説明

エマルジョンの調製方法

本発明は、第2液体中第1液体型エマルジョンの調製方法に関するものであり、(a)両液体中の少なくとも一方が、界面活性剤またはその前駆体を含み、(b)前記第2液体が、100μジーメンス/cm未満の導電性を有し、(c)前記両液体間の界面張力が、少なくとも0.0001mN/mであり、かつ(d)前記両液体が、5000V/m〜107V/mの強度の電界にさらされる、調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルジョンの調製方法は、多くの工業的方法がエマルジョンの調製を含むので、商業上極めて重要である。商業上重要であるその他の理由は、エマルジョンの調製方法が、洗浄用調合物、食品用調合物および化粧用調合物を含む多様な消費者用製品またはその材料を調製するの使用されることである。例えば、スキンクリームおよびローションなどの化粧用調合物、ならびにマーガリン、サラダドレッシングおよび脂肪スプレッドなどの食品は、エマルジョンの形態であり、それらの生産の初期、最終または中間段階でエマルジョンの調製方法を使用している。
【0003】
エマルジョンの調製方法は、大きな界面領域の生成を必要とし、従来の乳化方法において、この目標は、固定および移動式混合素子、流体の流動ならびに超音波振動による撹拌などの各種手段で機械的エネルギーを導入することによって達成される。しかし、機械的エネルギーを導入するこれらの方法は、導入される機械的エネルギーの大きな部分が、バルク液体流を生成させることおよび粘性消散で消散するので効率が悪い。さらに、固定および移動式混合素子を使用する方法は、頻繁な維持管理を必要とし、品質、衛生および清浄性の基準に関する困難をもたらす外来物質による汚染の機会が存在する。
【0004】
従来法のもう1つの問題点は、十分に小さな小滴径のエマルジョンを調製することが、特に連続相の粘度が高い場合に、特に困難であることである。従来法に伴うさらなる問題は、工業的規模のこれらの方法を販売時点でのエマルジョンの製造に適合させることが困難であることである。
【0005】
一方、各種の分離方法における電界の使用が知られている。例えば、米国特許第5262027号(Martin Marietta Energy Systems,Inc.,1999)には、第1液相をノズルを通して連続第2液相中に導入すること、および第1液相にノズルを出ると同時に十分大きな強度の垂直配向パルス電界を印加して第1液相を多くのミクロ小滴に破砕することによって両液相を接触させて分散液を形成する方法が記載されており、該分散液を、次いで、さらなるパルス電界にさらして、第1液相を連続合着および再懸濁させ、分散液を合着させて両相を分離する。それゆえ、この文献は、高められた抽出効率を有する高処理量の溶媒抽出操作を提供することを対象とするものであり、エマルジョンの調製方法を記載していない。
【0006】
このように、従来技術は、品質、衛生および清浄性の基準を維持すると同時にエネルギー効率がよく、かつ高粘性流体を処理する能力があり、かつ小さな小滴径を有するエマルジョンを生産する能力がある、エマルジョンの調製に関する課題に取り組んでいない。
【特許文献1】米国特許第5262027号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の目的の1つは、必要とされる機械的エネルギーの投入量を十分に低減し、かつエネルギー効率のよい、エマルジョンの調製方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、固定および移動式混合素子を使用せず、それによって外来物質による汚染の危険を低減し、かくして清浄性、衛生および品質に関する高い基準の達成を助ける、エマルジョンの調製方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、エマルジョンの小滴径が小さいエマルジョンの調製方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、高粘度を有する液体のエマルジョンの調製方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、集中式大量製造に加え販売時点での製造に適合させることのできる、エマルジョンの調製方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる他の目的は、本明細書中に含まれる説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、第2液体中第1液体型エマルジョンの調製方法が提供され、ここで、
(a)両液体の少なくとも一方が、界面活性剤またはその前駆体を含み、
(b)前記第2液体が、100μジーメンス/cm未満の導電率を有し、
(c)前記両液体間の界面張力が、少なくとも0.0001mN/mであり、かつ
(d)両液体が、5000V/m〜107V/mの強度の電界にさらされる。
【0014】
前記両液体の予形成した粗エマルジョンまたは分散液は、前記電界にさらされることが好ましい。本発明の界面活性剤は、好ましくは、非イオン性、両性または双性イオン性から選択される。界面活性剤は、好ましくは、エマルジョンの0.01重量%〜20重量%の範囲で存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の本質的特徴によれば、両液体間の界面張力が少なくとも0.0001mN/mである2つの液体からなるエマルジョンを、それらの液体を界面活性剤の存在下に電界にさらすことによって調製する方法が提供される。
【0016】
(エマルジョン)
本発明は、第2液体中第1液体型エマルジョンの調製方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、水中油型、油中水型、または多重エマルジョン型でよいエマルジョンを調製するのに使用することができ、かつ商業上重要な任意のエマルジョンを調製するのに使用できる。該方法は、消費者用製品またはその材料を調製するのに使用できる。このような消費者用製品には、洗浄用調合物、食品用調合物および化粧用調合物が含まれる。洗浄用調合物の非制限的例が、織物の手入れ、口の手入れ、硬質表面洗浄用調合物である。化粧用調合物の非制限的例には、スキンクリームおよびローション、ヘアケア製品などが含まれる。食品用調合物の非制限的例には、マーガリン、サラダドレッシングおよび脂肪スプレッドが含まれる。エマルジョンの調製方法は、このような消費者用製品の製造の初期、最終または中間段階で使用できる。本発明による方法は、製造のための下流工程の一部であり得る。該方法を使用して、消費者用製品を製造するための供給原料として使用するためのエマルジョンを調製できる。
【0018】
好ましい態様において、本発明による方法は、食用エマルジョンの調製中に使用される。さらなる好ましい態様において、このような食用エマルジョンは、マーガリン、脂肪スプレッド、またはサラダドレッシング、あるいはこれらの成分である。
【0019】
本発明による方法は、好ましくは、エマルジョンを調製するのに使用され、ここで、こうして調製されたエマルジョンは、エマルジョンの体積の好ましくは0.01%〜85%、より好ましくは5%〜50%の分散相体積を有する。分散相体積は、エマルジョンの体積の10%〜40%であることが特に好ましい。
【0020】
(液体)
本発明で使用される用語「液体」は、連続相が液体である、固体-液体、気体-液体、ゲル-液体、または液体-液体型の分散液を含む。
【0021】
第2液体が100μジーメンス/cm未満の導電率を有すること、および第1液体と第2液体との間の界面張力が少なくとも0.0001mN/mであることが不可欠である。
【0022】
第2液体の導電率は、好ましくは10μジーメンス/cm未満である。両液体間の界面張力は、好ましくは0.0001mN/m〜5mN/m、より好ましくは0.0001mN/m〜1mN/mである。
【0023】
第1液体の導電率は、好ましくは、100mジーメンス/cm未満である。
【0024】
第1液体および第2液体は、所望されるエマルジョンの型に基づいて選択できる。例えば、第1液体は、水または水性溶液を含むことができ、かつ第2液体は、水と非混和性の疎水性液体を含むことができる。逆に、第1液体は、水と非混和性の疎水性液体を含むことができ、かつ第2液体は、水または水性溶液を含むことができる。
【0025】
2つの液体の密度差は、好ましくは10kg/m3〜2500kg/m3、より好ましくは100kg/m3〜2500kg/m3である。2つの液体の密度差は、50kg/m3〜250kg/m3であることが特に好ましい。
【0026】
本発明による2つの液体は、ニュートン、非ニュートンまたは時間依存性であるレオロジー挙動を示す可能性があり、液体の粘度は、限定因子ではない。本発明による方法は、従来の方法に比較して高粘度液体を取り扱うのに特に適している。第1液体および第2液体の双方の粘度は、20s-1の剪断速度で測定して、好ましくは0.1cP〜100000cPの範囲、より好ましくは0.8cP〜10000cPの範囲、最も好ましくは0.9cP〜1000cPの範囲にある。双方の液体の粘度は、同一であるか、あるいは同一の好ましい範囲に含まれるべきであるとは思われない。
【0027】
(界面活性剤)
両液体の少なくとも一方が、界面活性剤またはその前駆体を含有することが、本発明の本質的特徴である。
【0028】
好ましくは、界面活性剤は、エマルジョンの0.01重量%〜20重量%で存在する。
【0029】
任意のタイプの界面活性剤を使用できる。本発明の範囲に包含される双性または両性または非イオンまたはアニオンまたはカチオン性界面活性剤は、次の周知の教科書、すなわち、(i)A.M.SchwartzおよびJ.W.Perryによる「Surface Active Agents」第1巻、(ii)A.M.Schwartz、J.W.PerryおよびJ.Berchによる「Surface Active Agents and Detergents」第2巻、(iii)M.R.Porterによる「Handbook of Surfactants」、(iv)E.G.Lomaxによる「Amphoteric Surfactants」中に示されている。
【0030】
任意の界面活性剤を使用できるが、使用される界面活性剤は、非イオン、両性または双生型であることが好ましい。適切な非イオン性界面活性剤は、広義には、本質的に親水性であるアルキレンオキシド基と本質的に脂肪族またはアルキル芳香族性でよい有機疎水性化合物との縮合によって製造される化合物として説明できる。なんらかの特定の疎水性基と縮合される親水性またはポリアルキレン基の長さを容易に調節して、親水性と疎水性要素との間の望ましいバランス度を有する水溶性化合物を生じさせることができる。
【0031】
個々の非制限的例には、直鎖または分枝鎖配置の6〜22個の炭素原子を有する脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、ココヤシアルコール1モル当たり2〜15モルのエチレンオキシドを有するココヤシ油エチレンオキシド縮合物;そのアルキル基が6〜22個の炭素原子を含むアルキルフェノールとアルキルフェノール1モル当たり2〜15モルのエチレンオキシドとの縮合物;エチレンジアミンおよびプロピレンオキシドとエチレンオキシドとの反応生成物;40重量%〜80重量%のポリオキシエチレン基を含む縮合物;構造R3NOの第3級アミンオキシド(ここで、1つの基Rは6〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、残りはそれぞれメチル、エチルまたはヒドロキシエチル基である)、例えばジメチルドデシルアミンオキシド;構造R3POの第3級ホスフィンオキシド(ここで、1つのRは6〜22個の炭素原子を有するアルキル基であり、残りはそれぞれ1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはヒドロキシアルキル基である)、例えばジメチルドデシルホスフィンオキシド;および構造R2SOのジアルキルスルホキシド(ここで、基Rは6〜22個の炭素数を有するアルキル基であり、残りはメチルまたはエチルである)、例えばメチルテトラデシルスルホキシド;脂肪酸アルキロールアミド;脂肪酸アルキロールアミドとアルキルメルカプタンとのアルキレンオキシド縮合物が含まれる。
【0032】
単語「両性界面活性剤」は、極性基のイオン的性質が溶液のpHによって決まる界面活性分子を記述するのに使用される。単語「双性界面活性剤」は、正におよび負に帯電した基の双方を含む界面活性分子を記述するのに使用される。
【0033】
採用できる適切な両性および双性界面活性化合物は、カチオンとして第4級アンモニウム、スルホニウム、オキソニウムまたはホスホニウムイオンを、アニオンとしてカルボキシレート基、スルホネート基、サルフェート基、サルファイト基、ホスフィネート基、ホスホナイト基、ホスフィト基またはホスファト基を含む化合物である。
【0034】
双性または両性界面活性剤の個々の非制限的例には、アルキルアミノ酸、アルキルベタイン、アルキルイミニオ二酸、アルキルイミダゾリンに由来する両性物質、アルキルポリアミノカルボン酸、アルキルアンモニオジメチルプロピルスルホン酸、ホスファチジルコリン、スルホニウムベタイン、ホスホニウムベタイン、スルホベタイン、スフィトベタイン、スルファトベタイン、ホスフィネートベタイン、ホスホネートベタイン、ホスフィトベタイン、ホスファトベタインおよびアルキルアンモニオスルホン酸が含まれる。
【0035】
(食用界面活性剤)
本発明の1つの好ましい態様によれば、使用される界面活性剤は、食用界面活性剤である。脂質系物質が好ましいが、任意の食用界面活性剤を使用できる。しかし、他の非脂質系界面活性剤、例えば、炭水化物の使用を排除しない。食品の場合、任意の食用界面活性剤を使用できる。一般に、好ましい食用界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤から選択される。
【0036】
好ましい非イオン性または双性の食用界面活性剤は、食用のモノグリセリド、ジグリセリド、ポリグリセロールエステル、非イオン性リン脂質、例えばホスファチジルコリン、脂肪酸エステルの非脂肪性カルボン酸エステル、部分糖-脂肪酸エステル、およびポリオールの部分脂肪酸エステル、脂肪酸のアルカリ金属塩、ならびにこれらの混合物である。
【0037】
好ましい食用カチオン性界面活性剤は、脂肪酸エステルのカチオン性非脂肪性カルボン酸エステル、およびその混合物である。
【0038】
好ましい食用アニオン性界面活性剤は、乳酸化脂肪酸塩、アニオン性リン脂質、脂肪酸エステルのアニオン性非脂肪性カルボン酸エステルおよびそれらの金属塩、脂肪酸およびそれらの金属塩、ならびにこれらの混合物である。モノグリセリドなどのいくつかの市販界面活性剤は、かなりの量の遊離脂肪酸を既に含み、それらの場合、製品が中性または中性に近いpHを有する場合、イオン性補助界面活性剤を添加することは必要でない可能性がある。
【0039】
これらの食用界面活性剤で使用される脂肪酸鎖は、任意のタイプおよび起源でよい。しかし、好ましくは、C8〜C28脂肪酸鎖が存在し、より好ましくはC12〜22、例えば、C14〜18が存在する。脂肪酸は、例えば、飽和、不飽和でよく、分留または水素化されていてもよく、天然供給源(例えば、乳製品、植物または動物)または合成供給源に由来することができる。
【0040】
本発明の製品で使用するのに好ましい食用界面活性剤は、界面活性剤の部分または全体として、モノグリセリド、レシチン(またはその他のリン脂質)および乳酸化脂肪酸塩の群の材料を含む。
【0041】
(界面活性剤の前駆体)
もう1つの好ましい態様によれば、界面活性剤の前駆体は、両液体の少なくとも一方中に存在できる。用語「界面活性剤の前駆体」は、本発明中で使用される場合、単独でまたは相補的反応物との化学反応によって化学的変換を受けインサイチュで界面活性剤になる、界面活性剤の化学前駆体を意味する。好ましくは、相補的反応物および界面活性剤前駆体は、同一液体中に存在しない。界面活性剤前駆体と相補的反応物との間の化学反応は、両液体を電界にさらすことに先行しないことがさらに好ましい。界面活性剤の前駆体の非制限的例には、C12〜C18脂肪酸が含まれ、そのための相補的反応物には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などのアルカリまたは塩基が含まれ、生じる界面活性剤は、対応する石鹸である。界面活性剤の前駆体には、線状C12〜C14アルキルベンゼンスルホン酸などのアニオン界面活性剤の酸形態が含まれる。
【0042】
(電界)
電界は、電流または電圧の供給源を少なくとも2つの電極に接続することによって印加される。用語「電界強度」は、1対の電極間で測定された電位差を電極間の平均距離で除したものを意味し、V/mの単位で表される。
【0043】
用語「直流電界(dc field)」は、本発明中で使用される場合、時間と共に変化しない一定の電界強度の電界を意味する。用語「曝露時間」は、直流電界に関して使用される場合、直流電界を印加する総時間数を意味する。
【0044】
用語「交流電界」は、本発明中で使用される場合、電界強度が時間と共に周期的方式で、シヌソイド、三角形、正方形、長方形などの任意の波形形状で変化する周期的電界を意味する。交流電界は、周波数、振幅および波形形状で特徴付けられる。交流電界の周波数は、好ましくは0.1Hz〜1MHz、より好ましくは0.1Hz〜1000Hz、最も好ましくは1Hz〜200Hzである。交流電界の場合、用語、「電界強度」は、二乗平均電界強度を意味する。用語「曝露時間」は、交流電界に関して使用される場合、電界を印加する総時間数を意味する。
【0045】
用語「パルス電界」は、本発明中で使用される場合、時間と共に変化し、かつ長方形、三角形または任意のその他の形状でよい1種または複数のパルスに対応する波形を有する電界を意味する。用語「パルス幅」は、本発明中で使用される場合、各パルスの継続時間を意味し、用語「パルスのビーク振幅」は、パルス幅の間に印加される電界強度の大きさを指す。パルス電界は、異なる振幅およびパルス幅を有する複数のパルスから構成され得る。パルス電界の場合、電界強度は、ピーク振幅を意味する。用語「曝露時間」は、パルス電界に関して使用される場合、パルス電界を印加する総時間内におけるすべてのパルス幅のいくつかに等しい時間を意味する。
【0046】
液体を5000V/m〜107V/m、好ましくは10000V/m〜106V/mの強度の電界にさらすことが本発明の不可欠な特徴の1つである。
【0047】
印加される電界は、好ましくは、直流、交流、パルス電界、またはこれらの組合せである。より好ましくは、印加される電界は、交流電界である。両液体は、少なくとも10ミリ秒、好ましくは少なくとも100ミリ秒の曝露時間で電界にさらされる。
【0048】
(電極)
電界は少なくとも2つの電極を使用して印加される。電極間距離および印加電界は、電界強度が5000V/m〜107V/mの範囲にあるように調節できる。
【0049】
(電極材料)
電極は、任意の導電性材料から作製できる。好ましくは、導電性材料の導電率は、好ましくは、0.001ジーメンス/cmを超え、より好ましくは1000ジーメンス/cmを超える。特に好ましい導電性材料は、106ジーメンス/cmを超える導電率を有する。導電性材料は、全部の電極について必ずしも同一ではない。異なる電極のために異なる導電性材料を選択することは本発明の範囲に包含される。
【0050】
電極のための導電性材料は、金属、グラファイト、導電性ポリマー、または導電性酸化物から選択されるのが好ましい。
【0051】
用語「金属」は、本発明中で使用される場合、金属合金を含み、任意選択で非金属、例えば、ステンレススチールを含むことができる。導電性材料として好ましい金属の例には、金、銀、白金、銅、アルミニウムおよびステンレススチールが含まれる。
【0052】
導電性ポリマーのいくつかの例が、フッ化砒素をドープしたポリアセチレン、ヨウ素をドープしたポリアセチレン、フッ化砒素をドープしたポリ(p-フェニレン)、ヨウ素をドープしたポリ(ピロール)、およびポリアニリン(エメラルジン)である。
【0053】
電極のための導電性材料は、導電性酸化物、例えば、錫インジュウム酸化物から選択できる。
【0054】
電極は、ポリエステル、PVC、ガラス、セラミックおよびポリテトラフルオロエチレンなどの他の半導電性/誘電性/漏出誘電性材料上に本発明による任意の導電性材料をコーティングすることによって調製することもできる。
【0055】
(電極の形状)
種々の設計要件に応じて、任意の適切な電極形状を選択できる。電極の任意の形状は、好ましくは、平板、弓形板、波形板、溝付き板、中空円筒、棒、または網目、あるいはこれらの組合せである。すべての電極が同一の形状を有することが不可欠ではない。
【0056】
(電極のコーティングおよび電極間の仕切り)
電極は、非導電性材料のフィルムまたはコーティングによって部分的にまたは完全に覆うことができる。フィルムまたはコーティングによって電極の全表面を覆うことが不可欠ではない。コーティングは、固体、液体または半固体、あるいはこれらの組合せでよい。
【0057】
電極間に非導電性材料の仕切りを配置することが好ましい。
【0058】
コーティングまたは仕切りのための非導電性材料のいくつかの非制限的例には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、セラミック、ガラス、ポリテトラフルオロエチレン、炭化水素油、植物油およびアルキド樹脂、またはこれらの組合せが含まれる。
【0059】
(本方法のその他の特徴)
本発明による方法において、2つの液体は、電界にさらされると同時に、独立流として接触できる。別法として、両液体からなる予形成された粗エマルジョンまたは分散液を電界にさらす。用語「予形成された粗エマルジョンまたは分散液」は、本発明中で使用される場合、大きな小滴径を有する両液体からなるエマルジョンまたは分散液を意味する。
【0060】
該方法は、好ましくは、バッチ法または半バッチ法である。バッチ法では、2つの液体からなる予形成された粗エマルジョンまたは分散液を電界にさらすのが好ましい。別法として、好ましい方法は連続法である。このような連続法は、好ましくは、2つの液体を、独立流としてあるいは予形成された粗エマルジョンまたは分散液として導入し、かつその接触中に電界にさらす装置中で実施し、生じたエマルジョンを該装置から連続的に取り出す。2つの液体の流速は、所望される体積比率の2つの液体からなるエマルジョンを調製し、かつ処理量を調節するために、好ましくは個々に調節される。両液体は、好ましくは同軸ジェットとして導入される。好ましいさらなる態様において、第1液体は同軸ジェットの中央芯を形成し、第2液体は輪状ジェットを形成する。
【0061】
両液体は、処理中に撹拌にさらされることが好ましい。任意の適切な撹拌手段を使用できる。撹拌は、前記両液体の少なくとも一方の流動によって、静止または移動式混合素子によって、あるいはこれらの組合せによって提供される。
【0062】
該方法は、任意の適切な温度で実施できる。両液体のそれぞれの温度は、前記両液体を電界にさらす場合、その融点より高いことが好ましい。処理中の温度範囲は、0〜100℃、好ましくは10〜90℃、より好ましくは20〜70℃であり得ることがさらに好ましい。処理温度は、適切な伝熱手段を準備することによって、あるいは両液体を事前加熱または事前冷却することによって、所望の通りに変えることができる。本発明による方法は、好ましくは、伝熱のためのジャケットまたはコイルを備えた装置中で実施される。別の態様によれば、両液体を、エマルジョンの調製後に、より高い融点またはゲル化点を有する液体の融点またはゲル化点よりも低い温度まで冷却することが好ましい。
【0063】
両液体からなる予形成された粗エマルジョンまたは分散液を電界にさらす場合には、予形成された粗エマルジョンまたは分散液の小滴径は、好ましくは、電極間距離よりも小さいことが好ましい。一方の液体のジェットを他方の液体中に導入する場合には、ジェットの直径は、電極間距離よりも好ましくは小さいことが好ましい。
【0064】
これより、非制限的実施例により本発明を説明する。実施例は、単に例示のためであり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
(実施例)
(実施例1〜6)本発明による処理
装置:以下の実施例では、横断面が長方形(14mm×10mm)で高さが50mmのガラス製キュベットを使用した。直径が2mmの毛細管を、入口から噴出するジェットが垂直上向きに向かい、かつジェット軸がキュベットの垂直軸と一致するように、寸法が14mm×10mmの底面に垂直に取り付け、かつ外部に突き出させて第1液体のための入口を準備した。寸法が14mm×10mmの頂面に取り付けた同様の管が、エマルジョンの出口となった。寸法が10mm×50mmの側面に垂直に取り付けた直径2mmのもう1つの管が、第2液体のための入口となった。第2液体のための入口管は、ノズルから噴出するジェットが垂直上向方向に流れ、かつジェット軸がキュベットの垂直軸と一致するように、キュベットの内部に突き出させ、直径1mmのノズルで終わるL型管を形成するように90°に曲げて設置した。大きさが35mm×5mmで厚さが2mmのステンレススチール平板電極を寸法が10mm×50mmの2つの内側側面に、電極間垂直距離が10mmであるように、じかに接着した。電極の上端は、頂面から5mmであり、電極の下端は底面から10mmであった。第1および第2液体用入口を、両液体のそれぞれの流速を独立に調節できるような方式で、別のペリスタポンプを通して対応する液体貯槽に連結した。第1液体の流速は、1〜15mL/分の範囲で可変的に固定することができ、第2液体の流速は、40〜80mL/分の範囲で可変的に固定することができる。電極を、5000V(二乗平均電圧)、50Hz交流の電源に連結した。
【0066】
実施例では、次の液体を使用した。
第1液体
組成 MilliQ水 99重量%
Tween80 1重量%
導電率 40μジーメンス/cm
粘度(20s-1) 1 cP
温度 60℃
第2液体
組成 水素化植物油(Bungeが供給するDalda) 97重量%
モノステアリン酸グリセロール 3重量%
導電率 <1μジーメンス/cm
粘度(20s-1) 200 cP
温度 60℃
【0067】
2つの液体間の界面張力を、スピンイングドロップ式張力計(Kruss社)を使用して測定し、0.2mN/mであることが見出された。
【0068】
両液体を、第1および第2液体の流速に応じて種々の量の曝露時間で5×105V/mの強度の電界にさらした。
【0069】
両液体の種々の流速で実施された処理の実施例を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
形成されたすべてのエマルジョンの平均小滴径を、クライオ-SEMを使用して測定した。
【0072】
生じたエマルジョンの特性を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
(比較例A)実験用ホモジナイザーを使用する処理
第1液体のおよび第2液体の組成は実施例1〜6の場合と同様とした。2つの液体(第1液体5mLおよび第2液体45mL)を、高速ホモジナイザー(Polytron、PT-K Kinematicaa AG)中、30000rpmで10分間運転して処理した。生じたエマルジョンの体積は50mLであった、平均小滴径は、4〜6ミクロンであった。第1液体の体積は、エマルジョンの体積の10%であった。
【0075】
エネルギーの所要量は、126000J/エマルジョン100mLであった。
【0076】
(比較例B)Silversonミキサーを使用する処理
第1液体および第2液体の組成は実施例1〜6の場合と同様とした。2つの液体(第1液体10mLおよび第2液体90mL)を、Silversonミキサー中、60000rpmで15分間処理した。生じたエマルジョンの体積は100mLであった。平均小滴径は、6〜9ミクロンであった。第1液体の体積は、エマルジョンの体積の10%であった。
【0077】
エネルギーの所要量は、67200J/エマルジョン100mLであった。
【0078】
本発明の範囲に包含される実施例1〜6の処理ならびに本発明の範囲に入らない比較例AおよびBの処理に関するエネルギー所要量および生じるエマルジョンの小滴径の比較を下表3に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
上表3から、本発明による方法は従来法に比較してエネルギー的により効率的であることが明らかである。本発明の方法は、また、より迅速であり、小さな小滴径を有するエマルジョンを提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2液体中第1液体型エマルジョンの調製方法であって、
(a)両液体中の少なくとも一方が、界面活性剤またはその前駆体を含み、
(b)前記第2液体が、100μジーメンス/cm未満の導電率を有し、
(c)前記両液体間の界面張力が、少なくとも0.0001mN/mであり、かつ
(d)前記両液体が、5000V/m〜107V/mの強度の電界にさらされる、調製方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、非イオン性、両性または双性イオン性である、請求項1のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項3】
前記界面活性剤が、前記エマルジョンの0.01重量%〜20重量%である。請求項1または2に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項4】
前記界面張力が、0.0001mN/m〜5mN/mである、前記請求項1から3のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項5】
前記電界が、交流、直流またはパルス性、あるいはこれらの組合せである、請求項1から4のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項6】
前記両液体が、少なくとも10ミリ秒の曝露時間で前記電界にさらされる、請求項1から5のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項7】
前記曝露時間が、少なくとも100ミリ秒である、請求項6に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項8】
前記両液体の予形成された粗エマルジョンまたは分散液が、前記電界にさらされる、請求項1から7のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項9】
前記第2液体の導電率が、10μジーメンス/cm未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項10】
前記第1液体の導電率が、100μジーメンス/cm未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項11】
前記電界が、少なくとも2つの電極を使用して印加される、請求項1から10のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項12】
前記電極が、導電性材料から作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項13】
前記導電性材料が、金属、グラファイト、導電性ポリマー、または導電性酸化物から選択される、請求項12に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項14】
前記電極のいずれかの形状が、平板、弓形板、波形板、溝付き板、中空円筒、棒、または網目、あるいはこれらの組合せである、請求項1から13のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項15】
前記電極の1つまたは複数が、非導電性材料のフィルムまたはコーティングによって覆われる、請求項1から14のいずれか一項に記載のエマルジョンの調製方法。
【請求項16】
非導電性材料からなる仕切りが、前記電極間に配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−537298(P2009−537298A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510409(P2009−510409)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054451
【国際公開番号】WO2007/131917
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】