説明

エックス線分析装置用支持台

【課題】 測定対象物の組成物質の測定を行う携行性に優れたエックス線分析装置を、鉛直面以外の面内にある被測定位置についても測定を行えるようにするエックス線分析装置用支持台を提供する。
【解決手段】 エックス線分析装置2の架台プレート27を傾斜台板11の表面に固定する。傾斜台板11はヒンジ部11dにより揺動可能に設け、傾斜台板11の裏面側にウォームギヤ13を設け、ウォームホイール13bに揺動アーム14の基端部を取付、先端部を傾斜台板11の裏面に摺動可能に連繋させる。ベースプレート23と傾斜台板11に取り付けたブラケット11cとに支持バネ33を掛け渡して、ベースプレート23が下降することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エックス線を用いて試料の組成物質を分析するエックス線分析装置を取り付けるための支持台に関し、特に、鉛直面以外の方向の面に関して組成分析に供する測定データを捕捉することができるようにしたエックス線分析装置用支持台に関する。
【背景技術】
【0002】
白色エックス線を試料に照射し、その照射位置における回折線と蛍光エックス線とを同時に検出することにより試料の組成物質を分析するエネルギー分散型エックス線回折・分光装置を、本願出願人は既に提案している(特許文献1参照)。このエックス線回折・分光装置は、白色エックス線照射手段とエックス線検出手段とをそれぞれ離散した異なる第1の位置と第2の位置とに移動させ、それぞれの位置における前記エックス線検出手段により各エネルギー毎のエックス線強度を得て、得られた測定データに所定の処理を施して、回折エックス線に関するデータと蛍光エックス線のデータを得るようにしたものである。
【0003】
このエックス線回折・分光装置では、エックス線照射手段とエックス線検出手段とを、第1の位置と第2の位置とに移動させて測定を行うことができるため、可搬性に優れた装置とすることができるものである。良好な可搬性を備えているため、測定対象物が設置されている場所に携行して測定を行うことができる利点を備えている。
【0004】
さらに、本願出願人はエックス線照射手段とエックス線検出手段の移動を常に所定の関係に支持させて行うことができるようにしたエックス線分析装置を提案している(特許文献2参照)。このエックス線分析装置は、前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とを、同一の円弧に沿って移動させると共に、エックス線照射手段の照射方向とエックス線検出手段の検出方向をこの円弧の中心で交差させるよう案内する案内手段と、前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とを、それぞれ案内手段に沿って移動させる発生手段移動装置と検出手段移動装置とを備え、前記測定対象物の被測定位置を前記円弧の中心である測定予定位置に設定する構成とされたものである。
【0005】
【特許文献1】国際公開 WO 2005/005969 A1
【特許文献2】特願2005−359017
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1と特許文献2に開示されているエックス線分析装置により、測定対象物の設置場所までこのエックス線分析装置を搬入させて測定を行えることができ、汎用性の高いエックス線分析装置となるものである。
【0007】
しかしながら、これら特許文献1、2に開示されたエックス線分析装置により測定される測定対象物の被測定位置は、エックス線分析装置を傾斜した状態に設置しない限り、鉛直面内に含まれている場合に限られていた。すなわち、前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とは、水平面内で移動する構造とされているため、これらエックス線照射手段の照射方向とエックス線検出手段の検出方向も同一平面であって水平面内に存する必要があることから、エックス線が照射される面は鉛直面でなければならない。なお、エックス線分析装置を水平状態に設置するための準備作業は容易に行うことができるが、エックス線分析装置を被測定位置との関係で一定の角度に傾けた状態で設置するための準備作業は、煩雑になってしまい、また角度の調整を正確に行うことが難しい。
【0008】
ところで、この可搬性に優れたエックス線分析装置に対して水平面や傾斜面等の鉛直面以外の面内に存する被測定位置を対象として測定データを取得することが要望されている。例えば、鉄道の線路の表面について組成を分析することが要望されている。レール鋼表面に生成される腐食化合物は数種類確認されており、線路の置かれている環境下で異なっている。例えば、海底トンネル内や海沿いの線区などNaClが多い環境に長時間暴露された線路に生成される腐食化合物は、著しい摩擦係数の低下をもたらすため、車輪の空転が引き起こされる。この空転によって波状磨耗が起こり、線路表面の平坦性が失われ、乗り心地が悪くなる。この問題は、主に新幹線で問題となる。また、腐食化合物が絶縁性物質である場合、線路と車両との導通が取れなくなり、これらの導通により車両の位置を検出するタイプの信号システムが働かなくなってしまう。この問題は、主に車両の運行間隔が広い路線(在来線)で発生する。そのため、これらの腐食化合物の同定を行うことによって腐食メカニズムを解明することは極めて重要とされている。従来では主に保線員が目視等によって腐食を確認していた他、一部区間をサンプリングして持ち帰るなどの手間をかけていたため、現場にて腐食の状況を迅速且つ正確に把握できるエックス線分析装置の利用が期待されている。
【0009】
そこで、この発明は、鉛直面以外の面であっても確実に対象物の測定データを取得することができるようにしたエックス線分析装置用支持台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係るエックス線分析装置用支持台は、測定対象物の被測定位置に対して白色エックス線を照射するエックス線照射手段と、前記被測定位置から放出されたエックス線のエネルギーと強度を検出するエックス線検出手段とを有し、照射角度と検出角度を所定の関係に保って前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とをそれぞれ移動させ、これらエックス線照射手段の照射方向とエックス線検出手段の検出方向とがなす角の二等分線の方向にこれらエックス線照射手段とエックス線検出手段とを移動可能に支持して、前記エックス線検出手段により取得されたエックス線のエネルギーと強度とに基づいて回折エックス線分析と蛍光エックス線分析を行うエックス線分析装置を、前記照射方向と検出方向とを含むデータ取得面が水平方向以外の方向の面に位置させるために、傾けるためのエックス線分析装置用支持台において、前記エックス線分析装置の架台プレートを載置させて固定する傾斜台板と、前記傾斜台板の前記エックス線分析装置の被測定位置側の端部側に、前記データ取得面に平行で、前記二等分線を含む鉛直面と直交する方向の軸を設け、前記軸を中心として前記傾斜台板を揺動可能に支持させ、前記傾斜台板を揺動させる揺動機構を設け、前記架台プレートに対して前記二等分線の方向に移動可能に前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とを連繋させて設けたベースプレートの後端部と前記傾斜台板との間に弾性手段を掛け渡してあることを特徴としている。
【0011】
前記揺動機構を作動させると、前記傾斜台板が揺動する。例えば、水平状態にある傾斜台板が、前記軸を中心として垂直状態となるまで揺動される。この軸は、水平方向の軸であって、前記二等分線を含む鉛直面と直交する方向としてあるから、エックス線照射手段の照射方向とエックス線検出手段の検出方向との関係が維持された状態で傾斜台板が垂直状態となる。このため、水平面にある被測定位置に対してエックス線を照射し、該被測定位置から放出されたエックス線を検出することができる。傾斜台板が垂直状態となることにより、前記ベースプレートが自重により下降しようとする。このとき、前記弾性手段がこの下降を防止する。なお、このベースプレートの前記二等分線の方向の移動を行わせる駆動モータのトルクが、この下降を阻止する大きさであれば弾性手段を設ける必要がないが、傾斜台板が水平状態にある場合、すなわ被測定位置が鉛直面内にある場合のベースプレートの移動にとっては、この駆動モータが大型化してしまって、エックス線分析装置の携行性を阻害するおそれがある。このため、弾性手段によりベースプレートの下降を防止するようにしたものである。したがって、この弾性手段はベースプレートの下降を阻止することができる大きさの弾性定数であればよい。
【0012】
また、請求項2の発明に係るエックス線分析装置用支持台は、前記揺動機構に倍力機構を用いたことを特徴としている。
【0013】
揺動されることになる傾斜台板にはエックス線分析装置が固定されているため、大きな重量となっている。このため、倍力機構を用いて円滑に揺動させることができるようにしたものである。
【0014】
また、請求項3の発明に係るエックス線分析装置用支持台は、前記揺動機構を、前記二等分線の方向と平行な方向を回転軸としたウォームと、該ウォームと噛合するウォームホイールとからなり、該ウォームホイールに揺動アームの一端部を連繋させ、他端部を前記傾斜台板に回動可能で、かつ、摺動可能に連繋させたことを特徴としている。
【0015】
揺動機構にウォームとウォームホイールとを組み合わせたウォームギヤからなる倍力機構を用いたものである。傾斜台板の揺動機構に用いられる倍力機構としては種々のものがあるが、傾斜台板の外側で操作でき、その操作に必要な空間が小さくてよいウォームギヤとしたものである。
【0016】
また、請求項4の発明に係るエックス線分析装置用支持台は、前記弾性手段を引張コイルバネとしたことを特徴としている。
【0017】
前記ベースプレートの下降を防止する前記弾性手段に、引張コイルバネを用いたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係るエックス線分析装置用支持台によれば、エックス線分析装置を傾斜台板に固定することにより、被測定位置が鉛直面以外の方向の面内にある場合であっても測定データを得ることができる。しかも、簡単な構造で揺動させることができる傾斜台板によるから、エックス線分析装置の携行性が損なわれることがない。
【0019】
また、請求項2の発明に係るエックス線分析装置用支持台によれば、傾斜台板を揺動させるための駆動力が僅かでよく、傾斜台板を傾斜させた状態でエックス線分析の測定データを取得しようとする場合に、該傾斜台板の角度の微調整が簡便となる。
【0020】
また、請求項3の発明に係るエックス線分析装置用支持台によれば、僅かな力で確実に傾斜台板を揺動させることができると共に、簡単な構造で確実に揺動させることができ、しかも、傾斜台板の角度の微調整を容易に行うことができ、より操作性の良いものとすることができる。
【0021】
また、請求項4の発明に係るエックス線分析装置用支持台によれば、簡単な構造で確実にベースプレートの下降を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係るエックス線分析装置用支持台を具体的に説明する。
【0023】
図1はこの発明に係る支持台1にエックス線分析装置2が取り付けられた状態で、該エックス線分析装置2により水平面内にある被測定位置における測定データを取得できる状態を示す側面図である。また、図2は鉛直面内にある被測定位置における測定データを取得する場合の状態を示す正面図である。図3は、図1における背面図である。なお、エックス線分析装置2の構造については、概略の構造を説明する。
【0024】
図2に示すように、エックス線分析装置2はエックス線照射手段としてのエックス線照射装置21と、このエックス線照射装置21から発せられたエックス線が照射された、図4および図5に示す測定対象物Oの被測定位置Pから放出されたエックス線を捕捉し検出するエックス線検出手段としてのエックス線検出装置22とを備えており、それぞれには照射方向と検出方向に向けて伸張させたキャピラリー21a、22aが設けられている。図4に示すように、エックス線照射装置21は保持プレート21bに、エックス線検出装置22は保持プレート22bに、それぞれ取り付けられていると共に、エックス線照射装置21はキャピラリー21aの方向に、エックス線検出装置22はキャピラリー22aの方向に、それぞれ摺動可能とされている。前記保持プレート21b、22bは、ベースプレート23に敷設された円弧状のラック24に噛合するギヤ21d、22dを備えると共に、該ラック24の同心円状にベースプレート23に固定された円弧状のガイドレール25に連繋されている。これらラック24とガイドレール25の円弧の中心と、前記エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向との交点とを一致させてある。また、保持プレート21b、22bにはステッピングモータ21c、22cがそれぞれ搭載されており、これらステッピングモータ21c、22cの出力軸に前記ギヤ21d、22dが嵌合している。このため、ステッピングモータ21c、22cの動作によるギヤ21d、22dの回転によって、該ギヤ21d、22dが回転しながらラック25に沿って移動し、保持プレート21b、22bがガイドレール25に案内されて移動することになる。
【0025】
図1及び図2に示すように、前記ベースプレート23は支持プレート26に、ガイド機構23aにより支持されて取り付けられていると共に、該ガイド機構23aによって支持プレート26に対して、図1において上下方向に摺動可能とされている。このベースプレート23は、ベースプレート駆動モータ23bの作動により摺動される。また、支持プレート26は架台プレート27にガイド機構26aにより支持されて取り付けられていると共に、該ガイド機構26aによって架台プレート27に対して図2において左右方向に摺動可能とされている。この支持プレート26は、図2に示す支持プレート駆動モータ26bの作動により摺動される。すなわち、前記ベースプレート23は架台プレート27に対して、後述する傾斜台板11が起立した状態を示す図4および図5において、上下方向と左右方向とに摺動可能とされている。
【0026】
また、ベースプレート23の適宜位置には測距装置28が設けられている。この測距装置28は、レーザー光線を発するレーザー光源と測距対象物で反射したレーザー光線を捕捉する受光部とを備えたレーザー式とすることが好ましく、レーザー光線の光軸は、前記エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向との交点を通過するようにしてある。
【0027】
前記架台プレート27は、支持台1の傾斜台板11の表面に固定ネジ11aにより固定されている。この傾斜台板11の裏面には、一対のガイドレール11bが取り付けられている。これらガイドレール11bの長手方向は、エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向とがなす角の二等分線とほぼ平行な方向としてある。
【0028】
前記支持台1は主として、前記傾斜台板11と底板12、傾斜台板11の揺動機構を構成する倍力機構としてウォーム13aとウォームホイール13bとからなるウォームギヤ13、このウォームギヤ13により揺動可能な揺動アーム14とから構成されている。底板12の前側、すなわち測定対象物Oが位置する側には、一対の支持ブラケット12aが取り付けられて、この支持ブラケット12aの上端部にヒンジ部11dが設けられ、このヒンジ部11dによって、前記ガイドレール11bと平行な方向に対して直交する水平方向を軸として、前記傾斜台板11が揺動可能に支持されている。また、底板12の中央部よりも適宜に対象物O側に偏倚した位置には、前記ガイドレール11bと平行な方向を軸として回動可能に前記ウォーム13aが軸受15a、15bにより支持されており、このウォーム13aの上方には該ウォーム13aと噛合する前記ウォームホイール13bが、図3に示すように、軸受16a、16bにより支持されている。なお、ウォームホイール13bの回動軸の方向は前記ガイドレール13bと平行な方向と直交する方向としてある。また、前記ウォーム13aには軸方向に伸長させた駆動ロッド17が連結させてあり、この駆動ロッド17の後端部が底板12の後端部よりも後方に突出している。そして、この突出部17aに回転板18が嵌合され、該回転板18の中心から偏倚した位置にハンドル18aが、該回転板18に対して回転可能に支持させてある。
【0029】
前記ウォームホイール13bには前記揺動アーム14の基端部が固定されており、該揺動アーム14の先端部は前記ガイドレール11bに案内されて摺動可能な摺動ブラケット19a、19bに掛け渡した支持ピン19に回転可能に支持させてある。
【0030】
前記底板12の前端部には前記支持ブラケット12aの一方に目盛板31が設けられており、傾斜台板11に取り付けられた指標部材32がこの目盛板31に刻まれた目盛りを指示するようにしてある。
【0031】
また、図1に示すように、前記ベースプレート23と傾斜台板11の表面に突設させたブラケット11cとに、弾性手段としての引張コイルバネからなる支持バネ33が掛け渡されている。
【0032】
以上により構成されたこの発明に係るエックス線分析装置用支持台について、以下にその動作を説明する。なお、エックス線分析装置2の動作については、概略を説明する。
【0033】
被測定位置が水平面以外の傾斜面あるいは鉛直面内に存する場合には、前記傾斜台板11を所望の角度に傾けて、前記エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向とを含むデータ取得面が、被測定位置Pを含む測定対象物Oの面に対して直交するようにする必要がある。前記傾斜台板11を傾斜させるには、前記ハンドル18aを把持して旋回させる。この旋回により前記回転板18が回転し、該回転板18を嵌合させてある前記駆動ロッド17が回転する。このため、駆動ロッド17に連結した前記ウォーム13aが回転し、このウォーム13aの回転により前記ウォームホイール13bが、回転することになる。このウォームホイール13bには前記揺動アーム14が取り付けられているから、ウォームホイール13bの回転によって揺動アーム14が揺動する。このとき、揺動アーム14が、図1に想像線で示す位置から実線で示す位置まで揺動する方向に、前記ハンドル18aを旋回させる。この揺動アーム14の先端部は前記支持ピン19に対して回転可能に連繋させてあり、この支持ピン19は傾斜台板11の裏面に設けられた前記ガイドレール11bに摺動可能に連繋させた摺動ブラケット19a、19bに掛け渡されているから、該揺動アーム14が揺動すると、摺動ブラケット19a、19bがガイドレール11bを摺動しながら傾斜台板11を、前記ヒンジ部11dを中心として、図1において時計回り方向に揺動させる。このため、傾斜台板11が揺動アーム14の揺動の角度に応じて徐々に傾斜することになり、エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向とを含むデータ取得面が、傾斜台板11の傾斜角度に応じて傾くことになる。これにより、このデータ取得面を被測定位置を含む面に直交する状態として測定を行えば、被測定位置Pの組成分析を正確に行うことができる測定データを取得することができることになる。
【0034】
図4および図5は、水平面内にある被測定位置について測定データを取得する場合を示している。エックス線分析装置2では、エックス線照射装置21の照射方向とエックス線検出装置22の検出方向とが被測定位置Pを通り、該被測定位置を含む面に直交する直線に対して対称な関係となる必要があると共に、この関係を保って照射方向と検出方向とが異なる位置にエックス線照射装置21とエックス線検出装置22とを移動して測定を行う。例えば、照射方向と検出方向とを、図4に示すように広角とした状態と、図5に示すように狭角とした状態とのそれぞれについて測定データを取得する。
【0035】
図4に示すように、被測定位置Pに対してエックス線照射装置21からエックス線が照射され、該被測定位置Pから放出されたエックス線がエックス線検出装置22で検出されるように、照射方向と検出方向が被測定位置Pで交差するように位置の調整を行う。この交点の位置はエックス線分析装置2とって既知であり、前記測距装置28から発せられた光線はこの交点を通過するものとしてあるから、前記測距装置28から発せられた光線が被測定位置Pに入射するように、前記ベースプレート駆動モータ23bと支持プレート駆動モータ26bとを作動させて、ベースプレート23と支持プレート26を移動させる。照射方向と検出方向との交点が被測定位置Pと一致した状態で、エックス線照射装置21からエックス線を照射し、被測定位置Pから放出されるエックス線をエックス線検出装置22で捕捉して測定データを取得する。このとき、ベースプレート23を移動するためベースプレート駆動モータ23bは前記支持バネ33の復元力と均衡を保ちながら動作して、ベースプレート23を昇降させる。したがって、ベースプレート23が自重により下降してしまうことがなく、円滑に位置調整を行うことができる。
【0036】
図4に示す位置における測定データが取得されたならば、図5に示す位置までエックス線照射装置21とエックス線検出装置22とを移動させる。これらエックス線照射装置21とエックス線検出装置22とを移動させるには、前記ステッピングモータ21c、22cをそれぞれ駆動する。これらステッピングモータ21c、22cの出力軸の回転によって、該出力軸に嵌着させたギヤ21d、22dが回転し、該ギヤ21d、22dと噛合している前記ラック24に対して移動することになる。また、ステッピングモータ21c、22cは保持プレート21b、22bに設けられているから、保持プレート21b、22bが前記ガイドレール25に案内されて移動することになる。これらラック24とガイドレール25とは、照射方向と検出方向との交点を中心とした円弧状に形成されているから、保持プレート21b、22bのそれぞれに取り付けられたエックス線照射装置21とエックス線検出装置22とは、照射方向と検出方向との交点を中心とした円弧に沿って移動することになる。このため、移動の前後においても照射方向と検出方向との交点と被測定位置Pとが一致した状態が維持されている。そして、図5に示す位置にある状態で、被測定位置Pについての測定データを取得することになる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明に係るエックス線分析装置用支持台によれば、鉛直面以外の面における被測定位置について測定データを取得できるから、携行型のエックス線分析装置の汎用性をより高めることができ、特に、鉄道の線路の腐食状況を分析することに有利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る支持台に取り付けられたエックス線分析装置で、水平面内の被測定位置について測定を行える状態を示す側面図である。
【図2】この発明に係る支持台に取り付けられたエックス線分析装置で、鉛直面内の被測定位置について測定を行える状態を示す正面図である。
【図3】図1に示す状態の背面図である。
【図4】水平面内の被測定位置に測定を行う場合の動作を説明する概略の正面図で、エックス線照射装置とエックス線検出装置とが一の位置にある状態を示している。
【図5】水平面内の被測定位置に測定を行う場合の動作を説明する概略の正面図で、エックス線照射装置とエックス線検出装置とが他の位置にある状態を示している。
【符号の説明】
【0039】
O 測定対象物
P 被測定位置
1 支持台
2 エックス線分析装置
11 傾斜台板
11a 固定ネジ
11b ガイドレール
11c ブラケット
12 底板
13 ウォームギヤ(倍力機構)
13a ウォーム
13b ウォームホイール
14 揺動アーム
15a、15b 軸受
16a、16b 軸受
17 駆動ロッド
17a 突出部
18 回転板
18a ハンドル
19 支持ピン
19a、19b 摺動ブラケット
21 エックス線照射装置(エックス線照射手段)
21a キャピラリー
22 エックス線検出装置(エックス線検出手段)
22a キャピラリー
23 ベースプレート
23b ベースプレート駆動モータ
24 ラック
25 ガイドレール
26 支持プレート
26b 支持プレート駆動モータ
27 架台プレート
33 支持バネ(弾性手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の被測定位置に対して白色エックス線を照射するエックス線照射手段と、前記被測定位置から放出されたエックス線のエネルギーと強度を検出するエックス線検出手段とを有し、照射角度と検出角度を所定の関係に保って前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とをそれぞれ移動させ、これらエックス線照射手段の照射方向とエックス線検出手段の検出方向とがなす角の二等分線の方向にこれらエックス線照射手段とエックス線検出手段とを移動可能に支持して、前記エックス線検出手段により取得されたエックス線のエネルギーと強度とに基づいて回折エックス線分析と蛍光エックス線分析を行うエックス線分析装置を、前記照射方向と検出方向とを含むデータ取得面が水平方向以外の方向の面に位置させるために、傾けるためのエックス線分析装置用支持台において、
前記エックス線分析装置の架台プレートを載置させて固定する傾斜台板と、
前記傾斜台板の前記エックス線分析装置の被測定位置側の端部側に、前記データ取得面に平行で、前記二等分線を含む鉛直面と直交する方向の軸を設け、
前記軸を中心として前記傾斜台板を揺動可能に支持させ、
前記傾斜台板を揺動させる揺動機構を設け、
前記架台プレートに対して前記二等分線の方向に移動可能に前記エックス線照射手段とエックス線検出手段とを連繋させて設けたベースプレートの後端部と前記傾斜台板との間に弾性手段を掛け渡してあることを特徴とするエックス線分析装置用支持台。
【請求項2】
前記揺動機構に倍力機構を用いたことを特徴とする請求項1に記載のエックス線分析装置用支持台。
【請求項3】
前記揺動機構を、前記二等分線の方向と平行な方向を回転軸としたウォームと、該ウォームと噛合するウォームホイールとからなり、該ウォームホイールに揺動アームの一端部を連繋させ、他端部を前記傾斜台板に回動可能で、かつ、摺動可能に連繋させたことを特徴とする請求項1に記載のエックス線分析装置用支持台。
【請求項4】
前記弾性手段を引張コイルバネとしたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載のエックス線分析装置用支持台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−216631(P2009−216631A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62499(P2008−62499)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】