説明

エレクトロルミネッセンス表示装置及び電子機器

【課題】明所での使用時におけるコントラストの低下を抑制可能なEL表示装置を提供する。
【解決手段】透明導電材料よりなる画素電極200と透明導電材料よりなる陰極316と画素電極200および陰極316との間に狭持される、エレクトロルミネセンス層を少なくとも含む機能層314と、からなる発光素子114と、画素電極200の下層に形成される、少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する光吸収絶縁膜309と、個々の発光素子114の発光量を制御するTFTと、発光素子114に用いられる蛍光又は燐光物質の励起光に対応する波長範囲に少なくとも吸収を持つフィルタ328と、を具備するエレクトロルミネッセンス表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリクス型のエレクトロルミネッセンス表示装置及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型のエレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と称する。)表示装置は各画素毎に、画素電極と、少なくともEL層を含む機能層と、陰極と、からなる発光素子と、上記発光素子を制御する薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と称する。)と、を有している。EL表示装置は電流駆動のため、アクティブマトリクス型の場合1画素当たりスイッチング用TFTと駆動電流供給用TFTとを含む2個以上のTFTが必要になる。そこでTFT形成領域の確保と開効率の向上(EL層形成領域の拡大)を両立させるべく、TFTの上面にもEL層を形成できるトップエミッション型が考案されている。
【0003】
しかし、TFTの活性層に通常用いられるシリコンは光感応性があるため、EL層で生じた光が当該活性層に入射すると光リーク電流が発生し、EL層が発光してコントラストの低下を引き起こしかねない。そこで、特許文献1に記載されるようにEL層とTFT形成領域との間に金属材料から成る反射板を設け、TFTへの光の入射を抑制することによりコントラストの向上を図る構造が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005‐285395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造のEL表示装置は、上記反射板で基板の全てを覆っている訳ではないので、直上のEL層からの光は遮れるものの、日光等の外部から照射される光(以下「外光」と称する。)の、装置内部への入射は完全には遮れない。そして一度入射した外光は、反射板の裏面を含む装置内部の構成要素間で乱反射して迷光となり、一部がTFTまで達するため、コントラストの低下を完全には抑制できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のEL表示装置は、透明導電材料よりなる画素電極と、光透過性陰極と、上記画素電極と上記陰極との間に狭持されるEL層を少なくとも含む機能層と、からなる発光素子と、上記画素電極の光取出し方向と逆側に形成される、少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する材料からなる光吸収絶縁膜と、上記画素電極と電気的に接続し、個々の発光素子の発光量を制御する薄膜トランジスタと、上記EL層の励起光に対応する波長範囲に少なくとも吸収を持つフィルタと、を具備することを特徴とする。
【0007】
上記フィルタにより外光によるEL層の発光を抑制できる。そして、発光素子を形成する陽極および陰極が透明で反射機能を有さず、また、EL層から装置内部に向けて出射する光を反射板ではなく上述する光吸収機能を有する絶縁膜により遮光するので、装置内部における光の乱反射による迷光の発生と、当該迷光がTFTに到達することによるリーク電流の発生を抑制できる。その結果、コントラストの優れたEL表示装置を得ることができる。
【0008】
好ましくは、上記フィルタは、上記発光素子上に形成される、赤色光、緑色光、青色光のうちのいずれかの一色の光を透過させるカラーフィルタと、上記カラーフィルタの周囲を遮光するブラックマトリクスと、からなる。
【0009】
表示面側から装置内部に入射する外光の量や波長範囲を最小限にできるため、迷光の発生をより一層抑制でき、より一層コントラストの優れたEL表示装置を得ることができる。
また、好ましくは、上記光吸収絶縁膜の上層に、少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する材料からなる光吸収隔壁を具備する。
【0010】
TFTの上層に、より厚い光吸収材料層を形成できるため、より一層外光の入射を抑制でき、より一層コントラストの優れたEL表示装置を得ることができる。
【0011】
また、好ましくは、上記フィルタは、上記陰極上に、封止膜のみを介して形成されている。
【0012】
発光素子等を形成する基板上にフィルタを形成するため、発光素子等を形成する基板とは別の基板にフィルタを形成し、上記発光素子と上記フィルタとの位置合せを行いつつ双方の基板を接着する方式に比べ、工程を簡略化できる。その結果、製造コストを削減でき、また良品率の向上も図れる。
【0013】
また、好ましくは、上記封止膜はシリコン窒化膜である。
【0014】
シリコン窒化膜は薄い膜厚で水分などの浸入に対する封止性を確保できるので、上記カラーフィルタの周囲に存在する透光性を有する領域を低減できる。その結果、接着層を介してフィルタを形成する構成に比べて装置内に入射する外光をより一層抑制でき、より一層コントラストの優れたEL表示装置を得ることができる。
【0015】
また、好ましくは、上記光吸収絶縁膜と上記画素電極の間に、屈折率が、上記光吸収絶縁膜の屈折率よりは大きく、上記画素電極の屈折率よりは小さい値である材料からなる薄膜を具備する。
【0016】
各々の薄膜間の屈折率の差を小さくできるので界面反射を低減できる。したがって、装置内に入射した光の乱反射に起因する迷光の発生をより一層抑制でき、より一層コントラストが向上したEL表示装置を得ることができる。
【0017】
また、好ましくは、上記光吸収絶縁膜の光学濃度は0.5から3.0の範囲内である。
【0018】
かかる範囲内の光学濃度の光吸収絶縁膜であれば、絶縁性と遮光性を両立できるため、信頼性を維持しつつコントラストを向上させることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる電子機器は上述したEL表示装置を備えている。
【0020】
かかる構成により、明所での使用時におけるコントラストが向上した電子機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。本発明の実施形態は断面に特徴がある。一方、平面図は従来のEL表示装置と略同一であり、回路構成も同一である。そこで、まず図1および図2を用いて、後述する従来例および各実施形態において共通するアクティブマトリクス型のEL表示装置の構成について説明する。
【0022】
図1は、アクティブマトリクス型のEL表示装置の全体構成を示す回路構成図である。画像表示領域10には、複数の走査線102と、走査線102と直交する複数の信号線104と、信号線104と平行に延びる複数の電源供給線106が形成され、走査線102と信号線104との各々の交点近傍には、画素領域100が形成されている。
【0023】
さらに、各々の画素領域100には、走査線102を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用TFT108と、スイッチング用TFT108を介して信号線104から供給される画素信号を保持する保持容量110と、保持容量110によって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用TFT112と、駆動用TFT112を介して電源供給線106から駆動電流が流れ込む発光素子114が形成されている。後述するように、発光素子114は画素電極である陽極と、画像表示領域10の全範囲にわたって共通電位となる陰極とでEL層を含む機能層を狭持しており、上記駆動電流は陽極に供給される。
【0024】
画像表示領域10の周辺には、走査線駆動回路120、及びデータ線駆動回路130が形成されている。走査線102には、走査線駆動回路120から、図示しない外部回路より供給される各種信号に応じて走査信号が順次供給される。そして、信号線104にはデータ線駆動回路130から画像信号が供給され、電源供給線106には図示しない外部回路から画素駆動電流が供給される。なお、走査線駆動回路120の動作とデータ線駆動回路130の動作とは、同期信号線140を介して外部回路から供給される同期信号により相互に同期が図られている。
【0025】
走査線102が駆動されスイッチング用TFT108がオン状態になると、その時点の信号線104の電位が保持容量110に保持され、保持容量110の状態に応じて駆動用TFT112のレベルが決まる。そして、駆動用TFT112を介して電源供給線106から陽極に駆動電流が流れ、さらに機能層を介して陰極に駆動電流が流れる。その結果、機能層は駆動電流の大きさに応じて発光する。
【0026】
次に、図2を用いて、画素領域100の構成について説明する。図2は、画素領域100を構成する各要素を示す平面構成図である。
【0027】
スイッチング用TFT108は、走査線102から突き出した第1のゲート電極202と、方形にパターニングされた第1の半導体層221と、からなる。第1の半導体層221は、第1のチャネル領域204と、その両側の第1のソース領域206および第1のドレイン領域208と、からなる。そして第1のチャネル領域204は、ゲート絶縁膜302(図3〜5参照)を挟んで、第1のゲート電極202と対向している。
【0028】
駆動用TFT112は、容量電極から突き出した第2のゲート電極212と、方形にパターニングされた第2の半導体層222と、からなる。第2の半導体層222は、第2のチャネル領域214と、その両側の第2のソース領域216および第2のドレイン領域218と、からなる。そして第2のチャネル領域214は、ゲート絶縁膜302(図3〜5参照)を挟んで、第2のゲート電極212と対向している。なお、第2のゲート電極212および走査線102は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Cu(銅)、のうちの少なくとも1つを含む金属材料で形成されている。
【0029】
スイッチング用TFT108の、第1のドレイン領域208は第1のコンタクトホール21を介して信号線104と導通し、第1のソース領域206は第2のコンタクトホール22を介してソース電極232と導通している。そして、ソース電極232は、第3のコンタクトホール23を介して第2のゲート電極212と導通するとともに、第4のコンタクトホール24を介して保持容量110の上部電極236(図3〜5参照)と導通している。なお、上部電極236は、走査線102と同一の層に同一の材料を用いて形成されている。
【0030】
保持容量110の下部電極238(図3〜5参照)は、第1の半導体層221と同一の層に例えば同一の材料を用いて形成され、第5のコンタクトホール25を介して電源供給線106と導通している。
【0031】
第2のソース領域216は第6のコンタクトホール26を介して電源供給線106の突出部分と導通している。第2のドレイン領域218は第7のコンタクトホール27を介してドレイン電極234と導通し、ドレイン電極234と画素電極200は第8のコンタクトホール28を介して導通している。
【0032】
なお、本実施形態のEL表示装置は機能層で生じた光を基板の上面から取り出すトップエミッション型である。したがって画素電極200は、図示するようにTFT上に形成できるのみならず、たとえば保持容量110上にも形成できる。また、画素領域100上の全面に陰極と機能層が形成されているが、図2においては図示を省略している。以下、従来のEL表示装置、及び本発明の実施形態について、図2に示すAA´線における断面図を用いて述べる。
【0033】
まず図3に従来のEL表示装置の、上記図2のAA´線における断面構成を示す。
【0034】
スイッチング用TFT108、保持容量110、および駆動用TFT112は、半導体層とゲート絶縁膜302と、走査線102と同じ層である(同時に形成される)AL配線層と、で形成されている。そして上記各素子上には第1の層間絶縁膜304が形成されている。第1のコンタクトホール21〜第7のコンタクトホール27は、第1の層間絶縁膜304の一部を選択的に除去して形成され、第1の層間絶縁膜304を狭持する各構成要素間の導通を図っている。
【0035】
信号線104等の上層には無機絶縁膜306、及び第2の層間絶縁膜308が重ねて形成され、ドレイン電極234上には第8のコンタクトホール28が、無機絶縁膜306、及び第2の層間絶縁膜308の一部を選択的に除去して形成されている。そして、第2の層間絶縁膜308の下層にスイッチング用TFT108、及び駆動用TFT112を有する領域上には反射板310が形成され、その上層には画素領域100の全域にエッチング保護膜312が形成されている。
【0036】
反射板310の第1の機能はTFTを遮光することである。上述したようにTFTの半導体層に光が入射すると光リーク電流の発生によりコントラストが低下するので、EL層で生じた光がTFTに入射するのを防いでいる。そのため、反射板310は遮光性を有するAl等の金属で形成され、少なくともスイッチング用TFT108、及び駆動用TFT112の上層を覆うようにパターニングされている。
【0037】
そして、エッチング保護膜312はたとえばシリコン窒化膜等からなり、画素電極200のパターニング時に反射板310を保護すべく、表示領域10の全面に形成されている。後述するようにカラー表示の場合、画素電極200の膜厚を各画素毎に異なる値にすることがある。そして、画素電極200のパターニングに用いる酸性のエッチング液は、金属層にダメージを与える。そこで、パターニングされた反射板310の上層を、耐酸性のあるシリコン窒化膜等で被っている。なお、エッチング保護膜312の形成材料であるシリコン窒化膜は導電性がない。したがって、基板30全面上に画素電極層を形成する前に、第8のコンタクトホール28の底面領域からはエッチング保護膜312を除去している。
【0038】
画素電極200上には機能層314、陰極316、および封止膜318がそれぞれ画素領域100上の全面に形成され、発光素子114を構成している。機能層は314は、EL層の他に例えば正孔注入/輸送層や電子注入/輸送層を含んでいる。陰極316は、MgAg、Ba等の仕事関数の小さな金属または合金の薄膜からなり、膜厚を略10nmと薄くすることで導電性を維持しつつ、50%の透光性を有している。好ましくは、透光性を有するITO薄膜を積層して、透光性を維持しつつ導電性を高めても良い。機能層314の下層の、画素電極200が存在していない領域には隔壁322が形成され、各々の画素領域100を区画している。
【0039】
従来のEL表示装置の場合は、マイクロキャビティ構造を採用して、画像表示領域10全域で共通の白色光を発生する機能層を用いつつ、赤、緑、青の3原色を発生させている。マイクロキャビティ(微小光共振器)構造とは、光の干渉を利用して白色光に含まれる全波長のうちの特定の波長の強度を高め、有色光にする構造である。画素電極200が、例えばITO(インジウム・すず酸化物)等の透光性材料で形成され、画素電極200の下層全域に反射板310が形成されていれば、機能層で発生した光のうち基板30の方向に出射した光は全て反射板310で反射され上方(基板30と反対の方向)に向かうため、干渉効果が起こる。そして各々の画素電極ごとに、上記ITOの膜厚を変化させることにより光路長を変化させ、対応する色に相当する波長の光の強度を強めて有色光とし、赤、緑、青の3原色を発生させることができる。
【0040】
しかし、上記構造のEL表示装置は、昼間の屋外等の明所での使用時に、コントラストが低下しがちである。その理由は、反射板310により迷光が発生しTFTに入射するからである。図示するように迷光333は表示領域10のうち反射板310が存在しない領域から装置内部に入り込み、反射板310の裏面、および走査線102や各素子を構成するAl配線の間で乱反射する。そして、乱反射を繰り返すうちにTFTにも入射し、光リーク電流が発生することで、発光素子に電流が流れて意図しない発光が生じコントラストが低下する。
【0041】
また、マイクロキャビティ構造は光路長の僅かな変化により強調される波長も変化するため、各構成要素、特に画素電極200の膜厚の精度を高いレベルに保つ必要があり、コストアップの要因となる。そこで、これらの問題点を解消させるべく、以下の各実施形態に記載する構成のEL表示装置を提供する。
【0042】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態にかかるEL表示装置の断面構成図である。従来のEL表示装置と異なり、第2の層間絶縁膜308に、黒色の顔料を混入して絶縁性を維持しつつ少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する光吸収機能を付与した絶縁膜309(以下、「光吸収絶縁膜」と称する。)を用いている。そして封止透明基板326の、基板30と対向する側の面には、機能層314に含まれるEL層を励起させ得る波長範囲に少なくとも吸収機能を持つカラーフィルタ328を配置している。
【0043】
カラーフィルタ328は、上述の吸収機能の他、赤、緑、青の3原色の内のいずれかの光を透過して白色光を有色光にする機能を持つ。その結果、上述したマイクロキャビティ構造を採用せずに、3原色の表示を可能にしている。そして、カラーフィルタ328の周囲には、EL層を励起させ得る波長範囲の外光を少なくとも吸収可能な黒色の遮光層(以下、「ブラックマトリクス」と称する。)330が配置されている。
【0044】
つまり、表示領域10は、EL層を励起させ得る光を吸収可能なフィルタで全面的に覆われている。一方で、従来のEL表示装置と異なり、反射板310は配置されていない。したがって、発光素子114で生じた発光のうち基板30の方へ出射した光は反射されず、従来のEL表示装置における第2の層間絶縁膜308に入射する。しかし上述したように、第2の層間絶縁膜308は光吸収機能が付与されて光吸収絶縁膜309となっているので、上記入射光はTFT等の素子にまでは殆んど達しない。
【0045】
また、画素電極200の形成材料であるITO膜は、反射板310よりも反射率が小さく、基板30上の各素子を連結する配線の層と画素電極200との間は光吸収絶縁膜309で充填されているので、EL表示装置内に入り込んだ光が乱反射を繰りかえして迷光333となる現象を抑制できる。
【0046】
上述の構成により本実施形態のEL表示装置は以下の効果を有する。
【0047】
まず、外光による発光素子114の励起を抑制できることである。カラーフィルタ328は白色光を有色光にするだけでなく、発光素子114を励起し得る波長の光を吸収している。その結果、黒表示時のフォトルミネッセンス現象が抑制され、明所で使用する際のコントラストが向上する。
【0048】
また、外光が反射板310で反射されて表示方向に出射することが抑制されるため、明所で使用する際のコントラストが向上する。
【0049】
また、スイッチング用TFT108や駆動用TFT112の周囲が光吸収絶縁膜309で充填されているため、カラーフィルタ328で吸収しきれずに装置内に入射した光が、直接、あるいは乱反射を繰り返して迷光333となって、上記のTFTに入射することが抑制されるため、光リーク電流の発生を抑制され、明所で使用する際のコントラストが向上する。
【0050】
また、反射板310を形成しないことにより、必然的にエッチング保護膜312も省略できるため、生産コストを削減できる。さらに、マイクロキャビティ構造を採用しないことにより、画素電極200の膜厚を全画素で共通にできるため、薄膜形成工程およびパターニング工程は各1回で済む。そして、膜厚精度の管理レベルを下げることもできるので、生産コストや良品率を大幅に向上できる。
【0051】
さらに、反射板310を除いたことにより、反射板310を一方の反射面とする光の多重反射現象が回避され、視野角が向上する。
【0052】
なお、光吸収絶縁膜309は、TFT等の素子やAl等の金属配線に隣接するため、1.0×10の12乗Ωcm程の高い絶縁性が必要である。一方でアクリル等の樹脂に顔料を混入する場合、顔料の濃度が高くなるほど絶縁性は低下するため、遮光性と絶縁性の兼ね合いが重要となる。そこで本実施形態では、OD値(光学濃度)を0.5から3.0の範囲内に収めると、遮光性と絶縁性を両立させることができる。透過型の液晶表示装置のブラックマトリクスに用いられる樹脂には、3.0を超えるOD値を持つものを用いるが、本実施形態の光吸収絶縁膜309は、外光を直接遮るのではなく、反射光を低減することが主目的なため、上記のOD値でも充分に目的を達成できる。OD値を小さく設定すると、光吸収絶縁膜を感光性の樹脂膜で形成する場合、フォトリソグラフィー法でパターニングする際に露光量を低減でき、生産コストも削減できるという効果も生じる。基板30はガラス基板を用いるのが一般的であるが、本実施形態はトップエミッション型であるため透光性は必要とせず、遮光性材質の基板を用いることも可能である。
【0053】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態にかかるEL表示装置の断面構成図である。第1の実施形態と異なる点は、まず第1に、従来のEL表示装置における隔壁322を、黒色の顔料を混入して光吸収機能を付与した絶縁物で形成して、光吸収隔壁323としていることである。そして第2に、カラーフィルタ328、およびのブラックマトリクス330を封止膜318上に形成していることである。従って製造工程も第1の実施形態とは異なり、基板30上にカラーフィルタ328およびのブラックマトリクス330を形成した後、接着層324を介して封止透明基板326を貼り合せている。
【0054】
隔壁にも光吸収性を付与したことにより、装置内に入射した外光は光吸収絶縁膜309に達するまでにも吸収されるので、TFTに達する光をより一層抑制できる。また、機能層314を励起し得る波長の光を吸収する機能を果たすカラーフィルタ328およびブラックマトリクス330が、接着層324を介さずに封止膜318のみを介して発光素子114上に形成されているため、装置内に入射する外光の量をより一層抑制できる。したがって、明所での使用時におけるコントラストをより一層向上できる。
【0055】
また、機能層314を励起し得る波長の光を吸収する機能を果たすカラーフィルタ328およびブラックマトリクス330が、接着層324を介さずに封止膜318のみを介して発光素子114上に形成されているため、隣接の画素の発光からも遮光されている。このためフォトルミネッセンス現象がより抑制され暗所でのコントラストもさらに向上できる。
【0056】
また、カラーフィルタ328等が形成されている基板30に、封止透明基板326を貼り合せるため、カラーフィルタ328と発光素子114の位置合せ精度の管理レベルを下げられる。したがって、生産コストや良品率をより一層向上できる。
【0057】
(電子機器)
次に、上述の第1〜第2の実施形態にかかるEL表示装置を、モバイル型のパーソナルコンピュータに適用した例について説明する。図6は、このパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。図において、パーソナルコンピュータ600は、キーボード602を備えた本体部604と、第1〜2の実施形態にかかるEL表示装置を用いて構成された表示ユニット606と、を備える。その結果、明所での使用時におけるコントラストが向上している。
【0058】
(変形例1)
第1、および第2の実施形態では、画素電極200を光吸収絶縁膜309上に直接形成していたが、界面反射による迷光333の発生をより一層抑制するために、アクリル等の樹脂とITOの中間的な屈折率を持つSiN(窒化シリコン膜)、SiON(酸化窒化シリコン膜)、あるいはポリスチレン樹脂等の材料からなる薄膜を介在させることが好ましい。光吸収絶縁膜309に、ポリスチレン樹脂あるいはポリカーボネート樹脂等を分散・混合しても同様の効果が得られる。
(変形例2)
第2の実施形態では隔壁に光吸収性を付与するとともにカラーフィルタ328の形成位置を変更したが、カラーフィルタ328の形成位置の変更のみ、又は、隔壁に光吸収性を付与することのみを、第1の実施形態との差異としても良い。どちらの形態も、第1の実施形態に比べ、明所での使用時のコントラストの向上等の効果がより多く得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】アクティブマトリクス型のEL表示装置の全体構成を示す回路構成図。
【図2】画素を構成する各要素を示す平面構成図。
【図3】従来のEL表示装置の、図2のAA´線における断面構成図。
【図4】第1の実施形態にかかるEL表示装置の断面構成図。
【図5】第2の実施形態にかかるEL表示装置の断面構成図。
【図6】電子機器の一例を示す斜視構成図。
【符号の説明】
【0060】
10…画像表示領域、21…第1のコンタクトホール、22…第2のコンタクトホール、23…第3のコンタクトホール、24…第4のコンタクトホール、25…第5のコンタクトホール、26…第6のコンタクトホール、27…第7のコンタクトホール、28…第8のコンタクトホール、30…基板、100…画素領域、102…走査線、104…信号線、106…電源供給線、108…スイッチング用TFT、110…保持容量、112…駆動用TFT、114…発光素子、120…走査線駆動回路、130…データ線駆動回路、140…同期信号線、200…画素電極、202…第1のゲート電極、204…第1のチャネル領域、206…第1のソース領域、208…第1のドレイン領域、212…第2のゲート電極、214…第2のチャネル領域、216…第2のソース領域、218…第2のドレイン領域、221…第1の半導体層、222…第2の半導体層、232…ソース電極、234…ドレイン電極、236…上部電極、238…下部電極、302…ゲート絶縁膜、304…第1の層間絶縁膜、306…無機絶縁膜、308…第2の層間絶縁膜、309…光吸収絶縁膜、310…反射板、312…エッチング保護膜、314…機能層、316…陰極、318…封止膜、322…隔壁、323…光吸収隔壁、324…接着層、326…封止透明基板、328…カラーフィルタ、330…ブラックマトリクス、333…迷光、600…パーソナルコンピュータ、602…キーボード、604…本体部、606…表示ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電材料よりなる画素電極と、光透過性陰極と、前記画素電極と前記陰極との間に狭持されるエレクトロルミネッセンス層を少なくとも含む機能層と、からなる発光素子と、
前記画素電極の光取出し方向と逆側に形成される、少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する材料からなる光吸収絶縁膜と、
前記画素電極と電気的に接続し、個々の発光素子の発光量を制御する薄膜トランジスタと、
前記エレクトロルミネッセンス層の励起光に対応する波長範囲に少なくとも吸収を持つフィルタと、を具備することを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記フィルタは、前記発光素子上に形成される、赤色光、緑色光、青色光のうちのいずれかの一色の光を透過させるカラーフィルタと、前記カラーフィルタの周囲を遮光するブラックマトリクスと、からなることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記光吸収絶縁膜の上層に、少なくとも可視範囲の波長の光を吸収する材料からなる光吸収隔壁を具備することを特徴とする請求項1、又は2に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記フィルタは、前記陰極上に、封止膜のみを介して形成されていることを特徴とする請求項2、又は3に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記封止膜はシリコン窒化膜であることを特徴とする請求項4に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
前記光吸収絶縁膜と前記画素電極の間に、屈折率が、前記光吸収絶縁膜の屈折率よりは大きく、前記画素電極の屈折率よりは小さい値である材料からなる薄膜を具備することを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項7】
前記光吸収絶縁膜の光学濃度が0.5から3.0の範囲内であることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかの1項に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置を具備することを特徴とする電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−234391(P2007−234391A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54429(P2006−54429)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】