説明

エレクトロルミネッセンス表示装置

【課題】表示装置において各画素に供給される電位のばらつきを少なくする。
【解決手段】画素がマトリックス配置された表示領域14を表示パネル上に有し、列方向に沿った側辺に形成された端子T1から各画素の表示素子に電流を供給する駆動電流配線が、表示領域14の各列に沿った枝配線20、枝配線20が接続され表示領域14の下側周縁部で行方向に延びる幹配線28、幹配線28と端子T1を接続する接続配線30を有する。接続配線30は、端子T1形成領域から表示領域14の下側周縁部に、幹配線28の端子の近傍側から遠方側に向かうスリット32により幹配線28の端子近傍側領域から隔てながら幹配線28の端子近傍側領域と並行に延び、表示領域14の下側周縁部の行方向の中間位置で幹配線28と接続されている。これにより、幹配線28への電源の供給が、行方向の中間となり、電位のばらつきが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各画素の表示素子として、電流駆動型の素子、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子と記す)を用いた表示装置の配線に関する。
【背景技術】
【0002】
各画素の表示素子として、電流駆動型の発光素子である有機EL素子を用いた表示装置が知られている。特に、各画素に設けられた有機EL素子を画素ごとに個別に駆動するためのトランジスタ(薄膜トランジスタ:TFT)を各画素に備えるいわゆるアクティブマトリクス型の表示装置の開発が進んでいる。
【0003】
図8は、アクティブマトリクス型表示装置の1画素に対応した等価回路の一例を示している。表示装置の水平走査方向(行方向)にゲートラインGLが、また垂直走査方向(列方向)にはデータラインDLおよび電源ラインPLが設けられている。各画素は、nチャネル型TFTからなる選択トランジスタTs、保持容量Cs、pチャネルの素子駆動トランジスタTd、有機EL素子ELを有する。選択トランジスタTsは、そのドレインが垂直走査方向に並んだ各画素に対してデータ電圧を供給する共通のデータラインDLに接続され、そのゲートは水平走査方向に並んだ画素を選択するゲートラインGLに接続され、さらにソースは、素子駆動トランジスタTdのゲートに接続されている。
【0004】
また、素子駆動トランジスタTdは、pチャネル型TFTであり、そのソースが電源ラインPLに接続され、ドレインは有機EL素子ELのアノードに接続されている。なお、この有機EL素子ELのカソードは、各画素共通に形成されたカソード電源CVに接続されている。また、素子駆動トランジスタTdのゲートおよび選択トランジスタTsのソースとの間には、保持容量Csの一方の電極が接続され、その保持容量Csの他方の電極は、例えばグランドや、電源ラインなどの一定電圧の電源に接続されている。
【0005】
このような回路において、ゲートラインGLがHレベルになると、選択トランジスタTsがオンになりデータラインDLのデータ電圧が、選択トランジスタTsを介して素子駆動トランジスタTdのゲートに供給され、素子駆動トランジスタTdが、そのゲート電圧に応じた駆動電流を電源ラインPLより流し、この駆動電流に応じた強度で有機EL素子ELが発光する。また、先のデータラインDLのデータ電圧は、素子駆動トランジスタTdに供給されると共に保持容量Csにも供給されて、保持容量Csにデータ電圧に応じた電圧が保持される。したがって、ゲートラインGLがLレベルになっても、保持容量Csの保持された電圧により素子駆動トランジスタTdが駆動電流を流し続け、有機EL素子ELは、この駆動電流に応じた強度で発光を維持する。
【0006】
図9は、下記特許文献1に開示された有機EL表示装置100の概略構成を示す平面図である。この図において、一番外側の実線は透明のパネル基板102を示し、その中央やや上側に、上述の画素がマトリクス状に配置された破線で示す表示領域104が位置している。表示領域104の上側の辺に沿ってデータラインDLと接続される水平駆動回路(以下、H系ドライバと記す)106が形成され、また表示領域104の左右の辺に沿ってゲートラインGLに接続される垂直駆動回路(以下、V系ドライバと記す)108が形成されている。これらのドライバ106,108は、各画素ごとに設けられたTFTと同時に作り込まれたTFTなどから構成されている。
【0007】
表示領域104内で垂直方向に延びる太い実線は、電源ラインPLを示している。個々の電源ラインPLは、表示領域104の下側の辺に沿って延びる水平方向の幅広部110につながり、全体で櫛歯形状になっている。幅広部110は更に、その中央付近で、垂直方向に延びるもう一つの幅広部112につながっている。さらに、この幅広部112は、有機EL表示装置100の下辺に配置される駆動電源入力端子T1につながっている。垂直方向の幅広部112が、水平方向の幅広部110の中央付近でこれにつながっているので、表示領域の左右の辺付近の画素に対する電位降下のバランスがとれ、また電位降下の量も小さくできる。すなわち、各画素の電位のばらつきを小さく抑えることができる。
【0008】
有機EL表示装置100の下辺には、端子T1の他、カソード端子T2、V系ドライバ108につながる端子T3、H系ドライバ106につながる端子T4の複数の端子が配置される。
【0009】
【特許文献1】特開2001−102169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の有機EL表示装置の外部接続用の端子は、前記公報に記載されるようにパネル基板の下辺に設けられている。しかしながら、表示装置以外の他の機器との関連において、端子を右、または左の側辺に配置したいという要求がある。一方、製造コストの低減要求は非常に強いため、表示領域104内の回路構成やドライバなどのパネル基板100上でレイアウトの変更は最小限に留めることが通常である。レイアウト等の変更は、素子、配線を形成するマスクの変更、特性の検証のやり直し等を招き大幅なコスト上昇につながりかねないからである。したがって、駆動電源入力端子を例えば水平走査方向の一方の端(左辺)に配置した場合、この端子と、水平方向に延びる幅広部の最短距離の部分をつなぐことが考えられる。しかし、各電源ラインPLは、全てこの幅広部110に接続され、各画素のEL素子に電流を供給している。したがって、端子と水平方向の幅広部の左側とをつなぐようにした場合、幅広部は、大きな電流が流れるため、端子から遠ざかる水平走査方向の右方向に行くほど、電位降下は大きくなり、表示領域左側の電位と、右側の電位とが大きく異なることになる。このような電位の差は、対応する電源ラインPLの電位差となり、有機EL素子に流す電流がパネル上の位置によって異なることとなり、これが有機EL素子の発光強度の差となって視認され、表示品質を低下させる。
【0011】
本発明は、有機EL表示装置の左または右の側辺より、有機EL素子の駆動電流を供給する場合の、表示画面の輝度ムラの低減を図る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるエレクトロルミネッセンス表示装置は、画素がマトリックス配置された表示部を表示パネル上に有するエレクトロルミネッセンス表示装置であり、前記表示パネルの列方向に沿った側辺に位置する端子から、各画素の表示素子に駆動電流を供給する駆動電流配線は、表示部の各列に沿ってそれぞれ設けられた枝配線と、前記枝配線が共通接続され、前記表示部の下側周縁部において、前記表示部の行方向に沿って延びる幹配線と、前記幹配線と前記端子とを接続する接続配線と、を有する。前記接続配線は、前記端子の形成領域から前記表示部の下側周縁部に、前記幹配線の前記端子の近傍側から遠方側に向かって設けられたスリットによって、前記幹配線の前記端子近傍側領域から隔てられた状態で、該幹配線の前記端子近傍側領域と並行して延び、前記表示部の下側周縁部の前記行方向の中間位置において前記幹配線と接続配線とが接続されている。
【0013】
また、本発明の他の態様では、上記装置において、前記接続配線と、前記幹配線とは、前記表示部の下側周縁部に設けられて行方向に延びかつ外形が略長方形の駆動電流配線領域を構成し、前記略長方形の前記端子側の辺から行方向に沿って前記スリットが形成されており、該スリットの長さをX、前記駆動電流配線領域の前記スリットの終端部から前記端子の遠方側の辺までの長さをY、前記駆動電流配線領域の列方向の幅をW、前記スリットにより前記接続配線と隔てられて配置されている前記幹配線の前記端子近傍側の列方向の幅をLとしたとき、0<X<Y、0<L<Wであり、
X/Y=√L/√W
なる関係を満たす。
【0014】
また、本発明の他の態様では、前記スリットの長さは、前記表示部の各画素での発光輝度が、最大発光輝度に対して、70パーセント以上の輝度、或いはさらに80パーセント以上の輝度となるよう定められている。
【0015】
また、本発明の他の態様では、前記枝配線の幅は、前記画素に対応付けられた色に応じて定められ、互いに幅の異なる枝配線が少なくとも2種ある。
【0016】
また、本発明の他の態様では、画素がマトリックス配置された表示部を表示パネル上に有するエレクトロルミネッセンス表示装置において、前記表示パネルの列方向に沿った側辺に位置する端子から、各画素の表示素子に駆動電流を供給する駆動電流配線は、表示部の各列に沿ってそれぞれ設けられた枝配線と、前記枝配線が共通接続され、前記表示部の下側周縁部において、前記表示部の行方向に沿って延びる幹配線と、前記幹配線と前記端子とを接続する接続配線と、を有する。前記接続配線は、前記端子の形成領域から、前記幹配線の形成された前記表示部の下側周縁部に延び、少なくとも前記幹配線の形成領域と重なる領域において、前記接続配線は、前記幹配線と層間に絶縁層を挟んで重畳し、該接続配線は、前記幹配線の行方向中央部において、前記絶縁層を貫通して形成されたコンタクトホールを介して前記幹配線と接続されている。
【発明の効果】
【0017】
幹配線の外部接続端子に最も近い位置ではなく、表示領域の水平走査方向に沿って設けられるこの幹配線の水平走査方向の中間位置が外部接続端子からの共通接続配線と接続されることとなり、外部端子からの距離に拘わらず、水平走査方向のどの位置の画素に対しても均等な駆動電流を供給することができ、表示領域内での駆動配線の電位降下のばらつき、特に水平走査方向における電位降下の差を低減することができ、また電位降下自体も小さくすることができる。これにより、表示領域の左右の位置で画素の発光強度の差を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の有機EL表示装置10の表示部、各回路および配線などの概略パネルレイアウトを示す図である。パネル基板12上には、複数の画素がマトリクス状に配置されて表示領域14が形成されている。パネル基板12の表示領域14には、マトリクスの水平走査(行)方向には、順次選択信号が出力されるゲートライン16(GL)が形成され、垂直走査(列)方向には、データ信号が出力されるデータライン18(DL)と、被駆動素子である有機EL素子に動作電源(PVDD)からの駆動電流を供給するための電源ライン20(PL)が形成されている。
【0019】
各画素は、概ねこれらのラインによって画定された領域に設けられており、各画素は回路構成としては、被駆動素子として有機EL素子、nチャネル型TFTより構成された選択トランジスタTr1、保持容量Cs、pチャネル型TFTより構成された素子駆動トランジスタTr2を有する。選択トランジスタTr1は、そのドレインが垂直走査方向に並ぶ各画素にデータ電圧を供給するデータライン18に接続され、ゲートが1水平走査ライン上に並ぶ画素を選択するためのゲートライン16に接続され、更にそのソースが素子駆動トランジスタTr2のゲートに接続される。素子駆動トランジスタTr2は、そのソースが電源ライン20に接続され、ドレインが、有機EL素子ELのアノードを構成し、かつ、本実施形態では画素毎に個別形状の画素電極に接続されている。また、有機EL素子ELのカソードは、各画素共通で形成されており、カソード電源CVに接続されている。また、素子駆動トランジスタTr2のゲートおよび選択トランジスタTr1のソースには、保持容量Csの第1電極が接続され、もう一方の第2電極は一定電位に、例えば電源ライン20に接続されている。
【0020】
なお、上記選択トランジスタTr1および素子駆動トランジスタTr2は、いずれも能動層に、例えばレーザアニール等によって多結晶化された多結晶シリコンなど、結晶性のシリコンが用いられ、かつ不純物としてそれぞれn導電型と、p導電型がドープされたnチャネル型、pチャネル型の薄膜トランジスタTFTで構成することができる。なお、画素回路構成、TFTの導電型構成などについて、上記には限られず、他の構成を採用することも可能である。
【0021】
画素回路のトランジスタとして、上記のように結晶性シリコンを能動層に用いたTFTを採用した場合、この結晶性シリコンTFTは、各画素回路だけでなく、各画素を順次選択、制御するための周辺駆動回路の回路素子としても用いることができる。本実施形態の有機EL表示装置10においては、パネル基板12上に、前述の画素回路用トランジスタの製造と同時に、画素回路と同様の結晶性シリコンTFTを形成して、周辺駆動回路、具体的にはH系ドライバ22とV系ドライバ24を内蔵させている。図1に示されるように、H系ドライバ22は表示領域14の上辺に沿って、V系ドライバ24は、表示領域の右辺に沿って配置される。
【0022】
さらに、表示領域14の下辺に沿って駆動電源PVDDからの駆動電流を各画素に供給するための駆動電流配線が、駆動電流配線領域26に形成される。これらH系、V系ドライバ22,24に、有機EL表示装置10の外部より制御信号、電源を供給するフラットパネルケーブル(以下、FPCと記す)の接続端子が、パネル基板12の左辺に配置される。表示領域14の左辺に沿って、FPCとの接続端子と、H系、V系ドライバ22,24や、駆動電流配線とを接続するためや、供給された電位をH系ドライバ22の動作に適した電位に変換するためのH系レベルシフタLSが配置されている。なお、FPCとの接続端子は、好ましくは、表示領域の高さ方向の中央より下側に配置される。また、表示領域14の右上隅には、供給された電位を、V系ドライバ24の動作に適した電位に変換するV系レベルシフタLSが配置される。
【0023】
図2は、各画素の有機EL素子ELに駆動電流を供給する駆動電流配線(PVDD配線)の詳細構成を示す図である。駆動電流配線は、表示部のマトリクスの各列に沿って延びる枝配線と、各枝配線が接続されパネル基板12の表示部下側の周縁部において、表示部の行方向(水平走査方向)に延びて設けられた幹配線と、幹配線と外部電源接続端子T1とを接続する接続配線とを含む。
【0024】
枝配線は、すでに述べた電源ライン20であり、以降は枝配線20と記して説明を行う。幹配線28は、図1の駆動電流配線領域26に位置し、水平走査方向に沿って(表示領域の左右で)、その配線幅が異なっている。幹配線28の右側部分28aは、パネルの中心よりも水平走査方向において端子T1から遠い位置(端子T1形成辺と反対側の辺の近く)に設けられており、その配線幅(垂直走査方向の寸法)がWmmである。幹配線28の左側部分28bは、上記右側部分28aとは逆に、パネルの中心よりも水平走査方向において端子T1から近い位置(端子T1形成辺の近く)に設けられており、その配線幅がLmmとなっている(但し、0<L<W)。
【0025】
接続配線30は、上記幹配線28の左右部分28a,28bに、外部接続端子T1を均等に接続するための共通配線であり、幹配線の左側部分28bと並行して配置される並行配置部分30aと、並行配置部分30aと接続端子T1とを接続する接続部分30bを有している。幹配線の左側部分28bと、接続配線の並行配置部分30aの間には、スリット32が形成されており、これらの配線の分離が行われている。幹配線28と、接続配線の並行配置部分30aの外形は、一点鎖線で示す長方形34である。
【0026】
言い換えると、長方形34の配線(駆動電流配線領域26)にスリット32を設けることにより、幹配線28と接続配線の並行配置部分30aが形成されている。即ち、このスリット32は、長方形の駆動電流配線領域の端子T1側のエッジから水平走査方向の中央方向(端子T1から遠ざかる方向)に向かって形成され、幹配線28の端子近傍側領域(左側部分28b)の端子T1との間の配線長を長くする機能を持つ。つまり、このスリット32により幹配線28の端子近傍側領域(左側部分28b)と端子遠方側領域(右側部分28a)との端子T1への配線長を同等にすることが容易となる。
【0027】
このように、駆動電流配線領域にスリット32を設けることにより、幹配線28に対して電流を供給する位置(以下、接続部(接続点)36と記す)が、スリット32の先端位置となり、ここから電流が左右に分かれるので、水平走査方向の左右の電位のバランスが取りやすくなる。なお、図において、枝配線20、幹配線28の右側、左側部分28a,28b及び並行配置部分30aは、説明のためそれぞれ別領域で示しているが、実際には、一体で、アルミニウムなどの導電性金属配線材料を用いて形成することができる。
【0028】
接続部36からの幹配線28の左右の電位降下を等しくする条件を計算する。幹配線の右側部分28aの幅をWmm、長さをYmmとし、左側部分28bの幅をLmm、長さをXmmとする。幹配線の全長はHmm(=X+Y)である。並行配置部分30aの幅をMmm(=W−L)、長さはXmmである。これら左側部分28bおよび並行配置部分30aの長さXは、スリット32の長さでもある。配線材料のシート抵抗をρ、駆動電源配線に流れる全電流をIとすれば、右側部分28aの電位降下ΔVrは、右側部分の抵抗の2分の1と右側部分の電流和であるから、
ΔVr=(1/2)ρ(Y/W)×Y/(X+Y)×I ・・・(1)
となる。同様に、左側部分28bの電位降下ΔVlは、
ΔVl=(1/2)ρ(X/L)×X/(X+Y)×I ・・・(2)
となる。接続部36から左右の電位降下が等しくなるとき電位降下を最小とでき、この条件はΔVr=ΔVlであるから、式(1),(2)より
X/Y=√L/√W ・・・(3)
を得る。なお、0<X<Y、0<L<Wである。
【0029】
図3は、H=50.9mm、W=2mm、L=0.1〜1.5mm、ρ=0.077(Ω/□)、I=169mAの駆動電流配線領域26内の電位降下の様子を示す図である。幹配線の電位降下のグラフは、スリット先端の接続部36から右の端子遠方側領域(右側部分)28aと、左の端子近傍側領域(左側部分)28bの電位降下を示している。左側部分の幅Lが大きくなるほど電位降下は少なくなっている。一方、並行配置部分電位降下のグラフは、接続配線の並行配置部分30aでの電位降下を示している。この電位降下は、幅Lが大きくなるほど、大きくなっている。これら二つのグラフの電位降下を加えたグラフが配線領域電位降下のグラフであり、並行配置部分30aの左端から、幹配線28の右端または左端までの総電位降下を示している。
【0030】
配線領域の電位降下が大きい場合、画素全体の輝度が下がり、十分な画面明るさが得られない。この面からは幅Lが狭い、すなわちスリット長さXが短い方が好ましい。一方、幹配線の電位降下が大きいと、接続部36に近い位置(水平走査方向の中央付近)の画素と表示領域の左右の端の画素との輝度の差が大きく、輝度のムラとなって観察者に視認されてしまう。したがって、この面からは幅Lは大きい方が好ましい。よって、最大輝度に対する最小輝度が許容できる範囲で、できるだけ幅Lが小さい、すなわちスリットが短いことが望まれる。最小輝度が最大輝度に対して、およそ80パーセント程度の範囲であれば、輝度ばらつきとして視認されにくく、高い表示品質であるとして評価を得られるため、この条件を満たす幅Lの値で、最も小さい値を採用することが好ましい。なお、このように設定された幅L(スリット長X)では、配線領域電位降下が大きくてパネル全体の輝度としては十分でない場合、輝度のムラを、許容できる範囲であるおよそ70パーセントにして幅Lを設定することができる。
【0031】
図4は、H=50.9mm、W=2mm、L=1mm、ρ=0.077(Ω/□)、I=169mA、枝配線20の幅12μmの場合の表示領域14の四隅に位置する画素の輝度比を示す図であり、スリット32の先端、すなわち接続部36の近傍に位置する表示領域下辺中央の画素の輝度(100%)に対する四隅の画素の輝度比率が示されている。4隅の画素の輝度比が80パーセントを超えており、輝度ばらつきの小さいパネルとして評価することができる。輝度比が70パーセントを下回ると、輝度ばらつきとして視認されやすくなるためこの条件を採用することは避けることが好適である。上記の例においては、端子T1からの電気的配線距離が最も長い表示領域14の左右の上端の画素輝度についても、最大輝度100%に対して83.2%以上を実現しており、製品のばらつきなどにより、発光強度が部分的に低下した場合などを考えても、十分な余裕があることが分かる。また、配線の幅Wを狭めることができることも分かる。
【0032】
図5は、枝配線の幅を、その配線に対応付けられた画素の色ごとに異ならせた例である。これは、色ごとに流すべき電流が異なるためであり、電流が多い配線ほど太くしている。つまり、発光色毎に異なる発光材料を用いた有機EL素子であれば、材料毎に発光効率が異なるため、発光効率の低い色の有機EL素子に対しては、他の色の光と同等の輝度を実現するために、より多くの電流を供給する必要がある。或いは、全画素について同一の発光材料を用い、カラーフィルタなどの色変換部材を利用して、フルカラー表示を実現する場合、発光効率はどの画素でも等しいが、人の色感度や、表示イメージ、映像の規格などにより、対応付けられた色毎に発光輝度を変更する要求がある。図5の例では、このような要求に対応することができ、この例では、白の画素に駆動電流を供給する枝配線20Wの幅が最も太く、次いで赤用の枝配線20Rが太く、緑用と青用の枝配線20G,20Bは、最も細くなっている。他の構成は、図2に示す駆動電流配線の構成と同じであり、説明は省略する。図5の例では、3種の異なる太さの配線を採用したが、2種であっても、全てを異なる太さにすることもできる。もちろん、各色の枝配線の幅の関係は上記例に限られるものではなく、条件に応じて必要な色の枝配線の幅を最適な幅とすればよい。
【0033】
図6および図7は、他の実施形態の有機EL表示装置50の要部を示す平面図および断面図である。この有機EL表示装置50は、前述の有機EL表示装置10との比較において、幹配線と接続配線の構成に差異がある。他の構成については、有機EL表示装置10と同様の構成であり、説明を省略する。
【0034】
幹配線52は、表示領域14の外側に水平走査方向に同一の幅で延びており、接続配線54は、少なくとも幹配線52と平面図において重なる領域において、幹配線52と互いに絶縁された異なる導電層を用いて形成されている。一例としては、図7に示すように、選択トランジスタTr1、素子駆動トランジスタTr2等のTFTのゲート電極56と同一の金属配線材料を用い、このゲート電極56と同時に形成した配線層を利用することができる。例えばこのゲート電極配線材料は、Cr、Mo等の高融点金属材料である。一方の幹配線52及び枝配線20は、データラインなどと同じ、アルミニウムなどの配線材料を用い、データラインなどと同時に形成することができる。なお、接続配線54は、本実施形態においては、幹配線52と異なる層に形成された架橋部分54aと、幹配線52と同じ層に形成され、外部端子T1と接続している接続部54bを含む。幹配線52と架橋部分54aは、幹配線52の中央部分の破線で示した部分58において、層間の絶縁層(図7の場合は、層間絶縁層)を貫通して形成したコンタクトホールにおいて接続されている。この接続部58から表示領域14の左右の端まで伸びる幹配線52の長さはほぼ等しくなっており、これにより表示領域14の両端の電位降下はほぼ等しく、各画素の電源電位の差を最小にすることができる。
【0035】
なお、図6,7に示す電源供給配線の構成においても、図5に一例を示す枝配線の幅を色ごとに異なるようにする構成を採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態の有機EL表示装置の概略のパネルレイアウトを示す図である。
【図2】有機EL表示装置の駆動電源配線を概念的に示す図である。
【図3】電位降下の幅Lに関する依存性を示す図である。
【図4】有機EL表示装置の四隅の画素の輝度比を相対的に示した図である。
【図5】枝配線の太さを色ごとに設定した表示装置の例である。
【図6】他の実施形態の有機EL表示装置の概略のパネルレイアウトを示す図である。
【図7】有機EL表示装置の断面を示す図である。
【図8】アクティブマトリクス型表示装置の1画素の等価回路を示す図である。
【図9】従来の有機EL表示パネルの概略レイアウトを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10,50 有機EL表示装置、12 パネル基板、14 表示領域、16 ゲートライン、18 データライン、20 電源ライン、22 H系ドライバ、24 V系ドライバ、26 駆動電流配線領域、28,52 幹配線、30,54 接続配線、32 スリット、34 長方形、36 接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素がマトリックス配置された表示部を表示パネル上に有するエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記表示パネルの列方向に沿った側辺に位置する端子から、各画素の表示素子に駆動電流を供給する駆動電流配線は、
表示部の各列に沿ってそれぞれ設けられた枝配線と、
前記枝配線が共通接続され、前記表示部の下側周縁部において、前記表示部の行方向に沿って延びる幹配線と、
前記幹配線と前記端子とを接続する接続配線と、
を有し、
前記接続配線は、前記端子の形成領域から前記表示部の下側周縁部に、前記幹配線の前記端子の近傍側から遠方側に向かって設けられたスリットによって、前記幹配線の前記端子近傍側領域から隔てられた状態で、該幹配線の前記端子近傍側領域と並行して延び、前記表示部の下側周縁部の前記行方向の中間位置において前記幹配線と接続配線とが接続されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記接続配線と、前記幹配線とは、前記表示部の下側周縁部に設けられて行方向に延びかつ外形が略長方形の駆動電流配線領域を構成し、
前記略長方形の前記端子側の辺から行方向に沿って前記スリットが形成されており、
該スリットの長さをX、前記駆動電流配線領域の前記スリットの終端部から前記端子の遠方側の辺までの長さをY、前記駆動電流配線領域の列方向の幅をW、前記スリットにより前記接続配線と隔てられて配置されている前記幹配線の前記端子近傍側の列方向の幅をLとしたとき、0<X<Y、0<L<Wであり、
X/Y=√L/√W
なる関係を満たすことを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記スリットの長さは、前記表示部の各画素での発光輝度が、最大発光輝度に対して、70パーセント以上の輝度となるよう定められていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記スリットの長さは、前記表示部の各画素での発光輝度が、最大発光輝度に対して、80パーセント以上の輝度となるよう定められていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記枝配線の幅は、前記画素に対応付けられた色に応じて定められ、互いに幅の異なる枝配線が少なくとも2種あることを特徴とする
エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項6】
画素がマトリックス配置された表示部を表示パネル上に有するエレクトロルミネッセンス表示装置において、
前記表示パネルの列方向に沿った側辺に位置する端子から、各画素の表示素子に駆動電流を供給する駆動電流配線は、
表示部の各列に沿ってそれぞれ設けられた枝配線と、
前記枝配線が共通接続され、前記表示部の下側周縁部において、前記表示部の行方向に沿って延びる幹配線と、
前記幹配線と前記端子とを接続する接続配線と、
を有し、
前記接続配線は、前記端子の形成領域から、前記幹配線の形成された前記表示部の下側周縁部に延び、少なくとも前記幹配線の形成領域と重なる領域において、前記接続配線は、前記幹配線と層間に絶縁層を挟んで重畳し、
該接続配線は、前記幹配線の行方向中央部において、前記絶縁層を貫通して形成されたコンタクトホールを介して前記幹配線と接続されていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−34278(P2007−34278A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154839(P2006−154839)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】