説明

エッチング方法

【課題】狭小なDFRの間隙にもエッチング液を到達せしめることにより微細な配線パターン形成が可能なエッチング方法を提供する。
【解決手段】基板のエッチング方法において、ミスト化した粒子を含むエッチング液を用いて処理することを特徴とするエッチング方法である。この微細なエッチング液のミストは狭小なDFRの間隙でも銅箔表面に到達することが可能であり、またエッチング液のミストの粒径が小さい程内外圧差すなわち内部エネルギーが高いためにエッチング反応が促進されるので、微細なパターンでもエッチングをすることが可能となり、結果として微細なパターン形成を容易になしうることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体素子、集積回路、電子部品等を搭載するための基板の配線パターン形成のためのエッチング方法に関するもので、特に微細パターンのエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板に対して電子機器の小型化や高性能化により配線パターンの微細化が求められている。これら小型機器においては線幅50μm以下のパターン形成が要求されている。
【0003】
従来の基板の配線パターン形成方法について説明する。
【0004】
図5に示すように、まず、表面に銅はく2を形成したガラスエポキシなどの絶縁性基材1に、感光性樹脂であるドライフィルムレジスト(DFR)3を110℃、0.3MPaでラミネートし、マスクを通して選択的に光を照射後、1%程度の炭酸ナトリウム水溶液などの現像液によってDFRパターンを形成して、次に塩化鉄や塩化銅などからなるエッチング液を面状や錐状にノズルを首振りや往復移動しながら射出し、露光、現像でDFR3が除去された領域のみを選択的にエッチングを行い、後に3%の水酸化ナトリウム水溶液等のDFR剥離液によってDFRを除去して所望の配線パターンを形成していた。
【0005】
また、狭小なDFR3の間隙へのエッチングを行うために、エッチング液と気体とを混合した混合流体を、スプレーノズルより基板面に対して垂直あるいは角度を持たせて噴霧し、特にこの噴霧するエッチング液の噴霧の粒径を10〜200μmとすることにより、DFRの間隙部4内のエッチング液の滞留を防止することができるので、液体のみのエッチング液より粘性率を低くするとともに、気体との混合体であるエッチング液を気体によって吹き飛ばすことでエッチングを行う方法が提案されている。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平5−160546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の塩化鉄や塩化銅などのエッチング液を面状や錘状にノズルから単に射出し、このノズルを首振りや往復移動して基板にエッチング液を吹き付けるスプレー方式では、エッチング液が霧状になるもののその粒径は数百μm〜数mmと大きい。しかも、これらのエッチング液では粘性が大きいため狭いDFRパターンの間隙には入り込み難いことから、DFRの間隙内での実質的なエッチング速度が低下し、同一基板内においてエッチングに要する時間が異なり、形成されるパターン幅のばらつきの原因となっていた。また、狭いDFR間隙内でのエッチング速度の低下により、エッチングの所要時間を長くしなければならないので、深さと垂直な方向のエッチングすなわちサイドエッチングが大きくなり、微細なパターンを形成することが困難であった。
【0008】
また、上記の特許文献1に開示されている方法において、噴霧されるエッチング液の噴霧の粒径を10〜200μmとしているが、特に微細なパターン形成においてはDFRの間隙が30μm以下、特に10μm程度の場合、図5に示すようにDFR3の間隙部4よりも噴霧によるエッチング液5の粒径の方が大きくなるため、DFR間隙部4の入口につかえてしまい、DFR間隙部4に入り込み難くなる。その結果DFR間隙部4内での実質的なエッチング速度が低下し、またサイドエッチングが大きくなるので、微細パターン形成が困難であるとともに、気体の混合度合いによっては、被エッチング物の表面を乾燥させるため、被エッチング物とエッチング液との反応生成物が付着したまま乾燥してしまい、これによって反応生成物を除去できなくなり、パターン形成に不具合を生じるという課題も生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、エッチングによるパターン形成において、ミスト化した粒子を含むエッチング液を用いて処理し、粒子径をパターンの最小間隙より小さくするもので、これにより、DFRの狭い間隙内にエッチング液が入り込み、被エッチング物表面に到達せしめることが可能になるので、効率よくエッチングを行うことができるとともに、微細なパターンを形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、エッチング液をミスト化し、このミスト化した粒子径をパターンの最小間隙寸法より小さくすることにより、微細なDFRパターンの間隙にミスト化した粒子を容易に入り込ませることができるため、幅の狭い部分でのエッチングを効率よく行うとともに、幅の広い部分とのエッチング時間差を少なくすることで、全体の線幅のばらつきを少なくすることができる。また、エッチング液を超音波振動することによって、ノズルから噴射してできるエッチング液の粒子よりもさらに極微細なミスト化を容易に行うことを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1、図2は本発明の実施の形態における配線基板の断面図であり、配線基板の片方の表面近傍の一部を模式的に示している。
【0013】
まず、絶縁性基材11として例えばガラスクロスの両面に厚さ5〜20μm程度の半硬化状態すなわちBステージで形成したガラスエポキシ基材にプレスなどによって貼り付けた厚さ10μm程度の銅箔12の表面に、例えば厚さ7μmのDFR13を110℃で加熱しながらラミネートした後に、所望のパターンのマスクフィルムを通して選択的に露光を行い、1%炭酸ナトリウム水溶液で現像することによって、図1に示すように、DFR13のパターンを形成する。本実施の形態では、DFR13の幅を20μm、DFRの間隙部14の幅を10μmで形成している。
【0014】
図2は前記絶縁性基材11に貼り付けられた銅箔12の表面のDFR13のパターンに、微細にミスト化した粒子を含むエッチング液によってエッチングを行っている状態を示している。このとき、粒子径が例えば1〜5μm程度のミスト15を含むエッチング液を用いてエッチングする。このとき、DFRの間隙部14の幅である10μmに比べてエッチング液のミスト15の粒径は充分に小さいために、DFR13につかえることなく容易に間隙部14に入り込み、銅箔12の表面に到達することができる。また、風速2m/分以下、好ましくは0.2m/分の送風、またはエッチング液槽の加熱により発生するエッチング槽内の温度差などにより対流を起こすことによってDFR13の表面から銅箔12の表面方向にエッチング液のミスト15が流れ、これによりDFRの間隙部14にエッチング液のミスト15が入り込むことを助長することができる。これによって銅箔12の表面にエッチング液が到達し、エッチング反応が促進されることが可能となるため、従来困難であった狭小なDFRの間隙部14のエッチングを可能とするものである。
【0015】
ここで、銅箔12の表面のエッチング液の内部エネルギー(粒子の内外圧差ΔP)はΔP=2γ/Rなので、微細なミスト15はその表面張力γにより粒子径すなわち粒子の曲率半径Rが小さい程高くなる。図3はこの粒子径と粒子内外圧差との関係を示している。図3より、粒子径が10μm以下、特に5μm以下になると急激に粒子内外圧差が大きくなっており、このときにおけるエッチングの効果が大きくなる。よって、粒子径が10μm以下、特に5μm以下のとき、このエッチング液のミスト15の内外圧差すなわち内部エネルギーに従って銅箔12の表面での反応力が高くなり、これによりエッチングが促進され、微細な部分でのエッチング速度を特に早くするものである。
【0016】
従来のスプレー方式によるエッチング方法では、DFRの間隙部14の幅が60μm以下になると、エッチング速度が大幅に低下し、さらにDFRの間隙部14の幅が20μmになると、エッチング速度がDFRの間隙部14が80μmのときの半分程度に低下していたが、本発明では、エッチング液をパターンの最小エッチング寸法すなわち微細なDFRの間隙部14の幅より小さい粒径にミスト化し、特にそのミストの粒子径を10μm以下、好ましくは5μm以下とすることにより、エッチング液のミスト15がDFRにつかえることなく容易に銅箔表面へ到達することができる。これにより、DFRの間隙部14が広い部分でも狭い部分でも同じ速度でエッチングをすることができるので、サイドエッチングを小さくすることができ、実際に形成される配線パターンの寸法がDFRパターンの寸法より極端に小さくなることを防止することが可能となる。その結果、均一かつ微細な配線パターンを形成することができる。
【0017】
一方、エッチング液に塩化第2鉄を用いた場合においては、エッチングによってできた銅の溝の表面や側面にスラッジが堆積してエッチングの化学反応を阻止してしまう。このために銅のエッチングが停止され、パターン形成ができなくなる場合がある。従って、このスラッジを除去して銅表面を露出させ、エッチング液と反応が可能な状態にしなければならない。このスラッジを除去するには機械的な方法、例えばエッチング液をスプレーノズルから高い圧力で吹き付ける方法があるが、微細なパターンには困難である。これに対して、10%程度の塩酸で化学的に除去する方法があるが、DFRの間隙部14の幅は最小30μmが限界である。
【0018】
本発明では微細な部分に入り込ませるために、スラッジを溶解するための10%程度の塩酸などの溶解液を、前述のエッチングの場合と同様に粒径を10μm以下、好ましくは5μm以下にミスト化させ、このミスト化した粒子を銅表面に曝すことによって、狭小な銅の溝に入り込ませてスラッジを溶解除去できるものである。このとき、塩化第2鉄などのエッチング液のミストとスラッジの溶解液のミストとを銅表面に交互に曝すことによって、微細なパターンを形成するためのエッチングを効率良く行うことを可能とする。
【0019】
なお、エッチング液のミストを発生させる手段として、加熱などにより蒸発させる方法があるが、成分の気化温度の差により成分比率が変改してしまい、所望のエッチング液のミストが得られないことがある。この解決手段として、超音波振動をエッチング液の液面付近に付与することによって所望のエッチング液のミストを得ることができる。具体的には図4に示すように、エッチング装置17の底に、超音波振動発生手段である超音波振動板18を設置して、エッチング液16の液面に向かって超音波振動を発生照射させる。これによって、エッチング液16の液面は超音波振動の波長に伴って微細かつ高速振動の波を発生することができるので、エッチング液16の液面付近で極微細な粒径10μm以下、好ましくは5μm以下のエッチング液のミスト15を発生させることができる。
【0020】
このエッチング液のミスト15の量は、超音波振動のエネルギーすなわち投入電力量や周波数で制御が可能である。なお、より効率良くエッチング液のミスト15を発生させるために、超音波振動は液全体に付与するよりエッチング液16の液面の狭い範囲内に振動エネルギーを集中させた方が良く、このためには超音波振動板18を凹面形状にすると良い。
【0021】
以上のように本発明によれば、エッチング液をミスト化し、このミスト化した粒子径をパターンの最小間隙寸法より小さくすることにより、DFRパターンの狭い間隙にエッチング液のミストがつかえることなく容易に入り込ませることができ、特にこのエッチング液のミストの粒子径を10μm以下の微小なものにすることで、粒子の内外圧差すなわち内部エネルギーに従って銅箔表面での反応力が高くなるためエッチングをさらに促進させることができる。
【0022】
また、エッチング液のミスト15に曝した後、エッチング液と銅との反応によって銅表面に堆積するスラッジを、このスラッジの溶解液のミストに曝すことによってエッチングの進行をスムーズにすることができる。
【0023】
以上により、パターンの間隙の狭小な部分でのエッチング速度を実質的に早くすることができるので、サイドエッチングを小さくすることができるとともに、微細なパターンの形成を容易にすることができる。さらにエッチング液に超音波振動を付与することでエッチング液のミスト化を容易に発生させることができるので、ノズルから噴射してできるエッチング液の粒に比べて、極微細な粒子の形成を容易に行うことを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、基板のエッチングに、ミスト化した粒子を含むエッチング液を用いて微細な配線パターンを容易に形成することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態におけるエッチング方法を示す工程断面図
【図2】本発明の実施の形態におけるエッチング方法を示す工程断面図
【図3】粒子径と粒子内外圧差の関係を示す図
【図4】本発明の実施の形態におけるエッチング方法におけるミストの発生方法を示す図
【図5】従来のエッチング方法を示す工程断面図
【符号の説明】
【0026】
11 絶縁性基材
12 銅箔
13 ドライフィルムレジスト(DFR)
14 ドライフィルムレジスト(DFR)の間隙部
15 エッチング液のミスト
16 エッチング液
17 エッチング装置
18 超音波振動板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のエッチング方法において、ミスト化した粒子を含むエッチング液を用いて処理することを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
ミスト化した粒子の粒子径が、パターンの最小の間隙寸法より小さいものをエッチング液に含むことを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
ミスト化した粒子の粒子径の寸法が、10μm以下である請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項4】
ミスト化した粒子が、被エッチング面に向かって対流していることを特徴とする請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項5】
エッチング処理時に被エッチング物とエッチング液との反応により発生した反応生成物を、ミスト化した粒子を含む溶解液により除去する請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項6】
エッチング液のミストと、溶解液のミストとを交互に用いて処理する請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項7】
エッチング液を超音波振動によってミスト化することを特徴とする請求項1乃至5に記載のエッチング方法。
【請求項8】
溶解液を超音波振動によってミスト化することを特徴とする請求項5に記載のエッチング方法。
【請求項9】
超音波振動を発生させるための振動板が凹面形状であることを特徴とする請求項7または8に記載のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−36075(P2007−36075A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219959(P2005−219959)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】