説明

エチレン共重合体、該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物およびこれらから得られる成形体

【課題】成形性及び機械的強度に優れたエチレン共重合体、該共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物並びにこれらからの成形体、フィルム、該フィルムを含むラミネートフィルムを提供すること。
【解決手段】エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体で、要件I)〜VI)を満たす。I)MFR(190℃、2.16kg荷重)0.1〜100g/10分;II)密度875〜936kg/m3;III)溶融張力及びせん断粘度との比2.50×10-4〜9.00×10-4;IV)メチル分岐数とエチル分岐数との和1.8以下;V)ゼロせん断粘度〔η0(P)、200℃〕及びGPC-粘度検出器法により測定された重量平均分子量(Mw)が0.01×10-13×Mw3.4≦ηo≦4.50×10-13×Mw3.4の関係;VI)GPC測定にての分子量分布曲線における最大重量分率での分子量1.0×104.20〜1.0×104.50

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来公知のエチレン共重合体と比較して成形性に優れ、かつ機械的強度に特に優れたエチレン共重合体および該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、さらに詳しくは、このエチレン共重合体および該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からなる成形体、フィルム、該フィルムを含んでなるラミネートフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン共重合体は、種々の成形方法により成形され、多方面の用途に供されている。これら成形方法や用途に応じて、エチレン共重合体に要求される特性も異なってくる。例えばTダイ成形においてキャストフィルムを成形する場合、フィルム端部が中央方向へと縮んでしまうネックインが発生する。ネックインが発生すると、フィルム幅が小さくなるとともにフィルム端部の厚みがフィルム中央部に比べ厚くなってしまうため、製品の歩留まりが悪化する。ネックインを最小限に抑えるためには、エチレン共重合体として分子量の割には、溶融張力の大きいものを選択しなければならない。同様の特性が中空成形におけるたれ下がり、あるいはちぎれを防止するために、あるいはインフレーションフィルムにおけるバブルのゆれ、あるいはちぎれを防止するために必要である。
【0003】
また、Tダイ成形においてキャストフィルムを成形する場合、引取サージング(ドローレゾナンスと呼ばれる場合もある)と呼ばれるフィルムの引き取り方向に発生する規則的な厚み変動が生じてしまう。引取サージングが発生するとフィルムに厚薄ムラが発生し、その結果、場所毎に機械的強度にばらつきが出てしまう。このため、フィルム厚みの均質なフィルムを安定的に生産するためには、引取サージングの発生を避けねばならない。この引取サージングを抑制するためには、伸長粘度のひずみ硬化度が、ひずみ速度の増加に伴い大きくなるような樹脂特性が必要であると考えられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
メタロセン触媒を用いて得られたエチレン共重合体は、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度には優れるが、溶融張力が小さいためネックインが大きくなってしまう。また、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示さないため、引取サージングを発生してしまう。
【0005】
高圧法低密度ポリエチレンは、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン共重合体と比較して溶融張力が大きいため、ネックインなどの成形性に優れる。また、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、引取サージングが発生しない。しかし高圧法低密度ポリエチレンは、複雑な長鎖分岐構造を有するため引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に劣る。
【0006】
そこで、ネックイン、引取サージングなど、成形性における問題点を改善し、かつ機械的強度を具備させたエチレン共重合体として、メタロセン触媒を用いて得られたエチレン共重合体と高圧法低密度ポリエチレンとの組成物が特許文献1などに提案されている。しかし、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が多い場合、引張強度、引裂強度あるいは耐衝撃強度などの機械的強度に劣ることが予想される。また、高圧法低密度ポリエチレンの含有量が少ない場合には溶融張力の向上が十分でないため、ネックインが大きいなど成形性の悪化が予想される。
【0007】
このような問題を解決するため、メタロセン触媒により長鎖分岐を導入したエチレン共重合体が種々開示されている。特許文献2にはエチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリドとメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン共重合体が、特許文献3にはシリカに担持したエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドとメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン共重合体が、特許文献4には拘束幾何触媒の存在下で溶液重合により得られたエチレン共重合体が、特許文献5にはシリカに担持したMe2Si(2-Me-Ind)2のラセミおよびメソ異性体とメチルアルモキサンとからなる触媒の存在下で気相重合により得られたエチレン共重合体が開示されている。これらのエチレン共重合体は、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン共重合体に比べ溶融張力が向上し、成形性に優れる旨の記載はあるが、依然としてネックインは大きいことから、成形性の向上については不十分であると予想される。また、これらのエチレン共重合体は、高圧法低密度ポリエチレンとは異なり、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示さないため、引取サージングは改善されないと予想される。
【0008】
特許文献6にはゼロせん断粘度と重量平均分子量とが特定の関係を満たすエチレン共重合体が開示されている。このエチレン共重合体は、ゼロせん断粘度と重量平均分子量とが特定の関係を満たすことにより伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、引取サージングが改善されている。また、メタロセン触媒を用いて長鎖分岐を導入した従来のエチレン共重合体に比べネックインが改善されており、フィルムの機械的強度についても、高圧法低密度ポリエチレンに比べ優れている。しかし、エチレン共重合体を包装材料やボトル、タンクなどに用いる場合には、内容物を保護するため、さらなる機械的強度の改善が望まれている。また、製品歩留まりのさらなる向上のため、ネックインの改善も望まれている。
【0009】
以上述べたように、従来の公知技術から、ネックインや引取サージングなどの成形性における問題点が改善された、かつ機械的強度に特に優れたエチレン共重合体を効率的に得ることは難しかった。
【0010】
本発明者らは、このような状況に鑑み鋭意研究した結果、特定の溶融特性と分子構造とをポリマー中に付与することにより、Tダイ成形におけるネックインが小さく、引取サージングの発生がなく、かつ機械的強度に特に優れるエチレン共重合体を見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−26079号公報
【特許文献2】特開平2−276807号公報
【特許文献3】特開平4−213309号公報
【特許文献4】国際公開第93/08221号パンフレット
【特許文献5】特開平8−311260号公報
【特許文献6】特開2006−233206号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】金井俊孝、船木章著「繊維学会誌(第41巻)」、1986年、T-1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来公知のエチレン共重合体と比較して成形性に優れ、かつ機械的強度に特に優れたエチレン共重合体、該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物、ならびに、該エチレン共重合体および該熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体、フィルム、該フィルムを含んでなるラミネートフィルムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエチレン共重合体は、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たすことを特徴としている。
(I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲である。
(II)密度(d)が875〜936kg/m3の範囲である。
(III)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が2.50×10-4〜9.00×10-4の範囲である。
(IV)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個あたりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.8以下である。
(V)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
【0015】
【数1】

【0016】
(VI)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20〜1.0×104.50の範囲である。
また、本発明に係るエチレン共重合体を、他の熱可塑性樹脂とブレンドすることにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に特に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。本発明に係るエチレン共重合体、およびエチレン共重合体を含む樹脂組成物を加工することにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた成形体、フィルム、該フィルムを含んでなるラミネートフィルムが得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエチレン共重合体、およびエチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、Tダイ成形におけるネックインが小さく、引取サージングの発生がなく、かつ機械的強度に特に優れた成形体、フィルム、該フィルムを含んでなるラミネートフィルムを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るエチレン共重合体について具体的に説明する。
本発明に係るエチレン共重合体は、エチレンと炭素数4〜10のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4〜10のα-オレフィン(ただしコモノマーとしてブテン−1を使用する場合には、炭素数6〜10のα-オレフィンも必須とする)、より好ましくはエチレンと炭素数6〜10のα-オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
【0019】
このようなエチレン共重合体は下記(I)〜(VI)に示すような特性を有している。
(I)メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、好ましくは1.0〜50g/10分、より好ましくは1.0〜30g/10分、特に好ましくは4〜30g/10分の範囲である。メルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上の場合、エチレン共重合体のせん断粘度が高すぎず、成形性が良好である。メルトフローレート(MFR)が100g/10分以下の場合、エチレン共重合体の引張強度やヒートシール強度が良好である。
【0020】
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン共重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン共重合体のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。
【0021】
メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238-89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
(II)密度(d)が875〜936kg/m3、好ましくは885〜930kg/m3、より好ましくは903〜930kg/m3の範囲にある。密度(d)が875kg/m3以上の場合、エチレン共重合体から成形されたフィルム表面のべたつきが少なく、密度(d)が936kg/m3以下の場合、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度が良好である。
【0022】
密度はエチレン共重合体のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン共重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン共重合体を製造することができる。
【0023】
密度(d)の測定は、測定サンプルを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷した後、密度勾配管により行う。
(III)溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(Poise)〕との比〔MT/η*(g/Poise)〕が2.50×10-4〜9.00×10-4、好ましくは2.50×10-4〜7.00×10-4、より好ましくは3.00×10-4〜5.00×10-4の範囲である。
【0024】
MT/η*が2.50×10-4以上の場合、ネックインが良好であり、MT/η*が9.00×10-4以下の場合、ドローダウン性が良好である。
MT/η*はエチレン系重合体の長鎖分岐含量に依存しており、長鎖分岐含量が多いほどMT/η*は大きく、長鎖分岐含量が少ないほどMT/η*は小さくなる。長鎖分岐とはエチレン系重合体中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。後述のように本発明に係るエチレン系重合体は、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含んでなることを特徴とするオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンを重合することによって製造することができる。本発明のエチレン系重合体が生成する機構において、本発明者らは、成分(A)と成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとを重合させることによって数平均分子量4000〜20000、好ましくは4000〜15000の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(B)と成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレンおよび炭素数4〜10のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、本発明のエチレン系重合体中に長鎖分岐が生成すると考えている。本発明のエチレン系重合体中の長鎖分岐含量は、重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])に依存しており、[マクロモノマー]/[エチレン]が高いほどエチレン系重合体中の長鎖分岐含量は多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くできることから、[A]/[A+B]を増減することで上記範囲のMT/η*を有するエチレン系重合体を製造することができる。後述する実施例において、実施例11([A]/[A+B]=0.40)と実施例16([A]/[A+B]=0.18)とを比較すると、[A]/[A+B]の高い実施例11のMT/η*はより請求範囲上限に近い値を示す。
【0025】
溶融張力(MT)は、以下の方法で測定したときの値である。溶融張力(MT)は、溶融されたポリマーを一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定される。測定には東洋精機製作所製、MT測定機を用いる。条件としては、樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmで行う。
【0026】
また、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定することにより決定される。測定にはレオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR-5000を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとする。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg重/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg重/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
【0027】
(IV)13C−NMRにより測定されたメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.8以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは0.8以下、さらにより好ましくは0.5以下である。なお、本発明で定義したメチル分岐数およびエチル分岐数は、後述するように1000カーボン当たりの数で定義される。
【0028】
エチレン共重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば、大澤善次郎他監修、「高分子の寿命予測と長寿命化技術」、(株)エヌ・ティー・エス、2002年、p.481)。そのため、メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が1.8以下の場合、エチレン共重合体の機械的強度が良好である。
【0029】
エチレン共重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数はエチレン共重合体の重合方法に強く依存し、高圧ラジカル重合により得られたエチレン共重合体は、チーグラー型触媒系を用いた配位重合により得られたエチレン共重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン共重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1−ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1−ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1−ブテン/エチレンを増減させることで、エチレン共重合体のメチル分岐数とエチル分岐数の和(A+B)を増減させることが可能である。
【0030】
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数およびエチル分岐数は下記のように決定される。測定は日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)を用い、積算回数1万〜3万回にて測定した。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いた。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、PEサンプル250〜400mgと和光純薬工業(株)製特級o-ジクロロベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させることにより行った。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
【0031】
(V)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
【0032】
【数2】

【0033】
好ましくは、下記関係式(Eq-2)を満たす。
【0034】
【数3】

【0035】
より好ましくは、下記関係式(Eq-3)を満たす。
【0036】
【数4】

【0037】
特に好ましくは、下記関係式(Eq-4)を満たす。
【0038】
【数5】

【0039】
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐のない直鎖状のエチレン共重合体のように伸長粘度がひずみ硬化性を示さない樹脂は傾きが3.4のべき乗則に則るのに対し、高圧法低密度ポリエチレンのように伸長粘度がひずみ速度硬化性を示す樹脂はべき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η0(P)〕を示すことが知られている(C Gabriel, H.Munstedt, J.Rheol., 47(3), 619(2003))。200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が4.50×10-13×Mw3.4以下の場合、得られるエチレン共重合体の伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すため、引取サージングが発生しない。
【0040】
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン系重合体中の長鎖分岐含量、及び長鎖分岐の長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほどゼロせん断粘度〔η0(P)〕は請求範囲下限に近い値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほどゼロせん断粘度〔η0(P)〕は請求範囲上限に近い値を示すと考えられる。前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(A)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなる。また、本発明のエチレン系重合体において、重合系中の水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)を高くするとマクロモノマーの分子量が小さくなる為、エチレン系重合体中に導入される長鎖分岐の長さは短くなる。このことから、[A]/[A+B]、及び水素/エチレンを増減させることで、請求範囲のゼロせん断粘度〔η0(P)〕を有するエチレン系重合体を製造することができる。後述する実施例において、実施例15([A]/[A+B]=0.28)と実施例16([A]/[A+B]=0.18)とを比較すると、[A]/[A+B]の高い実施例15のゼロせん断粘度〔η0(P)〕はより請求範囲下限に近い値を示す。
【0041】
本発明のエチレン共重合体が上記関係式(Eq-1)を満たすことは、エチレン共重合体のη0とMwを両対数プロットした際に、log(η0)とlogMwが下記関係式(Eq-1')で規定される領域に存在することと同義である。
【0042】
3.4Log(Mw) -15.0000≦Log(η0)≦3.4Log(Mw) -12.3468 --------(Eq-1')
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のようにして求める。測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはレオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR-5000を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg重/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg重/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
【0043】
ゼロせん断粘度η0は、下記数式(Eq-5)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
【0044】
【数6】

【0045】
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-6)におけるdが最小となるよう行われる。
【0046】
【数7】

【0047】
ここで、ηexp(ω)は実測のせん断粘度、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)はウォーターズ社製GPC/V2000を用い、以下のようにして測定する。ガードカラムはShodex AT-G、分析カラムはAT-806を2本使用し、カラム温度は145℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.3重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いる。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いた。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
【0048】
(VI)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20〜1.0×104.50、好ましくは1.0×104.20〜1.0×104.40、さらに好ましくは1.0×104.30〜1.0×104.40の範囲である。
【0049】
エチレン共重合体の機械的強度には、低分子量成分が強く影響を及ぼすことが知られている。低分子量成分が存在すると、破壊の起点になると考えられている分子末端が増加するため、機械的強度が低下すると考えられている(松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、株式会社工業調査会、2001年、p.45)。GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20以上の場合、機械的強度に悪影響を及ぼす低分子量成分が少ないため、機械的強度に優れる。
【0050】
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)を増減させることが可能である。
【0051】
分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)を用い、以下のようにして算出する。
【0052】
[使用装置および条件]
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム;TSKgel GMH6- HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相;o-ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/分
注入量;500μL
サンプリング時間間隔;1秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正;単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495〜分子量2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967)に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成する。この分子量分布曲線から最大重量分率での分子量(peak top M)を算出する。
【0053】
次に、本発明におけるエチレン共重合体の製造方法に関して説明する。
本発明に係るエチレン共重合体は、成分(A)、成分(B)、成分(C)を含んでなることを特徴とするオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数6〜20のα-オレフィンを重合することによって効率的に製造することができる。
【0054】
成分(A);下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物。
【0055】
【化1】

【0056】
ただし、式(I)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同時に水素原子ではなく、Q1は炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、珪素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基から選ばれる基である。Mはチタン、ジルコニウムまたはハフニウムである。
【0057】
成分(B);下記一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物。
【0058】
【化2】

【0059】
ただし、式(II)中、R7〜R10およびR13〜R20は、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、また、隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよい。
2は、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基である。Mはチタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれ、Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、珪素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基から選ばれる基である。
【0060】
成分(C);下記(c-1)〜(c-3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物。
(c-1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物
amAl(ORbn p q … (III)
(式(III)中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)
a AlRa4 … (IV)
(式(IV)中、Ma はLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示す。)
a b b … (V)
(式(V)中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、Mb はMg、ZnまたはCdである。)
(c-2)有機アルミニウムオキシ化合物
(c-3)成分(A)、成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、さらに固体状担体(S)を含んでいてもよく、このような触媒としては、固体状担体(S)、上記成分(C)および上記成分(A)から形成される固体状触媒成分(K1)と、固体状担体(S)、上記成分(C)および上記成分(B)から形成される固体状触媒成分(K2)からなるオレフィン重合用触媒、固体状担体(S)、上記成分(A)、成分(B)および成分(C)より成形される固体状触媒成分(K3)からなるオレフィン重合用触媒がある。
【0061】
上記したオレフィン重合用触媒によって本発明のエチレン共重合体が生成する機構として、本発明者らは、成分(A)と成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンを重合させることによって数平均分子量4000〜20000、好ましくは4000〜15000の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(B)と成分(C)、ならびに必要に応じて成分(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレンと炭素数6〜20のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、本発明の長鎖分岐型エチレン共重合体が生成するものと考えている。
【0062】
次に、本発明のエチレン共重合体を製造する際に用いるオレフィン重合用触媒の各成分について詳細に説明ずる。
本発明で用いられる成分(A)の架橋型メタロセン化合物は、下記一般式(I)で示される周期律表第4族のメタロセン化合物である。下記一般式(I)示される周期表第4族のメタロセン化合物について詳細に説明する。
【0063】
【化3】

【0064】
一般式(I)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、好ましくはジルコニウムである。
1〜R4は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、全てが同時に水素原子ではない。また、R1〜R4は、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成していてもよい。
【0065】
炭化水素基とは、炭素数1〜20の炭素と水素からなるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基を示し、例えば、アルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基として、ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられ、アリール基として、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニリルが挙げられ、アリールアルキル基として、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0066】
ハロゲン含有基としては、上記炭化水素基中の水素原子の1個以上が適当なハロゲン原子で置換された基、例えばトリフルオロメチル基などが挙げられる。
酸素含有基としては、メトキシ基,エトキシ基などが挙げられ、イオウ含有基としては、チオール基,スルホン酸基などが挙げられ、窒素含有基としては、ジメチルアミノ基などが挙げられ、リン含有基としては、フェニルホスフィン基などが挙げられる。ホウ素含有基としてはボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などが挙げられる。
【0067】
ケイ素含有基としては、シリル、メチルシリル、ジメチルシリル、ジイソプロピルシリル、メチル−t−ブチルシリル、ジシクロヘキシルシリル、メチルシクロヘキシルシリル、メチルフェニルシリル、ジフェニルシリル、メチルナフチルシリル、ジナフチルシリル、シクロジメチレンシリル、シクロトリメチレンシリル、シクロテトラメチレンシリル、シクロペンタメチレンシリル、シクロヘキサメチレンシリル、シクロヘプタメチレンシリルなどが挙げられ、ゲルマニウム、スズ含有基としては、上記ケイ素含有基においてケイ素をゲルマニウム、スズに変換した基などが挙げられる。
【0068】
なお、R1〜R4の隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成する場合の例としては、テトラヒドロインデニル、2−メチルテトラヒドロインデニル、2,2,4−トリメチルテトラヒドロインデニル、4−フェニルテトラヒドロインデニル、2−メチル−4−フェニルテトラヒドロインデニル、R3とR4がテトラメチレン基で環状に結合し且つR1とR2がテトラメチレン基で環状に結合した置換シクロペンタジエニル基等が挙げられる。
【0069】
1は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基である。
【0070】
炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル−t−ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレン、1−エチル−2−メチルエチレンなどの置換アルキレン基、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキレン基、エチリデン、プロピリデン、ブチリデンなどのアルキリデン基などが挙げられる。
【0071】
ケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル−t−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられ、ゲルマニウム、スズ含有基としては、上記ケイ素含有基においてケイ素をゲルマニウム、スズに変換した基などが挙げられる。
【0072】
ハロゲン含有基としては、上記アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基中やケイ素含有基中の水素原子の1個以上が適当なハロゲン原子で置換された基が選ばれ、例えばビス(トリフルオロメチル)メチレン、4,4,4−トリフルオロブチルメチルメチレン、ビス(トリフルオロメチル)シリレン、4,4,4−トリフルオロブチルメチルシリレンなどが挙げられる。
【0073】
このうちQ1の好ましい基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、ハロゲン含有アルキレン基、ハロゲン含有置換アルキレン基、ハロゲン含有アルキリデン基、ケイ素含有基およびハロゲン含有ケイ素含有基から選ばれる基であり、特に好ましい基は、ケイ素含有基またはハロゲン含有ケイ素である。
【0074】
また、Q1は下記一般式[1]または[2]のいずれかで表される構造を有していてもよい。
【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
ここで、Yは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子から選ばれる。R5およびR6は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基およびハロゲン含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Aは不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の炭化水素基を示し、AはYと共に形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。黒丸(●)は置換シクロペンタジエニル基およびシクロペンタジエニル基との結合点を表す。
【0078】
上記一般式[1]および[2]において、Yは好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、特に好ましくはケイ素原子である。
一般式[1]のR5およびR6の炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、およびハロゲン含有基は、R1、R2、R3、R4と同様のものを例示として挙げることができる。前記炭化水素の中でも、メチル基、クロロメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基から選ばれる基であることが好ましく、メチル基、クロロメチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基から選ばれることが特に好ましい。
【0079】
一般式[2]において、Aは不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の炭化水素基であり、YはこのAと結合し、1−シラシクロペンチリデン基などを構成する。なお本明細書において、1−シラシクロペンチリデン基とは、下記式[3]を表す。
【0080】
【化6】

【0081】
(上記式[3]において、黒丸(●)は、一般式[2]と同様である。)
また、AはYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
このうちQ1の好ましい基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、ハロゲン含有アルキレン基、ハロゲン含有置換アルキレン基、ハロゲン含有アルキリデン基、ケイ素含有基およびハロゲン含有ケイ素含有基から選ばれる基であり、特に好ましい基は、ケイ素含有基、またはハロゲン含有ケイ素含有基である。
【0082】
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基(例えば、ハロゲン含有炭化水素基)、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基から選択された基であり、好ましくは、ハロゲン原子、炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基、ハロゲン含有基(例えば、ハロゲン含有炭化水素基)、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基としては上記と同様のものが挙げられる。
【0083】
1〜R4の好ましい基は、水素原子、炭化水素基およびハロゲン含有基から選ばれる基であり、より好ましくは、水素原子または炭素数1〜15の炭化水素基であり、さらに好ましくは、R1〜R4の置換基のうち3つが水素原子であり、残りの1つが炭素数1〜15の炭化水素基であり、より好ましくは、R1〜R4の置換基のうち3つが水素原子であり、残りの1つが炭素数3〜15の炭化水素基であり、特に好ましくは、R1〜R4の置換基のうち3つが水素原子であり、残りの1つが炭素数3〜8の炭化水素基であり、極めて好ましくは、R1〜R4の置換基のうちR1とR4が水素原子であり、R2とR3どちらか一方が炭素数3〜8の炭化水素基でありもう一方が水素原子である。
【0084】
一般式(I)表される成分(A)の遷移金属化合物の具体例を以下に示す。
具体例としては、エチレン(シクロペンタジエニル)(2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3-n-デシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,3-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,4-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのアルキレン基を架橋部位に有する架橋型非対称型メタロセン化合物;
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-ペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3-n-デシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,3-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,4-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどの置換アルキレン基を架橋部位に有する架橋型非対称メタロセン化合物;
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ペンチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3-n-デシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5-エチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−メチル,4−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5-ジメチル,3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,5−ジメチル,3,4-ジ−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどのケイ素含有基を架橋部位に有する架橋型非対称メタロセン化合物。
【0085】
その他、上記置換アルキレン基のイソプロピリデン架橋基をジ−n−ブチルメチレン架橋基に変更した架橋型非対称メタロセン、ケイ素含有基のジメチルシリレン架橋基をジ−n−ブチルシリレン架橋基に変更した架橋型非対称メタロセン、架橋基中の水素原子の一つ以上をハロゲン原子に変更した架橋型非対称メタロセン、シクロペンタジエニル環に結合している置換基の水素原子の一つ以上をハロゲン原子に変更した架橋型非対称メタロセンが挙げられる。また、上記化合物の中心金属が、チタンまたはハフニウムであるメタロセン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
このうち、好ましい化合物としては、ジメチルシリレン基などのケイ素含有基を架橋部位に有する架橋型非対称メタロセンが選ばれ、中でも、特に好ましい化合物しては、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。なお本発明においては、一般式(I)で表される、構造の異なるメタロセン化合物を二種類以上用いることや、構造が同一であって光学異性体混合物(例えば、メソ/ラセミ混合物)からなるメタロセン化合物の使用を何ら制約するものではない。
【0087】
このような一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物は、国際公開第01/27124号パンフレットに開示された方法によって製造することが可能である。
本発明で用いられる成分(B)の架橋型メタロセン化合物は、下記一般式(II)で示される周期表第4族のメタロセン化合物である。下記一般式(II)で示される周期表第4族のメタロセン化合物について詳細に説明する。
【0088】
【化7】

【0089】
一般式(II)中、Mは、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれた遷移金属であり、好ましくは、ジルコニウムである。
7〜R10、R13〜R20は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、また隣接する2個の基が互いに連結して環を形成していてもよい。
【0090】
2は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基である。これら基の具体例としては、上記Q1で記したものが挙げられる。
【0091】
また、Q2は下記一般式[4]または[5]のいずれかで表される構造を有していてもよい。
【0092】
【化8】

【0093】
【化9】

【0094】
ここで、Yは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびスズ原子から選ばれる。R21およびR22は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、およびハロゲン含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。A’は不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の炭化水素基を示し、A’はYと共に形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。黒丸(●)は置換シクロペンタジエニル基および置換フルオレニル基との結合点を表す。
【0095】
上記一般式[4]および[5]において、Yは好ましくは炭素原子またはケイ素原子であり、特に好ましくは炭素原子である。
一般式[4]のR21およびR22の炭化水素基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、スズ含有基、およびハロゲン含有基は、R7〜R10、R13〜R20と同様のものを例示として挙げることができる。前記炭化水素基の中でも、メチル基、クロロメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基、m−トリル基、p−トリル基から選ばれる基であることが好ましく、メチル基、クロロメチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基から選ばれることが特に好ましい。
【0096】
一般式[5]において、A’は不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の二価の炭化水素基であり、YはこのA’と結合し、1−シラシクロペンチリデン基などを構成する。なお本明細書において、1−シラシクロペンチリデン基とは、下記式[6]を表す。
【0097】
【化10】

【0098】
(上記式[6]において、黒丸(●)は、一般式[5]と同様である。)
また、A’はYとともに形成する環を含めて二つ以上の環構造を含んでいてもよい。
このうちQ2の好ましい基としては、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、ハロゲン含有アルキレン基、ハロゲン含有置換アルキレン基、ハロゲン含有アルキリデン基、ケイ素含有基およびハロゲン含有ケイ素含有基から選ばれる基であり、特に好ましい基は、炭素数1〜20のアルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、または、ケイ素含有基である。
【0099】
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有基(例えば、ハロゲン含有炭化水素基)、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基から選択された基であり、好ましくは、ハロゲン原子、炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、炭化水素基、ハロゲン含有基(例えば、ハロゲン含有炭化水素基)、ケイ素含有基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基およびリン含有基としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0100】
7〜R10、R13〜R20中の水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基に関しては、具体的に一般式(I)中のR1〜R4に記載したものを制限無く用いることができ、Xに関しても一般式(I)中のXについて記載したものを制限無く用いることができる。また、シクロペンタジエニル環上のR7〜R10は、隣接する基のうちの少なくとも一組は互いに結合して環を形成し、例えば、インデニル基、置換インデニル基、フルオレニル基、置換フルオレニル基を形成してもよく、フルオレン環上のR13〜R20も、隣接する基のうちの少なくとも一組は互いに結合して環を形成し、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基などを形成してもよい。
【0101】
上記、好ましい基の形態としては、R7〜R10は、水素原子が選ばれ、R13〜R20は、水素原子、炭化水素基が選ばれ、また、隣接する炭化水素基のうちの少なくとも一組は互いに結合して環を形成したオクタヒドロジベンゾフルオレニル基、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル基も好ましい基として選ばれる。Q2に関しては、一般式[4]、一般式[5]で示す基が選ばれ、Yは炭素原子、R21、R22は炭化水素基が好ましい基として選ばれる。これらの置換基、架橋基を用いた場合、比較的分子量の向上が抑えられ、分子量を調節するために必要な水素量の低減により、成分(A)から生成されるマクロモノマー量が増加、さらには長鎖分岐数の増大が期待される。
【0102】
このような前記一般式(II)で表される周期律表第4族のメタロセン化合物の具体例を以下に示すがこの限りではない。
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
シクロヘキシリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリド-ジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、フェニルメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、および上記メタロセン化合物のジブロミド化合物、ジアルキル化合物、ジアラルキル化合物、ジシリル化合物、ジアルコキシ化合物、ジチオール化合物、ジスルホン酸化合物、ジアミノ化合物、ジホスフィン化合物、または上記化合物の中心金属が、チタンもしくはハフニウムであるメタロセン化合物等が挙げられる。
【0103】
このうち好ましいメタロセン化合物としては、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0104】
また、シクロペンタジエニル環上のR7〜R10の隣接する基が互いに結合して環を形成し、インデニル環、置換インデニル環を有する好ましいメタロセン化合物の具体例としては、イソプロピリデン(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(インデニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(インデニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(インデニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(インデニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(インデニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(インデニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(インデニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(インデニル)(2,7-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(インデニル)(3,6-ジ-tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(インデニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。なお本発明においては、一般式(II)で表される、構造の異なるメタロセン化合物を二種類以上用いることを何ら制約するものではない。
【0105】
このような一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物は、国際公開第01/27124号パンフレットに開示されている。
次に、成分(C)に関して具体的に説明する。
【0106】
本発明に係るオレフィン重合用触媒において、前記成分(A)、成分(B)で表される化合物とともに用いられる、成分(C)は、
(c-1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
amAl(ORb)n p q … (III)
〔一般式(III)中、Ra およびRb は、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
a AlRa4 … (IV)
〔一般式(IV)中、Ma はLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示す。〕
arbbs t … (V)
〔一般式(V)中、Ra およびRb は、炭素原子数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Mb は、Mg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
(c-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c-3)成分(A)、成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0107】
化合物(c-1)として、本出願人による特開平11−315109号公報やEP0874005A中に開示された化合物を制限無く使用することができる。
(c-1)一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミドなどのジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソプロピルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジヒドロフェニルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジイソヘキシルアルミニウムハイドライド、ジフェニルアルミニウムハイドライド、ジシクロヘキシルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ヘプチルアルミニウムハイドライド、ジ-sec-ノニルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライド、ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムメトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイドなどのジアルキルアルミニウムアルコキサイドなどが挙げられる。
【0108】
これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
(c-2)有機アルミニウムオキシ化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0109】
(c-3)成分(A)、成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、米国特許第5321106号明細書などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
【0110】
本発明に係るオレフィン重合用触媒では、助触媒成分としてメチルアルミノキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示すだけでなく、固体状担体中の活性水素と反応し助触媒成分を含有した固体担体成分を容易に調製出来るため、(c-2)有機アルミニウムオキシ化合物を成分(C)として用いることが好適である。
【0111】
次に、固体状担体(S)に関して詳細に説明する。なお、固体状担体(S)を単に「成分(S)」と表すこともある。
本発明で用いられることのある固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体であり、上記のような各成分が下記のような固体状担体に担持されている。
【0112】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物などの無機ハロゲン化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは、後述のような多孔質酸化物、無機塩化物などの無機ハロゲン化物を使うことができる。
【0113】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al2O3、MgO、ZrO、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al2O3、SiO2-TiO2、SiO2-V2O5、SiO2-Cr2O3、SiO2-TiO2-MgO等を使用することができる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0114】
なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2 、Al(NO3)3 、Na2O、K2O、Li2O等の炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0115】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜30cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0116】
無機ハロゲン化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機ハロゲン化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機ハロゲン化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0117】
粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0118】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。
【0119】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ-Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2O等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。
【0120】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜3×104Åの範囲について測定される。
【0121】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、いずれも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mg等の陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0122】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl4、ZrCl4等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13O4(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。
【0123】
粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分け等の処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素原子数が2〜14のオレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレン、ジビニルベンゼンを主成分として生成される(共)重合体や反応体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0125】
本発明におけるオレフィン重合用触媒の調製方法について記載する。
本発明に係る第一のオレフィン重合用触媒は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を不活性炭化水素中または不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製できる。
【0126】
各成分の添加順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
i) 成分(C)、成分(A)、成分(B)の順で重合系中に添加する方法
ii) 成分(C)、成分(B)、成分(A)の順で重合系中に添加する方法
iii) 成分(A)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(B)を重合系中に添加する方法
iv) 成分(B)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(A)を重合系中に添加する方法
v) 成分(C)を重合系中に添加し、次いで成分(A)と成分(B)を混合接触させた接触物を重合系中に添加する方法
vi) 成分(C)、成分(A)、成分(B)の順で重合系中に添加し、再度成分(C)を重合系中に添加する方法
vii) 成分(C)、成分(B)、成分(A)の順で重合系中に添加し、再度成分(C)を重合系中に添加する方法
viii)成分(A)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(B)を重合系中に添加する、再度成分(C)を重合系中に添加する方法
ix) 成分(B)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系中に添加し、次いで成分(A)を重合系中に添加する、再度成分(C)を重合系中に添加する方法
x) 成分(C)を重合系中に添加し、次いで成分(A)と成分(B)を混合接触させた接触物を重合系中に添加した後、再度成分(C)を重合系中に添加する方法
などが挙げられる。このうち、特に好ましい接触順序としては、i)、ii)、v)が
挙げられる。
【0127】
本発明に係る第二のオレフィン重合用触媒は、固体状担体(S)、上記成分(C)および上記成分(A)から形成される固体状触媒成分(K1)と、固体状担体(S)、上記成分(C)および上記成分(B)から形成される固体状触媒成分(K2)を不活性炭化水素中または不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製できる。
【0128】
各成分の接触順序は任意であるが、好ましい方法としては、例えば、
xi) 成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(A)を接触させて調製する固体触媒成分(K1)と成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(B)を接触させて調製する固体触媒成分(K2)を用いる方法
xii) 成分(A)と成分(C)を混合接触させ、次いで成分(S)に接触させて調製する固体触媒成分(K1)と成分(B)と成分(C)を混合接触させ、次いで成分(S)に接触させて調製する固体触媒成分(K2)を用いる方法
xiii)成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(A)と成分(C)の接触物を接触させて調製する固体触媒成分(K1)と成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(B)と成分(C)の接触物を接触させて調製する固体触媒成分(K2)を用いる方法
xiv) 成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(A)を接触させ、さらに再度成分(C)を接触させて調製する固体触媒成分(K1)と成分(C)と成分(S)を接触させ、次いで成分(B)を接触させ、さらに再度成分(C)を接触させて調製する固体触媒成分(K2)を用いる方法
などが挙げられる。このうち、特に好ましい接触順序としては、xi)、xiii)が挙げられる。
【0129】
本発明に係る第三のオレフィン重合用触媒(K3)は、成分(A)、成分(B)、成分(C)ならびに固体状担体(S)を不活性炭化水素中で接触させることにより調製できる。
【0130】
各成分の接触順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
xv) 成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)を接触させた後に、成分(B)を接触させて調製する方法
xvi) 成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(B)を接触させた後に、成分(A)を接触させて調製する方法
xvii)成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(B)の接触混合物を接触させる方法、
xviii)成分(A)と成分(B)とを混合接触させ、次いで成分(C)と接触、引き続き成分(S)に接触させる方法、
xix) 成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(A)、成分(B)の順で接触させる方法、
xx) 成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(B)、成分(A)の順で接触させる方法、
xxi) 成分(S)に成分(C)を接触させた後に、さらに成分(C)を接触させ、次いで成分(A)と成分(B)の接触混合物を接触させる方法、
xxii)成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(B)と成分(C)の接触混合物を接触させる方法、
xxiii)成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(A)と成分(C)の接触混合物を接触させ、さらに成分(B)を接触させる方法、
xxiv)成分(S)に成分(C)を混合接触させ、次いで成分(B)と成分(C)の接触混合物を接触させ、さらに成分(A)を接触させる方法、
xxv) 成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(A)と成分(C)の接触混合物、成分(B)と成分(C)の接触混合物の順で接触させる方法、
xxvi)成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(B)と成分(C)の接触混合物、成分(A)と成分(C)の接触混合物の順で接触させる方法、
xxvii)成分(S)に成分(C)を接触させ、さらに成分(C)を接触させた後に、次いで成分(A)と成分(B)と成分(C)の接触混合物を接触させる方法、
xxviii)成分(A)と成分(C)の混合物と成分(B)と成分(C)の混合物を予め混合させ、これを成分(S)と成分(C)の接触物に接触させる方法、
xxix)成分(A)と成分(C)の混合物と成分(B)と成分(C)の混合物を予め混合させ、これを成分(S)、成分(C)、さらに成分(C)を接触させた接触物に接触させる方法、などが挙げられる。成分(C)が複数用いられる場合は、その成分(C)同士が同一であっても異なっていても良い。このうち、特に好ましい接触順序としては、xv)、xvi)、xvii)、xxii)、xxiii),xxiv)が挙げられ、さらに好ましくはxvii)、xxii)が挙げられる。
【0131】
上記接触順序形態を示した各方法において、成分(S)と成分(C)の接触を含む工程(P1)、成分(S)と成分(A)の接触を含む工程(P2)、成分(S)と成分(B)の接触を含む工程(P3)、成分(S)と成分(A)と成分(B)の接触を含む工程においては、成分(G)(g-1)ポリアルキレンオキサイドブロック、(g-2)高級脂肪族アミド、(g-3)ポリアルキレンオキサイド、(g-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、(g-5)アルキルジエタノールアミンおよび(g-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンから選ばれる少なくとも1種の化合物を共存させてもよい。成分(G)を共存させることにより、重合反応中のファウリングを抑制したり、生成重合体の粒子性状が改善される。成分(G)の中では、(g-1)、(g-2)、(g-3)、(g-4)が好ましく、(g-1) 、(g-2)が特に好ましい。
【0132】
本発明の固体触媒成分の調製に用いる溶媒としては、不活性炭化水素溶媒が挙げられ、
具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ド
デカン、灯油等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペン
タン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エチレン
クロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合
物等を挙げることができる。
【0133】
成分(C)と成分(S)の接触は、成分(C)中の反応部位と成分(S)中の反応部位との反応により化学的に結合され、成分(C)と成分(S)の接触物が形成される。成分(C)と成分(S)との接触時間は、通常0〜20時間、好ましくは0〜10時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃で行われる。成分(C)と成分(S)との初期接触を急激に行うと、その反応発熱や反応エネルギーにより成分(S)が崩壊し、得られる固体触媒成分のモルフォロジーが悪化し、これを重合に用いた場合ポリマーモルフォロジー不良により連続運転が困難になることが多い。そのため、成分(C)と成分(S)との接触初期は、反応発熱を抑制する目的で、−20〜30℃の低温で接触させる、または、反応発熱を制御し、初期接触温度を維持可能な速度で反応させることが好ましい。また、成分(C)と成分(S)を接触させ、さらに成分(C)を接触させる場合においても同様である。成分(C)と成分(S)との接触のモル比(成分(C)/成分(S))は、任意に選択できるが、そのモル比が高いほうが、成分(A)、成分(B)の接触量を増加でき、固体触媒成分あたりの活性も向上させることができる。
【0134】
好ましい範囲として、成分(C)と成分(S)のモル比[=成分(C)のモル量/成分(S)のモル量]が、通常0.2〜2.0、特に好ましくは、0.4〜2.0である。 成分(C)と成分(S)の接触物と、成分(A)ならびに成分(B)との接触に関して、接触時間は、通常0〜5時間、好ましくは0〜2時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−50〜100℃の範囲内で行われる。成分(A)ならびに成分(B)の接触量は、成分(C)の種類と量に大きく依存し、成分(c-1)の場合は、成分(A)ならびに成分(B)中の全遷移金属原子(M)と成分(c-1)とのモル比[(c-1)/M]が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられ、成分(c-2)は、成分(c-2)中のアルミニウム原子と成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c-2)/M]が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。成分(c-3)は、成分(c-3)と、成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c-3)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。なお、成分(C)と成分(A)及び成分(B)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP分析法)により求めることができる。
【0135】
成分(A)と成分(B)の使用比は、製造したいポリオレフィンの分子量及び分子量分布から任意に決定できるが、好ましい範囲として、成分(A)と成分(B)から生成するポリマーの比率[=成分(A)の生成ポリマー量/成分(B)の生成ポリマー量]が、通常40/60〜95/5、好ましくは、50/50〜95/5、特に好ましくは、60/40〜95/5である。ここで、成分(A)由来のポリマーが多い方が好ましいのは、成分(A)からマクロモノマーが生成し、この生成量が多い方が、より長鎖分岐を生成するに有利であるからである。また、使用する成分(A)、成分(B)の遷移金属化合物あたりのモル比は、上述のポリマー比を満足すれば良く、その比率は概ね成分(S)と成分(C)の接触物と成分(A)または成分(B)とをそれぞれ独立に接触させた固体触媒成分より発現する活性比によって任意に選ぶことができる。なお、成分(A)と成分(B)から生成するポリマーの比率は、後述のピーク分離から求めることができる。
【0136】
本重合体は、実質的に2つ、もしくは3つのピークから構成され、1番目のピークは成分(A)に起因するピーク(「成分(A)ピーク」と記載することもある)であり、2番目のピークは、成分(B)に起因するピーク(「成分(B)ピーク」と記載することもある)であり、3番目のピークは、成分(A)、成分(B)の両方用いたときのみ初めて生成するピーク(「第3ピーク」と記載することもある)である。各々のピークの存在比は、下に記載のピーク分離方法に従って分離すると明確に確認できる。
【0137】
また、各々のピークが重なり合い、単一ピークまたはショルダーとして観測される場合の生成比の決定に関しても、後述の方法で分離を行うと成分(A)に起因するピーク、成分(B)に起因するピーク、ならびに3番目のピークの存在が明確に確認できるのである。
【0138】
本発明に係る重合法により製造したエチレン系重合体の分子量曲線(G1)のピーク分離は、該エチレン系重合体と同様の重合条件にて重合した、成分(A)、成分(C)、成分(S)からなる粒子状触媒を用いて得られたエチレン重合体[成分(A)のみの重合体と記載することもある]の分子量曲線(G2)と、成分(B)、成分(C)、成分(S)からなる粒子状触媒を用いて得られたエチレン重合体[成分(B)のみの重合体と記載することもある]の分子量曲線(G3)を用いて,下記の方法により実施した。なお、分子量曲線は上述したGPC測定により得られたものを用い、ピーク分離の計算はマイクロソフト社製エクセル(登録商標)97を用いた。
[1](G1)、(G2)、(G3)の数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに分子量曲線の面積が1となるように強度[dwt/d(log分子量)]を規格化する。
[2](G2)と(G3)との合成曲線(G4)を作成する。
[3]各分子量における(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0004以下となるように、(G2)および(G3)の各分子量における強度を一定の比率で任意に変更する。なお、高分子量側では生成する第3ピークの影響により、(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0004より大きくなってしまうため、より低分子量側で(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0004以下となるように、(G2)および(G3)の強度を変更していく。
[4]ピークトップより高分子量側における(G1)と(G4)との重なり合わない部分(G5)[(G1)−(G4)]を第3ピークとする。成分(A)に起因するポリマー重合比率Wa、成分(B)に起因するポリマー重量比率Wb、第3ピークの重量比率W3は以下のように算出される。
【0139】
Wa=S(G2)/S(G1)
Wb=S(G3)/S(G1)
3=S(G5)/S(G1)
ここで、S(G2)、S(G3)は強度を変更した後の(G2)、(G3)のピーク面積であり、S(G1)、S(G5)は(G1)、(G5)のピーク面積である。
成分(A)と成分(B)から生成するポリマーの比率(成分(A)/成分(B))は、Wa/Wbより求めることが出来る。
【0140】
なお、好ましい範囲として、40%<Wa≦95%、5%<Wb≦60%、0%≦W3≦30%であり、特に好ましい範囲としては、60%<Wa≦95%、5%<Wb≦40%、2%≦W3≦20%である。

オレフィンの(共)重合には、上記のような固体触媒成分をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分にオレフィンを予備重合させ予備重合固体触媒成分を形成してから用いることもできる。
【0141】
予備重合固体触媒成分は、上記固体触媒成分の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを予備重合させることにより調製することができ、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても実施することができ、また減圧、常圧あるいは加圧下、いずれでも行うことができる。さらに、予備重合によって、固体状触媒成分1g当たり0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、さらに好ましくは0.2〜500gの量で予備重合固体触媒成分が生成することが望ましい。
【0142】
不活性炭化水素溶媒中で生成した予備重合固体触媒成分を懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
【0143】
予備重合に際しては、予備重合温度は、−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間程度である。予備重合には、後述する重合時に用いられるオレフィンと同様のオレフィンが用いられるが、好ましくはエチレンを主成分とするオレフィンである。
【0144】
予備重合に使用する固体触媒成分の形態としては、既に述べたものを制限無く利用できる。また、必要に応じて成分(C)が用いられ、特に(c-1)中の一般式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好まれて使用される。成分(C)が用いられる場合は、該成分(C)中のアルミニウム原子(Al−C)と遷移金属化合物とのモル比(成分(C)/遷移金属化合物)で、0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000の量で用いられる。
【0145】
予備重合系における固体触媒成分の濃度は、固体触媒成分/重合容積1リットル比で、通常1〜1000グラム/リットル、さらには10〜500グラム/リットルであることが望ましい。予備重合時には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
【0146】
また、予備重合固体触媒成分の流動性改善や重合時のヒートスポット・シーティングやポリマー塊の発生抑制を目的に、予備重合によって一旦生成させた予備重合固体触媒成分に成分(G)を接触させてもよい。この際、使用する成分(G)として、(g-1)、(g-2)、(g-3)、(g-4)が好ましく、(g-1)、(g-2)が特に好ましい。
【0147】
上記成分(G)を混合接触させる際の温度は、通常−50〜50℃、好ましくは−20〜50℃であり、接触時間は1〜1000分間、好ましくは5〜600分間である。
固体触媒成分と成分(G)とを混合接触するに際して、成分(G)は、固体触媒成分100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部、より好ましくは0.4〜5重量部の量で用いられる。
【0148】
固体触媒成分と成分(G)との混合接触は、不活性炭化水素溶媒中で行うことができ、不活性炭化水素溶媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
本発明に係るオレフィン重合用触媒は、予備重合固体触媒成分を乾燥して乾燥予備重合触媒として用いることができる。予備重合固体触媒成分の乾燥は、通常得られた予備重合触媒の懸濁液から濾過などにより分散媒である炭化水素を除去した後に行われる。
【0149】
予備重合固体触媒成分の乾燥は、予備重合固体触媒成分を不活性ガスの流通下、70℃以下、好ましくは20〜50℃の範囲の温度に保持することにより行われる。得られた乾燥予備重合触媒の揮発成分量は2.0重量%以下、好ましくは1.0重量%以下であることが望ましい。乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、少ないほどよく、特に下限はないが、実用的には0.001重量%である。乾燥時間は、乾燥温度にもよるが通常3〜8時間である。
【0150】
乾燥予備重合触媒の揮発成分量が2.0重量%を超えると、乾燥予備重合触媒の流動性が低下し、安定的に重合反応器に供給できなくなることがある。また、乾燥予備重合触媒の安息角は、50°以下、好ましくは5〜47°、より好ましくは10〜45°である。乾燥予備重合触媒の安息角が50°を超えると、乾燥予備重合触媒の流動性が低下し、安定的に重合反応器に供給できなくなることがある。
【0151】
ここで、乾燥予備重合触媒の揮発成分量は、たとえば、減量法、ガスクロマトグラフィーを用いる方法などにより測定される。
減量法では、乾燥予備重合触媒を不活性ガス雰囲気下において110℃で1時間加熱した際の減量を求め、加熱前の乾燥予備重合触媒に対する百分率として表す。
【0152】
ガスクロマトグラフィーを用いる方法では、乾燥予備重合触媒から炭化水素などの揮発成分を抽出し、内部標準法に従って検量線を作成した上でGC面積から重量%として算出する。
【0153】
乾燥予備重合触媒の揮発成分量の測定方法は、乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1重量%以上である場合には、減量法が採用され、乾燥予備重合触媒の揮発成分量が約1重量%以下である場合には、ガスクロマトグラフィーを用いる方法が採用される。
【0154】
予備重合固体触媒成分の乾燥に用いられる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ネオンガスなどが挙げられる。このような不活性ガスは、酸素濃度が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下(体積基準)であり、水分含量が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、より好ましくは5ppm以下(重量基準)であることが望ましい。不活性ガス中の酸素濃度および水分含量が上記の範囲を超えると、乾燥予備重合触媒のオレフィン重合活性が大きく低下することがある。
【0155】
上記乾燥予備重合触媒は、流動性に優れているので、重合反応器への供給を安定的に行うことができる。また、気相重合系内に懸濁に用いた溶媒を同伴させずに済むため安定的に重合を行うことができる。
【0156】
次に、本発明に係るエチレン系重合体の重合方法に関して記載する。上記したオレフィン重合用触媒の存在下、オレフィンを重合または共重合することによりエチレン系重合体を得る。本発明でのエチレン系重合体は、重合体中のエチレン含量が10モル%以上含まれるものをさす。
【0157】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合等の液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できるが、本発明に係る第1のオレフィン重合用触媒下では、溶解重合法が用いられ、第2、第3の発明に係る固体触媒成分の存在下では、懸濁重合法や気相重合法を用いるのが好ましい。
【0158】
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物等を挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0159】
上述のオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(A)および成分(B)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で用いられる。また、成分(C)が用いられ、特に(c-1)中一般式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好まれて使用される。
【0160】
また、上述の固体触媒成分を用いたオレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2 、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0161】
得られるエチレン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。重合時には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
【0162】
また、本発明において重合反応に供給されるオレフィンは、エチレンと、必要に応じて炭素原子数4〜20のオレフィンが重合または共重合出来る。炭素原子数が4〜20のオレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのα−オレフィンや、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどの環状オレフィンを挙げることができる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンやアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸等;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸等の極性モノマーなども用いることもできる。
【0163】
一般的に、オレフィン重合用触媒のエチレン系重合体に対する反応性は、エチレン系重合体の分子量が小さくなるにつれて、また末端の二重結合の割合が多くなるにつれて高まり、多くの長鎖分岐を生成することが出来る。成分(A)は、分子量が比較的低く、また数多くの末端に二重結合を有する重合体を生成できるため、成分(B)により効率的に取り込まれ、従来公知の重合体に対し数多くの長鎖分岐を有する重合体を製造できる。また、成分(A)の重合活性に由来して、高い生産性で長鎖分岐を有する重合体を製造可能である。
【0164】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン共重合体粒子および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施される。
【0165】
本発明に係るエチレン共重合体を、他の熱可塑性樹脂とブレンドすることにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。本発明に係るエチレン共重合体と、他の熱可塑性樹脂とのブレンド比率は、99.1/0.1〜0.1/99.9である。
【0166】
他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が用いられる。ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
【0167】
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン共重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、3-メチル-1-ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。なかでも、エチレン共重合体、プロピレン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好ましく、エチレン共重合体である場合は本発明に係るエチレン共重合体であっても従来のエチレン共重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン共重合体がより好ましい。
【0168】
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
【0169】
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
【0170】
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0171】
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
【0172】
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
【0173】
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0174】
上記のような熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン共重合体がより特に好ましい。
【0175】
本発明のエチレン共重合体は、上記熱可塑性樹脂に加えてさらに、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を配合してもよい。
【0176】
本発明に係るエチレン共重合体、および該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を加工することにより、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れた成形体、好ましくはフィルム、より好ましくは該フィルムを含んでなるラミネートフィルムが得られる。
【0177】
本発明のエチレン共重合体、およびエチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、一般のフィルム成形やシート成形、ブロ−成形、インジェクション成形および押出成形により加工される。フィルム成形では押出ラミネ−ト成形、Tダイフィルム成形、インフレ−ション成形(空冷、水冷、多段冷却、高速加工)などが挙げられる。得られたフィルムは単層でも使用することができるが、多層とすることでさらに様々な機能を付与することができる。その場合には、前記各成形法における共押出法が挙げられる。一方押出ラミネ−ト成形やドライラミネ−ト法のような貼合ラミネ−ト成形法によって、共押出が困難な紙やバリアフィルム(アルミ箔、蒸着フィルム、コ−ティングフィルムなど)との積層が挙げられる。ブロ−成形やインジェクション成形、押出成形での、共押出法による多層化での高機能製品の作製については、フィルム成形と同様に可能である。
【0178】
本発明のエチレン共重合体、および該エチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を加工することにより得られる成形体としては、フィルム、シート、ブロー輸液バック、ブローボトル、ガソリンタンク、押出成形によるチューブ、パイプ、引きちぎりキャップ、日用雑貨品など射出成形物、繊維、回転成形による大型成形品などが挙げられる。
【0179】
さらに、本発明のエチレン共重合体、およびエチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を加工することにより得られるフィルムとしては水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、農業用資材などに好適である。また、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンフィルムなどの基材と貼り合わせて、多層フィルムとして用いることもできる。
【0180】
〔実施例〕
以下実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明のエチレン共重合体の分析方法および評価方法の中で、以上の説明中に記述されていない方法は以下の通りである。
【0181】
[極限粘度([η])]
極限粘度〔[η](dl/g)〕はデカリン溶媒を用い、以下のように測定した。エチレン共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0182】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)、Z平均分子量と重量平均分子量との比(Mz/Mw)]
数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)、Z平均分子量と重量平均分子量との比(Mz/Mw)はウォーターズ社製GPC/V2000を用い、以下のようにして測定した。ガードカラムはShodex AT-G、分析カラムはAT-806を2本使用し、カラム温度は145℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.3重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いた。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いた。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより算出した。
【0183】
[ネックイン]
得られたエチレン共重合体を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材である50g/m2のクラフト紙上に下記条件にて押出ラミネートした。
・エアギャップ:130mm
・ダイ下樹脂温度:295℃
・引取速度:50m/分、80m/分、120m/分、200m/分
・膜厚:引取速度80m/分の時は20μm、引取速度120m/分の時は13μm、引取
速度200m/分の時は8μm
Tダイの幅をL0、各引取速度にてクラフト紙上にラミネートされたフィルムの幅をLとしたとき、ネックインはL0−Lにより算出される。
【0184】
[膜切れ速度、引取サージング発生速度]
得られたエチレン共重合体を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材である50g/m2のクラフト紙上に、エアギャップ130mm、ダイ下樹脂温度295℃の条件にて押出ラミネートした。押出量は引取速度80m/分の時の膜厚が20μmになるよう設定した。
【0185】
引取速度を上昇させていき、溶融膜が切れたとき(溶融膜の端部のみが切れた時も含む)の引取速度を膜切れ速度とした。
また、引取速度を上昇させていき、各引取速度におけるネックインを5回測定し、そのネックインの平均値に対して±1.5mm以上になる値が2回以上測定された時の引取速度を引取サージング発生速度とした。
【0186】
[樹脂圧力]
得られたエチレン共重合体を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材である50g/m2のクラフト紙上に、エアギャップ130mm、ダイ下樹脂温度295℃、引取速度80m/分の条件下で膜厚20μmになるよう押出ラミネートした。そのときのクロスヘッド部の樹脂圧力を測定した。
【0187】
[ヒートシール強度]
得られたエチレン共重合体を、65mmφの押出機とダイ幅500mmのTダイを有する住友重機社製ラミネーターを用いて、基材上にエアギャップ130mm、ダイ下樹脂温度295℃、引取速度80m/分の条件下で、膜厚25μmになるよう押出ラミネートした。基材には、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(商品名:エンブレムONM、ユニチカ(株)製)の片面に、ウレタン系アンカーコート剤を塗布し、その後、チーグラー触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンをそれぞれ50重量部ずつブレンドしたエチレン系混合樹脂を25μmの厚さで押出ラミネートした積層体を用いた。なお、エチレン共重合体は上記積層体のエチレン系混合樹脂層側に押出ラミネートされる。
【0188】
この押出ラミネートフィルムのエチレン共重合体層同士のヒートシール強度を下記方法に従って測定ないし評価した。
片面加熱バーシーラーを使用
ヒートシール圧力:2kg/cm2
ヒートシール時間:0.5秒
シールバーの幅:10mm
試験片幅:15mm
剥離角度:180度
剥離速度:300mm/分
〔合成例1〕
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−1)の調製]
<Step 1> (3−n−ブチルシクロペンタジエニル)クロロジメチルシランの合成
25wt%-ブチルシクロペンタジエン・テトラヒドロフラン(THF)溶液30.1g(61.5mmol)にTHF50mlを加えた。0℃まで冷却し、1.52M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液38.4ml(58.4mol)を滴下した。室温下2時間攪拌し、ジメチルシリルジクロリド14.3g(110mmol)、THF 50ml中に-78℃にて滴下した。徐々に昇温させ、室温下、24時間攪拌を行った。減圧濃縮を行い、濾過により不溶物を除去した。ヘキサン洗浄後、ろ液を減圧蒸留した。減圧蒸留を行い、(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)クロロジメチルシラン 8.09g(収率64%)を得た。
【0189】
GC-MSにて目的物を同定した。結果を以下に示す。
GC-MS;214(MS)
<Step 2> ジメチルシリル(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)の合成
2M-ナトリウムシクロペンタジエニドのTHF溶液 8.8ml(16.6mmol)にTHF 50mlを加え、-78℃に冷却した。(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)クロロジメチルシラン 1.89g(8.8mmol)をTHF 20mlに溶解し、反応器に滴下した。室温下、2時間攪拌後、50℃で2時間攪拌した。TLCにて反応終了確認し、0℃下、水を加えて反応を停止した。ヘキサンにて抽出を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥を行い、ろ過後得られた溶液を減圧濃縮した。減圧蒸留を行い、ジメチルシリル(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)1.07g(収率50%)を得た。
【0190】
1H-NMR、GC-MSにて目的物を同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,TMS基準);7.0-6.0(br,7H), 3.2(d,1H), 2.9(d,1H), 2.3(t,2H), 1.4(m,4H) 0.9(t,3H), 0.1(t,3H), -0.2ppm(s,3H)、
GC-MS;244(MS)
<Step 3> ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−1)の合成
ジメチルシリル(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル) 0.58g(2.38mmol)をジエチルエーテル 30mlに溶解させた。-78℃に冷却し、1.57M-nBuLi 3.16ml(4.99mmol)を滴下した。徐々に温度を上昇させ、室温下24時間攪拌した。減圧濃縮を行い、ヘキサン 6mlで3回洗浄した。得られた白色固体をヘキサン 60mlで懸濁させ、-78℃下、四塩化ジルコニウム 500mg(2.15mmol)を添加した。徐々に温度を上昇させ、室温下、24時間攪拌させた。濾過を行い、ヘキサンで洗浄し、塩を除去した。ろ液を減圧濃縮し、粗精製物510mgを得た。ジエチルエーテル、ペンタンで洗浄し、得られた固体を減圧乾燥させ、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−1)190mg(収率20%)を得た。
【0191】
1H-NMR、FD-MSにて目的物を同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3, TMS基準);6.9(d,2H), 6.6(s,1H), 5.9(t,3H), 5.5(s,1H), 2.6(m,2H), 1.4(m,2H), 1.3(m,2H), 0.9(t,3H), 0.8ppm(m,3H)、
FD-MS;404(MS)
【0192】
【化11】

【0193】
〔合成例2〕
[ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−2)の調製]
<Step 1> クロロ(シクロペンタジエニル)ジメチルシランの合成
ジメチルシリルジクロリド 14.3g(110mmol)にTHF 100mlを加え、-78℃に冷却した。2M-ナトリウムシクロペンタジエニドのTHF溶液38.7ml(77.4mmol)を30分かけて滴下し、徐々に昇温させ、室温下、24時間攪拌を行った。減圧濃縮を行い、濾過により塩化ナトリウムを除去した。ヘキサン洗浄後、ろ液のヘキサンを減圧蒸留し、得られたクロロ(シクロペンタジエニル)ジメチルシランを次工程に用いた。
【0194】
<Step 2> ジメチルシリル(3−n-プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)の合成
n-プロピルシクロペンタジエン 2.16g(20mmol)にTHF 100mlを加え、-78℃に冷却した。1.57M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液 13.3ml(22mmol)をゆっくり滴下し、室温下、3時間攪拌した。再び反応器を-78℃に冷却後、クロロ(シクロペンタジエニル)ジメチルシラン 3.97g(25mmol)をTHF20mlに溶解し、反応器に滴下した。室温下、18時間攪拌後、TLCにて反応終了を確認した。0℃下、水を加えて反応を停止した。ヘキサンにて抽出を行い、有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムにて乾燥を行い、濾過後得られた溶液を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィ(溶媒;ヘキサン:トリエチルアミン= 98:2 v/v)および減圧蒸留にて精製を行い、ジメチルシリレル(3−n-プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル) 1.73g(収率38%)を得た。
【0195】
1H-NMR、GC-MSにて目的物を同定した。結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl3,TMS基準);7.0-6.0(br,7H), 3.0(s,1H), 2.9(s,1H), 2.3(m,2H), 1.6(m,2H) 0.9(t,3H), 0.1(t,3H), -0.2ppm(s,3H)、
GC-MS;230(MS)
<Step 3> ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−2)の合成
ジメチルシリル(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル) 0.90g(3.9mmol)をジエチルエーテル 40mlに溶解させた。-78℃に冷却し、1.57M−n−ブチルリチウム・ヘキサン溶液 5.09ml(8.0mmol)を滴下した。徐々に温度を上昇させ、室温下24時間攪拌した。減圧濃縮を行い、ヘキサン 13mlで3回洗浄した。得られた白色固体をヘキサン 50mlで懸濁させ、-78℃下、四塩化ジルコニウム 820mg(3.5mmol)を添加した。徐々に温度を上昇させ、室温下、24時間攪拌させた。濾過を行い、ヘキサンで洗浄し、塩を除去した。ろ液を減圧濃縮し、ペンタンで洗浄した。得られた固体を減圧乾燥させ、ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(A−2) 210mg(収率14%)を得た。
【0196】
1H-NMR、FD-MSにて目的物を同定した。結果を以下に示す。1H-NMR(CDCl3, TMS基準);7.1-6.9(m,2H), 6.6(s,1H), 6.0-5.8(m,3H), 5.5(s,1H), 2.6(m,2H), 1.5(m,2H), 0.9(t,3H), 0.8-0.7ppm(d,6H)、
FD-MS;388(MS)
【0197】
【化12】

【0198】
〔合成例3〕
下記構造式で表される(B−1)は、特開平4−69394号公報に記載の方法に基づいて合成した。
【0199】
【化13】

【0200】
[実施例1]
固体成分(S)の調製
内容積200Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2:平均粒子径12μm)10kgを66.5Lのトルエンに懸濁した後、0〜5℃まで冷却した。メチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.575mmol/mL)19.8Lを、30.2Lのトルエンで希釈した。この懸濁液に希釈したメチルアルモキサンのトルエン溶液を1時間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95〜100℃まで昇温して、引き続き95〜100℃で4時間反応させた。その後、降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで4回洗浄した。トルエンを加えて全量140Lとし、固体成分(S)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:98.04g/L、Al濃度:0.471mol/Lであった。
【0201】
固体触媒成分(X−1)の調製
内容積150Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン36.2Lと上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー3.1L(固体成分で304g)を装入した。次に、2Lガラス製反応器に、窒素雰囲気下、メタロセン化合物(A−1)1.35g(Zr原子換算で3.35mmol)とメタロセン化合物(B−1)2.23g(Zr原子換算で4.09mmol)を採取し((A−1)/(B−1)のモル比=45/55)、トルエン2.0Lに溶解し上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて2回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量35Lとし、固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを調製した。
【0202】
予備重合触媒(XP−1)の調製
上記で得られた固体触媒成分(X−1)のヘキサンスラリーを10.8℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持し、次いでジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)0.6molと1−ヘキセン19mLを添加した。1−ヘキセン添加後、0.43kg/時間でエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから38分後に1−ヘキセン11.0mLを添加、100分後にも1−ヘキセン11.0mLを添加し、予備重合開始から153分後に、エチレン供給が912gに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて3回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を42Lとした。
【0203】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタッド2500(3.0g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で1時間保温し、予備重合触媒にケミスタッド2500を担持させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた予備重合触媒をヘキサンで3回洗浄した。
【0204】
次に、内容積43Lの攪拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、上記予備重合触媒のヘキサンスラリー25L(固体予備重合触媒で1255g)を移液した。移液後、乾燥機内を約3.5時間かけて−65KPaGまで減圧し、−65KPaGに到達したところで約4.0時間真空乾燥しヘキサン、予備重合触媒の揮発分を除去した。さらに100KPaGまで減圧し、−100KPaGに到達したところで6時間真空乾燥し、固体触媒成分1g当たり、3gのポリマーが重合された予備重合触媒(XP−1)を得た。
【0205】
得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.50mg含まれていた。
重合
内容積1.7m3の流動層型気相重合反応器において、上記予備重合触媒(XP−1)を用いて、エチレン共重合体の製造を行った。
【0206】
反応器内に予備重合触媒成分(XP−1)をZr原子換算で0.038mol/時間で供給し、全圧2.0MPa・G、エチレンの分圧1.2MPa・A、反応器中のガス線速0.8m/秒、重合温度80℃、滞留時間6.9時間という条件で共重合を行った。ガス組成が一定となるように、窒素、エチレン、1-ヘキセンを供給した。供給量は表1に示す条件に従って行った。重合体は、重合反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置で乾燥しエチレン共重合体を3.5kg/時間で得た。
【0207】
得られたエチレン共重合体に耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%を加え、株式会社プラコー社製の単軸65mmφ押出機を用い、設定温度180℃、スクリュー回転数50rpmの条件にて溶融混練した後、ストランド状に押し出し、カッターにてペレットとしたものを測定試料とした。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0208】
[実施例2]
固体触媒成分(X−2)の調製
内容積150Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン50.1Lと上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー12.9L(固体成分で1265g)を装入した。次に、2Lガラス製反応器に窒素雰囲気下、メタロセン化合物(A−2)5.72g(Zr原子換算で14.65mmol)とメタロセン化合物(B−1)9.00g(Zr原子換算で16.52mmol)を採取し((A−2)/(B−1)のモル比=47/53)、トルエン2.0Lに溶解し、上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去しヘキサンを用いて2回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量50Lとし、固体触媒成分(X−2)のヘキサンスラリーを調製した。
【0209】
予備重合触媒(XP−2)の調製
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(X−2)のヘキサンスラリーを10.0℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持し、次いでジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)2.7molと1−ヘキセン84mLを添加した。1−ヘキセン添加後、1.82kg/時間でエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから58分後に1−ヘキセン43.0mLを添加、111分後にも1−ヘキセン43.0mLを添加し、予備重合開始から153分後に、エチレン供給が3827gに到達し、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて3回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を66Lとした。
【0210】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタッド2500(13.1g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で1時間保温し予備重合触媒にケミスタッド2500を担持させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回予備重合触媒を洗浄した。
【0211】
次に、内容積43Lの攪拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、上記予備重合触媒のヘキサンスラリー25L(固体予備重合触媒で5269g)を移液した。移液後、乾燥機内を約3.5時間かけて−65KPaGまで減圧し、−65KPaGに到達したところで約4.0時間真空乾燥し、ヘキサン、予備重合触媒の揮発分を除去した。さらに100KPaGまで減圧し、−100KPaGに到達したところで6時間真空乾燥し、固体触媒成分1g当たり、3gのポリマーが重合された予備重合触媒(XP−2)を得た。得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.50mg含まれていた。
【0212】
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1の重合方法と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0213】
[実施例3]
実施例2の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例2の重合方法と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0214】
[実施例4]
固体触媒成分(X−3)の調製
内容積150Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン31.3Lと上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー8.3L(固体成分で814g)を装入した。次に、2Lガラス製反応器に窒素雰囲気下、メタロセン化合物(A−2)3.27g(Zr原子換算で8.38mmol)とメタロセン化合物(B−1)6.32g(Zr原子換算で11.57mmol)を採取し((A−2)/(B−1)のモル比=42/58)、トルエン2.0Lに溶解し上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて2回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量50Lとし、固体触媒成分(X−3)のヘキサンスラリーを調製した。
【0215】
予備重合触媒(XP−3)の調製
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(X−3)のヘキサンスラリーを10.0℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持し、次いでジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)1.7molと1−ヘキセン53mLを添加した。1−ヘキセン添加後、1.67kg/時間でエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから35分後に1−ヘキセン28.0mLを添加、102分後にも1−ヘキセン28.0mLを添加し、予備重合開始から139分後に、エチレン供給が2450gに到達し、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去しヘキサンを用いて3回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を42Lとした。
【0216】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタッド2500(8.4g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で1時間保温し、予備重合触媒にケミスタッド2500を担持させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回予備重合触媒を洗浄した。
【0217】
次に、内容積43Lの攪拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、上記予備重合触媒のヘキサンスラリー25L(固体予備重合触媒で3372g)を移液した。移液後、乾燥機内を約3.5時間かけて−65KPaGまで減圧し、−65KPaGに到達したところで約4.0時間真空乾燥しヘキサン、予備重合触媒の揮発分を除去した。さらに100KPaGまで減圧し、−100KPaGに到達したところで6時間真空乾燥し、固体触媒成分1g当たり、3gのポリマーが重合された予備重合触媒(XP−3)を得た。
【0218】
得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たりZr原子が0.50mg含まれていた。
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1の重合方法と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法で測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0219】
[実施例5]
実施例4の重合において、重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例4の重合方法と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0220】
[実施例6]
実施例4の重合において、重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例4の重合方法と同様にして、エチレン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0221】
[実施例7]
実施例1の重合において、重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1の重合方法と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン共重合体に耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%を加え、株式会社東洋精機製作所製の二軸異方向20mmφ押出機を用い、設定温度220℃、スクリュー回転数100rpmの条件にて溶融混練した後、ストランド状に押出し、カッターにてペレットとしたものを測定試料とした。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0222】
[実施例8]
固体触媒成分(X−4)の調製
窒素置換した200mLのガラス製フラスコにトルエン50mLを入れ、上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー(固体部換算で1.0g)を装入した。次に、メタロセン化合物(A−1)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.002mmol/mL)7.6mLとメタロセン化合物(B−1)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.002mmol/mL)5.1mLを混合滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘプタンで2回洗浄し、100mlヘプタンスラリーとした(固体触媒成分X−4)。得られた固体触媒成分(X−4)のヘプタンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.023mg/mL、Al濃度1.3mg/mLであった。
【0223】
重合
十分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、1−ヘキセン10mL、トリイソブチルアルミニウム0.375mmolを添加し、さらに固体触媒成分(X−4)を固体成分換算で15mg装入し、80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体60.2gを得た。得られたエチレン共重合体に耐熱安定剤としてIrganox1076(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%、Irgafos168(チバスペシャリティケミカルズ社製)0.1重量%を加え、東洋精機製作所製ラボプラストミルを用い、樹脂温度180℃、回転数50rpmで5分間溶融混練した。さらに、この溶融ポリマーを、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg/cm2の条件にて冷却した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表2に示す。
【0224】
[実施例9]
重合
実施例8の重合において、エチレンガスの代わりに水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.05vol%)を用いた以外は、実施例8と同様にして行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン・1−ヘキセン共重合体55.1gを得た。得られたエチレン共重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定を行った結果を表2に示す。
【0225】
[実施例10]
固体触媒成分(X−5)の調製
実施例1の固体触媒成分(X−1)の調製において、メタロセン化合物(A−1)とメタロセン化合物(B−1)の反応比率を(A−1)/(B−1)=45/55(モル比)の代わりに((A−1)/(B−1)=40/60(モル比)とした以外は、固体触媒成分(X−1)と同様の方法にて固体触媒成分(X−5)のヘキサンスラリーを合成した。
【0226】
予備重合触媒成分(XP−5)の調製
予備重合触媒成分(XP−1)の調製において、固体触媒成分(X−1)の代わりに固体触媒成分(X−5)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−1)と同様の方法にて予備重合触媒成分(XP−5)を得た。得られた予備重合触媒成分の組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.50mg含まれていた。
【0227】
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0228】
[実施例11]
重合
実施例10の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例10と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。さらに得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法で試料を調製し押出ラミネート成形を行った。結果を表2および3に示す。
【0229】
[実施例12]
固体触媒成分(X−6)の調製
実施例2の固体触媒成分(X−2)の調製において、メタロセン化合物(A−2)とメタロセン化合物(B−1)の反応比率を(A−2)/(B−1)=47/53(モル比)の代わりに(A−2)/(B−1)=39/61(モル比)とした以外は、固体触媒成分(X−2)と同様の方法にて固体触媒成分(X−6)のヘキサンスラリーを合成した。
【0230】
予備重合触媒成分(XP−6)の調製
予備重合触媒成分(XP−2)の調製において、固体触媒成分(X−2)の代わりに固体触媒成分(X−6)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−2)と同様の方法にて予備重合触媒成分(XP−6)を得た。得られた予備重合触媒成分の組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.50mg含まれていた。
【0231】
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0232】
[実施例13]
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。さらに得られたエチレン系重合体を用い、実施例1と同様の方法で試料を調製し押出ラミネート成形を行った。結果を表2および3に示す。
【0233】
[実施例14]
固体触媒成分(X−7)の調製
内容積150Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエンと上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー(固体成分で1575g)を装入し、全体量を33Lになるよう調整した。次に、2Lガラス製反応器に窒素雰囲気下、メタロセン化合物(A−2)5.8g(Zr原子換算で14.9mmol)とメタロセン化合物(B−1)36.9g(Zr原子換算で67.7mmol)を採取し((A−2)/(B−1)のモル比=28/72)、トルエン2.0Lに溶解し上記反応器に圧送した。圧送後、内温73〜76℃で2時間反応させ、上澄み液をデカンテーションにより除去しヘキサンを用いて3回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量25Lとし、固体触媒成分(X−7)のヘキサンスラリーを調製した。
【0234】
[予備重合触媒成分(XP−7)の調製]
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(X−7)のヘキサンスラリーを10.8℃まで冷却した後、ケミスタッド2500(15.9g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、次いでジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)1.4molを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持し、次いで1−ヘキセン103mLを添加した。1−ヘキセン添加後、1.5kg/hでエチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから85分後に1−ヘキセン52mLを添加、155分後にも1−ヘキセン52mLを添加し、予備重合開始から217分後に、エチレン供給が4643gに到達し、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去しヘキサンを用いて4回固体触媒成分を洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を25Lとした。
【0235】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタッド2500(63.8g)のヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で2時間保温し予備重合触媒成分にケミスタッド2500を担持させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回予備重合触媒成分を洗浄した。
【0236】
次に、内容積43Lの攪拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、上記予備重合触媒のヘキサンスラリー25L(固体予備重合触媒で6456g)を移液した。移液後、乾燥機内を約60分かけて−68KPaGまで減圧し、−68KPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサン、予備重合触媒の揮発分を除去した。更に−100KPaGまで減圧し、−100KPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、固体触媒成分1g当たり3gのポリマーが重合された予備重合触媒成分(XP−7)を得た。
【0237】
得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たりZr原子が0.5mg含まれていた。
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0238】
[実施例15]
重合
実施例14の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例14と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0239】
[実施例16]
固体触媒成分(X−8)の調製
実施例14の固体触媒成分(X−7)の調製において、メタロセン化合物(A−2)とメタロセン化合物(B−1)の反応比率を(A−1)/(B−1)=28/72(モル比)の代わりに(A−2)/(B−1)=18/82(モル比)とした以外は、固体触媒成分(X−7)と同様の方法にて固体触媒成分(X−8)のヘキサンスラリーを合成した。
【0240】
予備重合触媒成分(XP−8)の調製
予備重合触媒成分(XP−7)の調製において、固体触媒成分(X−7)の代わりに固体触媒成分(X−8)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−7)と同様の方法にて予備重合触媒成分(XP−8)を得た。得られた予備重合触媒成分の組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.50mg含まれていた。
【0241】
重合
実施例1の重合において、触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、エチレン・ヘキセン共重合体を得た。得られたエチレン系重合体を用い、実施例8と同様の方法で測定試料を調製し物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0242】
[比較例1]
株式会社プライムポリマーより市販されている溶液重合法によるエチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体(商品名:ウルトゼックス20100J)の製品ペレットを測定試料とし、物性評価、押出ラミネート成形を行った。結果を表2および3に示す。
【0243】
比較例1では、ネックインが大きく、MT/η*値も実施例と比べて小さかった。
[比較例2]
株式会社プライムポリマーより市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:ミラソン11)の製品ペレットを測定試料とし、物性評価、押出ラミネート成形を行った。結果を表2および3に示す。
【0244】
比較例2では、ヒートシール強度に劣っており、メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)も実施例と比べて大きかった。
[比較例3]
固体触媒成分(X−9)の調製
内容積114Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー11.8L(固体成分で1000g)を添加した後、攪拌下、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr原子換算で0.0017mmol/mL)14.7リットルを78〜80℃で30分間かけて滴下し、この温度で2時間反応させた。その後、上澄み液を除去し、ヘキサンで2回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量25Lとし、固体触媒成分(X−9)のヘキサンスラリーを調製した。
【0245】
予備重合触媒(XPV−9)の調製
上記で得られた固体触媒成分(X−9)のヘキサンスラリーを5℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。その後、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(Al原子換算で40.0mmol/L)1.9Lと1−ヘキセン65.3mLを添加し、予備重合を開始した。1時間後に系内の温度は35℃まで上昇したが、その後は系内温度を34〜35℃に保持した。予備重合を開始してから70分後に、再び1−ヘキセン65.3mLを添加した。
【0246】
その後、予備重合開始から4時間後に、系内を窒素により置換し、予備重合を停止した。次いで、上澄み液を除去し、ヘキサンで4回洗浄し、固体触媒成分(X−9)1g当たり3gのポリマーが予備重合された予備重合触媒(XP−9)を得た。その後、系内温度を34〜35℃まで昇温し、エマルゲン108(花王(株)製ポリオキシエチレンラウリルエーテル)のヘキサン溶液10L(エマルゲンの濃度で1.0g/L)を添加した。この温度で2時間攪拌し、予備重合触媒(XP−9)にエマルゲンを担持させた予備重合触媒(XPV−9)を得た。
【0247】
重合
連続式流動床気相重合装置を用い、全圧2.0MPa-G、重合温度70℃、ガス線速度0.8m/秒でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を行った。上記で調製した予備重合触媒(XPV―9)を乾燥し、25〜30g/時間の割合で連続的に供給し、重合の間一定のガス組成を維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素および窒素を連続的に供給した(ガス組成:1−ヘキセン/エチレン=1.1〜1.3×10-2、エチレン濃度=71.4%)。得られたエチレン共重合体の収量は、5.3kg/時間であった。
【0248】
得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った。
結果を表2および3に示す。
【0249】
比較例3では、ネックインが大きく、MT/η*値も小さかった。また、引取サージングが発生し、ゼロせん断粘度(η0)も上記関係式(Eq-1)を満たしていなかった。
[比較例4]
固体触媒成分(X−10)の調製
窒素置換した200mLのガラス製フラスコにトルエン100mLを入れて攪拌し、上記で調製した固体成分(S)のトルエンスラリー(固体部換算で2.0g)を装入した。次に、Me2Si(Ind)2ZrCl2のトルエン溶液(Zr原子換算で0.0015mmol/mL)32.1mLを滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、デカンで2回洗浄し、100mLのデカンスラリーとした(固体触媒成分X−10)。得られた固体触媒成分(X−10)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.043mg/mL、Al濃度2.49mg/mLであった。
【0250】
重合
十分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素−エチレン混合ガス(水素濃度:0.54vol%)を用いて、系内を置換した後、1−ヘキセン15mL、トリイソブチルアルミニウム 0.375mmol、固体触媒成分(X−10)0.5gをこの順に装入した。80℃に昇温して、0.78MPa・Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン共重合体86.7gを得た。
【0251】
得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法で測定試料を調製した。
結果を表2および3に示す。
[比較例5]
ダウ・ケミカル・カンパニーより市販されている溶液重合法によるエチレン・1−オクテン共重合体(商品名:アフィニティーPF1140)は製品ペレットを測定試料とし、物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0252】
比較例4および5は、MT/η*値が小さく、ゼロせん断粘度(η0)も上記関係式(Eq-1)を満たしていなかった。このため、ネックインが大きく、さらに引取サージングが発生すると推測される。
【0253】
[比較例6]
固体成分(S−1)の調製
内容積260Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2:平均粒子径12μm)10kgを90.5Lのトルエンに懸濁した後、0〜5℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.0mmol/mL)45.5Lを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95〜100℃まで昇温して、引き続き95〜100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエンを加えて全量129Lとし、固体成分(S−1)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:137.5g/L、Al濃度:1.1mol/Lであった。
【0254】
固体触媒成分(X−11)の調製
内容積114Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン21.0Lと上記で調製した固体成分(S−1)のトルエンスラリー15.8L(固体成分で2400g)を添加した。一方、内容積100Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン31.0Lを張り込み、攪拌下、メタロセン化合物(A−3)のトルエン溶液(Zr原子換算で8.25mmol/L)10.0リットルを投入し、続いてメタロセン化合物(B−2)のトルエン溶液(Zr原子換算で2.17mmol/L)2.0Lを投入し数分間混合した((A−3)/(B−2)のモル比=95/5)。続いて、調製した混合溶液を予め固体成分(S−1)のトルエンスラリーを張り込んだ上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。
【0255】
このようにして得られた固体触媒成分をヘキサンで3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量56Lとし、固体触媒成分(X−11)のヘキサンスラリーを調製した。
なお、下記構造式で表される(A−3)は、STREM社製のものを使用し、下記式(B−2)で表される化合物は、特許第2813057号公報に記載の方法に基づいて合成した。
【0256】
【化14】

【0257】
予備重合触媒(XP−11)の調製
引き続き、上記で得られた固体触媒成分(X−11)のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TiBAl)2.8molと1−ヘキセン157mLを添加した。1−ヘキセン添加後にエチレンを1.8kg/時間で再度供給し、予備重合を開始した。予備重合を開始してから40分後に系内温度は24℃まで上昇し、それ以降の系内温度は24〜26℃に保持した。予備重合を開始してから70分後に1−ヘキセン79.0mLを添加、140分後にも1−ヘキセン79.0mLを添加した。
【0258】
予備重合開始から220分後に、エチレン供給を停止し系内を窒素により置換し、予備重合を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた予備重合触媒をヘキサンで6回洗浄し、固体触媒成分1g当たり、2.87gのポリマーが重合された予備重合触媒(XP−11)を得た。得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たり、Zr原子が0.72mg含まれていた。
【0259】
重合
内容積290Lの完全攪拌混合型重合槽において、上記予備重合触媒(XP−11)を用いて、エチレン共重合体の製造を行った。
【0260】
重合槽内に、溶媒ヘキサンを45L/時間、予備重合触媒をZr原子に換算して0.32mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20.0mmol/時間、エチレンを8.0kg/時間、1−ヘキセンを700g/時間の割合となるように連続的に供給した。さらに、重合槽内の溶媒量が一定となるように重合槽より重合体スラリーを連続的に抜き出し、全圧0.8MPa-G、重合温度80℃、滞留時間2.6時間という条件で重合を行った。重合槽から連続的に抜き出された重合体スラリーは、フラッシュドラムで未反応エチレンが実質的に除去される。その後、重合体スラリー中のヘキサンを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン共重合体を5.6kg/時間で得た。
【0261】
得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法で測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った。結果を表2および3に示す。
比較例6は密度が高いため、実施例と比べてヒートシール強度が小さかった。
【0262】
[比較例7]
固体触媒成分(X−12)の調製
内容積114Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン18.6Lと上記で調製した固体成分(S−1)のトルエンスラリー7.9L(固体成分で1200g)を添加した。一方、内容積100Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエン14.5Lを張り込み、攪拌下、メタロセン化合物(A−3)のトルエン溶液(Zr原子換算で7.81mmol/L)5.0リットルを投入し、続いてメタロセン化合物(B−2)のトルエン溶液(Zr原子換算で2.17mmol/L)2.0Lを投入し、数分間混合した((A−3)/(B−2)のモル比=85/15)。続いて調製した混合溶液を予め固体成分(S−1)のトルエンスラリーを張り込んだ上記反応器に圧送した。圧送後、内温20〜25℃で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体触媒成分をヘキサンで3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30Lとし、固体触媒成分(X−12)のヘキサンスラリーを調製した。
【0263】
予備重合触媒(XP−12)の調製
引き続き、固体触媒成分(X−12)のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間、系内の温度は10〜15℃に保持した。その後、トリイソブチルアルミニウム1.6molと1−ヘキセン80mLを添加した。1−ヘキセン添加後にエチレンを1.8kg/時間で再度供給し予備重合を開始した。予備重合を開始してから25分後に系内温度は24℃まで上昇し、それ以降の系内温度は24〜26℃に保持した。予備重合を開始してから35分後に1−ヘキセン39.0mLを添加、60分後にも1−ヘキセン39.0mLを添加した。
【0264】
予備重合開始から85分後に、エチレン供給を停止し系内を窒素により置換し、予備重合を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた予備重合触媒をヘキサンで4回洗浄し、固体触媒成分1g当たり2.93gのポリマーが重合された予備重合触媒(XP−12)を得た。得られた予備重合触媒成分の一部を乾燥し、組成を調べたところ、固体触媒成分1g当たりZr原子が0.72mg含まれていた。
【0265】
重合
内容積290Lの完全攪拌混合型重合槽において、上記予備重合触媒(XP−12)を用いて、エチレン共重合体の製造を行った。
【0266】
重合槽内に、溶媒ヘキサンを45L/時間、予備重合触媒をZr原子に換算して0.10mmol/時間、トリイソブチルアルミニウムを20.0mmol/時間、エチレンを5.0kg/時間、1−ヘキセンを1900g/時間の割合となるように連続的に供給した。さらに、重合槽内の溶媒量が一定となるように重合槽より重合体スラリーを連続的に抜き出し、全圧1.0MPa-G、重合温度65℃、滞留時間2.7時間という条件で重合を行った。重合槽から連続的に抜き出された重合体スラリーは、フラッシュドラムで未反応エチレンが実質的に除去される。その後、重合体スラリー中のヘキサンを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン共重合体を3.1kg/時間で得た。ただし、該重合体の密度が935kg/m3を下回ると、重合槽より抜き出した重合体スラリーの上澄み液は白濁し、該重合体の密度が920kg/m3に到達してから8時間後には重合体と溶媒が分離せずスラリー性状が悪化したため、連続運転を中止した。運転中止前に得られたエチレン共重合体を用い、実施例1と同様の方法にて測定試料を調製した。該試料を用いて物性測定、押出ラミネート成形を行った結果を表2および3に示す。
【0267】
比較例7では、GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が小さく、実施例と比べてヒートシール強度が小さかった。
【0268】
【表1】

【0269】
【表2】

【0270】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0271】
本発明のエチレン共重合体は、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒で製造された既存のエチレン共重合体に比べて溶融張力が十分に大きく、かつ成形体としての機械的強度に特に優れる。従って、本発明のエチレン共重合体は、十分な機械的強度を備えた均質品質のプラスチック成形体の形成に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンと、炭素数4〜10のα-オレフィンとの共重合体であり、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たすことを特徴とするエチレン共重合体。
(I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲である。
(II)密度(d)が875〜936kg/m3の範囲である。
(III)190℃における溶融張力〔MT(g)〕と、200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(P)〕との比〔MT/η*(g/P)〕が2.50×10-4〜9.00×10-4の範囲である。
(IV)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.8以下である。
(V)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕とGPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
【数1】

(VI)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.20〜1.0×104.50の範囲である。
【請求項2】
請求項1に記載のエチレン共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のエチレン共重合体から得られる成形体。
【請求項4】
請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体。
【請求項5】
請求項3または4に記載の成形体からなるフィルム。
【請求項6】
請求項5に記載のフィルムを含んでなるラミネートフィルム。

【公開番号】特開2009−197226(P2009−197226A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12974(P2009−12974)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】