説明

エピタキシャルウェハ及びその製造方法

【課題】基板のサイズを大きくしてもウェハの反りを低減できるエピタキシャルウェハを提供する。
【解決手段】基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜が形成されたエピタキシャルウェハにおいて、前記エピタキシャル多層膜が、エピタキシャル成長時に溝部を隔てて独立して形成された複数の多層区分膜からなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型基板を用いて形成したエピタキシャルウェハ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は、表示用から照明用として使用されるようになったことにより、その使用数量は急激に伸びている。しかし、ひとつの照明機器に多数のLEDチップを使用することから、価格低下に対する要求は非常に強い。照明装置メーカからは、照明機器のLED化を進めるには、相当長期にわたっての価格低下の継続が必要であることを示すロードマップなどが公開されている。
【0003】
LEDの価格を低減するためには、原料価格の低減や、装置価格の低価格化、プロセス工程の簡略化など色々な手段があり、それら一つ一つが重要であるが、シリコンICで実績があるように基板の大型化が最も有効な手段である。
【0004】
基板を大型化することにより、一枚のエピタキシャルウェハ(ウェハ)から取れるLEDチップ数が面積に応じて増加し、1チップ当たりのプロセス価格は大幅に減っていく。このため、GaNのLEDメーカやサファイア基板メーカでも、基板の大型化の検討が進められている。
【0005】
現在はまだ基板のサイズは2インチが主流であるが、今後3インチ、4インチ、6インチそして8インチ以上と大型化が進むことが予想される。シリコンICなどでも8インチが使用され、さらにそれ以上の10インチの開発が始まっている。
【0006】
シリコンICに比べると、LEDの電極構造は微細構造を必要とせず、プロセス的には基板の大型化が容易である。したがって、液晶プロセスでは、線幅は太いが100インチレベルのガラス基板が使われている。LEDは半導体であるが、前述のように微細プロセスを用いないことから、プロセスの装置的に大型化への障壁が低いといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4055503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かにLEDの電極形成などのプロセス工程の大型化は微細電極でないことからICプロセスに比べると容易であるが、実際問題として基板を大型化していくと液晶プロセスには無い大きな問題がある。
【0009】
LEDプロセスでは、最初にサファイア基板上にGaN層をエピタキシャル成長(エピ成長)させるという工程があるが、サファイアとGaN(窒素系半導体)には線膨張係数に差があるため、エピ成長後ウェハが反ってしまう。ウェハに大きな反りがあると、フォトリソプロセスでウェハ全面に焦点を合わせることができなくなってしまう。ウェハサイズが2インチ程度と小さいときは、ウェハプロセスでその反りを何とか補償して使っている。しかし、ウェハが大きくなると、その反りを補償することが困難になり現状の技術では容易に対応することができない。
【0010】
対応策としては、反ったウェハを真空吸着などにより平坦にすることが考えられるが、サファイア基板は硬いためそれは難しい。
【0011】
また他の対応策として、できるだけ反りを低減するためにサファイア基板の厚さを厚くするという方法がある。基本的にエピ層に比べて基板厚さを極端に厚くすれば反りを低減することができる。しかし、基板を厚くすることにより、その厚さ分だけ価格が高くなるという問題が生じる。またプロセス上はウェハプロセス後基板を研磨して薄くする必要があるが、これが非常に大変になってしまう。これは、このLEDの原価低減という当初の目的に対して本末転倒の対策となってしまう。それ以上に問題なのは、基板が反らないことにより、GaN層の中に大きな応力を発生させることになることである。ウェハが反るということは、エピ層内の応力を緩和させる方向であるが、それができないということである。エピ層に大きな残留応力が残っていると、結晶性が悪くなり、発光効率が低下するとともに、寿命低下の問題が発生してくることになる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、基板のサイズを大きくしても反りを低減できるエピタキシャルウェハ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく創案された本発明は、基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜が形成されたエピタキシャルウェハにおいて、前記エピタキシャル多層膜が、エピタキシャル成長時に溝部を隔てて独立して形成された複数の多層区分膜からなるエピタキシャルウェハである。
【0014】
前記溝部は直線状又は長い鎖線状に形成され、複数の前記多層区分膜が前記基板上で升目状に形成されているとよい。
【0015】
前記基板上に、エピタキシャル成長時に耐えられる高融点金属或いは絶縁体膜からなる成長抑止膜が形成され、前記溝部が、エピタキシャル成長時に前記成長抑止膜上に形成されるとよい。
【0016】
前記基板に、形成されるエピタキシャル多層膜の厚さよりも深い区分溝が形成され、前記溝部が、エピタキシャル成長時に前記区分溝上に形成されてもよい。
【0017】
前記基板は、サファイア基板、SiC基板或いはZnO基板であり、前記エピタキシャル多層膜は、窒化物系エピタキシャル層を積層してなってもよい。
【0018】
また、本発明は、基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法において、前記基板上に、エピタキシャル成長時に耐えられる高融点金属或いは絶縁体膜からなる帯状の成長抑止膜を格子状に形成した後、エピタキシャル層を順次成長させると共に前記成長抑止膜上でエピタキシャル層の成長を抑止して前記成長抑止膜上に溝部を形成し、前記溝部を隔てて独立した複数の多層区分膜からなる前記エピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法である。
【0019】
さらに、本発明は、基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法において、前記基板に、形成するエピタキシャル多層膜の厚さよりも深い区分溝を格子状に形成した後、エピタキシャル層を順次成長させると共に、前記区分溝上に形成されるエピタキシャル多層膜と前記基板の表面上に形成されるエピタキシャル多層膜との段差で溝部を形成し、前記溝部を隔てて独立した複数の多層区分膜からなる前記エピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法である。
【0020】
前記エピタキシャル多層膜は、基板上に形成されるバッファ層と前記バッファ層上に形成される他のエピタキシャル層とからなり、前記バッファ層と前記他のエピタキシャル層を別工程で成長させてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板のサイズを大きくしてもエピタキシャルウェハの反りを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係るエピタキシャルウェハの縦断面図である。
【図2】基板上に形成した成長抑止膜を示す図である。
【図3】ウェハの反り量の測定方法を説明する図である。
【図4】帯間隔とウェハの反り量の関係を示す図である。
【図5】帯間隔とLEDの明るさ(相対強度)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1は本実施の形態に係るエピタキシャルウェハ(ウェハ)の縦断面図である。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態に係るウェハ1は、基板2上に、基板2と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜3が形成されたものであって、エピタキシャル多層膜3が、エピタキシャル成長(エピ成長)時に溝部4を隔てて独立して形成された複数の多層区分膜3aからなるものである。溝部4は直線状又は長い鎖線状に形成され、複数の多層区分膜3aが基板2上で升目状に形成されている。
【0026】
このウェハ1を製造するには、図2に示すように、先ず、サファイア基板、SiC基板或いはZnO基板などの基板2上に、エピ成長時に耐えられる高融点金属或いは絶縁体膜からなる帯状の成長抑止膜5を格子状に形成する。
【0027】
成長抑止膜5の形成は、基板2上にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストに溝を格子状に形成した後、タングステン、チタン、白金、モリブデンなどの高融点金属を蒸着し、リフトオフによりフォトレジストを除去することにより行う。このとき、フォトレジストに形成する溝を直線状又は長い鎖線状に形成することで、成長抑止膜5が直線状又は長い鎖線状に形成される。また、絶縁体膜により成長抑止膜5を形成するには、SiO2、SiNなどを用いて形成するとよい。
【0028】
次に、この成長抑止膜5が形成された基板2上にエピタキシャル層(エピ層)を順次成長させる。このエピ層は、GaN,AlN,AlGaN,InGaNなどの窒化物系エピタキシャル層をMOVPE法を用いて形成する。
【0029】
例えば、基板2(サファイア基板)上に、低温成長GaN層11及びアンドープGaN層12からなるバッファ層10、n−GaN層13、発光層としてのInGaN/GaN多重量子井戸層14、p−AlGaN層15、p−GaNコンタクト層16を順次形成する。
【0030】
このとき、成長抑止膜5上ではエピ層の成長が抑止され、成長抑止膜5上には、成長抑止膜5の形状に対応した溝部4が形成される。具体的には、フォトレジストの溝を直線状に形成した場合には直線状の溝部4が形成され、フォトレジストの溝を長い鎖線状に形成した場合には長い鎖線状の溝部4が形成される。溝部4を直線状に形成すると、ウェハの反りを大きく低減でき、溝部4を長い鎖線状に形成すると、溝部4を直線状に形成するのに比べてウェハ1の反りは大きくなるものの、割れに対する強度を高めることができる。
【0031】
そして、溝部4により溝部4を隔てて独立した複数の多層区分膜3aが基板2上で升目状に形成され、エピタキシャル多層膜3となる。
【0032】
本発明の要点は、エピ層の成長中に、エピ層が成長しないような溝部4を形成するようにエピ成長させることにより、基板2上のエピ層に、LEDのチップ周期より大きな周期でエピ層が成長していない部分を縦と横の格子縞状に設け、ウェハ1の反りを回避することにある。
【0033】
基板2上に均一にエピ層が成長していると、基板2に均一に応力が加わり、ウェハ1が反るが、基板2上でエピ層が溝部4を隔ててつながっていない場合には、その溝部4で応力を吸収ないしは逃がし、反りを低減することができる。
【0034】
1チップごとに溝部4が形成されていれば、ウェハ1の反りは一番少ないが、それでは凹凸が多数あるウェハとなり、フォトリソグラフィなどのプロセスが行いにくくなるため、溝部4の本数はできるだけ少なくする方がよい。そのため、LEDのチップ周期より大きな周期で溝部4を設けるようにしている。
【0035】
また溝部4の形成は、エピ成長後ダイサーなどによって掘ることも考えられるが、従来の方法で成長させたウェハは大きく反っているため、ダイサーによる溝部4の形成は非常に困難である。
【0036】
本発明は、溝部形成そのものがウェハ1の反り低減に寄与しているため、溝部4では、基板2上にエピ層がなくても、溝部4の中に薄くエピ層があっても同じような効果が期待できる。溝部4の中にエピ層が載っている場合、溝部4の深さが小さくなるためプロセスが容易になるなどの効果が期待できる。
【0037】
以上要するに、本発明のウェハ1では、エピタキシャル多層膜3が、エピ成長時に溝部4を隔てて独立して形成された複数の多層区分膜3aからなるものとされているため、エピ成長時に基板2に加わる応力を溝部4で逃がすことができ、基板2のサイズを大きくしてもウェハ1の反りを低減できる。
【0038】
なお、前記実施の形態では、基板2上に成長抑止膜5を形成し、その成長抑止膜5上でのエピ層の成長を抑止することで、成長抑止膜5上に溝部4を形成するようにしたが、溝部4の形成方法はこれに限定されるものではない。
【0039】
例えば、基板2に、形成するエピタキシャル多層膜3の厚さよりも深い区分溝を格子状に形成した後、エピ層を順次成長させると共に、区分溝上に形成されるエピタキシャル多層膜3と基板2の表面上に形成されるエピタキシャル多層膜3との段差で溝部4を形成するようにしてもよい。
【0040】
また、基板2の厚さが同じ場合、反りはエピ層の膜厚に依存する。そのため、基板2上にバッファ層10を成長させる工程と発光層となるエピ層を成長させる工程を二度に分けて行う場合には、バッファ層10の方が発光層より十分に厚いため、バッファ層成長時に溝部4が形成できるようにすればよい。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
実施例1においては、表面がC面からA軸方向に0.3度傾いた3〜8インチ径、厚さ300μmの基板2(サファイア基板)の表面に、フォトレジストを塗布した。このフォトレジストに幅10μmで20mm間隔の溝を縦と横に格子状に形成した。このウェハにタングステンを蒸着により0.1μm形成しリフトオフによりフォトレジスト上に蒸着されたタングステンを除去した。この結果、図2に示すように、基板2上には幅10μmで20mm間隔の帯状のタングステン膜(成長抑止膜5)が格子状に形成された。
【0042】
次に基板2上に化合物半導体積層構造(エピタキシャル多層膜3)を形成した。具体的には、MOVPE装置を用いたGaN系のエピ層の成長は以下のようにして実施した。まず、100〜800Torr(約1.3kPa〜10.7kPa)の圧力下、1000〜1200℃の温度で10〜100%の濃度の水素を含む雰囲気下で基板2を加熱することにより、基板2の表面を洗浄化した。その後、基板2の温度を400〜700℃に設定し、水素、窒素、アンモニアを流しつつ、Gaの原料としてトリメチルガリウム(TMG)をMOVPE装置内に導入することにより、基板2上に10〜40nm厚の低温成長GaN層11を成長した。なお、低温成長GaN層11の成長速度は0.1〜10μm/hに設定した。
【0043】
次に、成長温度を1000〜1200℃に昇温した後、水素、窒素、アンモニア、TMGをMOVPE装置内に供給し、0.1〜40μm/hの成長速度で3〜10μm厚のアンドープGaN層12を形成した。続いて、アンドープGaN層12上にn−GaN層13を形成した。具体的には、1000〜1200℃の成長温度下において、水素、窒素、アンモニア、TMG、及びシランガスをMOVPE装置内に供給し、0.1〜40μm/hの成長速度で1〜5μm厚のn−GaN層13を形成した。なお、n−GaN層13のキャリア濃度は、1×1017〜5×1019/cm3であり、シート抵抗は1〜200Ω/□であった。
【0044】
次に、n−GaN層13上に発光層としてのInGaN/GaN多重量子井戸層14を形成した。具体的には、600〜800℃の成長温度下において、窒素、アンモニアガスをMOVPE装置内に供給し、3〜30ペアのInGaN/GaN多重量子井戸層14(ただし、InGaNの厚さは1〜3nm、GaNの厚さは3〜20nm)を形成した。
【0045】
そして、900〜1200℃の成長温度下において、InGaN/GaN多重量子井戸層14上に10〜60nm厚のp−AlGaN層15(ただし、Al組成は0.05〜0.2)を形成し、p−AlGaN層15上に0.1〜0.5μm厚のp−GaNコンタクト層16(ただし、キャリア濃度は、5×1017〜5×1018/cm3)を形成した。これにより、基板2上に化合物半導体積層構造が形成された。そして、化合物半導体積層構造を備える基板2をMOVPE装置から取り出した。成長したウェハ1を観察すると、タングステンの薄膜が形成された部分には、LED用のGaN系のエピ層が形成されていなかった。
【0046】
(最適条件についての根拠)
このウェハ製作時にタングステンの帯間隔を2mmの100本から帯なしまで種々変更した条件でウェハを成長させ、その反りを測定した。反りは図3のような定義で測定を行った。測定結果を図4に示す。8インチウェハでは、タングステンの帯を形成しないと、反りは550μmにもなった。しかし、タングステンの帯を形成したウェハでは、帯の数が増えるに従い(溝間隔が狭くなるに従い)、ウェハの反りは大幅に低減した。
【0047】
帯間隔が20mmではウェハの反りは105μmであり、現状の2インチウェハと同じ反り量であった。
【0048】
その後、取り出したウェハの表面をRIE(Reactive Ion Etching)により部分的に除去し、n−GaN層13の一部を露出させ、露出させた部分にTi(100nm)/Al(300nm)からなるn電極を形成した。更に、p−GaNコンタクト層16上にNi(2nm)/Au(6nm)からなる半透明電極としてのp電極と、p電極の端部の所定領域にパッド電極を形成した。これにより、実施例1に係る青色発光ダイオードを作製した。このプロセスの際、反りの大きなウェハはそのままフォトリソプロセスを流すことができないため、全サンプルを20mm角に切断して同じ条件でプロセスを流した。このチップに50mAの電流を1000時間流した後の発光強度を測定した。この結果であるLEDの明るさ(相対強度)と帯間隔の関係を図5に示す。
【0049】
反りが大きくなると(図4参照)、LEDにしたとき発光強度が低下していくことがわかる。これは、反りが大きくなるとエピ層中にひずみが加わり、非発光中心となる欠陥が内在しており、これが寿命試験中に増加していくものと思われる。溝部4を20mm間隔で形成したウェハでは、輝度の低下は2%程度であり、ほぼ無視できる範囲である。
【0050】
次に、本発明の変形例について説明する。
【0051】
(変形例1)
実施例1では、バッファ層10から、その後は発光層部分までを一度に成長した。しかし、低温成長GaN層11とアンドープGaN層12のみまで形成した、バッファ層付き基板までをHVPE法などの成長速度の速い成長方法により形成し、その後、発光層となるGaN系層をMOVPE法により形成するなどの方法を用いることも可能である。
【0052】
基板2上に線膨張係数が異なるエピ層を厚く成長させることにより反りが生じる。したがって、厚いバッファ層10を形成時にすでに溝部4が形成されていれば、薄い方の発光層となるエピ層を溝部4の内部に形成しても、ウェハの反りに対しては影響が小さい。したがって多少溝部4の数を増やしたくらいでも十分に反りを同じにすることができる。
【0053】
(変形例2)
本発明では、溝部4により応力を逃がすことに意味がある。したがって実施例1や変形例1では直線状の連続した溝部であったが、溝部4が長い鎖線状の溝部でも同じような効果を発揮することができる。長い鎖線状の溝部は、直線状の溝部より反りは大きくなるが、割れに対しては強度が強くなるメリットがある。この場合も鎖線状の溝部の数を多少増やすことにより、容易に反りを低減することができる。
【0054】
(変形例3)
実施例1では、GaNのエピ層を成長させないための下地層としてタングステン膜を用いたが、チタンや白金、モリブデンなどの高融点金属を用いることも可能である。また、SiO2、SiN膜などの絶縁体膜でも可能である。
【0055】
(変形例4)
基板2(サファイア基板)上に、ダイサーにより10μm以上の深さの溝を格子状に形成する。この基板上に通常のエピ成長条件で成長を行うと、溝部4にもエピ層が形成されるが、溝部4と溝部4以外に形成された膜は、大きな段差により連続して接続されていない。部分により溝部4側面などに多少膜が形成され連続した部分も存在するが、反りを発生させる応力という観点からはほとんど無視することができる。
【0056】
この場合、溝の部分をエピ層膜より多少浅くしても、溝部4での成長速度が低減したり、多少接続していても応力はほとんど変わらないので、その場合でも使用することができる。
【0057】
(変形例5)
サファイア基板以外にSiC基板やZnO基板でも発光層となる窒化物系のエピ層膜と格子定数や線膨張係数が異なるためウェハに反りを生じる。これらの基板は、まだ大型の基板が開発されていないが、小型基板を用いて、反り抑止の効果を確認したところ同じ効果を確認することができた。このため今後、大型基板が開発され、実用に供されるようになったときには、同じ効果が得られることは明確である。
【0058】
以上説明したように、大型ウェハの反りを小さくすることにより、従来のプロセスを流すことができるようになる。実施例では、最大で8インチ基板を用いたが、今後さらにウェハが大きくなっていく場合にも溝の数を最適化することにより、対応が可能であることを図4のデータが示している。
【0059】
また大型化することによりウェハの反りが大きくなるが、本発明を適用することで信頼性などへの影響を抑えることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 エピタキシャルウェハ
2 基板
3 エピタキシャル多層膜
3a 多層区分膜
4 溝部
5 成長抑止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜が形成されたエピタキシャルウェハにおいて、前記エピタキシャル多層膜が、エピタキシャル成長時に溝部を隔てて独立して形成された複数の多層区分膜からなることを特徴とするエピタキシャルウェハ。
【請求項2】
前記溝部は直線状又は長い鎖線状に形成され、複数の前記多層区分膜が前記基板上で升目状に形成されている請求項1記載のエピタキシャルウェハ。
【請求項3】
前記基板上に、エピタキシャル成長時に耐えられる高融点金属或いは絶縁体膜からなる成長抑止膜が形成され、前記溝部が、エピタキシャル成長時に前記成長抑止膜上に形成される請求項1又は2記載のエピタキシャルウェハ。
【請求項4】
前記基板に、形成されるエピタキシャル多層膜の厚さよりも深い区分溝が形成され、前記溝部が、エピタキシャル成長時に前記区分溝上に形成される請求項1又は2記載のエピタキシャルウェハ。
【請求項5】
前記基板は、サファイア基板、SiC基板或いはZnO基板であり、前記エピタキシャル多層膜は、窒化物系エピタキシャル層を積層してなる請求項1〜4いずれかに記載のエピタキシャルウェハ。
【請求項6】
基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法において、前記基板上に、エピタキシャル成長時に耐えられる高融点金属或いは絶縁体膜からなる帯状の成長抑止膜を格子状に形成した後、エピタキシャル層を順次成長させると共に前記成長抑止膜上でエピタキシャル層の成長を抑止して前記成長抑止膜上に溝部を形成し、前記溝部を隔てて独立した複数の多層区分膜からなる前記エピタキシャル多層膜を形成することを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項7】
基板上に、前記基板と線膨張係数の異なるエピタキシャル多層膜を形成するエピタキシャルウェハの製造方法において、前記基板に、形成するエピタキシャル多層膜の厚さよりも深い区分溝を格子状に形成した後、エピタキシャル層を順次成長させると共に、前記区分溝上に形成されるエピタキシャル多層膜と前記基板の表面上に形成されるエピタキシャル多層膜との段差で溝部を形成し、前記溝部を隔てて独立した複数の多層区分膜からなる前記エピタキシャル多層膜を形成することを特徴とするエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項8】
前記エピタキシャル多層膜は、基板上に形成されるバッファ層と前記バッファ層上に形成される他のエピタキシャル層とからなり、前記バッファ層と前記他のエピタキシャル層を別工程で成長させる請求項6又は7記載のエピタキシャルウェハの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−10663(P2013−10663A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144140(P2011−144140)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】