説明

エレベータのドア装置

【課題】プーリとベルトとの間に滑りが発生しても、ドアの開閉時間が延びることを抑制しつつ、スムーズにドアを開閉させることのできるエレベータのドア装置を得る。
【解決手段】ドア12a,12bと、ドアモータ30と、第1〜第3プーリ14〜16と、第1〜第3プーリ14〜16に巻き掛けられる無端状の第1及び第2ベルト17,18と、ドアモータ30の回転角度情報を出力するパルス発生器31と、ドア12a,12bを全開位置及び全閉位置の一方から他方に移動させる際、ドアモータ30の実回転角度を演算し、実回転角度が基準回転角度より大きい場合、次にドア12a,12bを上記全開位置及び全閉位置の一方から他方まで移動させるときに、ドア12a,12bを減速させるドアモータ30の回転角度を、これまでより、実回転角度と基準回転角だけずらすようにドアモータ30の回転を制御する制御装置34と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアモータの駆動に連動して回転するプーリに巻き掛けられたベルトに連結されて、ドアモータの駆動力により移動して出入り口を開閉するドアを有するエレベータのドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエレベータは、モータと、モータによって回転するプーリに巻き掛けられたベルトと、ベルトに結合されて出入り口を開閉可能に設けられ、モータの回転駆動に連動して開閉動作する戸と、モータの回転に応じてパルスを発生するパルスエンコーダを有し、パルスエンコーダの出力から演算されるモータの回転角度を制御して、戸を所望通りに移動させるドア制御装置と、を備えている。
【0003】
このようなエレベータにおいて、ベルトが緩むと、ベルトとプーリとの間に滑りが発生する。プーリとベルトとの間の滑りが発生した場合、滑りが発生していない場合に比べ、例えば、戸を全開位置から全閉位置に移動させたときのモータの回転角度が大きくなる。従来のエレベータのドア制御装置は、ベルトとプーリとの間の滑りがないことを前提として、モータの回転角度を演算しているので、ベルトとプーリとの間の滑りが発生した場合、実際の戸の位置と、ドア制御装置が認識する戸の位置がずれてしまう。
【0004】
戸を全開位置から全閉位置に移動させる際、ドア制御装置は、戸を所定の速度まで加速させた後、所定位置で戸の減速を開始させて戸を停止させるように制御する。ベルトとプーリとの間の滑りが発生した場合、ドア制御装置は、実際の全閉位置の手前に所定距離だけ離れた位置を全閉位置と認識し、当該位置で戸が略停止させるように戸の移動を制御する。戸が全閉位置に到達したとドア制御装置が判断しても、実際には、戸が全閉位置に達していないため、ドア制御装置は、全閉検出スイッチが動作するまで、戸を極低速で閉方向に移動させるように制御する。この場合、戸が低速で移動する区間が長くなるので、戸の開閉動作が不自然になるとともに、戸の開閉時間が延びてしまう。
【0005】
そこで、モータの回転数を計数し、戸の開閉動作におけるモータの回転数の積算値を正常値と比較して、積算値が所定値よりも大きくなると、言い換えれば、プーリとベルトとの間の滑り量が大きくなると、以降の戸の開閉動作がこれまでより低速で行われるようにモータの駆動を制御する従来のエレベータのドア制御装置が提案されている。
従来のエレベータのドア制御装置では、戸の開閉速度を低速にすることで、プーリとベルトとの間の滑りを抑制して不自然な戸の速度変化を抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−256991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のエレベータのドア制御装置では、戸を低速にして戸を開閉動作することで、不自然な戸の開閉動作が解消されるものの、戸の開閉時間が長時間に及びエレベータの運行効率が低下するという課題が残る。
【0008】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、プーリとベルトとの間に滑りが発生しても、ドアの開閉時間が延びることを抑制しつつ、スムーズにドアを開閉させることのできるエレベータのドア装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のエレベータのドア装置は、出入り口を開閉可能に設けられるドアと、ドアを開閉させる駆動力を発生するドアモータと、ドアモータの回転に連動して回転するプーリと、プーリに巻き掛けられてドアに連結され、プーリの回転に連動させてドアを開閉移動させる無端状のベルトと、ドアモータの回転角度情報を出力する回転情報取得出手段と、回転角度情報からドアの回転角度を検出し、ドアが所望の速度で移動されるようにドアモータを制御可能に構成され、全開位置及び全閉位置の一方から他方にドアを移動させるのに要するドアモータの理論的な基準回転角度が予め格納され、ドアを全開位置及び全閉位置の一方から他方に移動させる際、加速したドアを全閉位置及び全開位置の間の所定位置で減速を開始させて全開位置及び全閉位置の他方で停止させるようにドアモータを制御するとともに、ドアが全開位置及び全閉位置の一方から他方に至るまでのドアモータの回転量である実回転角度を演算し、実回転角度と基準回転角度との差が所定の閾角度より大きい場合、次にドアを全開位置及び全閉位置の一方から他方まで移動させるときに、ドアの減速を開始させるドアモータの回転角度を、これまでより、実回転角度と基準回転角度の差だけ、ドアを全開位置及び全閉位置の他方側に移動させる方向にずらすようにドアモータの回転を制御する制御装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るエレベータのドア装置では、ドアを全開位置及び全閉位置の一方から他方に移動させた場合に、ベルトとプーリとの間の滑りに起因する実回転角度と基準回転角度との差が生じたときに、次のドアの開閉動作において、ドアの減速を開始させるドアモータの回転角度を、これまでより、実回転角度と基準回転角度との差だけずらしている。これにより、ベルトとプーリとの間に滑りが発生しても、全開位置及び全閉位置の一方に至るまでに、ドアが長い距離を不必要に低速で移動することを回避できる。従って、ドアの開閉時間が延びることを抑制しつつ、スムーズにドアを開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係るドア装置を有するエレベータの正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のシステム構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置において、全開位置から全閉位置までドアを移動させる際にドア制御盤が生成する速度指令値を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるドアの速度制御を説明するフロー図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置において、ドアが全開位置から全閉位置に移動されるときにパルス発生器が発するパルスの時間変化を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置において、全開位置から閉方向にドアを移動させている最中に、ドア制御盤がドアの反転指令を受信したときに生成する速度指令値を説明する図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置ドア制御盤によるドアの速度制御を説明するフロー図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置によるドア反転後のドアの速度制御を説明するフロー図である。
【図11】この発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置において、ドアが全開位置から全閉位置に移動されるときにパルス発生器から発生されるパルスの変化を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
【図13】この発明の実施の形態3に係るエレベータのドア装置によるドア反転後のドアの速度制御を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るドア装置を有するエレベータの正面図、図2はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のシステム構成図である。
【0014】
図1及び図2において、エレベータのドア装置1は、図示しない昇降路を昇降自在に設けられたかご10の出入り口11を開閉するドア12a,12bと、ドア12a,12bを駆動する駆動力を発生するドアモータ30と、ドアモータ30の回転角度情報を取得する回転情報取得手段としてのパルス発生器31と、ドア制御盤35及びエレベータ制御盤36を有し、所望の速度指令値通りにドア12a,12bが開閉されるようにドアモータ30の回転を制御する制御装置34と、を備えている。
【0015】
また、ドア装置1は、出入り口11の間口方向に垂直かつ水平な軸周りに回転自在に出入り口11の上方でかご10に支持された第1プーリ14と、第1プーリ14に同軸に設けられた第2プーリ15と、第2プーリ15の軸に平行な軸まわりに回転自在に、第2プーリ15と出入り口11の間口方向に離間してかご10に設けられた第3プーリ16と、第2プーリ15及び第3プーリ16に巻き掛けられる無端状の第1ベルト17と、ドアモータ30の駆動力を第1プーリ14に伝達する無端状の第2ベルト18と、を備えている。なお、第2プーリ15の直径は第1プーリ14の直径より小径であり、第1プーリ14及び第2プーリ15とで減速機を構成する。
【0016】
さらに、ドア装置1は、一方のドア12aの上部に取り付けられたカム19と、ドア12aが全開位置にあるときにカム19に係合して動作するようにかご10に取り付けられた全開検出スイッチ22と、ドア12aが全閉位置にあるときにカム19に係合して動作するようにかご10に取り付けられた全閉検出スイッチ23と、を備えている。
【0017】
以下、ドア装置1の各構成の詳細について説明する。
ドア12a,12bは、横引き式の二枚両引きドアであり、出入り口11の上方で、出入り口11の間口方向に延在するようにかご10に設けられたドアレール13に出入り口11を開閉可能に吊り下げられている。
【0018】
また、ドアモータ30は、かご10の上部に設けられている。
そして、ドアモータ30の駆動に連動して第2ベルト18が走行されると第1プーリ14が回転される。また、第1プーリ14の回転に連動して第2プーリ15が回転され、これにより第1ベルト17が走行するとともに、第3プーリ16も回転される。
このとき、ドア12a,12bが、互いに逆方向に移動するように第1ベルト17に連結されている。第1ベルト17の回転方向の正逆が入れ替わることで、出入り口11がドア12a,12bにより開閉される。
【0019】
また、パルス発生器31は、ドアモータ30の回転角度に応じた回転角度情報としてのパルスを出力するようにドアモータ30に取り付けられている。パルス発生器31からは、ドアモータ30の回転角度に比例した数のパルスが出力される。
【0020】
また、ドア制御盤35は、かご10の上部に設けられ、図2に示されるように、各種演算を行うCPU35a、各種データを一時的に記憶する記憶領域を有し、CPU35aの演算処理時にワーキングスペースに使用されるRAM35b、及びCPU35aに演算させる各種プログラムが格納されたROM35c、外部との信号のやりとりを介在するインターフェイス回路35d(I/F回路35d)、及びCPU35aが後述の速度指令値とドアモータ30の回転速度から演算したトルク指令値に基づいてドアモータ30の回転を制御するためのモータ駆動回路35eなどを備えている。
【0021】
また、エレベータ制御盤36は、例えば、エレベータの図示しない機械室に設けられ、ドア制御盤35と同様に、CPU36a、RAM36b、ROM36c、及びI/F回路36dを備えている。
次いで、エレベータのドア装置1のシステム構成について説明する。
図2において、ドア制御盤35とエレベータ制御盤36とがインターフェイス回路35d,36dを介して通信可能に接続されている。
【0022】
また、全開検出スイッチ22、全閉検出スイッチ23、及びパルス発生器31が、ドア制御盤35に接続され、ドア制御盤35には、インターフェイス回路35dを介して全開検出スイッチ22と全閉検出スイッチ23の出力、及びパルス発生器31から出力されるパルスが入力される。
これにより、ドア制御盤35及びエレベータ制御盤36は、ドア12a,12bが全開位置及び全閉位置にあることを認識可能となる。
【0023】
また、第1〜第3プーリ14〜16と第1及び第2ベルト17,18との間の滑りが無い状態であれば、ドアモータ30の回転角度はドア12a,12bの移動量に比例する。これにより、ドア制御盤35は、パルス発生器31が発するパルスの時間変化及び数からドア12a,12bの現在の速度及び開閉方向の位置を演算可能である。
【0024】
以上のように構成されたドア装置1では、制御装置34によりドア12a,12bの開閉が以下のように行われる。エレベータ制御盤36は、必要に応じてドア12a,12bの戸開指令または戸閉指令をドア制御盤35に送信する。戸閉指令及び戸開指令を受信したドア制御盤35は、所望の速度でドア12a,12bの開閉制御を行わせるための速度指令値を生成し、速度指令値通りにドア12a,12bが開閉移動されるようにドアモータ30を駆動する。より具体的には、ドア制御盤35は、受信されるパルスの時間変化から演算した、言い換えれば、ドアモータ30の回転角度の時間変化から演算したドア12a,12bの現在の速度と速度指令値との差をなくす方向にドアモータ30が回転されるようにドアモータ30の回転を制御するためのトルク指令値を演算して、モータ駆動回路35eに出力する。そして、モータ駆動回路35eが、トルク指令値に基づいてドアモータ30の回転を制御する。このように、ドアモータ30の回転が制御されて、ドア12a,12bが速度指令値通りの速度で開閉される。以下、このようなドア制御盤35によるドア12a,12bの速度制御を、速度指令値に基づいた速度制御とする。
【0025】
また、ドア制御盤35は、以下に説明するように、第1及び第2ベルト17,18の緩みを検出する。ドア制御盤35は、この第1及び第2ベルト17,18の緩み量が、緊急を要さずとも、張力を調整するのが好ましい量まで達したときに、第1及び第2ベルト17、18の張力調整時期が到来したことを知らせるベルト調整促進信号を生成してエレベータ制御盤36に送信し、第1及び第2ベルト17,18の緩み量が緊急に張力の調整を要する量に達したときに、ベルト異常信号を生成してエレベータ制御盤36に送信する。
【0026】
ドア制御盤35は、ベルト調整促進信号及びベルト異常信号を生成すると、第1及び第2ベルト17,18の緩みに応じて生成した速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を行う。
【0027】
以下、ドア制御盤35が、全開位置から全閉位置へドア12a,12bを移動させる場合の制御について具体的に説明する。
【0028】
まず、ドア制御盤35による第1及び第2ベルト17,18の緩みの検出について説明する。
図3はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
なお、図3では、説明の便宜上、ステップ101〜ステップ108をS101〜S108とする。
初期状態として、ドア12a,12bは全開位置に停止されて、全開検出スイッチ22から出力される信号はONであり、パルスの計数の初期値が0にセットされているものとする。
【0029】
ステップ101で、ドア制御盤の35CPU35aは、全開検出スイッチ22の出力がOFFになった否か、言い換えれば、ドア12a,12bの閉動作が開始されたか否かを判断する。CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されていないと判断すると、ステップ101を繰り返す。
ステップ101で、CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されたと判断すると、パルス発生器31から受信されるパルスの計数を開始する(ステップ102)。
【0030】
ステップ103で、CPU35aは、全閉検出スイッチ23の出力がONになったか否か、言い換えればドア12a,12bが全閉されたか否かを判断する。
ステップ103で、CPU35aは、ドア12a,12bが全閉されていないと判断すると、ステップ103を繰り返す。
【0031】
ステップ103で、CPU35aは、ドア12a,12bが全閉されたと判断すると、計数したパルスの数P(実パルス数P)から以下に説明する理論基準パルス数P0を引いた値が、第1閾数Pc1より大きいか否かを比較する(ステップ104)。
理論基準パルス数P0は、全開位置及び全閉位置の一方から他方にドア12a,12bを移動させるのに必要なドアモータ30の理論的な回転角度(基準回転角度)だけドアモータ30を回転させたときに、パルス発生器31から発生されるパルスの数である。
実パルス数P−理論基準パルス数P0は、第1及び第2ベルト17,18の第1〜第3プーリ14〜16に対する滑り量に比例する数であり、実パルス数P−理論基準パルス数P0の演算は、第1及び第2ベルト17,18の第1〜第3プーリ14〜16に対する滑り量を演算していることに相当する。
【0032】
なお、理論的な回転角度とは、第1及び第2ベルト17,18が、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間に滑りが発生しないように適切な張力に調整された状態で、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させたときの回転角度をいう。
ROM35cには、理論基準パルス数P0が予め格納されている。これは、基準回転角度が予め格納されているともいえる。
【0033】
ここで、第1及び第2ベルト17,18が緩み、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間に滑りが生じると、滑りが生じていない場合に比べ、ドア12a,12bを同じ距離だけ移動させるのに、第1及び第2ベルト17,18が滑った分だけ、余計にドアモータ30を回転させることになる。このとき、基準回転角度だけドアモータ30を回転させたときには、ドア12a,12bが全閉位置に近付いており、この後、極低速でドア12a,12bを移動させる必要がある。
【0034】
第1閾数Pc1は、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期が到来しているか否かを判断するための値であり、エレベータの仕様に応じて適宜設定される。
つまり、第1及び第2ベルト17,18が僅かに緩んで、実パルス数Pと理論基準パルス数P0に差が生じても、基準回転角度だけドアモータ30を回転させた後、基準回転角度と実パルス数P−理論基準パルス数P0(<第1閾数Pc1)に相当する回転角度だけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動が、利用者から極端に不自然に感じられない範囲で設定される。
【0035】
ステップ104で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第1閾数Pc1でないと判断すると、第1及び第2ベルト17,18の緩みは極僅かであると判断してステップ109に進む。
【0036】
ステップ104で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第1閾数Pc1であると判断すると、ステップ105に進む。
ステップ105で、CPU35aは、実パルス数Pから理論基準パルス数P0を引いた値が、第2閾数Pc2より大きいか否かを判断する(ステップ106)。
第2閾数Pc2は、第1及び第2ベルト17,18の張力の調整が緊急に必要か否かの判断値であり、第2閾数Pc2>第1閾数Pc1である。
【0037】
ここで、第1閾数Pc1及び第2閾数Pc2だけパルスを発生させるのに必要なドアモータ30の回転角度を所定の第1閾角度及び第2閾角度とすれば、ステップ104(ステップ105)の制御動作は、全開位置から全閉位置にドア12a,12bを移動させるまでに回転された実際のドアモータ30の回転角度(実回転角度)から基準回転角度を引いた値が、第1閾角度(第2閾角度)より大きいか否かを判断しているのに相当する。
【0038】
そして、ステップ105で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第2閾数Pc2でないと判断すると、言い換えれば、ドアモータ30の実回転角度と基準回転角度との差が第1閾角度より大きく第2閾角度より小さいと判断すると、緊急を要さないまでも、第1及び第2ベルト17,18の張力の調整時期が到来しているものとみなす。そして、CPU35aは、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期が到来したことを知らせるベルト調整促進信号を生成して、エレベータ制御盤36に送信するとともに、RAM35bに設けたベルト調整時期到来フラグをOnとする(ステップ106)。なお、RAM35bに設けたベルト調整時期到来フラグをOnとすることを、生成したベルト調整促進信号を保存するものとして定義する。
【0039】
ステップ105で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第2閾数Pc2であると判断すると、第1及び第2ベルト17,18が大きく緩んだと判断し、第1及び第2ベルト17,18の張力異常を知らせるベルト異常信号を生成してエレベータ制御盤36に送信するとともに、RAM35bに設けたベルト異常フラグをOnとする(ステップ107)。なお、RAM35bに設けたベルト異常フラグをOnとすることを、生成したベルト異常信号を保存するものとして定義する。
【0040】
ステップ108で、CPU35aは、現在のパルス数をRAM35bに格納した後、パルス数を0にリセットして(ステップ109)、第1及び第2ベルト17,18の緩みの検出制御を終了する。
【0041】
次いで、ドア制御盤35が生成する速度指令値について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置において、全開位置から全閉位置までドアを移動させる際にドア制御盤が生成する速度指令値を説明する図である。
【0042】
まず、第1及び第2ベルト17,18の張力が適切に調整された状態(初期状態)でドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させるための速度指令値標準パターンについて説明する。
なお、図4において、時間軸の原点は、ドア12a,12bが、全開位置からの移動を開始する時間としている。
【0043】
図4において、速度指令値標準パターンは、実線で示されるように、全開位置から時間t1まで減速させることなく、ドア12a,12bを加速させる加速パターンと、時間t1からドア12a,12bを漸次減速させて時間t2でドアの速度を略0にさせる減速パターンと、により構成される。また、ドア制御盤35は、時間t2でドア12a,12bが略全閉位置に到達した後、全閉検出スイッチ23の出力に基づいてドア12a,12bの全閉を検出したときに速度指令値0とする。
以降、ドア制御盤35は、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONにするまでは、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に動作させる際、速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を行う。
【0044】
次いで、ドア制御盤35が、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONにした後、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させるための速度指令値補正パターンについて説明する。
速度指令値補正パターンは、上述の加速パターンと減速パターンの間に延長パターンが組み込まれたパターンとして構成されている。
【0045】
延長パターンは、ベルト異常信号またはベルト調整促進信号を生成した前回のドア12a,12bの閉動作時に演算された実パルス数Pと理論基準パルス数P0の差ΔPaに応じた以下に説明する時間Δt1だけ、加速パターンの終了時での速度指令値の大きでドア12a,12bを継続して移動させる速度指令値である。
ここでは、時間Δt1は、ΔPaだけパルスを発生させるためのドアモータ30の回転角度を、加速パターンの終了時での速度指令値でドア12a,12bを移動させるためのドアモータ30の角速度で除した値となる。
【0046】
次いで、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させる際のドア制御盤35によるドア12a,12bの速度制御について図5のフロー図を参照しつつ説明する。
図5はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるドアの速度制御を説明するフロー図である。
なお、図5では、説明の便宜上、ステップ201〜ステップ206をS201〜S206と記載する。
【0047】
ステップ201で、ドア制御盤35のCPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されたか否かを判断する。
【0048】
ステップ201で、CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されていないと判断するとステップ201を繰り返し、ドア12a,12bの閉動作が開始されたと判断すると、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONか否かを判断する(ステップ202)。
ステップ202で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONでない(OFFである)と判断すると、速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を行う(ステップ203)。
ステップ202で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONであると判断すると、速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を行う。
【0049】
ステップ205で、CPU36aは、ドア12a,12bが全閉されたか否かを判断する。
ステップ205でCPU36aは、ドア12a,12bが全閉されていないと判断すると、ステップ205を繰り返す。
ステップ205でCPU36aは、ドア12a,12bが全閉されたと判断すると、ドア12a,12bの速度を0とする速度指令値を出力して(ステップ206)、ドア12a,12bの閉動作の速度制御を終了する。
【0050】
次いで、ドア制御盤35が、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させたときにパルス発生器31が発するパルスの時間変化、言い換えれば、ドア12a,12bの速度変化について説明する。
図6はこの発明の実施の形態1に係るエレベータのドア装置において、ドアが全開位置から全閉位置に移動されるときにパルス発生器が発するパルスの時間変化を示す図である。
【0051】
図6において、ドア制御盤35が、速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御したときに、パルス発生器31が発するパルスの時間変化をパルス計数特性Aとし、速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御したときに、パルス発生器31が発するパルスの時間変化をパルス計数特性Bとする。
なお、パルス計数特性Aは、第1及び第2ベルト17,18の張力を調整した直後の特性であるものとする。
【0052】
パルス計数特性A,Bとも、時間t1までは、同じ曲線となっている。
実線で示されるパルス計数特性Aでは、パルス数がPsdとなった時間t1で、パルス数の時間変化が、その手前の時間領域でのパルス数の時間変化に比べて小さくなる。つまり、パルス数がPsdとなったときに、ドアモータ30の回転速度が減速されており、ドア12a,12bの速度が減速するのがわかる。そして、理論基準パルス数P0で、ドア12a,12bは全閉位置に到達し、パルスの発生がなくなる。
【0053】
一方、破線で示されるパルス計数特性Bでは、延長パターンに従った速度指令値に基づいたドア12a,12bの速度制御が追加されるため、ドアモータ30の回転速度の減速が、実パルス数PがPsd+ΔPaとなった時間t1+Δt1で開始され、これに連動してドア12a,12bの速度が減速するのがわかる。
【0054】
これは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONとされた後に、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置まで移動させるときに、ドア12a,12bの減速を開始させるドアモータ30の回転角度を、以下のように制御していることに相当する。つまり、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONとされた後では、ONとされる前に比べて、実回転角度と基準回転角度の差だけ、ドア12a,12bを全閉位置側に移動させる回転方向にずらしていることに相当する。
【0055】
このとき、ドア12a,12bの減速開始位置のずれ量は、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONを生成する前のドア12a,12bの減速開始位置に比べ、ΔPaだけパルスを発生させるだけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動量だけ全閉位置側にずれる。
【0056】
そして、理論基準パルス数P0+ΔPaになるまで、ドアモータ30を回転させたところで、ドア12a,12bは全閉位置に到達し、パルスの発生がなくなる。
【0057】
Δt1は、ドア12a,12bを減速させる直前の速度に対応する速度で回転するドアモータ30に対して、パルス発生器31がΔPaだけパルス数を発生するのに要する時間に相当する時間である。これは、ドア12a,12bが全閉位置近傍にあるときのドアモータ30の回転速度でΔPaだけパルスを発生させるのに要する時間に比べてはるかに短い。
【0058】
ここで、仮に、第1及び第2ベルト17,18が緩み、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間に滑りが生じた状態で、速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの閉動作を制御した場合を想定する。
【0059】
この場合、ドア制御盤35は、計数した実パルス数Pが、理論基準パルス数P0となったところで、ドアモータ30の回転を略停止するようにドアモータ30の回転を制御するが、前述したように、ドア12a,12bを全閉させるには、ドアモータ30をさらにΔPaだけ回転させる必要がある。また、このときのドア12a,12bの速度を極低速にする必要がある。このため、図6の一点鎖線で示されるように、ΔPaだけドアモータ30を回転させるには、時間Δt1に比べて非常に長い時間Δt1aを要してしまい、ドア12a,12bの移動も不自然となる。例えば、Δt1aは、第1閾数Pc1の設定値にもよるが、数secに及ぶこともある。
【0060】
一方、時間Δt1は、一般的な第1及び第2ベルト17,18の緩みの許容量を鑑みて第1閾数Pc1の値を設定した場合、数百msec以内に収まると想定される。
【0061】
以上、ドア12a,12bを全開位置から全閉位置に移動させる場合のドア制御盤35の制御について説明したが、ドア12a,12bを全閉位置から全開位置に移動させる場合のドア制御盤35の制御も同様である。
【0062】
この実施の形態1によれば、制御装置34のドア制御盤35は、実回転角度と基準回転角度との差が、所定の第1閾角度よりが大きい場合、次回全開位置及び全閉位置の一方から他方までドア12a,12bを移動させるときのドアモータ30の回転の減速開始角度を、これまでより、実回転角度と基準回転角度の差だけ、ドア12a,12bを全開位置及び全閉位置の他方側に移動させる回転方向にずらしている。
【0063】
仮に、実回転角度と基準回転角度との差が第1閾角度より大きい場合に、次回のドア12a,12bの開閉時の減速開始位置をこれまでと同一にした場合、ドア12a、12bが、全開位置及び全閉位置の他方に到達する手前で一旦、ドア12a,12bが停止されるように制御した後、極低速で全開位置及び全閉位置の他方まで、ドア12a,12bを移動させる必要があり、ドア12a,12bの動作も不自然となる。
【0064】
一方、ドア装置1によれば、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間が滑って余分にドアモータ30を回転させる場合でも、余分なドアモータ30の回転に要する時間は、ドア12a,12bを減速させる直前の速度で回転するドアモータ30に対して、パルス発生器31がΔPaだけパルス数を発生するのに要する時間に相当し、短時間で済む。また、減速開始してからはこれまでと同様にドア12a,12bの移動を制御することで、ドア12a及び12bが、略全開位置及び全閉位置の他方に到達する。これにより、全開位置及び全閉位置の他方でドア12a,12bを停止させるのに、低速でドア12a,12bを移動させる距離が不必要に長くなることがなくなるので、ドア12a,12bの開閉時間が延びることを抑制しつつ、スムーズにドア12a,12bを開閉できる。
【0065】
また、ドア制御盤35は、実回動量と基準回転角度との差が所定の第1閾角度より大きい場合に、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期の到来を知らせるベルト調整促進信号を生成するように構成されている。ベルト調整促進信号をエレベータ制御盤36やドア制御盤35に履歴として保存しておけば、エレベータの管理者は、ドア装置1のメンテナンス時に、第1及び第2ベルト17,18が緩んだことを見落とすことなく認識できるので、速やかに第1及び第2ベルト17,18の張力調整作業に入れる。これにより、第1及び第2ベルト17,18の張力が適切な値から大きくずれることを防止できる。
【0066】
また、ドア制御盤35は、実回転角度と基準回転角度との差が第1閾角度より所定量大きな第2閾角度より大きい場合に、第1及び第2ベルト17,18の張力の緊急調整が必要であることを知らせるベルト異常信号を生成するように構成されている。
ベルト異常信号をエレベータの管理室などに発報するように構成しておけば、管理者は、第1及び第2ベルト17,18がさらに緩んで、ドア12a,12bが移動できなるなどする前に第1及び第2ベルト17,18の緩みに対して対処できる。
【0067】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ドア制御盤35が、全開位置及び全閉位置の一方から他方にドア12a,12bを移動させる場合の第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間の滑り量から第1及び第2ベルト17,18の緩みを検出し、第1及び第2ベルト17,18の緩みに応じたドアの速度制御を行うように制御していた。
【0068】
この実施の形態2では、この制御に加えて以下のドア12a,12bの速度制御を追加する。
ドア制御盤35は、全開位置及び全閉位置の一方から他方に移動しているドア12a,12bを反転させて再度全開及び全閉の一方に戻す際に発生する滑り量から第1及び第2ベルト17,18の緩みを検出する。さらに、ドア制御盤35は第1及び第2ベルト17,18の緩み量が、緊急を要さずとも、張力を調整するのが好ましい量まで達したときに、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期が到来したことを知らせるベルト調整促進信号を生成してエレベータ制御盤36に送信し、第1及び第2ベルト17,18の緩み量が緊急に張力の調整を要する量に達したときに、ベルト異常信号を生成してエレベータ制御盤36に送信する。
【0069】
そして、ドア制御盤35は、ベルト調整促進信号及びベルト異常信号の生成有無に応じた速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を行う。
【0070】
以下、ドア制御盤35が行う第1及び第2ベルト17,18の緩みの検出について説明する。
図7はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
なお、図7では、説明の便宜上、ステップ301〜ステップ311をS301〜S311とする。
また、第1ベルト及び第2ベルト17,18の張力は適切に調整されており、ドア12a,12bが全開位置に移動して停止した直後を初期状態とする。
【0071】
ステップ301で、ドア12a,12bの全開を検出したドア制御盤35のCPU35aは、現在のパルス数を、所定のパルス計数開始値にセットする。ここでは、パルス計数開始値は、前述の理論基準パルス数P0とする。また、初期状態におけるドアモータ30の位置を角度基準位置とする。
【0072】
ステップ302で、CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されたか否かを判断する。
ステップ302で、CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されていないと判断すると、ステップ302を繰り返す。
【0073】
ステップ302で、CPU35aは、ドア12a,12bの閉動作が開始されたと判断すると、受信されるパルスの計数を開始する(ステップ303)。
このとき、パルス発生器31から出力されるパルスは、ドアモータ30の回転が正逆いずれかに回転しているときに発せられたかの情報を含んでいる。そして、CPU35aは、例えば、ドアモータ30が正方向に回転しているときに発せられたパルスに対しては、受信したパルスの数だけ現在のパルス数から減算してパルスを計数し、ドアモータ30が逆方向に回転しているときに発せられたパルスに対しては、受信したパルスの数だけ現在のパルス数に加算してパルスを計数する。ここでは、ドアモータ30の回転の正方向は、ドア12a,12bを開動作させるドアモータ30の回転方向とする。
【0074】
ステップ304で、CPU35aは、ドア12a,12bの戸開指令(反転指令)をエレベータ制御盤36から受信したか否かを判断する。
ステップ304で、CPU35aは、戸開指令を受信していないと判断すると、ドア12a,12bが全閉したか否かを判断する(ステップ305)。
【0075】
ステップ305で、ドア12a,12bが全閉していないと判断するとステップ305を繰り返し、ドア12a,12bが全閉されたと判断すると制御を終了する。
【0076】
ステップ304で、CPU35aは、戸開指令を受信したと判断すると、反転したドア12a,12bが全開したか否かを判断する(ステップ306)。
ステップ306で、CPU35aは、ドア12a,12bが全開していないと判断すると、ステップ306を繰り返し、全開したと判断すると、ステップ307に進む。
【0077】
ステップ307で、CPU35aは、実パルス数Pからパルス計数開始値P0を引いた値が、第3閾数Pc3より大きいか否かを判断する。
【0078】
第3閾数Pc3は、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期が到来しているか否かを判断するための値であり、エレベータの仕様に応じて適宜設定される。
例えば、張力調整時期の到来前では、第1及び第2ベルト17,18の緩みは少量であり、ドア12a,12bの開閉動作が、利用者にドア12a,12bから不自然に思われることなく実行できる。つまり、実パルス数P−理論基準パルス数P0<第3閾数Pc3であれば、第1及び第2ベルト17,18の緩みは少量であり、今まで通りのドア12a,12bの速度制御でドア12a,12bの速度を制御しても、今までと略同様にドア12a,12bが移動される。
【0079】
ステップ307で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第3閾数Pc3でないと判断すると、今回のドア12a,12bの移動が、初期状態におけるドア12a,12bの移動と略同様になされたとみなし、制御を終了する。
ステップ307で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第3閾数Pc3である判断すると、ステップ308に進む。
【0080】
ステップ308で、CPU35aは、実パルス数Pから理論基準パルス数P0を引いた値が、第4閾数Pc4より大きいか否かを判断する。
第4閾数Pc4は、第1及び第2ベルト17,18の張力の調整が緊急に必要か否かの判断値であり、第4閾数Pc4>第3閾数Pc3である。なお、第3閾数Pc3及び第4閾数Pc4はROM35cに設けられた記憶領域に予め格納されている。
【0081】
ここで、第3閾数Pc3及び第4閾数Pc4だけパルスを発生させるのに必要なドアモータ30の回転角度を所定の第3閾角度及び第3閾角度より所定量大きな第4閾角度とすれば、ステップ307(ステップ308)の制御は、反転させたドア12a,12bを全開位置で停止させたときのドアモータ30の角度基準位置からのずれ角度が、第3閾角度(第4閾角度)より大きいか否かを判断しているのに相当する。
なお、第1及び第2ベルト17,18は、停止していたドア12a,12bの移動が開始されるときより反転するときの方が滑りやすく、第3閾数Pc3は第1閾数Pc1より大きく、第4閾数Pc4は第2閾数Pc2より大きく設定されている。
【0082】
そして、ステップ308で、CPU35aは、実パルス数P−パルス計数開始値P0>第4閾数Pc4でないと判断すると、ステップ309に進み、実パルス数P−パルス計数開始値P0>第4閾数Pc4であると判断すると、ステップ310に進む。
ステップ309及びステップ310の制御は、ステップ106及びステップ107の制御と同様である。
【0083】
ステップ311で、CPU35aは、現在のパルスの数をRAM35bに保存して、第1及び第2ベルト17,18の張力の判定制御を終了する。
【0084】
次いで、ドア制御盤35が生成する速度指令値について説明する。
図8はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置において、全開位置から閉方向にドアを移動させている最中に、ドア制御盤がドアの反転指令を受信したときに生成する速度指令値を説明する図である。
【0085】
まず、第1及び第2ベルト17,18が張力を適切に調整された状態(初期状態)で、全開位置から閉方向に移動させたドア12a,12bを反転させる場合にドア制御盤35が生成する反転時速度指令値標準パターンについて説明する。
ここでは、ドア制御盤35は、ドア12a,12bの閉動作を開始してから時間t3で反転指令を受信するものとする。
反転指令は、図示しないかご操作盤に設けられた反転用ボタンや、利用者の荷物がドア12a,12bの閉方向側の端部に設けられたセーフティーバーを押し込んだ場合などに発生する。
そして、ドア制御盤35は、時間0から時間t3が経過するまでは、前述の速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいて、ドア12a,12bの速度制御を行う。
【0086】
ドア制御盤35は、反転指令を受信した後、速度指令値標準パターンに代え、以下に説明する反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいて、ドア12a,12bの速度制御を行う。
【0087】
反転時速度指令値標準パターンは、時間t3から時間t4まで、急減速でドア12a,12bを減速させて時間t4でドア12a,12bの速度を0にする急減速パターンと、時間t4で反転したドア12a,12bを時間t5まで閉方向に加速する反転後加速パターンと、時間t5からドア12a,12bを減速させて時間t6でドア12a,12bの速度を略0にする反転後減速パターンと、により構成される。
【0088】
ここで、ドア12a,12bが反転してからドア12a,12bの減速が開始されるまでのドアモータ30の回転角度を減速開始基準角度とする。つまり、反転後加速パターンに従った速度指令値通りにドア12a,12bの速度が変化するようにドアモータ30を回転させたときのドアモータ30の回転量が、減速開始基準角度となる。なお、減速開始基準角度は、ドア12a,12bの反転位置と全開位置との間の距離に応じて設定されるものである。
【0089】
また、ドア制御盤35が、反転指令を受信したときのドアモータ30の回転方向は、ドア12a,12bを閉方向に移動させる方向である。急減速パターンは、反転指令を受信したときに利用者の荷物等がドア12a,12bに挟まれるのを防止するため、急減速でドア12a,12bを反転させる速度指令値のパターンとなる。
【0090】
以降、ドア制御盤35は、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとするまでは、ドア12a,12bを反転させて全開させる場合、同様の速度度指令値パターンを生成する。
【0091】
次いで、ドア制御盤35が、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとした後、移動中のドア12a,12bを反転させてドア12a,12bを全開させる場合に生成する反転時速度指令値補正パターンについて説明する。反転時速度指令値補正パターンは、反転後加速パターンと反転後減速パターンとの間に反転後延長パターンが組み込まれたパターンとして構成されている。
【0092】
反転後延長パターンは、前回、ドア12a,12bを反転させて全閉位置に移動させた時に演算した実パルス数Pとパルス計数開始値の差ΔPbに応じた、言い換えれば、ドアモータ30のずれ角度に応じた以下に説明する時間Δt2だけ、反転後加速パターンの終了時での速度指令値の大きでドア12a,12bを継続して移動させる速度指令値である。
ここでは、時間Δt2は、ずれ角度を、加速パターンの終了時での速度指令値でドアを移動させるためのドアモータ30の角速度で除した値に設定している。
【0093】
また、反転後延長パターンの追加により、反転後に加速したドア12a,12bの減速は、ドア12a,12bが反転されてから、ドアモータ30が、減速開始基準角度に対してずれ角度だけ大きく回転された後に開始される。言い換えれば、ドア12a,12bの減速は、ドア12a,12bが反転されてから、ずれ角度だけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動量だけ減速開始基準移動量より移動したところで開始される。減速開始基準移動量は、減速開始基準角度だけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動量である。
【0094】
次いで、全閉位置に向かって移動させたドア12a,12bを反転させて全開位置に移動させる際の制御装置によるドア12a,12bの速度制御について図9のフロー図を参照しつつ説明する。
図9はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置ドア制御盤によるドアの速度制御を説明するフロー図である。
初期状態として、ドア12a,12bは全開位置にあるものとする。
【0095】
ステップ401〜ステップ404の制御は、ステップ201〜ステップ204の制御と同様である。
ステップ405で、CPU35aは、反転指令を受信したか否かを判断する。
ステップ405でCPU35aは、反転指令を受信していないと判断すると、ドア12a,12bが全閉したか否かを判断する(ステップ406)。
ステップ406で、CPU35aは、ドア12a,12bが全閉していないと判断すると、ステップ405に戻り、ドア12a,12bが全閉したと判断すると、速度を0とする速度指令値を出力して(ステップ407)、ドア12a,12bの閉動作の速度制御を終了する。
ステップ405で、CPU35aは、反転指令を受信したと判断すると、反転後のドア12a,12bの速度制御を実行し(ステップ408)、制御を終了する。
【0096】
以下、反転後のドアの速度制御について図10のフロー図を参照しつつ説明する。
図10はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置によるドア反転後のドアの速度制御を説明するフロー図である。
【0097】
ステップ501で、反転指令を受信したドア制御盤35のCPU35aは、急減速指令値パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度制御を開始させる。
ステップ502で、CPU35aは、ドアモータ30の回転方向は、ドア12a,12bを閉動作させる方向に切り替わったか否か、言い換えればドア12a,12bの移動方向が変わったか否かを判断する。
ステップ502で、CPU35aは、ドア12a,12bの移動方向が変わったと判断すると、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONか否かを判断する(ステップ503)。
【0098】
ステップ503で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONでないと判断すると、反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御する(ステップ504)。
【0099】
ステップ503で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONであると判断すると、反転時速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御する(ステップ505)。
このとき、反転時速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御した場合と反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御した場合とで、ドア12a,12bの反転が開始される位置は、ドアモータ30をずれ角度だけ回転させるときのドア12a,12bの移動量分だけドア12a,12bの開方向側にずれる。ドア12a,12bが反転してから減速が開始される時間の差は、時間Δt2であり、短い時間である。
【0100】
ステップ506で、CPU35aは、ドア12a,12bが全開されたか否かを判断する。
ステップ506で、CPU35aは、ドア12a,12bが全開されていないと判断すると、ステップ506を繰り返し、ドア12a,12bが全開されたと判断すると、速度を0とする速度指令値を出力して(ステップ507)、ドア12a,12bの閉動作の速度制御を終了する。
【0101】
次いで、ドア制御盤35がドア12a,12bの閉動作の速度を制御したときに、パルス発生器31が発するパルスの時間変化、言い換えれば、ドア12a,12bの速度変化について説明する。
図11はこの発明の実施の形態2に係るエレベータのドア装置において、ドアが全開位置から全閉位置に移動されるときにパルス発生器から発生されるパルスの変化を示す図である。
【0102】
ドア12a,12bが反転される位置は、その都度異なるが、以下では、説明の便宜上、反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいて閉動作が制御されていたドア12a,12bと反転時速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいて閉動作が制御されるドア12a,12bが、同じ反転位置で反転される場合について説明する。
【0103】
図11において、ドア制御盤35が、反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御したときにパルス発生器31が発するパルスの時間変化特性をパルス計数特性Cとし、反転時速度指令値補正パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御したときにパルス発生器31が発するパルスの時間変化特性をパルス計数特性Dとする。
なお、パルス計数特性Cは、第1及び第2ベルト17,18の張力を調整した直後の特性であるものとする。
【0104】
パルス計数特性C,Dとも、0から時間t8が経過するまでは、同じ特性で推移し、時間t7でドア12a,12bが反転されているのがわかる。
【0105】
実線で示されるパルス計数特性Cでは、実パルス数PがPsdrとなった時間t8で、パルス数の時間変化が、その手前の時間領域でのパルス数の時間変化に比べて小さくなる。つまり、実パルス数PがPsdrとなったときに、ドアモータ30の回転速度を減速してドア12a,12bを減速させているのがわかる。そして、パルス計数開始値P0で、ドア12a,12bは全開位置に到達し、ドア制御盤35は、パルスを受信しなくなる。
【0106】
一方、破線で示されるパルス計数特性Dでは、反転後延長パターンに従った速度指令値に基づいたドア12a,12bの速度制御が追加されるため、パルス数がPsdr+ΔPbとなった時間t8+Δt2で、ドアモータ30の回転速度の減速が開始され、これに連動してドア12a,12bの減速が開始されているのがわかる。
これは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONとなる前では、ドア12a,12bを反転させた後のドアモータ30の回転角度が、減速開始基準角度に達したところで、ドア12a,12bの減速が開始されるのに対し、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとされた後では、ドア12a,12bを反転させた後のドアモータ30の回転角度が、以下の角度となったところで、ドア12a,12bの減速を開始することを示している。
【0107】
つまり、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとした後では、CPU35aは、ドア12a,12bの反転度のドアモータ30の回転角度が、減速開始基準角度より、ずれ角度だけドア12a,12bを全開位置に移動させる方向にずれたところで、ドア12a,12bの減速を開始している。言い換えると、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとした後では、ドア12a,12bの減速は、減速開始基準移動量より、ずれ角度だけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動量だけ全開位置側に移動したところで開始される。
【0108】
そして、パルス計数開始値P0+ΔPbになるまで、ドアモータ30を回転させたところで、ドア12a,12bは全開位置に到達し、パルスの発生がなくなる。
【0109】
Δt2は、ドア12a,12bを減速させる前のドアモータ30に対して、パルス発生器31がΔPbだけパルスを発生するのに要する時間に相当するので短い時間となる。
【0110】
ここで、仮に、第1及び第2ベルト17,18が緩み、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16との間に滑りが生じた状態で、反転時速度指令値標準パターンに従った速度指令値に基づいてドア12a,12bの閉動作を制御した場合を想定する。
この場合、ドア制御盤35は、計数するパルス数が、理論基準パルス数P0となったところで、ドアモータ30の回転を一旦停止させるようにドアモータ30の回転を制御するが、ドア12a,12bを全閉させるには、ドアモータ30をさらにΔPbだけ回転させる必要がある。このため、図11の一点鎖線で示されるように、ΔPbだけドアモータ30を回転させるには、時間Δt2に比べて極端に長い時間Δt2aを要してしまい、ドア12a,12bの移動も不自然となる。例えば、Δt2aは、第3閾数Pc3の設定値にもよるが、数secに及ぶこともある。
【0111】
一方、時間Δt2は、第1及び第2ベルト17,18の緩みの許容量を一般的な値と考えて、第3閾数Pc3の値を設定した場合、数百msec以内に収まると想定される。
【0112】
なお、これまでのドア12a,12bの速度制御は、閉方向に移動しているドア12a,12bを反転させる場合のものについて説明したが、開方向に移動しているドア12a,12bを反転させる場合のドア12a,12bの速度制御も同様である。
【0113】
この実施の形態2のドア装置1によれば、制御装置34のドア制御盤35が、ドア12a,12bが反転された後に全開位置及び全閉位置の一方に停止したときのドアモータ30の角度基準位置からのずれ角度を演算し、ずれ角度が第3閾角度より大きい場合、次に全開位置及び全閉位置の一方から他方に向かって移動させたドア12a,12bを反転させて全開位置及び全閉位置の一方で停止させるときに、ドア12a,12bを反転させてからのドアモータ30の回転角度が、減速開始基準角度よりずれ角度だけ大きくなったところで、ドア12a,12bの減速を開始させるように構成されている。
【0114】
従って、第1及び第2ベルト17,18と第1〜第3プーリ14〜16の間が滑って余分にドアモータ30を回転させる場合でも、余分なドアモータ30の回転に要する時間は、実施の形態1と同様、ドア12a,12bを減速させる直前の速度に対応する速度で回転するドアモータ30に対して、パルス発生器31がΔPaだけパルス数を発生するのに要する時間に相当し、短時間で済む。
つまり、ドア装置1によれば、第1及び第2ベルト17,18が緩んでも、ドア12a,12bの開閉時間が延びることを抑制しつつ、スムーズにドア12a,12bを開閉できる。
【0115】
また、ずれ角度と第3及び第4角度との間の比較結果に応じて、ベルト調整促進信号、及びベルト異常信号を生成するので、実施の形態1と同様、第1及び第2ベルト17,18の緩みに対してエレベータの管理者が速やかに対応できる。
【0116】
実施の形態3.
この実施の形態3では、反転動作を含むドア12a,12bの速度の制御を、実施の形態2のものに代えたものとしている。
【0117】
ここで、ドア12a,12bが反転直前の速度は、ドア12a,12bの反転位置により異なり、反転前後で発生する第1及び第2ベルト17,18の第1〜第3プーリ14〜16に対する滑り量は、反転直前の速度が速い程大きくなる。ドア12a,12bの速度は一定でないので、第1及び第2ベルト17,18が緩んだ後、例えば、全開位置から閉動作させたドア12a,12bを反転させて再度全閉位置に移動させて停止させたとき、実パルス数とパルス計数開始値P0との差ΔPbは、ドア12a,12bの反転位置により異なることになる。
【0118】
この実施の形態3では、全閉位置から全開位置に至るドア12a,12bの移動領域を、複数の分割領域に区分し、ドア12a,12bがどの分割領域内で反転したかを見分け、ドア12a,12bの反転位置を含む分割領域に応じてドア12a,12bの速度制御を行うものである。
ここでは、表1に示されるように、ドア12a,12bの移動領域を、例えば、3つの分割領域に区分している。
【0119】
【表1】

【0120】
表1において、番号0,1,2が、3つの分割領域のそれぞれに割り振られている。
第1及び第2ベルト17,18の張力が調整された直後の初期状態において、ドア12a,12bが全開位置から全閉位置に移動させたときに計数される実パルス数Pが、P0から0に変化するものとする。
そして、分割領域(0)は、実パルス数Pが、0(全閉)≦P<P1の範囲をとるときのドア12a,12bの移動領域に相当し、分割領域(1)は、実パルス数Pが、P1≦P<P2の範囲をとるときのドア12a,12bの移動領域に相当し、分割領域(2)は、パルス数がP2≦P≦P0(全開)の範囲をとるときのドア12a,12bの移動領域に相当している。
【0121】
そして、分割領域(0)〜(2)に対し、第3閾数Pc3(0)〜Pc3(2)、第4閾数Pc4(0)〜Pc4(2)、及びずれ角度D(0)〜D(2)が設定されている。これらの値は、はROM35cに設けられた記憶領域に予め格納されている。
【0122】
前述したように、第3閾数Pc3(0)〜Pc3(2)は、第1及び第2ベルト17,18の張力調整時期が到来しているか否かを判断するための値であり、第4閾数Pc4(0)〜第4閾数Pc4(2)は、第1及び第2ベルト17,18の張力の調整が緊急に必要か否かの判断値である。
【0123】
また、前述したように、反転時に発生する第1及び第2ベルト17,18の第1〜第3プーリ14〜16に対する滑り量は、反転直前の速度が速い程大きくなる。例えば、ドア12a,12bの全開位置の近傍でドア12a,12bが反転した場合には、ドア12a,12bの速度は低速であり、第1及び第2ベルト17,18が緩んでいても第1及び第2ベルト17,18の滑り量は小さい。
【0124】
そこで、各分割領域で反転するドア12a,12bの反転直前の速度を比べたときに、速度の大きな分割領域に対応する第3閾数Pc3(0)〜Pc3(2)ほど大きくなるように設定している。これにより、どの分割領域でドア12a,12bが反転しても、第1及び第2ベルト17,18がおおよそ同じ量だけ緩んでいることを検出可能になる。
【0125】
同様に、第4閾数Pc4(0)〜Pc4(2)も、ドア12a,12bの反転直前の速度が大きくなる分割領域に対応するもの程大きくなるように設定している。
【0126】
また、ずれ角度D(0)〜D(2)のそれぞれの初期値D〜Dは、Pc3(0)〜Pc3(2)に相当するパルス数だけ、パルスを発生させるのに必要なドアモータ30の回転角度に設定されている。ずれ角度D(0)〜D(2)のそれぞれの初期値は、第1及び第2ベルト17,18を、予め、第1及び第2ベルト17,18の許容される緩みの最大値まで緩ませた状態で、実際に各分割領域(0)〜(2)の所定位置でドア12a,12bを反転させて測定したずれ角度の値を採用している。
【0127】
以下、ドア制御盤35が行う第1及び第2ベルト17,18の緩みの検出について説明する。
図12はこの発明の実施の形態3に係るエレベータのドア装置のドア制御盤によるベルトの緩み検出を説明するフロー図である。
なお、図12では、説明の便宜上、ステップ601〜ステップ612をS601〜S612とする。
ドア12a,12bが全閉位置に移動して停止した直後を初期状態とする。
【0128】
ステップ601〜ステップ605の制御は、ステップ301〜ステップ305の制御と同様である。
【0129】
ステップ606で、ドア制御盤35のCPU35aは、ドア12a,12bの反転位置を含む分割領域(X(Xは0〜2のいずれか))を選択してステップ607に進む。
【0130】
ステップ607の制御は、ステップ306の制御と同様である。
【0131】
ステップ608で、CPU35aは、パルス計数開始値P0から実パルス数Pを引いた値が、選択された分割領域(X)に関連付けされた第3閾数Pc3(X)より大きいか否かを判断する。
ステップ608で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第3閾数Pc3(X)でないと判断すると、今回のドア12a,12bの動作が、初期状態におけるドア12a,12bの動作と略同様であるとみなし、制御を終了する。
ステップ608で、CPU35aは、実パルス数P−理論基準パルス数P0>第3閾数Pc3(X)であると判断すると、ステップ609に進む。
【0132】
ステップ609で、CPU35aは、計数した実パルス数Pから理論基準パルス数P0を引いた値が、選択された分割領域(X)に関連付けされた第4閾数Pc4(X)より大きいか否かを判断する。
【0133】
ここで、第3閾数Pc3(X)及び第4閾数Pc4(X)だけパルスを発生させるのに必要なドアモータ30の回転角度を所定の第3閾角度及び第3閾角度より所定量大きな第4閾角度とすれば、ステップ608(ステップ609)の制御は、反転したドア12a,12bが全開位置に戻った際のドアモータ30の角度基準位置からのずれ角度が、第3閾角度(第4閾角度)より大きいか否かを判断しているのに相当する。
【0134】
そして、ステップ609で、CPU35aは、実パルス数P−パルス計数開始値P0>第4閾数Pc4(X)でないと判断すると、ステップ610に進み、実パルス数P−パルス計数開始値P0>第4閾数Pc4(X)であると判断すると、ステップ611に進む。
ステップ610及びステップ611の制御は、ステップ106(309)及びステップ107(310)の制御と同様である。
ステップ612で、CPU35aは、選択した分割領域(X)に対応するずれ角度D(X)に、実パルス数P−パルス計数開始値P0から演算されるずれ角度を上書きする。
以上により第1及び第2ベルト17,18の緩みの判定制御が終了する。
【0135】
次いで、ドア制御盤35が、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグをONとした後、次回ドア12a,12bを反転させてドア12a,12bを全開させる際に生成する反転時速度指令値補正パターンについて説明する。
【0136】
ドア制御盤35は、基本的には実施の形態2で図8を用いて説明した反転時速度指令値補正パターンに従った速度指令値を生成する。
ここで、実施の形態2では、Δt2は、前回のドアを反転させて全閉位置に移動させた時に演算したドアモータ30のずれ角度を、反転時加速パター終了時の速度指令値でドア12a,12bを移動させるためのドアモータ30の角速度で除した値となっていた。
【0137】
この実施の形態3では、Δt2は、今回のドア12a,12bの反転動作での反転位置を含む分割領域が、ベルト調整促進信号、またはベルト異常信号が生成された前回のドア12a,12bの反転動作での反転位置を含む分割領域と一致する場合には、実施の形態2と同様の値であり、一致しない場合には、以下のような値となる。
【0138】
例えば、前回選択された分割領域が、分割領域(2)であり、今回選択された分割領域が分割領域(1)である場合、Δt2は、ずれ角度D(1)に設定されている回転角度を、反転時加速パターン終了時での速度指令値でドア12a,12bを移動させるためのドアモータ30の角速度で除した値としている。今回、初めて分割領域(2)が選択された場合には、ずれ角度として、初期値Dが採用される。
【0139】
いずれにせよ、反転後延長パターンの追加により、ドア12a,12bが反転されてから、ドアモータ30が、減速開始基準角度より、選択されたずれ角度だけ多く回転されたところで、ドア12a,12bの減速が開始される。
【0140】
全閉位置に向かって移動させたドア12a,12bを反転させて全開位置に移動させる際の制御装置34によるドア12a,12bの速度制御は、図9のフロー図と同様であるが、ステップ408で説明した反転後のドア12a,12bの速度制御の内容が異なる。
以下、反転後のドア12a,12bの速度制御について説明する。
図13はこの発明の実施の形態3に係るエレベータのドア装置によるドア反転後のドアの速度制御を説明するフロー図である。
なお、図13では、説明の便宜上、ステップ701〜ステップ708をS701〜S708とする。
【0141】
ステップ701で、ドア制御盤35のCPU35aは、ドア12a,12bの反転位置を含む分割領域(X)を選択してRAM36bに保存する。
ステップ702〜ステップ704の制御は、ステップ501〜ステップ503の制御と同様である。
【0142】
ステップ704で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONでないと判断すると、反転時速度指令値標準パターンの速度指令値に基づいてドア12a,12bの速度を制御する(ステップ705)。
【0143】
ステップ704で、CPU35aは、ベルト調整時期到来フラグまたはベルト異常フラグがONであると判断すると、ドアモータ30が、減速開始基準角度より、選択した分割領域(X)に対応するずれ角度D(X)だけ大きく回転したときに、ドア12a,12bの減速を開始させる反転時速度指令値補正パターンを生成する。そして、ドア制御盤35は、当該速度指令値に基づくドア12a,12bの速度制御を開始する(ステップ706)。
【0144】
これは、ドア制御盤35が、前回のドア12a,12bの反転動作で、調整促進信号またはベルト異常信号を生成した場合、今回ドア12a,12bを反転させてからのドアモータ30の回転角度が、今回のドア12a,12bの反転位置に応じて設定される減速開始基準角度より、ドア12a,12bを全開位置に移動させる回転方向にずれ角度だけずれたところで、ドア12a,12bの減速が開始されるようにドアモータ30の回転制御を行っていることに相当する。言い換えれば、今回のドア12a,12bの反転位置を含む分割領域(X)に関連付けられて格納されたずれ角度だけドアモータ30を回転させたときのドア12a,12bの移動量だけ、減速開始基準移動量より全開位置側にドア12a,12bが移動したところで、ドア12a,12bの減速を開始させるようにドアモータ30の回転制御を行っていることに相当する。
【0145】
ステップ707及びステップ708の制御は、ステップ506及びステップ507と同様である。
【0146】
この実施の形態3のドア装置によれば、制御装置34のドア制御盤35が、第1及び第2ベルト17,18の緩み判定の基準に用いられる第3閾数Pc3(0)〜Pc3(2)及び第4閾数Pc4(0)〜Pc4(2)を分割領域のそれぞれに関連付けして格納する記憶領域を有している。そして、ドア制御盤35は、反転動作を含む今回のドア12a,12bの開閉動作後に演算したずれ角度が、ドア12a,12bの反転位置を含む分割領域に対応する第3閾角度より大きい場合、次にドア12a,12bの反転を含む開閉動作を行わせるときに、前回のドア12a,12bの反転位置ではなく、今回のドア12a,12bの反転位置を含む分割領に関連付けされて格納されたずれ角度だけ、減速開始基準角度より大きくドアモータ30が回転したときに、ドア12a,12bの減速を開始するように制御している。
【0147】
従って、ドア12a,12bの反転位置に応じて、第1及び第2ベルト17,18の緩みを反転するための適切な判定基準値に設定した第3閾数Pc3(0)〜Pc3(2)及び第4閾数Pc4(0)〜Pc4(2)を用いて、第1及び第2ベルト17,18の緩みを判断できる。また、前回のドア12a,12bの反転位置ではなく、今回のドア12a,12bの反転位置に応じたずれ角度だけ、反転後に加速したドア12a,12bを減速させるためのドアモータ30の回転角度をずらしているので、ドア12a,12bの減速開始位置がより適切な場所に設定される。従って、実施の形態2よりも、一層ドア12a,12bを開閉時間が延びるのを防止しつつスムーズにドア12a,12bの移動を行うことができる。
また、ずれ角度とドア12a,12bの反転位置を含む分割領域に関連付けされた第3及び第4閾角度との間の比較結果に応じて、ベルト調整促進信号、及びベルト異常信号を生成するので、実施の形態1と同様、第1及び第2ベルト17,18の緩みに対してエレベータの管理者が速やかに対応できる。
【符号の説明】
【0148】
1 エレベータ、11 出入り口、12a,12b ドア、14〜16 プーリ、30 ドアモータ、34 制御装置、17,18 ベルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口を開閉可能に設けられるドアと、
上記ドアを開閉させる駆動力を発生するドアモータと、
上記ドアモータの回転に連動して回転するプーリと、
上記プーリに巻き掛けられて上記ドアに連結され、上記プーリの回転に連動させて上記ドアを開閉移動させる無端状のベルトと、
上記ドアモータの回転角度情報を出力する回転情報取得出手段と、
上記回転角度情報から上記ドアの回転角度を検出し、上記ドアが所望の速度で移動されるように上記ドアモータを制御可能に構成され、全開位置及び全閉位置の一方から他方に上記ドアを移動させるのに要する上記ドアモータの理論的な基準回転角度が予め格納され、上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方から他方に移動させる際、加速した上記ドアを上記全閉位置及び全開位置の間の所定位置で減速を開始させて上記全開位置及び全閉位置の他方で停止させるように上記ドアモータを制御するとともに、上記ドアが上記全開位置及び全閉位置の一方から他方に至るまでの上記ドアモータの回転量である実回転角度を演算し、上記実回転角度と上記基準回転角度との差が所定の閾角度より大きい場合、次に上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方から他方まで移動させるときに、上記ドアの減速を開始させる上記ドアモータの回転角度を、これまでより、上記実回転角度と上記基準回転角度の差だけ、上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の他方側に移動させる方向にずらすように上記ドアモータの回転を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするエレベータのドア装置。
【請求項2】
上記制御装置は、上記実回動角度と上記基準回転角度との差が、所定の第1閾角度より大きい場合に、上記ベルトの張力調整時期の到来を知らせるベルト調整促進信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア装置。
【請求項3】
上記制御装置は、上記実回転角度と上記基準回転角度との差が、上記第1閾角度より所定量大きな所定の第2閾角度より大きい場合に、上記ベルトの張力の緊急調整が必要であることを知らせるベルト異常信号を生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータのドア装置。
【請求項4】
上記制御装置は、上記ベルトの張力が適切な状態にあるときに上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方に停止させた上記ドアモータの位置を角度基準位置とし、上記全開位置及び全閉位置の一方から他方に向けて移動する上記ドアを反転させて上記全開位置及び全閉位置の一方で停止させたときの上記ドアモータの上記角度基準位置からのずれ角度を格納する記憶領域を有し、移動中の上記ドアを反転させ、上記全開位置及び全閉位置の一方に停止させる場合、上記ドアを反転させた後の上記ドアモータの回転角度が、上記ドアの反転位置と上記ドアの上記全開位置及び全閉位置の一方との間の距離に応じて設定される減速開始基準角度となったところで、反転後に加速した上記ドアの減速を開始させ、上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方で停止させるように上記ドアモータを制御するとともに、演算した上記ずれ角度が所定の閾角度より大きい場合、次に移動中の上記ドアを反転させて上記全開位置及び全閉位置の一方で停止させるときに、上記ドアを反転させてからの上記ドアモータの回転角度が、上記減速開始基準角度より上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方に移動させる回転方向に上記ずれ角度だけずれたところで、上記ドアの減速を開始させるように上記ドアモータの回転を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項5】
上記制御装置は、上記ずれ角度が所定の第3閾角度より大きい場合に、上記ベルト調整促進信号を生成することを特徴とする請求項4に記載のエレベータのドア装置。
【請求項6】
上記制御装置は、上記ずれ角度が上記第3閾角度より所定量大きな第4閾角度より大きい場合に、上記ベルト異常信号を生成することを特徴とする請求項5に記載のエレベータのドア装置。
【請求項7】
上記制御装置は、上記ドアを上記全開位置と上記全閉位置との間の上記ドアの移動領域を区分して複数の分割領域として認識し、かつ上記ベルトの張力が適切な状態にあるときに上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方に停止させた上記ドアモータの位置を角度基準位置とし、上記全開位置及び全閉位置の一方から他方に向けて移動する上記ドアを反転させて上記全開位置及び全閉位置の一方に停止させたときの上記ドアモータの上記角度基準位置からのずれ角度、及び上記ベルトの緩み判定の基準に用いられる所定の閾角度を上記分割領域のそれぞれに関連付けして格納する記憶領域を有し、移動中の上記ドアを反転させて上記全開位置及び全閉位置の一方に停止させる場合、上記ドアを反転させた後の上記ドアモータの回転角度が、上記ドアの反転位置と上記ドアの上記全開位置及び全閉位置の一方との間の距離に応じて設定される減速開始基準角度となったところで、反転後に加速した上記ドアの減速を開始させ、上記ドアの上記全開位置及び全閉位置の一方で停止させるように上記ドアモータを制御するとともに、上記ずれ角度を演算して上記ドアの反転位置を含む上記分割領域に関連づけして格納し、演算した上記ずれ角度が上記閾角度より大きいと判断すると、次に上記全開位置及び全閉位置の一方から他方に向かって移動させた上記ドアを反転させて上記全開位置及び全閉位置の一方で停止させるときに、上記ドアを反転させてからの上記ドアモータの回転角度が、上記減速開始基準移角度より、上記ドアを上記全開位置及び全閉位置の一方に移動させる回転方向に、上記反転位置を含む分割領域に関連付けされた上記ずれ角度だけずれたところで、上記ドアの減速を開始させるように上記ドアモータの回転を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータのドア装置。
【請求項8】
上記制御装置は、上記ずれ角度が、今回の上記ドアの反転位置を含む分割領域に対応する記憶領域に関連付けされて格納されている第3閾角度より大きい場合に、上記ベルト調整促進信号を生成することを特徴とする請求項7に記載のエレベータのドア装置。
【請求項9】
上記制御装置には、上記ずれ角度が、今回の上記ドアの反転位置を含む分割領域に対応する記憶領域に関連付けされて格納されている上記第3閾角度より所定量大きな第4閾角度より大きい場合に、上記ベルト異常信号を生成することを特徴とする請求項8に記載のエレベータのドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−20865(P2012−20865A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161613(P2010−161613)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】