説明

エレキギター

【課題】エレキギターの音色を簡単且つ安価に変更できるようにする。
【解決手段】ネック部21とボディ部23を一体的に形成し、ボディ部23のくり抜き24にピックアップ26を有するピックアップ支持台27を昇降自在に設け、ピックアップ26の周囲にピックガード28を着脱自在に取付け、ピックガード28は異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、演奏時ピックガード28の任意の一枚をピックアップの周囲に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックガードの材料を変更することにより同じエレキギターで音色を変化させることができるようにしたエレキギターに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な幅広いジャンルの音楽で使用されている楽器にエレキギターがある。この楽器の本体には主に木材が使用されており、その材料の違いで多様な音質への影響があることが確認され、楽器の価格にも影響している。これは弦の振動の影響を受けた材料の振動がピックアップコイルに影響を及ぼし、音色に変化を与えているためであると思われる。この時、ピックアップコイルを不動と考えるならこれら振動の影響は弦の細かな振動に影響し、その弦の振動をピックアップが検出すると考えられる。
【0003】
しかし、実際にはピックアップを取付けている支持部も振動しており、その影響がピックアップに伝達されることは否めない。こうした音色の差異は各楽器の特徴を表し、演奏する曲のニュアンスに合う音色のギターを曲ごとに選ぶことも必要になる。そこで曲に合わせてギターを変えるのではなく簡単なパーツを取り変えることで音質を大きく変えることができると便利である。
【0004】
従来、エレキギターの出力に対し、エフェクターを通して電気的にリバーブやディストレーションを掛けることは行われていたが、エレキギター自体の音色を変更することはできない。
【0005】
また、ピックアップを交換してエレキギターの音色を変更することが特開2004−163717号公報に記載されている。
【0006】
即ち、図23に示すように、ボディ1を弦2と平行するように2分割し、分割した端面から弦張設方向と直交するように弦張設箇所に向けて上面を開口した凹陥部8を形成し、該凹陥部8の上縁内周部にはピックアップを取付けたスライドプレート6と密に摺動自在に嵌合する案内溝9が設けられ、スライドプレート6の前端部下面にはピックアップ5から引出された配線を止着した導電板が設けられ、前記案内溝9に導電板と接触可能な最終的にアンプに接続される接続端子10、10が設けられている。
【0007】
ピックアップ5を交換する場合には、スライドベース6を含むピックアップユニット全体を交換するものとして、このようなユニットを多種類準備することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−163717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したエレキギターの出力に対し、エフェクターを通して電気的にリバーブやディストレーションを掛けることは本質的にエレキギターの音色を変更することができないし、雑音の重畳により音質劣化にもつながる。
【0009】
またピックアップを交換してエレキギターの音色を変更することは高価なピックアップを多数用意する必要があり、また交換時にアンプからノイズを発生するので、演奏の途中で音色を変更するためにピックアップを交換することができない。
【0010】
更に、この手法では、雑音成分を低減して音のメリハリを出すとか、全体の周波数特性を変えるとか、音量を増すなどの変化には有効であるが、ギターのボディなどの振動特性に影響されるスペクトルエンベロープの山谷の形状にかかわる音色変化や、撥弦後の「音の伸び」などに係わる音色変化、特に材料特有の響きを持たせるようなギター音の変化を起こさせることは出来ない。つまり、基本的な音色はボディやネックなどの材質で決められ、これが持つ特色による音色までは変更しきれない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は簡単にして安価に音色を変化できるようにしたものであり、
上側に弦の一端が取付けられたネック部と、前記ネック部が一体的に設けられ下側に前記弦の他端が取付けられたボディ部と、前記ボディ部のくり抜きに昇降自在に設けられ、且つピックアップを有するピックアップ支持台及び前記ピックアップの周囲に着脱自在に設けられたピックガードとよりなるピックアップユニットとを備え、前記ピックガードは異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、演奏時前記ピックガードの任意の一枚をピックアップユニットに装着するエレキギターを提供する。
【0012】
本発明は前記ピックアップとピックガード間にスペーサを設け、演奏状態で前記ピックアップがピックガードに包囲されたとき、前記スペーサを介して前記ピックガードの振動がピックアップに伝達されるようにしたエレキギターを提供する。
【0013】
本発明は前記ピックガードが樹脂系又は金属系或いは木材系のいずれか又は組み合わされた材料で形成されたエレキギターを提供する。
【0014】
本発明は上側に弦の一端が取付けられたネック部と、前記ネック部が一体的に設けられ下側に前記弦の他端が取付けられたボディ部と、前記ボディ部のくり抜きに設けられ、ピックアップ昇降用カムにて昇降自在にされた支持台、前記ピックアップ支持台に取付けられたピックアップ及び前記ピックアップが突出される窓を有し且つ着脱自在に設けられたピックガードとよりなるピックアップユニットとを備え、前記ピックガードは異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、演奏時前記ピックガードの任意の一枚をピックアップユニットに装着するエレキギターを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエレキギターはボディ部のくり抜きにピックアップ支持台を昇降自在に設け、ピックアップ支持台にピックアップを設け、ピックアップの周囲にピックガードを着脱自在に設け、ピックガードは異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、そのうち一枚のピックガードを装着し演奏するようにし、エレキギターの音色の変化はピックガードの影響により変化するようにできた。
【0016】
従って、エレキギターの購入者は音色の変化が本体の材質の影響は余り受けないので、ピックガードを選ぶことにより通常普及している廉価なものにして、自分の好みの音色のエレキギターを入手できる。
【0017】
また、異なる材料で形成された数枚のピックガードを用意しておけば、一台のエレキギターで演奏する曲にあった音色を奏でることができる。
【0018】
更にはピックアップ支持台を下降させてピックアップガードを交換できるので、ノイズが発生せずアンプの電源を切らずに、演奏途中でもピックガードを交換ことにより、その場その場に適した音色で演奏できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明のエレギターの斜視図であり、図2は本発明に用いたピックアップユニットの拡大平面図であり、図3は本発明のエレキギターにおいて鉄系の材料で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり部のスペクトルエンベロープ図であり、図4は本発明のエレキギターにおいて非鉄系金属材料で形成したピックガードでの音の立上がり部のエンベロープ図であり、図5は本発明のエレキギターにおいて木材で形成したピックガードでの音の立上がり部のエンベロープ図であり、図6は本発明のエレキギターにおいて鋳鉄で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図7は本発明のエレキギターにおいて炭素工具鋼で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図8は本発明のエレキギターにおいて純鉄で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図9は本発明のエレキギターにおいてブラス(真鍮)で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図10は本発明のエレキギターにおいて銅で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図11は本発明のエレキギターにおいて中密度圧縮合板で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図12は本発明のエレキギターにおいてアガチスで形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図13は本発明のエレキギターにおいて樫で形成したピックガードでの音の立上がり後のエンベロープ図であり、図14は本発明のエレキギターの聴取実験評価表であり、図15は本発明のエレキギターの演奏状態のピックアップユニット部分の横断面図であり、図16は同じく本発明のエレキギターの演奏状態のピックアップユニット部分の縦断面図であり、図17は本発明のエレキギターのピックガード交換状態のピックアップユニット部分の横断面図であり、図18は本発明のエレキギターのピックガード交換状態のピックアップユニット部分の縦断面図であり、図19は本発明のエレキギターに用いたピックガードの斜視図であり、図20は本発明のエレキギターピックアップユニット部分の拡大斜視図であり、図21は本発明のエレキギターに用いたピックアップ支持台の斜視図であり、図22は本発明のエレキギターに用いたピックアップ支持台を昇降させるカム機構とそれが組み込まれているボディ裏側の空間部の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本発明のエレキギターは一体にされたネック部21とボディ部23とよりなる。ネック部21の上側からボディ部23の表側にかけて弦22が張られている。
【0022】
ボディ部23のくり抜きにピックアップユニット25が設けられている。ピックアップユニット25はピックアップ26、26、26を有するピックアップ支持台及びピックアップ26、26、26の周囲を包囲するように設けられたピックガード28とよりなる。ピックアップ支持台は後述するように昇降自在にされている。
【0023】
図2に示すように、ピックガード28はピックアップ支持台が昇降することにより、ボディ23に設けたピックアップ固定用スライドつめ30、30、30に着脱自在にされている。
【0024】
本発明のエレキギターはピックガード28の材料を変更することで音色が変化されることに着目し、各種の材料で形成されたピックガード28を複数枚用意し、演奏時任意の一枚のピックガード28をピックアップユニットに装着することより音色が変えられるようにしている。
【0025】
ピックアップ26、26、26がボディ23よりピックガード28の影響を大きく受けるようにし、種々の材料でピックガード28を作成し実験を試みた。
【0026】
従来のピックガードはプラスチック製であるが、木材、又金属でピックガード28を作製した。木材としては「樫」「アガチス」「MDF(中密度圧縮合板)」を採用した、金属材料では「銅」「真鍮」「鋳鉄(FC)」「純鉄(SS400)」「炭素工具鋼(SK5)」を採用し、純正のプラスチックも含め、合計9種類を採用した。本実験で材料を選択する上で注目した特性は、「硬さ」「減衰能」「重さ」の3つである。この特性は物体の振動の様態に影響をする重要な特徴と考えられる。
【0027】
図3、図4、図5に各材料で形成したピックガード28の立ち上がり部の高調波成分のピークのみを抽出したスペクトルエンベロープを以下に示す。基本音のレベルを基準0とし、他の高調波成分との電圧のレベル差を縦軸にしている。
【0028】
図3は鉄系の三種の材料(FC、SK5、SS)、図4は銅系の二種の材料(真鍮,銅)、図5は木材の三種の材料(MDF、アガチス、樫)の材料でピックガード28を形成した場合のスペクトルエンベロープを示している。
【0029】
ピックガード28の各材料の立ち上がりでのスペクトルエンベロープを見ると、図3及び図4で示す鉄系、非鉄系と共に金属系のピックガードは比較的高い音域まで高調波が発生している。それに対し、図5に示すように木材のピックガードは高い音域まで高調波が確認できなかったが金属系と比べ全体的に高調波が高いレベルで現れていた。特に、2000Hz以上の高音域でスペクトルエンベローブの起伏が激しく特徴あるスペクトルエンベロープを確認できた。高調波は金属、木材共に同属の中で比較的に硬い材料のピックガードにおいて高次の高調波成分まで確認することができた。
【0030】
図6〜図13にピックガード28の特徴ある各材料に対し、撥弦後、1秒、2秒、3秒経過後のスペクトルエンベロープの比較を示す。
【0031】
ピックガード28の各材料間の違いを比較した場合、顕著な違いは撥弦後1秒において現れている。内部抵抗の大小が伸び部分の減衰の速さに関係する。つまり、図6〜図10に示す金属系に比べ、図11〜図13に示す木材は撥弦後間のない時間で非常に高い周波数まで高調波を確認することができている。
【0032】
しかし、2秒後、3秒後と時間が経過するにつれて木材系では高音域のスペクトルの減衰が金属系に比べて早いことが確認できる。また、同系統の材料の中では図6、図7、に示すFC材、SK5材に比べ、図8に示すSS材が高い音域の減衰が早いことがうかがえる。
【0033】
また、図9、図10で示す、銅と真鍮のピックガードでは1秒後のスペクトルエンベロープには大きな違いは無いものの、2秒後から銅のピックガードは高調波が大きく減っている。図11、図12及び図13で示す木材のピックガードにおいても、金属材料のピックガードに比べ豊富な高調波成分が見られたが、材料によって差違がみられた。特に、図13で示す樫のピックガードでは、一部の周波数成分が早く減衰する特徴がみられる。これらの立ち上がり特性や時間的減衰特性が単音調律や和音などの音質、音色に影響するものと考えられる。
【0034】
図14の表に各材料のピックガードに対して行った聴取実験から得られた音質、音色の傾向を示す。
【0035】
木材のピックガードは撥弦直後の音の「立ち上がり部」に含まれる高調波が金属材料のピックガードに比べてやや少なかったものの、基本波を基準とした全体のレベルは高かった。また、その多くの高調波成分は約1秒後まで持続することから、高音域まで個々の高調波成分が比較的に長く持続する特徴が木材のピックガードの傾向である。聴取実験では、木材のピックガードの傾向として、金属材のピックガードに比べ「太い音」という項目で評価されていることから、 こうした木材のピックガードと金属材のピックガードに大別して現れたスペクトルエンベロープの特徴が音質・音色の「太い、細い音」という表現に繋がったものと考えられる。
【0036】
また、「固い音」、「ハッキリした音」という評価語においてはMDF、樫、SK5、FCのピックガードが高い評価を受けており、いずれの材料も比較的硬い(堅い)材料である。スペクトルエンベロープの特徴として「立ち上がり部」で比較的高次まで高調波が発生していることと、1500〜3000Hzの人間が敏感な音域においてレベルが比較的に高いことが見られる、また逆に比較的柔らかい材料のピックガードにおいては「こもっている音」の評価を受けており、硬さは音色に大きく影響を与えることがわかる。
【0037】
減衰能については「聞き取りやすい音」、「ハッキリした音」の項目に影響を与えていることが真鍮とFCのピックガードの聴取実験から読み取れ、減衰能が低い場合は支持部まで振動を起こし、音の聞き取りやすさに悪影響を及ぼしていることがわかる。
【0038】
以上の結果から、エレキギターのボディ部は同一であるにも関わらず、ピックガード28の材料の差違により、取り出される音質、音色に様々な変化が見られ、ピックアップの支持材料の音色への影響が大きいことが確認できた。以下に得られた結果をまとめる。
【0039】
1.エレキギターの音色はピックガードの各部材の振動伝搬のフィードバックにより複雑にピックアップに影響を及ぼしており、ボディ部23の影響は大きいものの、ピックガード28の振動特性の変化により音色の変更が可能である。
【0040】
2.大別して木材と金属材で形成されたピックガード28に特徴が見られた。その特徴として形成された木材のピックガードは、発生する高調波が少ないが、しばらくその高調波を持続させる。また金属材のピックガードで形成されたピックガード28は発生する高調波が多いが、減衰が早いことが確認できた。アンケート調査では木材で形成されたピックガード28に「太い音」、金属に「細い音」の項目が高い評価を受け、木材、金属材で形成されたピックガード28の大きな特徴と言える。
【0041】
3.木材、金属材料共に硬さ(堅さ)が大きくエレキギターの音色の変化に影響を及ぼしていることが確認できた。また、ピックガード28の材料特性としての減衰能も、極端に低い真鍮と高いFCを比べた場合に影響が確認できることから、同じ系統の材料でも特性の操作を行うことで音色を変化させることが可能である。
【0042】
以上のことを考慮し、本発明は上述した種々の材料でピックガード28を形成し、所有者の好み又は演奏する音楽の曲想に合わせてエレキギターの音色を変更できるようにしたのである。
【0043】
図15〜図18に示すように、ピックアップユニット25はボディ部23の中央部にあるくり抜き24に内設された3組のピックアップ26、26、26が取付けられたピックアップ支持台27とピックアップ支持台27の周囲に交換可能に位置されるピックガード28とよりなる。
【0044】
ピックアップ26、26、26は3組設けられているが、1組または2組でもよく、切替えて選択的に使われる。
【0045】
図19はピックガード28の斜面図で、ピックアップ26、26、26が突出する窓33、33、33が開けられている。
【0046】
図20に示すようにピックガード28はボディ部23に設けられたピックアップ固定用つめ30、30、30にて着脱自在にされる。
【0047】
ピックガード28は木材としては樫、アガチス、MDF(中密度圧縮合板)で形成したもの、金属材料では銅、真鍮、鋳鉄(FC)、純鉄(SS400)、炭素工具鋼(SK5)で形成したもの、さらに純正のプラスチックも含め、合計9種類の材料で形成したものが交換用として用意されている。
【0048】
図21に示すように、ピックアップ支持台27はボディ部23と同一材料で形成されており、周囲に数個のスペーサ34、34、34を有する。
【0049】
図22はボディ部23のくり抜き24の裏面を施蓋する裏蓋37で、昇降用レバー38にて回動されピックアップ支持台27を浮上させるピックアップ昇降用カム39、39、39が設けられている。ピックアップ支持台27は、連接棒41、41、41、41により連動されたカム39,39,39が、昇降用レバー38の操作により動くことにより、裏蓋37に設けられた軸40、40に沿って昇降自在にされている。
【0050】
図15及び図16に本発明のエレキギターの演奏状態を示す。図15に示すようにピックアップ支持台27は裏蓋37の昇降用カム39、39、39が上向きにされており、ばね42、42、42の反発力に抗して押上げられている。従ってピックアップ26、2626はピックガード28の窓33、33、33から突出し、弦22に面している。
【0051】
従って演奏者が奏でることにより弦22が振動する。弦22が振動するとピックガード28も振動する。このときピックガード28とピックアップ支持台27とはスペーサ34、34、34で振動的に結合されているので、ボディ23、ネック21、ピックガード28、弦22の振動が相互に連携して互いに影響し合う。その結果、弦22の振動はピックアップ28に磁界変化として伝達するのみでなく、ピックアップ26の筐体をも振動させ、電気信号出力に影響を与える。
【0052】
こうして弦の振動はピックアップ28で電気信号に変換されてアンプに加わる。アンプで増幅された電気信号はスピーカに加わり、スピーカより音声を発生する。
【0053】
本発明のエレキギターは前述したように、ピックガード28の材料の交換により音色が変えられる。例えばピックガード28を真鍮あるいは銅で形成したときにはシャラシャラした音色が演奏される。
【0054】
ピックガード28をFC材(鋳鉄)で形成したときにはアコースティックギター的なクリアーな音色、少し冷たい音色が出される。
【0055】
同様にピックガード28をSK5(工具鋼)で形成したときにはFC材より更に硬い音色でキンキンした音色を奏でる。
【0056】
ピックガード28を柔らかい木材で作ると丸くこもった音色で和音が不明確に響き、硬い木材で形成すると少しはっきりした音色で、和音の一音一音がはっきりとする。
【0057】
ピックガード28を一般的に用いられているようにプラスチックで形成すると、ボケた音色となる。
【0058】
上述したように、ピックガード28の材料を変えることによりエレキギターの音色を変えられる。従って演奏者あるいは演奏する曲により音色を変えたいとき、ピックガード28を好みの音色を発生する材料で作られたものと交換すればよい。
【0059】
図17及び図18はピックガード28を交換する状態を示す横断面図と縦断面図である。裏蓋に設けられている昇降レバー38を図15に示す状態から反時計方向に回転させると、図17に示すようにピックアップ昇降用カム39、39、39は時計方向に回転してそれまでピックアップ支持台27を持ち上げていたのを解除するため、ピックアップ支持台27はばね42の付勢力で下に押下げられ軸40、40に沿って降下される。それによりピックアップ26、26、26も降下し、ピックガード28の窓33、33、33より下方に位置される。
【0060】
図17及び図18に示すように、それまでピックガード28の窓33、33、33から突出していたピックアップ26、26、26は降下し、窓33、33、33より下方に位置される。この状態でピックガード28を矢印方向に引き抜く。
【0061】
図19に示すように、ピックアップ固定用つめ30、30、30を反矢印方向にスライドさせてピックガード28の固定を緩め矢印方向に引き抜くと、ピックガード28は取外すことができる。
【0062】
次に交換する別のピックガード28を持ってきて、今度は反矢印方向に滑りこませ、新たなピックガード28をピックアップ固定用スライドつめ30、30、30に嵌合させ、上側のピックアップ固定用つめ30、30、30を矢印方向にスライドさせて固定する。しかる後、昇降レバー38を時計方向に回転させると、ピックアップ昇降用カム39、39、39は反時計方向に回転され、ピックアップ支持台27を浮上させる。
【0063】
すると、図15及び図16に示すように、ピックアップ26、26、26は再びピックガード28の窓33、33、33から突出し、ピックアップ26、26、26は弦22に近接する。従って前述と同様に、演奏者が奏でることにより弦22が振動すると新たなピックガード28も振動する。ピックガード28は前と異なった振動し、弦22とピックガード28の振動が影響し合う。弦22の振動はピックアップ26、26、26に伝達し振動する。
【0064】
振動はピックアップ26、26、26で電気信号に変換されてアンプに加わる。アンプで増幅された電気信号はスピーカに加わり、スピーカより音声を発生する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のエレギターの斜視図である。
【図2】本発明に用いたピックアップユニットの拡大平面図である。
【図3】本発明のエレキギターにおいて鉄系の材料で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり部のスペクトルエンベロープ図である。
【図4】本発明のエレキギターにおいて非鉄系金属材料で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり部のスペクトルエンベロープ図である。
【図5】本発明のエレキギターにおいて木材で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり部のスペクトルエンベロープ図である。
【図6】本発明のエレキギターにおいて鋳鉄で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図7】本発明のエレキギターにおいて炭素工具鋼で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図8】本発明のエレキギターにおいて純鉄で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図9】本発明のエレキギターにおいてブラスで形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図10】本発明のエレキギターにおいて銅で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図11】本発明のエレキギターにおいて中密度圧縮合板で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図12】本発明のエレキギターにおいてアガチスで形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図13】本発明のエレキギターにおいて樫で形成したピックガードを用いて撥弦した音の立上がり後のスペクトルエンベロープ図である。
【図14】本発明のエレキギターにおいてピックガードに各種材料を用いた聴取実験評価表である。
【図15】本発明のエレキギターの演奏状態のピックアップユニット部分の横断面図である。
【図16】本発明のエレキギターの演奏状態のピックアップユニット部分の縦断面図である。
【図17】本発明のエレキギターのピックガード交換状態のピックアップユニット部分の横断面図である。
【図18】本発明のエレキギターのピックガード交換状態のピックアップユニット部分の縦断面図、
【図19】本発明のエレキギターに用いたピックガードの斜視図である。
【図20】本発明のエレキギターピックアップユニット部分の拡大斜視図である。
【図21】本発明のエレキギターに用いたピックアップ支持台の斜視図である。
【図22】本発明のエレキギターに用いたピッ裏蓋の斜視図である。
【図23】従来のエレキギターの斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
21 ネック部
22 弦
23 ボディ部
24 くり抜き
25 ピックアップユニット
26 ピックアップ
27 ピックアップ支持台
28 ピックガード
30 ピックアップ固定用つめ
33 窓
34 スペーサ
37 裏蓋
38 ピックアップ昇降用カム
39 昇降用レバー
40 軸
41 連接棒
42 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側に弦の一端が取付けられたネック部と、
前記ネック部が一体的に設けられ下側に前記弦の他端が取付けられたボディ部と、
前記ボディ部のくり抜きに昇降自在に設けられ、且つピックアップを有するピックアップ支持台及び前記ピックアップの周囲に着脱自在に設けられたピックガードとによりなるピックアップユニットとを備え、
前記ピックガードは異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、演奏時前記ピックガードの任意の一枚をピックアップユニットに装着することを特徴とするエレキギター。
【請求項2】
前記ピックアップとピックガード間にスペーサを設け、演奏状態で前記ピックアップがピックガードに包囲されたとき、前記スペーサを介して前記ピックガードの振動がピックアップに伝達されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のエレキギター。
【請求項3】
前記ピックガードは樹脂系又は金属系或いは木材系のいずれか又は組み合わされた材料で形成されたことを特徴とする請求項1記載のエレキギター。
【請求項4】
上側に弦の一端が取付けられたネック部と、
前記ネック部が一体的に設けられ下側に前記弦の他端が取付けられたボディ部と、
前記ボディ部のくり抜きに設けられ、ピックアップ昇降用カムにて昇降自在にされた支持台、前記ピックアップ支持台に取付けられたピックアップ及び前記ピックアップが突出される窓を有し且つ着脱自在に設けられたピックガードとよりなるピックアップユニットとを備え、
前記ピックガードは異なる音色を発生させる各種の材料で形成されたものを複数枚用意し、演奏時前記ピックガードの任意の一枚をピックアップユニットに装着することを特徴とするエレキギター。
【請求項5】
前記ピックアップとピックガード間にスペーサを設け、演奏状態で前記ピックアップがピックガードの窓から突出されたとき、前記スペーサを介して前記ピックガードの振動がピックアップに伝達されるようにしたことを特徴とする請求項4記載のエレキギター。
【請求項6】
前記ピックガードは樹脂系又は金属系或いは木材系のいずれかの材料で形成されたことを特徴とする請求項4記載のエレキギター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−222843(P2009−222843A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65420(P2008−65420)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月29日 社団法人日本音響学会発行の「音楽音響研究会資料」に発表
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】