説明

エレベーターの運行制御装置

【課題】開扉運転の迅速に検出するとともに、乗かごの走行を阻止するエレベーターの運行制御装置の提供。
【解決手段】エレベーターかごa1内が無人でかつドアが全閉状態の背景画像を格納する背景画像メモリ部a51と、画像入力手段a3から出力される画像データを所定間隔で格納する現在画像メモリ部a61と、現在画像データa61からオプティカルフローを検出するオプティカルフロー検出手段a64と、差分画像メモリデータからドアの開いている状態を検出するドア開検出手段a7と、このドア開検出手段a7で検出したドア開情報及びオプティカルフロー検出手段a64で検出したオプティカルフローのデータから開扉運転を検出する開扉運転検出手段a8とを備え、開扉運転検出手段a8が開扉1運転を検出すると、電動機の直接制御によりかごの静止状態を維持するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの運行制御装置に係り、特にかご内の画像認識によりエレベーターの安全走行を確保するのに好適なエレベーターの運行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピルを利用する人々にとって、エレベーターは今や縦の交通機関として重要な役割を担っており、特に扉が開いたままエレベーターが走行してしまう(以降“開扉運転”と略)等の事故が発生し、より一層の安全性が要求されており。
【0003】
開扉運転の防止への対策は、これまで種々検討されてきており、かごが走行中及び開閉許可範囲外では、電動機の開扉方向への通電を阻止し、パルス巾制御を行なった場合にも、戸閉め力を確保するという方法が開示され、電動機を開扉方向へ駆動、制御する開扉側駆動素子の一端と、電動機へ供給する電源の一端に接続し、電動機を閉扉方向へ駆動、制御する閉扉側駆動素子の一端との間に、開扉側駆動素子への通電電流を開閉する開閉手段と、開閉手段と並列に一方向のみ通流できる整流器を設ける構成の技術である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平02−169486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来技術の扉の駆動のみに着目した手法では、開扉時以外は戸閉扉力を付与して開扉運転を排除するようにしたものであるが、開扉中に発生した異常によって乗りかごが動くことを検出することができず、乗りかごを停止させることはできないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、開扉運転の迅速に検出するとともに、乗かごの走行を阻止するエレベーターの運行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、エレベーターの運行を制御するエレベーター制御手段と、エレベーターかご内の画像を撮像して画像データを出力する画像入力手段と、前記画像入力手段から出力される前記画像データを格納する格納先を切り換える切り換え手段と、前記画像データから背景差分によって差分を抽出する差分抽出手段と、前記差分抽出手段によって抽出された差分画像を格納する差分画像メモリ部とを備えたエレベーターの運行制御装置において、前記エレベーターかご内が無人でかつドアが全閉状態の背景画像を格納する背景画像メモリ部と、前記画像入力手段から出力される前記画像データを所定間隔で格納する現在画像メモリ部と、現在画像データからオプティカルフローを検出するオプティカルフロー検出手段と、前記差分画像メモリデータからドアの開いている状態を検出するドア開検出手段と、このドア開検出手段で検出したドア開情報及びオプティカルフロー検出手段で検出したオプティカルフローのデータから開扉運転を検出する開扉運転検出手段とを備え、前記開扉運転検出手段が開扉運転を検出すると、電動機の直接制御によりかごの静止状態を維持するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エレベーターかご内の画像情報から、エレベーターのドア開閉状態とエレベーターの走行状態とを判断することで、開扉運転を迅速に検出するとともに、開扉運転検出のとき電動機直接制御するようにしたので、エレベーターの安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のエレベーターの運行制御装置における実施の形態を、図面を用いて説明する。
【0009】
図1は、本発明のエレベーターの運行制御装置における一実施形態の要部構成を示す
ブロック図で、図2は本発明の一実施形態の乗りかご内の断面図である。
【0010】
図1において、a1はエレベーター乗りかご、a2はエレベーターの運行を制御するエレベーター制御手段、a3は画像入力手段、a4は画像入力手段3より得られた出力信号の出力先を切換指示手段a41からの切換指示により、背景画像メモリ部a51あるいは現画像メモリ部a61へと切り換える切換スイッチa42と、切換指示手段a41からなる画像切換手段、a5は画像入力手段a3からの出力画像データを画像切換え手段a4で切り換えることにより得られる背景画像を記憶する背景画像メモリ部a51と、背景画像メモリ部a51内の画像データを差分抽出手段a6へ転送する背景転送手段a52からなる背景抽出手段、a6は画像入力手段a3からの出力を画像切換手段a4で切り換えることにより得られる現在画像を記憶する現画像メモリ部a61と、現画像メモリ部a61内の画像データ及び背景画像メモリ部a51内の画像データ問の差分を演算する差分演算部a62と、差分取得時のしきい値を設定する閾値設定部a63と、現在画像メモリa61内の画像データからオプティカルフローを検出するオプティカルフロー検出部a64からなる差分抽出手段、a7は差分抽出手段a6によって抽出した背景差分の情報から、ドアの開状態を検出するドア開検出手段、a8はオプティカルフロー検出部a64から得られる現在画像のオプティカルフロー及びドア開検出手段a7から得られるドア開検出情報より開扉運転を検出する開扉運転検出手段である。
【0011】
また、図2において、a1はエレベーター乗りかご、a9はドア開検知領域、a10
はかご戸である。
【0012】
ここで画像よりドア開を検出する手法は、まず図2に示すように画像上でドア開を検知するための矩形領域を(x1,y1)、(x2,y2)の座標で設定する。
【0013】
この矩形領域はカメラから見て乗客とドアが重ならないドアの上部付近に設定する。
【0014】
そして、この矩形領域の中で背景画像と現在画像との間で画素ごとに差分をとり、差分が生じればドア開、差分が無ければドア閉と判断する。
【0015】
また、画像より開扉運転を検出する手法は、前記ドア開検出部によってドア開を検出している問に、画面全域からオプティカルフローを検出し、鉛直方向のオプティカルフローが多数検出された場合を開扉運転と判断する。
【0016】
次に、この一実施形態の構成における動作を説明する。
【0017】
初期状態では切換スイッチa42背景画像メモリ部a51側にあるとする。画像切換指示手段a41より切換スイッチa42の切換指示がなされたかを調べて、なされていなければ画像入力手段3より得た出力信号を背景画像メモリ部a51へ入力する。すなわち、背景画像メモリ部a51に定期的に背景画像が設定され続けることとなる。
【0018】
ここで、エレベーターかご内が無人でかつドアが全閉状態であることを人間の目で確認し、切換指示手段a41により切換スイッチa42を現在画像メモリ部a61に切り換える。切換スイッチa42を切り換えたことにより、エレベーターかご内が無人でかつドアが全閉状態の背景が、背景画像メモリ部a51に記憶された状態から更新されなくなり、これが背景画像となる。
【0019】
一方、切換スイッチa42は現画像メモリa51に切換られているため、画像入力手a3で取得した画像は、現画像メモリa61に入力され続けることとなり、定期的に更新される。
【0020】
現画像メモリa61に入力された現在画像は、背景転送手段a52によって転送される背景画像とともに、差分演算部a62に転送され、これら二つの画像間で画素ごとに差分演算を行う。このとき、差分演算部a62では、差分の絶対値の大きさが、閾値設定部a63にあらかじめ設定された閾値よりも大きくかつ、図2に示すあらかじめ定めたドア開検知領域a9内であった画素を計数し、ドア開検出手段a7へ出力する。
【0021】
ドア開検出手段a7では、差分演算部a62より入力された差分の大きい画素の数が、あらかじめ定めた閾値よりも大きい場合に、ドア開を検知したとして、運転制御手段a2及び、開扉運転検出手段a8ヘドア開検出の情報を出力する。
【0022】
運転制御手段a2は、ドア開検出手段a7よりドア開情報が入力されている間は、エレベーターの走行を禁止する。
【0023】
また、現画像メモリ部a61の現在画像は、差分演算部a62へ転送されるのと同時に、オプティカルフロー検出部a64にも転送される。
【0024】
オプティカルフロー検出部a64は、まず、現在画像を所定のブロックに分割し、1フレーム前の現在画像と現在画像を比較して色の分布が最も一致するブロックを探し、そのブロックが二つの画像間で動いた画素数と方向を、ブロックごとに算出する。
【0025】
この算出されたオプティカルフローのうち、鉛直上向き方向のオプティカルフローと鉛直下向きのオプティカルフローをそれぞれ計数して比較し、大きい方のオプティカルフローの数と大きさのデータを開扉運転検出手段a8へと出力する。
【0026】
開扉運転検出手段a8では、オプティカルフロー検出手段a64より入力されたオプティカルフローの総和を算出し、その値が所定の値を超えた場合をエレベーターの走行と判断する。
【0027】
そして、エレベーター走行と判断している間に、ドア開検出手段a7よりドア開情報が入力された場合を開扉運転として検出し、運転制御手段へ開扉運転検出情報を出力する。
【0028】
運転制御手段a2は、開扉運転検出手段a8より、開扉運転検出情報が入力された場合、エレベーター電動機のブレーキのON、OFFに関わらず、電動機の電源を遮断する制御を行ない、エレベーターの静止状態を保つよう制御する。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、ドア閉確認の安全スイッチとは独立した、画像によるドア閉め確認手段を設けられるため、安全スイッチの故障によってスイッチが入り放しになった状態においても、ドア開状態でエレベーターが動くことを防止し、エレベーターの安全性が向上する。
【0030】
また、画像より開扉運転を検知して、電動機を制御して乗りかごの静止状態を保つため、いかなる故障発生の場合にも開扉運転を防止し、エレベーターの安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のエレベーターの運行制御装置における一実施形態の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態の乗りかご内の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
a1 エレベーターかご
a2 運転制御手段
a3 画像入力手段
a4 画像切換手段
a41 切換指示手段
a42 切換スイッチ
a5 背景抽出手段
a51 背景画像メモリ部
a52 背景転送手段
a6 差分抽出手段
a61 現画像メモリ部
a62 差分演算部
a63 閾値設定部
a64 オプティカルフロー検出部
a7 ドア開検出手段
a8 開扉運転検出段
a9 ドア開検出領域
a10 エレベーターかご戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの運行を制御するエレベーター制御手段と、エレベーターかご内の画像を撮像して画像データを出力する画像入力手段と、前記画像入力手段から出力される前記画像データを格納する格納先を切り換える切り換え手段と、前記画像データから背景差分によって差分を抽出する差分抽出手段と、前記差分抽出手段によって抽出された差分画像を格納する差分画像メモリ部とを備えたエレベーターの運行制御装置において、
前記エレベーターかご内が無人でかつドアが全閉状態の背景画像を格納する背景画像メモリ部と、
前記画像入力手段から出力される前記画像データを所定間隔で格納する現在画像メモリ部と、
現在画像データからオプティカルフローを検出するオプティカルフロー検出手段と、前記差分画像メモリデータからドアの開いている状態を検出するドア開検出手段と、このドア開検出手段で検出したドア開情報及びオプティカルフロー検出手段で検出したオプティカルフローのデータから開扉運転を検出する開扉運転検出手段とを備えたことを特徴とするエレベーターの運行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のエレベーターの運行制御装置において、
前記開扉運転検出手段が開扉運転を検出すると、電動機の直接制御によりかごの静止状態を維持するようにしたこと特徴とするエレベーターの運行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−137755(P2008−137755A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324054(P2006−324054)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】