説明

エチレン系樹脂組成物、太陽電池封止材及びそれを用いた太陽電池モジュール

【課題】特定の要件を満たしたエチレン系樹脂(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られた変性体を含有するエチレン系樹脂組成物において、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性に優れ、さらにこれを用いた太陽電池封止材を提供する。
【解決手段】エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体を含有し、エチレン系重合体(A)が以下の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系樹脂組成物。a)密度が900〜940kg/m3、b)DSCに基づく融解ピークが90〜125℃、c)JIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレ−ト(MFR2)が0.1〜100g/10分、d)Mw/Mnが1.2〜3.5、e)金属残渣が0.1〜50ppm

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性に優れるエチレン系樹脂組成物に関し、さらにこれを用いた太陽電池封止材に関する。
本発明は、さらに、この様なエチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止用シート、および、該封止材および/または封止用シートを用いた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題、エネルギー問題等が深刻さを増す中、クリーンでかつ枯渇のおそれが無いエネルギー源として、太陽電池が注目されている。太陽電池を建物の屋根部分等の屋外で使用する場合、太陽電池モジュールの形で使用することが一般的である。
【0003】
上記の太陽電池モジュールは、結晶型太陽電池モジュールと薄膜型太陽電池モジュールの大きく2つに分けられる。結晶型太陽電池モジュールは、多結晶シリコンや単結晶シリコン等により形成された結晶型太陽電池セルを、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池封止用シート/結晶型太陽電池セル/太陽電池封止用シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)の順に積層し、次いで、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用して製造されている。
【0004】
また、薄膜型太陽電池モジュールは、アモルファスシリコンや結晶シリコン等をガラス等の基板の上に数μmの非常に薄い膜を形成して作った薄膜型太陽電池セルを、薄膜型太陽電池セル/太陽電池封止用シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)の順に積層し、次いで、これらを真空吸引して加熱圧着するラミネーション法等を利用して製造されている。
【0005】
このようにして得られる太陽電池モジュールは、耐候性を有し、建物の屋根部分等の屋外での使用にも適したものとなっている。
【0006】
従来、太陽電池封止用シートを構成する材料(太陽電池封止材)は、その透明性、柔軟性等の要求の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が広く用いられていた(例えば、特許文献1参照。)。EVAを太陽電池封止材に使用する場合、十分な耐熱性を付与するために架橋処理を行うのが一般的であるが、架橋処理には0.2〜2時間程度の比較的長時間を要するため、太陽電池モジュールの生産速度、生産効率を低下させる原因となっていた。また、EVAが分解して発生する酢酸ガス等の成分が、太陽電池素子に影響を与える可能性が懸念されていた。
【0007】
上述の技術的課題を解決するための方策の1つとして、太陽電池封止材の少なくとも一部にエチレン・α−オレフィン共重合体を使用することを挙げることができ、また、エチレン・α−オレフィン共重合体を使用した太陽電池封止材についての提案も存在する(特許文献2参照)。しかし、特許文献2は、封止材としての好ましい特性(耐熱性、透明性、柔軟性、耐プロセス安定性等)を得るための、エチレン・α−オレフィン共重合体の使用形態につき、何らの具体的な指針も開示していない。これは、特許文献2に開示の技術が架橋処理を前提とするものであり、架橋処理と併せて所望の物性を達成しようとするものである為と考えられる。
【0008】
さらに、特有の密度範囲を有するメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンを使用した太陽電池封止材についての提案も存在する(特許文献3参照)。しかし、特許文献3も、エチレン・α−オレフィン共重合体の使用形態につき、密度以外には何らの具体的な指針も開示していない。これは、特許文献3に開示の技術が架橋処理を前提とするものであり、架橋処理と併せて所望の物性を達成しようとするものである為と考えられる。
【0009】
また、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物による樹脂膜からなる充填シートの提案も存在する(特許文献4参照)。しかし、特許文献4に開示されている太陽電池モジュール用充填シートでは、当該文献に記載の促進試験条件以上の過酷な条件では、樹脂組成物中に残存する遊離無水マレイン酸がシート中に浸透した水により加水分解してマレイン酸となり、銀電極等の電極を腐食し光起電力の低下が発生する問題点があった。さらに、ゲル分率の開示もなく、ゲルが発生すると、絶縁破壊電圧が低下する問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−283696号公報
【特許文献2】特開2000−091611号公報
【特許文献3】特開2007−150069号公報
【特許文献4】特開2004−214641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述の背景に鑑み、エチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止材において、(必ずしも架橋を伴わずに)所望の物性を得るための指針を明確にし、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性等の諸特性に優れるとともに、必要に応じて架橋を省略して生産性を改善することの可能な、太陽電池封止材を提供することにある。
【0012】
本発明は、さらに、この様なエチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止用シート、および、該封止材および/または封止用シートを用いた太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の密度範囲、融点範囲、メルトフローレート範囲、分子量分布範囲、金属残渣範囲にあるエチレン系重合体(A)を、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体を含有するエチレン系樹脂組成物を用いることにより、接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性に優れ、かつ、必要に応じて架橋を省略して生産性を改善することの可能な、太陽電池封止材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち本発明は、
(1)以下の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系重合体(A)を、
エチレン性不飽和シラン化合物からなるラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、
水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルおよびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるラジカル重合性不飽和化合物(B2)で、
変性して得られる変性体を含有するエチレン系樹脂組成物。
a)密度が900〜940kg/m3
b)DSCに基づく融解ピークが90〜125℃
c)JIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレ−ト(MFR2)が0.1〜100g/10分
d)Mw/Mnが1.2〜3.5
e)金属残渣が0.1〜50ppm
(2)(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)
から選ばれる変性体と、
を含有する(1)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(3)(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(6)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)
から選ばれる変性体と、
を含有する(1)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(4)(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(6)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)
から選ばれる変性体と、
を含有する(1)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(5)前記エチレン・α−オレフィン共重合体(C)が、以下の要件f)を満たすことを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
f)密度が850kg/m3以上、895kg/m3未満
(6)前記変性体を得る反応が、エチレン系重合体(A)もしくはエチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物と、
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、
有機過酸化物、
を押出溶融変性して成されることを特徴とする(2)〜(5)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(7)前記変性体を得る反応に用いるエチレン系重合体(A)が、エチレン系重合体(A)のパウダーであることを特徴とする(6)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(8)前記変性体を得る反応に用いるエチレン系重合体(A)が、エチレン系重合体(A)のパウダーとペレットの混合物であることを特徴とする(6)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(9)前記変性体を得る反応が、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物が予めエチレン系重合体(A)のパウダーに含浸したものと、エチレン系重合体(A)のペレットの混合物、の存在下で成されることを特徴とする(6)に記載のエチレン系樹脂組成物。
(10)前記エチレン系樹脂組成物の赤外線吸収スペクトルで測定した、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が、0.05〜5.0重量%の範囲にあり、遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が500ppm以下であり、かつ、ゲル分率が30%以下であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(11)前記ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(12)紫外線吸収剤(D)、ラジカル捕捉剤(E)、耐熱安定剤(F)から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有する請求項(1)〜(11)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
(13)(1)〜(12)のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物からなる太陽電池封止材。
(14)前記エチレン系樹脂組成物がシート状であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
(15)太陽電池モジュール用裏面封止材と一体化していることを特徴とする(13)または(14)に記載の太陽電池封止材。
(16)(13)〜(15)に記載の太陽電池封止材を用いて得られる太陽電池モジュール。
(17)(13)〜(15)に記載の太陽電池封止材を用いて得られる薄膜型太陽電池モジュール。
(18)(13)〜(15)に記載の太陽電池封止材を裏面側の太陽電池封止材として用いて得られる結晶型太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性に優れるエチレン系樹脂組成物を得ることができる。さらに当該エチレン系樹脂組成物を用いることにより、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性およびプロセス安定性に優れ、かつ、必要に応じて架橋を省略して生産性を改善することの可能な、太陽電池封止材を得ることができる。
【0016】
本発明は、さらに、この様なエチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止用シート、および、該封止材および/または封止用シートを用いることで、上記の優れた諸特性に加えて、コスト等経済性に優れた太陽電池モジュールを得ることもできる。
【0017】
また、本発明の太陽電池封止材は、耐透湿性が高く、変換効率の低下が小さい薄膜太陽電池を得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のエチレン系樹脂組成物は、以下の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系重合体(A)がラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体を含有するものである。
【0019】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物は、以下の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系重合体(A)が、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性されて得られる変性体(1)、該エチレン系重合体(A)が、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性されて得られる変性体(2)、該エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物がラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性されて得られる変性体(3)、該エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物がラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性されて得られる変性体(4)、該エチレン系重合体(A)がラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性されて得られる変性体(5)、および、該エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物がラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性されて得られる変性体(6)が、それぞれ以下に示す表1の組み合わせで含有するのも好ましい態様である(下記表1の変性体aと変性体bを含有)。
【0020】
【表1】

【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
エチレン系重合体(A)
エチレン系重合体(A)は、a)〜e)の要件を満たし、かつ、エチレンから導かれる構成単位を有するものであれば良く、それ以外に特に制限はない。
【0022】
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)は、例えば、エチレン単独重合体またはエチレンと少なくとも1種のエチレン以外の炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができる。ここで、エチレン以外の炭素原子数が3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられるが、炭素原子数が4〜10のα−オレフィンが好ましい。
【0023】
さらに、エチレンと環状オレフィンとの共重合体も挙げることができる。ここで、環状オレフィンとしては、ノルボルネン誘導体、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体などが挙げられる。この中では、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体およびヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,709,14]−4−ヘプタデセン誘導体が好ましく、特にテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが好ましい。
【0024】
これらのα−オレフィンおよび環状オレフィンは、1種単独で用いても良く、αオレフィンと環状オレフィンの2種以上を組み合わせて用いても良い。これらのα−オレフィンおよび環状オレフィンは、エチレンとランダム共重合体を形成してもよく、ブロック共重合体を形成してもよい。
【0025】
次に要件a)〜e)について順次説明する。
〔要件a)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)の密度は900〜940kg/m3であり、好ましくは900〜935kg/m3、さらに好ましくは900〜930kg/m3、さらに好ましくは900〜925kg/m3、さらに好ましくは905〜925kg/m3、最も好ましくは905〜923kg/m3である。
【0026】
密度が900kg/m3未満であると、封止材の耐熱性が低下し、モジュールを傾けた状態で太陽光により発電した場合、ガラスや電極が徐々に滑ってしまいガラスが滑り落ちてしまう。密度が940kg/m3超過であると、封止材の柔軟性が低下し、モジュールをラミネートする際に結晶セルの割れや銀電極の剥離が生じる。また、ラミネート成形時の温度が高くする必要が生じる。
【0027】
密度は、エチレン系重合体(A)のα−オレフィン等のコモノマー含量に依存しており、コモノマー含量が少ないほど密度は高く、コモノマー含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体(A)中のコモノマー含量は、重合系内におけるコモノマーとエチレンとの組成比(コモノマー/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。
【0028】
このため、コモノマー/エチレンを増減させることでエチレン系重合体(A)の密度を増減させることが可能である。
【0029】
〔要件b)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)のDSCに基づく融解ピーク温度は90〜125℃であり、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは90〜115℃である。90℃未満であると、封止材の耐熱性が低下し、モジュールを傾けて太陽光により発電した際、ガラスや電極が徐々に滑り落ちてしまう。125℃超過であると、封止材の柔軟性が低下し、モジュールをラミネートする際に結晶セルの割れや銀電極の剥離が生じる。また、ラミネート成形時の温度が高くする必要が生じる。
融解ピーク温度も密度同様に、エチレン系重合体(A)のα−オレフィン等のコモノマー含量に依存しており、コモノマー含量が少ないほど融解ピークは高く、コモノマー含量が多いほど融解ピークは低くなる。また、エチレン系重合体(A)中のコモノマー含量は、重合系内におけるコモノマーとエチレンとの組成比(コモノマー/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。
【0030】
このため、コモノマー/エチレンを増減させることでエチレン系重合体(A)の融解ピークを増減させることが可能である。
【0031】
〔要件c)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)のJIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレ−ト(MFR2)が0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分ある。MFR2が0.1g/10分未満であると組成物の流動性が低下し、シート押出成形時の生産性が低下する。100g/10分超過であると、逆に流動性が高すぎるため、シート成形が困難である。また、シートの引張強度等の機械物性が低下する。
【0032】
なお、メルトフローレート(MFR2)は、分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR2)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR2)が大きいほど分子量は小さくなる傾向がある。また、エチレン系重合体(A)の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Kazuo Soga、KODANSHA“CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”、376頁(1990年))。このため、水素/エチレンを増減させることで、本発明の要件c)の上限ないし下限のメルトフローレート(MFR2)を有するエチレン系重合体(A)を製造することが可能である。
【0033】
〔要件d)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が1.2〜3.5であり、好ましくは1.2〜3.2、さらに好ましくは1.2〜2.8である。Mw/Mnが1.2未満であると、リビング重合となりポリマー単位重量当りの触媒量が増大して、ポリマーの製造コストが高くなり、工業的に不利である。Mw/Mnが3.5超過であると、得られるエチレン系樹脂組成物の衝撃強度が低下し、また、シートにベタツキが発生し、シートがブロッキングしてしまいシートの繰り出し性が悪化する。
【0034】
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、一般に組成分布の影響を受けており、例えば、バッチ式スラリー重合の場合、コモノマーの転化率を低く保つとMw/Mnは小さくなり、コモノマーの転化率を高くするとMw/Mnは大きくなる傾向にある。また、重合時間を短くすることでコモノマーの転化率も低く、重合触媒の活性種の変質も抑制でき組成分布も狭くMw/Mnは小さくなる傾向にある。しかし、重合時間を長くすることでコモノマー転化率も高く、重合触媒の変質も発生し組成分布が広がりMw/Mnは大きくなる傾向にある。さらに、連続の気相、または溶液重合では、平均滞留時間を短くすることで、重合触媒の変質を抑制でき組成分布も狭くMw/Mnは小さくなる傾向にある。しかし、平均滞留時間を長くすることで、重合触媒の活性種の変質が発生し組成分布が広くなりMw/Mnは大きくなる傾向にある。
【0035】
〔要件e)〕
本発明のエチレン系樹脂組成物に用いられるエチレン系重合体(A)の金属残渣が0.1〜50ppmであり、好ましくは0.1〜45ppm、さらに好ましくは0.1〜40ppmである。金属残渣が0.1ppm未満であると、重合触媒の脱灰操作が必須となり、プラント固定費、用役費等が高くなり製品コストが高くなり、さらに、脱灰処理に用いる酸あるいはアルカリも多量必要となり、残存する可能性が高くなり、残存した酸またはアルカリにより電極等の腐食を起こす可能性がある。金属残渣が50ppm超過であると、金属残渣により体積固有抵抗、絶縁破壊抵抗の低下が起こる。
【0036】
金属残渣は、重合触媒の活性種となる例えばメタロセン化合物の遷移金属の重合活性に依存しており、重合活性が高い重合触媒であると自ずと金属残渣を小さくすることができる。そのため、重合活性の高い重合触媒を用いること好適な手法の一つとなる。また、用いる重合触媒の最適重合温度で重合することや、重合圧力をできる限り高くし、重合触媒当たりのモノマー濃度を高くすることも、重合活性を上げ金属残渣を小さくする好適な手法の一つである。また、例えば上記メタロセン化合物には、有機アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物、および有機アルミニウム化合物を用いることがあるが、これらの添加量をできる限り抑制することも、金属残渣を小さくする好適な手法の一つである。その他、様々な手法を用いて重合活性を向上させることも金属残渣を小さくする好適な手法となり得る。しかしながら、酸及びアルカリまたはアセト酢酸メチル等のキレート化剤を用いて、金属残渣を脱灰処理にて減少させる手法もあるが、エチレン重合体(A)中に酸及びアルカリまたはキレート化剤が残留すると薄膜電極の腐食を促進するため、本発明においては好適な手法の一つとはなり難い手法である。
【0037】
エチレン系重合体(A)の製造方法
本発明のエチレン系重合体(A)は、従来公知のエチレン系重合用触媒成分を用いることにより製造することができる。例えば、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン化合物等が挙げられる。これらの中で、重合活性を示す単位遷移金属当たりの重合活性が高いメタロセン化合物が、脱灰処理を施すことなく金属残渣が少ないエチレン系重合体(A)を得ることができるため好ましい。メタロセン化合物は、例えば、特開2006−077261号広報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができ、本願請求項で定義したエチレン系重合体を満たす限り、前記特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良いし、それらから選別したメタロセン化合物を二種以上ブレンドし使用しても良い。さらに、メタロセン化合物を用いた際の好ましい態様は、例えば、
(I)従来公知のメタロセン化合物、並びに
(II)(II―1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(II―2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(II―3)有機アルミニウム化合物
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(助触媒と呼ぶ場合がある)とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレン、および、α―オレフィン等から選ばれる1種以上のモノマーを供給することにより得ることができる。
【0038】
(II―1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II―2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および、(II―3)有機アルミニウム化合物においても、例えば、特開2006−077261号広報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができ、エチレン系重合体が、本願上記要件a)〜要件e)で定義される要件を満たす限り、前記特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良い。これら化合物は、個別に、あるいは予め接触させて重合雰囲気に投入しても良い。さらに、例えば特開2005−314680号公報等に記載の微粒子状無機酸化物担体に担持し用いても良い。
【0039】
重合
本発明のエチレン系重合体(A)の重合は、従来公知の気相重合法あるいは、スラリー重合法、溶液重合法などの液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは高活性で金属残渣が少なくなる気相重合法、スラリー重合法により行われる。スラリー重合、溶液重合は、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物などの不活性炭化水素媒体下で行われる。これらの不活性炭化水素溶媒のうちでは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましい。
【0040】
なお、前記重合方法で得られたエチレン系重合体(A)は、オレフィン重合体で用いられる従来公知の脱灰処理を施し、触媒成分および微粒子無機酸化物担体を除去しても良い。
【0041】
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)
本発明で用いられるラジカル重合性不飽和化合物(B1)は、エチレン性不飽和シラン化合物であることが特徴であり、従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。好ましくは、接着性が良好なγ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。更に好ましくは、接着性が良好で各被着体とのラミネート成形時におけるラミ時間を短くでき、立体障害が小さくグラフト変性効率の高いビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0042】
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)の配合量は、上記エチレン系重合体(A)もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対してラジカル重合性不飽和化合物(B1)が通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部である。ラジカル重合性不飽和化合物(B1)の配合量が上記範囲にあると、エチレン系樹脂組成物の接着性を十分に改善しながら、エチレン系樹脂組成物の透明性、柔軟性等に悪影響を与えないため好ましい。
【0043】
ラジカル重合性不飽和化合物(B2)
本発明で用いられるラジカル重合性不飽和化合物(B2)は、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、カルボジイミド化合物などが挙げられる。
【0044】
ラジカル重合性不飽和化合物(B2)としては、特に不飽和カルボン酸あるいはその誘導体が特に好ましい。不飽和カルボン酸あるいはその誘導体としては、カルボン酸基を1個以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸を1個以上有する不飽和化合物などを挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などが挙げられる。
【0045】
具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸[商標](エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)などの不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステルなどが挙げられる。
【0046】
かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2−メチルマレイン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0047】
これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0048】
加水分解性の不飽和シランとしては、ラジカル重合性の不飽和基とアルコキシシリル基もしくはシリル基を分子内に有する化合物であり、ビニル基と場合によってはアルキレン基によって結合した加水分解性のシリル基を有する化合物、またはアクリル酸、メタクリル酸などのエステルアミドで結合した加水分解性のシリル基を有する化合物が例示できる。これらの具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、モノビニルシラン、モノアリルシランなどが例示される。不飽和ハロゲン化炭化水素としては塩化ビニル、塩過ビニリデンなどが例示される。
【0049】
ラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、上記エチレン系重合体(A)もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対してラジカル重合性不飽和化合物(B2)が通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部である。ラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量が上記範囲にあると、エチレン系樹脂組成物の接着性を十分に改善しながら、エチレン系樹脂組成物の透明性、柔軟性等に悪影響を与えないため好ましい。
【0050】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、エチレンと、炭素数が3〜20のα−オレフィンを、1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。炭素数が3〜20のα−オレフィンの中で好ましいのは、炭素数が4以上であるα−オレフィンであり、特に好ましいのは、炭素数4〜8のものである。この様なα−オレフィンとして、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。なかでも、入手の容易さから1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の重合形態としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0051】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の密度は、850〜895未満kg/m3である。好ましくは850〜890kg/m3、さらに好ましくは850〜880kg/m3である。密度が895kg/m3超過であると、タック性を向上することができず、接着性の向上が見られない傾向にある。密度が850kg/m3未満であると、エチレン系重合体(A)との相溶性が低下し、シート表面へのブリードアウトが起こりシートの繰り出し性が低下する傾向にある。また、シート成形時にチルロールへのベタツキが発生し、シートの厚み制御やシート成形が困難になる傾向もある。
【0052】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のα−オレフィンから導かれる構成単位は、9〜22mol%である。好ましくは、10〜22mol%、さらに好ましくは、11〜17mol%である。α−オレフィンから導かれる構成単位が9mol%未満であると、タック性を向上することができず、接着性の向上が見られない傾向にある。α−オレフィンから導かれる構成単位が22mol%超過であると、エチレン系重合体(A)との相溶性が低下し、シート表面へのブリードアウトが起こりシートの繰り出し性が低下する傾向にある。また、シート成形時にチルロールへのベタツキが発生し、シートの厚み制御やシート成形が困難になる傾向もある。
【0053】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のDSCに基づく融解ピークは、85℃以下あるいは実質的に観測されない範囲である。好ましくは、80℃以下あるいは実質的に観測されない、さらに好ましくは、75℃以下あるいは実質的に観測されない範囲である。融解ピーク85℃超過であると、タック性を向上することができず、接着性の向上が見られない傾向にある。
【0054】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のJIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定した場合のメルトフローレ−ト(MFR2)は、0.1〜100g/10分の範囲である。好ましくは、0.1〜80g/10分、より好ましくは、0.5〜80g/10分、さらに好ましくは1.0〜50g/10分である。MFR2が0.1g/10分未満であると、樹脂組成物の流動性が低下し、シート押出成形時の生産性が低下する。また、樹脂組成物のスコーチ性が高くなり、ゲル化を起こしやすくなり、押出機のトルクが上昇しシート成形が困難となる場合がある。シートが得られたとしても、押出機内で発生したゲル物によりシートの表面に凹凸が発生し、外観が悪くなる場合がある。また、電圧をかけるとシート内部のゲル物周辺にクラックが生じ、絶縁破壊抵抗が低下する。さらに、ゲル物界面での透湿が起こりやすくなり、透湿性が低下する。また、シート表面に凹凸が発生するため、太陽電池モジュールのラミネート加工時にガラス、薄膜電極、バックシートとの密着性が悪化し、接着が不十分となるため接着性も低下する。MFR2が100g/10分超過であると、分子量が低いためチルロール等のロール面への付着が起こり、剥離を要するため均一な厚みのシート成形が困難となり、さらに、樹脂組成物にコシがないため、0.3mm以上の厚いシートを成形するのが困難となる傾向にある。
【0055】
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のJIS K−6721に準拠して190℃、10kg荷重にて測定したメルトフローレ−ト(MFR10)とMFR2の比であるMFR10/MFR2が、5.0〜8.0の範囲にある。好ましくは、MFR10/MFR2が5.5〜8.0、さらに好ましくは、MFR10/MFR2が5.5〜7.5である。MFR10/MFR2が5未満であると、エチレン・α−オレフィン共重合体の製造が困難である。MFR10/MFR2が8超過であると、低温特性が低下する傾向にある。
【0056】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のGPCで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布Mw/Mnが1.2〜3.5の範囲である。好ましくは、1.5〜3.5、さらに好ましくは1.7〜3.2である。Mw/Mnが1.2未満のものを製造するためには、リビング重合的にエチレン・α−オレフィン共重合体を重合しなければならず、触媒活性が得られない、あるいは従来公知の重合方法で得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の低分子量成分、高分子量成分の分離が必要となるため、製造コストが高価となるという問題点がある。また、成形できる温度幅も狭く、さらに押出機での吐出量も均一に出しにくくなるため、均一な厚みのシートを得るシート成形が困難になる傾向にある。Mw/Mnが3.5超過であると、低分子量成分を有してしまうためシートにベタツキが発生し、シートがブロッキングしてしまいシートの繰り出し性が悪化する傾向にある。また、一般に、分子量分布Mw/Mnが広くなると組成分布も広くなることが知られており、シートにベタツキが発生し、シートがブロッキングしてしまいシートの繰り出し性が悪化する傾向にある。さらに、低分子量がシート表面にブリードしてくるため接着の阻害となり、接着性が低下する。
【0057】
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の製造方法
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の製造方法は特に限定されず、チタン化合物、バナジウム化合物またはメタロセン化合物など種々の触媒を用いて製造することができる。中でも、上述の分子量分布Mw/Mnおよび組成分布を満たしたエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることが容易なメタロセン化合物を用いることが好ましい。メタロセン化合物は、例えば、特開2006−077261号広報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができ、本願請求項で定義したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の各特性を満たす限り、前記特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用しても良いし、それらから選別したメタロセン化合物を二種以上ブレンドし使用しても良い。さらに、メタロセン化合物を用いた際の好ましい態様は、例えば、
(I)従来公知のメタロセン化合物、並びに
(II)(II―1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(II―2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、
および
(II―3)有機アルミニウム化合物
とから選ばれる少なくとも1種以上の化合物(助触媒と呼ぶ場合がある)とからなるオレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンおよびα―オレフィン等から選ばれる1種以上のモノマーを供給し得ることができる。
【0058】
(II―1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II―2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および、(II―3)有機アルミニウム化合物は、例えば、特開2006−077261号広報、特開2008−231265号公報、特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができ、本発明の効果を満たす限り、前記特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してエチレン・α−オレフィン共重合体(C)を製造しても良い。これら化合物は、個別に、あるいは予め接触させて重合雰囲気に投入しても良い。さらに、例えば特開2005−314680号公報等に記載の微粒子状無機酸化物担体に担持し用いても良い。
【0059】
重合
本発明のエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の重合は、従来公知の気相重合法あるいは、スラリー重合法、溶液重合法などの液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは溶液重合法などの液相重合法により行われる。
【0060】
上記のようなメタロセン化合物を用いて、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行い、エチレン・α−オレフィン共重合体を製造する場合、(I)のメタロセン化合物は、反応容積1リットル当り、通常10-9〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになるような量で用いられる。
【0061】
化合物(II−1)は、化合物(II−1)と、化合物(I)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(II−1)/M]が通常1〜10000、好ましくは10〜5000となるような量で用いられる。化合物(II−2)は、化合物(I)中の全遷移金属(M)とのモル比[(II−2)/M]が、通常0.5〜50、好ましくは1〜20となるような量で用いられる。化合物(II−3)は、重合容積1リットル当り、通常0〜5ミリモル、好ましくは約0〜2ミリモルとなるような量で用いられる。
【0062】
本発明に係る溶液重合では、上述のようなメタロセン化合物の存在下に、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合を行うことによって、コモノマー含量が高く、組成分布が狭く、分子量分布が狭いエチレン・α−オレフィン共重合体(C)を効率よく製造できる。ここで、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンとの仕込みモル比は通常、エチレン:α−オレフィン=10:90〜99.9:0.1、好ましくはエチレン:α−オレフィン=30:70〜99.9:0.1、さらに好ましくはエチレン:α−オレフィン=50:50〜99.9:0.1である。
【0063】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどを挙げることができる。本発明の溶液重合において使用できるα−オレフィンは極性基含有オレフィンも包含する。極性基含有オレフィンとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸類、およびこれらのナトリウム塩等の金属塩類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどの不飽和グリシジル類などを挙げることができる。また、ビニルシクロヘキサン、ジエンまたはポリエン;芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、p−クロロスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン類;および3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどを反応系に共存させて高温溶液重合を進めることも可能である。以上述べたα−オレフィンの中では、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが好ましく用いられる。また本発明に関わる溶液重合方法においては、炭素原子数が3〜20の環状オレフィン類、たとえばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどを併用してもよい。
【0064】
本発明に関わる「溶液重合」とは、後述の不活性炭化水素溶媒中にポリマーが溶解した状態で重合を行う方法の総称である。本発明に関わる溶液重合における、重合温度は通常0〜200℃、好ましくは20〜190℃、更に好ましくは40〜180℃である。
【0065】
本発明に関わる溶液重合においては、重合温度が0℃に満たない場合、その重合活性は極端に低下するので生産性の点で実用的でなく、さらにエチレン・α−オレフィン共重合体の分子末端の二重結合量が低下する。また、0℃以上の重合温度領域では温度が高くなるに従い、重合時の溶液粘度が低下し、重合熱の除熱も容易となり、さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体の分子末端の二重結合量が増加する。しかし、重合温度が200℃を超えると、重合活性が極端に低下するので生産性の点で実用的でない。重合圧力は通常、常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜8MPaゲージ圧の条件下であり、共重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。反応時間(共重合反応が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なり適宜選択することができるが、通常1分間〜3時間、好ましくは10分間〜2.5時間である。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、本発明の範囲内において、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する化合物(II)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するエチレン・α−オレフィン共重合体1kgあたり0.001〜5,000NL程度が適当である。また、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の分子末端に存在するビニル基およびビニリデン基は、重合温度を高くすること、水素添加量を極力少なくすることで調整できる。また、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体のMFR10/MFR2は、後述の実施例のような配位重合の場合、エチレン系重合体中の長鎖分岐構造は、β−水素脱離反応により生成した末端ビニル基を有する分子鎖(マクロモノマー)が、再挿入することにより生成すると考えられている。このため、溶液中のマクロモノマー濃度とエチレン濃度との比([マクロモノマー]/[エチレン])を増減させることで、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2は制御することができる。一般的に[マクロモノマー]/[エチレン]が高いとエチレン・α−オレフィン共重合体中の長鎖分岐量は増加し、[マクロモノマー]/[エチレン]が低いとエチレン・α−オレフィン共重合体中の長鎖分岐量は低下する。溶液中の[マクロモノマー]/[エチレン]を増減させる手法には具体的には以下のような方法が挙げられる。具体的には、
[1]重合温度
重合温度が低いほどβ−水素脱離反応は起こりにくくなる。そのため、重合温度を低くすれば、[マクロモノマー]/[エチレン]が小さくなり、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2は低下する。
[2]ポリマー濃度
溶液中のポリマー濃度を低くすれば、相対的にマクロモノマー濃度も低くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が小さくなり、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2は低下する。
[3]エチレン転化率
エチレン転化率を低くすれば、溶液中のエチレン濃度が高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が小さくなり、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2は低下する。
[4]溶媒種
重合溶媒を高沸点の溶媒にすると、溶液中のエチレン濃度が高くなるため、[マクロモノマー]/[エチレン]が小さくなり、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2は低下する。
【0066】
他にも、β−水素脱離反応を制御する以外にAlへの連鎖移動反応等を制御することによって[マクロモノマー]/[エチレン])を増減させ、エチレン・α−オレフィン共重合体中のMFR10/MFR2を変化させることもできる。
【0067】
本発明に関わる溶液重合において用いられる溶媒は通常、不活性炭化水素溶媒であり、好ましくは常圧下における沸点が50℃〜200℃の飽和炭化水素である。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素が挙げられる。なおベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類やエチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素も、本発明の高温溶液重合に関わる「不活性炭化水素溶媒」の範疇に入り、その使用を制限するものではない。前記したように、本発明に係る溶液重合においては、従来繁用されてきた芳香族炭化水素溶解タイプの有機アルミニウムオキシ化合物のみならず、脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素に溶解するMMAO,TMAO−341(東ソー・ファインケム(株)社製)のような修飾メチルアルミノキサンを使用できる。この結果、溶液重合用の溶媒として脂肪族炭化水素や脂環族炭化水素を採用すれば、重合系内や生成するエチレン・α−オレフィン共重合体中に芳香族炭化水素が混入する可能性をほぼ完全に排除することが可能となった。すなわち、本発明に関わる溶液重合方法は、環境負荷を軽減化でき人体健康への影響を最小化できるという特徴も有するのである。
【0068】
物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体および所望により添加される他の成分は、任意の方法で溶融され、混練、造粒などを施されるのが好ましい。
【0069】
特に、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の配合量は、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の合計100重量部に対する重量比で、エチレン系重合体(A)/エチレン・α−オレフィン共重合体(C)=100/0〜10/90重量%である。好ましくは、エチレン系重合体(A)/エチレン・α−オレフィン共重合体=100/0〜20/80重量%、より好ましくは、エチレン系重合体(A)/エチレン・α−オレフィン共重合体=100/0〜40/60重量%、より好ましくは、エチレン系重合体(A)/エチレン・α−オレフィン共重合体=100/0〜60/40重量%である。
【0070】
エチレン・α−オレフィン共重合体の重量比が90重量%超過であると、封止材の耐熱性が低下し、モジュールを傾けた状態で太陽光により発電した場合、ガラスや電極が徐々に滑ってしまいガラスが滑り落ちる傾向がある。また、シート成形時のチルロールへのベタツキが発生し、シートの厚み制御やシート成形が困難になる傾向もある。さらに、シートのブロッキングが発生し、シートの繰り出し性が悪化する傾向にある。エチレン・α−オレフィン共重合体をブレンドすることにより、エチレン系樹脂組成物のタック性が向上し、各被着体、特にポリエステル樹脂、鋼板、プラスチック板およびFRP板等の太陽電池モジュール用裏面保護シートとの接着性を向上する傾向にある。
【0071】
エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体のブレンド後の樹脂成分のトータル密度は、855〜940kg/m3である。
【0072】
有機化酸化物
本発明に用いられる有機過酸化物は、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)をエチレン系重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)にグラフト変性する際のラジカル開始剤として用いられる。
【0073】
エチレン系重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)に、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)をグラフト変性することにより、ガラス、バックシート、電極との接着性が良好なエチレン系重合体(A)の変性体が得られる。
【0074】
本発明で好ましく用いられる有機過酸化物は、エチレン系重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)にラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)をグラフト変性することが可能なものであれば良く、その種類には特に制限はないが、好ましい具体例としては、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーフタレート、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−アミル−パーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソノナノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−ジ(ブチルパ−オキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパ−オキシ)プチレート、メチルエチルケトンパ−オキサイド、エチル3,3−ジ(t−ブチルパ−オキシ)ブチレート、ジクミルパ−オキサイド、t−ブチルクミルパ−オキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパ−オキサイド、1,1,3,3−テトララメチルブチルハイドロパ−オキサイド、アセチルアセトンパ−オキサイド等が挙げられる。好ましくは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0075】
有機過酸化物の配合量はとエチレン系重合体(A)もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対して0.01〜1.0重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。有機過酸化物の配合量が0.01重量部未満であると、接着性が良好な変性体が得られない。有機過酸化物の配合量が1重量部超過であると、得られるエチレン系重合体の変性体のゲル分率が高くなり、得られるシート等の表面に凹凸が発生し、外観が悪くなる。また、電圧をかけるとシート等の内部のゲル周辺にクラックが生じ、絶縁破壊抵抗が低下する。さらに、ゲル分率が高くなると、ゲル界面での透湿が起こりやすくなり、透湿性が低下する。
【0076】
エチレン系重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の変性体
本発明にかかるエチレン系樹脂組成物を構成する変性体は、前述の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系重合体(A)を、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体であることが特徴であり、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物を、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性したものが好ましい。
【0077】
当該変性体の製造に用いる、エチレン系重合体(A)、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)およびエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の組み合わせとしては、以下の〈1〉〜〈12〉のものが好ましい。
〈1〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られ る変性体(1)と、エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2 )で変性して得られる変性体(2)を、含有する変性体
〈2〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラ ジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)と、エチレン 系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重 合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)を、含有する変性体
〈3〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られ る変性体(1)と、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル 重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)を、含有する変性体
〈4〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラ ジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)と、エチレン 系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体 (2)を、含有する変性体
〈5〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重 合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)と、エチレン系重合体 (A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)を 、含有する変性体
〈6〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラ ジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で 変性して得られる変性体(6)と、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレ フィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して 得られる変性体(3)を、含有する変性体
〈7〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重 合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)と、エチレン系重合体 (A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽 和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)を、含有する変性体
〈8〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラ ジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で 変性して得られる変性体(6)と、エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽 和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)を、含有する変性体
〈9〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重 合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)と、エチレン系重合体 (A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)を 、含有する変性体
〈10〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物を ラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2) で変性して得られる変性体(6)と、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オ レフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性し て得られる変性体(4)を、含有する変性体
〈11〉エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル 重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)と、エチレン系重合 体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不 飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)を、含有する変性体
〈12〉エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物を ラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2) で変性して得られる変性体(6)と、エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不 飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)を、含有する変性体
上記〈1〉〜〈12〉の変性体は、各々を構成する変性体(1)〜(6)をそれぞれ別個に製造した上で混合することに得ることができる。なお、この際、各々の変性体(変性体(1)〜(6))の原料であるエチレン系重合体(A)は、前述の要件a)〜e)を同時に満たしていれば、エチレン系重合体(A)の物性は同一でも異なっていてもよい。
【0078】
また、〈5〉〜〈12〉の組み合わせについては、次に示すような製造方法によっても得ることができる。
【0079】
例えば、〈5〉の組み合わせの変性体を得る場合、エチレン系重合体(A)(被変性体1)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)(ラジカル重合性不飽和化合物1)で変性して得られる変性体(2)(変性反応1)と、エチレン系重合体(A)(被変性体2)との混合物を、さらにラジカル重合性不飽和化合物(B1)(ラジカル重合性不飽和化合物2)で変性する(変性反応2)ことによって得ることができる。
【0080】
すなわち、変性を「・」、混合を「+」の記号で表した場合、〈5〉の組み合わせにかかる変性体は、「A・B1・B2+A・B1」で表されるのに対し、上記製法の場合、(A・B2+A)・B1→「A・B1・B2+A・B1」となり、同等の変性体の組み合わせが得られることが分かる。
【0081】
当該製法については、〈6〉〜〈12〉の組み合わせの変性体についても同等の方法により得ることが可能である。以下にその組み合わせを表記する(表2)。
【0082】
【表2】

【0083】
(A):エチレン系重合体(A)
(B1):ラジカル重合性不飽和化合物(B1)
(B2):ラジカル重合性不飽和化合物(B2)
(C):エチレン・α−オレフィン共重合体(C)
【0084】
エチレン系重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)変性体の製造方法
本発明のエチレン系重合体(A)および必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体の製造方法としては、押出溶融変性法、溶液変性法等の従来公知の変性手法を用いることができるが、製造コストが安価である押出溶融変性法が好ましい。
【0085】
本発明において用いられる押出溶融変性法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットを混合し押出溶融変性、等が挙げられる。なお、上記(i)〜(iii)において必要に応じて、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)が含有されていてもよい。この際、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の形状は、パウダー、ペレットのいずれであってもよいが、エチレン系重合体(A)と同じ形状であることが好ましい。以下の事項において、エチレン系重合体(A)との記載については、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物も必要に応じて含まれるものとする。
【0086】
上記(ii),(iii)において、エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットの重量割合は、パウダー/ペレット比が100/0〜1/99重量%であり、好ましくはパウダー/ペレット比が100/0〜5/95重量%である。
【0087】
本発明において、エチレン系重合体(A)のパウダーとは、光学顕微鏡観察、レーザー回折散乱法等で測定した粒子の大きさが、20μm〜5mm程度である。好ましくは0.05〜4mmである。粒子径が20μmm未満であると、押出機ホッパーでの粒子間のブロッキングを発生し、押出機スクリューへの食い込み不良を起こし、シートの厚薄ムラが起こりやすい傾向にある。粒子径5mm超過の場合、重合粒子の履歴がシートに残存し、シート表面での凹凸や厚薄ムラが起こりやすい傾向にある。
【0088】
本発明において、エチレン系重合体(A)のペレットとは、従来公知の単軸押出機、二軸押出機等を用いて調整され、丸型ペレット、角型ペレット等、いずれのペレットも用いることができる。大きさは、押出機ホッパー口の大きさにも依存するが、通常の押出機であれば、最長径部分が5cm以下であることが好ましい。ペレットの大きさが5cm超過であると、ペレット形状の履歴がシートに残存し、シート表面での凹凸や厚薄ムラが起こりやすい傾向にある。
【0089】
押出溶融変性をエチレン系重合体(A)のペレットのみで行うと、各種添加剤をブレンドする際に有機過酸化物、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)等の液状添加剤がペレットに含浸されず、エチレン系樹脂組成物、当該エチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止材および太陽電池封止シート中に濃度ムラが発生する。また、押出の際に、各種添加剤が局在化してしまい、エチレン系樹脂組成物、当該エチレン系樹脂組成物を用いた太陽電池封止材および太陽電池封止シート中にゲルが発生し、接着性の低下、絶縁破壊電圧の低下を引き起こすため好ましくない。
【0090】
押出溶融変性におけるエチレン系重合体(A)のパウダーとペレットの合計100重量部に対する有機過酸化物およびラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜4重量部である。
【0091】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物は、前記組み合わせ〈1〉〜〈12〉で表されるように、変性体(1)〜変性体(6)を組み合わせて含有することも、好ましい態様の一つである。
【0092】
ここで、変性体(1)〜変性体(6)を得るためのエチレン系重合体(A)は、前述の要件a)〜e)を同時に満たしていれば、物性は同一でも異なっていてもよい。また、変性体(3),変性体(4),変性体(6)を得るためのエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の物性は同一でも異なっていてもよい。
【0093】
前記変性体(1)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B1)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜4重量部である。
【0094】
前記変性体(2)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部,ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部,ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜4重量部である。
【0095】
前記変性体(3)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B1)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜4重量部である。
【0096】
前記変性体(4)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜4重量部である。
【0097】
前記変性体(5)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜4重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜4重量部である。
【0098】
前記変性体(6)の製造方法としては、(i)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)エチレン系重合体(A)のパウダーとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーとエチレン系重合体(A)のペレットと、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとエチレン・α−オレフィン共重合体(C)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜4重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が0.1〜4重量部である。
【0099】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物は、前記〈5〉〜〈12〉の組み合わせにおいては、前述したような別途の製造方法を採用することもできる。
【0100】
例えば、〈5〉の組み合わせの変性体を得る場合、エチレン系重合体(A)(被変性体1)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)(ラジカル重合性不飽和化合物1)で変性して得られる変性体(2)(変性反応1)と、エチレン系重合体(A)(被変性体2)との混合物を、さらにラジカル重合性不飽和化合物(B1)(ラジカル重合性不飽和化合物2)で変性する(変性反応2)ことによって得る製造方法も好ましい態様の一つである。
【0101】
ここで、変性体(2)を得るためのエチレン系重合体(A)と、追加されるエチレン系重合体(A)は、前述の要件a)〜e)を同時に満たしていれば、エチレン系重合体(A)の物性は同一でも異なっていてもよい。また、変性体(2)は、上述した変性体(2)の製造方法が好ましく使用できる。この際、得られる変性体は、エチレン系重合体(A)のラジカル重合性不飽和化合物(B2)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)による変性体と、エチレン系重合体(A)のラジカル重合性不飽和化合物(B1)による変性体の混合物となる。
【0102】
変性反応2としては、押出溶融変性法として、(i)変性体(2)と、エチレン系重合体(A)のパウダーと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(ii)変性体(2)と、エチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットと、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、有機過酸化物の存在下で押出溶融変性、(iii)変性体(2)と、予めラジカル重合性不飽和化合物(B1)と有機過酸化物を含浸したエチレン系重合体(A)のパウダーと、エチレン系重合体(A)のペレットとを混合し押出溶融変性、することを特徴としている。変性体(2)と追加するエチレン系重合体(A)の混合物100重量部に対する有機過酸化物とラジカル重合性不飽和化合物(B1)の配合量は、有機過酸化物が0.01〜1重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜5重量部、好ましくは、有機過酸化物が0.01〜0.5重量部,ラジカル重合性不飽和化合物(B1)が0.1〜4重量部である。
【0103】
なお、上記の記載は前記〈5〉の組み合わせについて詳述したが、前記〈6〉〜〈12〉の組み合わせにかかるエチレン系樹脂組成物ついても、上記と同様の製造方法、配合量により得ることができる。上記製造方法にかかる変性反応1で得られる変性体(1)〜変性体(6)は上記した手法により得ることができる。
【0104】
本発明のエチレン系樹脂組成物に含有されるラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性される変性体(具体的には変性体(2)、変性体(4)、変性体(5)、変性体(6)は、赤外線吸収スペクトルで測定したラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が、0.05〜5.0重量%の範囲にあることを特徴としている。グラフト基濃度が0.2重量%未満であると、ガラス、バックシート、薄膜電極への接着強度が低下する。グラフト基濃度が5.0重量%超過であると、グラフト基濃度を上げるため有機過酸化物を多量に使用するためゲルの発生が起こり、前述の被着体への接着性の低下や太陽電池封止材シートの外観が悪化する。
【0105】
また、本発明の変性体(2)、変性体(4)、変性体(5)、変性体(6)は、遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が1000ppm以下であることも特徴としている。遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が1000ppm超過であると、太陽電池モジュールの長期使用において、電極の腐食を発生する。
【0106】
さらに、本発明の変性体(2)、変性体(4)、変性体(5)、変性体(6)は、ゲル分率が30%以下にあることも特徴としている。ゲル分率が30%超過であると、前述の被着体への接着性の低下や太陽電池封止材シートの外観が悪化する。
【0107】
押出溶融変性法において、エチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)を反応させて変性体を得る押出条件は、従来公知の単軸押出機、二軸押出機等を用いて、通常、エチレン系重合体(A)の融点以上、具体的にはエチレン系重合体(A)を変性する場合には例えば100〜300℃、好ましくは150〜260℃の温度で、通常0.5〜10分間行われることが望ましい。
【0108】
またエチレン系重合体(A)にラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)をグラフト変性させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2))のグラフト量を向上させることができる。
【0109】
紫外線吸収剤(D)、光安定化剤(E)、耐熱安定剤(F)
本発明のエチレン系樹脂組成物には、紫外線吸収剤(D)、光安定化剤(E)、耐熱安定剤(F)から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有することを特徴としている。上記添加剤の配合量は、エチレン系重合体(A)100重量部に対して、0.005〜5重量部であることが好ましい。さらに、上記3種から選ばれる少なくとも2種の添加剤を含有することが好ましく。上記3種全てが含有されていることが最も好ましい。上記添加剤の配合量が上記範囲にあると、耐候安定性および耐熱安定性を向上する効果を十分に確保し、かつ、エチレン系樹脂組成物の透明性やガラスとの接着性の低下を防ぐことができるので好ましい。
【0110】
紫外線吸収剤(D)として具体的には、2−ヒドロキシ−4メトキシベンゾフェノン、2−2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−N−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系、フェニルサルチレート、p−オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系のものが用いられる。
【0111】
光安定剤(E)として具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系、ヒンダードピペリジン系化合物などのものが好ましく使用される。
【0112】
耐熱安定剤(F)として具体的には、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4´−ジイルビスホスフォナイト、および、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のホスファイト系耐熱安定剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとo−キシレンとの反応生成物等のラクトン系耐熱安定剤、3,3‘,3“,5,5‘,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a“−(メチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンジルベンゼン、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のヒンダードフェノール系耐熱安定剤、硫黄系耐熱安定剤、アミン系耐熱安定剤などを挙げることができる。また、これらを1種または2種以上を用いることもできる。中でも、ホスファイト系耐熱安定剤およびヒンダードフェノール系耐熱安定剤が好ましい。
【0113】
その他添加剤
本発明のエチレン系樹脂組成物は、以上詳述した諸成分以外の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲において適宜含有することができる。
【0114】
例えば、エチレン系重合体(A)以外の各種ポリオレフィン、例えば密度が900kg/m3より小であるエチレン・αオレフィン共重合体やスチレン系やエチレン系のブロック共重合体、プロピレン系重合体などが挙げられる。これらは、上記エチレン系重合体(A)100重量部に対して0.0001重量部〜50重量部、好ましくは0.001重量部〜40重量部含有されていても良い。またポリオレフィン以外の各種樹脂、各種ゴム、可塑剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、架橋助剤、及び分散剤等から選ばれる1種または2種以上の添加剤を適宜含有することができるが、これらに限定されない。
【0115】
特に、架橋助剤において、その配合量は、エチレン系重合体(A)100重量部に対して、0〜5重量部であると、適度な架橋構造を有することができ耐熱性、機械物性、接着性を向上できるため好ましい。
【0116】
架橋助剤としては、オレフィン系樹脂で一般に使用される従来公知のものが使用できる。このような架橋助剤は、分子内に二重結合を2個以上有する化合物であり、具体的には、t−ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート等のモノアクリレート、t−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、メトキシエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等のモノメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等のジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレートネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等のジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート等のトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート等のテトラアクリレート、ジビニルベンゼン、ジ−i−プロペニルベンゼン等のジビル芳香族化合物、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のシアヌレート、ジアリルフタレート等のトリアリル化合物やジアリル化合物、p−キノンジオキシム、p−p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム、フェニルマレイミド等のマレイミドが挙げられる。これらの架橋助剤の中でより好ましいのはジアクリレート、ジメタクリレート、ジビニル芳香族化合物である。
【0117】
エチレン系樹脂組成物
本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)からなる変性体の赤外線吸収スペクトルで測定したラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が0.05〜5.0重量%、好ましくはラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が0.02〜4.5重量%、さらに好ましくは、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が0.02〜4.0重量%の範囲にあることを特徴としている。グラフト基濃度が0.05重量%未満であると、ガラス、バックシート、薄膜電極への接着強度が低下する。グラフト基濃度が5.0重量%超過であると、グラフト基濃度を上げるため有機過酸化物を多量に使用するためゲルの発生が起こり、前述の被着体への接着性の低下や太陽電池封止材シートの外観が悪化する。
【0118】
また、本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)からなる変性体中の遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が500ppm以下、好ましくは、遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が450ppm以下、さらに好ましくは、遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が400ppm以下であることも特徴としている。遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が500ppm超過であると、太陽電池モジュールの長期使用において、電極の腐食を発生する。
【0119】
さらに、本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)からなる変性体のラジカル重合性不飽和化合物(B1)に由来するSi含有量が50〜8000ppm、好ましくは100〜7000ppmにあることも特徴としている。Si含有量が50ppm未満であると、ガラス、バックシート、薄膜電極への接着強度が低下する。Si含有量が8000ppm超過であると、Si含有量を上げるためラジカル重合性不飽和化合物(B1)と有機過酸化物を多量に使用するためゲルの発生が起こり、前述の被着体への接着性の低下や太陽電池封止材シートの外観が悪化する。
【0120】
さらに、本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)からなる変性体のゲル分率が30%以下にあることも特徴としている。ゲル分率が30%超過であると、前述の被着体への接着性の低下や太陽電池封止材シートの外観が悪化する。
【0121】
太陽電池封止材
本発明のエチレン系樹脂組成物は、ガラス及び太陽電池裏面保護シートとの接着性、耐候性、耐熱性、体積固有抵抗、電気絶縁性、透湿性、電極腐食性、成形性、プロセス安定性に優れており、従来公知の太陽電池モジュールの太陽電池封止材として好適に用いられる。特に、密度が900kg/m3〜920kg/m3のエチレン系重合体(A)からなる変性体を用いたエチレン系樹脂組成物の場合、透明性、柔軟性にも優れ、結晶型太陽電池モジュールにも好適に用いることができる。
【0122】
本発明の太陽電池封止材の製造方法としては通常用いられている方法が利用できるが、ニーダー、ロール、バンバリミキサー、押出機等により溶融ブレンドすることにより製造することが好ましい。
【0123】
太陽電池用封止シート
本発明のエチレン系樹脂組成物がシート状である太陽電池封止材も、本発明の好ましい実施形態の1つである。また、本発明のエチレン系樹脂組成物からなるシートを、少なくとも1層有する複合化された太陽電池封止材も好適に用いることができる。
【0124】
上記の本発明の太陽電池封止材の層の厚みは、通常0.01mm〜2mm、好ましくは、0.05〜1mm、さらに好ましくは0.1〜1mm、さらに好ましくは0.15mm〜1mm、さらに好ましくは0.2〜1mm、さらに好ましくは0.2〜0.9mm、さらに好ましくは、0.3〜0.9mm、最も好ましくは0.3〜0.8mmである。厚みがこの範囲内であると、ラミネート工程における、ガラス、太陽電池セル、薄膜電極等の破損が抑制でき、かつ、十分な光線透過率を確保することにより高い光発電量を得ることができ、かつ、低温での太陽電池モジュールのラミネート成形ができるので好ましい。
【0125】
本発明の太陽電池封止材のシートの成形方法には特に制限は無いが、公知の各種の成形方法(キャスト成形、押出シート成形、インフレーション成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形等)を採用することが可能である。例えば、押出機中で前述のエチレン系重合体(A)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の押出溶融変性と紫外線吸収剤(D)、光安定剤(E)、耐熱安定剤(F)、必要に応じてその他添加剤との溶融混練を行いつつ押出シート成形を行い、シート状で太陽電池封止材を得ることができる。
【0126】
また、予めエチレン系重合体(A−1)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の押出溶融変性した変性体とエチレン系重合体(A−2)と各種添加剤(D,E,F,その他)を溶融混練したもの、予め各種添加剤(D,E,F,その他)とエチレン系重合体(A−2)を溶融混練したものとエチレン系重合体(A−1)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の押出溶融変性した変性体を溶融混練したもの、エチレン系重合体(A−1)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の押出溶融変性した変性体と予め各種添加剤(D,E,F,その他)を溶融混練したものとエチレン系重合体(A−2)を溶融混練したもの、エチレン系重合体(A−1)とラジカル重合性不飽和化合物(B1)とラジカル重合性不飽和化合物(B2)の押出溶融変性時に各種添加剤(D,E,F,その他)を溶融混練したものとエチレン系重合体(A−2)を溶融混練したもの、の各種組み合わせにて押出シート成形し、シート状で太陽電池封止材を得ることもできる。
【0127】
ここで、エチレン系重合体(A−1)とエチレン系重合体(A−2)は本発明におけるエチレン系重合体(A)の各種要件を満たしたものであれば、同一でも、異なる性状のものでも良い。
【0128】
また、そのシート表面にはエンボス加工を施すことが可能であり、エンボス加工によりこの層の表面を装飾することで封止シート同士、または、封止シートと他のシート等とのブロッキングを防止し、さらに、エンボスが、ラミネート時の太陽電池素子等に対するクッションとなって、これらの破損を防止することができる。
【0129】
さらに、そのシートは、太陽電池モジュールサイズに合わせて裁断された枚葉形式、または太陽電池モジュールを作成する直前にサイズに合わせて裁断可能なロール形式にて太陽電池封止材として用いることができる。
【0130】
本発明のエチレン系樹脂組成物からなるシートは、厚み0.5mm以下の試料で測定したときの内部ヘイズが1%〜60%、好ましくは1%〜40%の範囲にあることが望ましい。
【0131】
本発明の好ましい実施形態である太陽電池用封止シートは、本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有していれば良い。従って、本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層の層数は、1層であっても良いし、2層以上であっても良い。構造を単純にしてコストを下げる観点、および、層間での界面反射を極力小さくし光を有効に活用する観点等からは、1層であることが好ましい。
【0132】
本発明の好ましい実施形態である太陽電池用封止シートは、本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層のみで構成されていても良いし、本発明のエチレン系樹脂組成物を含有する層以外の層(以下、「その他の層」とも言う)を有していても良い。
【0133】
その他の層の例としては、目的で分類するならば、表面または裏面保護のためのハードコート層、接着層、反射防止層、ガスバリア層、防汚層、バックシート、太陽電池モジュール用裏面封止材等を設けることができる。材質で分類するならば、紫外線硬化性樹脂からなる層、熱硬化性樹脂からなる層、ポリオレフィン樹脂からなる層、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層、フッ素含有樹脂からなる層、環状オレフィン(共)重合体からなる層、ポリエステル樹脂からなる層、ガラス、無機化合物からなる層等を設けることができる。好ましくは、ポリオレフィン樹脂からなる層、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂からなる層、フッ素含有樹脂からなる層、環状オレフィン(共)重合体からなる層、ポリエステル樹脂からなる層、ガラスが挙げられる。
【0134】
本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層と、その他の層との位置関係には特に制限はなく、発明の目的との関係で好ましい層構成が適宜選択される。すなわち、その他の層は、2以上の本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層の間に設けられても良いし、太陽電池用封止シートの最外層に設けられても良いし、それ以外の箇所に設けられても良い。本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層の片面にのみその他の層が設けられても良いし、両面にその他の層が設けられても良い。その他の層の層数に特に制限はなく、任意の数のその他の層を設けることができるし、その他の層を設けなくともよい。
【0135】
構造を単純にしてコストを下げる観点、および、界面反射を極力小さくし光を有効に活用する観点等からは、その他の層を設けず、本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層のみで、太陽電池用封止シートを作製すればよいし、目的との関係で必要又は有用なその他の層があれば、適宜そのようなその他の層を設ければよい。
【0136】
他の層を設ける場合の本発明のエチレン系樹脂組成物からなる層と他の層との積層方法については特に制限はないが、キャスト成形機、押出シート成形機、インフレーション成形機、射出成形機等の公知の溶融押出機を用いて共押出して積層体を得る方法、あるいはあらかじめ成形された一方の層上に他方の層を溶融あるいは加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。また、適当な接着剤(たとえば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(たとえば、三井化学社製のアドマー、三菱化学社製のモディックなど)、不飽和ポリオレフィンなどの低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体(たとえば、住化シーディエフ化学製のボンダインなど)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体またはこれらを含む接着性樹脂組成物など)を用いたドライラミネート法あるいはヒートラミネート法などにより積層してもよい。接着剤としては、120℃〜150℃程度の耐熱性があるものが好ましく使用され、ポリエステル系あるいはポリウレタン系接着剤などが好適なものとして例示される。また、両層の接着性を改良するために、たとえば、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を用いても良い。
【0137】
本発明の太陽電池用封止シートは、厚み0.5mm以下の試料で測定したときの内部ヘイズが1%〜60%、好ましくは5%〜50%の範囲にあることが望ましい。
【0138】
太陽電池モジュール
本発明の太陽電池封止材および、本発明の好ましい実施形態である太陽電池封止用シートは、上述のような優れた特性を有する。従って、かかる太陽電池封止材および/または太陽電池封止用シートを用いて得られた太陽電池モジュールは、本発明の効果を活用することが可能であり、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0139】
太陽電池モジュールは、例えば、通常、多結晶シリコン等により形成された太陽電池素子を太陽電池用封止シートで挟み積層し、さらに表裏両面を保護シートでカバーした結晶型太陽電池モジュールが挙げられる。すなわち典型的な太陽電池モジュールは、太陽電池モジュール用保護シート(表面保護シート)/太陽電池用封止シート/太陽電池素子/太陽電池用封止シート/太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)という構成になっている。もっとも、本発明の好ましい実施形態の1つである太陽電池モジュールは、上記の構成には限定されず、本発明の目的を損なわない範囲で、上記の各層の一部を適宜省略し、又は、上記以外の層を適宜設けることができる。典型的には、接着層、衝撃吸収層、コーティング層、反射防止層、裏面再反射層、光拡散層等を設けることができるがこれらに限定されない。これらの層を設ける位置には特に限定はなく、そのような層を設ける目的、および、そのような層の特性を考慮のうえ、適切な位置に設けることができる。
【0140】
さらに、例えば、シランガスから化学気相成長(CVD)させてできるアモルファスシリコンをガラスやフィルムの基板上に数μmの薄いシリコン膜を形成し、必要に応じてさらに銀等の電極をスパッタした太陽電池素子を太陽電池用封止シート、太陽電池モジュール用保護シート(裏面保護シート)の順でカバーした薄膜系(アモルファス系)太陽電池モジュールも挙げられる。
【0141】
また、その他太陽電池モジュールとして、太陽電池セルにシリコンを用いた太陽電池モジュールとして、結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層したハイブリッド型(HIT型)太陽電池モジュール、吸収波長域の異なるシリコン層を積層した多接合型(タンデム型)太陽電池モジュール、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と集光能力を上げる直径2〜3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた球状シリコン型太陽電池モジュール、従来のpin接合構造を持つアモルファスシリコン型のp型窓層の役割を絶縁された透明電極から電界効果によって誘起される反転層に置き換えた構造を持つ電界効果型太陽電池モジュール等が挙げられる。また、単結晶のGaAsを太陽電池セルに用いたGaAs系太陽電池モジュール、光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、Sなどから成るカルコパイライト系と呼ばれるI−III−VI族化合物を太陽電池セルとして用いたCISまたはCIGS系(カルコパイライト系)太陽電池モジュール、Cd化合物薄膜を太陽電池セルとして用いたCdTe−CdS系太陽電池、Cu2ZnSnS4(CZTS)太陽電池モジュール等が挙げられる。本発明の太陽電池封止材は、これら全ての太陽電池モジュールの太陽電池封止材として用いることができる。
【0142】
特に、太陽電池モジュ−ルを構成する光起電力素子の下に積層する充填材層は以下に示す機能を有することを必要とする。(i)光起電力素子の上部に積層される充填材層、電極、裏面保護層との接着性を有すること、(ii)光起電力素子としての太陽電池素子の裏面の平滑性を保持する機能を果たすために熱可塑性を有すること、(iii)光起電力素子としての太陽電池素子の保護ということから、耐スクラッチ性、衝撃吸収性等に優れていること。
【0143】
ここで、上記充填材層としては、耐熱性を有することが望ましい。特に、太陽電池モジュ−ル製造の際、真空吸引して加熱圧着するラミネ−ション法等における加熱作用や、太陽電池モジュ−ル等の長期間の使用における太陽光等の熱の作用などにより、充填材層を構成するエチレン系樹脂組成物が変質したり、劣化ないし分解するものでないことが望ましい。仮に、該エチレン系樹脂組成物に含まれる添加剤等が溶出したり、分解物が生成してしまうと、それらが太陽電池素子の起電力面(素子面)に作用し、その機能、性能等を劣化させてしまうことになるため、耐熱性は太陽電池モジュ−ルの充填材層の有する特性として必要不可欠のものである。
【0144】
さらに、上記充填材層は、水蒸気透過率が低く、太陽電池モジュールの裏面側からの水分の透過を防ぐことができ、太陽電池モジュールの光起電力素子の腐食、劣化を防ぐことができる。
【0145】
また、上記充填材層は、上記の太陽電池モジュ−ル用表面保護層の下(光起電力素子の上)に積層する充填剤層と異なり、必ずしも透明性を有することを必要としない。
【0146】
本発明の太陽電池封止材は、上記の特性を有しており、結晶型太陽電池モジュールの裏面側の太陽電池封止材、水分浸透に弱い薄膜型太陽電池モジュールの太陽電池封止材として好適に用いることができる。
【0147】
太陽電池モジュール用表面保護シート
本発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールにおいて用いられる太陽電池モジュール用表面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、耐候性、撥水性、耐汚染性、機械強度をはじめとして、太陽電池モジュールの屋外暴露における長期信頼性を確保するための性能を具備することが好ましい。また、太陽光を有効に活用するために、光学ロスの小さい、透明性の高いシートであることが好ましい。
【0148】
上記太陽電池モジュールに好適に用いられる太陽電池モジュール用表面保護シートの材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、環状オレフィン(共)重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂フィルムの他、ガラス基板などが挙げられる。
【0149】
樹脂フィルムとして特に好適なのは、透明性、強度、コスト等の点で優れたポリエステル樹脂、とりわけポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0150】
また、特に耐侯性の良いフッ素樹脂も好適に用いられる。具体的には、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリ四フッ化エチレン樹脂(TFE)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリ三フッ化塩化エチレン樹脂(CTFE)がある。耐候性の観点ではポリフッ化ビニリデン樹脂が優れているが、耐候性および機械的強度の両立では四フッ化エチレン−エチレン共重合体が優れている。また、封止材層等の他の層を構成する材料との接着性の改良のために、コロナ処理、プラズマ処理を表面保護シートに行うことが望ましい。また、機械的強度向上のために延伸処理が施してあるシート、例えば2軸延伸のポリプロピレンシートを用いることも可能である。
【0151】
太陽電池モジュール用表面保護シートとしてガラスを用いる場合には、波長350〜1400nmの光の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。かかるガラス基板としては赤外部の吸収の少ない白板ガラスを使用するのが一般的であるが、青板ガラスであっても厚さが3mm以下であれば太陽電池モジュールの出力特性への影響は少ない。また、ガラス基板の機械的強度を高めるために熱処理により強化ガラスを得ることができるが、熱処理無しのフロート板ガラスを用いてもよい。また、ガラス基板の受光面側に反射を抑えるために反射防止のコーティングをしても良い。
【0152】
太陽電池モジュール用裏面保護シート
本発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールにおいて用いられる太陽電池モジュール用裏面保護シートには特に制限はないが、太陽電池モジュールの最表層に位置するため、上述の表面保護シートと同様に、耐候性、機械強度等の諸特性を求められる。従って、表面保護シートと同様の材質で太陽電池モジュール用裏面保護シートを構成しても良い。すなわち、表面保護シートにおいて用いることができる上述の各種材料を、裏面保護シートにおいても、用いることができる。特に、ポリエステル樹脂、およびガラスを好ましく用いることができる。
【0153】
また、裏面保護シートは、太陽光の通過を前提としないため、表面保護シートで求められていた透明性は必ずしも要求されない。そこで、太陽電池モジュールの機械的強度を増すために、あるいは、温度変化による歪、反りを防止するために、補強板を張り付けても良い。例えば、鋼板、プラスチック板、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)板等を好ましく使用することができる。
【0154】
また、本発明の太陽電池封止材が、上記太陽電池モジュール用裏面保護シートと一体化していることも本発明の好ましい態様の一つである。太陽電池モジュール用裏面保護シートと一体化することにより、モジュール組み立て時の太陽電池封止材および太陽電池モジュール用裏面保護シートのモジュールサイズへの裁断の短縮、双方のレイアップから一体化シートでのレイアップとなることの工程の短縮等の利点が得られる。
【0155】
一体化する場合の本発明の太陽電池封止材と太陽電池モジュール用裏面保護シートとの積層方法については特に制限はないが、キャスト成形機、押出シート成形機、インフレーション成形機、射出成形機等の公知の溶融押出機を用いて共押出して積層体を得る方法、あるいはあらかじめ成形された一方の層上に他方の層を溶融あるいは加熱ラミネートして積層体を得る方法が好ましい。また、適当な接着剤(例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(例えば、三井化学社製のアドマー、三菱化学社製のモディックなど)、不飽和ポリオレフィンなどの低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体(例えば、住化シーディエフ化学製のボンダインなど)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体またはこれらを含む接着性樹脂組成物など)を用いたドライラミネート法あるいはヒートラミネート法などにより積層してもよい。接着剤としては、120℃〜150℃程度の耐熱性があるものが好ましく使用され、ポリエステル系あるいはポリウレタン系接着剤などが好適なものとして例示される。また、両層の接着性を改良するために、例えば、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を用いても良い。
【0156】
太陽電池素子
本発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールにおける太陽電池素子は、半導体の光起電力効果を利用して発電できるものであれば特に制限はなく、たとえば、シリコン(単結晶系、多結晶系、非結晶(アモルファス)系)太陽電池、化合物半導体(III−V族、II−VI族、その他)太陽電池、湿式太陽電池、有機半導体太陽電池などを用いることができる。この中では発電性能とコストとのバランスなどの観点から、多結晶シリコン太陽電池が好ましい。
【0157】
シリコン、化合物半導体とも、太陽電池素子として優れた特性を有しているが、外部からの応力、衝撃等により破損しやすいことで知られている。本発明の太陽電池封止材は、柔軟性に優れているので、太陽電池素子への応力、衝撃等を吸収して、太陽電池素子の破損を防ぐ効果が大きい。従って、本発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールにおいては、本発明の太陽電池封止材からなる層が、直接太陽電池素子と接合されていることが望ましい。
【0158】
また、太陽電池封止材が熱可塑性を有していると、一旦太陽電池モジュールを作製した後であっても、比較的容易に太陽電池素子を取り出すことが可能であり、リサイクル性に優れている。本発明の太陽電池封止材の必須成分は熱可塑性を有しているので、太陽電池封止材全体としても熱可塑性を付与することが容易であり、リサイクル性の観点からも好ましい。
【0159】
発電設備
本発明の好ましい実施形態である太陽電池モジュールは、生産性、発電効率、寿命等に優れている。このため、この様な太陽電池モジュールを用いた発電設備は、コスト、発電効率、寿命等に優れ、実用上高い価値を有する。
【0160】
上記の発電設備は、家屋の屋根に設置する、キャンプなどアウトドア向けの移動電源として利用する、自動車バッテリーの補助電源として利用する等の、屋外、屋内を問わず長期間の使用に好適である。
【実施例】
【0161】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明の範囲はいかなる意味においても実施例により制限されない。
【0162】
(測定方法)
以下の実施例、比較例中においては、以下の方法で、諸特性の測定を行った。
・密度
190℃、2.16kg荷重におけるMFR測定後のストランドを、1時間かけて室温まで徐冷したのち、密度勾配管法により測定した。
【0163】
・融解ピーク温度
パーキンエルマー社製DSC7を用い、試料5mg程度を専用アルミパンに詰め、0℃から200℃までを320℃/minで昇温し、200℃で5分間保持したのち、200℃から0℃までを10℃/minで降温し、0℃でさらに5分間保持したのち、次いで10℃/minで昇温する際の吸熱曲線より溶融ピークのピーク頂点を融解ピーク温度として求めた。なお、DSC測定時に、複数のピークが検出される場合は、最も高温側で検出されるピークを、融解ピーク温度(Tm)とした。
【0164】
・MFR2
JIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定した。
【0165】
・分子量分布(Mw/Mn);エチレン系重合体(A)分析
分子量分布(Mw/Mn)は、Waters社製ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC−2000型を用い、以下のようにして測定した。分離カラムは、TSKgel GNH6− HTを2本およびTSKgel GNH6− HTLを2本であり、カラムサイズはいずれも直径7.5mm、長さ300mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mLとし、試料注入量は500μLとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0166】
・分子量分布(Mw/Mn);エチレン・α−オレフィン共重合体(C)分析
分子量分布(Mw/Mn)はWaters社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
分離カラムは、TSKgel GMH6−HT及びTSKgel GMH6−HTLであり、カラムサイズはそれぞれ内径7.5mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはo−ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500μリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106については東ソー社製を用い、1000≦Mw≦4×106についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。分子量計算は、ユニバーサル校正して、用いた各α−オレフィンに合わせエチレン・α−オレフィン共重合体に換算した値である。
【0167】
・金属残渣
エチレン系重合体(A)を湿式分解後、純水にて定容しICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−8100)にて、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、マグネシウムを定量化し、トータル量を金属残渣とした。
【0168】
・Si含有量
エチレン系重合体(A)の変性体を湿式分解後、純水にて定容しICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−8100)にて、ケイ素(Si)を定量化した。
【0169】
・ラジカル重合性不飽和化合物(B2)のグラフト基濃度
赤外線吸収スペクトル(IR)測定により、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)の吸収ピークの解析により行った。そのIR測定には、日本分光社製のFT/IR−470を用いて、フィルム状にしたポリマーを使用した。
【0170】
・遊離ラジカル重合性不飽和化合物(B2)の定量
試料とp−キシレンと水をガラス容器に入れ、加熱攪拌しながら試料を溶解した。その溶液に、メタノールを添加しポリマーを析出させ、ろ過にてポリマーとろ液を分離した。ろ液を濃縮し、水相に溶解した遊離ラジカル重合性不飽和化合物(B2)を、HPLCにてShim−Pack WAX−1(島津製作所製)を使用して定量分析を行った。
【0171】
・接着強度
ポリエチレンテレフタレート樹脂製のバックシート(リンテック(株)社製、リプレア)、銀を中央部にスパッタリングしたガラス板(以下、薄膜電極と略す。)の間に0.5mm厚みのシートサンプルを挟み、真空ラミネーター内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて真空減圧2分、13分間加熱し、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプル/バックシートの積層体を作成した。この積層体のシートサンプルを15mm幅に切り、各被着体(バックシート、薄膜電極、ガラス)との剥離強度を180度ピールにて測定した。測定には例えば、インストロン社製引張試験機Instron1123を用いて、180度ピールにてスパン間30mm、引張速度30mm/分で23℃にて測定を行い、3回の測定の平均値を採用した。
【0172】
・恒温恒湿試験
上記接着強度試験で作成した積層体の周囲をブチルゴムでシールし、さらに外装をアルミ製の枠で覆った模擬モジュールを、JIS C8917に準拠し、スガ試験機(株)社製XL75特殊仕様にて、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で上記接着強度用サンプルの促進試験を2000時間行った。得られた促進試験サンプルのガラスに対する接着強度試験を実施した。接着強度維持率は、初期の接着強度に対する維持率を示す。
【0173】
・高強度キセノン照射試験
上記積層体の周囲をブチルゴムでシールし、さらに外装をアルミ製の枠で覆った模擬モジュールを、JIS C8917に準拠し、スガ試験機(株)社製XL75特殊仕様にて、ブラックパネル温度(BPT)83℃、湿度50%の条件で上記接着強度用サンプルの促進試験を2000時間行った。得られた促進試験サンプルのガラスに対する接着強度試験を実施した。接着強度維持率は、初期の接着強度に対する維持率を示す。
【0174】
・ヒートサイクル試験
上記積層体の周囲をブチルゴムでシールし、さらに外装をアルミ製の枠で覆った模擬モジュールを、JIS C8917に準拠し、スガ試験機(株)社製XL75特殊仕様にて、試験槽内温度を−40から90℃まで2時間以内で昇温、降温を繰り返し、−40℃および90℃到達後1時間保持し、昇温降温と温度保持の6時間のサイクルの条件下で、上記接着強度用サンプルの促進試験を200回(1200時間)行った。得られた促進試験サンプルのガラスに対する接着強度試験を実施した。接着強度維持率は、初期の接着強度に対する維持率を示す。
【0175】
・絶縁破壊抵抗
JIS−K6911に準拠し、厚さ0.4mmの試験片を用いて23℃で測定した。
なお、試験片の作成は、200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力シートを成形した。0.4mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を2分程度し、10MPaで1分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、3分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板は5mm厚の真鍮板を用いた。
【0176】
・ゲル分率
押出機にて得られたシートよりサンプル1gを採取し、沸騰キシレンでのソックスレー抽出を10時間行い、30メッシュでのステンレスメッシュでろ過後、メッシュを110℃にて8時間減圧乾燥を行い、メッシュ上の残存量より算出した。
【0177】
・電極腐食性1
上記積層体の周囲をブチルゴムでシールし、さらに外装をアルミ製の枠で覆った模擬モジュールの恒温恒湿試験後のサンプルの銀電極の状態を目視評価し、評点を以下のとおりとした。
○:腐食による変化無し
△:腐食による変化が若干見られる
×:腐食により電極が茶褐色に変化
【0178】
・電極腐食性2
銀を中央部にスパッタリングしたガラス板(以下、薄膜電極と略す。)の間に0.5mm厚みのシートサンプルを挟み、真空ラミネーター内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて真空減圧2分、13分間加熱し、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルの積層体を作成した。この積層体を恒温恒湿試験後、サンプルの銀電極の状態を目視評価し、評点を以下のとおりとした。
○:腐食による変化無し
△:腐食による変化が若干見られる
×:腐食により電極が茶褐色に変化
【0179】
・水蒸気透過率
JIS−Z0208およびJIS−K7129に準拠し、23℃、90%湿度の条件下でカップ法での水蒸気透過率を、厚さ0.5mmの試験片を用いて測定した。
【0180】
[固体触媒成分の調製]
特開平9−328520記載の方法にて、メタロセン化合物であるジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを含有する固体触媒成分の調整を行った。1g当りのジルコニウム含有量は2.3mgであった。
【0181】
[予備重合触媒の調製]
同様に特開平9−328520記載の方法にて、上記で得られた固体触媒4gを用いて1−ヘキセンとエチレンからなる予備重合触媒を得た。固体触媒1g当りのジルコニウム含有量は2.2mgであり、3gのポリエチレンを予備重合された予備重合触媒を得た。
【0182】
[重合例1]エチレン系重合体(A)1
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、脱水精製したヘキサン800ミリリットルを装入し、系内をエチレンと水素の混合ガス(水素含量;0.7モル%)で置換した。
【0183】
次いで系内を60℃とし、トリイソブチルアルミニウム1.5ミリモル、1−ヘキセン200ml、および上記のように調製した予備重合触媒を、ジルコニウム原子換算で0.015mg原子を添加した。
【0184】
その後、上記と同様の組成を有するエチレンと水素の混合ガスを導入し、全圧3MPaGとして重合を開始した。その後、混合ガスのみを補給し、全圧を3MPaGに保ち、70℃で1.5時間重合を行った。
重合終了後、ポリマーを濾過し、80℃で1晩乾燥し、エチレン系重合体(A)1を101g得た。
【0185】
上記重合を繰り返し得られたエチレン系重合体(A)1を、サーモ・プラスチック(株)社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にて、ダイス温度=190℃条件下で、エチレン系重合体(A)1のペレットであるエチレン系重合体(A)1‘を得た。結果を表3に示す。
【0186】
[重合例2]
ヘキサンの量を795ミリリットル、1−ヘキセンの量を205ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)2は95gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)2‘を得た。結果を表3に示す。
【0187】
[重合例3]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.5モル%、ヘキサンの量を870ミリリットル、1−ヘキセンの量を230ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)3は130gであった。結果を表3に示す。さらに、同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)3‘を得た。結果を表3に示す。
【0188】
[重合例4]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.2モル%、ヘキサンの量を910ミリリットル、1−ヘキセンの量を90ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)4は145gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)4‘を得た。結果を表3に示す。
【0189】
[重合例5]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.8モル%、ヘキサンの量を780ミリリットル、1−ヘキセンの量を220ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)5は78gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)5‘を得た。結果を表3に示す。
【0190】
[重合例6]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.2モル%、ヘキサンの量を915ミリリットル、1−ヘキセンの量を85ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)6は146gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)6‘を得た。結果を表3に示す。
【0191】
[重合例7]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.2モル%、ヘキサンの量を830ミリリットル、1−ヘキセンの量を179ミリリットルに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)7は94gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)7‘を得た。結果を表4に示す。
【0192】
[重合例8]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.3モル%に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)8は84gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)3‘を得た。結果を表4に示す。
【0193】
[重合例9]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を1.0モル%に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)9は145gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)9‘を得た。結果を表4に示す。
【0194】
[重合例10]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を1.3モル%に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)10は162gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)10‘を得た。結果を表4に示す。
【0195】
[重合例11]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を1.6モル%、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.013mg原子に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)11は151gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)11‘を得た。結果を表4に示す。
【0196】
[重合例12]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を2.0モル%、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.012mg原子に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)12は151gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)12‘を得た。結果を表4に示す。
【0197】
[重合例13]
水素の混合なくエチレンのみの供給に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)13は85gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)12‘を得た。結果を表4に示す。
【0198】
[重合例14]
ヘキサンの量を820ミリリットル、1−ヘキセンの量を180ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.024mg原子に代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)14は125gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)14‘を得た。結果を表5に示す。
【0199】
[重合例15]
ヘキサンの量を830ミリリットル、1−ヘキセンの量を170ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.013mg原子、重合時間を0.75時間に代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)15は85gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)15‘を得た。結果を表5に示す。
【0200】
[重合例16]
固体触媒成分のジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドのトルエン溶液(Zr=0.0103ミリモル/ミリリットル)を5.55ミリリットル、ビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリドのトルエン溶液(Zr=0.0103ミリモル/ミリリットル)を5.55ミリリットルとし固体触媒成分を得て予備重合を行った予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.017mg原子、ヘキサンの量を820ミリリットル、1−ヘキセンの量を180ミリリットル、重合時間を3時間に代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)16は165gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)16‘を得た。結果を表5に示す。
【0201】
[重合例17]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.8モル%、ヘキサンの量を750ミリリットル、1−ヘキセンの量を250ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.008mg原子、全圧を4MPaGに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)17は150gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)17‘を得た。結果を表5に示す。
【0202】
[重合例18]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.2モル%、ヘキサンの量を950ミリリットル、1−ヘキセンの量を50ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.045mg原子、全圧を1.2MPaGに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)18は80gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)18‘を得た。結果を表5に示す。
【0203】
[重合例19]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.8モル%、ヘキサンの量を750ミリリットル、1−ヘキセンの量を250ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.008mg原子、全圧を4MPaGに代えた以外は、重合例1と同様に行った。その後、重合液に1Nの塩酸を5ミリリットル、蒸留水500ミリリットル加え、脱灰処理を行い、水分を分離した後、次いで蒸留水で回収水のpHが中和されるまで中和処理を行った。その後、ポリマーを濾過し、80℃で1晩乾燥した。エチレン系重合体(A)19は150gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)19‘を得た。結果を表5に示す。
【0204】
[重合例20]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.2モル%、ヘキサンの量を945ミリリットル、1−ヘキセンの量を55ミリリットル、予備重合触媒をジルコニウム原子換算で0.055mg原子、全圧を1MPaGに代えた以外は、重合例1と同様に行った。エチレン系重合体(A)20は70gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)20‘を得た。結果を表5に示す。
【0205】
[重合例21]
エチレンと水素の混合ガスの水素含量を0.7モル%に代えた以外は、重合例7と同様に行った。エチレン系重合体(A)21は105gであった。同様の重合を繰り返した後、単軸押出機にて、エチレン系重合体(A)21‘を得た。結果を表5に示す。
【0206】
[エチレン・α−オレフィン共重合体の合成例1]
攪拌羽根を備えた実質内容積1Lの満液のステンレス製重合器(攪拌回転数=500rpm)を用いて、重合温度105℃で、連続的にエチレンと1−ブテンとの共重合を行った。重合器側部より液相へ毎時、ヘキサンを1.60L、エチレンを56g、1-ブテンを170gの速度で、また水素を1.4NL、[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを0.0004mmol、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを0.004mmol、トリイソブチルアルミニウムを0.2mmolの速度で連続的に供給し、重合圧力3.8MPaGになるように保持し共重合反応を行った。なお、連続的に得られたエチレン/1−ブテン共重合体のヘキサン溶液をホールドドラムに貯め、そこに触媒失活剤として、毎時、メタノールを0.2mlで添加し重合を停止した。
得られたエチレン/1−ブテン共重合体のヘキサン溶液を、1時間毎に抜き出し2Lのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、10時間乾燥しエチレン/1−ブテン共重合体を得た。収量が毎時47.3gであった。
物性を表13に示す。
【0207】
[エチレン・α−オレフィン共重合体の合成例2]
合成例1の1-ブテンをプロピレン300g、ヘキサンを1.4L、[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを0.001mmol、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを0.01mmolにした以外は、合成例1と同様に行い、エチレン/プロピレン共重合体を得た。収量が毎時41.3gであった。
物性を表13に示す。
【0208】
[エチレン・α−オレフィン共重合体の合成例3]
合成例1の1-ブテンを1−オクテン80g、ヘキサンを1.8L、[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドを0.0002mmol、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを0.002mmolにした以外は、合成例1と同様に行い、エチレン/1−オクテン共重合体を得た。収量が毎時46.7gであった。
物性を表13に示す。
【0209】
[エチレン・α−オレフィン共重合体の合成例4]
合成例2のプロピレンを320gにした以外は、合成例2と同様に行い、エチレン/プロピレン共重合体を得た。収量が毎時39.2gであった。
物性を表13に示す。
【0210】
[製造例1]
エチレン系重合体(A)3を10重量部、エチレン系重合体(A)3‘を90重量部に、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)1としてγーメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを2重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.05重量部をドライブレンドした。その後、サーモ・プラスチック(株)社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にて、ダイス温度=210℃条件下で、エチレン系重合体(A)の変性体1を得た。結果を表6に示す。
【0211】
[製造例2]
エチレン系重合体(A)3を50重量部、エチレン系重合体(A)3‘を50重量部に、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)1としてγーメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを5重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.2重量部に代えた以外は製造例1と同様にして、エチレン系重合体(A)の変性体2を得た。結果を表6に示す。
【0212】
[製造例3]
エチレン系重合体(A)3を10重量部、エチレン系重合体(A)3‘を90重量部に、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)として無水マレイン酸を0.3重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.03重量部をドライブレンドした。その後、サーモ・プラスチック(株)社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にて、ダイス温度=230℃条件下で、エチレン系重合体(A)の変性体3を得た。結果を表6に示す。
【0213】
[製造例4]
エチレン系重合体(A)3を50重量部、エチレン系重合体(A)3‘を50重量部に、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)として無水マレイン酸を1.3重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.1重量部に代えた以外は製造例3と同様にして、エチレン系重合体(A)の変性体4を得た。結果を表6に示す。
【0214】
[実施例1]
エチレン系重合体(A)1‘を100重量部に、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)1としてγーメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)として無水マレイン酸を0.5重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.05重量部、紫外線吸収剤(D)として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4重量部、ラジカル捕捉剤(E)としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(を0.1重量部、耐熱安定剤(F)としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部を添加し、ドライブレンドし、エチレン系重合体のブレンド物を得た。
【0215】
次いで、得られたエチレン系重合体のブレンド物より、サーモ・プラスチック(株)社製単軸押出機(スクリュー径20mmφ・L/D=28)にコートハンガー式T型ダイス(リップ形状;270×0.8mm)を装着してダイス温度=210℃条件下、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで成形を行い、エチレン性不飽和シラン化合物(B)1で変性した変性体を含有するエチレン系樹脂組成物からなる厚み=500μmのシートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0216】
[実施例2]
エチレン系重合体(A)1‘を98重量部、エチレン系重合体(A)3を2重量部、予めドライブレンドし、そのブレンド物に各種添加剤を実施例1同様に添加し、さらにドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0217】
[実施例3]
エチレン系重合体(A)3を100重量部に各種添加剤を実施例1同様に添加し、ドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0218】
[実施例4]
エチレン系重合体(A)3を80重量部、エチレン系重合体(A)の変性体1を20重量部、予めドライブレンドし、そのブレンド物にラジカル重合性不飽和化合物(B1)1以外の各種添加剤を実施例1同様に添加し、さらにドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0219】
[実施例5]
エチレン系重合体(A)の変性体1をエチレン系重合体(A)の変性体2に代えた以外は実施例4と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0220】
[実施例6]
エチレン系重合体(A)3を80重量部、エチレン系重合体(A)の変性体3を20重量部、予めドライブレンドし、そのブレンド物にラジカル重合性不飽和化合物(B2)以外の各種添加剤を実施例1同様に添加し、さらにドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0221】
[実施例7]
エチレン系重合体(A)の変性体3をエチレン系重合体(A)の変性体4に代えた以外は実施例6同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0222】
[実施例8]
エチレン系重合体(A)の変性体1を50重量部、エチレン系重合体(A)の変性体3を50重量部、予めドライブレンドし、そのブレンド物にラジカル重合性不飽和化合物(B1)1及びラジカル重合性不飽和化合物(B2)以外の各種添加剤を実施例1同様に添加し、さらにドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表7に示す。
【0223】
[実施例9]
エチレン系重合体(A)2‘を90重量部、エチレン系重合体(A)3を10重量部に代えた以外は実施例2と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表8に示す。
【0224】
[実施例10]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)3‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表8に示す。
【0225】
[実施例11]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)4‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表8に示す。
【0226】
[比較例1]
エチレン系重合体(A)5‘を100重量部、エチレン系重合体(A)3を0重量部に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表8に示す。結果は、恒温恒湿試験、高強度キセノン照射試験、ヒートサイクル試験後の接着強度維持率が低下した。
【0227】
[比較例2]
エチレン系重合体(A)6‘を100重量部、エチレン系重合体(A)3を0重量部に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表8に示す。結果、本ラミネート加工条件では、エチレン系樹脂組成物が溶融しにくく、初期の接着性が発現しなかった。
【0228】
[実施例12]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)7‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表9に示す。
【0229】
[実施例13]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)8‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表9に示す。
【0230】
[実施例14]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)9‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表9に示す。
【0231】
[実施例15]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)10‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表9に示す。
【0232】
[実施例16]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)11‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表9に示す。
【0233】
[比較例3]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)12‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シート成形を行った。しかし、シートに腰がなく、また、第1冷却ロールへの粘着が激しく、厚みが500μmの均一なシートを得ることができず、接着性の評価には至らなかった。
【0234】
[比較例4]
エチレン系重合体(A)13‘を100重量部、エチレン系重合体(A)3を0重量部に代えた以外は実施例9と同様にして、シート成形を行った。しかし、押出機のトルクがオーバーし押出シート成形が不可能だったため、シートを得ることができなかった。
【0235】
[実施例17]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)14‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表10に示す。
【0236】
[実施例18]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)15‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表10に示す。
【0237】
[比較例5]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)16‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シート成形を行った。しかし、第1冷却ロールへの粘着が激しく、厚みが500μmの均一なシートを得ることができず、接着性の評価には至らなかった。
【0238】
[実施例19]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)17‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表11に示す。
【0239】
[実施例20]
エチレン系重合体(A)2‘をエチレン系重合体(A)18‘に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表11に示す。
【0240】
[比較例6]
エチレン系重合体(A)19‘を100重量部、エチレン系重合体(A)3を0重量部に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表11に示す。結果、脱灰時の極微量の酸が残留していたため、銀電極の腐食を起こした。
【0241】
[比較例7]
エチレン系重合体(A)20‘を100重量部、エチレン系重合体(A)3を0重量部に代えた以外は実施例9と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表11に示す。結果、金属残渣が多く、絶縁破壊抵抗が低下した。
【0242】
[実施例21]
エチレン系重合体(A)1‘を90重量部、エチレン系重合体(A)3を10重量部、予めドライブレンドし、そのブレンド物にラジカル重合性不飽和化合物(B1)1であるγーメタクリロキシプロピルトリメトキシシランをラジカル重合性不飽和化合物(B1)2としてビニルトリメトキシシランに代えた以外は実施例4と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0243】
[実施例22]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2であるビニルトリメトキシシランと有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例21と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0244】
[実施例23]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2をラジカル重合性不飽和化合物(B1)1にし且つ添加量を、有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例21と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0245】
[実施例24]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)1、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)および有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例23と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0246】
[実施例25]
有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例24と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0247】
[実施例26]
ラジカル重合性不飽和化合物(B2)および有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例25と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0248】
[実施例27]
エチレン系重合体(A)21‘を90重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2を2重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)を0.2重量部、過酸化物を0.03重量部に代えた以外は実施例21と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0249】
[実施例28]
エチレン系重合体(A)21‘を90重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2を4重量部に代えた以外は実施例21と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。
【0250】
[比較例8]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2と有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例22と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。結果、ゲル分率が高くなり、接着強度が低下した。
【0251】
[比較例9]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2と有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例22と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。結果、シート中のSi含量が少なく、ガラス、バックシートへの接着性が低下した。
【0252】
[比較例10]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2と有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例24と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。結果、ゲル分率が高くなり、接着強度が低下した。
【0253】
[比較例11]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2と有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例24と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。結果、シート中のマレイン酸グラフト基濃度が小さく、ガラス、バックシート、薄膜電極への接着性が低下した。
【0254】
[比較例12]
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2と有機過酸化物の添加量を代えた以外は実施例24と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表12に示す。結果、遊離マレイン酸濃度が高く、銀電極が腐食した。
【0255】
[実施例29]
エチレン系重合体(A)21‘を70重量部、エチレン系重合体(A)3を10重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体1を20重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)2を2重量部、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)を0.2重量部に代えた以外は実施例1と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表14に示す。
【0256】
[実施例30]
エチレン系重合体(A)21‘を0重量部、エチレン系重合体(A)3を10重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体3を90重量部に代えた以外は実施例28と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表14に示す。
【0257】
[実施例31]
エチレン系重合体(A)21‘を85重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体2を5重量部に代えた以外は実施例28と同様にして、シートを得た。得られたシートについて、評価を行った。結果を表14に示す。
【0258】
[比較例13]
エチレン系重合体(A)21‘を85重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体4を5重量部に代えた以外は実施例28と同様にして、シート成形を行った。しかし、第1冷却ロールへの粘着が激しく、厚みが500μmの均一なシートを得ることができず、接着性の評価には至らなかった。
【0259】
[比較例14]
エチレン系重合体(A)21‘を0重量部、エチレン系重合体(A)3を8重量部、エチレン・α−オレフィン共重合体1を92重量部に代えた以外は実施例28と同様にして、シート成形を行った。しかし、第1冷却ロールへの粘着が激しく、厚みが500μmの均一なシートを得ることができず、接着性の評価には至らなかった。
【0260】
[実施例32]
太陽電池モジュール用裏面封止材として、第1ロール面の内側にポリエチレンテレフタレート樹脂製のバックシート(i)(リンテック(株)社製、リプレア)をセットし、実施例27のエチレン系樹脂組成物との押出ラミ成形を行った。結果、バックシートとの接着性、銀電極、ガラスへの接着性も実施例27と同等の性能を有する太陽電池封止材と太陽電池モジュール用裏面封止材との一体化した太陽電池封止材を得た。
【0261】
[実施例33]
太陽電池モジュール用裏面封止材として、第1ロール面の内側にポリエチレンテレフタレート樹脂製のバックシート(i)(リンテック(株)社製、リプレア)をセットし、実施例29のエチレン系樹脂組成物との押出ラミ成形を行った。結果、バックシートとの接着性、銀電極、ガラスへの接着性も実施例29と同等の性能を有する太陽電池封止材と太陽電池モジュール用裏面封止材との一体化した太陽電池封止材を得た。
【0262】
[実施例34]
実施例32で作成した太陽電池封止材と太陽電池モジュール用裏面封止材とを一体化した太陽電池封止材の太陽電池封止材面/市販のEVA製太陽電池封止材(三井化学ファブロ(株)社製、ソーラーEVA)/ガラスの構成で真空ラミネーター内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて真空減圧2分、13分間加熱し、ガラス/EVA/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用裏面封止材のラミ積層体を作成し、次いで150℃の空気循環式オーブンにて60分間放置し、EVAの架橋を行いガラス/EVA/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用裏面封止材の積層体を得た。この積層体の太陽電池封止材シートサンプルを15mm幅に切り、EVAとの剥離強度を180度ピールにて測定した。結果、EVAと太陽電池封止材の接着強度が十分発現し、太陽電池封止材の基材破壊を起こした。
【0263】
[実施例35]
実施例33で作成した太陽電池封止材を実施例33と同様にしてガラス/EVA/太陽電池封止材/太陽電池モジュール用裏面封止材の積層体を得た。この積層体の太陽電池封止材シートサンプルを15mm幅に切り、EVAとの剥離強度を180度ピールにて測定した。結果、EVAと太陽電池封止材の接着強度が十分発現し、太陽電池封止材の基材破壊を起こした。
【0264】
[実施例36]
実施例2の太陽電池封止材を、銀を中央部にスパッタリングしたガラス板(以下、薄膜電極と略す。)の間に0.5mm厚みのシートサンプルを挟み、真空ラミネーター内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて真空減圧2分、13分間加熱し、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルの積層体を作成した。本サンプルを、恒温恒湿試験機に投入し、2000hr後の銀電極の状態を確認した。結果、銀電極は投入初期と変わらず腐食が発生していなかった。また、水蒸気透過率の結果を表15に示す。
【0265】
[実施例37]
実施例28の太陽電池封止材を、実施例36と同様に、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルの積層体を作成した。本サンプルを、恒温恒湿試験機に投入し、2000hr後の銀電極の状態を確認した。結果、銀電極は投入初期と変わらず腐食が発生していなかった。また、水蒸気透過率の結果を表15に示す。
【0266】
[実施例38]
実施例27の太陽電池封止材を、実施例36と同様に、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルの積層体を作成した。本サンプルを、恒温恒湿試験機に投入し、2000hr後の銀電極の状態を確認した。結果、銀電極は投入初期と変わらず腐食が発生していなかった。また、水蒸気透過率の結果を表15に示す。
【0267】
[比較例15]
市販のEVA製太陽電池封止材(三井化学ファブロ(株)社製、ソーラーEVA)を、銀を中央部にスパッタリングしたガラス板(以下、薄膜電極と略す。)の間に0.5mm厚みのシートサンプルを挟み、真空ラミネーター内に仕込み、150℃に温調したホットプレート上に載せて真空減圧2分、13分間加熱し、薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルのラミ積層体を作成した。次いで150℃の空気循環式オーブンにて60分間放置し、EVAの架橋を行い薄膜電極スパッタガラス/シートサンプルを作成した。本サンプルを、恒温恒湿試験機に投入し、2000hr後の銀電極の状態を確認した。結果、銀電極は投入初期と変わり若干の腐食が発生していた。また、水蒸気透過率の結果を表15に示す。
【0268】
【表3】

【0269】
【表4】

【0270】
【表5】

【0271】
【表6】

【0272】
【表7】

【0273】
【表8】

【0274】
【表9】

【0275】
【表10】

【0276】
【表11】

【0277】
【表12】

【0278】
【表13】

【0279】
【表14】

【0280】
【表15】

【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明は、ガラス、バックシート、薄膜電極との接着性、電気絶縁性、透明性、成形性およびプロセス安定性に優れるエチレン系樹脂組成物に関し、さらにこれを用いた太陽電池封止材に関する。
【0282】
本発明は、さらに、この様な太陽電池封止材を用いた太陽電池封止用シート、および、それら封止材および/または封止用シートを用いた太陽電池モジュールに関する。
【0283】
また、本発明の太陽電池封止材は、透湿性にも優れ、薄膜用太陽電池モジュールの太陽電池封止材、結晶型太陽電池モジュールの裏面側の太陽電池封止材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件a)〜e)を同時に満たすエチレン系重合体(A)を、
エチレン性不飽和シラン化合物からなるラジカル重合性不飽和化合物(B1)と、
水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルおよびカルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるラジカル重合性不飽和化合物(B2)で、
変性して得られる変性体を含有するエチレン系樹脂組成物。
a)密度が900〜940kg/m3
b)DSCに基づく融解ピークが90〜125℃
c)JIS K−6721に準拠して190℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレ−ト(MFR2)が0.1〜100g/10分
d)Mw/Mnが1.2〜3.5
e)金属残渣が0.1〜50ppm
【請求項2】
(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)
から選ばれる変性体と、
を含有する請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(6)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(1)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)で変性して得られる変性体(3)
から選ばれる変性体と、
を含有する請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
(i)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(5)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B1)およびラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(6)
から選ばれる変性体と、
(ii)エチレン系重合体(A)をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(2)、もしくは、エチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物をラジカル重合性不飽和化合物(B2)で変性して得られる変性体(4)
から選ばれる変性体と、
を含有する請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン・α−オレフィン共重合体(C)が、以下の要件f)を満たすことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
f)密度が850kg/m3以上、895kg/m3未満
【請求項6】
前記変性体を得る反応が、エチレン系重合体(A)もしくはエチレン系重合体(A)とエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の混合物と、
ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)と、
有機過酸化物、
を押出溶融変性して成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性体を得る反応に用いるエチレン系重合体(A)が、エチレン系重合体(A)のパウダーであることを特徴とする請求項6に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記変性体を得る反応に用いるエチレン系重合体(A)が、エチレン系重合体(A)のパウダーとペレットの混合物であることを特徴とする請求項6に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
前記変性体を得る反応が、ラジカル重合性不飽和化合物(B1)および/またはラジカル重合性不飽和化合物(B2)と有機過酸化物が予めエチレン系重合体(A)のパウダーに含浸したものと、エチレン系重合体(A)のペレットの混合物、の存在下で成されることを特徴とする請求項6に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
前記エチレン系樹脂組成物の赤外線吸収スペクトルで測定した、ラジカル重合性不飽和化合物(B2)起因のグラフト基濃度が、0.05〜5.0重量%の範囲にあり、遊離ラジカル重合性化合物(B2)の量が500ppm以下であり、かつ、ゲル分率が30%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項11】
前記ラジカル重合性不飽和化合物(B2)が、不飽和カルボン酸またはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項12】
紫外線吸収剤(D)、ラジカル捕捉剤(E)、耐熱安定剤(F)から選ばれる少なくとも1種の添加剤をさらに含有する請求項1〜11のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のエチレン系樹脂組成物からなる太陽電池封止材。
【請求項14】
前記エチレン系樹脂組成物がシート状であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
【請求項15】
太陽電池モジュール用裏面封止材と一体化していることを特徴とする請求項13または14に記載の太陽電池封止材。
【請求項16】
請求項13〜15に記載の太陽電池封止材を用いて得られる太陽電池モジュール。
【請求項17】
請求項13〜15に記載の太陽電池封止材を用いて得られる薄膜型太陽電池モジュール。
【請求項18】
請求項13〜15に記載の太陽電池封止材を裏面側の太陽電池封止材として用いて得られる結晶型太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2011−12243(P2011−12243A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238654(P2009−238654)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】