説明

エレベータかご内の表示装置およびエレベータかご内の表示方法

【課題】情報効率の高いエレベータ内の映像表示装置を提供する。
【解決手段】監視カメラ30で撮像したエレベータかご10内のかご内映像を解析して、エレベータかご10内の搭乗者の外観を判別する。例えば、搭乗者の身長、髪の毛の長さ、着衣から成人男性、成人女性、子供の人数を判別する。エレベータかご10内の状況が成人女性または子供一人と、成人男性一人であるときに、記録媒体23に記録された防犯映像または/および監視カメラ30で撮像されたかご内映像をモニタ11に表示する。エレベータかご10内の状況が成人男性のみまたは成人男性以外のときに、記録部23に記録された告知映像等をモニタ11に表示する。エレベータかご10内の状況が、成人女性または子供1人と他に男性を含む2人以上であるときに、防犯映像と告知映像をモニタ11に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータかご内の表示装置およびエレベータかご内の表示方法に関し、特にエレベータかご内の防犯機能に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータに、女性もしくは子供が一人で乗るときに、一人以上の見知らぬ男性が同時に乗る場合、女性もしくは子供が不安に思っても他の人に遠慮して防犯動作を起こせない場合がある。上記問題を解決するために、常時防犯用の映像をエレベータかご内のモニタに表示すると、その他一般の情報提供の効率が下がる。
【0003】
このような課題を解決する技術として、特許文献1の技術を利用することができる。特許文献1記載の技術では、監視カメラによって撮影されたエレベータかご内の映像、文字放送を受信して得られた映像、予め記録しているメッセージ映像等を、一定時間ごとに切り替えて、エレベータかご内のモニタに表示している。すなわち、エレベータかご内の映像を一定時間毎に表示することで防犯動作を行い、当該映像が表示されるとき以外の時間に一般情報を提供する映像を表示している。
【0004】
また、本発明に関わる技術として、画像解析によって人物の年齢、性別を判別する技術が非特許文献1および2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−349242号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】中野 実代子、“年齢・性別・人種推定のための知的特徴抽出と推定の自動化”、[online]、2005年、電気通信普及財団、[平成18年3月1日検索]、インターネット<URL:http://www.taf.or.jp/publication/kjosei_20/pdf/p504.pdf>
【非特許文献2】山瀬 弘之、“カラー全身像を用いた男女識別”、[online]、1996年2月16日、奈良先端科学技術大学大学院、[平成18年3月1日検索]、インターネット<URL:http://chihara.aist-nara.ac.jp/public/research/thesis/master/96/yamase9451118.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、一定の時間毎に防犯用の映像および一般情報を提供する映像が交互に表示されるため、例えば、エレベータかご内を占める人数が一人である場合でも、防犯用の映像がモニタに表示されることになり、情報の提供効率が十分ではないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、自動で防犯情報を提供するとともに、効率のよい情報提供を実現するエレベータかご内の表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる請求項1記載のエレベータかご内の表示装置は、エレベータかご内のかご内映像を撮影する監視カメラと、前記エレベータかご内に設置された表示部と、前記かご内映像を解析して、前記エレベータかご内の搭乗者の外観を判別する映像解析部と、前記判別結果に基づいて異なる表示内容を前記表示部に表示する映像表示部とを備え、前記映像解析部は、前記搭乗者の前記外観から性別毎の人数を判別することを特徴とする。
【0010】
本発明にかかる請求項2記載のエレベータかご内の表示装置は、請求項1記載のエレベータかご内の表示装置であって、前記映像表示部は、前記映像解析部が前記エレベータかご内に男性のみが乗っていると判別したときには、防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる請求項3記載のエレベータかご内の表示装置は、請求項1又は2記載のエレベータかご内の表示装置であって、前記映像表示部は、前記映像解析部が前記エレベータかご内に成人女性又は子供が複数人乗っていると判別したときには、防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0012】
本発明にかかる請求項4記載のエレベータかご内の表示装置は、請求項1から3のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置であって、前記映像解析部は、前記搭乗者の前記外観から年齢層別の人数を判別することを特徴とする。
【0013】
本発明にかかる請求項5記載のエレベータかご内の表示装置は、請求項1から4のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置であって、前記映像表示部は、前記判別結果に基づいて、防犯用の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる請求項6記載のエレベータかご内の表示装置は、請求項1から4のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置であって、前記映像解析部は前記エレベータかご内に、予め登録された外観を有する人物以外の人物が居るかどうかを判別し、肯定的な判別がなされたときに前記映像表示部は防犯用の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする。
【0015】
本発明にかかる請求項7記載のエレベータかご内の表示方法は、(a)エレベータかご内の映像を解析して、搭乗者の外観を判別するステップと、(b)前記判別結果に基づいて異なる表示内容を表示するステップとを実行し、前記ステップ(a)は、エレベータかご内の映像を解析して、前記搭乗者の前記外観から性別毎の人数を判別するステップであることを特徴とすることを特徴とする。
【0016】
本発明にかかる請求項8記載のエレベータかご内の表示方法は、請求項7に記載のエレベータかご内の表示方法であって、前記ステップ(a)において前記エレベータかご内に男性のみが乗っていると判別したときには、前記ステップ(b)において防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1から3,6,7,8に記載の発明によれば、エレベータ内を占める搭乗者に応じて、最適な情報を表示部へ表示することができる。しかも搭乗者の多数を占める性別の情報を損なうことなく、最適な情報を表示部に表示することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、搭乗者の多数を占める年齢層の情報を損なうことなく、最適な情報を表示部に表示することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、必要とする場合のみ防犯用の情報を表示部に表示することができ、情報の提供効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるエレベータかご内の映像記録装置の概略構成図である。
【図2】映像の種類を示す図である。
【図3】実施の形態1にかかるエレベータかご内の映像記録装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態)
本発明にかかる実施の形態のエレベータかご内の表示装置の概略構成図を図1に示す。エレベータかご10には、モニタ11と、搭乗者が行き先の階を選択する操作部12と、エレベータかご10内のかご内映像を撮影する監視カメラ30と、監視カメラ30およびモニタ11と通信ラインを介してそれぞれ接続された映像表示装置20が設置されている。
【0022】
映像表示装置20は、映像解析部21と、制御部22と、記録媒体23と、映像機能部24と、表示機能部25とを備えている。映像解析部21は、監視カメラ30からのかご内映像を画像解析し、エレベータかご10内の搭乗者の外観を判別して、エレベータかご10内を占める搭乗者の性別毎の人数、子供(年齢層別)の人数を判別する。
【0023】
制御部22は、映像解析部21からの判別結果に基づいて、モニタ11に表示すべき映像を選択し、当該映像を再生する制御信号を映像機能部24へ出力する。
【0024】
映像機能部24は、受け取った制御信号に基づいて監視カメラ30からのかご内映像、記録媒体23に保存された複数種類の映像を選択的に表示機能部25に出力することができる。また、映像機能部24は監視カメラ30からのかご内映像を記録媒体23に記録することができる。
【0025】
表示機能部25は、映像機能部24から出力された映像を受け取ってモニタ11に当該映像を表示する。
【0026】
記録媒体23には、上述したように複数種類の映像が記録される。複数種類の映像とは、例えば図2(a)に示すようなエレベータの防犯機能を説明する防犯映像、図2(b)に示すようなエレベータ点検日を告知する告知映像等である。なお、これらの映像は、映像表示装置20の外部から入力されて、制御部22によって記録媒体23に記録できる態様であっても良い。
【0027】
なお、制御部22、映像機能部24、表示機能部25を映像表示部とみなすことができる。すなわち、映像表示部は映像解析部21からの判別結果に基づいて異なる表示内容をモニタ11に表示する。
【0028】
続いて、本実施の形態にかかるエレベータかご内の表示装置の動作の一例を図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0029】
まず、ステップS1にて、映像解析部21は、監視カメラ30で撮影したかご内映像を解析して、エレベータかご10内の搭乗者の外観を判別して、性別、大人か子供かを判別する。具体的には、例えば、以下の手法で性別および大人か子供かを判別する。まず、肌色抽出等で搭乗者の顔領域を決定し、カラー画像を輝度値のみの白黒濃淡画像に変換する。ソーベルフィルタによって、顔領域におけるエッジ情報(しわ、目、口等)を検出し、エッジ画像の垂直方向および水平方向の累積ヒストグラムを求める。
【0030】
そして、複数のサンプル画像による累積ヒストグラムのパターンをNN(ニューラルネットワーク)に学習させて、搭乗者の累積ヒストグラムから性別および大人か子供かの判別を行う。つまり、顔の皺、目、口の形状等から性別および大人か子供かの判別を行う(中野 実代子、“年齢・性別・人種推定のための知的特徴抽出と推定の自動化”、[online]、2005年、電気通信普及財団、[平成18年3月1日検索]、インターネットURL:http://www.taf.or.jp/publication/kjosei_20/pdf/p504.pdf参照)。
【0031】
また、例えば、搭乗者のいくつかの特徴を抽出して性別を判別する手法を用いても良い。本手法では、まず背景画像との差分から人物領域を抽出する。人物領域の上部6分の1の領域から黒色、肌色抽出等で顔領域と髪の毛領域を決定し、髪の毛の長さを求める。次に、人物領域の上から3/5以下かつ下から1/8以上の領域に対してソーベルフィルタによってスカートの裾のエッジを検出する。髪の毛の長さ、スカートの裾のエッジ部に応じてそれぞれ数値を与え、それらの数値をひとつの特徴ベクトルとして把握する。
【0032】
複数のサンプル画像による特徴ベクトルからK平均法を用いてクラスタリングを行って男性特徴ベクトルモデル、女性特徴ベクトルモデルを決定し、搭乗者の特徴ベクトルと男性特徴ベクトルモデルとの距離および搭乗者の特徴ベクトルと女性特徴ベクトルモデルとの距離に基づいて性別を決定する。つまり、髪の毛の長さ、スカートをはいているか否かで性別の判別を行う(山瀬 弘之、“カラー全身像を用いた男女識別”、[online]、1996年2月16日、奈良先端科学技術大学大学院、[平成18年3月1日検索]、インターネットURL:http://chihara.aist-nara.ac.jp/public/research/thesis/master/96/yamase9451118.pdf参照)。
【0033】
また、例えば、搭乗者の身長を検出して大人か子供かを判別する手法を組み合わせてもよい。本手法では、同様に背景画像との差分から抽出した人物領域から身長を求める。例えば、全国の小学校6年生の平均身長、標準偏差から身長160cm以上であれば、大人と判別し、160cm未満であれば子供と判別する。また、全国の高校3年生の女性の平均身長、標準偏差から身長175cm以上であれば、成人男性と判別する。
【0034】
なお、本発明は上記手法のいずれを用いても良く、その他の手法を用いても良い。また、上記手法のそれぞれに重み付けをして組み合わせて用いてもよい。この場合、判別精度を向上することができる。
【0035】
ステップS2にて、ステップS1で搭乗者の外観を判別した結果に基づいて、成人男性の人数、成人女性の人数、子供の人数を判別し、以下の3つの場合に分けてそれぞれ異なる動作を実行する。
【0036】
ステップS2で判別した結果、エレベータかご10内に一人しか乗っていない場合、または成人男性だけが乗っている場合、または成人女性、子供が複数人乗っている場合は、ステップS3にて、制御部22は、記録媒体23に記録されている告知映像を選択する制御信号を映像機能部24に出力する。映像機能部24は、記録媒体23から告知映像を取り出し、表示機能部25に出力する。表示機能部25は受け取った告知映像をモニタ11に表示する。
【0037】
ステップS2で判別した結果、エレベータかご10内に成人女性または子供一人と、他に成人男性を含む3人以上が乗っている場合は、ステップS4にて、制御部22は、記録媒体23に記録されている防犯映像および告知映像を選択する制御信号を映像機能部24に出力する。映像機能部24は、記録媒体23から防犯映像および告知映像を取り出し、表示機能部25に出力する。表示機能部25は受け取った防犯映像および告知映像をモニタ11に表示する。なお、防犯映像と告知映像は、例えば、一定期間毎に交互に切り替えて表示しても良く、画面を分割して同時に表示しても良い。
【0038】
ステップS2で判別した結果、エレベータかご10内に成人女性または子供一人と、成人男性一人が乗っている場合は、ステップS5にて、制御部22は、記録媒体23に記録されている防犯映像を選択する制御信号を映像機能部24に出力する。映像機能部24は、記録媒体23から防犯映像を取り出し、表示機能部25に出力する。表示機能部25は受け取った防犯映像をモニタ11に表示する。すなわち、このときモニタ11には常時防犯映像が表示される。
【0039】
なお、防犯映像としては記録媒体23に記録された防犯映像のみならず、監視カメラ30で撮影されたかご内映像をさらに表示しても良く、防犯映像としてかご内映像のみを表示しても良い。同様に、告知映像を表示する場合は一般商品の広告映像を表示しても良い。
【0040】
以上のように、エレベータ内の状況に応じて、防犯情報、一般情報をモニタ11に表示することができ、情報の提供効率を向上することができる。また、防犯動作を必要とするときは、防犯映像がモニタ11に表示されるので、他の人に遠慮して自ら防犯動作を起こせなくとも構わない。
【0041】
なお、本実施の形態では子供と成人女性を保護対象とみなしているが、これに限らず、例えば、70才以上の人を保護対象とみなす態様であってもよい。
【0042】
なお、本実施の形態で述べた判別基準は一例であって、例えば、エレベータを主に利用する搭乗者の外観データを、許可を得て登録しておき、当該データから外れる外観を備える人物がエレベータ内にいるときに、防犯動作を行ってもよい。この場合、当該エレベータを主に利用する搭乗者を保護対象とみなしている。
【0043】
なお、本実施の形態では、エレベータかご10内の搭乗者に応じて、防犯映像、告知映像等、異なる表示内容をモニタ11に表示する態様で説明しているが、これに限らない。例えば、エレベータ内の搭乗者に応じて、複数の商品広告を選択的にモニタに表示する態様でも構わない。例えば、エレベータかご10内に子供が多数乗っている場合に、おもちゃの商品広告をモニタ11に表示し、20代の人が多数乗っている場合に、若者向けの商品広告をモニタ11に表示することで、情報提供効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 エレベータかご
11 モニタ
21 映像解析部
22 制御部
24 映像機能部
25 表示機能部
30 監視カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータかご内のかご内映像を撮影する監視カメラと、
前記エレベータかご内に設置された表示部と、
前記かご内映像を解析して、前記エレベータかご内の搭乗者の外観を判別する映像解析部と、
判別結果に基づいて異なる表示内容を前記表示部に表示する映像表示部と
を備え、
前記映像解析部は、前記搭乗者の前記外観から性別毎の人数を判別することを特徴とするエレベータかご内の表示装置。
【請求項2】
前記映像表示部は、前記映像解析部が前記エレベータかご内に男性のみが乗っていると判別したときには、防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1記載のエレベータかご内の表示装置。
【請求項3】
前記映像表示部は、前記映像解析部が前記エレベータかご内に成人女性又は子供が複数人乗っていると判別したときには、防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載のエレベータかご内の表示装置。
【請求項4】
前記映像解析部は、前記搭乗者の前記外観から年齢層別の人数を判別することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置。
【請求項5】
前記映像表示部は、前記判別結果に基づいて、防犯用の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置。
【請求項6】
前記映像解析部は前記エレベータかご内に、予め登録された外観を有する人物以外の人物が居るかどうかを判別し、肯定的な判別がなされたときに前記映像表示部は防犯用の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエレベータかご内の表示装置。
【請求項7】
(a)エレベータかご内の映像を解析して、搭乗者の外観を判別するステップと、
(b)判別結果に基づいて異なる表示内容を表示するステップと
を実行し、
前記ステップ(a)は、エレベータかご内の映像を解析して、前記搭乗者の前記外観から性別毎の人数を判別するステップであることを特徴とすることを特徴とするエレベータかご内の表示方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)において前記エレベータかご内に男性のみが乗っていると判別したときには、前記ステップ(b)において防犯映像以外の前記表示内容を前記表示部に表示することを特徴とする請求項7に記載のエレベータかご内の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−35690(P2013−35690A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194750(P2012−194750)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2006−87140(P2006−87140)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】