説明

エレベーターのドア装置

【課題】エレベータードアを駆動するモーターからエレベータードアに駆動力を伝えるベルトのベルト外れやベルトの破断といった異常を検知することのできるエレベーターのドア装置を得る。
【解決手段】エレベータードア2,3と、エレベータードア2,3を駆動するドアモーター9と、ドアモーター9からエレベータードア2,3に駆動力を伝達するベルト11と、ドアモーター9と対向して配置され、ドアモーター9と共にベルト11を支えるプーリー10と、を備えたエレベーターのドア装置において、ドアモーター9の回転角度を検出するエンコーダをプーリー10に設置した。また、ベルト11の異常を、プーリー10に設置したエンコーダで検出される速度と、エレベータードア2,3を駆動する電圧・電流情報を用いて推定した速度とにより検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターのドア装置に係り、特に、ドアを駆動するモーターからドアに駆動力を伝えるベルトの異常を検出することができるエレベーターのドア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターのドア装置は、例えば左右一対のドアと、ドアの上に配置されたハンガケースと、ハンガケース内に配置された駆動プーリーおよび従動プーリーと、両プーリー間に掛け渡されたベルトを備えて構成されている。ハンガケースの下端部には水平方向に延びるドアレールが取り付けられており、左右のドアはベルトに連結されると共に、ドアレールに支持されている。そして、ハンガケースの上部に配置されたドアモーターにより駆動プーリーが駆動されると、駆動プーリーと従動プーリーとの間に掛け渡されたベルトが回転し、右ドアおよび左ドアは反対方向に移動してドアの開閉が行われる。また、上記ベルトに替えて機械的リンク機構を用いるものもあり、この機械的リンク機構を用いるエレベーターのドア装置では、金属製のアームによりエレベータードアの開閉が行われる。
【0003】
エレベーターのドア装置では、左右のドアの開閉タイミング等を調整するために、ドアモーターの回転角度を検出し、その検出角度に基づいてドアモーターの駆動を制御しており、一般に、回転角度センサ等の回転角度検出手段をモーター軸に設置した回転角度検出手段内蔵形のドアモーターが用いられている。
【0004】
上記従来のエレベーターのドア装置のように、ハンガケースの上部にドアモーターが配置されていると、その分、ドア装置が上下方向に大型化することになる。また、回転角度検出手段を内蔵したドアモーターは、軸方向寸法が大きいため、その分、ドア装置の前後方向寸法が大きくなる。
【0005】
近時、昇降路の省スペース化を目的とした機械室のないエレベーターシステムが採用されるようになり、エレベーターのドア装置を構成するハンガケースの内部にドアモーターを配置したり、機械的リンク機構を用いないリニアベルト駆動するドア装置が採用されるようになり、省スペース化が図られている。
【0006】
ドアモーターについては、回転角度センサ等の回転角度検出手段をモーター軸に設置した回転角度検出手段内蔵形のドアモーターを使用せず、ドアモーターの回転子の側方にパルスジェネレータを配置し、そのパルスジェネレータの回転軸に取り付けられたローラをドアモーターの回転子の外周面に当接させて、ドアモーターの回転子と共に回転させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、回転角度センサ等の回転角度検出手段を使用せず、モーターの回転速度を推定することで、エレベーターのドア装置の前後方向に対する省スペース化を図る技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−308240号公報(要約の欄、図1)
【特許文献2】特開2007−84189号公報(要約の欄、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のエレベーターのドア装置は上記のように構成されており、駆動プーリーと従動プーリーとの間に掛け渡されたベルトが回転してドアの開閉が行われるドア装置では、ベルトでドアモーターからの駆動力をドアに伝えることになり、ベルトの磨耗や劣化等によるベルト外れやベルトの破断といった異常になる課題がある。
【0010】
また、機械的リンク機構を用いたドア装置では、金属製のアームでエレベータードアを開閉させるため、ドアモーターからの駆動力がエレベータードアに伝わらない状態になることは少ない。しかし、昇降路の省スペース化を図る目的のために、エレベーターのドア装置をリニアベルト駆動する構造にすることで、上述のように、ベルトでドアモーターからの駆動力をドアに伝えることになり、ベルトの磨耗や劣化等によるベルト外れやベルトの破断といった異常になる課題がある。
【0011】
また、回転角度センサ等の回転角度検出手段をモーター軸に設置した回転角度検出手段内蔵形のドアモーターを使用する場合、もしくは、上記特許文献1で提案されているように、ドアモーターの回転子の側方にパルスジェネレータを配置し、そのパルスジェネレータの回転軸に取り付けられたローラをドアモーターの回転子の外周面に当接させて、ドアモーターの回転子と共に回転させる場合、何れの場合においても、エレベータードアを駆動するドアモーターの駆動力を伝えるベルトのベルト外れやベルトの破断といった異常を検知することができない課題がある。
【0012】
また、上記特許文献2で提案されているように、回転角度センサ等の回転角度検出手段を使用せず、モーターの回転速度を推定する場合においても同様である。そのため、回転角度センサの情報やエレベータードアの全開点や全閉点といった場所を検出する位置スイッチの情報を用いて判断しているが、確実に検知することはできない課題がある。
【0013】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ベルト外れやベルトの破断といった異常を検知すると同時に、ドア装置の省スペース化を図るエレベーターのドア装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係るエレベーターのドア装置は、エレベータードアと、上記エレベータードアを駆動するドアモーターと、上記ドアモーターから上記エレベータードアに駆動力を伝達するベルトと、上記ドアモーターと対向して配置され、上記ドアモーターと共に上記ベルトを支えるプーリーと、を備えたエレベーターのドア装置において、上記ドアモーターの回転角度を検出する回転角度検出手段を、上記プーリーに設置したものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るエレベーターのドア装置によれば、エレベータードアを駆動するモーターからドアに駆動力を伝えるベルトのベルト外れやベルトの破断といった異常を検知でき、また、エレベーターのドア装置の設置スペースを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベーターのドア装置を示す正面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベーターのドア装置におけるドアを開閉駆動するモーターの制御装置を示す機能ブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベーターのドア装置におけるドアを開閉駆動するモーターの制御装置を示す機能ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベーターのドア装置におけるドアの制御動作を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、この発明に係るエレベーターのドア装置について好適な実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態によりこの発明が限定されるものでない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るエレベーターのドア装置を示す構成図である。図1において、エレベーターのドア装置1(以下、単に「ドア装置」ともいう。)は、エレベータードア2,3(以下、単に「ドア」ともいう。)とドア2,3の駆動部4から構成されている。なお、図1では、ドア2,3が駆動部4により白抜き矢印方向に開放動作中の状態を示している。
【0019】
ドア2,3の上端部には、水平方向に延びるガイドレール5に沿って回転移動自在のガイドローラ6が設けられている。これにより、ドア2,3は、ガイドレール5に沿って開閉動作可能に構成されている。
【0020】
また、ドア2,3の上端部には、連結具7,8の一端が固定されており、連結具7,8の他端は、ドアモーター9(以下、単に「モーター」ともいう。)と、プーリー10に巻回された突出ベルト11に固定されている。プーリー10は、モーター9に対向して配置されており、このプーリー10には、回転角度検出手段であるエンコーダあるいは他の回転角度センサ等(以下、単に「エンコーダ」という。)が内蔵されている。エンコーダから構成される回転角度検出手段は、外付けしてもよい。
【0021】
ドア2の上端部に固定された連結具7の上記他端は、突出ベルト11のうちプーリー10の上端部とモーター9との間に位置する部分に固定され、ドア3の上端部に固定された連結具8の上記他端は、突出ベルト11のうちプーリー10の下端部とモーター9との間に位置する部分に固定されている。
【0022】
上記構成により、モーター9の回転トルクは、プーリー10、突出ベルト11および連結具7,8を介して、ドア2,3にそれぞれ伝達され、ドア2,3を開閉駆動する。モーター9は、制御装置12(詳細は後述する。)によって制御され、駆動される。
【0023】
なお、ガイドレール5、ガイドローラ6、連結具7,8、モーター9、プーリー10、突出ベルト11は、ハンガケース13内に配置されている。また、図1においては、代表的にエレベーターのドア装置を示しているが、エレベーター乗場の乗場ドア(図示せず)もかごドアと連動して開閉駆動される。
【0024】
実施の形態1に係るエレベーターのドア装置は上記のように構成されており、次に、ドアを開閉駆動するモーターの制御装置について説明する。
図2は、エレベータードアを開閉駆動するドアモーターの制御装置を示す機能ブロック図である。図2において、ドア1,2の制御装置12は、後述するドア開閉制御手段を含む制御マイコン20と、制御マイコン20の制御下でモーター9を駆動する制御基板30とを備えている。
【0025】
制御マイコン20は、通常動作時の速度指令V*を生成する速度指令発生部21と、速度指令V*に基づいてトルク指令Tr*を生成する速度アンプ22と、トルク指令Tr*を増幅する電流アンプ23と、速度指令V*およびトルク指令Tr*に基づくPWM信号を生成するPWMユニット24と、外部との間で信号を入出力する入出力ポート25とを備えている。
【0026】
制御マイコン20は、入出力ポート25を介して、ドア2,3の外部信号(かご呼び信号など)およびプーリー10からの出力パルスを取り込み、ドア2,3の運転状況を管理するとともに、制御基板30を介してモーター9を制御し、ドア2,3を開閉制御する。
【0027】
制御基板30は、ゲート信号発生装置31と、直流電源を構成するコンバータ32と、ゲート信号発生装置31からのゲート信号により駆動されるインバータ33と、直流電源を安定化する平滑コンデンサ34と、U相、V相電流を検出する電流センサ35、36とを備え、インバータ33の出力電圧によりドア駆動用の3相(U、V、W)のモーター9を駆動する。
【0028】
コンバータ32およびインバータ33は、ゲート信号に基づいてモーター9を駆動するためのパワー回路を構成している。電流センサ35、36により検出されるU相、V相電流信号は、入出力ポート25を介して、制御マイコン20内の電流アンプ23に入力される。プーリー10により検出されるモーター9と同期した回転信号は、入出力ポート25を介して、制御マイコン20内の速度アンプ22に入力される。入出力ポート25は、図示しない外部のセンサ情報も取り込む。
【0029】
速度指令発生部21、速度アンプ22、電流アンプ23およびPWMユニット24によりドア開閉制御手段が構成され、このドア開閉制御手段は、ドア2,3の動作中の開閉速度Vを制御する。PWMユニット24は、制御基板30内のゲート信号発生装置31にPWM信号を送出し、ゲート信号発生装置31を介してインバータ33をPWM駆動する。
【0030】
以上のように、実施の形態1に係るエレベーターのドア装置によれば、モーター9の回転速度と同期したエンコーダを内蔵もしくは外付けしたプーリー10を用いることで、従来と同様にドア2,3の制御を行うことができる。
【0031】
また、モーター9にエンコーダを取り付けないため、エンコーダを取り付けることによる突出した前後方向のスペースを無くすことができ、レイアウト性能を向上することができる。加えて、モーター9にエンコーダを取り付けないため、モーター9の温度の上昇によってエンコーダの対温度性能を考慮する必要がなくなり、プーリー10には安価なエンコーダを内蔵もしくは外付けすることができる。
【0032】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係るエレベーターのドア装置について説明する。図3は、ドアを開閉駆動するドアモーターの制御装置を示す機能ブロック図で、実施の形態1と同一または相当部分には、同一符号を付すことにより説明を省略する。
【0033】
実施の形態1では、制御マイコン20において、エンコーダを内蔵もしくは外付けしたプーリー10からの出力パルスをドア2,3の制御に直接使用しているが、図3に示すように構成してもよい。即ち、入出力ポート25を介して入力されるU相電流値iuおよびV相電流値ivと、電流アンプ23から出力されるvu*,vv*,vw*に基づき、ドア速度計算部26にて、ドアの速度V’を演算する速度センサレス動作をしてもよく、ドア装置の動作の補助装置として、エンコーダを内蔵もしくは外付けしたプーリー10を使用してもよい。その際、内蔵もしくは外付けされるエンコーダには回転角度の精度性能が低い安価なものを用いることができる。
【0034】
以下、図1および図3とともに、図4のフローチャートを参照しながら、実施の形態2に係るエレベーターのドア装置におけるドア開閉時の制御動作について説明する。
【0035】
図3において、制御マイコン20は、実施の形態1で説明した制御マイコン20に、ドア速度V’を計算するドア速度計算部26と、ドア速度の計算値V’と実際値Vからドア2,3の動作が異常であるかを判断するドア異常判断部27と、を加えたものである。この場合、ドア異常判断部27において、ドア速度計算部26で得られたドア速度の計算値V’と、入出力ポート25を介して得たプーリー10からの出力パルスVとを用いて、モーター9と、プーリー10と、突出ベルト11との間に異常がないかを判断する。ドア異常判断部27から出力される異常信号は、速度指令発生部21に入力され、異常状態時のドア動作、例えば開閉動作の停止に切り替える。
【0036】
次に、図4を用いてドア異常判断部27の動作について説明する。図4は、ドア2,3の制御動作を示す状態遷移図である。
【0037】
図4において、初期状態はステートS11の通常状態である。ステートS11において、ドア速度計算部26で得られたドア速度の計算値V’と、入出力ポート25を介して、プーリー10からの出力パルスVとを比較して、差が一定以下(例えば10%以下)の場合、通常状態のステートS11を継続する。ステートS11において、差が一定以上の場合、異常状態のステートS12に状態が遷移する。ステートS12では、異常状態時のドア動作を行う。ステートS12において、異常でない状態になった場合、ステートS11に状態が遷移する。
【0038】
以上のように、実施の形態2に係るエレベーター装置によれば、ドア2,3を駆動するモーター9の回転角度情報と、エンコーダを内蔵もしくは外付けしたプーリー10の回転角度情報とを別々に得ることで、この2つに巻回された突出ベルト11に異常(例えばベルト外れやベルトの破断といった故障状態)が発生したことを検出することができる。
【0039】
また、モーター9にエンコーダを取り付けないため、エンコーダを取り付けることによる突出した前後方向のスペースを無くすことができ、レイアウト性能を向上することができる。加えて、モーター9にエンコーダを取り付けないため、モーター9の温度の上昇によってエンコーダの対温度性能を考慮する必要がなく、また回転角度の精度性能が低いものでよいため、にプーリー10には実施の形態1よりさらに安価なエンコーダを内蔵もしくは外付けすることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 エレベーターのドア装置
2、3 エレベータードア
4 駆動部
5 ガイドレール
6 ガイドローラ
7、8 連結具
9 ドアモーター
10 プーリー
11 突出ベルト
12 制御装置
13 ハンガケース
20 制御マイコン
21 速度指令発生部
22 速度アンプ
23 電流アンプ
24 PWMユニット
25 入出力ポート
26 ドア速度計算部
27 ドア異常判断部
30 制御基板
31 ゲート信号発生装置
32 コンバータ
33 インバータ
34 平滑コンデンサ
35、36 電流センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータードアと、
上記エレベータードアを駆動するドアモーターと、
上記ドアモーターから上記エレベータードアに駆動力を伝達するベルトと、
上記ドアモーターと対向して配置され、上記ドアモーターと共に上記ベルトを支えるプーリーと、を備えたエレベーターのドア装置において、
上記ドアモーターの回転角度を検出する回転角度検出手段を上記プーリーに設置したことを特徴とするエレベーターのドア装置。
【請求項2】
上記プーリーに設置した回転角度検出手段で検出される速度と、上記エレベータードアを駆動する電圧・電流情報を用いて推定した速度とにより、上記ベルトの異常を検出することを特徴とする請求項1に記載のエレベーターのドア装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate