説明

エポキシ樹脂とレオロジー調節剤とをベースにした有機繊維と、それを用いて得られるファブリック

【課題】エポキシ樹脂とレオロジー調節剤とをベースにした有機繊維と、それと一緒に補強繊維を共織成または共編成した複合材料用半仕上げ製品と、単純な加熱によって熱硬化性樹脂材料にすることが可能なファブリック。
【解決手段】エポキシド樹脂とレオロジー調節剤とからなる配合物と、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補強繊維と熱硬化性樹脂樹脂をベースにした複合材料に関するものであり、特に、織成または編成が可能な糸に成形可能な熱可塑性的挙動をする、レオロジ調整剤を含む熱硬化性樹脂をベースにした複合材料に関するものである。
【0002】
本発明の複合材料は有機マトリックスと、繊維または織物の形をした無機または有機の補強材とから成る。有機マトリックスは以下で説明するような熱硬化性樹脂材料にすることができる。
【背景技術】
【0003】
熱硬化性樹脂材料は三次元ネットワーク(網状構造)を形成するように共有結合によって互いに結合した各種長さのポリマー鎖で形成されたものと定義できる。この熱硬化性樹脂材料は例えば熱硬化性樹脂(例えばエポキシ)とアミン型硬化剤との反応で得られる。熱硬化性樹脂材料は構造接着剤、複合材料用マトリックスさらには電子部品を保護する用途等で使用可能な多くの特性を有している。
【0004】
複合構造物の機械特性を改良するのは数千本のフィラメントから成る補強繊維である。この補強繊維はガラス、炭素、アラミド、その他所望特性を有する有機または無機の材料から成る。
エポキシ材料は高い架橋密度と高いガラス遷移温度(Tg)を有し、優れた熱機械的性質を有する。エポキシ材料は高い架橋密度と高いTgとを有し、熱機械特性に優れるだけでなく、材料の使用限界温度が高い。
【0005】
しかし、エポキシ材料は反応前の状態が液体であるため使用に問題があり、取り扱いが難しい。複合材料を作る従来法にはBステージの制御等に困難な問題がある。すなわち、当業者が用いる一般的なプロセスには繊維をエポキシ樹脂で濡らす(mouillage)段階があるが、滴化(goutte)現象に起因する材料のロスが観測される。この現象は液体樹脂の凝集性(cogesion)が低いことに直接関係する。
【0006】
上記濡らし段階の後には予備硬化段階を行なって熱硬化性樹脂樹脂を取り扱いが容易な中間のいわゆるBステージに変える。これらのプロセスに関しては例えばMaurice Reyneの下記文献に記載されている。
【非特許文献1】Maurice Reyne, "Technologie des composites" 、Hermes編, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、熱硬化性材料とレオロジ調整剤とをベースにした特定の配合物(formulations)はフィラメントまたはメッシュに成形でき、有機または無機の繊維と一緒に織成(tisse)または編成(tricote)できるということを見出した。こうして得られた織成物または編成物は取り扱いが極めて容易になり、加熱圧縮処理で成形でき、熱硬化性材料とレオロジ調整剤からなる配合物の反応によって最終複合材料にすることができる。
【0008】
本発明の配合物は、少なくとも1種の熱硬化性樹脂と、この樹脂と相溶成のあるレオロジ制御剤として使用される少なくとも一種のブロック、例えばメタクリル酸メチルを主単位とするブロックと少なくとも一種の非相溶成のブロックとを有するブロック共重合体とから成る。この材料は上記コポリマーを熱硬化性樹脂中に溶解し、次で硬化剤を添加することで製造できる。上記の溶解反応は例えば押出成形技術で実行できる。押出成形技術を使用することでフィラメントに成形でき、それからメッシュを生産することができる。液体エポキシド樹脂とブロック共重合体の配合物のメッシュは熱可塑的な挙動をし、補強繊維と一緒に織成または編成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の対象は、熱硬化性材料とレオロジ調整剤とをベースにした配合物から例えば押出成形によって得ることができる、熱硬化性樹脂とレオロジ制御剤とから成る有機繊維にある。
【0010】
本発明の他の対象は、下記(a)〜(c)で得られる織成または編成された織物にある:
(a) 本発明のフィラメントまたは遷移と、ガラス繊維、炭素繊維またはその他任意の有機または無機材料の繊維とを一緒に織成または編成し、
(b) 熱硬化性樹脂の複合材料用半仕上げ製品を得るための標準的技術、例えばドレープ(drapage)、モールディング、サンドイッチ法によって得られる仕上げ製品を所望構造に成形し、
(c) 熱硬化性樹脂の複合材料の標準的な技術、例えばホットフォーミングによって配合物を反応させ、複合材料を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の配合物は以下から成る:
(1)配合物全体の重量の10〜99重量%の少なくとも一種の熱硬化性樹脂(I)、
(2)全体の重量の1〜80重量%のレオロジ制御剤(II)、このレオロジ制御剤(II)は例えばS−B−M、B−MおよびM−B−Mコポリマーの中から選択される少なくとも一種のブロック共重合体からなる:
(ここで、各ブロックは共有結合しているか、一方のブロックに共有結合で接合し、他方のブロックへ他の共有結合で結合した一種または複数の中間分子を介して互いに結合しており、
【0012】
Mは熱硬化性樹脂と相溶性のあるポリマー、例えばメタクリル酸メチルのホモポリマーか、メタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むコポリマー(メタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むモノマー混合物の重合で得られる)であり、
Bは熱硬化性樹脂およびMブロックとは非相溶性であり、ガラス遷移温度Tgが熱硬化性樹脂材料の使用温度以下であり、
Sは熱硬化性樹脂(I)およびBブロックと非相溶性であり、Tgまたは融点MpはBのTgより高い)
(3)熱可塑性樹脂、コア−シェル添加剤、官能化エラストマー、S−Bコポリマーおよび反応性ゴムATBNまたはCTBNの中から選択される、配合物全体の重量の0〜50重量%の少なくとも一種の材料(III)。
【0013】
本発明配合物は熱可塑性的な挙動を示し、熱可塑性プラスチック材料を成形するための標準的な技術で処理できるが、反応性を有し、熱硬化性樹脂材料に成形できる。本発明配合物は反応の間、完全に液体状またはゴム状態をしている。
【0014】
熱硬化性樹脂材料は三次元ネットワーク(網状構造)を形成するように共有結合によって互いに結合した各種長さのポリマー鎖で形成されたものと定義できる。例としてはシアノアクリレート、ビスマレイミドおよび硬化剤で架橋されたエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0015】
シアノアクリレートの中ではモノマーCH2=C(CN)COORの重合で得られる熱硬化性樹脂材料(Rは各種の基にすることができる)であるシアノアクリル酸のエステルが挙げられる(硬化剤の添加は不用)。
【0016】
ビスマレイミドタイプの熱硬化性配合物の例としては下記が挙げられる:
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+ナジックイミド、
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+エチニルベンゼン、
メチレンジアニリン+無水マレイン酸+マレイミド。
【0017】
熱硬化性樹脂材料は熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤との反応で有られるものが好ましい。これはオキシラン基を有するオリゴマと硬化剤とのの任意の反応生成物と定義することもできる。このエポキシ樹脂の反応時に起こる反応から三次元ネットワークに対応する架橋材料ができる。架橋密度はベース樹脂と使用する硬化剤によって変わる。
【0018】
「エポキシ樹脂」(以下、Eで表す)は開環重合可能なオキシランタイプの少なくとも2つの官能基を有する任意の有機化合物を意味する。「エポキシ樹脂」という用語は室温(23℃)またはそれ以上の高温度で液体である任意のエポキシ樹脂を意味する。このエポキシ樹脂はモノマーでもポリマーでもよく、また、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族でもよい。この種のエポキシ樹脂の例としてはレソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ブロムビスフェノールF ジグリシジルエーテル、m-アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ポリフェノール−ホルムアルデヒド ノボラックグリシジルエーテル、オルト-クレゾール ノボラックポリグリシジルエーテル、テトラテトラフェニルエタングリシジルエーテルを挙げることができる。これら樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0019】
特に好ましいエポキシ樹脂は1分子当り少なくとも1,5のオキシラン基を有するエポキシ樹脂、特に1分子当り2〜4つのオキシラン基を有するものである。また、少なくとも一つの芳香環、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルを有するエポキシ樹脂も好ましい。
【0020】
硬化剤は室温または室温以上の温度で反応するエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている硬化剤である。非限定的な硬化剤の例としては下記を挙げることができる:
(1)酸無水物、特に無水琥珀酸、
(2)芳香剤または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)またはメチレンジアニリンまたは4,4'-メチレンビス(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)
(3)ジシアンジアミドとその誘導体、
(4)イミダゾール、
(5)ポリカルボン酸、
(6)ポリフェノール。
【0021】
「レオロジ制御剤」という用語は、熱硬化性材料と混合したときに、熱硬化性樹脂材料にするのに必要な反応性を保持した状態で、熱可塑性樹脂の成形分で公知の任意の技術で熱硬化性材料を成形できるようにする任意の化合物を意味する。このレオロジ制御剤はS−B−M、B−MまたはM−B−Mブロック共重合体の中から選択されるブロック共重合体にするのが好ましい。
(1)各ブロックは共有結合しているか、一方のブロックに共有結合で接合し、他方のブロックへ他の共有結合で結合した一種または複数の中間分子を介して互いに結合している。
【0022】
(2)Mは熱硬化性樹脂と相溶性のあるポリマーである。Mはメタクリル酸メチルか、メタクリル酸メチルを少なくとも20重量%、好ましくは50重量%含むのが好ましい。Mブロックを構成する他のモノマーはアクリルモノマーでもなくてもよく、反応性があってもなくてもよい。「反応性モノマー」という用語はエポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の基と反応可能な基を意味する。反応性官能基の非限定的な例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基を挙げることができる。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸となる他の任意の加水分解可能なモノマーにすることができる。Mブロックを構成できる他のモノマーの非限定的な例としてはメタクリル酸グリシジルまたはtert-ブチルメタクリル酸エステルを挙げることができる。より高い使用温度を必要とする複合材料の他の用途では、少なくとも75重量%が主としてシンジオタクチックなPMMAから成るMブロックを使用するのが好ましい。このコポリマーのPMMAブロックは高いTgを有し、従って、複合材料の使用温度を高い温度に維持できる。
【0023】
(3)Bのガラス遷移温度Tgは0℃以下、好ましくは−40℃以下にする。エラストマブロックBを合成するのに使用されるモノマーはジエンにすることができる。このジエンはブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンまたは2-フェニル-1,3-ブタジエンの中から選択できる。このBはポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、これらのランダム共重合体または部分的または完全に水素化されたポリ(ジエン)の中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えば1,2-ポリブタジエンのTg(約0℃)より低いTg(約−90℃)を有する1,4-ポリブタジエンを使用するのが好ましい。Bブロックは水素化されていてもよい。この水素化は標準的な技術で実行できる。エラストマブロックBを合成するのに用いるモノマーはアルキル(メタ)アクリレートでもよい。Tg値は各モノマーの後のカッコ中に示してある:アクリル酸エチル(-24℃)、アクリル酸ブチル(-45℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(-60℃)、ヒドロキシエチルアクリラート(-15℃)、2-エチルヘキシルメタクリレート(-10℃)。アクリル酸ブチルを使用するのが有利である。BとMは非相溶成であるので、BのアクリレートはMブロックのアクリレートとは相違する。Bブロックは1,4-ポリブタジエンを主とするのが好ましい。Bは熱硬化性樹脂およびMブロックと非相溶であり、そのガラス遷移温度Tgは熱硬化性樹脂材料の使用温度以下である。
【0024】
(4)Sは熱硬化性樹脂およびBブロックと非相溶成で、そのTgまたはその融点MpはBのTgより高い。SのTgまたはMpは23℃以上、好ましくは50℃以上にするのが有利である。Sブロックの例としてビニル芳香属化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるものや、アクリル酸および/またはメタアクリル酸から得られるアルキル鎖の炭素原子が1〜18のアルキルエステルが挙げられる。
【0025】
S−B−M、B−MまたはM−B−Mコポリマーの重量平均モル質量は10000g/モル〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/モルにするのが好ましい。合計を100重量%とした場合、下記の比率が有利である:
Mの場合:10〜80%、好ましくは15〜70%、
Bの場合:2〜80%、好ましくは5〜70%、
Sの場合:10〜88%、好ましくは15〜85%。
【0026】
本発明の組成物で使用されるブロック共重合体は例えば下記文献に記載のアニオン重合方法または制御下のラジカル重合で製造できる。
【特許文献1】欧州特許出願第EP 524.054号公報
【特許文献2】欧州特許出願第EP 749 987号公報
【0027】
レオロジ制御剤の配合比率は、90〜40重量%の熱硬化性樹脂に対して10〜60重量%にするのが有利である。
【0028】
本発明の好ましい実施例でのレオロジ制御剤は少なくとも一種のS−B−Mブロック共重合体と少なくとも一種のS−Bブロック共重合体とから成るのが好ましい。S−Bジブロックが5〜80重量%、S−B−Mのトリブロックが20〜95重量%にするのが有利である。
【0029】
S−BジブロックのSとBブロックは互いに非相溶成であり、S−B−MトリブロックのSブロックおよびBブロックと同じモノマー(必要な場合にはコモノマー)で構成できる。SおよびBブロックは熱硬化性樹脂材料の衝撃改良剤の他のブロック共重合体中に存在する他のS およびBブロックと同一でも異っていてもよい。
【0030】
S−Bジブロックの重量平均モル質量は10000g/モル〜500000g/モル、好ましくは20000〜200000g/モルにすることができる。S−BジブロックのBの比率は5〜95重量%、好ましくは5〜60重量%である。
【0031】
さらに、これらの組成物には合成で得られたS−B−Mを精製する必要がないという利点がある。すなわち、S−B−Mコポリマーは一般にS−Bから作られ、この反応では多くの場合、S−BとS−B−Mのコポリマーブレンドが得られ、S−BMコポリマーを得るにはそれを精製する。
【0032】
本発明の有利な実施例では、S−B−Mの一部をS−Bジブロックで置換できる。置換可能部分はS−B−Mの70重量%までである。
S−B−Mトリブロックの一部または全てをM−S−B−S−MまたはM−B−S−B−Mペンタブロックで置換しても本発明の範囲を逸脱するものではない。これらはジ−またはトリ−ブロックに会して上記で説明したアニオン重合で製造できるが、二官能性の重合開始剤を使用する。
【0033】
このペンタブロックの数平均モル質量はS−B−Mトリブロックと同じ範囲にすることができる。2つのMブロック、2つのBブロックまたはSブロックの配合比率はS−B−MトリブロックでのS、BおよびMの配合比率範囲と同じにすることができる。
【0034】
本発明配合物は従来の混合装置を用いた未架橋の熱硬化性樹脂の混合で製造できる。熱硬化可能な樹脂と制御剤とを均一にブレンドすることができる任意の熱可塑性樹脂の技術、例えば押出成形機を使用することができる。得られた製品はフィラメントまたはメッシュの形にすることができる。得られた材料は未反応か、部分的に反応したもので、取り扱い可能なゴム状材料の形をしている。この成形は熱硬化可能な樹脂が反応する温度で、ゆっくりと実行される。上記の(c)の段階では最終対象物の形に成形する間に温度を単に増加させるだけで熱硬化可能な樹脂は熱硬化性樹脂材料に変化する。この温度増加の間、上記ゴム状材料は反応し、使用した樹脂(I)および制御剤(II)の種類に応じて液体状態を維持するか、ゴム状態を維持する。
【0035】
本発明は反応後に熱可塑性の挙動を示す直鎖または分枝したポリマーの形にすることが可能な反応性液体樹脂にもて機用できるということは明らかである。例えば、本発明方法をアクリル酸樹脂に適用しても本発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明の他の対象は本発明配合物の各種用途、例えばスポーツ分野、産業分野、自動車分野、エレクトロニクスおよび航空分野での使用にある。
【0036】
硬化条件
硬化条件は通常のものである。
本発明配合物に通常の添加剤、例えばポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリフェニレンエーテルのような熱可塑性樹脂、液状エラストマーまたはコアシェルタイプの衝撃改良剤を加えても本発明の範囲を逸脱するものではない。
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
実施例では下記材料を使用した:
エポキシ樹脂
モル質量が383グラム/モルで、一つのエポキシ基当りのヒドロキシル基の平均数n=0.075のビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)である(Vantico社から商品番号LY556で市販)。
硬化剤
芳香族ジアミンの4,4'-メチレンビス-(3-クロル-2,6-ジエチルアニリン)であるアミン硬化剤(Lonza社から商品番号Lonzacure MDEAで市販)。この製品の特徴は融点が87℃〜90℃で、モル質量が310グラム/モルである点。
【0038】
SBM1
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、Mがポリ(メタクリル酸メチル)であるS−B−Mトリブロックコポリマー。このSBM1のポリスチレンの重量比は22%、ポリブタジエンの重量比は9%、ポリ(メタクリル酸メチル)の重量比は69%で、重量平均モル質量が7000グラム/モルのポリスチレンブロックと、重量平均モル質量が11000g/モルのポリブタジエンブロックと、重量平均モル質量が84000g/モルのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックとを順次アニオン重合して得られる。この製品は上記特許文献1(欧州特許出願第EP 524.054号公報)および特許文献2(欧州特許出願第EP 749 987号公報)に記載の方法従って製造されたものである。この製品は3つのガラス転移温度(−90℃、95℃および130℃)を示す。
【0039】
SBM2
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、PMMAであるS−B−Mトリブロックコポリマー。このSBM2のポリスチレンの重量比は12%、ポリブタジエンの重量比は18%、PMMAの重量比は70%で、重量平均モル質量が14000グラム/モルのポリスチレンブロックと、重量平均モル質量が22000g/モルのポリブタジエンブロックと、重量平均モル質量が85000g/モルのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックとを順次アニオン重合して得られる。この製品は上記特許文献1(欧州特許出願第EP 524.054号公報)および特許文献2(欧州特許出願第EP 749 987号公報)に記載の方法従って製造されたものである。この製品は3つのガラス転移温度(−90℃、95℃および130℃)を示す。
【0040】
硬化条件
ブレンド物を220℃で2時間硬化させた。
熱機械分析による主機械的緩和温度Tαの測定
Tα(temperature de relaxation mecanique principale)はレオメータ装置(Rheometrics Solid Analyser RSAII)を使用し、後硬化させたサンプルを動的機械的分析によって測定した。平行四辺形(1×2.5×34 mm3)のサンプルに1Hzの引張り振動数で50〜250℃の温度を変えた。ガラス遷移温度は最大tan値をとった。
【0041】
実施例1(本発明)
383グラム/モルの質量を有するダウ社のエポキシド先駆物質(BADGE)にアミン硬化剤(MDEA)とを化学量論量で混合した。このブレンドは40%のSBM1を添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。押出機出口で得られる直径が1mmのストランドを巻き取る。このストランドをガラス繊維(オーエンズ・コーニングから市販の121A−RXタイプの1200テックスを有するもの)と共織成(cowoven)した。配合物に対するガラス繊維の比率は1.5である。
得られた共織成製品は取り扱いが容易で、滴化現象は全く無かった。得られた共織成製品をプレス機下に220℃で2時間放置した。冷却後に得られたTgは165℃、Tαは172℃であった。得られた複合材料はトルエン中で全く膨潤しなかった。
【0042】
実施例2(本発明)
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドは40%のSBM2を添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。押出機出口で得られる直径が1mmのストランドを巻き取る。このストランドをガラス繊維(オーエンズ・コーニングから市販の121A−RXタイプの1200テックスを有するもの)と共織成(cowoven)した。配合物に対するガラス繊維の比率は1.5である。
得られた共織成製品は取り扱いが容易で、滴化現象は全く無かった。得られた共織成製品をプレス機下に220℃で2時間放置した。冷却後に得られたTgは164.8℃、Tαは171.5℃であった。得られた複合材料はトルエン中で全く膨潤しなかった。
【0043】
実施例3(比較例)
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドはアトフィナ(Atofina)社から市販のSBS finaclear 520を40%添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。
材料が溶融強度を示さないため押出機出口で材料を粒状にすることはできなかった。
【0044】
実施例4(比較例)
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドはアトフィナ(Atofina)社から市販のD320を40%添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。
材料が溶融強度を示さないため押出機出口で材料を粒状にすることはできなかった。
【0045】
実施例5(本発明)
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドは40%のSBM2を添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。押出機出口で得られる直径が1mmのストランドを巻き取る。このストランドを織成してSBM−BADGE−MDEAブレンド(ブレンドA)からなる織物を織った。この織物をガラス布上に置き、A/ガラス繊維/Aのサンドイッチにし、プレス機下に220℃で2時間放置した。冷却後に得られたTgは164.8℃、Tαは171.4℃であった。得られた複合材料はトルエン中で全く膨潤しなかった。
【0046】
実施例6
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドは20%のSBM2を添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。押出機出口で得られる直径が1mmのストランドを巻き取る。このストランドをオーエンズ・コーニング社のガラス繊維(1200テックス、121A−RXタイプ)と共織成した。配合物に対するガラス繊維の比は1.5である。
得られた共織成製品は取り扱いが容易で、滴化現象は全く無かった。得られた共織成製品をプレス機下に220℃で2時間放置した。冷却後に得られたTgは164.8℃、Tαは171.7℃であった。得られた複合材料はトルエン中で全く膨潤しなかった。
【0047】
実施例7
383グラム/モルの質量を有するダウから市販のエポキシド先駆物質(BADGE)をアミン硬化剤(MDEA)と化学量論量で混合した。このブレンドは80%のSBM2を添加して共回転するウエルナー40二軸押出機で作った。押出機出口で得られる直径が1mmのストランドを巻き取る。このストランドをオーエンズ・コーニング社のガラス繊維(1200テックス、121A−RXタイプ)と共織成した。配合物に対するガラス繊維の比は1.5である。
得られた共織成製品は取り扱いが容易で、滴化現象は全く無かった。得られた共織成製品をプレス機下に220℃で2時間放置した。冷却後に得られたTgは164.8℃、Tαは160℃であった。得られた複合材料はトルエン中で全く膨潤しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)からなる配合物から押出成形等によって得られる有機の繊維:
(1)配合物全体の重量の10〜99重量%の少なくとも一種の熱硬化性樹脂(I)
(2)S−B−M、B−MおよびM−B−Mコポリマーの中から選択される少なくとも一種のブロック共重合体等からなる、全体の重量の1〜80重量%のレオロジ制御剤(II)
(ここで、各ブロックは共有結合しているか、一方のブロックに共有結合で接合し、他方のブロックへ他の共有結合で結合した一種または複数の中間分子を介して互いに結合しており、
Mは熱硬化性樹脂と相溶性のあるポリマーであり、
Bは熱硬化性樹脂およびMブロックとは非相溶性であり、ガラス遷移温度Tgが熱硬化性樹脂材料の使用温度以下であり、
Sは熱硬化性樹脂およびBブロックと非相溶性であり、Tgまたは融点MpはBのTgより高い)
(3)熱可塑性樹脂、コア−シェル添加剤、官能化エラストマー、S−Bコポリマーおよび反応性ゴムATBNまたはCTBNの中から選択される、配合物全体の重量の0〜50重量%の少なくとも一種の材料(III)。
【請求項2】
Mブロックがポリ(メタクリル酸メチル)およびメタクリル酸メチルを少なくとも20重量%含むコポリマーの中から選択される請求項1に記載の繊維。
【請求項3】
ブロック共重合体のMブロックが少なくとも75重量%がシンジオタクチックなPMMAから成る請求項1または2に記載の繊維。
【請求項4】
ブロック共重合体のMブロックが、メタクリル酸グリシジル、tert-メタクリル酸ブチルまたはアクリル酸のような反応性モノマーをさらに含む請求項1または2に記載の繊維。
【請求項5】
BブロックのTgが0℃以下、好ましくは−40℃以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項6】
Bブロックがポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(エチルヘキシルアクリレート)またはポリ(オクチルアクリレート)のようなポリ(アクリル酸アルキル)およびポリジエンの中から選択される請求項5に記載の繊維。
【請求項7】
Bブロックが1,4-ポリブタジエンである請求項6に記載の繊維。
【請求項8】
Bブロックのジエンが水素化されている請求項5に記載の繊維。
【請求項9】
SのTgまたはMpが23℃以上、好ましくは50℃以上である請求項1〜8のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項10】
Sがポリスチレンである請求項9に記載の繊維。
【請求項11】
ブロック共重合体の重量平均モル質量が10000 g/モル〜500000g/モルである請求項1〜10のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項12】
ブロック共重合体の重量平均モル質量が20000g/モル〜200000g/モルである請求項11に記載の繊維。
【請求項13】
レオロジ制御剤(II)の配合比率が、90〜40重量%の(I)に対して10〜60重量%、好ましくは80〜50重量%の(I)に対して20〜50重量%である請求項1〜12のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項14】
熱硬化性樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤とからなる請求項1〜13のいずれか一項に記載の繊維。
【請求項15】
下記プロセスから成る織成物および編成物の製造での請求項1〜14のいずれか一項に記載の織物の使用:
(1)請求項1〜14のいずれか一項に記載の繊維と有機または無機の補強繊維と一緒に織成または編成し、
(2)織成物または編成物を加熱加圧下に反応させて、熱硬化性樹脂のマトリックスから成る複合材料の全ての特徴を有する複合材料を形成する。
【請求項16】
補強繊維がガラス繊維、炭素繊維またはその他任意の有機または無機材料の中から選択される請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項15または16に記載の使用で得られた織成物および編成物。

【公表番号】特表2007−514872(P2007−514872A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540538(P2006−540538)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/FR2004/003027
【国際公開番号】WO2005/052054
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】