説明

エレベーター装置

【課題】かごの戸開時間をエレベーターの利用状況に合わせて調整し、音声による呼び登録を行うことができる期間を適切に設定することが可能なエレベーター装置を提供する。
【解決手段】マイクロホン6、音声認識手段14、呼び登録手段15、計測手段17、戸開時間調整手段20を備える。音声認識手段14は、マイクロホン6から入力された音声データが既登録の階床データと一致するか否かを判定する。呼び登録手段15は、音声データが既登録の階床データに一致すると音声認識手段14によって判定された場合に、その階床データに対応する行き先階の呼びを登録させる。計測手段17は、乗客がマイクロホン6から行き先階を音声登録するのに要した音声登録時間を計測する。戸開時間調整手段20は、計測手段17によって計測された音声登録時間に基づいて、かご1の戸開時間を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、音声によって呼び登録を行うことができるエレベーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1乃至4には、呼び登録を音声によって行うことができるエレベーター装置が提案されている。
【0003】
特許文献1及び2に記載のものでは、音声入力用のマイクロホンの前に人がいない場合は、音声認識処理を禁止し、呼びの誤登録(音声の誤認識)が発生することを防止している。特許文献3に記載のものでは、マイクロホンから所定の音声を入力することにより、各種運転モードの中から所望の運転モードを選択できるようにしている。特許文献4に記載のものでは、かごの行き先を判定することにより、不適切な行き先の呼び登録が行われることを禁止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2557939号公報
【特許文献2】特開平3−98967号公報
【特許文献3】特開2010−260693号公報
【特許文献4】特開2010−254437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音声によって呼び登録を行うことができるエレベーター装置では、呼びの誤登録(音声の誤認識)を防止するため、音声の入力を、戸開時のみ等、一定の期間に制限することが有効である。しかし、音声入力が一定の期間に制限されてしまうと、音声入力に慣れていない乗客がエレベーターを利用しようとした際に、呼びの登録が完了する前に、かごが走行を開始してしまうといった問題が発生する。
【0006】
また、このような機能を備えたエレベーター装置では、乗客が操作に慣れてくると、音声入力に必要な時間が短くなっていく。このため、音声入力のための時間を常に長く設定しておくと、乗場での無駄なかごの停止時間が増加してしまい、エレベーターの運行効率が悪化するといった問題もあった。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、かごの戸開時間をエレベーターの利用状況に合わせて調整し、音声による呼び登録を行うことができる期間を適切に設定することが可能なエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るエレベーター装置は、エレベーターのかごに設けられたマイクロホンと、マイクロホンから入力された音声データに対して所定の音声認識処理を行い、その音声データが既登録の階床データと所定の条件で一致するか否かを判定する音声認識手段と、音声データが既登録の階床データに一致すると音声認識手段によって判定された場合に、その階床データに対応する行き先階の呼びを登録させる呼び登録手段と、乗客がマイクロホンから行き先階を音声登録するのに要した音声登録時間を計測する計測手段と、計測手段によって計測された音声登録時間に基づいて、かごの戸開時間を調整する調整手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るエレベーター装置であれば、かごの戸開時間をエレベーターの利用状況に合わせて調整することができ、音声による呼び登録を行うことができる期間を適切に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1におけるエレベーター装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエレベーター装置のかご内の状態を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2におけるエレベーター装置の要部を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3におけるエレベーター装置の要部を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態3におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図において、同一又は相当する部分には、同一の符号を付している。重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置を示す構成図である。図2はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置のかご内の状態を示す図である。
【0013】
図1及び図2において、1はエレベーターのかご、2はエレベーターの制御盤である。かご1は、エレベーターの昇降路内を昇降する。かご1には、人感センサ(人検出装置)3、報知器4、音声登録装置5が備えられている。制御盤2は、エレベーター全体の運行制御を司る。かご1の走行制御や、かご1の戸開閉制御は、制御盤2によって行われる。
【0014】
人感センサ3は、所定の検出範囲にいる人を検出する機能を有している。具体的に、人感センサ3は、音声登録装置5の使用者となり得るエレベーターの乗客を検出するために備えられている。例えば、人感センサ3は、その検出範囲が、かご1の出入口を横切るように設定される(図2参照)。図2に示す例では、かご1の出入口を形成する縦柱に複数の人感センサ3を設置し、各検出範囲を上下に配置している。かかる構成であれば、乗客は、かご1の出入口を通過する際に、少なくとも何れかの人感センサ3によって確実に検出される。
【0015】
報知器4は、かご1内の乗客に所定の情報を報知する機能を有している。報知器4は、例えば、かご1内の乗客に音声案内を行うスピーカや、文字等を表示するディスプレイによって構成される。報知器4は、制御盤2によって制御される。
【0016】
音声登録装置5は、かご1内の乗客が音声によって呼びを登録するためにかご1に設置されたものである。音声登録装置5は、例えば、マイクロホン(音声入力装置)6、表示装置7、音声認識装置8を備えている。
【0017】
マイクロホン6は、音声入力用としてかご1に設置されたものである。音声によって呼びを登録したい乗客は、自分の行き先階等の音声情報をマイクロホン6から入力する。表示装置7は、音声登録装置5が動作中であること、即ち、音声による呼び登録が可能なことをかご1内の乗客に表示する機能を有している。表示装置7は、例えば、LEDによって構成される。
【0018】
図2に示す例では、マイクロホン6及び表示装置7をかご1内の操作盤9に配置している。操作盤9には、上記報知器4の他、戸開ボタン10、戸閉ボタン11、各行き先ボタン12が設けられている。
【0019】
音声認識装置8は、本発明の要部を構成する。音声認識装置8には、人検出手段13、音声認識手段14、呼び登録手段15、呼び登録可能判定手段16、計測手段17、記憶手段18、算出手段19、戸開時間調整手段20が備えられている。
【0020】
人検出手段13は、人感センサ3からの検出信号を受信し、音声登録装置5の使用者となり得る乗客の有無を検出する。即ち、かご1の出入口を通過する乗客が人感センサ3によって検出されると、人検出手段13は、(上記使用者となり得る)乗客の存在を検出する。
【0021】
音声認識手段14は、音声登録装置5の音声認識機能を司る。例えば、音声認識手段14は、マイクロホン6から音声データが入力されると、その音声データに対して所定の音声認識処理を行う。そして、音声認識手段14は、入力された音声データが既登録の階床データの何れかと所定の条件で一致するか否かを判定する。
【0022】
呼び登録手段15は、呼びの登録要求をエレベーターの制御盤2に送信し、制御盤2に呼びの登録を行わせる機能を有している。例えば、呼び登録手段15は、マイクロホン6から入力された音声データが既登録の階床データと所定の条件で一致する旨が音声認識手段14によって判定された場合に、その階床データに対応する行き先階の呼びの登録要求を、制御盤2に送信する。
【0023】
呼び登録可能判定手段16は、音声による呼び登録が可能か(可能な時か)否かを判定する機能を有している。即ち、呼び登録可能判定手段16によって音声による呼び登録が不可と判定されている時に乗客がマイクロホン6に対して音声を発しても、呼びの登録は行われない。このような機能は、呼び登録可能判定手段16によって呼び登録が可能と判定されている時のみ、マイクロホン6のスイッチをON(音声入力が可能)にしたり、音声認識手段14の音声認識機能を有効にしたりすることにより、実現できる。
【0024】
呼び登録可能判定手段16には、人検出手段13から乗客の有無に関するデータが入力される。また、呼び登録可能判定手段16には、制御盤2から、エレベーターの運行状況に関するデータが入力される。制御盤2から入力されるデータには、例えば、かご1の戸開閉情報等が含まれる。呼び登録可能判定手段16は、入力された各種データに基づいて、音声による呼び登録が可能か否かを判定する。
【0025】
例えば、呼び登録可能判定手段16は、かご1の戸開時に、人検出手段13によって乗客の存在が検出されると、音声による呼び登録が可能な旨を判定する。呼び登録可能判定手段16は、音声による呼び登録が可能な旨を判定すると、音声認識手段14による音声認識処理を開始させる。
また、呼び登録可能判定手段16は、例えば、かご1の戸閉動作が開始される(或いは、戸閉動作が完了する)と、音声認識手段14による音声認識処理を終了させる。これにより、音声による呼び登録が、一定の期間に制限される。
【0026】
計測手段17は、音声登録時間を計測する機能を有している。音声登録時間とは、乗客がマイクロホン6から行き先階を音声登録するのに要した時間のことである。例えば、当該エレベーターに不慣れな乗客は、かご1に乗ってから自分の行き先階を音声登録するまでの時間が長くなる。また、この乗客が何度も当該エレベーターを利用して操作に慣れてくると、かご1に乗った直後に自分の行き先階を音声登録できるようになる。
【0027】
計測手段17は、例えば、呼び登録可能判定手段16によって音声認識手段14による音声認識処理が開始されると、音声登録時間の計測を開始する。そして、計測手段17は、音声認識手段14によって、マイクロホン6から入力された音声データと既登録の階床データの何れかとが所定の条件で一致する旨が判定されると、音声登録時間の計測を終了する。計測手段17によって計測された音声登録時間は、記憶手段18に記憶される。
【0028】
算出手段19は、計測手段17によって計測された音声登録時間の平均値や偏差を算出する機能を有している。計測手段17によって計測された音声登録時間の情報は、記憶手段18に蓄積されていく。算出手段19は、記憶手段18に記憶されている内容に基づいて、所定の条件下、上記算出を行う。
【0029】
戸開時間調整手段20は、計測手段17によって計測された音声登録時間に基づいて、かご1の戸開時間を調整する機能を有している。例えば、戸開時間調整手段20は、算出手段19によって算出された音声登録時間の平均値や偏差に基づいて、適正な戸開時間を算出する。そして、戸開時間調整手段20は、戸開時間を算出すると、実際の戸開時間をその算出した時間に合わせるため、所定の信号を制御盤2に送信する。
【0030】
音声認識装置8に備えられた13乃至20に示す各手段は、例えば、マイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成される。
【0031】
次に、図3も参照し、上記構成を有するエレベーター装置の動作について具体的に説明する。図3はこの発明の実施の形態1におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。
【0032】
音声登録装置5では、呼び登録可能判定手段16が、エレベーターの運行状況に関するデータを制御盤2から取得する(S101)。S101において呼び登録可能判定手段16が取得するデータには、例えば、かご1の戸開閉状況、呼びの登録状況、かご1への乗車負荷といった各種データが含まれる。
また、人検出手段13が、音声登録装置5の使用者状況に関するデータを人感センサ3から取得する(S102)。
【0033】
S101及びS102において各種データを取得すると、音声登録装置5は、呼び登録可能判定手段16によって、現在、音声によって呼びを登録することが可能な状況か否かを判断する(S103)。例えば、制御盤2から戸開中である旨の信号を受信している時に、人検出手段13から乗客の存在を検出した旨の信号が入力されると、呼び登録可能判定手段16は、音声による呼び登録が可能な旨を判定する。
【0034】
S103において音声による呼び登録が可能な旨が判定されると、音声登録装置5は、表示装置7及びマイクロホン6の各スイッチをONにする(S104)。これにより、例えば、図2に示すように、表示装置7のLEDが点灯して、「使用可能」等の内容が表示される。この時、報知器4から同様の報知を行っても良い。また、マイクロホン6から音声の入力を行うことが可能となる。
【0035】
また、S103において音声による呼び登録が可能な旨が判定されると、音声登録装置5では、計測手段17が音声登録時間の計測を開始する(タイマー起動)(S105)。更に、S103において音声による呼び登録が可能な旨が判定されると、音声認識手段14が、音声認識処理を開始する(S106)。即ち、音声認識手段14は、マイクロホン6から音声データが入力されると、入力された音声データの解析を行い、その音声データが既登録の階床データの何れかと所定の条件で一致するか否かを判定する(S107)。
【0036】
マイクロホン6から入力された音声データが何れかの階床データに一致する、即ち、音声認識手段14による音声認識が成功すると(S107のYes)、計測手段17は、音声登録時間の計測を停止し(タイマー停止)、計測した音声登録時間を記憶手段18に記憶させる(S108、S109)。
【0037】
記憶手段18に音声登録時間を新規に記憶させると、音声登録装置5は、記憶手段18に記憶されている音声登録時間の数をカウントし(S110)、その数が所定の基準値に達したか否かを判定する(S111)。S110及びS111の処理は、例えば、算出手段19が行う。
【0038】
上記基準値は、平均値を算出するために必要な音声登録時間の収集数のことである。この基準値は、エレベーターの設置状況等に応じて、音声登録装置5に予め設定されている。例えば、基準値が100と設定されている場合、音声登録装置5は、S111において、記憶手段18に記憶されている音声登録時間の数が100回に達したか否かを判定する。
【0039】
記憶されている音声登録時間の数が基準値に達していない場合(S111のNo)、音声登録装置5は、戸開時間の調整を要求しない。かかる場合、音声登録装置5は、呼び登録手段15によって、S107で認識された行き先階への呼び登録要求を、制御盤2に送信する(S112)。
その後、音声登録装置5は、S101の処理に戻る。
【0040】
一方、記憶されている音声登録時間の数が基準値に達した場合(S111のYes)、音声登録装置5は、算出手段19によって、記憶手段18に記憶されている音声登録時間の平均値と偏差とを算出する(S113)。また、戸開時間調整手段20は、算出手段19の算出結果に基づいて、現状に最適な戸開時間を決定する(S114)。
【0041】
例えば、音声登録時間の平均値(平均音声登録時間)の±5秒の範囲に、全て(或いは、所定の割合以上)の乗客が音声登録を完了できると設定する。かかる場合、戸開時間調整手段20は、平均音声登録時間に5秒を加算すれば、適切な戸開時間になると判断する。即ち、戸開時間調整手段20は、算出された平均音声登録時間が20秒であれば、戸開時間を25秒に決定する。また、戸開時間調整手段20は、平均音声登録時間が25秒であれば、戸開時間を30秒に決定する。
【0042】
上記は、平均音声登録時間に一定の余裕時間を加算して戸開時間を決定する方法である。他の方法として、平均音声登録時間に加算する余裕時間を、算出手段19が算出した偏差等から決定しても良い。例えば、平均音声登録時間が20秒でも、収集した全て(或いは、所定の割合以上)の音声登録時間が22秒以下であった場合は、戸開時間調整手段20は、戸開時間を22秒に決定する。
戸開時間調整手段20は、戸開時間の決定方法を、エレベーターの設置状況に応じて任意に使い分けても良い。
【0043】
S114において戸開時間を決定すると、音声登録装置5は、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間とS107で認識された行き先階への呼び登録要求とを、制御盤2に送信する(S115)。
その後、音声登録装置5は、S101の処理に戻る。
【0044】
戸閉動作が開始されること等により、呼び登録可能判定手段16が登録不可の旨を判定すると(S103のNo)、音声登録装置5は、表示装置7及びマイクロホン6の各スイッチをOFFにする(S116)。これにより、表示装置7のLEDが消灯され、かご1内の乗客に対して、音声登録装置5の使用時間(音声入力が可能な時間)が終了した旨が報知される。また、S103において音声による呼び登録が不可と判定されると、音声登録装置5は、音声認識手段14による音声認識処理を終了させる(S117)。
【0045】
この発明の実施の形態1によれば、かご1の戸開時間をエレベーターの利用状況に合わせて調整することができる。このため、音声による呼び登録を行うことができる期間を適切に設定することが可能となる。
【0046】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるエレベーター装置の要部を示す構成図である。
本実施の形態における音声認識装置8には、上述の13乃至20に示す各手段に加え、稼働負荷判定手段21及び補正手段22が備えられている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。稼働負荷判定手段21及び補正手段22は、他の各手段13乃至20と同様に、例えば、マイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成される。
【0047】
エレベーターがオフィスビル等に設置されている場合、朝の出勤時間帯や昼の休憩時間帯、夕方の退勤時間帯といった特定の時間帯は、エレベーターは、操作に慣れている乗客によって利用されることが多い。また、そのような時間帯は、エレベーターの稼働率(以下、「稼働負荷」ともいう)が高い。一方、出勤時間帯と昼の休憩時間帯との間は、エレベーターは、操作に不慣れな乗客(例えば、来客等)によって利用されることが多く、その稼働率も低い。
【0048】
本実施の形態における音声登録装置5では、エレベーターの稼働率が高い所定の時間帯とそれ以外の時間帯との双方或いは一方において、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間に補正を加え、サービスの向上を図る。
【0049】
制御盤2には、エレベーターの稼働負荷が高い時間帯として、所定の時間帯が予め登録されている。稼働負荷が高い時間帯として、複数の時間帯を登録しても良い。また、上記登録する時間帯は、呼びの発生個数等の実績値から求めても良い。
【0050】
稼働負荷判定手段21は、現在の時刻が、エレベーターの稼働負荷が高い時間帯に該当するか否かを判定する。例えば、稼働負荷判定手段21は、呼び登録手段15によって呼び登録が行われる時、即ち、呼び登録手段15から呼び登録要求が出力された時に、現在時刻と登録されている時間帯とを比較し、上記判定を行う。
【0051】
補正手段22は、稼働負荷判定手段21の判定結果に基づいて、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間を補正する機能を有している。
【0052】
以下に、図5も参照し、上記構成を有するエレベーター装置の動作について具体的に説明する。図5はこの発明の実施の形態2におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。なお、図5に示す動作は、図3のS115の動作に相当する。即ち、他の動作(図5に示す動作の前後)は、図3のS101乃至S114、S116及びS117と同様である。
【0053】
戸開時間調整手段20が算出手段19の算出結果に基づいて戸開時間を決定すると(S114)、稼働負荷判定手段21は、制御盤2からエレベーターの稼働負荷が高い時間帯として登録されている情報を取得し、現在時刻がその時間帯に含まれているか否かを判定する(S201、S202)。
【0054】
現在時刻がエレベーターの稼働負荷が高い時間帯に該当する場合、補正手段22は、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間を補正する(S203)。例えば、エレベーターの稼働負荷が高い時間帯は、当該エレベーターの操作に慣れている乗客が多いと判断し、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間よりも短い時間を、補正後の戸開時間とする。例えば、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間が25秒であれば、そこから5秒を引いて、戸開時間を20秒とする。
なお、上記補正時間は、エレベーターの設置状況等に応じて適宜設定すれば良い。
【0055】
S203において戸開時間を補正すると、音声登録装置5は、補正手段22によって補正された戸開時間とS107で認識された行き先階への呼び登録要求とを、制御盤2に送信する(S204)。
【0056】
一方、現在時刻がエレベーターの稼働負荷が高い時間帯に該当しない場合(S202のNo)、音声登録装置5は、戸開時間調整手段20が決定した戸開時間とS107で認識された行き先階への呼び登録要求とを、制御盤2に送信する(S204)。
その後、音声登録装置5は、S101の処理に戻る。
【0057】
上記構成を有するエレベーター装置であれば、エレベーターの稼働負荷が高い時間帯の戸開時間を更に適切に調整することができる。これにより、乗客の無駄な待ち時間を無くして、エレベーターの稼働率を更に向上させることが可能となる。
【0058】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3におけるエレベーター装置の要部を示す構成図である。
本実施の形態における音声認識装置8には、上述の14乃至20(或いは、14乃至22)に示す各手段に加え、人検出手段13aが備えられている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。人検出手段13aは、他の各手段14乃至20と同様に、例えば、マイクロコンピュータ上のソフトウェアによって構成される。
【0059】
実施の形態1及び2の音声登録装置5がかご1に備えられている場合、戸開時間調整手段20によって戸開時間が短く調整されている時に、そのエレベーターに慣れていない乗客(以下、「初心者」ともいう)が音声によって呼びを登録しようとすると、登録のための時間が足りず、登録前にかご1が出発してしまう可能性がある。
【0060】
本実施の形態における音声登録装置5では、初心者がエレベーターを利用する場合は、戸開時間を初心者用の時間に設定して、サービスの向上を図る。
【0061】
人検出手段13aは、上記人検出手段13の機能に加え、検出された乗客が初心者であるか否かを判定する機能を有している。かかる機能は、例えば、人検出装置として個人識別機器を用いることによって実現できる。かかる場合、個人識別機器は、人検出手段13aに対して識別結果を送信する。
【0062】
音声登録装置5には、予め初心者用の戸開時間が登録されている。人検出手段13aによって検出された乗客が初心者の場合、戸開時間調整手段20は、音声登録時間の平均値から算出された戸開時間が設定されている場合であっても、その戸開時間に関わらず、上記初心者用の戸開時間を制御盤2に送信する。これにより、初心者がエレベーターを利用する場合は、常に、かご1を所定時間戸開させておくことができる。
【0063】
以下に、図7も参照し、上記構成を有するエレベーター装置の動作について具体的に説明する。図7はこの発明の実施の形態3におけるエレベーター装置の動作を示すフローチャートである。なお、図5に示す動作は、図3のS102の動作に相当する。即ち、他の動作(図5に示す動作の前後)は、図3のS101、103乃至S117と基本的に同様である。
【0064】
音声登録装置5では、呼び登録可能判定手段16が、エレベーターの運行状況に関するデータを制御盤2から取得する(S101)。また、人検出手段13aが、音声登録装置5の使用者状況に関するデータを人検出装置(個人識別機器)から取得する(S301)。
【0065】
人検出手段13aは、取得したデータに基づいて、検出された乗客が所定の初心者に該当するか否かを判定する(S302)。初心者に該当するか否かの条件は、音声登録装置5に予め登録されている。例えば、音声登録回数が所定値(例えば、50回)以下の場合は、その乗客が初心者である旨を判定する。また、磁気カードやICタグ等を利用して乗客が来訪者か否かを判別することができる場合は、来訪者は常に初心者であると判定する。
【0066】
エレベーターの乗客が初心者に該当しない場合、音声登録装置5は、図1のS103以下に示す処理を行う。
【0067】
エレベーターの乗客が初心者に該当する場合、音声登録装置5では、戸開時間を初心者用の時間に設定する(S303)。例えば、音声登録装置5に、初心者用の戸開時間を30秒と予め登録しておく。戸開時間調整手段20は、人検出手段13aによって乗客が初心者であると判定されると、戸開時間を30秒に決定する。
【0068】
本実施の形態における音声登録装置5では、乗客が初心者に該当する場合と初心者に該当しない場合とにおいて、戸開時間を分けて調整している。このため、初心者が呼び登録を行った時の音声登録時間が記憶手段18に記憶されてしまうと、音声登録時間の平均値が大きな値になり、上記戸開時間を分けた効果が半減してしまう。即ち、操作に慣れた乗客がエレベーターを利用した際に、その乗客が、音声登録後、かご1内でしばらくの間待たされてしまう恐れがある。
【0069】
このような不都合を防止するため、S302において乗客が初心者であることが判定されると、音声登録装置5は、計測手段17による音声登録時間の計測を禁止する(S304)。即ち、乗客が初心者の場合は、計測手段17による音声登録時間の計測は行われず、音声登録時間は記憶手段18に記憶されない。
【0070】
S304のブロック処理を行うと、音声登録装置5は、S301で特定した乗客(初心者)の音声登録回数をカウントする(S305)。
その後、図1のS103以下に示す処理を行う。なお、S302においてYesの判定がなされた場合、音声登録装置5は、図1のS105、S108、S109乃至S114の処理を行わず、S115において、上記初心者用の戸開時間と呼びの登録要求とを制御盤2に送信する。
【0071】
上記構成を有するエレベーター装置であれば、乗客が初心者に該当する場合と初心者に該当しない場合とにおいて、戸開時間を適切に調整することができ、乗客に最適な戸開時間でサービスを提供することができるようになる。
【符号の説明】
【0072】
1 かご
2 制御盤
3 人感センサ
4 報知器
5 音声登録装置
6 マイクロホン
7 表示装置
8 音声認識装置
9 操作盤
10 戸開ボタン
11 戸閉ボタン
12 行き先ボタン
13、13a 人検出手段
14 音声認識手段
15 呼び登録手段
16 呼び登録可能判定手段
17 計測手段
18 記憶手段
19 算出手段
20 戸開時間調整手段
21 稼働負荷判定手段
22 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごに設けられたマイクロホンと、
前記マイクロホンから入力された音声データに対して所定の音声認識処理を行い、その音声データが既登録の階床データと所定の条件で一致するか否かを判定する音声認識手段と、
音声データが既登録の階床データに一致すると前記音声認識手段によって判定された場合に、その階床データに対応する行き先階の呼びを登録させる呼び登録手段と、
乗客が前記マイクロホンから行き先階を音声登録するのに要した音声登録時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された音声登録時間に基づいて、前記かごの戸開時間を調整する調整手段と、
を備えたエレベーター装置。
【請求項2】
前記計測手段によって計測された音声登録時間を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の記憶内容に基づいて、音声登録時間の平均値を算出する算出手段と、
を備え、
前記調整手段は、前記算出手段によって算出された音声登録時間の平均値に基づいて、前記かごの戸開時間を調整する請求項1に記載のエレベーター装置。
【請求項3】
前記算出手段は、音声登録時間の平均値と偏差とを算出し、
前記調整手段は、前記算出手段によって算出された音声登録時間の平均値と偏差とに基づいて、前記かごの戸開時間を調整する
請求項2に記載のエレベーター装置。
【請求項4】
所定の検出範囲にいる乗客の存在を検出する人検出手段と、
前記かごの戸開時に、前記人検出手段によって乗客の存在が検出されると、前記音声認識手段による音声認識処理を開始させる呼び登録可能判定手段と、
を備え、
前記計測手段は、前記音声認識手段による音声認識処理が開始されると音声登録時間の計測を開始し、音声データと既登録の階床データとの一致が前記音声認識手段によって判定されると、音声登録時間の計測を終了する請求項1から請求項3の何れかに記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記呼び登録可能判定手段は、前記かごの戸閉動作が開始される又は戸閉が完了すると、前記音声認識手段による音声認識処理を終了させる請求項4に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
エレベーターの稼働負荷が高い所定の時間帯に、前記調整手段によって調整された戸開時間を補正する補正手段と、
を備えた請求項1から請求項5の何れかに記載のエレベーター装置。
【請求項7】
所定の検出範囲にいる乗客の存在を検出し、その乗客が所定の初心者であるか否かを判定する人検出手段と、
を備え、
前記調整手段は、前記人検出手段によって検出された乗客が初心者の場合は、前記計測手段によって計測された音声登録時間に基づく戸開時間に関わらず、前記かごを所定時間戸開させる請求項1から請求項3の何れかに記載のエレベーター装置。
【請求項8】
前記計測手段は、前記人検出手段によって検出された乗客が初心者の場合は、音声登録時間を計測しない請求項7に記載のエレベーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95595(P2013−95595A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243335(P2011−243335)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】