなどのジアミンと、コハク酸、アジピン酸またはセバシン酸などの二塩基酸の縮合から調製することが可能である。これらのポリアミドのコポリマーおよびターポリマーも含まれる。例には、ポリイプシロンカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン12,12、およびナイロン6/6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6,6/12、ナイロン6/6,10、ナイロン6/6Tなどのコポリマーおよびターポリマー、またはそれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。その他のポリアミドには、非晶質ポリアミドが挙げられる。
【0043】
コポリエーテルエステルは、米国特許第3,651,014号明細書、米国特許第3,766,146号明細書および米国特許第3,763,109号明細書において詳しく論じられている。例には、ポリエーテルセグメントをテトラヒドロフランの重合によって得、ポリエステルセグメントをテトラメチレングリコールとフタル酸の重合によって得るコポリエーテルエステルが挙げられる。コポリエーテルエステルに導入されるポリエーテル単位が多ければ多いほど、ポリマーは柔らかくなる。
【0044】
コポリエーテルアミドも例えば米国特許第4,331,786号明細書で開示されたように当該技術分野において公知である。コポリエーテルアミドは、硬質ポリアミドセグメントと軟質ポリエーテルセグメントの線状且つ規則的な鎖を含む。
【0045】
ゴム弾性ポリオレフィンは、エチレンと、プロピレン、ヘキセン、オクテンなどのより高級な第一級オレフィンと任意成分である1,4−ヘキサジエンおよび/またはエチリデンノルボルネンまたはノルボルナジエンとを含むポリマーである。
【0046】
熱可塑性ポリウレタンは、硬質ブロックと軟質ゴム弾性ブロックからなる線状または僅かに分岐鎖のポリマーである。熱可塑性ポリウレタンは、軟質ヒドロキシ末端ゴム弾性ポリエーテルまたはポリエステルとメチレンジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)などのジイソシアネートの反応によって製造される。これらのポリマーは、グリコール、ジアミン、二酸またはアミノアルコールにより連鎖延長することが可能である。イソシアネートとアルコールの反応生成物はウレタンと呼ばれ、これらのブロックは比較的に硬く、そして高溶点である。これらの硬くて高融点のブロックはポリウレタンの熱可塑性の性質の要因である。
【0047】
ブロックスチレンジエンコポリマーはポリスチレン単位とポリジエン単位とを含む。ポリジエン単位は、ポリブタジエン、ポリイソプレン単位またはこれらの2つのコポリマーから誘導される。コポリマーの場合、ポリオレフィンを水素添加して飽和ゴム状主鎖セグメントを得ることが可能である。これらの材料は、通常、SBS、SISまたはSEBS熱可塑性エラストマーと呼ばれ、それらを無水マレイン酸で官能化することも可能である。
【0048】
従来のアイオノマーは上で記載されている。
【0049】
酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物を金属箔、ノンウーブン、ガラス繊維、炭素繊維およびテキスタイルなどを含む他の基材と組み合わせることも可能である。
【0050】
酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物は、当業者に対して公知の種々の手段によって造形品に成形することが可能である。例えば、組成物を押出成形し、射出成形し、圧縮成形し、ブロー成形し、一体成形し、積層し、切断し、または粉砕などして、所望の形状およびサイズ内である物品を提供することが可能である。任意に、組成物を含む物品を更に加工してもよい。例えば、組成物を熱、圧力および/または他の機械的力に供して造形品を製造する熱成形操作に組成物の部分(ペレット、スラグ、ロッド、ロープ、シートおよび成形品または押出品など。但し、それらに限定されない)を供してもよい。
【0051】
酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物を(共)押出し、種々のフィルム形成手段によってフィルムに成形することが可能である。フィルムは、ブローフィルム、キャストフィルム、積層フィルムまたは押出被覆フィルムを含み、単層または多層であることが可能である。適する加工技術を用いて溶融押出ポリマーをフィルムに加工することが可能である。例えば、多層フィルムを次の通り共押出によって調製することが可能である。種々の層中で用いられる組成物の粒質物を押出機内で溶融させる。溶融させたポリマーをダイまたはダイ組に通して、層状流れとして加工される溶融させたポリマーの層を形成する。溶融させたポリマーを冷却して多層構造体を形成する。共押出し、その後、1層以上の他の層上に積層することによってもフィルムを製造することが可能である。適する他の加工技術は、例えば、ブローフィルム押出、キャストフィルム押出、キャストシート押出および押出被覆である。
【0052】
フィルムの即時冷却または流延以降にフィルムを更に配向させることが可能である。フィルムを一軸配向させてもよいか、またはフィルムの平面において相互に垂直の2方向に引っ張ることによりフィルムを二軸配向させて、機械的特性と物理的特性の満足のいく組み合わせを達成することが可能である。任意に、フィルムを配向後に熱固定(anneal)してもよい。
【0053】
一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムへの配向・延伸装置は当該技術分野において公知であり、本明細書に記載された通りフィルムを製造するために当業者によって適応させてもよい。こうした装置およびプロセスの例には、例えば、米国特許第3,278,663号明細書、米国特許第3,337,665号明細書、米国特許第3,456,044号明細書、米国特許第4,590,106号明細書、米国特許第4,760,116号明細書、米国特許第4,769,421号明細書、米国特許第4,797,235号明細書および米国特許第4,886,634号明細書において開示された装置およびプロセスが挙げられる。
【0054】
一次チューブを押し出し、一次チューブを後で冷却し、再加熱し、その後、内部ガス圧によって膨張させて横配向を誘発し、そして縦配向を誘発し得る速度で差速ニップまたは搬送ロールによって引っ張ることにより同時二軸配向を生じさせ得るダブルバブル押出プロセスを用いてフィルムを配向させることが可能である。
【0055】
ダブルバブル技術を米国特許第3,456,044号明細書において開示された通り行うことが可能である。一次チューブを環状ダイから溶融押出する。押し出されたこの一次チューブを迅速に冷却して結晶化を最少にし、その後、しぼませる。その後、一次チューブを配向温度に加熱する(例えば、水浴によって)。フィルム二次加工機械の配向域において、二次チューブをインフレーションによって形成し、それによって膨張が両方向で好ましくは同時に起きるような温度でフィルムを横方向に放射状に膨張させ、機械方向に引っ張るか、または延伸する。チューブの膨張はドローポイントで厚さの急激な突然の減少を伴う。その後、チューブ状フィルムはニップロールを通して再び平らにされる。フィルムを再膨張させることが可能であり、任意に、熱固定工程(熱固定)に通すことが可能である。熱固定工程中に、フィルムをもう一度加熱して収縮特性を調節する。幾つかの用途において、フィルムをチューブ形態で維持することが望ましい場合がある。平らなフィルムを調製するために、チューブ状フィルムをその長さに沿って切り開くことが可能であり、巻取るおよび/または更に加工することが可能である平らなシートに切開することが可能である。
【0056】
フィルム(またはシート)を包装において用いることが可能である。多層フィルムは、分類的に少なくとも3層、すなわち、最外構造層または酷使層、内部バリア層および最内層ならびに任意にそれらの間の1層以上の接着剤層または繋ぎ層を含んでもよい。また、包装(例えば、パウチ)の意図した内容物に接触するとともに適合する最内層は、包装の内容物を封じ込めるためにロックアップ全周シール(すなわち、典型的に1,500グラム/インチより大きいシール強度)を形成することが可能である。最内層はヒートシール性であることも可能である。最外層は、包装の内容物から最も遠い層またはチューブ状フィルムの中心軸から最も遠い層を意味し、最内層は、包装の内容物に最も近い層またはチューブ状フィルムの中心軸に最も近い層を意味する。「内層」は、層の各面が多層構造体の別の層に接触している多層構造体中の層を意味する。
【0057】
最外構造層、すなわち、酷使層は、配向ポリエチレン、配向ポリエステル、配向ポリプロピレンまたは配向酸無水物アイオノマー強化EVOHを含むことが可能である。この層は裏面印刷可能であってもよく、包装を作るために用いられるシール温度によって侵されない場合がある。包装が多層構造体の厚さ全体を通してシールされるからである。この層の厚さは、典型的には包装の剛性を制御するように選択され、約10〜約60μmまたは約10〜約50μmの範囲であってもよい。
【0058】
内層は、パウチ内部の製品に潜在的に影響を及ぼし得る大気条件(酸素、湿度および光など)に応じて1層以上のバリア層を含むことが可能である。酸無水物アイオノマー強化EVOHはバリア層であることが可能である。他のバリア層組成物は、金属化ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム箔、ナイロン、ナイロンのブレンドまたは複合材およびそれらの関連コポリマーであることが可能である。バリア層の厚さは、製品の敏感さおよび所望の保存寿命に応じて異なってもよい。
【0059】
包装の最内層はシーラントであることが可能である。シーラントは、内容物の味、色または安定性に最少の作用を有することが可能であり、製品によって侵されるべきでなく、シール条件(液滴、グリースまたはダストなど)に耐えるべきである。シーラントは、最外層の外観がシーリングプロセスによって侵され得ず、シーリング棒の顎にくっつき得ないように最外層の溶融温度より実質的に低い温度で自身に接着した(シールした)樹脂であることが可能である。多層パウチの中で用いられるシーラントには、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレンなどのエチレンコポリマー、またはエチレンと酢酸ビニルまたはメチルアクリレートのコポリマー、もしくはエチレンと任意にアイオノマー化(すなわち、Na、Zn、MgまたはLiなどの金属イオンにより部分的に中和されている)されていてもよいアクリル酸またはメタクリル酸のコポリマーが挙げられる。シーラントはポリプロピレンコポリマーも含むことが可能であり、厚さ約25〜100μmであることが可能である。
【0060】
特にフィルムの形態を取った多層構造体の例には、(フィルムの最外層から製品接触最内層まで)変性EVOH/繋ぎ/シーラント、ポリエチレン/繋ぎ/変性EVOH、ポリエチレン/繋ぎ/変性EVOH/繋ぎ/ポリエチレン、ポリプロピレン/繋ぎ/変性EVOH/繋ぎ/ポリプロピレン、ポリプロピレン/繋ぎ/変性EVOH/繋ぎ/ポリエチレン、ポリエチレン/繋ぎ/変性EVOH/繋ぎ/シーラント、ポリアミド/繋ぎ/変性EVOH/繋ぎ/シーラント、ポリアミド/繋ぎ/変性EVOH/ポリアミド/繋ぎ/増量層/シーラントおよびポリエチレン/繋ぎ/ポリアミド/変性EVOH/ポリアミド/繋ぎ/シーラントが挙げられる。ここで、「変性EVOH」は本明細書において開示された酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物を表し、「繋ぎ」は接着剤層を表し、「シーラント」はヒートシールのために適する熱可塑性組成物を表す。多層フィルム構造体において、記号「/」は層間の境界を表す。本明細書において開示された構造体は、可能な構造体の網羅的なリストである積もりではなく、例の目的のためである。
【0061】
これらの構造体の中の変性EVOHは、耐酷使性、耐熱性(ヒートシール中)、バリア性、耐破壊性、熱成形性および/または印刷性表面を提供することが可能である。ポリアミドは追加のバリア層または構造層として含めてもよい。シーラントは、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマーまたはアイオノマーもしくはそれらのブレンドであることが可能である。これらは、多様な食品および医療器具などの他の品目を包装するために適する。
【0062】
包装材料中の製品に関する消費者への情報を提供する、および/または包装の心地よい外観を与える包装材料を提供するために、包装材料として用いられるフィルムを、例えば、印刷、エンボスおよび/または着色によって更に処理してもよい。
【0063】
フィルムおよびシートは、一軸延伸または二軸延伸、軸方向ヒートシール、熱成形、真空成形、シートの折り重ねおよびヒートシール(form−fill−seal)、圧縮成形、一体成形または他の成形プロセスまたは形成プロセスにより造形品(例えば、ブリスターパック、トレーおよびカップなどの多層容器)に更に加工することが可能である。
【0064】
開示されたフィルムまたはシートの幾つかは、包装に含まれ得る造形品に熱成形することにより更に加工することが可能である。熱成形プロセスにおいて、フィルムまたはシートは軟化温度より上に加熱され、所望の形状に成形される。フィルムまたは積層物のこの成形されたシートは、通常は成形ウェブと呼ばれる。種々のシステムおよび器具は、所定の形状への成形ウェブの適切な形成を提供するために、しばしば真空支援部品およびプラグ支援部品を伴う熱成形プロセスにおいて用いられる。熱成形プロセスおよびシステムは当該技術分野において公知である。
【0065】
変性EVOHのフィルムは、典型的には非変性EVOHのガラス転移温度より低い温度で熱成形することが可能である。これは、より高い温度に耐えることができない成分を有する物品を熱成形することを見込むことが可能である。酸無水物アイオノマー変性EVOHは約100℃〜約180℃の範囲内の温度で熱成形することが可能である。しばしば、熱成形された物品は、包装内に含めようとする製品の形状に一致するように造形することが可能である。熱成形された包装は、ホットドッグおよびソーセージなどの加工肉を含有するために用いることが可能である。
【0066】
フィルムはパウチに成形されるべきウェブ素材として用いることが可能である。パウチは、ウェブ素材の分離片を切断しヒートシールすることによって、および/または折り重ねおよびヒートシールと切断の組み合わせによってウェブ素材から成形される。パウチは、U形状の溝またはV形状の溝の中に配置される包装フィルムの連続ウェブを提供することにより調製することが可能である。自立パウチは、W形状の溝を提供するためにガセットまたはプリーツを含む包装フィルムの連続ウェブを提供することにより調製することが可能である。
【0067】
軟質パウチを調製するために用いられる包装フィルムの連続ウェブは、上述した通り溝に配置されるフィルムの単一シートを含んでもよい。あるいは、ウェブは、例えば、溝の底で継目をヒートシールすることにより一緒に接着される包装フィルムの2つまたは3つのシートを含んでもよい。この代替案において、シートは同じかまたは異なってもよい。自立パウチの特定の形態は、包装フィルムの3つのシートを含み、その1つはパウチの底を形成し、プリーツが付けられており、2つはパウチの側面を形成する。シートは溝の底で2つの継目によって一緒に接合される。継目はパウチが垂直に立つことを可能にするのに十分な剛性をパウチに提供する。
【0068】
溝形状ウェブはレセプタクルに分割され、横シールによる個々のパウチのサイズは、典型的にはヒートシールによって調製される。パウチは、任意に、充填後にパウチの内容物へのアクセスを可能にする器具を含んでもよい。器具はフィルムウェブの縁間に挿入され、パウチの上部シールは、器具をウェブの縁にシールし、縁を互いにシールすることにより作られる。個々のパウチは横カッターによってウェブから切断される。パウチを成形し、充填し、シールする操作は、上述した工程を同時におよび/または逐次に行うことにより調製することが可能である。
【0069】
例えば、パウチを調製してもよく、器具を挿入してもよく、後でパウチを充填してもよい。前もって形成されたパウチは、一般に上述した通り調製され、その中で、軟質包装フィルムはパウチ形状に成形され、器具はフィルムウェブの端間に挿入され、例えばヒートシールによってフィルムに接合される。フィルム縁の部分は一緒にシールされず、よってパウチの後続の充填のための開口を提供する。例えば、器具は、横シールの接合部およびパウチの開放端でパウチに挿入され接合され、開放端の残りはシールされないままである。器具がパウチの開放端の対角線隅において挿入されシールされるようにパウチを造形してもよい。そのように調製されたパウチを集めることが可能であり、内容物で充填されるために別個の充填操作に移送することが可能である。充填操作において、パウチの内容物の所望の量を計量弁によって開口を通してパウチに入れる。(例えば、ヒートシールによって)開口を形成するフィルムの縁を接合することにより開口をシールして上部シールを形成する。
【0070】
Totani Corporation(京都、日本国)またはKlockner Barlelt Co.(Sarasota,Florida)によって製造された装置などのパウチ製造装置を用いることが可能である。
【0071】
Bekum、Sigなどによって製造された装置などの標準ブロー成形装置を用いることにより共押出ブロー成形を介してボトル、燃料タンクおよび他の類似容器を製造することが可能である。滅菌環境下でWeilerまたはRommelagのblow−form−fill(BFF)上で製造されたボトルを有することは特に適する。ボトルは、酸無水物アイオノマー変性EVOH組成物の少なくとも1層を含む単層構造体または多層構造体のいずれかであることが可能である。
【0072】
異形材は特定の形状を有することにより定義され、その製造プロセスによって異形押出として公知である。異形材はフィルムでもシートでもなく、従って、異形材を製造するプロセスはカレンダー加工またはチルロールの使用を含まない。異形材は射出成形プロセスによって調製されない。ダイ(環状ダイ)のオリフィスを通して熱可塑性溶融物を押し出し、所望の形状を維持できる押出物を形成することにより始まる溶融押出プロセスによって異形材は製作される。押出物は、典型的には所望の形状を維持しつつ最終寸法に引っ張られ、その後、空気または水浴中で冷却されて形状を固定し、それによって異形材を製造する。単一異形材の成形において、押出物は、好ましくは一切の構造的な支援なしに形状を維持する。幾つかの形状に関して、繊維強化材または金属強化材などの支持手段は形状保持を助けるために用いてもよい。
【0073】
異形材の一般形状はチューブである。液体および蒸気の輸送のためのチューブアセンブリは当該技術分野において公知である。チューブは、医療用途における流体移送のためにまたは飲料などの流体の移送において用いられる。これらの用途は、良好な水分バリア特性、フレーバーバリア性、耐薬品性、靱性および柔軟性を要求する場合がある。チューブの透明性は、移送される流体の目視観察のために望ましいことがあり得る。更に、チューブの用途に応じて、極度に低い温度および/または極度に高い温度にさらされる場合がある。本明細書において記載された組成物は、靱性、柔軟性および透明性の良好な組み合わせを提供し、チューブなどの異形材の調製のために組成物を適させる。
【0074】
本発明は、上述した組成物を含む単層または多層のフィルムまたはシートを含むか、またはそれらから調製された、製品を含むための包装、ボトルまたはチューブも提供する。用途は、高い透明性、バリア性および衝撃強度が要求される軟質(パウチ)と硬質(ボトル、タンクおよび熱成形カップまたはトレー)の両方であることが可能である。例えば、包装は低温で貯蔵される肉または他の食品を包装するために有用である。包装として用いられる例には、肉および他の食品;、冷凍食品または貯蔵安定食品のための熱成形カップまたはトレー;、ヘルスケア溶液、飲料または他の流体を含有し分配するために用いられるパウチおよびボトル;、およびヘルスケア溶液、飲料または他の流体を移送するためのチューブが挙げられる。食品、飲料およびヘルスケア溶液に加えて、組成物は、工業薬品、クリーニング製品、殺虫剤、燃料および消費向けでない他の製品を包装し、貯蔵し、および/または移送する際に有用であり得る。
【0075】
容器材料および包装材料は、真空成形または加圧成形によってシートから調製されたトレー、カップ、キャップまたは蓋;、未延伸シートを深絞り成形(すなわち、熱成形)することにより調製された造形品;、圧縮成形または他の成形プロセスによって調製された造形品;、シートを折り重ね、その縁をヒートシールすることにより調製されたゲーブルトップカートンなどの造形品を含む種々の造形品の材料であることが可能である。
【0076】
包装の例には、上述した組成物と多層構造体とを含む、パウチおよび/またはボトル、特に医療溶液または栄養溶液を貯蔵し移送するためのパウチおよび/またはボトルが挙げられる。現在、使い捨て軟質パウチの形態で非経口(例えば、静脈内またはIV)投与のための医療流体または医療溶液を供給するのが一般的な慣習である。こうしたパウチの1つの類は、一般に「IVバッグ」と呼ばれる。これらのパウチは、光学的透明度および透明性、折り畳み性、高温耐熱性(水蒸気滅菌性)および使用環境の厳しさに耐えるのに十分な機械的強度を含む多くの性能基準を必要とし得る。医療溶液のパウチは、パウチに含まれる溶液の酸化および濃度変化を防ぐために水蒸気、酸素および他の気体の通過に対する十分なバリア性も要求する。
【0077】
医療溶液のパウチを成形するために用いられる時、本明細書において記載された酸無水物変性EVOH組成物から調製された単層フィルムまたは多層フィルムは、医療溶液含有パウチが以下で記載された通り熱滅菌された後に優れた光学的特性(すなわち、透過性、透明性、曇り度)を有する。
【0078】
光学的特性およびバリア特性を提供することに加えて、フィルムは、良好な可撓性および/または折り畳み性および機械的強度ならびに高温滅菌に耐えることを含む医療溶液のパウチにおいて要求される他の性能基準を示すことが可能である。更に、フィルムは良好なバリア特性を提供する。
【0079】
光学的透明度および透明性は、投与されるべき医療溶液が適切なタイプの医療溶液であり、劣化しておらず、汚染に至っていないという大雑把な決定を提供するためにパウチ内に含まれる溶液の目視検査を見込むことが重要であり得る。
【0080】
折り畳み性はパウチの適切且つ完全な排液を確実にするために望ましい。パウチが排液するにつれて、大気圧は排液の速度に比例する速度でパウチをつぶす。このようにして、パウチは実質的に一定の速度で完全に排液されることが可能である。結果として、パウチを作ったフィルムは、医療パウチが折り畳み性であるように十分に可撓性であってもよい。
【0081】
フィルムの高温耐熱性は望ましいことがあり得る。フィルムが溶液含有医療パウチの熱滅菌を見込んでいるからである。熱滅菌は、典型的には約116℃〜130℃で15分〜30分の時間にわたって水蒸気加熱オートクレーブ内で行われる。医療溶液の製造業者および/または包装業者は、通常は包装された医療溶液をエンドユーザー、例えば、病院に送る前に熱滅菌を行ってもよい。これは、医療溶液のパウチ中に包装された医療溶液が汚染物を実質的に含み得ないことを確実にするのを助ける。
【0082】
場合によって、パウチ内の医療流体は低温で貯蔵され、結果として、パウチは望ましくは十分な低温靱性も有する。低温は、約0℃未満、−5℃未満または−15℃未満の温度を意味する。低温靱性は、低温でフィルムの脆性または脆性の欠如の試験を行うことにより測定することが可能である。有益であり得る靱性の目安である1つの試験は、吊り下げられたフィルム上に分銅を落下させ、結果を観察し記録するダート衝撃試験である。−10℃の温度で、165グラム以上で50%不合格率が観察される時、250グラム以上で50%不合格率が観察される時、350グラム以上で50%不合格率が観察される時、または500グラム以上で50%不合格率が観察される時、フィルムは許容できるダート衝撃を有する。フィルムの靱性はフィルムの厚さによって影響され得る。従って、ダート衝撃の結果は類似厚さのフィルムを基準として解釈し比較してもよい。
【0083】
医療溶液のパウチは、望ましくは、使用環境において典型的に発生する酷使に耐えるのに十分な機械的強度を有する。例えば、幾つかの状況において、プラスチック袋またはゴム袋を医療溶液含有パウチの周りに置き、約400mmHg、例えば、300〜400mmHgに至るまで加圧して、溶液を押し進めてパウチから出して患者に入れる。こうした袋は、一般に「圧力カフ」と呼ばれ、失った流体を迅速に交換するために患者がおびただしく出血する時、または患者の静脈に医療溶液を導入するためにより大きな逆圧をパウチ内で発生し得るような高血圧を患者が有する時、こうした袋を用いてもよい。医療溶液のパウチは、望ましくは、こうした手順中に漏れがないままであるのに十分な耐久性を有する。
【0084】
このようにして包装され投与される医療溶液の例には、生理食塩水溶液、ブドウ糖溶液および透析用途のための溶液が挙げられる。しかし、フィルムおよびパウチは、靱性で高透明性のフィルムまたはパウチを必要とする他のあらゆる用途においても使用できよう。例えば、血液および血液製剤、発酵ブロスおよび生物薬剤などの生物流体をパウチ内に貯蔵してもよい。
【0085】
パウチ内に包装され得る他の流体には、飲料が挙げられる。飲料は、ヒトの消費のために適する栄養、電解質、ビタミン、繊維、調味料、着色剤、保存剤および酸化防止剤などの追加の成分を任意に含んでいてもよい、水、フルーツジュースまたは野菜ジュースもしくはジュースドリンク、大豆系製品、乳製品および他の風味剤入りドリンクなどの飲用のあらゆる液体であることが可能である。
【0086】
以下の実施例は単に例示であり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0087】
用いられた材料
酸無水物アイオノマー1:エチレンと11重量%のメタクリル酸と6重量%のエチル水素マレェートとを含むターポリマーであって、カルボン酸部分の公称60%を亜鉛カチオンにより中和したターポリマー
N−アイオノマー1:SURLYN(登録商標)AM7927としてDuPontから入手できるポリアミドとブレンドされた亜鉛中和エチレンメタクリル酸コポリマー(重量比70:30)であり、94℃の融点、0.98g/ccの密度および16のMI(210℃および2.16kgで測定)を有する。
EVOH−1:EVAL(登録商標)F101AとしてEval Company of Americaから入手できる32重量%のエチレン、183℃の融点、1.19g/ccの密度および1.6のMIを有するEVOH
EVOH−2:EVAL(登録商標)L101AとしてEval Company of Americaから入手できる27重量%のエチレン、191℃の融点、1.20g/ccの密度および3.9のMIを有するEVOH
PE−1:SCLAIR(登録商標)19AとしてNova Chemicalsから入手できる0.962g/ccの密度および0.72のMIを有する高密度ポリエチレンホモポリマー
Tie−1:BYNEL(登録商標)4109としてDuPontから入手できる0.982g/ccの密度および3.1のMIを有する酸無水物変性線状低密度ポリエチレン接着剤組成物
【0088】
材料の加工および試験の説明
表1においてまとめた成分を用いて30mm二軸スクリュー押出機内で基本樹脂を溶融混合することにより、EVOH−1またはEVOH−2と酸無水物アイオノマー1のブレンドを調製した。更に、ブレンドのための条件と同じ条件を用いて二軸スクリュー押出機を通して加工された非変性EVOH組成物(C1、C2)および袋から直接得られたEVOH(C5)を対照サンプルとして試験した。N−アイオノマー1、すなわち、以前のEVOH変性剤を比較例C3およびC4の中で用いた。厚さ2ミルの単層EVOHフィルムを1.5インチ押出機によりキャストフィルムライン上で製造した。溶融温度を220℃で測定した。
【0089】
表1

【0090】
サンプルについて行われた試験は、スペンサー衝撃(ASTM D3420)、透明度(ASTM D1746)、曇り度(ASTM D1003)、光沢(ASTM D2457)および酸素透過値、すなわちOPV(ASTM D3985)を含む。表2は測定されたフィルム特性をまとめている。
【0091】
表2

【0092】
表2の結果の考察は、酸無水物アイオノマーにより変性されたEVOH組成物が類似の酸素透過率を維持しつつ、EVOH−1サンプルに関する非変性EVOH組成物に比べて衝撃特性において大幅な改善を示したことを指示している(C1に対して実施例1、2および3を、C2に対して実施例4、5および6を比較すること)。類似の耐スペンサー衝撃性を維持しつつ(実施例3を比較例C3と比較した)、N−アイオノマーの代わりに変性剤として酸無水物アイオノマーを用いる実施例において合計曇り度の大幅な減少を得た(実施例3を比較例C3と比較し、実施例6を比較例C4と比較した)。比較変性剤に比べて酸素バリア性においても大幅な改善があった(C3に対して実施例1、2および3を、C4に対して実施例4、5および6を比較すること)。単層キャストフィルムに関する酸素バリア性測定は、酸無水物アイオノマー対N−アイオノマーによる変性EVOHの優れたバリア性能を実証した(実施例3および6対比較例C3およびC4を比較すること)。
【0093】
3層共押出ブローフィルムのサンプルを構造PE−1(1ミル)/Tie−1(1ミル)/EVOH(1ミル)を有する3層Bramptonライン上で製造した。ここで、EVOHは表1においてまとめたEVOH組成物を示す。表3において示した時間にわたり周囲条件で貯蔵することによりフィルムを熟成し、12インチ/分の引っ張り速度を用いて、剥離強度をASTM F−88に準拠して測定した。結果を表3においてまとめている。表3において、「STD」は標準偏差を意味し、「CNS」は層を破壊せずに分離できなかったことを指示している。
【0094】
1種の接着剤組成物(Tie−1)を試験した。予想通り、EVOH−1とEVOH−2の間のエチレン含有率の相違のゆえに、接着剤はEVOH−2よりEVOH−1に効果的に接着した。同様に、接着剤は、一般にEVOH−2を含有するブレンドよりEVOH−1を含有する類似のブレンドに良好な結合を提供した。フィルムサンプルの多くは、1ヶ月の期間にわたって、ある程度の接着力経時上昇を示している(増加した接着強度)。
【0095】
表3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エチレンビニルアルコールコポリマーと、
(2)(a)エチレンの鎖内共重合単位、(b)α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸の鎖内共重合単位、(c)少なくとも1種のコモノマーの鎖内共重合単位、および任意成分である(d)アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートの鎖内共重合単位を有するコポリマーを含むアイオノマー組成物とを含み、存在する組み合わせたカルボン酸官能基が、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている組成物。
【請求項2】
(1)前記組成物の全重量を基準にして約60〜約95重量%の前記エチレンビニルアルコールコポリマーと、
(2)
(a)エチレンの鎖内共重合単位、
(b)α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸の鎖内共重合単位約5重量%〜約15重量%、
(c)少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸の環式無水物、少なくとも2個のカルボン酸基を有するC4〜C8不飽和酸のモノエステルまたはそれらの2種以上の組み合わせを含む少なくとも1種のコモノマーの鎖内共重合単位約0.5重量%〜約18重量%、および
(d)アルキルが1〜12個の炭素原子を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを含む鎖内共重合単位0〜約40重量%
を含む、前記組成物の全重量を基準にして約5〜約40重量%の前記アイオノマー組成物と
を含み、(a)、(b)、(c)および(d)の量が前記コポリマーの重量を基準としており、存在する組み合わせたカルボン酸官能基が、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレンビニルアルコールコポリマー約65〜約95重量%と前記アイオノマー組成物約5〜約35重量%とを含み、成分(2)(c)が前記コポリマーの約4〜約16重量%の範囲内で存在し、前記コポリマーの約6〜約10重量%の範囲内で存在するマレイン酸のC1〜C4アルキル半エステルの共重合単位を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(2)がエチレンとメタクリル酸とマレイン酸のC1〜C4アルキルモノエステルのコポリマーであり、約40〜約60%中和され、成分(2)(c)が前記コポリマーの約6〜約8重量%の範囲内で存在する、請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上のE/X/Yコポリマーであって、Eがエチレンの共重合単位を表し、XがC3〜C8α,β−エチレン系不飽和モノカルボン酸の共重合単位を表し、Yが、アルキル基が1〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートから選択されたコモノマーの共重合単位を表し、XがE/X/Yコポリマーの約2〜約30重量%で存在し、YがE/X/Yコポリマーの約0〜約40重量%で存在し、1種以上のアルカリ金属カチオン、遷移金属カチオンまたはアルカリ土類金属カチオンによって少なくとも部分的に中和されている1種以上のE/X/Yコポリマーもしくは
1種以上のポリアミド、コポリエーテルエステル、コポリエーテルアミド、ゴム弾性ポリオレフィン、スチレンジエンブロックコポリマー、熱可塑性ポリウレタンまたは無水マレイン酸グラフトポリマーを含む非アイオノマー熱可塑性材料
を更に含む、請求項1、2、3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記非アイオノマー熱可塑性材料が、マレェート化ポリエチレン、マレェート化ポリプロピレン、マレェート化ポリエチレン/ポリプロピレンゴム、マレェート化スチレン−エチレン−ブテン−スチレントリブロックコポリマー、マレェート化ポリブタジエン、マレェート化エチレン/酢酸ビニル、マレェート化エチレン/アルキルアクリレート、またはそれらの2種以上の組み合わせを含む無水マレイン酸グラフトポリマーである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6に記載の組成物を含む物品または前記組成物から製造された物品であって、単層または多層のフィルムまたはシート、パウチまたはバッグ、ボトル、トレー、タンクまたはチューブである物品。
【請求項8】
前記物品が、少なくとも1方向に配向され、任意に熱固定されていてもよい単層フィルムまたは多層フィルムである請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、熱成形された単層または多層のフィルムまたはシートである請求項7に記載の物品。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5または6に記載された組成物または請求項7または8に記載された物品を含む包装もしくは前記組成物または前記物品から製造された包装であって、肉を包装するための包装または任意に医療溶液を貯蔵し、投与してもよいパウチである包装。

【公表番号】特表2010−527388(P2010−527388A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507613(P2010−507613)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062866
【国際公開番号】WO2008/141029
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】