説明

エレベータ制御システム

【課題】本発明は、火災発生時にエレベータを利用した避難をより効率的に実施することができるエレベータ制御システムを得ることを目的とするものである。
【解決手段】エレベータ制御装置2には、過負荷警告手段12が含まれている。過負荷警告手段12、かご3内の負荷が過負荷であることが検出されると、かご3内の乗客に対して降車を促す警告を発する。また、過負荷警告手段12は、避難運転実施中に過負荷が検出されると、通常運転時とは異なる方法でかご3内の乗客に対して警告を発する。この例では、通常運転時とは異なる警告方法として、かご3内の照明を消灯させた後フリッカー動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルにおける火災発生時にエレベータに対する避難運転制御を実施するエレベータ制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの制御装置では、建物に火災が発生すると、かごは、最寄り階に移動された後、避難階に移動される。この後、エレベータの運転は不可となり、かごは避難階に停止したままとなる。しかし、複数のエレベータが設置されている場合、複数のかごが一度に同一の避難階に帰着すると、避難した乗客により避難階が混雑してしまう。これに対して、避難階への帰着のタイミングを、エレベータグループ毎にずらす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記のような制御方法では、安全な階にサービスするエレベータに対しても、通常運転を行う時間を少し延長するのみで、エレベータを避難手段として積極的に利用しておらず、避難に時間がかかってしまう。これに対して、近年、エレベータを避難手段として利用する方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−8954号公報
【非特許文献1】平成16年度日本火災学会研究発表会概要集(2004年)pp.590−593「高層ビルにおけるエレベータ避難の可能性に関する研究(その2)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のエレベータを用いた避難方法では、エレベータ乗場に乗客が集中し、到着したかごに多数の乗客が一気に乗り込むことが考えられる。通常運転時には、かご内負荷が過負荷になると、ブザー音やアナウンスにより降車を促すが、火災発生時の混乱状態では、通常の警告では乗客が過負荷であることになかなか気付かず、かごの走行開始が遅れ、避難効率が低下する恐れがあった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、火災発生時にエレベータを利用した避難をより効率的に実施することができるエレベータ制御システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエレベータ制御システムは、火災発生時に、エレベータにより利用者を避難させるための避難運転を実施するものであって、避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、通常運転時とは異なる警告をかご内の乗客に対して発する避難運転過負荷警告部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエレベータ制御システムは、避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、通常運転時とは異なる警告をかご内の乗客に発するので、火災発生時の混乱状態でも、過負荷であることを乗客に速やかに理解させることができ、過負荷によるかごの走行開始の遅れを防止し、エレベータを利用した避難をより効率的に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータ制御システムを示すブロック図である。ビル内には、複数台のエレベータが設置されている。また、ビルには、複数のエレベータ群管理装置1が設けられている。各エレベータ群管理装置1は、対応する複数のエレベータ制御装置2を群として管理する。各エレベータ制御装置2は、対応するエレベータのかご3の運転を制御する。
【0010】
ビル内には、複数の火災感知器4及び複数の非常放送装置5が設置されている。非常放送装置5は、非常時に避難誘導に関するアナウンス等を実施する。火災感知器4からの信号は、防災管理装置6に入力される。防災管理装置6は、ビル内の防災センタ(監視室)に設置され、非常放送装置5を含むビル全体の防災機器を管理統括する。
【0011】
エレベータ群管理装置1及び防災管理装置6には、避難支援装置7が接続されている。避難支援装置7は、例えば防災センタに設置され、火災発生時に、エレベータによる避難運転の計画を作成し、その計画に基づく避難運転の指令をエレベータ群管理装置1に出力する。避難運転では、例えば、かご3が所定の救出階と避難階との間で往復運転される。
【0012】
エレベータ制御装置2には、通信手段8、運転制御手段9、避難運転実施手段10、過負荷検出手段11及び過負荷警告手段12が含まれている。これらの手段8〜12の機能は、エレベータ制御装置2に含まれるマイクロコンピュータにより実現される。即ち、マイクロコンピュータには、各手段8〜12の機能を実現するためのプログラム(ソフトウエア)が格納されている。
【0013】
通信手段8は、エレベータ群管理装置1等との通信を行う。運転制御手段9は、通常運転時に、エレベータ群管理装置1からの指令に基づいて、対応するかご3の運転を制御する。避難運転実施手段10は、火災発生時に、避難支援装置7及びエレベータ群管理装置1からの指令の指令に基づいて、対応するかご3の避難運転を実施する。
【0014】
過負荷検出手段11は、秤装置(図示せず)等からの情報に基づいて、かご3内の負荷が過負荷状態にあることを検出する。過負荷警告手段12、かご3内の負荷が過負荷であることが検出されると、かご3内の乗客に対して降車を促す警告を発する。
【0015】
具体的には、過負荷警告手段12は、通常運転時に過負荷が検出されると、かご3に設けられた警告装置(図示せず)により、例えばブザー音やアナウンス等による警告を発しさせる。また、過負荷警告手段12は、避難運転実施中に過負荷が検出されると、通常運転時とは異なる警告をかご3内の乗客に対して発する。この例では、通常運転時とは異なる警告として、かご3内の照明を消灯させた後フリッカー(flicker)動作させる。即ち、実施の形態1では、エレベータ制御装置2が避難運転過負荷警告部として機能する。
【0016】
次に、動作について説明する。防災管理装置6で火災が確定されると、その情報が避難支援装置7に入力される。これにより、避難支援装置7は、全てのエレベータについて火災時管制運転を実施するための指令を出力する。火災時管制運転では、全てのかご3を所定の帰着階(例えば最寄り階)に帰着させ、戸開して乗客を降車させる。
【0017】
火災時管制運転が終了すると、避難支援装置7は、避難運転の開始が可能であるかどうかを判定する。避難運転の開始が不可であれば、全てのエレベータを休止させたままとする。避難運転の開始が可能であれば、避難運転計画に基づいて避難運転を実施する。
【0018】
図2は図1のエレベータ制御装置2の避難運転実施中の救出階での動作を示すフローチャートである。かご3が救出階に到着すると、戸開して乗客をかご3に乗車させる(ステップS1)。そして、過負荷が検出されたかどうかを判定する(ステップS2)。過負荷が検出されていなければ、戸開から所定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS3)。そして、所定時間経過していなければ、過負荷の判定に戻る(ステップS2)。
【0019】
このように、エレベータ制御装置2は、戸開から所定時間が経過するまで、過負荷が検出されたかどうかを監視する。そして、過負荷が検出されないまま所定時間が経過すると、戸閉してかご3の走行を開始する(ステップS4)。
【0020】
一方、戸開中に過負荷が検出されると、まず通常運転時と同様にブザー及びアナウンスによる警告を所定時間発する(ステップS5)。この後、エレベータ制御装置2は、過負荷が解消されたかどうかを判定する(ステップS6)。
【0021】
ブザー及びアナウンスにより過負荷が解消されない場合、エレベータ制御装置2は、ブザー及びアナウンスによる警告に加えて、かご3内の照明を消灯させた後フリッカー動作させることによる警告を発する(ステップS7)。このような警告は、過負荷が解消されるまで継続される。
【0022】
警告により過負荷が解消されると、ブザー及びアナウンスを終了するとともに、かご3内の照明を通常照明(点灯)とし(ステップS8)、戸開から所定時間が経過したかどうかを判定する。そして、所定時間経過していなければ過負荷の判定に戻り(ステップS2)、所定時間経過していれば戸閉してかご3の走行を開始する(ステップS4)。
【0023】
このようなエレベータ制御システムでは、避難運転実施中にかご3内の負荷が過負荷になると、通常運転時とは異なる警告をかご3内の乗客に発するので、火災発生時の混乱状態でも、過負荷であることを乗客に速やかに理解させることができ、過負荷によるかご3の走行開始の遅れを防止し、エレベータを利用した避難をより効率的に実施することができる。
【0024】
また、避難運転実施中に過負荷が検出されると、通常運転時の伝達方法(音声による伝達方法)とは異なる伝達方法(光による伝達方法)で警告を発するので、火災発生時の混乱状態でも、過負荷であることをより確実に乗客に理解させることができる。
さらに、避難運転実施中に過負荷が検出されると、かご3内の照明の状態を変化させて警告を発するので、既存の照明装置を利用してかご3内の全体に視覚的に警告を伝えることができ、過負荷であることをより効果的に乗客に理解させることができる。
さらにまた、避難運転実施中に過負荷が検出されると、通常運転時の警告に加えて、通常運転時とは異なる警告を発するので、火災発生時の混乱状態でも、過負荷であることをより確実に乗客に理解させることができる。
【0025】
なお、避難運転実施中の過負荷の警告方法は、上記の例に限定されるものではなく、例えば、かご内の照明を単に消灯させる方法、ブザーやアナウンス等の警告音声を通常運転時よりも大きな音量で流す方法、通常運転時とは異なる内容のアナウンスを流す方法等であってもよい。
また、上記の例では、避難運転過負荷警告部をエレベータ制御装置2に設けたが、これに限定されるものではなく、例えばエレベータ群管理装置又は避難支援装置に避難運転過負荷警告部を設けてもよい。また、避難運転過負荷警告部を1つの独立した装置としてもよい。
さらに、上記の例では、避難運転実施中に過負荷が検出されると、まず通常運転時と同様の警告を行ってから異なる警告を追加したが、最初から両方の警告を行ったり、最初から通常運転時とは異なる警告のみを行ったりしてもよい。また、通常運転時と同様の警告を所定時間行った後、通常運転時とは異なる警告に切り換えてもよい。
さらにまた、避難運転の方法は特に限定されるものではなく、ビルの構造やエレベータの設置状況に応じて適宜設定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1によるエレベータ制御システムを示すブロック図である。
【図2】図1のエレベータ制御装置の避難運転実施中の救出階での動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0027】
2 エレベータ制御装置(避難運転過負荷警告部)、3 かご。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災発生時に、エレベータにより利用者を避難させるための避難運転を実施するエレベータ制御システムであって、
避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、通常運転時とは異なる警告を上記かご内の乗客に対して発する避難運転過負荷警告部を備えていることを特徴とするエレベータ制御システム。
【請求項2】
上記避難運転過負荷警告部は、避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、通常運転時とは異なる伝達方法により警告を発することを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御システム。
【請求項3】
上記避難運転過負荷警告部は、避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、上記かご内の照明の状態を変化させることにより警告を発することを特徴とする請求項2記載のエレベータ制御システム。
【請求項4】
上記避難運転過負荷警告部は、避難運転実施中にかご内負荷が過負荷になると、通常運転時の警告に加えて、通常運転時とは異なる警告を発することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−184302(P2008−184302A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21057(P2007−21057)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】