説明

エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーの水分散液重合方法

水性媒体中のフルオロモノマーから、さらなる重合のための重合部位を形成する、ポリマー粒子の安定した分散を形成する、フルオロモノマーとの水性媒体中での重合を開始すること、およびエチレン、テトラフルオロエチレン、および改質用モノマーを共重合することにより、少なくとも15質量%のポリマー固体まで、さらなる重合を続けることによって、エチレンと、テトラフルオロエチレンおよび少なくとも2個の炭素原子を含む側鎖を有する改質用モノマーとのコポリマーを、少なくとも前述の水性媒体中の分散として、生成するための重合方法が提供され、前述のコポリマーは、ポリマー固体の総ポリマー含量の少なくとも60質量%を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマーを生成するための重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ETFEを生成するための、非水性重合媒体中、すなわちF−113(1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン)等の有機溶剤中における、エチレン(E)と、テトラフルオロエチレン(TFE)および少なくとも2個の炭素原子を有する側鎖を提供する少量のビニルモノマーとの共重合を開示している。本ビニルモノマーは、ETFEコポリマーにおける改質剤である、すなわち本ビニルモノマーは、ETFEダイポリマーと比較するとき、高温引張特性を改良する。環境上の理由から、重合を有機溶剤中で実施することは望ましくなくなった。水分散液は不安定であり、ETFEポリマー粒子は、水性媒体中に分散した状態が継続するというよりむしろ、重合中に低固形分で凝析する傾向があるという意味で、この重合媒体の代わりに水を使用することは難しい。特許文献2は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の安定した水分散液を生成するための、TFE重合の慣習的条件で、安定したETFEコポリマーの水分散液を調製することは、その水性媒体中に有機溶剤安定剤も存在しなければ、不可能であることを開示している(1列、47〜59行)。たとえばCarlsonに開示されている改質用ビニルモノマーの存在は、EおよびTFEの水分散液重合における凝塊問題を悪化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3,624,250号(Carlson)明細書
【特許文献2】米国特許第4,338,237号(Sulzbach et al.)明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、エチレン/テトラフルオロエチレン/少なくとも2個の炭素原子を含む側鎖を提供するビニルモノマーのコポリマーを製造するための水分散液重合方法を提供し、その分散は安定している。したがって、本発明は、エチレン/テトラフルオロエチレン/少なくとも2個の炭素原子を含む側鎖を提供する改質用ビニルモノマーのコポリマーを、水性媒体中の前記コポリマーの粒子の分散として、生成するための重合方法であり、(a)耐熱性ポリマー粒子の安定した分散であって、前記耐熱性ポリマー粒子がさらなる重合のための重合部位を提供する分散を、前記水性媒体中で生成する少なくとも1つのフルオロモノマーとの前記重合を開始すること、(b)少なくとも前記水性媒体中で、前記エチレン、テトラフルオロエチレン、および改質用ビニルモノマーを、少なくとも約15質量%のポリマー固体まで共重合することであって、前記コポリマーは、前記ポリマー固体の総ポリマー含量の少なくとも約60質量%を含む共重合により、さらなる重合を実施することを含む。
【0005】
本フルオロモノマーは、E/TFE/ビニルモノマーのコポリマーと異なるポリマーであるフルオロポリマーに重合し、重合したフルオロモノマーからのポリマー粒子が存在せずに、エチレン、TFE、およびビニルモノマーが共重合される場合より分散安定性が大きくなるように選択される。本フルオロモノマーとの重合の開始の1つの効果は、重合媒体への本ビニルモノマー改質剤の添加が遅れること、すなわちエチレン、テトラフルオロエチレン、ビニルモノマー共重合が始まる前に本フルオロモノマーが最初に重合されることである。この、ビニルモノマーの重合媒体への導入が遅延することは、ビニルモノマーが重合の最初から存在していればそうであろう分散不安定性を、ビニルモノマーが引き起こすのを防ぐという有益な効果を有する。したがって、本発明は、本重合方法を開始してフルオロポリマー粒子の安定した分散を生成することにより、ならびにビニルモノマー改質剤への添加およびビニルモノマー改質剤の重合を遅らせることによって、水性重合媒体中の改良された分散安定性を実現する。
【0006】
本重合方法のステップ(a)および(b)のもう1つの有益な効果は、ステップ(a)および(b)の完了後に結果として生じるポリマー粒子が、ステップ(a)のフルオロモノマーの重合によって得られるポリマーと、ステップ(b)の共重合に由来するコポリマーの両者を含むことである。質量%が優勢なため、ETFEコポリマーの特徴を従来通り有するが、このように同一粒子中に異なるポリマー類が一緒に存在することは、特にステップ(a)のモノマーがパーフルオロモノマーであるとき、後述する通り、フルオロモノマー由来のポリマーを他のフルオロポリマー類に導入するための媒体を提供して、このような他のフルオロポリマー類の構造的修飾を提供する。フルオロポリマー粒子のより大きい分散安定性は、フルオロポリマー粒子上に生成されるETFEに分散安定性を与える。
【0007】
本発明の方法は、フリーラジカル開始剤および界面活性剤の存在下で実施され、その界面活性剤は、所望の分散安定性を得るのに有効な量である。ステップ(b)の完了時に得られる分散したポリマー粒子は、界面活性剤によって水性媒体中で安定化されている、すなわち水性媒体中に分散されたままであり、過量の界面活性剤を必要としない。本方法はまた、有機溶剤安定剤が本質的に存在しない条件で実施される。好ましくは、有機溶剤が重合媒体に何も添加されない。このような溶剤が本質的に存在しないことは、もし少量が添加されるのであれば、この添加から生じる分散安定性における利益が、たとえば、添加される有機溶剤を調達し、貯蔵し、回収する必要から生じる、添加における不利益を上回ることを意味する。このような添加は、事実上、影響がないであろう。
【0008】
本発明によって得られる、より大きい分散安定性の一因は、ステップ(b)の完了時に得られる非常に小型のポリマー粒子である。このような粒子は、約125nm以下、一般に約100nm以下の、平均サイズを有する。こうした小さいポリマー粒径は、本重合方法によって到達するかなりの固体濃度、たとえばポリマー固体および水性重合媒体の総質量を基準にして、少なくとも約15質量%のポリマー固体でさえも得られる。ステップ(a)によって得られるフルオロポリマー粒子は、さらに小さい平均粒径、好ましくは約60nm以下、一般に約50nm以下の、平均粒径を有するであろう。ステップ(a)によって得られるポリマー粒子の最小数または最小量は、ステップ(a)なしで、E、TFEおよびビニルモノマーを共重合するときに比べて、結果として生じるE/TFE/ビニルモノマーコポリマーの分散安定性を改良するのに有効なものである。ステップ(a)で生成されるフルオロポリマーは、総ポリマー含量の少なくとも約1質量%を構成すべきであり、そのことによってステップ(b)のコポリマーは、総ポリマー含量の約99〜60質量%を構成することになろう。
【0009】
本発明の一実施態様において、ステップ(a)および(b)が共に完了したときに得られるポリマーは、水性媒体中に分散した相を構成する粒子である。このようなポリマーは、上述の粒径を有する一次(重合したままの)粒子として、水分散媒体中に存在する。このようなポリマーは、たとえば、このようなポリマー粒子の分散を凝析することにより形成される凝塊、すなわち一次粒子の凝塊等の、他の形状を有することが可能である。この凝塊を乾燥して一次粒子の凝集体(二次粒子)を形成することができ、またこのような方法で、たとえば押出機内等で、凝集体としての一次粒子を溶融混合にさらし、最終形態の二次加工物品またはポリマーのペレットのいずれかを形成することができる。結果として生じる溶融混合物は、E/TFE/ビニルモノマーコポリマーのマトリックス中に、ステップ(a)のフルオロポリマーの分散を含む。本溶融混合方法は、E/TFE/ビニルモノマーの追加的コポリマーの存在下で実施することができ、ステップ(b)からのE/TFE/ビニルモノマーとの、このコポリマーブレンドは、結果として生じる溶融ブレンドのマトリックスを形成し、その中にステップ(a)からのフルオロポリマーが分散される。本溶融混合方法はまた、溶融加工可能なパーフルオロポリマーの存在下で実施することができ、ステップ(a)からのフルオロポリマーも、E/TFE/ビニルモノマーのコポリマーも、共に、パーフルオロポリマーのマトリックス中に分散される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ステップ(a)で重合されるフルオロモノマーは、好ましくはパーフルオロモノマーであり、また好ましくはTFEを含む。好ましくは、ステップ(a)で生成されるフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。本発明の一実施態様において、ステップ(a)における水分散液重合は微粉型であり、本重合方法のステップ(a)により得られるPTFEの好ましいタイプである。PTFEの微粉型は、たとえば少なくとも1,000,000という高分子量を有するため、溶融状態で流動しない。TFE重合が起こった後、すなわちステップ(a)の完了後に、重合を停止させ、結果として生じるPTFEを分離し、たとえば、オリフィスを通り抜ける溶融ポリマーの圧入(5kg重)を含むASTM D 1238−94aの試験手順によって流動特性を試験する場合、380℃における溶融PTFEはオリフィスを通って流動しない。このようなPTFEはまた、高い溶融クリープ粘度を有するが、これは、時には比溶融粘度と呼ばれ、米国特許第3,819,594号明細書の比溶融粘度測定手順を参照している米国特許第6,841,594号明細書にさらに説明かつ定義されているとおり、既知の引張応力を30分間受けたPTFEの溶融スライバーの伸長率の測定を含む。この試験では、試験手順に従って製造された溶融スライバーに、溶融クリープ粘度の測定開始前に負荷をかけて30分間維持し、次いで、次の30分の加重中に、この測定を行う。PTFEは、全て380℃で、好ましくは少なくとも約1×10Pa・s、より好ましくは少なくとも約1×10Pa・s、最も好ましくは少なくとも約1×10Pa・sの溶融クリープ粘度を有する。この温度は、PTFEの第一溶融温度および第二溶融温度である、それぞれ343℃および327℃より、十分高い。
【0011】
ステップ(a)から得られるPTFEは、テトラフルオロエチレンのホモポリマーであってもよく、あるいは、たとえばヘキサフルオロプロピレン、またはアルキル基が直鎖であっても分岐していてもよく、また1〜5個の炭素原子を含む、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等の、少量のコモノマーとのテトラフルオロエチレンのコポリマーであってもよく、これはTFEの焼結性を改善し、TFEホモポリマーと比較して、より低い透過性およびより大きい屈曲寿命等の改善を得る。コモノマー改良PTFEは、時により、ただ単に改良PTFEと呼ばれることもある。改良PTFEの例は、米国特許第3,142,665号明細書、米国特許第3,819,594号明細書、および米国特許第6,870,020号明細書に開示されており、またこの改良PTFEは、本発明のプロセスによって得られるステップ(a)フルオロポリマーとして使用することができる。米国特許第3,142,665号明細書および米国特許第3,819,594号明細書は、0.05〜0.3質量%の範囲内という、PTFE中の非常に少ない改良剤含量を開示し、米国特許第6,870,020号明細書は、約0.5〜10質量%という、より高い改良剤含量を開示している。簡単にするために、また改良PTFEは、同じ非溶融流れ、PTFEホモポリマーの高い溶融クリープ粘度を示すため、このタイプのPTFEを、本明細書で使用される用語ポリテトラフルオロエチレンまたはPTFEに包含する。
【0012】
本発明のもう1つの実施態様では、ステップ(a)で重合されるフルオロモノマーは、これらのモノマー類の各々の共重合に由来する単位の、40〜60モル%、総計100モル%を含むフルオロポリマーを提供する量で、追加的モノマー、すなわちエチレンを含む。この実施態様によれば、形成される、結果として生じるETFE粒子は、エチレンおよびテトラフルオロエチレンのダイポリマーである、すなわちステップ(a)で改質用モノマーは何も存在しない。ETFEダイポリマー粒子の分散は、エチレン/テトラフルオロエチレン/改質用モノマーのコポリマーの分散よりすぐれた安定性を有し、それによって本ダイポリマー粒子は、そのよりすぐれた分散安定性を、ステップ(b)で前記粒子上に共重合するエチレン/テトラフルオロエチレン/ビニルモノマーに授与する。
【0013】
ステップ(a)からのフルオロポリマーは、中で共重合ステップ(b)が実施される水性媒体中に分散した粒子として存在し、それによって、本発明の方法から生じるポリマーは、ステップ(a)からのフルオロポリマーがコアであって、その上にE/TFE/ビニルモノマーのコポリマーがシェルとして形成される二成分ポリマーであり、それによって、ステップ(a)および(b)の完了から得られるポリマー粒子は、水性重合媒体中に分散したコア/シェルポリマー粒子である。エチレンとTFEとのコポリマーは一般に、これらのモノマー単位の組み合わせ、総計100モル%に対して、約40〜60モル%の各モノマー、すなわち、それぞれこれらのモノマー類に由来する反復単位−CH−CH−および−CF−CF−を含む。改質用モノマーは、エチレンおよびTFEと共重合可能であり、また連鎖移動剤として作用しないという意味で、連鎖移動(telogenic)活性のないものである。こうした態様の重合可能性および連鎖移動活性がないことは、米国特許第3,624,250号明細書にさらに開示されており、この開示内容を、本発明に適用する。ビニルモノマーの共重合に由来する反復単位の側鎖における少なくとも2個の炭素原子を提供する好ましい改質用ビニルモノマーは、(i)CF=CFOR(ここで、xは0または1の整数であり、Rは、少なくとも2個の炭素原子を含む有機基、好ましくは2〜6個の炭素原子を有するフルオロアルキル、より好ましくはパーフルオロアルキルである)、(ii)CH=CHR’(ここで、それぞれ、xは0または1の整数であり、yは2または1であり、またR’は、フルオロアルキルであり、好ましくは2〜6個の炭素原子を含み、より好ましくはパーフルオロアルキルである)および(iii)CH=CFR’’(ここで、R’’はフルオロアルキル、好ましくはC〜C10フルオロアルキルである)である。R基、R’基、およびR’’基は、少なくとも2個の炭素原子を含む側鎖を形成する。これらのビニルモノマー類の例は、パーフルオロアルキルエチレン、好ましくはパーフルオロブチルエチレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、たとえばパーフルオロ(エチルビニルエーテルまたはプロピルビニルエーテル)等、ヘキサフルオロイソブチレン、およびCH=CFC10Hである。一般に、コポリマーの約0.1〜10モル%が、改質用モノマーであろう。E/TFE/少なくとも2個の側鎖炭素原子を有するビニルモノマーのコポリマー類の例は、米国特許第3,624,250号明細書、米国特許第4,123,602号明細書、米国特許第4,513,129号明細書、および米国特許第4,677,175号明細書にさらに開示されている。改質用ビニルモノマーが、ヘキサフルオロプロピレンによって提供されるような、ただ1つの炭素原子を側鎖中に有するとき、安定した水性ポリマー分散を得る上での困難度の増加は存在しない。
【0014】
ステップ(a)および(b)の両ステップにおいて、ポリマー粒子が水性媒体中で形成されるとき、本発明の水分散液重合は、フリーラジカル開始剤を使用して、重合を起こさせ、また界面活性剤を使用してポリマー粒子を分散させる。本方法の共重合ステップ(b)は、好ましくは、連鎖移動剤(CTA)、たとえばエタン等のアルカンの存在下で、実施される。
【0015】
ステップ(a)のフルオロポリマーを形成するために使用される開始剤は、一般にステップ(b)のコポリマーを形成するためにも使用される。両重合で使用される開始剤の例は、たとえば米国特許第3,859,262号明細書に記載の、マンガンの酸類および塩類、たとえば、過マンガン酸のアルカリ金属塩類およびアルカリ土類金属塩類等である。このような塩類の例は、過マンガン酸カリウムおよび過マンガン酸ナトリウムである。好ましくは、還元剤、たとえばシュウ酸または亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸塩が、この開始剤と組み合わせて使用される。
【0016】
水分散重合で使用される分散剤の例としては、パーフルオロオクタン酸アンモニウムおよびパーフルオロアルキルエタンスルホン酸塩類、たとえばアンモニウム塩などがある。水性媒体中の界面活性剤の濃度は一般に、水性媒体の質量基準にして0.4質量%未満である。
【0017】
ステップ(a)から生じるフルオロポリマー粒子は小さいため、たとえば60nm以下、好ましくは50nm以下の平均粒径を有するため、ステップ中、これらの粒子の成長は、好ましくは90nm以下の平均粒径を有する、総体的に、小さいポリマー粒子を産生する。ステップ(a)で小さいフルオロポリマー粒子を得るための一法は、たとえば米国特許第6,395,848号明細書に開示されている、フッ素系界面活性剤類の組み合わせの使用であり、それは(i)フルオロアルキル酸(カルボン酸またはスルホン酸)または塩、たとえばパーフルオロオクタン酸アンモニウム等と、(ii)パーフルオロポリエーテル酸(カルボン酸またはスルホン酸)または塩、たとえば上記特許の表1(13列)に開示されているPFPE−1〜PFPE−7との混合物である。好ましくは、(i)の量は、(i)と(ii)を合計した質量の5質量%未満である。
【0018】
水性媒体中に存在する界面活性剤は、重合反応を完了させて、所望の水性媒体中に固形分を得るまで、ポリマー粒子の安定した分散を維持する。好ましくは、ステップ(a)およびステップ(b)からのポリマー粒子は、水性媒体およびポリマー粒子の合計質量の、少なくとも約20質量%を構成する。分散ポリマー粒子は、重合の間に適用した撹拌よりも増強した撹拌等の従来の方法または電解質の添加によって、意図的に凝析させることができる。あるいは、たとえば米国特許第5,708,131号(Morgan)明細書に開示されている凍結/解凍方法によって、凝析を行うことができる。
【0019】
本発明の方法を実施するための概要は、水性媒体を撹拌オートクレーブに予め装入するステップ、オートクレーブを脱酸素化するステップ、ステップ(a)のフルオロモノマーで所定のレベルまで加圧するステップ、フルオロモノマーがTFEである場合、必要に応じて改質用コモノマーを添加するステップ、撹拌するステップ、システムを所望の温度、たとえば、60〜100℃に至らしめるステップ、開始剤を導入するステップ、最終ポリマーで望まれるステップ(a)からのフルオロポリマーの含量によって異なる所定の基準に従ってさらにフルオロモノマーを添加するステップ、および重合を通してまたは重合の一部だけについて、温度、同一速度または異なる速度での開始剤添加を制御するステップを含む。装置によって一定ではない製法およびパラメータの操作は、通常、重合を通して温度がほぼ一定に保持されるように選択される。ステップ(b)において、エチレン、TFE、およびビニルモノマー類の共重合化は、重合温度およびモノマー類の添加順序がビニルモノマーの独自性によって異なることを除き、この同一基本手順に従う。ステップ(a)からステップ(b)への移行は、実施例に示す通りであってもよい。移行のタイミングは、結果として生じる水性重合媒体中に分散したポリマー粒子を形成する、ステップ(a)からのフルオロポリマーとステップ(b)からのコポリマーが、所望の質量比率で得られるように設定される。ステップ(a)からのフルオロポリマーの質量%は、ステップ(a)の重合で消費されるフルオロモノマーの質量を、ステップ(b)の重合で消費されるモノマー類の質量と比較することによって決定することができる。好ましくは、この移行は、ステップ(a)の完了時に重合を停止し、次いでステップ(b)のための重合条件を確定することによって実行される。移行は、別の反応器内で実施することができ、ステップ(b)におけるコポリマーの共重合のための種の役割を果たすように、その反応器にフルオロポリマー粒子の水分散液を移す。いずれにしても、ステップ(a)の重合とステップ(b)の重合との間の移行は、これらのステップで形成される不相溶性のポリマー間に均質性を与える。
【0020】
本発明の重合方法のステップ(a)および(b)から得られるポリマーにおいて、E/TFE/ビニルモノマーのコポリマーの含量は制御され、またポリマーの所期の用途によって異なる。他の溶融加工可能なフルオロポリマーと溶融ブレンドするための添加物として使用するとき、コポリマー含量は好ましくは総ポリマー含量の少なくとも約60質量%である;溶融加工可能なフルオロポリマーの溶融流動性は、ステップ(a)ポリマー含量が高いステップ(a)および(b)から得られるポリマーの、溶融ブレンドを可能にする。それ自身と溶融ブレンドするために使用するとき、すなわち本発明の方法で得られるポリマーが、存在する他のポリマーと溶融ブレンドされないとき、コポリマー含量は好ましくは少なくとも72質量%、より好ましくは少なくとも75質量%である。結果として生じるポリマーは、ETFEコポリマーと同様に使用することができる。いかなる場合でも、ステップ(a)から得られるポリマーがパーフルオロポリマーであるとき、ステップ(b)から得られるよりポリマーは低密度であり、その結果、コポリマーの容量%は質量%よりも大きくなる。たとえば、ステップ(a)のフルオロポリマーがPTFEであるとき、ステップ(b)で生成される75質量%のコポリマー含量は、両ステップから生成されるポリマー中に存在するコポリマーの80容量%超に相当する。好ましくは、ステップ(a)で生成されるフルオロポリマーの量は、少なくとも約2質量%である。
【0021】
本願明細書の実施例1〜4のステップ(a)で重合されるPTFEがそうであるように、ステップ(a)から得られるフルオロポリマーが非溶融流動性PTFEであるとき、ステップ(a)および(b)から得られるポリマーを最終的に溶融ブレンドすることによって、これらのPTFE粒子は、溶融ブレンド中に存在する溶融加工可能なフルオロポリマー類のマトリックスにおける分散相になる。マトリックスポリマーが溶融加工可能なパーフルオロポリマーであるとき、本発明の重合方法中に製造される両ポリマーは、パーフルオロポリマーマトリックス中に分散される。実施例から分かるように、本発明の方法で製造されるポリマーは、意外な結果をもたらす。溶融ブレンドによってETFEコポリマーに組み込まれるとき、ETFEの屈曲モジュラスは低下する。ポリマーが溶融ブレンドによって溶融加工可能なパーフルオロポリマーに組み込まれるとき、たとえばテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーか、またはテトラフルオロエチレンと、たとえばパーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)またはパーフルオロ(メチルビニルエーテルおよびプロピルビニルエーテル)の混合物等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との、コポリマーに組み込まれるとき、正反対のことが起こる。
【実施例】
【0022】
本実施例でRDPS(原分散粒径)と言われる粒径(直径)は、ASTM D4464のレーザー光散乱法で測定される。
【0023】
実施例1
重合は、容量10ガロン(40リットル)の撹拌圧力容器で実施する。使用前に、この容器に脱塩水44ポンド(20kg)、過硫酸アンモニウム5g、および20質量%のペルフルオロオクタン酸アンモニウム水溶液80mlを装入する。この容器を30分間沸騰(100°C)させる。内容物を排出する。
【0024】
重合のプリチャージは以下の通りである:
脱塩水、40ポンド(18kg);
Krytox(登録商標) 157 FSLパーフルオロポリエーテル酸、2g;
シュウ酸、1.0g;
ピロ亜硫酸カリウム、0.2g;
コハク酸、1.0g;
ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、20質量%水溶液300ml。
【0025】
重合開始剤は、脱塩水1リットル当たり、過マンガン酸カリウム7.2gとリン酸アンモニウム1gである。
【0026】
50℃、10〜15psig(172〜207kPa)で、容器に、TFEを装入し、排気する。酸素を排除するために、これを2回繰り返す。プリチャージを加え、次いでTFEを加えて、圧を225psig(1.65MPa)とする。撹拌(44rpm)を開始する。開始剤溶液50mlを50ml/分で加え、次いで開始剤溶液を1ml/分で加え始める。容器圧が10psi(70kPa)低下したとき、重合が開始すると考えられ、その時点で圧を225psig(1.65MPa)に戻す。容器内容の温度を50℃に調整し、TFE給送を0.06ポンド/分(27g/分)に設定する。必要に応じて容器をガス抜きし、圧を225psig(1.65MPa)以下に維持する。15分後(コアタイム)、圧は150psig(1.14MPa)であり、撹拌を止め、TFEおよび開始剤溶液給送を停止する。容器をガス抜きして排気し、25℃に冷却する。これで、PTFEコアの形成が完了する。
【0027】
次いで、容器に、8インチHg(27kPa)までエタンを装入する。容器を50℃に加熱し、エチレンを装入して圧を25psi(170kPa)上昇させ、次いでTFEを加えて圧を225psig(1.65MPa)に上昇させる。撹拌(44rpm)を開始する。容器へのエチレンの流れを0.017ポンド/分(7.7g/分)に、またTFEの流れを0.06ポンド/分(27g/分)に定め、必要に応じてガス抜きして圧を225psig(1.65MPa)に維持する。エチレンおよびTFEのこうした給送は、(共重合反応に由来する単位の)各モノマーを約50モル%を含有するETFEコポリマーを提供する。パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)20mlを注入する。開始剤溶液100mlを50ml/分で加え、次いで開始剤溶液を2ml/分で給送する。容器圧が10psi(70kPa)低下したとき、重合が開始すると考えられ、その時点で、TFEで圧を225psig(1.65MPa)に戻す。温度を50℃に維持し、0.9ml/分でPEVE給送を開始する。重合を220分間(シェルタイム)続け、次いで撹拌を止め、容器をガス抜きし、内容を排出する。結果として生じる分散の質量は、53.4ポンド(24kg)であり、固体は22.3%である。モノマー消費から、コアはコア/シェルポリマーの12.6質量%であり、シェルは87.4質量%であることが分かる。PTFEコアのRDPSは38nmであり、コア/シェルポリマーのRDPSは76nmである。
【0028】
実施例2
実施例2は、コアタイムが5分であり、またシェルタイムが170分であること以外は、実施例1の手順に従う。結果として生じる分散は、固体17%であって、コアはコア/シェルポリマーの5.9質量%であり、シェルは94.1質量%である。コアのRDPSは26nmであり、コア/シェルポリマーのRDPSは68nmである。
【0029】
実施例3
重合は、容量10ガロン(40リットル)の撹拌圧力容器で実施する。使用前に、容器に脱塩水44ポンド(20kg)、過硫酸アンモニウム5g、およびペルフルオロオクタン酸アンモニウムの20質量%水溶液80mlを装入する。この容器を30分間沸騰(100°C)させる。内容物を排出する。
【0030】
重合のプリチャージは下記の通りである:
脱塩水、40ポンド(18kg);
Krytox(登録商標) 157 FSLパーフルオロポリエーテル酸、2g;
シュウ酸、1.0g;
ピロ亜硫酸カリウム、0.2g;
コハク酸、1.0g;
ペルフルオロオクタン酸アンモニウム、20質量%水溶液300ml。
【0031】
重合開始剤は、脱塩水1リットル当たり、過マンガン酸カリウム7.2gとリン酸アンモニウム1gである。
【0032】
50℃、10〜15psig(172〜207kPa)で、容器に、TFEを装入し、排気する。酸素を排除するために、これを2回繰り返す。プリチャージを加え、次いでTFEを加えて、圧を225psig(1.65MPa)とする。撹拌(44rpm)を開始する。開始剤溶液50mlを50ml/分で加え、次いで開始剤溶液を1ml/分で加え始める。容器圧が10psi(70kPa)低下したとき、重合が開始すると考えられ、その時点で圧を225psig(1.65MPa)に戻す。容器内容の温度を50℃に調整し、TFE給送を0.06ポンド/分(27g/分)に設定する。必要に応じて容器をガス抜きし、圧を225psig(1.65MPa)以下に維持する。30分(コアタイム)後、圧は109psig(0.85MPa)であり、撹拌を止め、TFEおよび開始剤溶液給送を停止する。容器をガス抜きして排気し、25℃に冷却する。これで、PTFEコアの形成が完了する。
【0033】
容器を50℃に加熱し、エチレンを装入して圧を25psi(170kPa)だけ上昇させ、次いでTFEを加えて圧を225psig(1.65MPa)に上昇させる。撹拌(44rpm)を開始する。容器へのエチレンの流れを0.017ポンド/分(7.7g/分)に、またTFEの流れを0.06ポンド/分(27g/分)に定め、必要に応じてガス抜きして圧を225psig(1.65MPa)に維持する。パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)20mlを注入する。開始剤溶液100mlを50ml/分で加え、次いで開始剤溶液を2ml/分で給送する。容器圧が10psi(70kPa)低下したとき、重合が開始すると考えられ、その時点で、TFEで圧を225psig(1.65MPa)に戻す。温度を50℃に維持し、0.9ml/分でPEVE給送を開始する。重合を90分間(シェルタイム)続け、次いで撹拌を止め、容器をガス抜きし、内容を排出する。結果として生じる分散は、固体18.66%である。モノマー消費から、コアはコア/シェルポリマーの27.3質量%であり、シェルは72.7質量%であることが分かる。コア/シェルポリマーのRDPSは83nmである。
【0034】
実施例4
以下の変更を加えて、実施例3の手順を繰り返す:PTFEコアの形成において(ステップ(a))、撹拌ならびにモノマーおよび開始剤の給送を停止するとき、圧は104psig(0.82MPa)である。コポリマーシェルの形成において、PEVEの代わりに使用される修飾モノマーは、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)であり、次いで重合容器に16インチHg(54kPa)までエタンを装入する。結果として生じる分散は、ポリマー固体15.12質量%であって、そのコア含量は形成されたコア/シェルポリマーの35.2質量%であり、シェルは64.8質量%である。コポリマーシェルのPFBE含量は、約4質量%である。
【0035】
時間の節約のため、各実施例で、重合を中止した。得られた水分散液は、凝塊がなかった。本分散を凍結し、フィルター上に載せている間に解凍することによって分散は凝析し、それによって、解凍した液体は、液体が生成されるにつれて、解凍しつつある分散を後に残し、続いて乾燥して容易に粉砕される濾過ケーキ、すなわち粉末を生成する。
【0036】
実施例5−パーフルオロポリマーの屈曲モジュラスを上昇させる
この実施例で使用するパーフルオロポリマーは、TFEと、約14g/10分のMFRを有するPPVE3.8質量%とのコポリマーであり、約15μmの平均粒径を有する二次粒子の形(粉末)である。単独で、このポリマーは、655MPaの屈曲モジュラスを示す。
【0037】
このパーフルオロポリマー(マトリックスポリマー)粉末を、実施例3のコア/シェルポリマーと、下記の比率で乾燥混合する:コア/シェルポリマー25質量%およびパーフルオロポリマー75質量%。この乾燥ブレンド中のPTFEおよびETFEの量は、それぞれ6.8質量%および18.2質量%であり、総計100質量%までのブレンドの残りはパーフルオロポリマーである。コアのPTFEの屈曲モジュラスは630MPaであり、シェルETFEの屈曲モジュラスは1320MPaである。
【0038】
このブレンドの屈曲モジュラスは986MPaである。これは、パーフルオロポリマー単独に比して、屈曲モジュラスの50%上昇である(計算:[(986−655)÷655]×100)。この屈曲モジュラスの上昇は、PTFEの屈曲モジュラスおよびパーフルオロポリマーと混合されたETFEの屈曲モジュラスから予測され得るものよりはるかに多い。たとえばPTFEがパーフルオロポリマーと同じ屈曲モジュラスを有すると考えるのであれば、その時は、ETFE18.2質量%が、ブレンドの屈曲モジュラスに果たすと予測される寄与は、下記の通りに見積もられる:ブレンドに関して、(18.2%×1320)+(81.8%×655)=776MPa、これは屈曲モジュラスの18.5%上昇である。このブレンドは、予測される屈曲モジュラスを2.7(50%/18/5%)倍上回る。
【0039】
マトリックスポリマーとして、FEPをTFE/PPVEコポリマーの代わりにするとき、類似した予想外の改善が得られる。
FEPがTFE/PPVEコポリマーの代わりにマトリックスポリマーとして使用されるとき、同様の予期せぬ改良が得られる。
【0040】
屈曲モジュラスは、下記の手順で形成される圧縮形成プラークを用いて決定される:マトリックスポリマー粉末およびコア/シェルポリマー粉末のブレンドを、温度350℃で20,000ポンド(9070kg)の力をかけて圧縮し、6×6インチ(15.2×15.2cm)の圧縮成形品を製造する。より詳細には、厚さ60ミルのプラークを製造するために、粉末ブレンドを厚さ55ミル(1.4mm)のチェースに溢れる量で加える。このチェースは、6×6インチの試料サイズを画定する。圧縮成形機のプレートにくっつくのを避けるために、チェースおよび粉末充填物を2枚のアルミニウムホイルシートの間に挟む。定盤を350℃に加熱する。このサンドイッチを先ず約200ポンド(91kg)で5分間プレスし、粉末ブレンドのポリマーを溶融して融合させ、続いて10,000ポンド(4500kg)で2分間、続いて20000ポンド(9070kg)で2分間プレスし、その後押圧を解除し、チェースおよびアルミニウムホイルのシートから圧縮成形物を外し、プラークのそりを防止するために重しをして、空気中で冷却する。
【0041】
実施例6−ETFEの屈曲モジュラスを低下させる
この実施例で使用するETFEは、ほぼ等モル量のエチレンとTFEのコポリマーであって、そのコポリマーは約4質量%の共重合したPFBEも含有する。このETFEは、二次粒子の形(粉末)である。このETFEは単独で、屈曲モジュラス1320MPaを示す。
【0042】
前段落のETFE(マトリックスポリマー)を、実施例4のコア/シェルポリマーと、下記の比率で乾燥混合する:コア/シェルポリマー10質量%およびマトリックスポリマー90質量%。この乾燥ブレンド中のPTFE量は、約3質量%である。このブレンドの屈曲モジュラスは855MPaである。コアのPTFEの屈曲モジュラスは、単独で約630MPaである。シェルETFEの屈曲モジュラスは、約1320MPaである。
【0043】
別の実験で、マトリックスポリマーを、下記の比率で、実施例4のコア/シェルポリマーと共に乾燥混合する:コア/シェルポリマー25質量%およびマトリックスポリマー75質量%。このブレンド中のPTFE量は、約8質量%である。このブレンドの屈曲モジュラスは885MPaである。
【0044】
ETFEマトリックスポリマーは、300%超の伸長(破壊時)を有する。コア/シェルポリマーの組み込みによる、マトリックスポリマーの屈曲モジュラスの低下によって、この伸長は減少しない。
【0045】
伸長(破壊時)は、厚さ60ミル(1.5mm)の圧縮成形プラークから打ち抜かれた幅15mm×長さ38mm、ウェブ厚さ5mmのダンベル形試験標本について、ASTM D 638−03の手順によって測定する。
【0046】
実施例7−改良された限界酸素指数(LOI)
パーフルオロポリマーは、持続的に使えるために、高い融点および高い使用温度を有する。ポリテトラフルオロエチレンは、たとえば少なくとも1,000,000という高分子量を有するため、溶融されたとき流動せず、327℃で溶融し(第二溶融(second melt))、使用温度260℃を有する。溶融加工可能なパーフルオロポリマー類、特にテトラフルオロエチレン(TFE)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、たとえばパーフルオロ(エチルビニルエーテルまたはプロピルビニルエーテル)のいずれかとの、溶融流動性コポリマー類は、それぞれ約260℃および310℃で溶融する。TFE/HFPコポリマーは、200℃という使用温度を有し、TFE/PAVEコポリマーは260℃という使用温度を有する。
【0047】
エチレンとTFEとの溶融流動性コポリマー類、すなわちETFEが開発されており、約270℃という溶融温度を有する。この溶融温度はTFE/HFPコポリマーの溶融温度より高いが、ETFEの使用温度ははるかに低い、すなわち、150℃である。ETFEは、限界酸素指数(LOI)によって特徴づけられる通り、可燃性であるため、その使用温度は非常に低い。LOIは、酸素と窒素の流動混合物中で火炎燃焼を支持する酸素の最小濃度を決定する。LOIが高いほど、燃焼を支持するのに必要な酸素濃度が高く、不燃傾向が大きい。LOIが低いほど、そのポリマーの可燃性は大きい。上述のパーフルオロポリマー類は全て、極めて不燃性であり、また少なくとも95というLOIを有する。対照的に、約50モル%という最も代表的なエチレン含量を有するETFEのLOIは、約30に過ぎない。コアポリマーが、たとえば実施例1〜3で調製されるような非溶融流動性PTFEである、本発明の方法で製造されるエチレン/テトラフルオロエチレン/改質用ビニルモノマーコポリマー類は、予想外に高いLOIを有し、より大きい不燃性および/または使用温度を必要とする用途で、これらのコア/シェルポリマーを有用にすることができることが判明している。
【0048】
試験ポリマーから成形された、5インチ×1/4インチ×1/8インチのプラークを、試験直前に23℃、および相対湿度55%で88時間、状態調整し、ASTM D2863−06a、手順A/試験方法Aの手順に従ってLOIを測定する。PTFE単独で作られた試験ポリマーは、95というLOIを示す。エチレン/テトラフルオロエチレン/ビニルモノマーコポリマーポリマーの試験ポリマーは単独で、30〜31というLOIを示す。混合の法則を適用することによって、コア/シェルポリマーのLOI計算値が得られる。計算例(実施例1について):95のLOIを有するコア12.6質量%+31のLOIを有するシェル87.4質量%=39のLOI
【0049】
実施例1〜3のコア/シェルポリマー類のLOIは、下記の通りである:
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の炭素原子を含む側鎖を与えるエチレン/テトラフルオロエチレン/改質ビニルモノマーのコポリマーを、水性媒体中の該コポリマーの粒子の分散体として生成させるための重合方法であって、
(a)該水性媒体中、耐熱性ポリマー粒子の安定した分散体であって、該耐熱性ポリマー粒子がさらなる重合のための重合部位を備える該分散体を生成させる少なくとも1つのフルオロモノマーと、上記重合を開始させること、及び(b)少なくとも上記水性媒体中上記エチレン、テトラフルオロエチレン、および改質ビニルモノマーを、少なくとも約15質量%のポリマー固体に共重合することにより、上記のさらなる重合を行なうことを含み、該コポリマーが、該ポリマー固体の総ポリマー含量の少なくとも約60質量%を含む、
上記重合方法。
【請求項2】
(a)および(b)の重合が、フリーラジカル開始剤および界面活性剤の存在下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)および(b)の重合が、本質的に、水性媒体中にいかなる有機溶剤も存在しない条件下で行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
改質ビニルモノマーは、(i)CF=CFOR、(ここで、xは0または1の整数であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を含む有機基である)、(ii)CH=CHR’(ここで、それぞれ、xは0または1の整数であり、yは2または1であり、R’は、フルオロアルキルである)、および(iii)CH=CFR’’(ここでR’’はフルオロアルキルである)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フルオロモノマーがパーフルオロモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマー固体が約125nm以下の平均粒径を有する、請求項1に記載のポリマー固体の水分散液。
【請求項7】
平均粒径が、約100nm以下である、請求項6に記載の水分散液。

【公表番号】特表2011−527717(P2011−527717A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517464(P2011−517464)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/048593
【国際公開番号】WO2010/005792
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】