説明

エレベータの乗場出入口の安全装置

【課題】乗場出入口に配置した支持部から近接規制部を昇降路と逆側に延在させて、第三者が乗場出入口に入り込むのを抑制するエレベータの乗場出入口の安全装置を得る。
【解決手段】昇降路32に開口する乗場出入口33を有する乗場30を備えるエレベータの乗場出入口33に保持される支持部2と、支持部2から昇降路32とは逆側に向かって延出される近接規制部15とを備え、乗場出入口33への第3者の侵入を抑制することが可能なようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、乗場出入口の保守時に、第三者が乗場出入口に入り込むのを抑制するためのエレベータの乗場出入口の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの点検作業表示装置は、出入口を構成する三方枠の縦枠間を渡すように設けられる棒状体と、棒状体に設けられる表示幕とを備え、例えば、乗場に関わる保守作業を実施する際には、表示幕を用いて乗場にいる第三者に注意喚起を促すようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−12251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、棒状体は、出入口に設けられるため、第三者が、出入口までの移動を規制されずに入り込むことが可能であり、例えば、乗場ドアが開いているときには、乗場にいる第三者が落とした荷物が乗場出入口を介して昇降路内に落下する恐れがある。
【0005】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、乗場出入口に配置した支持部から近接規制部を昇降路と逆側に延在させて、第三者が乗場出入口に入り込むのを抑制するエレベータの乗場出入口の安全装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のエレベータの乗場出入口の安全装置は、エレベータの乗場出入口内に設けられて保持される支持部と、支持部から昇降路とは逆側に向かって延出される近接規制部とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエレベータの乗場出入口の安全装置によれば、近接規制部が乗場出入口から昇降路と離れる側に突出されているので、第三者の乗場出入口への侵入を抑制する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置の斜視図である。
【図2】図1のA方向から見た側面図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が乗場出入口に設けられたエレベータの乗場まわりの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置の斜視図、図2は図1のA方向から見た側面図である。
【0011】
図1及び図2において、エレベータの乗場出入口の安全装置1(以下、乗場出入口の安全装置1とする)は、一対の支持部2と、一対の支持部2を連結する一対の連結手段10と、支持部2から延出される一対の近接規制部15と、近接規制部15に支持される表示部材取付手段18と、表示部材取付手段18を介して近接規制部15に支持される表示部材としての表示幕20とを備えている。
【0012】
各支持部2は、伸縮自在に構成された長尺の支持本体部4、及び支持本体部4を伸長させる方向に付勢する図示しない取付保持手段としてのばねを有する伸縮体3と、支持本体部4の両端に固定される係合部6とを備えている。伸縮体3は、以下に説明するように、上記特許文献1に記載されている棒状体と同様の構成である。
【0013】
支持本体部4は、それぞれ一端側の開口を塞口する底部を有する一対の有底円筒体4a,4bにより構成されている。一対の有底円筒体4a,4bは、僅かに異なる直径を有し、底部の内壁面を相対させ、開口側を互いに嵌め合わされている。
【0014】
また、ばねが、一対の有底円筒体4a,4bの底部の内壁面間に設けられている。支持本体部4は、一対の有底円筒体4a,4bを、その筒部の重なりが大きくなるようにばねの弾性力に抗して互いに押し込むことで短くなり、押し込み力を解放することで元の長さに戻るようになっている。即ち、支持本体部4は、両端間の長さを可変可能になっている。
【0015】
なお、押し込み力を解放したときの支持本体部4の長さは、後述のエレベータの乗場出入口の間口方向の幅より長い。即ち、支持本体部4の長さを乗場出入口の間口方向の幅と同じ長さにしたときには、ばねの弾性力は、所定の力で、支持本体部4を伸ばす方向に付勢するように、相対する有底円筒体4a,4bの底部の間に縮設されている。
【0016】
また、係合部6は、互いに直交する押圧片6a及び移動規制片6bからなるL字状に形成されている。一対の係合部6が、移動規制片6bの先端を互いに逆方向に向け、押圧片6aが支持本体部4を介して相対するように支持本体部4の両端に固定されている。
【0017】
連結手段10は、3つの連結アーム11a〜11cと、連結アーム11a〜11c間を互いに連結するアーム連結部材としての自在継手12とを備えている。
ここで、3つ連結アーム11a〜11cのうちの真ん中に配置されるものを連結アーム11bとする。真ん中に配置される連結アーム11bと、連結アーム11bの一端と自在継手12を介して連結される連結アーム11aとの間の角度、及び連結アーム11bと、連結アーム11bの他端と自在継手12を介して連結される連結アーム11cとの間の角度のそれぞれは、任意に変えることができるようになっている。
【0018】
また、図示しない第1保持手段により、互いの間の角度を任意に調整した連結アーム11a〜11cの状態を保持することが可能になっている。2つの連結アームを連結する自在継手12は、一方の連結アームに連結される部位と、他方の連結アームに連結される部位を有する。第1保持手段は、例えば、一方の連結アームに連結される自在継手の部位と、他方の連結アームに連結される自在継手の部位の両方に、抜き差し自在に貫通するピンなどである。
【0019】
近接規制部15は、3つの規制アーム16a〜16cと、規制アーム16a〜16cの間を互いに連結する自在継手17を備えている。
ここで、3つ規制アーム16a〜16cのうちの真ん中に配置されるものを規制アーム16bをとする。真ん中の規制アーム16bと、規制アーム16bの一端と自在継手17を介して連結される規制アーム16aとの間の角度、及び規制アーム16bと規制アーム16bの他端と自在継手17を介して連結される規制アーム16cとの間の角度のそれぞれは、任意に変えることができるようになっている。
【0020】
また、図示しない第2保持手段により、互いの間の角度を任意に調整した規制アーム16a〜16cの状態を保持することが可能になっている。2つの規制アームを連結する自在継手17は、一方の規制アームに連結される部位と、他方の規制アームに連結される部位を有する。第2保持手段は、例えば、一方の規制アームに連結される自在継手の部位と、他方の規制アームに連結される自在継手の部位の両方に、抜き差し自在に貫通するピンなどである。
【0021】
表示部材取付手段18は、長尺の棒状に作製されている。
【0022】
表示幕20は、特に材料を限定されるものではないが、布、ビニール等を材料とする幕であり、その一面には、例えば、「侵入禁止」などの文字が付されている。
【0023】
以上の構成を有する支持部2、連結手段10、近接規制部15、表示部材取付手段18、及び表示幕20は、以下のように一体化されている。
【0024】
一対の支持部2は、支持本体部4を互いに平行にして配置される。
連結手段10は、支持本体部4の長手方向に互いに離間して一対の支持本体部4を連結するように一対設けられる。このとき、各連結手段10とも、連結アーム11bの両側に自在継手12を介して連結される連結アーム11a,11cのそれぞれの先端部を、支持本体部4のそれぞれに固定される。また、3つの連結アーム11a〜11cを直線状に配置したときには、連結手段10の長手方向は、支持本体部4の長手方向に直交する方向に一致する。
【0025】
また、一対の近接規制部15が、一方の支持部2の支持本体部4に、支持本体部4の長手方向に互いに離間して設けられて突出されている。このとき、各近接規制部15は、規制アーム16bの一側に連結されている規制アーム16aの端部を支持本体部4に固定することで、支持本体部4に連結されている。なお、一方の近接規制部15が、一方の有底円筒体4aに設けられ、他方の近接規制部15が、他方の有底円筒体4bに設けられている。
【0026】
なお、支持本体部4に固定される規制アーム16aと連結アーム11aの長手方向が直交するように、連結手段10及び近接規制部15が、支持本体部4に固定されている。
また、近接規制部の3つの規制アーム16a〜16cを直線状に配置したときには、近接規制部15の基端から先端に向かう方向は、押圧片6aの基端から先端に向かう方向と逆方向となるように、近接規制部15と支持本体部4とが連結されている。
【0027】
次いで、乗場出入口の安全装置1が設置されるエレベータの乗場まわりについて説明する。
図3はこの発明の一実施の形態に係るエレベータの乗場出入口の安全装置が乗場出入口に設けられたエレベータの乗場まわりの斜視図、図4は図3のIV−IV矢視断面図である。
エレベータの乗場30には、昇降路32に開口する乗場出入口33が形成されている。また、乗場出入口33の両側縁及び上縁を構成する三方枠35が設けられている。
三方枠35は、乗場出入口33の側縁を構成する縦枠35aと、縦枠35aの上端間を連結し、乗場出入口33の上縁を構成する上枠35bとを備えている。
【0028】
また、乗場ドア40が、乗場出入口33を開閉自在に設けられている。なお、乗場ドア40は、図4に示されるように、横引き式の両開きタイプであり、互いに異なる方向に移動する一対のドアパネル41を備える。
【0029】
次いで、乗場出入口の安全装置1の乗場30への設置状態について説明する。
連結手段10を介して連結される一対の支持部2が、開状態にある一対のドアパネル41の戸当たり側の端部の間に保持されている。
【0030】
このとき、一対の支持部2は、伸縮体3を構成する支持本体部4の長手方向を乗場出入口33の間口方向に一致させ、高さ方向に互いに離間されている。例えば、一対の支持部2のそれぞれの高さ位置は、例えば、平均的な背丈の人の口元付近と足の付け根当たりのそれぞれの高さ位置にある。
【0031】
そして、一対の支持部2のそれぞれは、図4に示されるように、一対の係合部6を一対のドアパネル41の閉方向の端部に係合させてドアパネル41に保持されている。このとき、支持本体部4に縮設されたばねが、支持本体部4を伸長させる方向に付勢するので、伸縮体3は、支持本体部4の両端で、一対のドアパネル41を互いに反する方向に押圧し、ドアパネル41を全開状態に保持する。
【0032】
また、各係合部6は、押圧片6aがドアパネル41の閉方向の端面に押し当てられ、ドアパネル41の意匠面(昇降路32と反対側の面)に移動規制片6bが接するように配置されている。これにより、支持部2は、昇降路32側に押圧されても、ドアパネル41により昇降路32側への移動を規制される。以上をまとめると、各支持部2は、乗場出入口33の間口方向に相対する両縁部を渡すように配置されて、ドアパネル41間に保持される。このとき、ドアパネル41は、各支持部2によって、乗場出入口33を全開した状態に維持される。
【0033】
また、一対の近接規制部15は、支持部2から昇降路32と逆側に向かって延出されている。例えば、一対の近接規制部15は、規制アーム16a〜16cを直線に配置した状態で、規制アーム16a〜16cの姿勢が第2保持手段により保持されている。
【0034】
また、表示部材取付手段18は、一端及び他端のそれぞれの近傍の部位を、一対の近接規制部15のそれぞれの先端に固定されている。
表示幕20が、一面を昇降路32と反対側に向けて垂れ下げられるように、表示部材取付手段18に取り付けられている。
表示幕20の一面には、「侵入禁止」など、第三者が、乗場出入口33へ侵入することを回避させる表記がなされている。
【0035】
従って、乗場出入口の安全装置1によれば、近接規制部15が乗場出入口33から昇降路と離れる側に突出されているので、乗場30にいる第三者が、乗場出入口33に近づくことを抑制できる。さらに、第三者が、乗場出入口33へ侵入することを回避させる表記がなされた表示幕20が、近接規制部15に支持されて垂れ下げられているので、第三者が、乗場出入口33に侵入することを一層抑制できる。
【0036】
また、乗場出入口の安全装置1を撤去する場合には、支持本体部4を縮ませて、伸縮体3が、ドアパネル41を押圧する力を解放することで、ドアパネル41から簡単に取り外すことができる。また、近接規制部15及び連結手段10のそれぞれは、折りたたみ可能であるので、乗場出入口の安全装置1をコンパクトな形に変形できる。これにより、乗場出入口の安全装置1の持ち運びが楽になり、また、安全装置の収納に必要なスペースを削減できる。
【0037】
また、一対のドアパネル41を開状態にして乗場30の保守点検を行う必要がある場合、支持部2を、乗場ドア40を構成する一対のドアパネル41の間に設けて、ドアパネル41を開状態にすることで、支持部2が、ドアパネル41の開状態維持手段としての役割も果たすので、乗場出入口の安全装置1とは別に、ドアパネル41の開状態維持手段を用意する必要がなくなる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、支持部2は、伸縮自在に構成された伸縮体3及び係合部6により構成されるものとして説明したが、支持部2はこのものに限定されず、乗場出入口33に固定可能に構成されていればよく、例えば、ブロック状の基体部と、基体部を乗場出入口33に固定する固定手段となどで構成してもよい。この場合、基体部の一部を、乗場出入口33から昇降路32と逆側に延在するようにし、基体部が、近接規制部の一部を兼ねるように構成すればよい。
【0039】
また、支持部2を一対のドアパネル41間に取り付けるものとして説明したが、例えば、支持部2は、三方枠35の一対の縦枠35aのそれぞれに支持本体部4の一端及び他端のそれぞれを押し当てるように配置し、三方枠35に設けてもよい。
【0040】
また、支持部2は一対に設けるものとして説明したが、一つであったり、3つ以上であったりしてもよい。また、支持部2の間は、連結手段10により連結されるものに限定されず、連結されていなくてもよい。
【0041】
また、連結手段10や近接規制部15は、複数の連結アーム11a〜11cや規制アーム16a〜16cを自在継手12,17により互いに連結し、折りたたみ可能に構成するものとして説明したが、必ずしも折りたたみ可能に構成する必要はなく、例えば、一部材からなる棒体により構成してもよい。また、連結アーム11a〜11cや規制アーム16a〜16cの数は、3つによらず、3つ以外の複数の連結アーム11a〜11cや規制アーム16a〜16cをおりたたみ自在に連結してもよい。
【0042】
また、アーム連結部材は、自在継手12であるとして説明したが、例えば、一対の連結アームを同一軸まわりに互いに回動自在に連結して、一対の連結アームの互いの間の角度を調整可能にするものでもよい。
【0043】
また、連結手段10や近接規制部15は、例えば、板状のものやブロック状のものであってもよい。
また、表示部材は、表示幕20で有るものとして説明したが、表示幕20に限定であるものに限定されない。例えば、板状の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 エレベータの乗場出入口の安全装置、2 支持部、15 近接規制部、16a〜16c 規制アーム、20 表示部材、30 乗場、33 乗場出入口、41 ドアパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの乗場出入口に保持される支持部と、
上記支持部から昇降路とは逆側に向かって延出される近接規制部と
を備えることを特徴とするエレベータの乗場出入口の安全装置。
【請求項2】
上記近接規制部に支持され、上記乗場出入口への侵入を回避させる注意喚起の表記がなされた表示部材
を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの乗場出入口の安全装置。
【請求項3】
上記近接規制部は、折りたたみ可能に互いに連結された複数の規制アームにより構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータの乗場出入口の安全装置。
【請求項4】
上記支持部は、上記乗場出入口を開閉するドアパネルの閉方向端部に当接して上記ドアパネルを開状態に維持するように設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のエレベータの乗場出入口の安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−188250(P2012−188250A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54155(P2011−54155)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】