説明

エマルジョン燃料を用いたアスファルト合材用骨材乾燥方法

【課題】燃料油/水エマルジョン燃料を用いた、アスファルト合材用骨材乾燥方法を提供する。
【解決手段】アスファルト合材用骨材を乾燥炉にて乾燥させる方法であって、乾燥用燃料の燃焼開始時に、燃料油のみを乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、燃料油と水を所定の混合比率で連続的に混合攪拌装置に供給して混合攪拌し、燃料油と水のエマルジョン溶液を連続的に製造する工程と、製造された該エマルジョン溶液を貯留することなく該乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油/水エマルジョン燃料を用いたアスファルト合材用骨材乾燥方法に関し、特に乳化剤を含まない燃料油/水エマルジョン燃料を製造後、即時燃焼させるアスファルト合材用骨材乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の舗装に用いられるアスファルト合材は、アスファルトに骨材となる石や砂を混合したものである。この骨材に水分が含まれていると、アスファルト合材の品質に影響を与えるため、アスファルトに混合する前に骨材を十分乾燥させておく必要がある。この乾燥工程は骨材を乾燥炉に投入するものであるが、このときの乾燥炉の熱源は燃料油(特にA重油)やガスを燃焼させることにより得られている。
【0003】
従来から、重油と水を微細な粒子として混合・乳化させ、エマルジョン燃料として用いる技術が開発、開示されてきている。重油を水とのエマルジョン燃料にして燃焼させることにより、水分の蒸発に伴う重油の微細化をもたらし、重油を単独で燃焼させた場合よりも燃焼効率を上げることができ、結果としてNOx、SOx、COや、ばいじんの発生量を抑制する効果があるとされている。
【0004】
重油と水とのエマルジョン燃料の製造方法としては、水の分散性を良くしてエマルジョン燃料の貯蔵中の油水分離を防止するために界面活性剤(乳化剤)を添加して十分に混合攪拌する方法が多く開示されている(例えば特許文献1)。また、重油と水以外に石炭粉末等の可燃性物質を混合して、分散性や燃焼性を向上させたものがある(例えば特許文献2)。
【0005】
また、このようなエマルジョン燃料の燃焼方法としては、エマルジョン燃料を燃焼炉内に噴霧して燃焼させる方法のほか、エマルジョン燃料とオイルとを別々に燃焼炉に噴射して混合燃焼させることにより、エマルジョン燃料中の含水率を上げる方法が開示されている(特許文献3)。また、燃焼システムとして、エマルジョン燃料を一部循環させることにより、乳化剤を不要とした燃焼システムも開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−18275号公報
【特許文献2】特開2003−82369号公報
【特許文献3】特開2008−261534号公報
【特許文献4】特開2007−32937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先に述べたように、アスファルト合材用骨材の乾燥には重油を用いることが多い。重油をポンプで加圧し、ノズルから燃焼装置内に加圧噴霧し、別途送気する空気と混合させて燃焼させる。そして発生する高温の燃焼ガスを骨材に当てることにより、骨材を乾燥させるものである。そこでこの重油の燃焼効率を上げ、NOx、SOx、COやばいじんの発生量を抑制するため、重油/水エマルジョン燃料を用いることが考えられた。ここでアスファルト合材用骨材の乾燥工程は、必要なときに必要な量を乾燥させる必要があるため、連続的ではなく断続的に行われる。
【0008】
そのため、あらかじめエマルジョン燃料を製造してタンクに貯蔵しておき、必要なときにエマルジョン燃料を使用できるようにすることが考えられる。しかしタンク貯蔵のための設備が新たに必要となる。さらに貯蔵中の油水分離を防止するために界面活性剤等の添加が必要になり、また界面活性剤を添加したとしても、貯蔵期間が長期にわたる場合には油水分離が多少なりとも生じてしまい、エマルジョン燃料の安定燃焼を得ることができなかった。そのため、アスファルト合材用骨材の乾燥にはこれまでエマルジョン燃料を用いることは実用化されていなかった。
【0009】
そこで、乳化剤を用いずに必要な時にすぐに重油/水エマルジョン燃料を製造できると同時に、製造したエマルジョン燃料を貯蔵せずにそのまま燃焼させる、即時燃焼方法の適用が望まれていた。ここで、重油と水の分散混合方法として、ホモジナイザ(混合機)を用いてエマルジョン化する方法が一般に知られている。しかし、燃焼時間が断続的であるため、エマルジョン燃料の特に燃焼開始時の安定燃焼運転が難しいことがわかった。
【0010】
また、現在稼動中のアスファルト合材用骨材乾燥設備は多数あるが、その設備規模や使用する燃料の種類、燃焼炉システムなどが少しずつ異なっている。そのため、このような多くの異なる既存設備に対して、できるだけタンク、循環ライン、空気ラインのような新たな設備を付加することなく、できるだけエマルジョン燃料製造用装置のみを追加するだけで重油/水エマルジョン燃料を用いたアスファルト合材用骨材乾燥方法を適用することが望まれている。
【0011】
本発明の目的は、燃料油/水エマルジョン燃料を用いた、アスファルト合材用骨材乾燥方法を提供することである。また、燃料油を用いる既存のアスファルト合材用骨材乾燥設備に対して、できるだけ新たな設備を付加することなく、燃料油/水エマルジョン燃料を用いたアスファルト合材用骨材乾燥方法を適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
エマルジョン燃料を用いたアスファルト合材用骨材乾燥方法でもっとも大きな問題は、燃焼運転開始時に安定した燃焼が得られにくいという点である。先に説明したように、アスファルト合材用骨材乾燥工程は、必要なときに運転を行う断続運転工程である。その運転開始時に安定した燃焼を得るためには、以下のような方法が有効であることを発明者らは突き止めた。
【0013】
本発明の1つの視点において、本発明に係る方法は、アスファルト合材用骨材を乾燥炉にて乾燥させる方法であって、乾燥用燃料の燃焼開始時に、燃料油のみを乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、燃料油と水を所定の混合比率で連続的に混合攪拌装置に供給して混合攪拌し、燃料油と水のエマルジョン溶液を連続的に製造する工程と、製造された該エマルジョン溶液を貯留することなく該乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
ここで、燃料油とは主にA重油であるが、B重油、C重油、軽油、灯油等も適用可能である。
【0015】
本発明により、これまで適用できなかったアスファルト合材用骨材乾燥工程に、特に燃焼開始時に安定してエマルジョン燃料を燃焼させることができるようになり、これにより燃料油を効率的に燃焼させることができ、結果としてCO、NOx、SOx等の発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の燃焼方法を実施するための配管系統図の1実施例である。
【図2】本発明の燃焼方法の運転フロー図の1実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記視点において、前記エマルジョン燃料の燃焼終了後に、引き続いて燃料油のみを乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0018】
前記エマルジョン溶液を連続的に製造する工程は、水の燃料油に対する混合比率を順次増加させていき、最終的に所定の混合比率まで到達させることが好ましい。
【0019】
水の燃料油に対する混合比率を順次増加させる方法は、連続的に増加させていくか、又は段階的に増加させていくことが好ましい。
【0020】
前記燃料油のみの燃焼時と前記エマルジョン燃料の燃焼時との運転切り替えは、水供給ポンプの運転のオン・オフで行うことが好ましい。
【0021】
前記所定の混合比率は、水の体積%として10〜25%の範囲内であることが好ましい。
【0022】
前記燃料油は、A重油、B重油、C重油、軽油及び灯油のうちのいずれか1以上であることが好ましい。
【0023】
前記製造したエマルジョン燃料の噴霧されない余剰分を、前記エマルジョン燃料噴霧ポンプからバーナーの間のいずれかから、該混合攪拌装置の入口側へ戻すことが好ましい。
【0024】
前記混合攪拌装置は、燃料油供給配管と水供給配管とを備えるとともに、該水供給配管からの水の供給期間を、任意に設定可能であることが好ましい。
【0025】
前記混合攪拌装置は、燃料油供給配管と水供給配管とを備えるとともに、該水供給配管からの水の供給量を、時間的な変化も含めて任意に設定可能であることが好ましい。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
以下に本発明の1つの実施例を、燃料油を重油とした場合を用いて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係るアスファルト合材用骨材乾燥方法に用いる配管系統の概要図である。図1に示すように、本発明に係る配管系統では、重油タンク10から重油加圧ポンプ11で重油を加圧・送出する送液配管の途中に水の送液配管を合流させている。そして所定の割合で水を水供給ポンプ13により送りこみ、配管内で併流させたのち、強い攪拌力を持つ混合攪拌機(攪拌装置)12に供給して攪拌、混合し、エマルジョン化させる。このエマルジョン液をエマルジョン燃料噴霧ポンプ17でそのまま乾燥炉16のバーナー(燃焼装置)14に供給し、燃焼させるものである。
【0027】
また、エマルジョン燃料噴霧ポンプ17からバーナー14までの間のいずれかから、混合攪拌機12の入口側に戻る戻りライン18が設置されていることが好ましい。図1に示す実施例では、エマルジョン燃料噴霧ポンプ17からバーナー14に至る配管の途中から戻りライン18が設置されている。これにより、製造したエマルジョン燃料の一部を再度攪拌機に戻すことにより、さらに均一なエマルジョン燃料を製造でき、より安定した燃焼運転を達成できる。また、エマルジョン燃料消費に伴う装置配管内の圧力変動を緩和する効果もある。エマルジョン燃料噴霧ポンプ17から一部を戻してもよいし、バーナー14から一部を戻してもよい。
【0028】
図2(a)に本実施例における運転フローを示す。運転開始時にはまず重油加圧ポンプ11を運転して配管内を加圧状態に保つ。次に図2(a)に示すように、エマルジョン燃料噴霧ポンプ17を運転し、バーナー14で重油だけを燃焼させる。この時点でも配管構成上、混合攪拌機12を経由して燃焼させるため、混合攪拌機12も運転している。この状態で3〜5分程度運転したのち、水供給ポンプ13を起動させ、重油と水を配管内で混在(併流)させる。この混在液はそのまま混合攪拌機12に送られて攪拌され、エマルジョン化されてバーナー14に送られ、燃焼される。図2(b)は水供給運転開始直後のエマルジョン燃料の水/重油比率変化である。図に示すように、水供給ポンプ13の起動時には、混合燃料の水/重油の比率が設定値に対して変動するが、数分で定常状態となる。
【0029】
図2では記載していないが、水の混合比率を、水の供給開始直後から順次増加させていくことができる。こうすることで、バーナー14での燃焼がさらに安定化される。順次増加させる方法は、連続的に増加させてもよいし、ステップ状に数段階で増加させることもできる。最終的に所定の混合比率に達した段階で定常運転に移行する。このような増加運転は自動で行わせることができる。
【0030】
燃焼を停止させるときは、まず水供給ポンプ13を停止させ、エマルジョン燃料の製造を中止する。この段階でも燃焼は停止させず、混合攪拌機12を運転継続しつつ重油のみを供給して燃焼運転をしばらく継続する。そして最後にエマルジョン燃料噴霧ポンプ17と混合攪拌機12を停止して燃焼を停止する。この際も、水供給ポンプ13の停止にあたり、水供給率を順次低下させていってもよい。
【0031】
このように停止させることで、混合攪拌機からバーナーまでに滞留するエマルジョン燃料がすべて消費され、次回運転開始時には再び燃料油のみを燃焼させる工程から開始することができる。
【0032】
このように、水/重油の混合は、重油の供給量を一定とし、水の供給のオン・オフ調節及び水供給量の調節により行うことができる。このような調節は、例えば独立した制御装置で混合攪拌機、ポンプやバルブ等を自動制御することもできるし、重油供給配管及び水供給配管を備えた混合攪拌機を用いて、あらかじめ設定したシーケンスで混合攪拌機が自動的に制御を行うようにすることもできる。
【0033】
本発明では、重油と水の混合乳化は、乳化剤を用いないで混合攪拌機12で攪拌することのみにより行う。そのため、ある程度の攪拌力が必要であるが、本方法では適切な市販の混合機を用いることで必要な混合乳化を達成できる。ある程度の処理能力と攪拌力があればその種類は問わない。
【0034】
重油と水との混合割合は必ずしも限定されるものではないが、本実施例では水の体積%として約10%〜25%程度までが好ましく、20%程度がもっとも好ましい。25%より大きい水混合比率だと、骨材乾燥に必要な温度が得られない。またこれより少ないと骨材乾燥に問題はないが、エマルジョン燃料としての効果が少なくなる。
【0035】
バーナー(燃焼装置)は、重油又はエマルジョン燃料を噴霧して空気と混合させて燃焼させる方式の通常の燃焼装置をそのまま用いることができる。したがって、既存の乾燥炉を改造することなく用いることができる。
【0036】
この方法により、骨材の乾燥を行う必要が生じた場合にその都度、重油と水を所定の割合で混合攪拌機に供給し、製造されたエマルジョン燃料を直接燃焼設備に供給することにより、安定したエマルジョン燃料の燃焼を達成することができ、使用する重油の量を節約することができた。本実施例では、20%水混合率のとき、同じ骨材乾燥処理量において燃料使用量を削減することができ、それに伴いCO発生量を約15%低減させることができた。また、従来比でNOxを約29%低減し、SOxを約54%低減することができた。
【0037】
なお、燃料として本実施例では重油(A重油)を用いたが、これに限らず、B重油、C重油、軽油や灯油でも同様の対応が可能であることは先に述べたとおりである。なお、使用する燃料油の種類や、適用する燃焼装置の種類等で、水の適切な混合比率は多少変化するものと考えられる。
【0038】
本発明は、すでに重油等を用いている既存の工程設備に、基本的に混合攪拌機と水供給配管を追加するのみで実施することができ、比較的軽微な改造で適用することができる。したがって多くの既存設備に対して有用な代替改良手段を与えるものである。
【0039】
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
10 重油タンク
11 重油加圧ポンプ
12 混合攪拌機
13 水供給ポンプ
14 バーナー
16 乾燥炉
17 エマルジョン燃料噴霧ポンプ
18 戻りライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト合材用骨材を乾燥炉にて乾燥させる方法であって、
乾燥用燃料の燃焼開始時に、燃料油のみを乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、
燃料油と水を所定の混合比率で連続的に混合攪拌装置に供給して混合攪拌し、燃料油と水のエマルジョン溶液を連続的に製造する工程と、
製造された該エマルジョン溶液を貯留することなく該乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程と、
を含むことを特徴とする、アスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項2】
前記エマルジョン燃料の燃焼終了後に、引き続いて燃料油のみを前記乾燥炉の燃焼装置に送液して燃焼させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項3】
前記エマルジョン溶液を連続的に製造する工程は、水の燃料油に対する混合比率を順次増加させていき、最終的に所定の混合比率まで到達させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項4】
水の燃料油に対する混合比率を順次増加させる方法は、連続的に増加させていくか、又は段階的に増加させていくことを特徴とする、請求項3に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項5】
前記燃料油のみの燃焼時と前記エマルジョン燃料の燃焼時との運転切り替えは、水供給ポンプの運転のオン・オフで行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項6】
前記所定の混合比率は、水が体積%として10〜25%の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項7】
前記燃料油は、A重油、B重油、C重油、軽油及び灯油のうちのいずれか1以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項8】
前記製造したエマルジョン燃料の噴霧されない余剰分を、前記エマルジョン燃料噴霧ポンプからバーナーの間のいずれかから、前記混合攪拌装置の入口側へ戻すことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。
【請求項9】
前記混合攪拌装置は、燃料油供給配管と水供給配管とを備えるとともに、該水供給配管からの水の供給期間及び/又は水の供給量を、時間的な変化も含めて、任意に設定可能である、請求項1〜8のいずれか一に記載のアスファルト合材用骨材乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−51764(P2012−51764A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196102(P2010−196102)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(502020939)三井住建道路株式会社 (3)
【Fターム(参考)】