エレベータシステム
【課題】据付作業,保守点検作業をより簡単にすると共に、乗りかごの位置を確実に検出し、長尺物が長周期地震により大きく振動しても引っ掛からない、より安全性を高めたエレベータシステムを得る。
【解決手段】乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、乗りかご100側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサ1,2と、乗りかごの現在位置がドアゾーン内あるいはドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、を備え、2個の位置検出センサ1,2のいずれかの出力が得られた場合、現在位置記憶手段に記憶された判定結果を反転する。
【解決手段】乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、乗りかご100側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサ1,2と、乗りかごの現在位置がドアゾーン内あるいはドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、を備え、2個の位置検出センサ1,2のいずれかの出力が得られた場合、現在位置記憶手段に記憶された判定結果を反転する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご位置検出装置が備えられたエレベータシステムに関し、特に、乗りかごが昇降する際に着床位置を検出したり、乗りかごがドアゾーンに有るか否かを判定したり、するものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの位置検出装置は乗りかごに位置検出センサ、階床付近に被検出体を設置し、かごが昇降する際に乗りかごの床面と乗り場の床面の位置を合わせること、乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な位置に到達していることを示す「ドアゾーン」と呼ばれる領域を検知すること、を行っている。
【0003】
また、かご室に設けられたかごドア敷居の一端側にかご室の側方に向けて所定の動作域内の光を射出すると共に光を受光すると動作する光電式の着床検出器を取り付けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、乗り場の床面と乗りかごの床面の正確な位置合わせを行うのに調節することが必須であり、据付作業,保守点検作業が困難で、時間が掛かるものとならざるを得なかった。
【0006】
また、特許文献1に記載のものでは、乗り場という絶対的な位置決め基準に対し被検出体の取り付け作業を行うため、被検出体の調整作業は、不必要であるが、被検出体が昇降路内に対し突き出すこととなり、長周期地震時等には主ロープやガバナロープなど長尺物が引っ掛かり、エレベータが停止する恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、据付作業,保守点検作業をより簡単にすると共に、乗りかごの位置を確実に検出したり、長尺物が長周期地震により大きく振動しても引っ掛からなくしたり、してより安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な昇降位置に到達し、乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、前記乗りかご側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサと、前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、を備え、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られた場合、前記現在位置記憶手段に記憶された前記判定結果を反転するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサを設け、いずれかの出力が得られた場合、記憶されているドアゾーン内,外に位置しているかの判定を反転させるので、乗りかごの位置を確実に検出し、長尺物が長周期地震により大きく振動しても引っ掛からない、より安全性を高めた乗りかご位置検出装置を備えたエレベータシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における一実施の形態を示すブロック図。
【図2】一実施の形態における乗り場敷居と乗りかご敷居を示した斜視図。
【図3】一実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図4】一実施の形態における安全コントローラの状態遷移を示した説明図。
【図5】一実施の形態におけるドアゾーン認識を示す説明図。
【図6】一実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図7】本発明における他の実施の形態を示すブロック図。
【図8】他の実施の形態における乗り場敷居と乗りかご敷居を示した斜視図。
【図9】他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図10】他の実施の形態におけるドアゾーン認識を示す説明図。
【図11】他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図12】さらに、他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図13】さらに、他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図14】さらに、他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図15】さらに、他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータシステムの実施の形態を図を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は一実施形態を示す全体構成図、図2は乗り場敷居102と乗りかご敷居103の周辺の詳細を示した斜視図、図3は安全コントローラ4を示したブロック図、図4は安全コントローラの状態遷移を示した図、図5はドアゾーン認識の概略を、図6はドアゾーン認識方法のフローチャートを示す。
【0013】
エレベータは、建屋に形成された昇降路内を複数の階床間に跨って移動する乗りかご100がロープ102を介しておもり112に接続されている。乗りかご100の移動は、電動機106によって綱車104が駆動されることにより行われる。電動機106には、電力変換器107によって駆動用の電力の供給が行われている。また、エンコーダなどのパルス発生器107が電動機106に取り付けられており、電動機の回転によって生じるパルスを、システム制御器109が計数することにより、駆動電動機106の速度,乗りかご100の昇降路移動方向の等価的な位置,移動距離などが計算される。乗りかご100には、乗り場側ドア110を係合して開閉する乗りかご側ドア111が設けられている。
【0014】
乗りかご側には位置検出センサ1及び2が、乗りかご100の昇降方向に所定距離を離して設けられており、それぞれの出力は安全コントローラ4に独立して接続されている。安全コントローラ4は、それぞれの位置検出センサにより検出されるドアゾーン(乗り場側ドア及び乗りかご側ドアが開閉可能な領域)を認識し、開閉可能である場合には、その許可信号を出力する。図1では、安全コントローラ4の信号はシステム制御器109に接続されているが、その他にも乗りかご100に設けられている制御器や、乗り場に設けられている制御器と接続してもよい。
【0015】
位置検出センサ1及び2と、乗り場側との位置関係は、図2に示すように位置検出センサ1及び2が、乗り場側に対向し、ドアゾーンに対応した所定距離で設置されている。位置検出センサ1及び2は、対向型センサである反射型光電センサ,静電容量センサ,磁気センサ,渦電流センサなどのいずれかで良い。位置検出センサ1及び2は、乗り場側敷居102を被検出体として検出する。被検出体は、乗り場側ドアの構造物あるいは位置検出センサで検出するための反射板でもよい。安全コントローラ4は、マイクロコンピュータなどであり、乗りかごの位置を判定する手段5と、乗りかごの現在位置を記憶する手段6により構成される。
【0016】
図4はドアゾーンを検出する位置検出システムの状態の遷移を示したものであり、乗りかご100が乗り場側ドア110と係合していない状態、つまり乗りかご100の位置は階床間であることを示す「乗りかごはドアゾーン外」と、乗りかご100が乗り場側ドア110と係合している状態、つまり乗りかご100は階床レベルにあることを示す「乗りかごはドアゾーン内」という状態の繰り返しとなる。
【0017】
状態の遷移は、信号12及び13によって行われる。信号12及び13は、位置検出センサ1及び2が乗り場敷居102を検出することにより発生し、位置検出の状態は、安全コントローラ4によって認識,管理される。
【0018】
図5は、位置検出センサ1及び2と乗り場側敷居102の位置関係を示したものであり、各状態における位置検出センサ1及び2の出力状態及び安全コントローラ4の認識状態を下記している。
(1)位置検出センサ1及び2が共に乗り場敷居102よりも上方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン外」と認識し、記憶されるべきであり、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力は共にOFF状態である。
(2)乗りかごが(1)の状態よりも下方へ移動し位置検出センサ2が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ2により生じる出力信号により、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン外」と言う記憶された現在位置から「乗りかごはドアゾーン内」というように判定結果を反転して書き換える。
(3)乗りかごが(2)の状態よりもさらに下方へ移動し、位置検出センサ1及び2の間に乗り場敷居102がある場合、位置検出センサ1及び2は乗り場敷居を検出していないため出力状態はOFF状態であるが、(2)の状態から遷移したことより安全コントローラ4により乗りかご100はドアゾーン内であることが認識される。
(4)乗りかごが(3)の状態よりもさらに下方へ移動し位置検出センサ1が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ1により生じる出力信号により、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン外」という認識へ遷移する。
(5)位置検出センサ1及び2が共に乗り場敷居102よりも下方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン外」と判断し、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
【0019】
図6は安全コントローラ4で実施される処理内容を示す。安全コントローラ4はマイクロコンピュータなどであり、図5の処理内容は、位置検出センサ1及び2の出力信号を検出して行われる。
【0020】
エッジ割込みで開始され(S100)、割込み要因がセンサ1であるかを判断し(S101)、位置検出センサ1であった場合ステップS102へ、そうでない場合(割込み要因がセンサ2)はステップ109へ移行する。
【0021】
ステップS102では乗りかご100の現在状態がドアゾーン外であるかを判断し(S102)、ドアゾーン外である場合はステップS103へ、ドアゾーン内である場合はステップS106へ移行する。ステップS103では乗りかご100の現在状態と位置検出センサ1が割込み要因であることから、乗りかご100の移動方向が下降方向であることが判断でき、その後安全コントローラ4がセンサやコントローラの処理自体に異常がないか合理性を確認する(S104)。
【0022】
ステップS104の合理性の確認手段として、例えば電動機106に接続されているパルス発生器107による乗りかご100の移動方向を安全コントローラ4に入力し、パルス発生器による乗りかご移動方向の情報と、ステップS103より得られる乗りかご100の移動方向の情報を比較する。比較に異常があった場合は、安全コントローラ4がエレベータを停止させるための出力を発生する。比較に異常がなかった場合、安全コントローラ4は記憶された現在状態を「ドアゾーン外」から「ドアゾーン内」に書き換える(S105)。
【0023】
ステップS102において乗りかご100の現在状態がドアゾーン外ではなかった場合、乗りかご100の現在状態はドアゾーン内であると判定し、さらに乗りかご100の現在状態と位置検出センサ1が割込み要因であることから、乗りかご100の移動方向が上昇方向であることが判断できる(S106)。その後、ステップS107ではステップS104と同様の合理性確認処理を行い、異常がなかった場合は乗りかごの現在状態を「ドアゾーン外」に書き換える(S108)。
【0024】
ステップS101において割込み要因が位置検出センサ1でなかった場合、位置検出センサ2による割込みであると判定し(S109)、以降はステップ(S102)と同様の処理を行う。また、図5は処理内容の一例であり、その他の処理としてS101に、まず現在状態を判定してから割込み要因別で処理を行う方法や、割込みでなく周期動作で位置検出センサ1及び2の状態を確認する方法などでも良い。
【0025】
以上によれば、位置検出センサ1及び2が被検出体を検出することで生じる出力信号により、乗りかごがドアゾーン内(戸開閉可能領域)とドアゾーン外(戸開閉不可能領域)に存在することの認識を安全コントローラ4で切り替える。これにより、被検出板を従来よりも短い長さのものや、または使用しないことが可能となる。したがって、据付や保守の時間を短縮できると共に、被検出体に長尺物が引っ掛る可能性を無くすことが可能となる。
【実施例2】
【0026】
図7は、他の実施形態を示す全体構成図、図8は乗り場敷居102と乗りかご敷居103の周辺の詳細を示した斜視図、図9は安全コントローラ4を示したブロック図、図10はドアゾーン再認識の概略を、図11は安全コントローラ4のドアゾーン再認識方法のフローチャートを示す。
位置検出センサ1と位置検出センサ2の間に新たに位置検出センサ21(第3の位置検出センサ)を設けたものであり、例えば停電時や瞬停時に安全コントローラ4が現在状態の記憶を保持することができなかった場合についても、現在状態を再認識することが可能となる。
【0027】
また、安全コントローラ4に乗りかご位置確認モード指令を発生させる手段7を設け、停電を検出したことによる信号などにより、乗りかご位置確認モードが開始されるよう指令を発生させる。
【0028】
現在状態を再認識することについて図10を参照して説明する。
図10は安全コントローラ4が現在状態の記憶が不明または正しい認識状態でない場合(たとえば真の乗りかごの位置はドアゾーン内であるのに安全コントローラ4は「ドアゾーン外である」と認識している場合)に、乗りかごに取り付けられた位置検出センサ1,位置検出センサ21及び位置検出センサ2が下降し、乗り場敷居102を検出することを安全コントローラ4の認識状態と併せて示したものである。
(1)位置検出センサ1,21及び2が共に乗り場敷居102よりも上方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごの位置は不明」という認識であり、位置検出センサ1,21及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
(2)乗りかごが(1)の状態よりも下方へ移動し位置検出センサ2が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ2によりトリガーが生じるが、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごの位置は不明」という認識のままである。
(3)乗りかごが(2)の状態よりもさらに下方へ移動し、位置検出センサ2及び21の間に乗り場敷居102がある場合、位置検出センサ1,21及び2は乗り場敷居102を検出していないため出力状態はOFF状態であり、安全コントローラ4の認識状態は不明のままである。
(4)乗りかご100が(3)の状態よりもさらに下方へ移動し位置検出センサ21が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ21により生じるトリガーにより、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン内」という認識へ遷移する。新たに設けた位置検出センサ21が、位置検出センサ1と位置検出センサ2の間にあり、このセンサ間がドアゾーン内と定義されているため、位置検出センサ21が乗り場敷居102を検出すると、乗りかご100の現在位置は確実にドアゾーン内である。
(5)位置検出センサ1と21の間に乗り場敷居102がある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン内」という認識であり、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
【0029】
現在状態を再認識する具体的な処理内容について、図11を用いて説明する。
安全コントローラ4には、停電時や瞬間停電時に現在状態を再認識できなかった場合のために、乗りかご位置確認モードが設けてあり、以下のステップに従い乗りかごの現在位置を再認識する。
【0030】
停電などにより乗りかご100の現在位置情報が失われた場合、乗りかご位置確認モードが開始される(S200,S201)。位置検出センサ21で乗りかごの現在位置を確定させるために、乗りかご100を下降または上昇させる(S202)。このとき、エレベータシステム側からは乗りかご100の現在位置が不明であるという危険な状態にあるため、安全を考慮すれば移動速度は低速であることが望ましい。
【0031】
位置検出センサ21の応答が検出されるまで乗りかご100の移動を継続させ、位置検出センサ21の応答が検出された場合、ステップS204へ移行する(S203)。ステップS204では、安全コントローラ4は位置検出センサ21の検出に伴い、乗りかご100の現在状態を「ドアゾーン内」に書き換える。
【0032】
現在状態の合理性確認処理を行う(S205)。これは例えば、位置検出センサ21の検出があったにもかかわらず位置検出センサ1または2の出力が検出されている場合は、これらのセンサの故障が疑われる。この場合、乗りかご100の現在位置がドアゾーン内であることからただちに停止し、乗客を速やかに乗りかご100から退出させる。
【0033】
以上によれば、位置検出センサ1及び2が被検出体を検出することで生じる出力により、乗りかごがドアゾーン内(戸開閉可能領域)とドアゾーン外(戸開閉不可能領域)に存在することの認識を安全コントローラ4で切り替えるとともに、停電時などで安全コントローラ4の乗りかご100の現在位置情報が失われた場合においても、位置検出センサ1と2の間に新たに設けた位置検出センサ21を用いることにより、乗りかご100を最長1階床分のみ移動させることで、乗りかご100の現在位置情報を再認識することができ、エレベータの運行を速やかに復旧することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
図12は、さらに、他の実施形態を示す安全コントローラ4の構成図、図13はフローチャートである。
【0035】
安全コントローラ4には、機能として診断モード指令発生手段8が新たに設けられている。診断モード指令により安全コントローラ4は診断モードに設定され、位置検出センサや安全コントローラ自体の診断を行う。この診断は、たとえばエレベータの利用客の少ない深夜において実施されたり、定期点検などで自動に実施されたり、するものである。
【0036】
以下、図13に従い診断モードについて説明する。診断モードが開始されると(S300)、乗りかごは階床間へ自動で移動される(S301)。その後、乗りかご100は停止処理により停止され(S302)、診断のために一度乗りかごの現在位置情報がリセットされる(S303)。ステップS303の前における乗りかご100の現在位置情報は、乗りかご現在位置記憶手段6に一時的に退避される。ステップS304では、実施例2における処理フローを実施する。この処理を行い、各位置検出センサに異常がないと判定された場合(S305−YES)は、正常状態へ復帰しエレベータの運行を再開し(S306)、診断モードを終了する(S307)。各センサのいずれかに異常が発見された場合には(S305−NO)、故障を保守管理者へ通知し(S308)、運行は停止し診断モードを終了する(S309)。
【0037】
以上によれば、安全コントローラ4に新たに診断モードを設け、所定の動作を行うことで、各位置検出センサの異常を自動で検出することが可能となる。
【実施例4】
【0038】
図14はさらに、他の実施形態を示す安全コントローラ4の構成図、図15はフローチャートである。
コントローラ4には、乗りかごの絶対位置を検出するための検出器からの信号31が新たに入力される。検出器の例としては、たとえばカム機構を用いたリミットスイッチや、光電センサとそれを検出するための被検出体など、乗りかごの昇降路内における絶対位置を検出できるものが良い。
【0039】
現在状態を再認識する具体的な処理内容について、図15を用いて説明する。安全コントローラ4には、停電時や瞬間停電時に現在状態を再認識できなかった場合のために、乗りかご位置確認モードが設けてあり、以下のステップに従い乗りかごの現在位置を再認識する。
【0040】
停電などにより乗りかご100の現在位置情報が失われた場合、乗りかご位置確認モードが開始される(S400,S401)。次に、乗りかご100の絶対位置を検出するための検出器31で乗りかごの現在位置を確定させるために、乗りかご100を下降または上昇させる(S402)。次に、乗りかご100の絶対位置を検出するための検出器31の応答が検出されるまで乗りかご100の移動を継続させ、検出器31の応答が検出された場合、ステップS404へ移行する(S403)。ステップS404では、安全コントローラ4は検出器31の検出に伴い、乗りかご100の現在状態を検出器の位置に基づく位置情報に書き換える。たとえば、階床間に乗りかごの絶対位置を検出するためのカム型スイッチを設けた場合は、乗りかごの位置は「ドアゾーン外」となるため、安全コントローラ4は現在状態を「ドアゾーン外」に書き換える。続いて、現在状態の合理性確認処理を行う(S405)。これは例えば、検出器31の検出があったにもかかわらず位置検出センサ1または2の出力が検出されている場合は、これらのセンサの故障が疑われる。この場合、乗りかご100の現在位置がドアゾーン内であることからただちに停止し、乗客を速やかに乗りかご100から退出させる。
【0041】
以上によれば、停電時などで安全コントローラ4の乗りかご100の現在位置情報が失われた場合においても、乗りかごの絶対位置を検出するための検出器からの信号31を用いることにより、乗りかご100を任意の位置において現在位置情報を再認識することができ、エレベータの運行を速やかに復旧することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1,2,21 位置検出センサ
4 安全コントローラ
100 乗りかご
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかご位置検出装置が備えられたエレベータシステムに関し、特に、乗りかごが昇降する際に着床位置を検出したり、乗りかごがドアゾーンに有るか否かを判定したり、するものに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの位置検出装置は乗りかごに位置検出センサ、階床付近に被検出体を設置し、かごが昇降する際に乗りかごの床面と乗り場の床面の位置を合わせること、乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な位置に到達していることを示す「ドアゾーン」と呼ばれる領域を検知すること、を行っている。
【0003】
また、かご室に設けられたかごドア敷居の一端側にかご室の側方に向けて所定の動作域内の光を射出すると共に光を受光すると動作する光電式の着床検出器を取り付けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、乗り場の床面と乗りかごの床面の正確な位置合わせを行うのに調節することが必須であり、据付作業,保守点検作業が困難で、時間が掛かるものとならざるを得なかった。
【0006】
また、特許文献1に記載のものでは、乗り場という絶対的な位置決め基準に対し被検出体の取り付け作業を行うため、被検出体の調整作業は、不必要であるが、被検出体が昇降路内に対し突き出すこととなり、長周期地震時等には主ロープやガバナロープなど長尺物が引っ掛かり、エレベータが停止する恐れがあった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、据付作業,保守点検作業をより簡単にすると共に、乗りかごの位置を確実に検出したり、長尺物が長周期地震により大きく振動しても引っ掛からなくしたり、してより安全性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な昇降位置に到達し、乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、前記乗りかご側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサと、前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、を備え、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られた場合、前記現在位置記憶手段に記憶された前記判定結果を反転するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサを設け、いずれかの出力が得られた場合、記憶されているドアゾーン内,外に位置しているかの判定を反転させるので、乗りかごの位置を確実に検出し、長尺物が長周期地震により大きく振動しても引っ掛からない、より安全性を高めた乗りかご位置検出装置を備えたエレベータシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明における一実施の形態を示すブロック図。
【図2】一実施の形態における乗り場敷居と乗りかご敷居を示した斜視図。
【図3】一実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図4】一実施の形態における安全コントローラの状態遷移を示した説明図。
【図5】一実施の形態におけるドアゾーン認識を示す説明図。
【図6】一実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図7】本発明における他の実施の形態を示すブロック図。
【図8】他の実施の形態における乗り場敷居と乗りかご敷居を示した斜視図。
【図9】他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図10】他の実施の形態におけるドアゾーン認識を示す説明図。
【図11】他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図12】さらに、他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図13】さらに、他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【図14】さらに、他の実施の形態における安全コントローラを示すブロック図。
【図15】さらに、他の実施の形態におけるドアゾーン認識のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るエレベータシステムの実施の形態を図を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は一実施形態を示す全体構成図、図2は乗り場敷居102と乗りかご敷居103の周辺の詳細を示した斜視図、図3は安全コントローラ4を示したブロック図、図4は安全コントローラの状態遷移を示した図、図5はドアゾーン認識の概略を、図6はドアゾーン認識方法のフローチャートを示す。
【0013】
エレベータは、建屋に形成された昇降路内を複数の階床間に跨って移動する乗りかご100がロープ102を介しておもり112に接続されている。乗りかご100の移動は、電動機106によって綱車104が駆動されることにより行われる。電動機106には、電力変換器107によって駆動用の電力の供給が行われている。また、エンコーダなどのパルス発生器107が電動機106に取り付けられており、電動機の回転によって生じるパルスを、システム制御器109が計数することにより、駆動電動機106の速度,乗りかご100の昇降路移動方向の等価的な位置,移動距離などが計算される。乗りかご100には、乗り場側ドア110を係合して開閉する乗りかご側ドア111が設けられている。
【0014】
乗りかご側には位置検出センサ1及び2が、乗りかご100の昇降方向に所定距離を離して設けられており、それぞれの出力は安全コントローラ4に独立して接続されている。安全コントローラ4は、それぞれの位置検出センサにより検出されるドアゾーン(乗り場側ドア及び乗りかご側ドアが開閉可能な領域)を認識し、開閉可能である場合には、その許可信号を出力する。図1では、安全コントローラ4の信号はシステム制御器109に接続されているが、その他にも乗りかご100に設けられている制御器や、乗り場に設けられている制御器と接続してもよい。
【0015】
位置検出センサ1及び2と、乗り場側との位置関係は、図2に示すように位置検出センサ1及び2が、乗り場側に対向し、ドアゾーンに対応した所定距離で設置されている。位置検出センサ1及び2は、対向型センサである反射型光電センサ,静電容量センサ,磁気センサ,渦電流センサなどのいずれかで良い。位置検出センサ1及び2は、乗り場側敷居102を被検出体として検出する。被検出体は、乗り場側ドアの構造物あるいは位置検出センサで検出するための反射板でもよい。安全コントローラ4は、マイクロコンピュータなどであり、乗りかごの位置を判定する手段5と、乗りかごの現在位置を記憶する手段6により構成される。
【0016】
図4はドアゾーンを検出する位置検出システムの状態の遷移を示したものであり、乗りかご100が乗り場側ドア110と係合していない状態、つまり乗りかご100の位置は階床間であることを示す「乗りかごはドアゾーン外」と、乗りかご100が乗り場側ドア110と係合している状態、つまり乗りかご100は階床レベルにあることを示す「乗りかごはドアゾーン内」という状態の繰り返しとなる。
【0017】
状態の遷移は、信号12及び13によって行われる。信号12及び13は、位置検出センサ1及び2が乗り場敷居102を検出することにより発生し、位置検出の状態は、安全コントローラ4によって認識,管理される。
【0018】
図5は、位置検出センサ1及び2と乗り場側敷居102の位置関係を示したものであり、各状態における位置検出センサ1及び2の出力状態及び安全コントローラ4の認識状態を下記している。
(1)位置検出センサ1及び2が共に乗り場敷居102よりも上方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン外」と認識し、記憶されるべきであり、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力は共にOFF状態である。
(2)乗りかごが(1)の状態よりも下方へ移動し位置検出センサ2が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ2により生じる出力信号により、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン外」と言う記憶された現在位置から「乗りかごはドアゾーン内」というように判定結果を反転して書き換える。
(3)乗りかごが(2)の状態よりもさらに下方へ移動し、位置検出センサ1及び2の間に乗り場敷居102がある場合、位置検出センサ1及び2は乗り場敷居を検出していないため出力状態はOFF状態であるが、(2)の状態から遷移したことより安全コントローラ4により乗りかご100はドアゾーン内であることが認識される。
(4)乗りかごが(3)の状態よりもさらに下方へ移動し位置検出センサ1が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ1により生じる出力信号により、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン外」という認識へ遷移する。
(5)位置検出センサ1及び2が共に乗り場敷居102よりも下方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン外」と判断し、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
【0019】
図6は安全コントローラ4で実施される処理内容を示す。安全コントローラ4はマイクロコンピュータなどであり、図5の処理内容は、位置検出センサ1及び2の出力信号を検出して行われる。
【0020】
エッジ割込みで開始され(S100)、割込み要因がセンサ1であるかを判断し(S101)、位置検出センサ1であった場合ステップS102へ、そうでない場合(割込み要因がセンサ2)はステップ109へ移行する。
【0021】
ステップS102では乗りかご100の現在状態がドアゾーン外であるかを判断し(S102)、ドアゾーン外である場合はステップS103へ、ドアゾーン内である場合はステップS106へ移行する。ステップS103では乗りかご100の現在状態と位置検出センサ1が割込み要因であることから、乗りかご100の移動方向が下降方向であることが判断でき、その後安全コントローラ4がセンサやコントローラの処理自体に異常がないか合理性を確認する(S104)。
【0022】
ステップS104の合理性の確認手段として、例えば電動機106に接続されているパルス発生器107による乗りかご100の移動方向を安全コントローラ4に入力し、パルス発生器による乗りかご移動方向の情報と、ステップS103より得られる乗りかご100の移動方向の情報を比較する。比較に異常があった場合は、安全コントローラ4がエレベータを停止させるための出力を発生する。比較に異常がなかった場合、安全コントローラ4は記憶された現在状態を「ドアゾーン外」から「ドアゾーン内」に書き換える(S105)。
【0023】
ステップS102において乗りかご100の現在状態がドアゾーン外ではなかった場合、乗りかご100の現在状態はドアゾーン内であると判定し、さらに乗りかご100の現在状態と位置検出センサ1が割込み要因であることから、乗りかご100の移動方向が上昇方向であることが判断できる(S106)。その後、ステップS107ではステップS104と同様の合理性確認処理を行い、異常がなかった場合は乗りかごの現在状態を「ドアゾーン外」に書き換える(S108)。
【0024】
ステップS101において割込み要因が位置検出センサ1でなかった場合、位置検出センサ2による割込みであると判定し(S109)、以降はステップ(S102)と同様の処理を行う。また、図5は処理内容の一例であり、その他の処理としてS101に、まず現在状態を判定してから割込み要因別で処理を行う方法や、割込みでなく周期動作で位置検出センサ1及び2の状態を確認する方法などでも良い。
【0025】
以上によれば、位置検出センサ1及び2が被検出体を検出することで生じる出力信号により、乗りかごがドアゾーン内(戸開閉可能領域)とドアゾーン外(戸開閉不可能領域)に存在することの認識を安全コントローラ4で切り替える。これにより、被検出板を従来よりも短い長さのものや、または使用しないことが可能となる。したがって、据付や保守の時間を短縮できると共に、被検出体に長尺物が引っ掛る可能性を無くすことが可能となる。
【実施例2】
【0026】
図7は、他の実施形態を示す全体構成図、図8は乗り場敷居102と乗りかご敷居103の周辺の詳細を示した斜視図、図9は安全コントローラ4を示したブロック図、図10はドアゾーン再認識の概略を、図11は安全コントローラ4のドアゾーン再認識方法のフローチャートを示す。
位置検出センサ1と位置検出センサ2の間に新たに位置検出センサ21(第3の位置検出センサ)を設けたものであり、例えば停電時や瞬停時に安全コントローラ4が現在状態の記憶を保持することができなかった場合についても、現在状態を再認識することが可能となる。
【0027】
また、安全コントローラ4に乗りかご位置確認モード指令を発生させる手段7を設け、停電を検出したことによる信号などにより、乗りかご位置確認モードが開始されるよう指令を発生させる。
【0028】
現在状態を再認識することについて図10を参照して説明する。
図10は安全コントローラ4が現在状態の記憶が不明または正しい認識状態でない場合(たとえば真の乗りかごの位置はドアゾーン内であるのに安全コントローラ4は「ドアゾーン外である」と認識している場合)に、乗りかごに取り付けられた位置検出センサ1,位置検出センサ21及び位置検出センサ2が下降し、乗り場敷居102を検出することを安全コントローラ4の認識状態と併せて示したものである。
(1)位置検出センサ1,21及び2が共に乗り場敷居102よりも上方にある場合、安全コントローラ4は「乗りかごの位置は不明」という認識であり、位置検出センサ1,21及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
(2)乗りかごが(1)の状態よりも下方へ移動し位置検出センサ2が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ2によりトリガーが生じるが、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごの位置は不明」という認識のままである。
(3)乗りかごが(2)の状態よりもさらに下方へ移動し、位置検出センサ2及び21の間に乗り場敷居102がある場合、位置検出センサ1,21及び2は乗り場敷居102を検出していないため出力状態はOFF状態であり、安全コントローラ4の認識状態は不明のままである。
(4)乗りかご100が(3)の状態よりもさらに下方へ移動し位置検出センサ21が乗り場敷居102を検出しONを出力した場合、位置検出センサ21により生じるトリガーにより、安全コントローラ4の認識は、「乗りかごはドアゾーン内」という認識へ遷移する。新たに設けた位置検出センサ21が、位置検出センサ1と位置検出センサ2の間にあり、このセンサ間がドアゾーン内と定義されているため、位置検出センサ21が乗り場敷居102を検出すると、乗りかご100の現在位置は確実にドアゾーン内である。
(5)位置検出センサ1と21の間に乗り場敷居102がある場合、安全コントローラ4は「乗りかごはドアゾーン内」という認識であり、位置検出センサ1及び2も何も検出しておらず、出力はOFF状態である。
【0029】
現在状態を再認識する具体的な処理内容について、図11を用いて説明する。
安全コントローラ4には、停電時や瞬間停電時に現在状態を再認識できなかった場合のために、乗りかご位置確認モードが設けてあり、以下のステップに従い乗りかごの現在位置を再認識する。
【0030】
停電などにより乗りかご100の現在位置情報が失われた場合、乗りかご位置確認モードが開始される(S200,S201)。位置検出センサ21で乗りかごの現在位置を確定させるために、乗りかご100を下降または上昇させる(S202)。このとき、エレベータシステム側からは乗りかご100の現在位置が不明であるという危険な状態にあるため、安全を考慮すれば移動速度は低速であることが望ましい。
【0031】
位置検出センサ21の応答が検出されるまで乗りかご100の移動を継続させ、位置検出センサ21の応答が検出された場合、ステップS204へ移行する(S203)。ステップS204では、安全コントローラ4は位置検出センサ21の検出に伴い、乗りかご100の現在状態を「ドアゾーン内」に書き換える。
【0032】
現在状態の合理性確認処理を行う(S205)。これは例えば、位置検出センサ21の検出があったにもかかわらず位置検出センサ1または2の出力が検出されている場合は、これらのセンサの故障が疑われる。この場合、乗りかご100の現在位置がドアゾーン内であることからただちに停止し、乗客を速やかに乗りかご100から退出させる。
【0033】
以上によれば、位置検出センサ1及び2が被検出体を検出することで生じる出力により、乗りかごがドアゾーン内(戸開閉可能領域)とドアゾーン外(戸開閉不可能領域)に存在することの認識を安全コントローラ4で切り替えるとともに、停電時などで安全コントローラ4の乗りかご100の現在位置情報が失われた場合においても、位置検出センサ1と2の間に新たに設けた位置検出センサ21を用いることにより、乗りかご100を最長1階床分のみ移動させることで、乗りかご100の現在位置情報を再認識することができ、エレベータの運行を速やかに復旧することが可能となる。
【実施例3】
【0034】
図12は、さらに、他の実施形態を示す安全コントローラ4の構成図、図13はフローチャートである。
【0035】
安全コントローラ4には、機能として診断モード指令発生手段8が新たに設けられている。診断モード指令により安全コントローラ4は診断モードに設定され、位置検出センサや安全コントローラ自体の診断を行う。この診断は、たとえばエレベータの利用客の少ない深夜において実施されたり、定期点検などで自動に実施されたり、するものである。
【0036】
以下、図13に従い診断モードについて説明する。診断モードが開始されると(S300)、乗りかごは階床間へ自動で移動される(S301)。その後、乗りかご100は停止処理により停止され(S302)、診断のために一度乗りかごの現在位置情報がリセットされる(S303)。ステップS303の前における乗りかご100の現在位置情報は、乗りかご現在位置記憶手段6に一時的に退避される。ステップS304では、実施例2における処理フローを実施する。この処理を行い、各位置検出センサに異常がないと判定された場合(S305−YES)は、正常状態へ復帰しエレベータの運行を再開し(S306)、診断モードを終了する(S307)。各センサのいずれかに異常が発見された場合には(S305−NO)、故障を保守管理者へ通知し(S308)、運行は停止し診断モードを終了する(S309)。
【0037】
以上によれば、安全コントローラ4に新たに診断モードを設け、所定の動作を行うことで、各位置検出センサの異常を自動で検出することが可能となる。
【実施例4】
【0038】
図14はさらに、他の実施形態を示す安全コントローラ4の構成図、図15はフローチャートである。
コントローラ4には、乗りかごの絶対位置を検出するための検出器からの信号31が新たに入力される。検出器の例としては、たとえばカム機構を用いたリミットスイッチや、光電センサとそれを検出するための被検出体など、乗りかごの昇降路内における絶対位置を検出できるものが良い。
【0039】
現在状態を再認識する具体的な処理内容について、図15を用いて説明する。安全コントローラ4には、停電時や瞬間停電時に現在状態を再認識できなかった場合のために、乗りかご位置確認モードが設けてあり、以下のステップに従い乗りかごの現在位置を再認識する。
【0040】
停電などにより乗りかご100の現在位置情報が失われた場合、乗りかご位置確認モードが開始される(S400,S401)。次に、乗りかご100の絶対位置を検出するための検出器31で乗りかごの現在位置を確定させるために、乗りかご100を下降または上昇させる(S402)。次に、乗りかご100の絶対位置を検出するための検出器31の応答が検出されるまで乗りかご100の移動を継続させ、検出器31の応答が検出された場合、ステップS404へ移行する(S403)。ステップS404では、安全コントローラ4は検出器31の検出に伴い、乗りかご100の現在状態を検出器の位置に基づく位置情報に書き換える。たとえば、階床間に乗りかごの絶対位置を検出するためのカム型スイッチを設けた場合は、乗りかごの位置は「ドアゾーン外」となるため、安全コントローラ4は現在状態を「ドアゾーン外」に書き換える。続いて、現在状態の合理性確認処理を行う(S405)。これは例えば、検出器31の検出があったにもかかわらず位置検出センサ1または2の出力が検出されている場合は、これらのセンサの故障が疑われる。この場合、乗りかご100の現在位置がドアゾーン内であることからただちに停止し、乗客を速やかに乗りかご100から退出させる。
【0041】
以上によれば、停電時などで安全コントローラ4の乗りかご100の現在位置情報が失われた場合においても、乗りかごの絶対位置を検出するための検出器からの信号31を用いることにより、乗りかご100を任意の位置において現在位置情報を再認識することができ、エレベータの運行を速やかに復旧することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1,2,21 位置検出センサ
4 安全コントローラ
100 乗りかご
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な昇降位置に到達し、乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、
前記乗りかご側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサと、
前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、
を備え、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られた場合、前記現在位置記憶手段に記憶された前記判定結果を反転することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記所定距離は、前記ドアゾーンに対応して設置されていることを特徴としたエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記位置検出センサは、乗り場側敷居を被検出体として検出することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかごの移動方向を検出するパルス発生器を備え、前記パルス発生器と、前記位置検出センサとにより得られる乗りかご移動方向の情報を比較し、一致しない場合、エレベータを停止させることを特徴としたエレベータシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサの間に第3の位置検出センサを設けたことを特徴としたエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られるまで前記乗りかごを昇降させる乗りかご位置確認モードを有することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサの間に第3の位置検出センサを設け、該第3の位置検出センサの出力により前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定を行うことを特徴としたエレベータシステム。
【請求項1】
乗りかごの位置が乗りかご及び乗り場の戸が開閉可能な昇降位置に到達し、乗客が乗降可能である領域を示すドアゾーンを検知するエレベータシステムにおいて、
前記乗りかご側に設けられ、昇降方向に所定距離だけ離され、かつ乗り場側に対向して設置された2個の位置検出センサと、
前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定結果を記憶する現在位置記憶手段と、
を備え、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られた場合、前記現在位置記憶手段に記憶された前記判定結果を反転することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記所定距離は、前記ドアゾーンに対応して設置されていることを特徴としたエレベータシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記位置検出センサは、乗り場側敷居を被検出体として検出することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記乗りかごの移動方向を検出するパルス発生器を備え、前記パルス発生器と、前記位置検出センサとにより得られる乗りかご移動方向の情報を比較し、一致しない場合、エレベータを停止させることを特徴としたエレベータシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサの間に第3の位置検出センサを設けたことを特徴としたエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサのいずれかの出力が得られるまで前記乗りかごを昇降させる乗りかご位置確認モードを有することを特徴としたエレベータシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のものにおいて、前記2個の位置検出センサの間に第3の位置検出センサを設け、該第3の位置検出センサの出力により前記乗りかごの現在位置が前記ドアゾーン内あるいは前記ドアゾーン外に位置しているかの判定を行うことを特徴としたエレベータシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−63354(P2011−63354A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213931(P2009−213931)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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