説明

エッチング処理装置

【課題】 単純な構造でかつ被処理膜内のエッチング量の均一性およびエッチングの異方性を向上させたエッチング処理装置を提供する。
【解決手段】 エッチング液11が満たされたエッチング槽12と、エッチング槽12の底部12aに設けられたホットプレート13と、液面11a付近に設けられた冷却器14と、被処理面15aを下方に向けてエッチング液11に浸漬された基板15を保持する基板保持具16等から構成される。ホットプレートによりエッチング液を第1液温に加熱し、冷却器14により液面11a付近のエッチング液11を第1液温よりも低い第2液温に設定することで、エッチング液11の対流を生ぜしめ、上昇する一様なエッチング液の流れを被処理面15aに接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエッチング処理装置に係り、特にエッチング槽のエッチング液に温度差を与えて生じた対流によりエッチングを促進するエッチング処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信システムの高速に伴い、常伝導導体よりも表面抵抗が小さく、周波数分散性が非常に小さい超伝導材料を用いたマイクロ波デバイス、例えば、超伝導フィルタや、超伝導ミキサ、超伝導配線等の研究が進められている。
【0003】
例えば、通信基地に用いられる超伝導フィルタでは、低損失でかつ10W程度の高パワーを取り扱えるフィルタが求められる。また、超伝導配線では素子の微細化に伴い、パターン精度の良好な微細配線が求められている。
【0004】
このようなマイクロ波デバイスは、単結晶基板上に結晶成長した厚膜の酸化物高温超伝導体膜、例えばYBCO膜が用いられ、YBCO膜をウェットエッチング法によりエッチングすることで、マイクロストリップフィルタや配線層を形成している。YBCO膜の形状はマイクロストリップフィルタや配線層の特性に大きく影響を及ぼすので、厚膜のYBCO膜を精度良くエッチングすることが求められている。
【0005】
ウェハの片面をウェットエッチング法により処理する枚葉式のエッチング処理装置が提案されている(特許文献1参照。)。かかるエッチング処理装置は、水平に保持したウェハに供給口からのエッチング液を仕切り板により案内しオーバーフローさせ、あるいはスプレーにより噴射して、被処理面にエッチング液を接触させる。ウェハを回転および横方向に振動させることでウェハ面内のエッチング量の均一性を図るものである。
【特許文献1】特開平5−326488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記エッチング処理装置では、仕切り板からオーバーフローしたエッチング液はそのすぐ横の戻り室を介して回収される。このような構成では、ウェハの被処理面は、戻り室が設けられた位置では接触するエッチング液量が、仕切り板が設けられた位置よりも極めて少なく、ウェハを横方向に振動あるいは回転させても、エッチング量にバラツキが増大するおそれが高い。また、スプレーを用いた手法でも、スプレーの噴射によりエッチング液に接触する被処理面のバラツキが生じ易いおそれが高い。
【0007】
また、エッチング処理装置は機構が複雑化し大規模となり、装置コストの増大や保守作業の長時間化等で、製造コストが増大してしまう。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、単純な構造でかつ被処理膜内のエッチング量の均一性およびエッチングの異方性を向上させたエッチング処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、エッチング液が充填されるエッチング槽と、前記エッチング槽の底部に配設され、該底部近傍のエッチング液を第1の温度に加熱する加熱手段と、前記エッチング液の液面付近に配設され、液面付近のエッチング液を前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却する冷却手段と、基板を略水平に保持すると共に、該基板の被処理面を下方に向けてエッチング液に浸漬する基板保持手段と、を備え、前記第1の温度と第2の温度との温度差により生じたエッチング液の流れを被処理面に接触させてエッチングを行うエッチング処理装置が提供される。
【0010】
本実施の形態によれば、エッチング槽の底部近傍のエッチング液を第1の温度に設定し、液面付近のエッチング液を第1の温度よりも低い第2の温度に設定することで、エッチング液の対流を生じさせる。この対流により、エッチング槽の底部から液面方向へ上昇するエッチング液の一様な流れが基板の被処理面に接触する。この流れの一様性および方向性により、被処理面のエッチング量の均一性が向上し、また、エッチングの異方性が高まり、オーバーエッチングを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単純な構造でかつ被処理膜内のエッチング量の均一性およびエッチングの異方性を向上し、オーバーエッチング量の抑制を図るエッチング処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照しつつ実施の形態を説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るエッチング処理装置の模式的構成図である。図1を参照するに、エッチング処理装置10は、エッチング液11が満たされたエッチング槽12と、エッチング槽12の底部12aに設けられたホットプレート13と、液面11a付近に設けられた冷却器14と、被処理面15aを下方に向けてエッチング液11に浸漬された基板15を保持する基板保持具16等から構成される。
【0014】
エッチング槽12は上面が開口し、エッチング液11が満たされる内壁の形状は、特に限定されないが、例えば、直方体形状あるいは円柱形状となっている。エッチング槽の底部は、円形または楕円形の形状を有することが好ましい。後述するように、エッチング液の温度差により対流が生じ、液面付近で冷却されたエッチング液が側壁面に沿って下降し、底部では中央に向かって流れ、ホットプレートで均一に加熱される。
【0015】
ホットプレート13はエッチング槽12の底部12aのエッチング液11を所望の温度に加熱する。ホットプレート13には温度制御装置18が接続され、温度制御装置18からホットプレート13に加熱のための電力が供給される。温度制御装置18には、エッチング槽12の底部12aのエッチング液11の液温(第1液温)を測定する温度センサ19が接続され、設定された液温と実際の液温との偏差に基づいて温度制御装置18からホットプレート13に電力が供給され、第1液温が制御される。
【0016】
ホットプレート13は、エッチング槽12の底部12aの全体に接触するように設けてもよく、底部の一部に接触するように設けてもよい。特に、ホットプレート13は、側壁12bから離隔すると共に底部12aの中央付近に接触するように設けることが好ましい。このように配置することで、底部12aの側壁12a付近を加熱しないことで、側壁12bに沿って下降するエッチング液11の流れを促進する。さらにホットプレート13は、対向して配置される基板15とほぼ同軸に配置され、底部12aを加熱する面積が基板よりも大きいことが好ましい。例えば、基板15およびホットプレート13が円形の場合は、両者の中心がほぼ同軸状にあり、基板15の直径よりもホットプレート13の直径(底部12aに接触して加熱する部分の直径)が大きい方が好ましい。加熱されて上昇するエッチング液11の範囲が基板15面よりも広い範囲となり、エッチング量が均一となる。
【0017】
冷却器14は、エッチング槽12の側壁12bの外側にエッチング槽12を周回するように設けられた冷却管14aからなり、冷却管14aを流れる冷却水を供給する冷却水供給器20が接続されている。冷却水供給器20は、例えば0℃に冷却した冷却水を、配管を通じて冷却器14に供給すると共に、温められた冷却水を回収し、例えばコンプレッサと熱交換器により再び冷却する。さらに、冷却水供給器20に、エッチング液11の液面11a付近の液温(第2液温)を測定する温度センサ21が接続し、温度センサ21が検知した第2液温と所望の液温との偏差に応じて、冷却水の温度あるいは流量を制御して液温を制御してもよい。
【0018】
基板保持具16は、基板15を水平に把持して基板15の被処理面15aを下向きになるようにしてエッチング液11に浸漬する。基板保持具16は、基板15を上下方向(図1に示すZ方向。)に位置を制御可能であり、例えば、被処理面15aが冷却器14とほぼ同じ高さ位置に保持される。
【0019】
また、基板保持具16は、基板15を両回転方向に回転可能な回転駆動部22が接続される。回転駆動部22は、基板15の中心を通りかつ基板面に垂直な軸の周りに基板15を回転させる。基板15をこのように回転させることにより、被処理面15aに接触したエッチング液11の基板15中央付近から外側への流れが促進され、被処理面15aに接触する横方向への流れを促進して、エッチング量を一層の均一化を図る。基板15の回転数は、15rpm〜60rpmの範囲に設定することが好ましい。なお、回転駆動部22は設けても、設けなくてもよい。
【0020】
エッチング処理を行う被処理膜15bの表面にはパターニングされたレジスト膜15cが形成され、レジスト膜15cをマスクとしてエッチング液11が被処理膜15bに接触し、被処理膜15bが溶解される。
【0021】
被処理膜15bは特に限定されないが、ここでは、被処理膜15bとして、酸化物超伝導材料、例えば、単結晶のYBCO(BaYCu37-δ)膜やBKBO(Ba1-xxBiO3)膜を用いる。
【0022】
また、基板15は特に限定されないが、単結晶のYBCO膜やBKBO膜を形成するために、例えば、MgO基板や、Al23(サファイヤ)基板、シリコン基板上にAl23(サファイヤ)や、Y安定化ジルコニア、MgAl24、CeO2、MgO等のバッファ層を形成したものを用いる。
【0023】
エッチング液11は特に限定されないが、ここでは一例として、エッチング液11の溶質材料としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用い、溶媒として水を用いる。エチレンジアミン四酢酸の水溶液は弱酸性を示しYBCO膜を溶解する。EDTAは、エッチングによるYBCO膜の表面付近や基板表面に与える損傷の程度がリン酸よりも少なく良好である。被処理膜15bとして酸化物超伝導材料を用いる場合は、EDTAの他に、クエン酸、酢酸を用いてもよい。
【0024】
また、エッチング液11の溶質材料は、エッチング液11の濃度を飽和させる量よりも多く添加することが好ましく、例えば、エッチング槽12の底部12aに堆積する程度の溶質材料23の量を添加する。このことにより、エッチング液11の濃度を一定に保持できる。さらに、加熱されて上昇するエッチング液11の濃度を過飽和することで、被処理膜15bのエッチング速度を増加させることができる。なお、溶質材料の添加量は、エッチング処理中に総ての溶質材料23が溶解しない程度であればよい。
【0025】
次に本実施の形態に係るエッチング処理装置10の作用を説明する。
【0026】
ホットプレート13の温度制御装置18により第1液温を設定し、エッチング槽12の底部12a付近のエッチング液11をホットプレート13により加熱する。そして、冷却水供給器20に第2液温(例えば50℃)に設定し、冷却器14により液面11a付近を冷却する。このようにすることで、エッチング槽12の底部12aと液面11a付近でエッチング液11に温度差が生じる。温度差に起因して、エッチング槽12の底部12aのエッチング液11が上昇し、被処理面15aに接触する。エッチング液11は被処理膜15bを浸食しながら被処理面15aに沿って中央部から横方向外側に流れる。エッチング液11は冷却器14によりさらに冷却され、エッチング槽12の側壁12bに沿って下方に流れ、エッチング槽12の底部12aに達し、再びホットプレート13により加熱される。すなわち、エッチング液11の流れは、おおよそエッチング槽12の底部12a→被処理面15a→側壁12b→底部12aとなる。エッチング液11はホットプレート13により均一に加熱されているので、ポンプ等で強制的に流れを形成した場合よりも、上昇する流れは一様となる。その一様な流れが被処理面15aに接触するので、被処理面15a内のエッチング量が均一となり、流れの方向が上方向なので、被処理面とほぼ垂直となる。その結果、エッチングの異方性が高まり、オーバーエッチングを抑制できる。
【0027】
第1液温および第2液温はエッチング液11、被処理膜15bの種類に応じて適宜選択されるが、例えば、十分な対流を生じさせるためには、液温差(=第1液温−第2液温)は20℃〜40℃の範囲に設定することが好ましい。
【0028】
本実施の形態によれば、エッチング槽12の底部12aのエッチング液11を第1液温に設定し、液面11a付近のエッチング液11を第1液温よりも低い第2液温に設定することで、エッチング液11を底部12aから液面11a方向へ上昇する流れを生じさせ、被処理面15aに接触させる。エッチング液11の一様な流れにより被処理面15a内でのエッチング量の均一性およびエッチングの異方性を高めることができる。
【0029】
なお、図示を省略しているが、エッチング槽12には、エッチング液11の更新あるいは水などを補給するための、予備タンク、ポンプ、および配管等からなる給排液部を設けてもよい。
【0030】
また、ホットプレート13は、エッチング槽の底部12aに接触させているが、例えば、耐蝕性および耐水性を有するヒータ、例えば、電熱線をフッ素樹脂で絶縁したヒータをエッチング液に浸漬し、エッチング槽の底部12aに配置してもよい。また、ホットプレート13のかわりに公知の加熱装置を用いてもよい。冷却器14は、水の他、油を冷媒として用いてもよく、フロン代替ガスのようなガスを冷媒としてもよい。
【0031】
次に本実施の形態に係る実施例および本発明によらない比較例を説明する。
【0032】
[実施例]
実施例として、図1に示すエッチング処理装置10にEDTA水溶液を満たし、エッチング槽の底部の液温(第1液温)を80℃、液面11a付近の液温(第2液温)を50℃とした。EDTAは過剰に添加し、エッチング槽の底部に残留するようにした。また、MgOの基板(直径50mm)上に被処理膜として膜厚1μmのYBCO膜を形成し、被処理膜の表面に線幅500μmのレジスト膜を10mm間隔で形成した。この基板をエッチング液に浸漬し、3分間の処理時間でレジスト膜に覆われた以外のYBCO膜を除去した。次いでレジスト膜を除去し、得られたYBCO膜の線幅を任意に9点測定し、その平均線幅は498μm、標準偏差は1μmであった。
【0033】
[比較例]
本発明によらない比較例として、図2に示すエッチング処理装置を用いて、実施例と同様の基板のエッチング処理を行った。
【0034】
図2は、本発明によらない比較例に用いたエッチング処理装置の模式的構成図である。図2を参照するに、エッチング処理装置100は、エッチング槽101の底部101aにホットプレートが設けられ、エッチング槽101中には実施例1と同様のYBCO膜15bおよびレジスト膜15cを形成した基板15が被処理面を上にして配置されている。エッチング液の液温を80℃とした。EDTAは過剰に添加し、基板15の被処理面およびエッチング槽の底部101aに残留するようにした。
【0035】
基板15をエッチング液11に浸漬し、10分間の処理時間でレジスト膜15cに覆われた以外のYBCO膜を除去した。次いでレジスト膜を除去し、得られたYBCO膜の線幅を任意に9点測定し、その平均線幅は492μm、標準偏差は3μmであった。
【0036】
以上により、比較例ではレジスト膜の線幅500μmに対して、エッチング後のYBCO膜の線幅は492μmであり、オーバーエッチング量(レジスト膜の線幅に対するYBCO膜の線幅の後退量)が8μmであった。これに対し、実施例では、オーバーエッチング量が2μmであり、オーバーエッチングが抑制されていることが分かる。
【0037】
また、比較例のエッチング処理時間が10分に対して、実施例のエッチング処理時間が3分であるので、エッチング速度が3.3倍になっていることが分かる。
【0038】
なお、さらに、本願発明者の検討によれば、比較例のエッチング液の液温を上昇させて、実施例と同程度のエッチング速度とした場合であっても、オーバーエッチング量は実施例よりも大きくなることが認められている。
【0039】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るエッチング処理装置の模式的構成図である。図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0040】
図3を参照するに、エッチング処理装置30は、エッチング液11が満たされたエッチング槽12と、エッチング槽12の底部12aに設けられたホットプレート13と、液面11a付近に設けられた冷却器14と、液面11aからエッチング液に浸漬された冷却器31と、被処理面15aを下方に向けてエッチング液11に浸漬された基板15を保持する基板保持具16等から構成される。エッチング処理装置30は、冷却器31以外は第1の実施の形態に係るエッチング処理装置とほぼ同様に構成される。
【0041】
冷却器31は、金属板31aとその表面に巻回して設けられた冷却管31bからなり、冷却管31bには冷却水供給器32から冷却水が供給される。冷却器31は、冷却水により冷却された金属板31aをエッチング液に浸漬することで、液面11a付近のエッチング液を冷却することができ、液面11a付近の液温分布を一様化し、エッチング液の対流を一層生じ易くする。冷却器31は、エッチング槽の側壁に設けられた冷却器14と併用してもよく、冷却器31のみを用いてもよい。冷却水供給器32は、第1の実施の形態と略同様であり、冷却水の循環系が2系統である以外は同様である。
【0042】
本実施の形態によれば、冷却器31を設けることで、液面11a付近の液温を一層一様化し、エッチング槽の底部から上昇するエッチング液の流れを促進し、その結果、エッチング速度を向上することができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
図4(A)は本発明の第3の実施の形態に係る電子装置の製造方法により形成された高周波デバイスの平面図、(B)は(A)のX−X線断面図である。なお、金属筐体の上面カバーは図示を省略している。
【0044】
図4(A)および(B)を参照するに、高周波デバイス40は、金属筐体41と、金属筐体41の両側に設けられた同軸コネクタ42a、42bと、金属筐体41内に配置され、誘電体基板43、誘電体基板43上にミアンダパターン状に形成された超伝導配線44、誘電体基板43の裏面に形成された超伝導接地膜46、およびその表面を覆う接地電極膜48からなる遅延回路構成体49と、接地電極膜48と金属筐体41とを電気的に接触させるIn膜47と、遅延回路構成体49を金属筐体41に板バネ等を用いて固定する固定部材45等から構成される。高周波デバイス40は、超伝導配線44が遅延回路を形成しており、超伝導配線44および超伝導接地膜46の転移温度以下に冷却して超伝導状態にすることで、高周波においても伝搬速度が低下せず、かつ低損失という特徴を有する。
【0045】
次に高周波デバイス40を構成する遅延回路構成体49の製造方法を図5(A)〜(D)を参照しつつ説明する。図5(A)〜(D)は、第3の実施の形態に係る電子装置の製造工程図である。図5(A)〜(D)は、高周波デバイス40の遅延回路構成体49の1個分の断面図を示している。
【0046】
最初に、図5(A)の工程では、誘電体基板43の両面に酸化物超伝導体膜を結晶成長させる。具体的には、誘電体基板43として例えば2インチウェハのMgO単結晶基板に、スパッタ法、真空蒸着法、電子線エピタキシ法、エキシマレーザによるPLD法等を用いて、例えば厚さ1μmのYBCO膜からなる超伝導配線膜44aおよび超伝導接地膜46を形成する。なお、MgO単結晶基板は2インチウェハに限定されず、より大きな直径のウェハを用いてもよい。
【0047】
次いで、図5(B)の工程では、超伝導配線膜44aおよび超伝導接地膜46の表面を覆うレジスト膜50、51を形成し、次いで、超伝導配線膜44a上のレジスト膜50をフォトリソグラフィ法によりミアンダパターンのレジスト膜50が残留するように開口部50aを形成する。
【0048】
次いで、図5(C)の工程では、図1に示すエッチング処理装置を用いてレジスト膜50をマスクとして超伝導配線膜44aをエッチングし、超伝導配線44を形成する。具体的には、第1の実施の形態に説明したように、エッチング液としてEDTAを過剰に添加したEDTA水溶液を使用し、エッチング槽にはホットプレートによりエッチング槽の底部の液温を例えば80℃に設定し、冷却器により液面付近の液温を50℃に設定する。図5(B)の構造体を、パターニングされたレジスト膜50および超伝導配線膜44aを下方に向けて基板保持具に取り付け、エッチング液の液面付近で構造体全体を浸漬させる。浸漬時間は例えば480秒〜600秒とする。
【0049】
図5(C)の工程ではさらに、超伝導配線44が形成された構造体を水で洗浄して残留するEDTAを除去し、次いでレジスト膜50、51を除去する。
【0050】
次いで、図5(D)の工程では、超伝導接地膜46を覆うように、スパッタ法や、真空蒸着法によりAg膜、Pd膜、およびCr膜を順次堆積して接地電極膜48を形成する。
【0051】
次いで、図5(D)の工程の後に、図示を省略するが、誘電体基板43をダイシングにより各々の遅延回路構成体49に切り出し、図4(A)および(B)に示すように、金属筐体41内に遅延回路構成体49を、接地電極膜48がIn膜と接するようにして固定部材により固定し、超伝導配線44の両端と同軸コネクタ42a、42bの芯線とを電気的に接続する。次いで、金属筐体41の上面カバー(不図示)を固定して高周波デバイス40が完成する。
【0052】
本実施の形態によれば、超伝導配線膜44aのエッチングを第1の実施の形態に係るエッチング処理装置を用いているので、エッチング量の均一性およびエッチングの異方性が良好であり、超伝導配線44のオーバーエッチングが抑制されている。したがって、誘電体基板43上に形成された複数の超伝導配線44の寸法のバラツキが抑制されると共に、一本の超伝導配線44内の線幅のバラツキを抑制できる。その結果、特性の揃った高周波デバイスを形成できる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、エッチング処理による、超伝導配線44のYBCO膜および誘電体基板43の表面の損傷が抑制されているので、高周波伝送における表面抵抗の増大が抑制され、一層の低損失の超音波デバイスを形成できる。
【0054】
なお、エッチング処理において、誘電体基板43を回転させてもよく、図3に示すエッチング処理装置を用いてもよい。
【0055】
以上本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0056】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1) エッチング液が充填されるエッチング槽と、
前記エッチング槽の底部に配設され、該底部近傍のエッチング液を第1の温度に加熱する加熱手段と、
前記エッチング液の液面付近に配設され、液面付近のエッチング液を前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却する冷却手段と、
基板を略水平に保持すると共に、該基板の被処理面を下方に向けてエッチング液に浸漬する基板保持手段と、を備え、
前記第1の温度と第2の温度との温度差により生じたエッチング液の流れを被処理面に接触させてエッチングを行うことを特徴とするエッチング処理装置。
(付記2) 前記エッチング液の溶質材料が過飽和に添加されてなることを特徴とする付記1記載のエッチング処理装置。
(付記3) 前記冷却手段は、エッチング液の液面付近のエッチング槽の側壁面に配設されてなる冷却器と、該冷却器に冷却水を供給する冷却水供給装置とからなることを特徴とする付記1または2記載のエッチング処理装置。
(付記4) 前記冷却手段は、エッチング液の液面に浸漬された冷却器と、該冷却器に冷却水を供給する冷却水供給装置とからなることを特徴とする付記1または2記載のエッチング処理装置。
(付記5) 前記基板保持手段は、基板を回転させる回転駆動手段を備えることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置。
(付記6) 前記加熱手段は、エッチング槽の底部の略中央に配設されると共に、エッチング槽の側壁から離隔して配設されてなることを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置。
(付記7) 前記エッチング槽は底部が円形または楕円形の形状を有することを特徴とする付記1〜6のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置。
(付記8) 前記被処理面は酸化物超伝導材料からなり、前記エッチング液の溶質材料がエチレンジアミン四酢酸、クエン酸、酢酸のいずれかであることを特徴とする付記1〜7のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置。
(付記9) 誘電体基板の一方の面に配設された超伝導配線と、誘電体基板の他方の面に配設された超伝導接地膜とを有する配線構成体とを備える電子装置の製造方法であって、
前記誘電体基板の一方の面に超伝導材料からなる超伝導配線膜を形成する工程と、
前記誘電体基板の他方の面に超伝導材料からなる超伝導接地膜を形成する工程と、
前記超伝導配線膜および超伝導接地膜の表面にレジスト膜を形成し、超伝導配線膜上のレジスト膜をパターニングする工程と、
前記レジスト膜をマスクとして超伝導配線膜をエッチングする工程とを備え、
前記エッチングする工程は、付記1〜8のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置を用いて、超伝導配線膜をエッチングして超伝導配線を形成することを特徴とする電子装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るエッチング処理装置の模式的構成図である。
【図2】本発明によらない比較例に用いたエッチング処理装置の模式的構成図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るエッチング処理装置の模式的構成図である。
【図4】(A)は本発明の第3の実施の形態に係る電子装置の製造方法により形成された超伝導フィルタの分解平面図、(B)は(A)のX−X線断面図である。
【図5】(A)〜(D)は第3の実施の形態に係る電子装置の製造工程図である。
【符号の説明】
【0058】
10、30 エッチング処理装置
11 エッチング液
12 エッチング槽
12a エッチング槽の底部
12b エッチング槽の側壁
13 ホットプレート
14、31 冷却器
14a、31b 冷却管
15 基板
16 基板保持具
18 温度制御装置
19、21 温度センサ
20、32 冷却水供給器
22 回転駆動部
23 溶質材料
31a 金属板
40 高周波デバイス
41 金属筐体
42a、42b 同軸コネクタ
43 誘電体基板
44 超伝導配線
44a 超伝導配線膜
45 固定部材
46 超伝導接地膜
47 In膜
48 接地電極膜
49 遅延回路構成体
50、51 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液が充填されるエッチング槽と、
前記エッチング槽の底部に配設され、該底部近傍のエッチング液を第1の温度に加熱する加熱手段と、
前記エッチング液の液面付近に配設され、液面付近のエッチング液を前記第1の温度よりも低い第2の温度に冷却する冷却手段と、
基板を略水平に保持すると共に、該基板の被処理面を下方に向けてエッチング液に浸漬する基板保持手段と、を備え、
前記第1の温度と第2の温度との温度差により生じたエッチング液の流れを被処理面に接触させてエッチングを行うことを特徴とするエッチング処理装置。
【請求項2】
前記エッチング液の溶質材料が過飽和に添加されてなることを特徴とする請求項1記載のエッチング処理装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、エッチング液の液面付近のエッチング槽の側壁面に配設されてなる冷却器と、該冷却器に冷却水を供給する冷却水供給装置とからなることを特徴とする請求項1または2記載のエッチング処理装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、エッチング液の液面に浸漬された冷却器と、該冷却器に冷却水を供給する冷却水供給装置とからなることを特徴とする請求項1または2記載のエッチング処理装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、エッチング槽の底部の略中央に配設されると共に、エッチング槽の側壁から離隔して配設されてなることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載のエッチング処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−73752(P2006−73752A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254627(P2004−254627)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】