説明

エポキシ樹脂粉体塗料組成物

【課題】塗装性、硬化性、流れ性に優れ、且つ耐衝撃性などの機械特性に優れたエポキシ樹脂粉体塗料組成物の提供。
【構成】ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂粉体塗料組成物であって、前記ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂は、アルカリ金属水酸化物の存在下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる二核体純度70面積%〜95面積%のビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールとを反応させることによって得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂でエポキシ当量が1000g/eq〜3500g/eq、全末端基に対するエポキシ基純度が30モル%〜70モル%、且つα−グリコール含有量が45meq/100g〜70meq/100gであることを特徴とするエポキシ樹脂粉体塗料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形のビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂粉体塗料に関するものであり、塗装性、硬化性、流れ性に優れ、且つ耐衝撃性などの機械特性に優れる粉体塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂と硬化剤成分を必須成分とするエポキシ樹脂粉体塗料は、金属との密着性、耐食性、機械特性に優れるため、鋼製家具、上下水道鋳鉄管、鋼材等に広く使用されている。
【0003】
使用するエポキシ樹脂や硬化剤を変えることにより所望の物性や特性を持つエポキシ樹脂粉体塗料を調整することが出来る。例えば特許文献1には長期防食性を更に改良する方法として、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂を主成分とする粉体塗料用エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかし、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂の原料であるビスフェノールFは通常、三核体以上の成分が10面積%程度含有しているため、それから得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂は多官能成分を含有しており、この多官能成分の影響により硬化性が早く、ゲル化の恐れや、塗膜のピンホール発生の問題、流れ性が悪いという問題があった。
【0004】
これに対して特許文献2、特許文献3では二核体成分を95重量%以上含有するビスフェノールF型エポキシ樹脂あるいは二核体成分を95重量%以上含有するビスフェノールFを原料として得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂を用いた組成物が開示されている。この方法より前述の多官能成分の影響が無く、前述の硬化性が早く、ゲル化の恐れや、塗膜のピンホール発生の問題、流れ性が悪いという問題を解決することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2813986号公報
【特許文献2】特開平03−076770号公報
【特許文献3】特開2001−139660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手法は二核体成分を95重量%以上含有するビスフェノールF型エポキシ樹脂あるいは二核体成分を95重量%以上含有するビスフェノールFを原料としており、これらの原料は分子蒸留や再結晶、溶剤抽出等の工程により二核体成分含有率を上げることが必要であり、工業的には低収率、工数増加により経済的に不利であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、従来使用されていた二核体純度70面積%〜95面積%であるビスフェノールFを原料としながら、分子蒸留や再結晶、溶剤抽出等を行わず、得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂の末端基を制御することによって硬化性、流れ性が良好で、且つ機械特性に優れたビスフェノールF型固形エポキシ樹脂を主成分とする粉体塗料組成物を提供するものである。末端基としてエポキシ基、α−グリコール基、フェノール基、加水分解性塩素の比率につき鋭意検討を行った結果、特にα−グリコール基を所定の範囲とすることによって、硬化性が早くゲル化の恐れがある問題や塗膜のピンホール発生の問題、流れ性が悪いという問題を解決することが出来た。そればかりか、硬化物の耐衝撃性で示される機械特性をも改良されることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち本発明は、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂と硬化剤とを含むエポキシ樹脂粉体塗料組成物であって、前記ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂は、アルカリ金属水酸化物の存在下、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる二核体純度70面積%〜95面積%のビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールとを反応させることによって得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂のエポキシ当量が1000g/eq〜3500g/eq、全末端基に対するエポキシ基純度が30モル%〜70モル%、且つα−グリコール含有量が45meq/100g〜70meq/100gであることを特徴とするエポキシ樹脂粉体塗料組成物である。
そして、ビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールとの反応において、ビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールのモル比がビスフェノールFの水酸基1モルに対してエピハロヒドリンが0.50モル〜0.71モル、グリシドールが0.04モル〜0.12モルであることが好ましい。反応させることによって本発明に用いられるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂が得られるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂の末端基を制御することによって硬化性、流れ性が良好であるだけではなく、耐衝撃性等の機械特性に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ビスフェノールFのゲルパーミエーションクロマトグラフィの図である。図中のピークA及びBは2核体成分であり、ピークCは3核体成分、ピークDは4核体以上の成分を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明に用いられるビスフェノールFはフェノールとアルデヒドとを酸性触媒下において縮重合反応で得られるもので、二核体純度が70面積%〜95面積%であり、好ましくは80面積%〜95面積%であり、より好ましくは85面積%〜95面積%である。一般に市販されているビスフェノールFはこの範囲であり、95面積%以上のものは蒸留や再結晶、溶剤抽出などの高純度化工程を要しなければならず経済的に不利であり、70面積%以下であると本発明のエポキシ樹脂の末端基を制御する方法をもってしても硬化性、流れ性を調整できる範囲を超えてしまう為、好ましくない。また、ビスフェノールFの核位置異性体としてパラ・パラ・メチレン結合を持つ異性体成分量が25面積%〜45面積%含有するものが好ましく、より好ましくは30面積%〜40面積%である。具体的には商品名BPF(本州化学工業株式会社製 ビスフェノールF)が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0011】
本発明に用いられるエピハロヒドリンの具体例として、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。エピハロヒドリンとグリシドールの混合比率はエピハロヒドリン/グリシドール=(94〜80)モル%/(6〜20)モル%の範囲である。
【0012】
特許第3760612号公報にはエピハロヒドリンとアルカリ金属水酸化物水溶液とを反応させてエピハロヒドリンとグリシドールとの混合物を得(工程1)、次いで、該混合物と多官能フェノール化合物とをアルカリ金属水酸化物の存在下に反応させる(工程2)ことを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法が開示されている。この様な方法は、安定してエピハロヒドリンとグリシドールのモル比を制御することが難しいことと、本発明の末端基純度の範囲までグリシドールを増やすことは困難であることから、本発明はエピハロヒドリンとグリシドールをあらかじめ混合して使用した。また、同特許第3760612号公報にはα−グリコール含有量が高いエポキシ樹脂に多価活性水素化合物を反応させることによって高分子量エポキシ樹脂を得る製造方法も開示しているが、この方法では得られる高分子量エポキシ樹脂のα−グリコール含有量が低くなってしまい、本発明のα−グリコール含有量のものを得ることは出来ない。
【0013】
ビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールの反応はアルカリ金属水酸化物の存在下で行われる。アルカリ金属水酸化物の具体例としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。固形で配合しても水溶液等の液状として配合しても良い。分割して又は連続して供給することが出来る。
【0014】
本発明の目的を達成するために用いることの出来るビスフェノールF型エポキシ樹脂のエポキシ当量は1000〜3500g/eqの範囲である。エポキシ当量が1000g/eq未満だと粉体塗料としての貯蔵安定性に影響があり、ブロッキング等の問題がある。エポキシ当量が3500g/eqより大きいと流れ性に問題が生じるため好ましくない。またエポキシ基純度(モル%)は各官能基の単位をmeq/100gに統一することによって次式で計算できる。
エポキシ基純度(モル%)=(エポキシ基含有量×100)/(エポキシ基含有量+αグリコール含有量+フェノール性水酸基含有量+加水分解性塩素含有量)
【0015】
前項の計算式で求められるエポキシ基純度は30〜70モル%が好ましく、より好ましくは40〜60モル%である。70モル%以上では粉体塗料を塗装した際、硬化が速く流動性に影響があり、ダレやムラを発生するなどの問題がある。30モル%以下では充分な硬化性、塗膜の機械物性が得られない。
【0016】
本発明におけるエポキシ基純度を30〜70モル%にするためには、末端基のα−グリコール含有量を制御することが重要であり、α−グリコール含有量を45〜70meq/100gとすることが好ましく、より好ましくは45〜60meq/100gである。フェノール性水酸基含有量は5meq/100g以下が硬化性に影響は無く好ましいが、より好ましくは2meq/100g以下である。加水分解性塩素は500ppm以下であれば塗膜への影響は無いが、好ましくは200ppm以下である。
【0017】
このようなビスフェノールF型エポキシ樹脂を製造する方法としては、公知慣用の方法が適用できる。例えば、アルカリ金属水酸化物の存在下、ビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールとを反応して得ることができる。ビスフェノールFを不活性溶媒に溶解し、アルカリ金属水酸化物をフェノール性水酸基1当量あたり0.5〜1.15モル仕込むか、アルカリ金属水酸化物の水溶液にビスフェノールFを溶解したのち、エピクロロルヒドリンとグリシドールを混合又は各々単独で、一括又は連続で供給することにより製造する方法がある。ビスフェノールFのフェノール性水酸基1当量当たりのエピハロヒドリン及びグリシドールの合計のモル比は0.54モル〜0.83モルの範囲で反応を行う。
【0018】
ビスフェノールFを溶解する不活性溶媒は特に指定が無いが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、水等が挙げられる。投入するエピハロヒドリンとグリシドールのモル比が0.83モル以上では生成するエポキシ樹脂の分子量が低くなり、粉体塗料としたときのブロッキングがあり塗料の貯蔵安定性が得られない。また、0.54モル未満では生成するエポキシ樹脂の分子量が高くなり、得られる粉体塗料の流れ性が悪くなり、また硬化性が低下する。
【0019】
反応後、得られたエポキシ樹脂を不活性溶媒に溶解し、副生したアルカリ金属塩をろ過または水洗により除去し、必要に応じて加水分解性塩素含有量をアルカリ金属水酸化物で反応することによって低減し、不純物を除去する。
【0020】
使用した不活性溶媒を常圧及び又は減圧で加熱することによって回収し、目的のビスフェノールF固形エポキシ樹脂を得ることが出来る。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料組成物に使用できる硬化剤としては、ジシアンジアミド、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、酸官能基末端のポリエステル樹脂、ジヒドラジド類、イミダゾール類、有機リン化合物類、イミダゾリン類、三フッ化ホウ素のアミン錯体等が挙げられるが、好ましくは、メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン類である。これらは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
酸無水物硬化剤、アミン硬化剤は本発明のα−グリコール含有量が多いエポキシ樹脂を使用した場合、水酸基が促進剤として働き、硬化性が早くなってしまうため、好ましくない。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料組成物には、当該ビスフェノールF型エポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とし、これ以外に本発明の特性を損なわない範囲で従来のエポキシ樹脂、顔料、充填剤、流動調整剤、硬化促進剤、その他改質剤等を添加することが出来る。エポキシ樹脂としては例えばビスフェノール型ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等のノボラック型ジグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂等の一種または数種類を混合して用いることが出来る。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料組成物の製造方法として、例えば当該ビスフェノールF型エポキシ樹脂と硬化剤、その他材料を予備混合して押出機等で溶融混練して、冷却後粉砕機で微粉砕する。さらに分級機で粒度分布を調整し粉体塗料を得ることが出来る。
【0025】
被塗装素材に塗膜を形成させる方法としては、流動浸漬法、静電塗装法、予熱静電塗装法等によって塗装し、放冷硬化や熱風乾燥炉等で後硬化させることで塗膜を形成させることが出来る。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。特に断りがない限り「部」は重量部を表す。
【0027】
本発明において、分析方法、測定方法は以下の通りである。
(1)エポキシ当量:JIS K 7236の規定に従い測定した。
(2)フェノール性水酸基当量:テトラヒドロフラン96重量%とメタノール4重量%の混合溶液中でフェノール性水酸基にテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを作用させて発色させ、分光光度計を用いて、305nmにおける吸光度を測定し、予め原料に用いた2官能フェノール類を標準として同様の操作により作成した検量線により換算して求めた。
(3)加水分解性塩素:JIS K 7243−2の規定に従い測定した。
(4)α−グリコール含有量:JIS K 7146の規定に従い測定した。
(5)軟化点:JIS K 5601−2−2の規定に従い測定した。
(6)ビスフェノールFの二核体純度:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、2核体成分のピーク面積/全成分のピーク面積×100(%)で求めた。
測定装置:東ソー株式会社製 HLC−8220 RI検出器
測定条件:移動相 テトラヒドロフラン 温度40℃
(7)ビスフェノールFのパラ・パラ・メチレン結合を持つ異性体比率:HPLC法により、2核体成分中のパラ・パラ・メチレン結合成分のピーク面積/2核体成分のピーク面積×100(%)で求めた。
測定装置:ヒューレッドパッカード社製 HP−1100 UV検出器(280nm)
測定条件:移動相 アセトニトリル/水=40%/60% アイソクラチック
【0028】
合成例1
撹拌機、窒素導入管、測温抵抗体、滴下装置及び冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに49%苛性ソーダ水溶液110.6部と水399部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPF(本州化学工業株式会社製、ビスフェノールF)を200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン101.3部とエピオールOH(日油株式会社製 グリシドール)7.4部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン329部を加え15分撹拌後静置して、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去しエポキシ樹脂(A)を得た。性状は表1に示した。
【0029】
合成例2
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液105.0部と水400部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン101.8部とエピオールOH5.9部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン327部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(B)を得た。性状は表1に示した。
【0030】
合成例3
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液108.2部と水394部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン94.4部とエピオールOH14.8部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン332部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(C)を得た。性状は表1に示した。
【0031】
合成例4
製造例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液110.6部と水399部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでビスフェノールF−D(本州化学株式会社製、二核体純度99面積% パラ・パラ・メチレン結合を持つ異性体成分量35面積%)を200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン101.3部とエピオールOH7.4部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン329部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去しエポキシ樹脂(D)を得た。性状は表1に示した。
【0032】
合成例5
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液106.8部と水400部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン111.0部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン327部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(E)を得た。性状は表1に示した。
【0033】
合成例6
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液83部と水287部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン93.4部を滴下装置から投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し3時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン314部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(F)を得た。性状は表1に示した。
【0034】
合成例7
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液83部と水287部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン97.1部を滴下装置から投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し3時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン314部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(G)を得た。性状は表1に示した。
【0035】
合成例8
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液110.6部と水399部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを131部とBRG−555(昭和高分子株式会社製 フェノールノボラック樹脂 2核体純度26面積%品)69部投入し、ビスフェノールFの2核体純度を68面積%とした。系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン99.7部とエピオールOH7.3部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し反応を行ったが、激しく増粘、溶媒に不溶となり樹脂を得ることができなかった。
【0036】
合成例9
合成例1と同じ装置に49%苛性ソーダ水溶液108.2部と水394部を仕込み、撹拌しながら系内雰囲気を窒素置換する。次いでBPFを200部投入し、系内温度を50℃に制御し撹拌溶解した。次いでエピクロロヒドリン90.2部とエピオールOH16.3部を滴下装置から同時に投入した。投入後、系内温度を92℃に制御し2時間反応を行った。反応終了後メチルイソブチルケトン332部を加え15分撹拌後静置し、下層の水を除去した。次いでリン酸で中和、水洗を行い水層を除去し、ろ過した後メチルイソブチルケトンを留去してエポキシ樹脂(H)を得た。性状は表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
実施例1
合成例1で得られたエポキシ樹脂(A)100部、硬化剤としてキュアゾール2PZL(四国化成工業株式会社製2−フェニルイミダゾリン)8部、体質顔料として沈降性硫酸バリウムSS−30(堺化学工業株式会社製)50部、着色顔料としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製)2部及び流れ性調整剤としてアクロナール4F(商品名 BASFジャパン株式会社製 アクリル系レベリング剤)0.5部を配合した。配合物をヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製 形式10B)でドライブレンドし、次いでエクストルーダー(池貝鉄工株式会社製 PCM−30)で溶融混練を行い、冷却後に微粉砕した。更に100メッシュの篩で分級し粉体塗料を得た。得られた粉体塗料をJIS G3141規定の150×70×0.8mmのSPCC−SD鋼板に静電粉体塗装を行い、180℃で20分焼付け、膜厚約100μmの塗装試験板を得た。耐屈曲性試験にはJIS G3141規定の150×50×0.3mmのSPCC−SD鋼板に塗装した試験板を使用した。
【0039】
実施例2〜3
エポキシ樹脂を合成例2及び合成例3で得られたエポキシ樹脂(B)、エポキシ樹脂(C)にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の配合、操作により粉体塗料及び塗装試験板を得た。
【0040】
比較例1〜5
エポキシ樹脂を合成例3〜合成例8で得られたエポキシ樹脂(D)、エポキシ樹脂(E)、エポキシ樹脂(F)、エポキシ樹脂(G)、エポキシ樹脂(H)にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様の配合、操作により粉体塗料及び塗装試験板を得た。
【0041】
試験項目及び試験方法
(1)塗料の流れ性指数;粉体塗料0.7gを用いて直径11mm(L0)のタブレットを作成し15分間脱気して、予め180℃に加熱した鋼板に乗せ、45°の傾きで10分間保持する。その後に塗料の流れた距離(L)を測定し、次式より流れ性指数を算出した。流れ性指数=(L−L0)/L0
(2)ゲルタイム;180℃に加熱したホットプレート上に粉体塗料0.1gを乗せ溶融した時点からテフロン棒で掻き混ぜ、ゲル化するまでの時間を測定し秒数で示した。
(3)平滑性;塗膜外観を目視による判定
(4)耐屈曲性;JIS K 5600−5−1の規定に従い、タイプ1の試験機で直径2mmのマンドレルを使用し、目視で判定した。
異常なし;○, 亀裂あり;×
(5)耐衝撃性;JIS K 5400−8−3−2の規定に従い、デュポン衝撃試験を行った。撃ち方は、半径1/4インチ、重り500g、高さ50cmで評価した。
異常なし;○, 問題あり;×
(6)可とう性;JIS Z 2247エリクセン試験を行い、可とう性を判断した。
3mm以上;○, 3mm未満;×
(7)MEKラビングテスト;MEKを含んだガーゼで塗膜表面を10往復擦り塗膜の状態を判定した。
異常なし;○, 10往復未満で溶出、若しくは白化;×
【0042】
〔表2〕に配合部と、塗料物性及び塗膜物性を示した。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
表2の結果、本発明のビスフェノールF型エポキシ樹脂と、硬化剤を必須成分として含有する粉体塗料組成物は、硬化性や耐衝撃性などに優れているため、上下水道鋳鉄管や、鋼材などの被覆材料に極めて有用に利用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むエポキシ樹脂粉体塗料組成物であって、前記ビスフェノールF型固形エポキシ樹脂は、アルカリ金属水酸化物の存在下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによる二核体純度70面積%〜95面積%のビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールとを反応させることによって得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂でエポキシ当量が1000g/eq〜3500g/eq、全末端基に対するエポキシ基純度が30モル%〜70モル%、且つα−グリコール含有量が45meq/100g〜70meq/100gであることを特徴とするエポキシ樹脂粉体塗料組成物。
【請求項2】
ビスフェノールFとエピハロヒドリンとグリシドールのモル比がビスフェノールFの水酸基1モルに対してエピハロヒドリンが0.50モル〜0.71モル、グリシドールが0.04モル〜0.12モルで反応させることによって得られるビスフェノールF型固形エポキシ樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂粉体塗料組成物。
【請求項3】
前記硬化剤が、ジシアンジアミド、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、酸官能基末端のポリエステル樹脂、ジヒドラジド類、イミダゾール類、有機リン化合物類、イミダゾリン類、三フッ化ホウ素のアミン錯体からなる群より選ばれた少なくとも1種類である請求項1または2記載のエポキシ樹脂粉体塗料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−37917(P2011−37917A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183401(P2009−183401)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】