説明

エチレン重合法

エチレン重合法が開示される。2つのスラリー反応領域においてチーグラ−ナッタ触媒系の存在下で重合する。大部分のポリエチレン(70〜95重量%)が一方の領域で生成され、小分率は他方の領域で生成される。大分率の重量平均分子量に対する小分率の重量平均分子量の比は、8:1を超える。得られるポリエチレンブレンドは、高い溶融強度および高い押出物のスウェルの両方を有するべきであり、ブロー成形用途に有用であろう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、2つのスラリー反応領域においてチーグラ−ナッタ触媒系の存在下でエチレンを重合して、高い溶融強度および高い押出物のスウェルを有するポリエチレンを生成する方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
ポリエチレンは、製造されるポリマーを最大の体積にするのに役立ってきたという望ましい特性を有する。チーグラ−ナッタ触媒はポリオレフィン製造の軸であり、スラリー重合、溶液重合、および気相重合に用いられる。ブロー成形等のある種の用途では、注意深くバランスの取れたレオロジー特性が要求され、改善された特性を有するポリエチレンを開発するための努力が続けられている。
【0003】
多くのブロー成形用途に重要な2つの特性は、溶融強度および押出物のスウェルである。溶融強度は、パリソンが型閉および膨脹の前に形成されているときにどれだけ変形および垂下するかを決定する。溶融物がダイを離れるときダイによって溶融物に付与された圧力が解放されると、溶融物は膨らむ。溶融物はダイを離れるときに伸び、このパリソンの垂下がパリソンの寸法を左右し、したがって溶融物のスウェルに影響を及ぼす。高い溶融強度および高い押出物のスウェルが望ましいが、一般に、溶融強度が増大するにつれて押出物のスウェルは低下する。樹脂のスウェルが小さすぎると、ブロー成形ボトルの取手等、金型の端にまで適正に注入することが困難または不可能になる場合がある。したがって、一般には、押出物のスウェルと溶融強度のバランスをとって、物理特性および加工性の許容可能な組合せを提供する。
【0004】
いくつかのブロー成形ポリエチレングレードは酸化クロム(Phillips)またはシングルサイト触媒から調製され、高レベルの長鎖分枝をポリエチレンに組み込むことによる。いくつかの特性は改善されるが、高レベルの長鎖分枝が他の特性を損なう場合がある。他の触媒のトレードオフを回避しつつチーグラ−ナッタ触媒系を用いて優れたブロー成形特性を有するポリエチレンを調製することができることが望ましいであろう。例えば、好ましくは、長鎖分枝に起因する物理特性の低下ならびにシングルサイト触媒の加工性の制限およびコスト制限を回避する。
【0005】
1つの可能性のある解決策は、ポリエチレンを架橋することである。例えば、米国特許第5,486,575号では、有機過酸化物を用いることによってクロム触媒から調製されるポリエチレン樹脂の特性を改善する。米国特許第4,390,666号および第4,603,173号では、過酸化物を使用して高分子量成分および低分子量成分を含むポリエチレンブレンドを架橋する。米国特許第6,706,822号では、過酸化物を幅広い分子量分布を有するポリエチレンとともに使用して溶融物のスウェルを低減する。米国特許第5,486,575号では、過酸化物をクロム触媒によって調製されるポリエチレンとともに使用する。過酸化物を用いて架橋することにより、いくつかの特性を改善することができるが、このアプローチには問題点がある。生成されるラジカルが他の添加剤と有害に相互作用する場合がある。架橋がレオロジー特性に及ぼす影響を予測するのは困難である。同様の触媒技術を使用して樹脂を生成する場合でも、結果は樹脂によって大幅に変化することが報告されている。過酸化物は余計な成分を組成物に加え、注意深い取り扱いおよび貯蔵を必要とするため、コストを増加させる。過酸化物を用いずに特性を改善することが望ましいであろう。
【0006】
米国特許第4,336,352号、第5,422,400号および第6,743,863号に開示されている特性を改善するための別のアプローチは、3つの樹脂成分を含むブレンドを使用している。ブレンドは、三段重合で作製することができる。米国特許第4,336,352号には、高分子量ポリエチレンと低分子量ポリエチレンの混合物(または多段重合法で生成されるブレンド)が、一貫した品質を有するブロー成形ボトルを得るのが困難な程に低いダイスウェルを有することが記載されている。その解決策として、三段重合が挙げられる。米国特許第5,422,400号には、二成分混合物によるそれまでのアプローチが、最小固有粘度を有する超高分子量ポリエチレンを使用する必要性、または30℃未満の温度でそのようなポリマーを調製する必要性等の重要な制限を有することが記載されている。該アプローチでは、三段重合を用いることによってこれらの制限を克服している。不都合なことに、三成分ブレンドまたは三段重合は複雑であり、さらなる設備を必要とする。
【0007】
二段重合または一段重合でも生成されるポリエチレンをブロー成形することができる。例えば、米国特許第6,878,454号は、一段から多段まで種々の方法を用いて調製されるバイモーダルポリエチレンから調製されるフィルムを教示している。ポリエチレンは、50重量%を超える高分子量成分を有し、一定の低い溶融温度で押出可能である。溶融強度およびダイスウェルは開示されていないが、アプローチが市販の樹脂を製造するのに使用されるものと類似しているため低いはずである。
【0008】
ブロー成形用ポリエチレンの特性を改善するための継続的な努力にもかかわらず、高い溶融強度および高い押出物のスウェルの両方を備えるポリエチレンを生成することができるが追加の設備および複雑な三段重合を必要としない方法が必要とされている。
【0009】
(発明の概要)
本発明はエチレン重合法である。直列に接続された2つのスラリー反応領域においてチーグラ−ナッタ触媒系の存在下でエチレンを重合する。大部分のポリエチレン(70〜95重量%)が一方の領域で生成され、小分率は他方の領域で生成される。大分率の重量平均分子量に対する小分率の重量平均分子量の比は、8:1を超える。得られるポリエチレンブレンドは、高い溶融強度および高い押出物のスウェルの両方を有するべきであり、ブロー成形用途に有用であろう。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、直列に接続された2つのスラリー反応領域からなる反応器においてチーグラ−ナッタ触媒系の存在下でエチレンを重合する方法である。各領域において幅広い分子量分布とすることが望ましい。好ましくは、各領域で調製されるポリエチレンの多分散度(Mw/Mn)は3を超える。このことはチーグラ−ナッタ触媒によって容易に達成される。対照的に、メタロセンをはじめとする多くのシングルサイト触媒は、より狭い分子量分布を有するポリエチレンを生じる。
【0011】
「チーグラ−ナッタ触媒系」により、本発明者らは、共触媒と組み合わせたチーグラ−ナッタ触媒を意味する。共触媒は、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライドからなる群から選択される。適切な共触媒として、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、トリイソブチルアルミニウムクロリド、ブチルアルミニウムジクロリド等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
「チーグラ−ナッタ触媒」により、本発明者らは、第4〜8族遷移金属、好ましくは第4〜6族遷移金属および該金属の原子価を満たす1つまたは複数の配位子を含んでいる遷移金属化合物を意味する。配位子は好ましくはハライド、アルコキシ、ヒドロキシ、オキソ、アルキル、およびこれらの組合せである。チーグラ−ナッタ触媒は、メタロセンまたは他のシングルサイト触媒を含まない。
【0013】
好ましくは、チーグラ−ナッタ触媒系は、共触媒、第4〜6族遷移金属化合物、およびマグネシウム化合物を含む。遷移金属化合物は、好ましくは、Ti、V、またはCr、最も好ましくはTiを含んでいる。そのような好ましい遷移金属化合物として、ハロゲン化チタン、チタンアルコキシド、ハロゲン化バナジウム、およびこれらの混合物、特に、TiCl3、TiCl4、VOCl3とTiCl4との混合物、およびVCl4とTiCl4との混合物が挙げられる。適切なマグネシウム化合物として、塩化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、ジエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム化合物、ならびに塩化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、および臭化ブチルマグネシウム等のハロゲン化有機マグネシウム(すなわち、グリニャール試薬)が挙げられる。
【0014】
1つの好ましいチーグラ−ナッタ触媒系が米国特許第4,464,518号に記載されている。触媒の調製は、ポリメチルヒドロシロキサンをグリニャール試薬と反応させることにより開始する。次いで、この有機マグネシウム−シロキサン反応生成物が有機アルミニウム化合物と反応して有機アルミニウム−シロキサン反応生成物を生じる。この「液体担持体」とハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物とが反応して、担持遷移金属混合物を生じる。遷移金属混合物およびアルキルアルミニウム共触媒がチーグラ−ナッタ触媒系を構成する。
【0015】
任意選択で、本発明の方法に水素を用いてポリオレフィンの分子量を調節する。必要とされる水素の量は、所望のポリオレフィンの分子量およびメルトフロー特性による。一般に、水素の量が増大するのにつれて、ポリオレフィンの分子量が低下し、メルトインデックスが増大する。多くの用途について、重合が水素の不在下で実施されると、ポリオレフィンのメルトインデックスは低すぎる。本方法は、少量の水素の使用により分子量およびメルトフロー特性の優れた制御を提供する。
【0016】
任意選択で、エチレンをα−オレフィンと共重合する。好ましいα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、およびこれらの混合物である。α−オレフィンは、スラリー重合の領域Aもしくは領域Bのいずれか、または両方の領域で使用することができる。
【0017】
通常は、加圧下で重合を行う。圧力は、好ましくは約0.5MPa〜約35MPaの範囲であり、より好ましくは約5MPa〜約25MPaの範囲である。
【0018】
エチレンを2つのスラリー反応領域で重合する。広い温度範囲にわたって重合を実施することができる。一般に、より低い温度は、より高い分子量およびより長い触媒寿命を与える。しかしながら、重合は発熱性であるため、より低い温度を得るのはより困難であり、かつよりコストがかかる。これら2つの因子のバランスを取る必要がある。好ましくは、温度は約0℃〜約110℃の範囲内である。より好ましい範囲は、約60℃〜約100℃である。
【0019】
触媒濃度は多くの因子による。しかしながら、好ましくは、濃度範囲は約0.01μmol/l〜約100μmol/lである。
【0020】
重合時間は、方法のタイプ、触媒濃度、および他の因子による。一般に、重合は数秒〜数時間内に完了する。
【0021】
本方法は、直列に接続された2つのスラリー反応領域である領域Aおよび領域Bからなる反応器でエチレンを重合する。直列の2つの反応器は、異なる分子量を有する2つのポリエチレンの良好な混合をもたらす。2つの反応器が並列であると、混合が劣る。スラリー重合において、スラリーを反応混合物として含む重合条件下で固体ポリエチレンを形成する。スラリーは、液体である不活性な希釈剤に懸濁された固体ポリエチレン粒子を含む。ポリエチレンは重合条件下で不溶性である。
【0022】
領域Aにおいて70〜95重量%のポリエチレンを生成する。好ましくは、80〜90重量%のポリエチレンを領域Aで生成する。領域Aで生成されるポリエチレンの重量平均分子量(Mw)に対する領域Bで生成されるポリエチレンのMwの比は、8:1を超え、好ましくは10:1を超え、より好ましくは20:1〜50:1である。各領域においてMwを、触媒、反応器温度、および水素の使用量の選択等の既知の技術によって調節することができる。典型的には領域Aの反応器が直列の最初に、続いて領域Bの反応器があるが、反対の順序も可能である。すなわち、より高分子量のポリエチレンは、典型的には、直列に接続された2つの反応器のうち第2反応器で生成されるが、第1反応器で生成される場合もある。
【0023】
本方法は、0.935g/cm3を超える、好ましくは0.946〜0.955g/cm3の密度を有するポリエチレンブレンドを生成する。密度は、α−オレフィンの使用量によって調節することができる。α−オレフィンの量の増大とともに、密度が低下する。ポリエチレンブレンドは二峰性の分子量分布を有する。加えて、重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は10を超え、好ましくは15を超える。
【0024】
好ましくは、ポリエチレンブレンドは、低レベルの長鎖分枝(LCB)を有し、より好ましくは0.5未満の長鎖分枝指数(LCBI)を有する。LCBIは、実質的に直鎖のポリエチレン中の少量の長鎖分枝の存在の尺度であり、R.ShroffおよびH.Mavridis、「A Long Chain Branching Index for Essentially Linear Polyethylenes」、Macromolecules 32 (1999) 8454に記載のように定義され、測定される。
【0025】
ポリマーを押し出す際、溶融物がダイを離れるときダイによって溶融物に付与された圧力が解放されると、溶融物が膨らむ。実質的にゼロのランド長さを有するダイを介して押し出される試料について押出物のスウェルの程度を定量化するために、ゼロランド(Zero−land)のダイスウェル(S0)を用いる。S0を測定するために、試料をInstron 3211キャピラリーレオメータ内に投入し、190℃で溶融し、次いで1025s-1の剪断速度で円筒ダイ(直径=0.034インチ;長さ=0.0インチ)を介して押し出す。押し出されたストランドの直径を、ダイの出口付近に取り付けられたLaserMikeマイクロメータ(Model 192−10)を用いて測定する。ダイスウェルはオリフィス直径に対するストランド直径の比として報告されている。ポリエチレンのスウェルが小さすぎると、ブロー成形ボトルの取手等、金型の端を適正に満たすのが困難または不可能になる場合がある。
【0026】
溶融強度は、パリソンが型閉および膨脹の前に形成されているときにどれだけ変形および垂下するかを決定する。溶融物はダイを離れるときに伸び、このパリソンの垂下がパリソンの寸法を左右する。高い溶融強度は多くの用途で必要とされる。溶融強度は、レオロジー的に測定することができ、2×104dyn/cm2の複素弾性率および190℃の温度においてメガポイズの複素粘度の値(ETA*)として報告することができる(J.M.DealyおよびK.F.Wissburn、「Melt Rheology and Its Role in Plastics Processing」、Van Nostrand Reinhold、New York、1990を参照のこと)。高い溶融強度および高い押出物のスウェルの両方が望ましいが、一般に、溶融強度の増大とともに押出物のスウェルは低下する。x軸上の溶融強度(ETA*)に対するy軸上の押出物のスウェル(S0)のプロットにおいて、本発明者らは、式、S0=2.75−0.5・log10(ETA*)にフィットする線を引くことができる。本発明者らは、本方法に由来するポリエチレンブレンドが高い溶融強度および高い押出物のスウェルの独特の優れた組合せを有するであろうし、また、該線より上に存在するであろうと考えるが、市販または他の既知のポリエチレンは溶融強度と押出物のスウェルの相対的に劣った組合せを有しており、該線より下に存在することが知られている。
【0027】
以下の実施例は本発明を単に説明するのみである。当業者であれば、本発明の精神および特許請求の範囲内にある多くの変種を認識するだろう。
【0028】
(実施例A)
(組成比の関数としてのMz/Mwの算出)
およそ50%の組成比(CR)(CRはブレンド中のAの割合である)を有するバイモーダルなチーグラ−ナッタ樹脂が典型的には約10未満のMz/Mwを有するということを基本的な前提に示すことができる。この目的で、成分AおよびBの二成分ブレンドを考察する。Mwをブレンドの標的重量平均分子量とする。本発明者らは、ブレンドの多分散性(Mz/MwおよびMw/Mn)がCRおよび二成分の分子量の比Mw,B/Mw,Aによってどの程度変化し得るかを試験することを望んでいる。したがって、本発明者らは、特定のCR、Mw、Mw,B/Mw,Aおよび(Mz/MwA、(Mw/MnA、(Mz/MwB、および(Mw/MnBを基準にして、ブレンドのMz/MwおよびMw/Mnの決定を試みる。ブレンドのMz/MwおよびMw/Mnが:
【0029】
【数1】

【0030】
で与えられることを示すことができる(例えば、L.H.Peebles,Jr.、「Molecular Weight Distributions in Polymers」、J.Wiley、1971を参照のこと)。
【0031】
説明のために、本発明者らは、(Mz/MwA=(Mw/MnA=4および(Mz/MwB=(Mw/MnB=4(チーグラ−ナッタ樹脂の代表的な値)と仮定する。式(1〜3)の算出結果は3つのレベルのMw,B/Mw,A(2、8、および20)について以下(表1参照)のようである。およそ40〜60%の代表的なCRについて、ブレンドのMz/Mwが約9未満であることに注意されたい。ブレンドのMz/Mwが10以上に到達するためには、約8を超えるMw,B/Mw,Aおよび約70〜95%のCRを有することが必要である。
【0032】
【表1】

【0033】
(実施例1)
(スラリー重合)
チーグラ−ナッタ触媒を米国特許第4,464,518号に従って調製する。触媒をヘキサン中に分散し、触媒スラリーを形成し、該スラリーを第1スラリー反応器においてトリエチルアルミニウム、ヘキサン、水素、エチレン、および1−ブテンを1MPaおよび80℃で連続的に合わせて第1ポリエチレンを得、これを揮発性物質の部分が除去されたフラッシュドラム内に移す。次いで混合物を第2反応器に連続して移す。ヘキサン、水素、1−ブテンおよびエチレンを1MPaおよび80℃で第2反応器内に連続的に供給し、第1反応器において調製されたポリエチレンと第2反応器において調製されたポリエチレンとのブレンドを得る。第1および第2反応器への供給を調整して第1反応器において80重量%のポリエチレンブレンドを作製して、第1反応器のポリエチレンのMwに対する第2反応器のポリエチレンのMwの比を20にする。ポリエチレンブレンドは、Mz/Mw>10の二峰性の分子量分布、および:
0>2.75−0.5・log10(ETA*
(式中、溶融強度の尺度であるETA*は190℃および2×104dyn/cm2の複素弾性率でレオロジー的に測定されたメガポイズの複素粘度である)で与えられる押出物のスウェルS0を有することが予想される。
【0034】
(比較例2)
実施例1と同様に2つの反応領域においてスラリー重合を実施する。第1および第2反応器への供給を調整して第1反応器において66重量%のポリエチレンブレンドを作製し、第1反応器のポリエチレンのMwに対する第2反応器のポリエチレンのMwの比を6.9にする。ポリエチレンブレンドは、二峰性の分子量分布を有し、密度=0.954g/cm3、メルトインデックス=0.3、およびMz/Mw=9.3である。測定された溶融強度は0.4メガポイズである。測定された押出物のスウェル、2.85は、実施例1の式を用いてETA*=0.4メガポイズを有するポリマーについて算出することができるS0の最大値(S0=2.95)未満である。したがって、本発明の方法は、比較的良好にバランスされた押出物のスウェルおよび溶融強度を有するポリエチレンブレンドを提供するべきである。
【0035】
(比較例3)
実施例1と同様に2つの反応領域においてスラリー重合を実施する。第1および第2反応器への供給を調整して第1反応器において47重量%のポリエチレンブレンドを作製し、第1反応器のポリエチレンのMwに対する第2反応器のポリエチレンのMwの比を28.5にする。ポリエチレンブレンドは、二峰性の分布を有し、密度=0.949、メルトインデックス=0.03およびMz/Mw=7.4である。測定された溶融強度は4.4メガポイズである。測定された押出物のスウェル、2.27は、ETA*=4.4メガポイズを有するポリマーについて算出することができるS0の最大値(S0=2.43)未満である。したがって、本発明の方法は、比較的良好にバランスされた押出物のスウェルおよび溶融強度を有するポリエチレンブレンドを提供するべきである。
【0036】
(比較例4)
市販のブロー成形グレードのポリエチレン(Petrothene LB 5003、Equistar Chemicals,LPから入手可能)を試験する。ポリエチレンは、密度=0.950g/cm3、メルトインデックス=0.32、およびMz/Mw=9.3である。測定された溶融強度は0.5メガポイズである。測定された押出物のスウェル、2.81は、ETA*=0.5メガポイズを有するポリマーについて算出することができるS0の最大値(S0=2.90)未満である。したがって、本発明の方法は、比較的良好にバランスの取れた押出物のスウェルおよび溶融強度を有するポリエチレンブレンドを提供するべきである。
【0037】
比較例は、市販または既知のポリエチレンブレンドが実施例1の式で定義される線より下にある溶融強度および押出物のスウェルの特性の組合せを有することを示す。対照的に、本発明の方法は、該線より上にある溶融強度および押出物のスウェルの特性の組合せを有するポリマーブレンドを一貫して提供するべきである。
【0038】
上記実施例は説明としてのみの意味を有する。以下の特許請求の範囲が本発明を定義する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された2つのスラリー反応領域である領域Aおよび領域Bからなる反応器においてチーグラ−ナッタ触媒系の存在下でエチレンを重合することを含む方法であって、ポリエチレンの70〜95重量%を領域Aで生成し、領域Aのポリエチレンの重量平均分子量に対する領域Bのポリエチレンの重量平均分子量の比が8:1を超え、二峰性の分子量分布、0.935g/cm3を超える密度、10を超える重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)、ならびに190℃および2×104dyn/cm2の複素弾性率でメガポイズの複素粘度の値(ETA*)として表される溶融強度において:
0>2.75−0.5・log10(ETA*
で定義される押出物のスウェル(S0)を有するポリエチレンブレンドを生成する方法。
【請求項2】
3〜C10のα−オレフィンをエチレンと共重合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
直列の反応器において領域Bが領域Aより先行する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
領域Aのポリエチレンの重量平均分子量に対する領域Bのポリエチレンの重量平均分子量の比が20:1〜50:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリエチレンブレンドが0.946〜0.955g/cm3の密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各領域を約60℃〜約100℃の温度で操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリエチレンブレンドが、15を超えるMz/Mwを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ポリエチレンブレンドが0.5未満の長鎖分枝指数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
チーグラ−ナッタ触媒系が、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライド、第4〜6族遷移金属化合物、およびマグネシウム化合物からなる群から選択される共触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第4〜6族遷移金属化合物がチタン化合物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チーグラ−ナッタ触媒系が、
a)トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライドおよびアルキルアルミニウムジハライドからなる群から選択される共触媒;ならびに
b)以下のもの:
1)ハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物と;
2)以下のもの:
(a)有機アルミニウム化合物;ならびに
(b)ポリメチルヒドロシロキサンおよび有機マグネシウムハライドの反応生成物;
の反応生成物を含む有機アルミニウム−シロキサン含有混合物
との反応生成物を含む担持遷移金属混合物
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ハロゲン含有第4〜6族遷移金属化合物が四塩化チタンである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2010−511739(P2010−511739A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539241(P2009−539241)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/021338
【国際公開番号】WO2008/066604
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】