説明

エッチングレジスト用のインク組成物、これを利用したエッチングレジストパターンの形成方法及び微細溝の形成方法

本発明は、素材上での広がり性が小さくて微細パターンを形成でき、エッチング液に対する耐化学性が強化され、印刷回路基板の銅箔エッチングだけではなく、ステンレス鋼基材の深いエッチングにも使われうる、エッチングレジスト用のインク組成物、これを利用したエッチングレジストパターンの形成方法及び微細溝の形成方法に係り、該組成物は、水及び水溶性高分子または高分子エマルジョンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチングレジスト用のインク組成物、これを利用したエッチングレジストパターンの形成方法及び微細溝(マイクロチャネル)の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチングによりパターンを形成するのに使われる耐エッチング性被膜の一種であるエッチングレジストは、半導体回路製作と印刷回路基板製造との工程に主に多用されている。前記工程では、エッチングレジストとして光反応性物質であるフォトレジストを主に使用してきた。フォトレジストを利用したエッチングレジストパターンの形成工程は、次の通りである。まず、パターンを形成しようとする表面に液状のフォトレジストをスピンコーティングなどの方法で塗布して膜を形成するか、またはフィルム形状のドライフォトレジストを表面に接着するなどの方法で膜を形成する。その後、形成しようとするパターンを記録したフォトマスクを利用し、紫外線または電子ビームなどでパターンが形成される部分または形成されない部分だけ選択的に照射し、照射された部分のみ選択的に化学反応を起こさせる。その後、現像工程を介してエッチングしようとする表面だけフォトレジストを除去してパターンを形成する。次に、エッチング工程を介してフォトレジストが覆われていない部分だけを選択的にエッチングする。最後に、ストリッピング工程を行い、エッチングされていないパターン上のフォトレジスト物質を除去する。
【0003】
フォトレジストを利用したエッチングレジストパターンの形成方法は、精巧なパターンを得ることができるという長所はあるが、基材全体の表面に膜を形成しなければならないので、フォトレジスト物質の使用量が多いという短所がある。また、あらゆるフォトレジスト法は露光工程が必要であるが、露光のための装備が高価であり、あらかじめパターンの記録されたフォトマスクを使用しなければならないので、この設計から製作まで長時間がかかる。
【0004】
一方、パターンサイズが大きくて高精度が要求されない場合には、所望のパターンが記録されたマスクの開口部を通して、エッチングしようとする基材表面にエッチングレジストのパターンを描いたり、またはエッチングしようとする物質の表面にエッチングマスク物質で直接パターンを描いたり、または全体表面にエッチングレジスト物質を塗り、パターン形成部分を覆っているエッチングレジスト物質のみにかき傷をつけて除去したり、スタンプまたは印刷などの方法でエッチングレジストのパターンを設けることも可能である。しかし、それらの場合には、手作業量で行わなければならないため、コストがかかり、かつ時間が長くかかり、場合によっては、あらかじめパターニングされたスタンプや印刷版などを必要とすることもある。
【0005】
かような問題点を解決するために、インクジェット技術を利用してエッチングレジスト物質を、エッチング工程を適用する基材上にパターン化して形成する方法が、特開昭56−66089号公報、特開昭62−181490号公報、特開平9−8436号公報、及び国際特許出願GB9912437(WO 01/11426)号公報に開示されている。前記特許文献では、エッチングレジスト物質をインクジェットノズルで噴射した後、エッチング工程を経て所望のパターンを得るのである。該方式を利用すれば、コンピュータを利用してパターンを設計した後、インクジェットプリンタを利用し、すぐに基材上にパターニングされたエッチングレジスト製作が可能なので、工程時間と費用とを節約できるという長所がある。
【0006】
インクジェット方式によるエッチングレジスト用のインク組成物は、一般的に有機溶媒に高分子添加剤、顔料などを分散または溶解させた形態である。高分子添加剤としては、一般的に、アクリル樹脂、ノボラック樹脂などが使われ、それらは、有機溶媒に良好に溶解または分散され、耐エッチング性はすぐれている。
【0007】
しかし、前記のようなインク組成物に使われる有機溶媒は、環境を汚染するという問題点があり、基材との接触角が小さいので、微細なパターンを形成し難いという問題点がある。これを解決するためには、有機溶媒の代わりに水、または水と共に水性溶媒を使用する必要があり、この場合、前記高分子添加剤とは異なり、水及び水性溶媒に対する溶解性または分散性にすぐれる高分子添加剤を使用する必要がある。
【0008】
一方、エッチングレジスト用のインク組成物は、金属のような基材への付着力にすぐれるだけではなく、その後のエッチング工程に使われる水、塩酸及び塩化鉄を含むエッチング液に対する耐性もまた十分にすぐれていなければならない。
【0009】
また、前記特許出願GB9912437(WO 01/11426)号公報に使われたエッチングレジスト用のインク組成物は、紫外線または電子ビームを使用して硬化されるが、前記特許文献には、インクの組成については具体的に記述されていないが、一般的に、光硬化型インクには、比較的高価な光開始剤が必ず添加されていなければならない。また、電子ビームを使用する場合は、電子ビーム装置を真空に維持しなければならない。従って、紫外線や電子ビームに頼らずとも、乾燥または熱硬化によってしっかりとした被膜を形成できるエッチングレジスト用のインク組成物がさらに望ましい。
【特許文献1】特開昭56−66089号公報
【特許文献2】特開昭62−181490号公報
【特許文献3】特開平9−8436号公報
【特許文献4】国際公開WO 01/11426号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする第一の技術的課題は、環境汚染の問題点が少なく、微細なパターン形成が可能であり、エッチング液に対する耐性にすぐれ、熱硬化または乾燥により丈夫な被膜を形成するエッチングレジスト用のインク組成物を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする第二の技術的課題は、エッチングレジスト用のインク組成物を利用したエッチングレジストパターンの形成方法を提供することである。
【0012】
本発明が解決しようとする第三の技術的課題は、エッチングレジスト用のインク組成物を利用した微細溝の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の第1様態では、組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)と、水10ないし95重量部とを含むエッチングレジスト用のインク組成物が提供される。
【0014】
本発明の一具現例によれば、前記インク組成物は、50重量部以下の乾燥防止剤をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の他の具現例によれば、前記インク組成物は、水性溶媒をさらに含むことができる。
【0016】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記インク組成物は、5重量部以下の疎水性物質をさらに含むことができる。
【0017】
本発明のさらに他の具現例によれば、前記インク組成物は、5重量部未満のその他添加剤をさらに含むことができる。
【0018】
本発明の第2様態では、エッチングレジスト用のインク組成物を基材上に所望のパターンに噴射する段階と、前記噴射されたインク組成物を熱硬化または乾燥させる段階とを含むエッチングレジストパターンの形成方法であって、前記エッチングレジスト用のインク組成物が組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)及び水10ないし95重量部を含むエッチングレジストパターンの形成方法が提供される。
【0019】
本発明の一具現例によれば、エッチングレジスト用のインク組成物は、インクジェット方式で基材上に所望のパターンに噴射できる。
【0020】
また本発明の第3様態では、エッチングレジスト用のインク組成物を基材上に所望のパターンに噴射する段階と、前記噴射されたインク組成物を熱硬化または乾燥させてエッチングレジストパターンを形成する段階と、前記エッチングレジストパターンが形成された基材を選択的にエッチングする段階と、残っているエッチングレジストパターンを除去する段階とを含む微細溝の形成方法であって、前記エッチングレジスト用のインク組成物が組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)及び水10ないし95重量部を含む微細溝の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるインク組成物を使用すれば、インクジェットプリンタを制御するコンピュータプログラムのデータ操作だけで、パターンに対する簡単な生成、変形、保存が可能であり、放射線照射装置が不要であり、水または水性溶媒を使用することにより、基材上の接触角が大きくて広がる現象が少ないので、微細なパターンを形成するのに適している。また、揮発性有機溶媒による環境汚染の恐れが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明によるエッチングレジスト用のインク組成物は、組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)及び水10ないし95重量部を含むことを特徴とする。
【0023】
前記のような組成物は、水を溶媒とすることにより、従来の有機溶媒を使用することによる環境問題を起こさず、基材表面との接触角が大きくて精巧なパターン形成に有利である。
【0024】
本発明によるインク組成物で、水は、10ないし95重量部の量で含まれる。また、水以外に水性溶媒をさらに含むことができるが、その場合には、水と水性溶媒とを合わせた溶媒の総量が10ないし95重量である。
【0025】
水または水と水性溶媒の量が10重量部未満ならば、インクの粘度が増大してノズルから噴射され難く、95重量部を超えれば、他の成分の含有量が少なくなり、乾燥後に形成された被膜が有効なエッチングレジストの役割を行い難い。
【0026】
水と共に使われうる水性溶媒としては、特別に制限されるものではないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、N−メチルピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エチル3−エトキシプロピオネート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、乳酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、グリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、ジメチルホルムアミド、テトラメチルスルホン、エチレングリコールアセテート、エチルエステルアセテート、乳酸エチル及びポリエチレングリコールからなる群から選択された1種以上でありうる。水と共に使用できる水性溶媒としては、前記例に限定されず、インクで水と急速な相分離の起こらないものならば、いかなるものでも使用可能である。
【0027】
前記組成物に含まれる水溶性高分子または高分子エマルジョンは、水に溶解されるか、または水とエマルジョンを形成する高分子物質であり、インク状態に希釈するとき、十分に低い粘度、望ましくは、0.5ないし50cpの粘度を有することが望ましい。
【0028】
水溶性高分子としては、3ないし30個のエトキシ基またはプロポキシ基を含有した多官能性(メタ)アクリル高分子またはウレタン(メタ)アクリル高分子が望ましい。さらに望ましくは、15ないし25個のエトキシ基を含有した多官能性(メタ)アクリル高分子またはウレタン(メタ)アクリル高分子である。
【0029】
エトキシ基またはプロポキシ基を含有した多官能性(メタ)アクリル高分子またはウレタン(メタ)アクリル高分子の例としては、エトキシ化されたビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化されたグリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化されたポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化されたネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化されたトリメチロプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化またはプロポキシ化されたペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化されたトリメチロプロパントリアクリレート、エトキシ化された2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、プロポキシ化またはエトキシ化されたビスフェノール−A−ジアクリレート、エトキシ化されたシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化されたビスフェノール−A−ジメタクリレート、エトキシ化されたポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化されたポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0030】
高分子エマルジョンとしては、アクリル高分子またはウレタンアクリル高分子エマルジョンを挙げることができる。具体的な例としては、UCB社のEbecryl製品群、Avecia社のNeocryl製品群から見い出すことができる。
【0031】
前記高分子エマルジョンは、高分子以外に界面活性剤を含んでエマルジョン状態をなす。
【0032】
前記高分子エマルジョンに熱硬化を促進できる架橋結合剤、例えば、Avecia社のCX−100を添加できる。
【0033】
水溶性高分子または高分子エマルジョンとしては、前記例に限定されず、水が主溶媒であるインクで分散または溶解を介して安定した高分子物質はいずれも使用可能である。望ましくは、それら水溶性高分子または高分子エマルジョンは、300ないし500,000の分子量を有する。分子量が300より小さければ、基材表面で被膜を形成し難く、分子量が500,000より大きければ、粘度があまりにも大きく、インクジェットノズルに詰まりを招くことがある。
【0034】
前記水溶性高分子または高分子エマルジョンは、熱硬化または乾燥を介して硬化されうる。
【0035】
かような水溶性高分子または高分子エマルジョンの存在により、エッチング液に対する耐性が増大して基材表面への付着力も良好になる。
【0036】
これら水溶性高分子または高分子エマルジョンの含有量は、乾燥質量に換算し、組成物100重量部基準に2ないし50重量部が好ましく、さらに望ましくは、5ないし30重量部である。もし含有量が2重量より少なければ、適切なエッチングレジスト被膜の形成が困難であり、50重量部を超えれば、安定性の高いインクを作り難い。
【0037】
本発明によるエッチングレジスト用組成物は、前記の成分以外に、疎水性物質、乾燥防止剤、その他の添加剤などを含むことができる。
【0038】
疎水性物質は、基材上に形成されたエッチングレジスト膜の内部へのエッチング液の浸透を止める役割を行う。かような疎水性物質の例としては、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンを挙げることができる。前記疎水性物質の添加量は、乾燥質量基準で組成物100重量部に対して5重量部以下が望ましく、過度な添加は、エッチングレジストの付着力を低下させるので望ましくない。
【0039】
前記インク組成物に添加される乾燥防止剤は、インクがインクジェットノズルで乾燥されてノズルを詰まらせることを防止するためのものであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのようなグリコール類;グリセリン;ジエチレングリコールモノブチルエーテルのような多価アルコールのエーテル類;アセテート類;チオグリコール類;グリシン、メチルグリシン、プロリン、アラニン、フェニルアラニンのようなアミノ酸類を添加できる。使用可能な乾燥防止剤は、前記例に限定されるものではなく、一般的にインクジェット用インクで乾燥防止剤として使われるあらゆる物質が使用可能である。
【0040】
前記乾燥防止剤は、必要によって50重量部以下の量で添加できる。50重量部を超えれば、基材上でインクの接触角をあまりにも小さくするので望ましくない。
【0041】
前記インク組成物に含まれうるその他の添加剤としては、インクの表面張力と基材上での接触角調節のための陽イオン性、陰イオン性、両性または非イオン性の界面活性剤;シリコンまたはフッ素系界面活性剤である気泡発生抑制剤;ベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノンのような紫外線吸収剤;フェノールまたはアミンのような光安定剤;クロロメチルフェノールのような微生物抑制剤;EDTAのようなキレート剤;亜硫酸系酸素吸収剤;p−アニソール、ヒドロキノン、ピロカテコール、t−ブチルカテコール、フェノチアジンのような熱硬化抑制剤などの添加剤がインクの用途によって添加されうる。かようなその他の添加剤は、組成物100重量部に対して5重量部未満で添加されることが望ましい。前記添加剤量が5重量部以上ならば、インクの耐エッチング性を低下させるので望ましくない。
【0042】
前記のようなエッチングレジスト用のインク組成物を使用し、本発明によるエッチングレジストパターンを形成する。
【0043】
具体的には、本発明によるエッチングレジストパターンの形成方法は、前記のようなエッチングレジスト用のインク組成物を基材上に所望のパターンに噴射する段階と、前記噴射されたインク組成物を熱硬化または乾燥させる段階とを含む。
【0044】
前記インク組成物を基材上に噴射する前に、インクジェットノズルを詰まらせる大きい粒子を除去するための適切な濾過過程を経ることが望ましい。すなわち、エッチングレジスト用のインク組成物の成分を混合した後、適切な濾過過程を経てインクジェットノズルを詰まらせる大きい粒子を除去した後で使用する。
【0045】
エッチングレジストパターンの形成される基材としては、ステンレス鋼や銅、その他金属物質または印刷回路基板に使われる銅箔積層板のような複合材料を挙げることができるが、前記例に限定されず、ウェットまたはドライエッチング方法でエッチングの可能なあらゆる材料が使われうる。
【0046】
基材の表面は、インクの表面付着力を強化して接触角を調節するために、適切な表面洗浄過程と表面処理過程とを経ることもある。
【0047】
表面洗浄方法は、有機溶媒やアルカリ洗浄液による汚染物質の洗浄、クロム酸、硫酸、塩酸のような酸性物質を利用したエッチング、研磨やショットブラスト(shot blast)のような物理的方法、電気化学的方式による酸化被膜処理(anodizing)、イオンまたはプラズマによる汚染物質除去などの方法が使われうるが、これらに限定されず、その他の一般的な汚染物質除去方法が使われうる。
【0048】
基材として使われる金属と、インク組成物に含まれた高分子物質との接着力を向上させるために、インクジェットノズルを介した噴射工程前に、基材金属表面に付着向上剤処理を行うことができる。
【0049】
付着向上剤としては、一般的に周知のシラン系化合物、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン;またはキレート化合物、例えば,N−ヒドロキシエチル−エチレンジアミノ三酢酸、ニトロ三酢酸、ヒドロキシエチリデン−1,1−二リン酸、アミノトリメチレンリン酸、エチレンジアミノ−テトラメチレンリン酸、ジエチレントリアミノペンタメチレンリン酸、ジエチレントリアミノペンタメチレンリン酸、ヘキサメチレンジアミノテトラエチレンリン酸などが使われうる。
【0050】
前記付着向上剤は、エッチングレジスト用のインク組成物に含めて使用することも可能であるが、インクジェット工程前にあらかじめ洗浄された基材の表面にコーティングして処理することが基材の表面が再汚染されることを防止する効果もあるので、さらに望ましい。また、基材にあらかじめ処理する場合には、エッチングレジスト用インク組成物の安定性またはその他特性を阻害する物質も使用可能である。
【0051】
基材とエッチングレジスト物質との付着力を均一にしたり、または強くするために、前記のような方法を使用できるが、本発明の範囲がそれらの例に限定されるものではない。
【0052】
前記の通りにあらかじめ処理された基材表面に、本発明によるインク組成物をインクジェット装置を利用し、パターンを形成するように噴射できる。インクジェット装置は、一般的な圧電方式または気泡形成方式のノズルを具備できる。
【0053】
その後、所望のパターンにインク組成物が噴射されている基材を乾燥または熱硬化させる。
【0054】
乾燥または熱硬化の操作は、パターンの形成された基材を自然乾燥させるか、またはオーブンまたは熱板上で500℃未満の熱を加えて行うことができる。また、インクジェットインクが噴射されると共に基材を加熱したり、あらかじめ加熱された基材にインク材料を噴射する方法で行うことができるが、本発明の範囲は、特定の乾燥、加熱硬化法に限定されるものではない。
【0055】
前記の通りに製造されたエッチングレジストパターンを使用し、微細溝を形成する方法は、次の通りである。
【0056】
前記のような方法で生成されたエッチングレジストパターンの形成された基材を選択的にエッチングし、残っているエッチングレジストパターンを除去する段階を含む。
【0057】
エッチング方法は、ドライまたはウェットのいずれも使用できる。ウェットエッチング法としては、硫酸、硝酸、クロム酸、塩化鉄−塩酸水溶液と共に素材を腐食するエッチング液が使用可能であり、ドライエッチング法は、プラズマまたはイオンビームによる方法などが使用可能であるが、それらの特定エッチング法に限定されるものではない。
【0058】
エッチングにより最大数百μmの深さにパターンを形成でき、パターンの最小幅は、数μmほどにまですることができる。
【0059】
残っているエッチングレジスト層は、ストリッピング過程を介して除去できる。前記ストリッピングには、アルカリまたは有機溶媒を使用したり、またはブラシなどの物理的方法を使用できる。
【0060】
前記方法を、図面を参考として、さらに詳細に説明する。
図1は、本発明のエッチングレジスト用のインク組成物を利用した微細溝形成工程の順序を図示したものである。図1の(a)段階は、インクジェットヘッドのインクジェットノズル1からエッチングレジスト用インク2を噴射して基材3上にパターンを形成する過程である。図1の(b)段階は、基材3上に形成された、パターニングされたエッチングレジスト用インク2を乾燥または熱硬化の方法によって硬化されたエッチングレジストパターン4を形成する工程である。図1の(c)段階では、エッチング液を使用してエッチングレジストパターン4の形成されていない部分をエッチングし、エッチング部5を形成する。図1の(d)段階では、残ったエッチングレジストパターン4を除去することによってエッチングが完了し、微細溝が形成される。
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。下記の実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0061】
〔実施例〕
[製造例1]
撹拌器にウレタンアクリルエマルジョン10重量部(乾燥質量基準)、ポリテトラフルオロエチレン分散液5重量部、グリセロール10重量部、エチレングリコール20重量部、フッ素系界面活性剤0.1重量部及び脱イオン水54.9重量部を添加して混合した後、1μm径のフィルタで濾過し、エッチングレジスト用インクを製造した。前記インクの接触角は、銅表面では35°、ステンレス鋼表面では55°であり、一般的な有機溶媒を使用した場合より大きい値を有し、従って表面での広がり現象が少なかった。
【0062】
[製造例2]
撹拌器にエトキシ化されたグリセリンの酢酸エステル10重量部、エチレングリコール20重量部、フッ素系界面活性剤0.1重量部、及び脱イオン水69.9重量部を添加して混合した後、1μm径のフィルタで濾過し、エッチングレジスト用インクを製造した。このインクの粘度は15cP、ステンレス鋼表面での接触角は45°であり、一般的な有機溶媒を使用した場合より大きい値を有した。
【0063】
[実施例1]
銅板基材を5%塩酸水溶液と脱イオン水とで洗浄と乾燥した後、前記製造例1で製造したインクを、米国のMICROFAB社のインクジェットヘッドを使用して微細溝パターンに噴射した。その後、80℃の熱板上で3分間乾燥し、また220℃オーブンで30分以上完全に硬化させた後、塩化鉄17重量部と塩酸20重量部とが含まれているエッチング液で30分間エッチングし、残っているエッチングレジストパターンは、アセトンに浸した後でブラシを掛けて除去した。かような操作により、エッチングレジストパターンの形成されていない部分の銅箔を深さ50μm以上エッチングし、微細溝パターンを形成した。この方式で、幅50μm以下のパターンを形成できた。
【0064】
[実施例2]
ステンレス鋼の基板を研磨剤の付着した不織布で拭いた後、10%硫酸水溶液、6%1−ヒドロキシエチレン二リン酸(米国のSigma Aldich社製)及び脱イオン水で洗浄と乾燥とを行った後、前記製造例2で製造したインクをMICROFAB社のインクジェットヘッドを使用して微細溝パターンに噴射した。その後、300℃の熱板で30分以上乾燥し、塩化鉄17重量部と塩酸20重量部とが含まれているエッチング液で2時間エッチングし、残っているエッチングレジストパターンは、アセトンに浸した後でブラシを掛けて除去した。かような操作により、エッチングレジストパターンが形成されていない部分に対して深さ約150μmエッチングし、微細溝パターンを形成した。これもまた幅50μm以下のパターンを形成できた。
【0065】
[比較例1]
水の代わりに、有機溶媒であるエチルエトキシプロピオネートを使用する液晶基板保護コーティング用の樹脂組成物(エポキシ基を含んだアクリレート高分子)を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で微細溝パターンを形成した。前記インク組成物で形成されたエッチングレジストは、エッチング液に対する耐性は優秀であったが、ステンレス鋼の基材上での接触角が3°未満であって大きく広がり、幅2,000μm以下の微細なパターンは形成されなかった。
【0066】
[比較例2]
水の代わりに、有機溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを使用して高分子添加剤として、ポリ(メタアクリレート−ベンジルメタアクリレート)を含有した光硬化型インク組成物を使用し、インクジェットで生成されたパターンに紫外線を照射して硬化することを除いては、実施例1と同じ方法で微細溝パターンを形成した。前記インク組成物を使用したエッチングレジストは、エッチング液に対する耐性は優秀であったが、比較例1と同様に、ステンレス鋼の基材上にでの接触角が3°未満であって大きく広がり、幅2,000μm以下の微細なパターンは形成されなかった。
【0067】
本発明を図面に示した実施形態を用いて説明したが、それらは例示的なものに過ぎず、本技術分野の当業者ならば、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない範囲で多様な変更および変形が可能であるということを理解することができるであろう。従って、本発明の技術的範囲は、説明された実施形態によって定められず、特許請求の範囲により定められねばならない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】エッチングレジスト用のインク組成物を利用した微細溝形成工程の順序を図示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1・・・インクジェットヘッドのインクジェットノズル、2・・・エッチングレジスト用インク、3・・・基材、4・・・エッチングレジストパターン、5・・・エッチング部、6・・・微細溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングレジスト用のインク組成物であって、組成物100重量部に対し、
a)水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)と、
b)水10ないし95重量部とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記水溶性高分子が3ないし30個のエトキシ基またはプロポキシ基を含有した多官能性(メタ)アクリル高分子またはウレタン(メタ)アクリル高分子であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エトキシ基またはプロポキシ基を含有した多官能性(メタ)アクリル高分子またはウレタン(メタ)アクリル高分子が、エトキシ化されたグリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化またはプロポキシ化されたペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシ化またはプロポキシ化されたトリメチロプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化された2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、プロポキシ化またはエトキシ化されたビスフェノール−A−ジアクリレート、エトキシ化されたシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化されたビスフェノール−A−ジメタクリレート、エトキシ化されたポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化されたポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記高分子エマルジョンが、アクリル高分子またはウレタンアクリル高分子のエマルジョンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
50重量部以下の乾燥防止剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
水性溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
5重量部以下の疎水性物質をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤、気泡発生抑制剤、紫外線吸収剤、光安定剤、微生物抑制剤、キレート剤、酸素吸収剤、及び熱硬化剤からなる群から選択された1種以上のその他添加剤を5重量部未満の量でさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
エッチングレジスト用のインク組成物を基材上に所望のパターンに噴射する段階と、
前記噴射されたインク組成物を熱硬化または乾燥させる段階とを含むエッチングレジストパターンの形成方法であって、前記エッチングレジスト用のインク組成物が組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)と、水10ないし95重量部とを含むエッチングレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
エッチングレジスト用のインク組成物をインクジェット方式で噴射することを特徴とする請求項9に記載のエッチングレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
エッチングレジスト用のインク組成物を基材上に所望のパターンに噴射する段階と、
前記噴射されたインク組成物を熱硬化または乾燥させてエッチングレジストパターンを形成する段階と、
前記エッチングレジストパターンが形成された基材を選択的にエッチングする段階と、
残っているエッチングレジストパターンを除去する段階とを含む微細溝の形成方法であって、
前記エッチングレジスト用のインク組成物が組成物100重量部に対し、水溶性高分子または高分子エマルジョン2ないし50重量部(乾燥重量基準)及び水10ないし95重量部を含む微細溝の形成方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−516416(P2008−516416A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531086(P2007−531086)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/KR2005/003076
【国際公開番号】WO2006/031079
【国際公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】