説明

エレベータの閉じ込め救出システム

【課題】閉じ込め発生時に、救出を開始するまでの想定時間(保守作業員が到着するまでの予想時間)が常に最新の値となるように、回線を切断した後でも簡単に逐次更新表示できるようにする。
【解決手段】 エレベータのかご内に閉じ込めが発生したことを検出する閉じ込め検出手段と、閉じ込め検出時に前記保守センター40に自動発報する自動発報手段と、救出を開始するまでの想定時間を保守センター40から前記エレベータに送信する手段と、前記想定時間を受信すると該想定時間を時間の経過に応じて逐次更新し出力する表示制御装置22と、前記エレベータのかご内に設置され、前記表示制御装置22から出力された前記想定時間を表示するかご内表示装置23とを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの閉じ込め救出システムに関し、特にエレベータのかご内に閉じ込められた乗客に対して、救出を開始する(保守作業員が到着する)までの想定時間を逐次更新して表示できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エレベータと遠隔の場所に設置された保守センター(遠隔監視センター)とを、一般の公衆回線にて接続し、特定の地域に設置されたエレベータやエスカレータ等の状態や故障情報をこの保守センターで一括して監視し、また必要に応じてエレベータに対して遠隔制御を行う、遠隔監視制御システムが実現され運用されている。
【0003】
また、エレベータのかご内には、故障等によって乗客がかご内に閉じ込められた場合に、インターホン等を使用して管理人や上記保守センターとの連絡を可能とする音声通話システムが設けられている。
【0004】
また、上記の音声通話システムに加えて、かご内に閉じ込められている乗客の不安感を少しでも和らげるために、かご内に設置されている表示装置に救出を開始するまでの想定時間(保守作業員が到着するまでの予想時間)を表示することが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2744112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術においては、前記想定時間が一旦表示された後はその時間は基本的に更新されないようになっている。ただし交通渋滞等で技術員の到着が遅れることが予想される場合には、技術員からの連絡を受けて到着時間を修正することも提案されているが、やはりその修正後の時間が時間の経過と共に更新表示されることはない。
【0006】
かご内に閉じ込められた乗客は、大きな不安を抱えており、通常と異なる精神状態にあるため、救出を開始するまでの想定時間が表示されたときには一時的に安心感を与えられたとしても、その表示時間がずっと変化しないままであると、時間感覚が分らなくなり、再び不安感と焦燥感とを感じるようになる。このため、エレベータと保守センターとの通信を保守作業員が到着するまで継続し、或いは乗客の孤独感を和らげるために10分程度の間隔で保守センター側からかご内に繰返し接続することも行われているが、そのような方法では通信コストが嵩むだけでなく、また回線数に限りがあることから、広域停電や地震などが発生した場合には他のエレベータとの通信に支障が生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、救出を開始するまでの想定時間(保守作業員が到着するまでの予想時間)が常に最新の値となるように、回線を切断した後でも簡単に逐次更新表示できるエレベータの閉じ込め救出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、遠隔に設置された場所から集中して多数のエレベータの監視や保守を行う保守センターと上記エレベータとを、通信装置を介し一般公衆回線により接続したエレベータの閉じ込め救出システムにおいて、エレベータのかご内に閉じ込めが発生したことを検出する閉じ込め検出手段と、閉じ込め検出時に前記保守センターに自動発報する自動発報手段と、救出を開始するまでの想定時間を保守センターから前記エレベータに送信する手段と、前記想定時間を受信すると該想定時間を時間の経過に応じて逐次更新し出力する表示制御装置と、前記エレベータのかご内に設置され、前記表示制御装置から出力された前記想定時間を表示するかご内表示装置とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閉じ込め事故発生時の最初に救出が開始されるまでの想定時間について、一度通信を行うだけで以後の上記想定時間を時間の経過に応じて逐次更新表示することができるため、通信コストを最小にしながらもまた他のエレベータと保守センターとの通信を妨げることなく、常に最新の上記想定時間をかご内に表示することができ、かご内の乗客に安心感を与えることができる。また、表示制御装置がかご内表示装置と一体化或いはかご内表示装置に内蔵されている等、表示制御装置がかご内表示装置と共にかご側に設置されていれば、上記想定時間の表示中に万が一エレベータ制御装置が不動作となる故障が発生したとしても、想定時間の更新表示機能を維持することができるという優れた効果を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態であるエレベータの閉じ込め救出システムの全体構成図、図2は閉じ込め発生時において上記想定時間をかご内に表示する手順を示すフローチャートである。
【0011】
図1において、10はエレベータ制御装置、11はエレベータから保守センター40へデータや信号を送信し或いはその逆に受信するための送受信機、12は呼びに応じてエレベータの運行を制御する運行制御装置,13は乗客の存在するかごが階間で停止したことなどにより閉じ込めの発生を検出する閉じ込め検出装置、14は非常呼び釦(図示省略)が操作されたり或いは前記閉じ込め検出装置13により閉じ込めが検出されたりすると、管理人と通話可能とし管理人の応答がない場合には、或いは管理人の有無に拘わらず保守センターに自動接続して通話可能とする自動発報装置、20はエレベータのかご、21はかご内に設けられたインターホン、22はかご内表示装置23の表示内容を制御する表示制御装置、23はかご内に設けられた液晶ディスプレイ等のかご内表示装置、30は一般公衆回線、40は一般公衆回線を介して多数のエレベータやエスカレータを一括監視し、必要に応じて遠隔保守等を行う保守センター、41はエレベータからの信号やデータを受信し或いはエレベータへの信号やデータを送信する送受信機、42はエレベータとの通話装置、43は保守センターから一般公衆回線30を介して遠隔操作で閉じ込めの救出を行うための遠隔救出装置、44は保守作業員を呼び出すための呼び出し装置である。
【0012】
以下、上記図1の構成と図2のフローチャートに基づいて、本発明に係るエレベータの閉じ込め救出システムを説明する。
【0013】
故障等、何らかの原因で閉じ込めが発生すると、かご内の乗客が非常呼び釦を操作することにより、或いは閉じ込め検出装置により自動的に閉じ込めが検出されると、自動発報装置14により送受信機11と公衆回線30を介して外部の保守センター40に自動発報される(ステップS51)。保守センター40ではそのデータを送受信機41を介して受信すると(ステップS60)通話装置42とかご内のインターホン21とが通話可能な状態になり(ステップS52,61)、保守センター40のオペレーターは乗客と連絡をとりながら閉じ込めの状況を確認し(ステップS62)、保守センター40からの遠隔救出運転が可能か否かを判断する(ステップS63)。
【0014】
もしも遠隔救出運転が可能であれば、その旨をかご内表示装置23に案内表示し(ステップS64)、遠隔救出運転を開始するが(ステップS65)、この遠隔救出運転についての説明は本件発明には直接関係がないのでここでは省略する。遠隔救出運転が不可能な場合には、上記オペレーターは呼び出し装置44により、現場に派遣する保守作業員に連絡をとり(ステップS66)、救出を開始するまでの想定時間(現場に到着するまでの予想時間)を確認する(ステップS67)。
【0015】
想定時間が決定されると、オペレータは、該想定時間を送受信機41と一般公衆回線30を介してエレベータ側へ送信し(ステップS68)、送受信機11を介して表示制御装置22に入力される(ステップS54)。表示制御装置22ではこの想定時間を適切な案内表示と共にかご内表示装置23へ出力する。この結果、例えばかご内表示装置23には、「救出を開始する(保守作業員が到着する)まで約〇〇分かかりますが、もうしばらくお待ち下さい。」などの表示が行われる(ステップS55)。
【0016】
更に、表示制御装置22では、内蔵の或いは別途に設けられているタイマー機能(図示省略)を用いて上記想定時間をカウントダウンし(ステップS56)、時間の経過に応じて逐次最新の想定時間をかご内表示装置23に出力する(ステップS57)。その結果、かご内表示装置23には、保守センターとの通信を切断した後も、時間の経過に応じて、保守作業員が到着するか或いは表示時間が0になるまで常に最新の想定時間が更新表示されることになる(ステップS58)。
【0017】
なお、保守作業員が到着するまでに上記想定時間がゼロになってしまった場合には、「もう間もなく保守作業員が到着しますので、いましばらくお待ちください。」などの表示に切り替えるようにしてもよい。
【0018】
また、表示制御装置22は、エレベータの制御装置10内に設置することも考えられるが、上記の実施形態のように、かご内表示装置23と一体となっているか、或いはかご内表示装置23に内蔵されるなど、時計機能も含めてかご内表示装置23と共にかご側に設置されていることが望ましい。そのような構成であれば、前記想定時間を表示中に、万が一エレベータ制御装置に故障が生じた場合であっても、かご内表示装置23は更新表示を継続することができる。
【0019】
また、上記の実施形態において、かご内表示装置は液晶ディスプレイに限らず、プラズマディスプレイやブラウン管、或いはLEDで構成されるディスプレイ等、いかなる表示デバイスであっても構わない。
【0020】
また、上記の実施形態において、送受信機11と自動発報装置14はエレベータの制御装置の一部としているが、これに限らず、エレベータをはじめとして種々のビル内設備機器の異常や故障を検知し保守センターに自動報知する遠隔監視装置であってもよい。
【0021】
また、上記の実施形態において、救出を開始するまでの想定時間は、オペレータが保守作業員に確認して決定するようにしているが、保守作業員の現在位置等から自動的に算出して決定し送信するようにしてもよい。
【0022】
また、上記の実施形態においては、遠隔救出装置を備えたものを例として挙げているが、本発明においては必ずしも遠隔救出装置を備えている必要はない。
【0023】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を施すことができる。例えば、一般公衆回線としては、通常の電話回線に限らず、常時接続インターネットやIP網を利用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態であるエレベータの閉じ込め救出システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】閉じ込め発生時において上記想定時間をかご内に表示する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
10 エレベータ制御装置
11,41 送受信機
13 閉じ込め検出装置
14 自動発報装置
20 かご
22 表示制御装置
23 かご内表示装置
30 一般公衆回線
40 保守センター
44 呼び出し装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔に設置された場所から集中して多数のエレベータの監視や保守を行う保守センターと上記エレベータとを、通信装置を介し一般公衆回線により接続したエレベータの閉じ込め救出システムにおいて、エレベータのかご内に閉じ込めが発生したことを検出する閉じ込め検出手段と、閉じ込め検出時に前記保守センターに自動発報する自動発報手段と、救出を開始するまでの想定時間を保守センターから前記エレベータに送信する手段と、前記想定時間を受信すると該想定時間を時間の経過に応じて逐次更新し出力する表示制御装置と、前記エレベータのかご内に設置され、前記表示制御装置から出力された前記想定時間を表示するかご内表示装置とからなることを特徴とするエレベータの閉じ込め救出システム。
【請求項2】
前記表示制御装置は、前記かご内表示装置と共にかご側に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの閉じ込め救出システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−50121(P2008−50121A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228714(P2006−228714)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】