説明

エッジ検出方法およびエッジ検出装置

【目的】本発明は、測長対象のパターンのエッジ位置を画像上で検出するエッジ位置検出方法およびエッジ検出装置に関し、ラインプロファイルのエッジ部分のノイズなどの影響を極力排した高精度かつ再現性良好なエッジ位置を決定してパターンの精密測長を実現することを目的とする。
【構成】 測長対象のパターンを横切る異なる場所の複数のラインプロファイルを取得するステップと、取得したラインプロファイルのエッジ付近の曲線からモデル曲線を生成するステップと、生成したモデル曲線と、複数のプロファイルとをそれぞれ重ねてその輝度の差をもとにフッティングポイントをそれぞれ算出するステップと、算出したフッティングポイントに、モデル曲線が所定閾値を横切る点の位置を加算した点をエッジ位置とそれぞれ算出するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測長対象のパターンのエッジ位置を画像上で検出するエッジ位置検出方法およびエッジ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型電子顕微鏡などで取得したマスクやLSI上のパターンの測長は、当該パターン画像上で当該パターンの左端、右端の位置をそれぞれ決めて両者の間の距離を測長し、当該パターンの幅の寸法を自動計測している。
【0003】
この際、パターンの左端、右端の位置は、ラインプロファイル(パターンを横切る走査について、そのときの横軸を距離、縦軸を輝度としたときのラインプロファイル)の中点の位置(あるいは所定閾値02.と0.8を横切るときのその中点の位置)を決めて、当該位置(左端、右端)の間の距離を寸法として自動計測していた。
【0004】
また、ラインプロファイルの端(パターンの端)の部分について、予め1次、2次などの曲線を決めておき、当該曲線がラインプロファイルと一致する点をエッジ位置(左端、右端)と求め、当該求めた位置(左端、右端)の間の距離をパターンの寸法と自動計測していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の前者の手法では、パターンのエッジ部分のラインプロファイルにノイズが乗っていた場合にはその精度、更に再現性が充分に得られないという問題があった。
【0006】
また、上述した従来の後者の手法では、パターンのエッジ部分について予め決めた1次、2次などの曲線と最も一致する点を求めていたため、当該曲線が現在測定しようとするパターンのエッジ部分の曲線に必ずしも最適でなく、充分な精度、更に、再現性が得られないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するため、測長対象領域から取得したラインプロファイルの1本あるいは複数本からモデル曲線を生成し、当該生成したモデル曲線とラインプロファイルのエッジ付近の曲線との差の絶対値が最小のフィッティングポイントを求め、これに所定閾値のときのシフト量を加算してエッジ位置と決定するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、取得したラインプロファイルの1本あるいは複数本からモデル曲線を生成し、当該生成したモデル曲線とラインプロファイルのエッジ付近の曲線との差の絶対値が最小のフィッティングポイントを求め、これに所定閾値のときのシフト量を加算してエッジ位置と決定することにより、ラインプロファイルのエッジ部分のノイズなどの影響を極力排した高精度かつ再現性良好なエッジ位置を決定してパターンの精密測長を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、取得したラインプロファイルの1本あるいは複数本からモデル曲線を生成し、当該生成したモデル曲線とラインプロファイルのエッジ付近の曲線との差の絶対値が最小のフィッティングポイントを求め、これに所定閾値のときのシフト量を加算してエッジ位置と決定し、ラインプロファイルのエッジ部分のノイズなどの影響を極力排した高精度かつ再現性良好なエッジ位置を決定してパターンの精密測長を実現した。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
図1において、電子光学系1は、走査型電子顕微鏡などの鏡筒であって、電子線ビームを発生する電子銃、発生された電子線ビームを集束する集束レンズ、集束された電子線ビームを試料3の上で細く絞る対物レンズ、試料3の上で細く絞られた電子線ビームを平面走査(X方向およびY方向に走査)するための2段の偏向系、更に、細く絞った電子線ビームで試料3の上を平面走査したときに放出された2次電子、光、反射された反射電子を検出する検出器などから構成され、試料3の表面の画像(2次電子画像、反射電子画像)などを生成するものである。
【0011】
試料室2は、図示外の真空排気系で真空排気して試料3を真空中に収納する容器である。
【0012】
試料3は、測長対象の試料であって、例えばマスクやLSIなどの測長対象のパターンの形成されたものである。
【0013】
PC11は、パソコンであって、プログラムに従い各種処理を実行するものであり、ここでは、画像取得手段12、シフト量算出手段13、エッジ位置算出手段14、画像ファイル15、出力ファイル16、表示装置17、および入出力手段18などから構成されるものである。
【0014】
画像取得手段12は、図示外の制御系に指示を発し、電子光学系1を動作させて試料3の表面の画像(例えばマスクのパターンの部分の画像(2次電子画像、反射電子画像))を取得する公知のものである。
【0015】
シフト量算出手段13は、ラインプロファイルから生成したモデル曲線が所定閾値と交差する点の位置(シフト量、図4の(a)参照)を算出するものである(図2から図5を用いて後述する)。
【0016】
エッジ位置算出手段14は、画像上でパターンのエッジ位置を算出するものである(
図2から図5を用いて後述する)。
【0017】
画像ファイル15は、試料3から取得した画像を保持するものである。
出力ファイル16は、エッジ位置などの算出、計測した結果を格納するものである。
【0018】
表示装置17は、画像などを表示するものである。
入出力装置18は、各種入力装置(例えばマウス、キーボード)および各種出力装置である。
【0019】
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の動作を詳細に説明する。
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
【0020】
図2の(a)は、モデル曲線の決定のフローチャートを示す。
図2の(a−1)において、S1は、1番目のプロファイルから得られた3次曲線をモデル曲線とする。これは、後述する図3の(b)の画像上のパターンを横切るプロファイルを異なる位置で複数取得し、1番目のプロファイルのエッジ近傍の曲線をそのまま3次曲線で近似してモデル曲線と決定することを意味する。
【0021】
以上のS1によって、パターンを横切るラインプロファイルの1番目のエッジ近傍の曲線を3次曲線で近似し、モデル曲線を生成することにより、ラインプロファイルに適したモデル曲線を動的に自動生成することが可能となる。そして、生成したモデル曲線と1番目、2番目、・・・50番目のプロファイルとそれぞれ重ねてその差の絶対値の総和が最も小さくなる位置をフィッティングポイントをそれぞれ算出する(図3の(c),(d)参照)。
【0022】
図2の(a−2)において、S11は、1番目のプロファイルのエッジ付近から、最初の3次のモデル曲線を決める。これは、既述したS1と同様に、1番目のプロファイルのエッジ付近の曲線を、3次曲線で表した(近似した)モデル曲線を生成する。
【0023】
S12は、2番目のプロファイルのエッジ付近で、最初のモデル曲線と比較を行う。よく合致した処で、2番目の3次曲線近似と最初のモデル曲線との平均化処理を行う。これにより、1番目と2番目のプロファイルのエッジ付近で両者の平均化された3次曲線のモデル曲線が生成されることとなる。
【0024】
S13は、これを新たなモデル曲線として、50番目まで繰り返す。最終に得られた3次曲線をモデル曲線とする。
【0025】
以上のS11からS13によって、パターンを横切るラインプロファイルの1番目のエッジ近傍の曲線を3次曲線で近似し、モデル曲線を生成し、次に、当該モデル曲線と2番目のラインプロファイルとの平均化処理して3次曲線を作成することを50番目のラインプロファイルまで繰り返し、最終的に得られた3次曲線をモデル曲線として算出することにより、1番目から50番目のラインプロファイルを3次曲線近似で平均化処理してより精度の高くかつ再現性の良好なモデル曲線を、動的に自動生成することが可能となる。
【0026】
図2の(b)は、フィッティングポイントの算出フローチャートを示す。
図2の(b)において、S21は、モデル曲線とエッジ付近で、ずらしながら、夫々の位置でのモデル曲線とプロファイルの輝度の差の絶対値の総和を求め、総和が最小になる所をフィット位置(フィッティングポイント)とする。これは、後述する図3の(c)、(d)に示すように、図2の(a)で生成したモデル曲線を、ラインプロファイルのエッジ付近でずらしながら、当該モデル曲線とラインプロファイルの輝度の差の絶対値の総和を求め、当該総和が最小となるフィッティングポイント(モデル曲線の例えば最小値となる位置)を算出する。
【0027】
以上のS21によって、図2の(a)で算出したモデル曲線と、1番目、2番目、・・・50番目のラインプロファイルのエッジ付近で最も一致するフィッティングポイントをそれぞれ自動算出することが可能となる。
【0028】
図2の(c)は、エッジ検出のフローチャートを示す。
図2の(c)において、S31は、モデル曲線の最大値と最小値の差を1とする(規格化する)。
【0029】
S32は、モデル曲線上で指定された閾値の位置を求める。これは、後述する図4の(e)に示すように、モデル曲線上で指定された閾値(例えば0.8、最適値は実験で求める)と交差する位置(横軸も位置)を求める。
【0030】
S33は、モデル曲線の始点(左端)から閾値までの距離をシフト値とする。これは、図4の(e)に示すように、モデル曲線の始点(左端、フィッティングポイント)からS32で算出した閾値と交差する位置までの距離をシフト値として求める。
【0031】
S34は、夫々のプロファイルで見つけたフィッティングポイントに加える。
S35は、各エッジ位置とする。これらS34、S35は、S33で求めた図4の(e)のシフト値を、1番目から50番目のラインプロファイルについてS21で算出したフィッティングポイントにそれぞれ加えて各エッジ位置と決定する。
【0032】
以上のS31からS35によって、モデル曲線上で所定閾値(例えば0.8)と交差する位置を求めてこの位置とモデル曲線の始点(フィッティングポイントに相当)との距離をシフト値として算出し、当該算出したシフト値を、1番目から50番目のラインプロファイルについてS21でモデル曲線とそれぞれフィッティングしたフィッティングポイントに加算して各ラインプロファイルのエッジ位置をそれぞれ算出することが可能となる。これにより、モデル曲線を1つのラインプロファイルあるいは複数(あるいは全部)のラインプロファイルから動的に最適に作成することが可能となり、しかも、更に、実験で求めた閾値がモデル曲線との交点の位置(シフト値)を求めてフィッティングポイントに加算してエッジ位置を算出することで最適なエッジ位置を決定でき、高精度かつ再現性良好なパターンのエッジ位置を画像上で自動算出することが可能となる。
【0033】
図3および図4は、本発明の説明図を示す。
図3の(a)は、モデル曲線の例を示す。図示のモデル曲線は、既述した図2の(a−1)あるいは(a−2)で自動生成した3次のモデル曲線の例を示す。図2の(a−1)では1〜50番目のラインプロファイル中の1つ(例えば1番目)のラインプロファイルのエッジ付近の曲線を3次曲線で近似して生成したモデル曲線である。また、図2の(a−2)では1〜50番目のラインプロファイルの1番目で作成した3次曲線のモデル曲線を、2番目、3番目・・・50番目のラインプロファイルで平均化処理した後の3次曲線のモデル曲線である。
【0034】
以上のように、測長対象のパターンのラインプロファイルのエッジ付近からモデル曲線を生成することにより、画像上のラインプロファイルに最適なモデル曲線を動的かつ自動的に作成することが可能となる。
【0035】
図3の(b)は、マスク上のパターンを横切る異なる場所から複数のラインプロファイルを取得する様子を示す。ここでは、1番目から50番目までの50本のラインプロファイルを取得する。
【0036】
図3の(c)は、モデル曲線を1番目のラインプロファイルにエッジ付近でずらしながら輝度の差の絶対値の総和を求める様子を示す。
【0037】
図3の(d)は、1番目のラインプロファイルのフィット位置(フィッティングポイント)を算出した状態を示す。これは、図3の(c)で算出した総和が最小の位置を、フィッティングポイントして算出する。尚、計算を簡略化し、図3の(c)で、モデル曲線を1番目のラインプロファイルにエッジ付近でずらしながら輝度の差(あるいは輝度の絶対値の差)が最小となる位置を、フィッティングポイントして求めるようにしても良い。
【0038】
図4の(e)は、モデル曲線のシフト値を算出する様子を示す。モデル曲線は、図3の(a)でラインプロファイルから動的に自動作成したものであり、当該モデル曲線の閾値(例えば0.8、この値は実験で最適の値を算出)との交点と、当該モデル曲線の始点(最小値、フィッティングポイントに相当する位置)との距離をシフト値として算出する。
【0039】
図4の(f)は、1番目のプロファイルのエッジ位置決定の様子を示す。1番目のプロファイルのフィッティングポイントは、既述した図3の(d)で算出し、当該算出した1番目のラインプロファイルのフィッティングポイントに、図4の(e)で算出したモデル曲線のシフト値を加算し、エッジ位置を算出する。同様に、2番目から50番目のエッジ位置をそれぞれ算出する。そして、これら算出したエッジ位置の平均値を算出して当該パターンのエッジ位置と決定する。モデル曲線を固定とした場合に比較し、本発明の図2から図4でラインプロファイルから動的に3次曲線のモデル曲線を自動生成してエッジ位置を算出した実験では、測定再現精度が0.1nm程度(20%)改善された(図5参照)。
【0040】
図5は、結果例を示す。横軸のThreshold(閾値)を変えたときの縦軸の3σ(偏差)の変化の様子を示す。横軸の閾値は、既述した図4の(e)のモデル曲線と交差する閾値の値を表し、偏差の3σは1番目から50番目のプロファイルについて求めたエッジ位置の公知の偏差(3σ)である。
【0041】
図5の(a)は従来手法(モデル曲線が固定)の場合の例を示し、図5の(b)は本発明の図2から図4で説明した手法(モデル曲線を動的に算出)の場合の例を示す。両者を同じ条件で実験したものが図示のぞれぞれも曲線であり、図5の(b)の本発明の手法は測定再現精度(3σ)が良好で、0.1nm程度(20%)改善できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、取得したラインプロファイルの1本あるいは複数本からモデル曲線を生成し、当該生成したモデル曲線とラインプロファイルのエッジ付近の曲線との差の絶対値が最小のフィッティングポイントを求め、これに所定閾値のときのシフト量を加算してエッジ位置と決定し、ラインプロファイルのエッジ部分のノイズなどの影響を極力排した高精度かつ再現性良好なエッジ位置を決定してパターンの精密測長を実現するエッジ検出方法およびエッジ検出装置に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャートである。
【図3】本発明の説明図(その1)である。
【図4】本発明の説明図(その2)である。
【図5】結果例である。
【符号の説明】
【0044】
1:電子光学系
2:試料室
3:試料
11:PC(パソコン)
12:画像取得手段
13:シフト量算出手段
14:エッジ位置算出手段
15:画像ファイル
16:出力ファイル
17:表示装置
18:入出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測長対象のパターンのエッジ位置を画像上で検出するエッジ位置検出方法において、
前記測長対象のパターンを横切る異なる場所の複数のラインプロファイルを取得するステップと、
前記取得したラインプロファイルのエッジ付近の曲線からモデル曲線を生成するステップと、
前記生成したモデル曲線と、前記複数のプロファイルとをそれぞれ重ねてその輝度の差をもとにフッティングポイントをそれぞれ算出するステップと、
前記算出したフッティングポイントに、前記モデル曲線が所定閾値を横切る点の位置を加算した点をエッジ位置とそれぞれ算出するステップと
を有することを特徴とするエッジ位置検出方法。
【請求項2】
前記輝度の差が最小あるいは輝度の差の絶対値が最小あるいは輝度の差の絶対値の総和が最小となる点を前記フッティングポイントとしたことを特徴とする請求項1記載のエッジ位置検出方法。
【請求項3】
前記モデル曲線として、パターンを横切る任意の1本のラインプロファイル中のエッジ近傍の曲線を当該モデル曲線、あるいは1本目のラインプロファイル中のエッジ近傍の曲線を最初のモデル曲線とし、このモデル曲線と2本目のラインプロファイルと平均化処理して新たなモデル曲線とすることを所定本数のラインプロファイルについて繰り返した後のものをモデル曲線としたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のエッジ位置検出方法。
【請求項4】
前記モデル曲線を、3次曲線で近似したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のエッジ位置検出方法。
【請求項5】
画像上のパターンのエッジ位置を検出するエッジ位置検出装置において、
前記測長対象のパターンを横切る異なる場所の複数のラインプロファイルを取得する手段と、
前記取得したラインプロファイルのエッジ付近の曲線からモデル曲線を生成する手段と、
前記生成したモデル曲線と、前記複数のプロファイルとをそれぞれ重ねてその輝度の差をもとにフッティングポイントをそれぞれ算出する手段と、
前記算出したフッティングポイントに、前記モデル曲線が所定閾値を横切る点の位置を加算した点をエッジ位置とそれぞれ算出する手段と
を備えたことを特徴とするエッジ位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−178294(P2007−178294A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377799(P2005−377799)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(591012668)株式会社ホロン (63)
【Fターム(参考)】