説明

エレベータ及びエレベータの制御方法

【課題】新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供する。
【解決手段】各階床の乗場に設置される乗場呼びボタン1と、乗場呼びボタン1が表わす、乗客の行き先となる方向を示す子供用表示手段2と、子供用表示手段2を点灯させる子供用ボタン3と、子供用ボタン3が押し下げられたことを検知し、子供用表示手段2を点灯させる制御手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ及びエレベータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエレベータを利用する場合、乗客はまず乗場の乗場呼びボタンを押し下げて乗場呼び登録を行う。この乗場呼び登録を行う「乗場呼びボタン」は、通常乗客の行き先となる階床がある方向を示す矢印で表わされている。エレベータが乗場に到着しエレベータドアが開くと、乗客が乗りかごに乗り込む。
【0003】
次に、乗りかごに乗車した乗客は、乗りかごに設けられたかご呼びボタンを押し下げて行き先階を指定する。例えば、10階に行きたい場合は「10階」を示すかご呼びボタンを押す。このかご呼びボタンが押し下げられることでかご呼び登録がなされ、乗りかごは行き先階に向けて昇降路を昇降する。行き先階に到着すると、エレベータドアが開き、乗客は乗りかごから降車する。
【0004】
このエレベータの利用方法は、大人、子供を問わず同一である。但し、上述したような多くの操作を行わなければ行き先階へとは行くことができないため、子供にとってはこれら一連の操作を行うことに不安を抱くこともある。
【0005】
また、エレベータに乗車した場合、1人で乗った場合には乗りかご内で知らない者と乗り合わせることもあるが、特に子供の場合、知らない者と乗りかご内に一緒にいるという不安を抱くこともある。さらに、高層住宅であって自宅が高層部分にある場合、子供ではかご呼びボタンが高い位置に配置されているため、かご呼びボタンを押すことができないといったことも生じている。
【0006】
このような不安が高じると、エレベータには乗らない、乗るとしても親や知り合いとのみ乗る、或いは、エレベータを利用せず階段を利用する、といったことが発生し得る。
【0007】
そこで、以下に示す特許文献1においては、通常のかご呼びボタンの下、すなわち子供の届く位置に別途登録ボタンを設け、この登録ボタンの押圧回数に応じて行き先階のかご呼びボタンを点滅させて、かご呼び登録を行うというかご呼び登録装置が開示されている。
【0008】
この発明によれば、停止階数の多いマンション等において、背の低い子供でもかご操作盤内の行先階のかご呼びボタンを用意に登録可能にすることができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−87239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示されたエレベータでは、以下の点について考慮されていない。
【0011】
すなわち、特許文献1に開示された発明におけるかご呼び登録装置では、新たに子供が利用する登録ボタンを設ける必要が生ずる。これでは、例えば、費用等の点から既存のエレベータへの取付等に困難が生ずる場合が出てくることも予想される。
【0012】
また、行き先階の階数に合わせて登録ボタンを押し下げるという制御も簡単ではあるものの、特に近年の高層住宅の場合、自宅が例えば、20階、30階にある場合もある。この場合は、子供がエレベータに乗るたびに20回、或いは30回も登録ボタンを押さなければならず、実際的ではない。
【0013】
また、このエレベータでは、子供が乗りかご内で自分の知らない者と乗り合わせる場合の不安を解消させることはできない。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、エレベータにおいて、各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンと、乗場呼びボタンが表わす、乗客の行き先となる方向を示す子供用表示手段と、子供用表示手段を点灯させる子供用ボタンと、子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、子供用表示手段を点灯させる制御手段とを備える。
【0016】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、エレベータの制御方法において、制御手段において各階床の乗場に設置される子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、各階床の乗場に設置される子供用表示手段を点灯させるステップと、各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンが押し下げられたことを検知し、乗りかご内のかご呼びボタンのうち、押し下げられた乗場呼びボタンが設置された階床を除く階床を示すかご呼びボタンであって、乗場呼びボタンによって示される方向にある階床を示すかご呼びボタンを点滅させるステップと、点滅するかご呼びボタンの中から行き先階を示すかご呼びボタンが押し下げられたことを検知し、かご呼び登録を行うステップと、かご呼びボタンの点滅を終了させるステップとを備える。
【0017】
本発明の実施の形態に係る第3の特徴は、エレベータの制御方法において、制御手段において各階床の乗場に設置される子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、各階床の乗場に設置される子供用表示手段を点灯させるステップと、各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンが押し下げられたことを検知し、乗場呼びボタンが設置された階床を基準に乗りかご内に設置されるかご呼びボタンの配置を変更するステップと、配置が変更されたかご呼びボタンの中から行き先階を示すかご呼びボタンが押し下げられたことを検知し、かご呼び登録を行うステップと、かご呼びボタンの配置を元に戻すステップとを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態におけるエレベータにおいて、各階床の乗場を示す全体図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御手段の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における乗りかごの内部を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるエレベータの運転制御の流れを示すフローチャートである。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるエレベータの運転制御の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態における乗客である子供がかご呼びボタンを押し下げる際の流れを示すフローチャートである。
【図7】一般的なかご呼びボタンの配置を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態におけるかご呼びボタンの配置を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態におけるエレベータの運転制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるエレベータについて、各階床の乗場Aを示す全体図である。乗場Aには、三方枠Jに囲まれた奥にエレベータドアDが設置されている。また、乗場Aの壁には、各階床の乗場に設置される乗場呼びボタン1と、乗場呼びボタン1が表わす、乗客の行き先となる方向を示す子供用表示手段2と、子供用表示手段2を点灯させる子供用ボタン3と、子供用ボタン3が押し下げられたことを検知し、子供用表示手段2を点灯させる制御手段4とが設けられている。
【0022】
乗場呼びボタン1は、乗客がエレベータを利用する際に押すボタンである。このボタンが押し下げられることで、制御手段4に乗場呼び登録がなされ、後述する乗りかご5が乗場Aに到着する。乗りかご5が乗場Aに到着すると、エレベータドアDが開き、乗客は乗りかご5に乗り込む。
【0023】
乗場呼びボタン1は、通常、一般的な大人が無理な姿勢をとることなく押すことのできる高さに設置されている。一方、この高さでは、子供、特に幼児等の背の低い子供にとっては押しにくい位置であることも多い。
【0024】
また、一般的に乗場呼びボタン1は、乗客が自ら行きたい階床を示す数字ではなく、その乗場Aを基準に行きたい方向(上下方向)を示す矢印にて表わされている。従って、上に行きたい場合には、上向きの矢印で表わされる乗場呼びボタン1Aを押し下げ、反対に下に行きたい場合には、下向きの矢印で表わされる乗場呼びボタン1Bを押し下げる(以下、適宜これら乗場呼びボタン1A、1Bをまとめて「乗場呼びボタン1」と表わす)。但し、矢印だけで示されている乗場呼びボタン1では、子供ではその意味を正確に読み取ることが難しい場合もある。
【0025】
そこで、本発明の実施の形態においては、乗場呼びボタン1の他に、子供用ボタン3を設けている。この子供用ボタン3は、乗場呼びボタン1よりも子供にとって押しやすい場所、例えば、低い位置に設置されている。子供がエレベータを利用する際に、まずこの子供用ボタン3を押し下げると、子供用表示手段2が点灯する。
【0026】
子供用表示手段2は、乗場呼びボタン1に対応している。乗場呼びボタン1Aの上向きの矢印については、平仮名で記載された「うえにいく」という子供用表示手段2Aが対応する。また、乗場呼びボタン1Bの下向きの矢印については、平仮名で記載された「したにいく」という子供用表示手段2Bが対応する。
【0027】
子供用表示手段2は、エレベータを利用する子供が迷うことなく乗場呼びボタン1を押すために点灯する。従って、子供用表示手段2Aは乗場呼びボタン1Aとの、また、子供用表示手段2Bは乗場呼びボタン1Bとの関係が明確になるように、本発明の実施の形態においては、乗場呼びボタン1の横に子供用表示手段2A,2Bがそれぞれ配置されて設置されている。
【0028】
また、幼児等の子供であってもその内容を読み取ることができるように、子供用表示手段2は平仮名で表記されている。但し、本発明の実施の形態においては平仮名で表記されているが、この表記の態様については平仮名に限らず、子供が理解できるような表示であれば、どのような表示であっても良い。
【0029】
乗場呼びボタン1、子供用表示手段2、及び子供用ボタン3は、それぞれ制御手段4に接続されている。制御手段4は、図1には示されていない乗りかご5や巻上機等のエレベータの各機器を制御する。
【0030】
図2は、制御手段4の内部構成を示すブロック図である。図2に示す各手段は、あくまでも本発明の実施の形態における内容を実現するために設けられたもののみを示すものである。従って、上述した通り、制御手段4はエレベータの各機器を制御するものであるので、図2に示す各手段以外の手段が設けられていることはいうまでもない。
【0031】
制御手段4は、受信手段4aと、判断手段4bと、指示作成手段4cと、送信手段4dとから構成される。受信手段4aは、例えば、乗場呼びボタン1や子供用ボタン3からの信号を受信して判断手段4bに送信する。また、送信手段4dは、判断手段4b及び指示作成手段4cにおいて決定された指示をエレベータを構成する各機器に対して送信する。なお、判断手段4b及び指示作成手段4cについては、本発明の実施の形態におけるエレベータの運転制御を説明するときに併せて説明する。
【0032】
図3は、乗客が乗りかご5に乗り込んで乗りかご5のドア5aに向かった場合に見える乗りかご5の内部を示す模式図である。乗りかご5の内部には、ドア5aの他に、かご内制御板6が設けられている。
【0033】
かご内制御板6は、エレベータが止まる階床を数字で示すかご呼びボタン7と、乗りかご5の位置を示す階数やその他様々な情報を表示する表示手段8と、乗りかご5内の乗客に対して情報を報知するための報知手段9とが設けられている。
【0034】
かご呼びボタン7は、乗りかご5に乗り込んだ乗客が目的とする階床をエレベータに指示するために押される。図3においては、かご呼びボタン7が5つ並んでおり、このエレベータは5つの階床に止まることを示している。
【0035】
乗りかご5に乗車した乗客は、かご呼びボタン7を押し下げて目的とする階床を選択する。かご呼びボタン7が押し下げられると、制御手段4に指示が送信されかご呼び登録が行われる。制御手段4は、登録されたかご呼びに基づいて、巻上機を回転させて乗りかご5を昇降させる。
【0036】
表示手段8は、通常、乗りかご5が位置する階床を階数をもって示す。但し、表示させる内容については、この階数に限られず、どのような内容を表示させることとしても良い。報知手段9は、例えば、音声にて乗客に報知を行う。但し、報知する内容、或いは、報知の方法については、どのようにも設定することが可能である。
【0037】
次に、本発明の第1の実施の形態におけるエレベータの運転制御の流れを図4及び図5を利用しつつ説明する。まず、制御手段4は、各階床に設置されている子供用ボタン3が押し下げられたことを検知したか否かを判断する(ST1)。大人がエレベータを利用する場合には、乗場呼びボタン1を押し下げて乗場呼び登録を行うため、子供用ボタン3が押し下げられることはない。その場合、すなわち、子供用ボタン3が押し下げられたことを検知しないときは(ST1のNO)、そのまま待機し、或いは、乗場呼びボタン1が押し下げられることによって登録された乗場呼びに従って乗りかご5の運転制御が行われる。
【0038】
一方、子供用ボタン3が押し下げられたことを検知し、受信手段4aがその信号を受信した場合には(ST1のYES)、判断手段4bは指示作成手段4cに対して子供用表示手段2を点灯させるよう指示し、子供用表示手段2への指示を作成させる。子供用表示手段2は、制御手段4からの指示に従って、子供用表示手段2A,2Bのいずれも点灯させる(ST2)。
【0039】
なお、図1に示す乗場Aの全体図は、最下階でも最上階でもない乗場を表わしている。最下階の場合には乗場呼びボタン1B及び子供用表示手段2Bが、最上階の場合には、乗場呼びボタン1A及び子供用表示手段2Aが設けられることは通常ない。
【0040】
子供用表示手段2が点灯することによって、エレベータを利用しようとしている子供は、乗場呼びボタン1A、或いは、乗場呼びボタン1Bのいずれを押せばよいか迷うことがなくなる。子供は、子供用表示手段2に従って、自らが移動したい方向を示す乗場呼びボタン1を押し下げる。制御手段4では、乗場呼びボタン1が押し下げられたか否かの検知をし(ST3)、乗場呼びボタン1が押し下げられたと検知されれば乗場呼びの登録をするとともに、子供用表示手段2を消灯する(ST4)。
【0041】
乗場呼びの登録が終了すると、この登録に従って、乗場呼び登録がされた階床に乗りかご5が到着し、エレベータドアD(乗りかご5のドア5a)が開き、乗客が乗りかご5行われる。
【0042】
一方、所定の時間待って、乗場呼びボタン1が押し下げられていないことを検知した場合にも(ST3のNO及びST5)、制御手段4は、子供用表示手段2を消灯するよう指示する。この場合には、乗場呼び登録がなされなかったことになるので、乗りかご5は当該乗場には到着しない。なお、乗場呼びボタン1が押し下げられるまで待機する所定の時間については、任意に設定することができる。
【0043】
図5に示すフローチャートは、乗客(子供)が乗りかご5に乗車し、かご呼びボタン7を押し下げて目的階へ移動する際の制御の流れを示している。
【0044】
まず、制御手段4は、押し下げられた乗場呼びボタン1が下方向の乗場呼びボタン1Bであるか否かを確認する(ST11)。判断手段4bは、乗場呼びボタン1Bが押し下げられた場合には、押し下げられた乗場呼びボタン1Bが設置されている乗場(階床)よりも下の階床のかご呼びボタン7を点滅させるよう、指示作成手段4cを介してかご呼びボタン7に指示する(ST12)。
【0045】
例えば、5階建ての3階の乗場にいる子供が1階に降りようとしている場合、乗りかご5内のかご呼びボタン7のうち、2階及び1階を表わすかご呼びボタン7を点滅させる。この場合、子供が乗りかご5に乗り込んだ3階を示すかご呼びボタン7及び4階、5階を示すかご呼びボタン7は点滅させない。
【0046】
一方、判断手段4bによって押し下げられた乗場呼びボタン1が下方向ではないと判断された場合には(ST11のNO)、乗客が、自身がいる階床から上の階床へと行くために乗場呼びボタン1Aを押し下げた、ということである。判断手段4bは、そのことを確認する(ST13)。その上で、判断手段4bは、押し下げられた乗場呼びボタン1Aが設置されている乗場(階床)よりも上の階床のかご呼びボタン7を点滅させるよう、指示作成手段4cを介してかご呼びボタン7に指示する(ST14)。
【0047】
子供が行きたい方向のかご呼びボタン7を点滅させることにより、子供はその点滅しているかご呼びボタン7の中から適切なかご呼びボタン7を選択し、押し下げることができる。このような制御を行うことによって、乗りかご5に乗車した子供はエレベータに乗って目的階へと行くのに必要な処理を迷わずにスムーズに行うことができる。
【0048】
但し、かご呼びボタン7が点滅していることについては、この乗りかご5に乗っている他の乗客にしてみると、通常かご呼びボタン7が点滅することがないため不思議に思ったり不安を抱く可能性もある。そこで、本発明の実施の形態においては、かご呼びボタン7が点滅している理由を報知手段9を介して乗りかご5内の乗客に報知する(ST15)。これによって、乗りかご5内に混乱が生ずることを防止することができる。
【0049】
乗りかご5に乗車した乗客(子供)は、かご呼びボタン7を押し下げることでかご呼びを制御手段4に対して登録することができ、乗客(子供)が目的とする階床に移動することができる。従って、乗りかご5に乗車した子供は、点滅しているかご呼びボタン7の中から自分の行き先となる階数が表わされているかご呼びボタン7を選択、押し下げる(ST16)。
【0050】
かご呼びボタン7の中から行き先となる階数が表わされているかご呼びボタン7が押し下げられられたことを判断手段4bが検知すると(ST16のYES)、かご呼びの登録がなされるとともに(ST17)、かご呼びボタン7の点滅を終了させる(ST18)。この後、かご呼び登録された階床(行き先階)に向けて乗りかご5が昇降する。
【0051】
点滅中のかご呼びボタン7の押し下げを検知できない場合には(ST16のNO)、所定の時間の経過を待って(ST19)、乗客(子供)に対してかご呼びボタン7の押し下げを促す(ST20)。これには、例えば、報知手段9を利用しても良い。なお、かご呼びボタン7が押し下げられるまで待機する所定の時間については、上述したように任意に設定することができる。
【0052】
かご呼びボタン7の押し下げを促すと、かご呼びボタン7は継続して点滅しているので、子供はその点滅中のかご呼びボタン7の中から適切な階数を示すかご呼びボタン7を選択、押し下げる、と考えられる。
【0053】
以上、説明したように、本発明の第1の実施の形態においては、各階床の乗場に子供用ボタン3を設置し、乗客である子供がこの子供用ボタン3を押すと、乗場呼びボタン1の押し下げを適切に行うことができるように子供用表示手段2が点灯する。また、乗りかごに乗車した後も、乗場呼びボタンの押し下げ(上下)に対応して行き先階を示すかご呼びボタン7が点滅して子供がかご呼びボタン7を迷わず押すことができるように促す。
【0054】
従って、このように新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供することができる。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0056】
第1の実施の形態においては、かご呼びボタン7を点滅させることで乗客(子供)の操作を促していた。第2の実施の形態においては、かご呼びボタン7の配置を変更することで乗客(子供)が適切に操作できるよう促す構成としている。なお、乗場Aの子供用表示手段2及び子供用ボタン3は第2の実施の形態においても設置されている。
【0057】
図6は、子供が乗りかご5に乗車し、かご呼びボタン7を押し下げる際の流れを示したフローチャートである。但し、子供が乗場呼びボタン1Aを押してその乗場呼びボタン1Aが設置されている階床よりも上の階床へ移動したい、という場合を前提にしている。
【0058】
判断手段4bは、まず押し下げられた乗場呼びボタン1が上方向への移動を行うための乗場呼びボタン1Aであることを確認する(ST31)。この場合、乗場呼びボタン1Aを押し下げた子供は、その乗場呼びボタン1Aが設置されている階床よりも上の階床へ移動したい。従って、その子供が乗りかご5に乗車してかご呼びボタン7を押し下げる際には、かご呼びボタン7の中でもより高い位置にあるかご呼びボタン7を押し下げなければならない。
【0059】
すなわち、図7に示すように、通常のかご呼びボタン7は、下から上に向けて階数が上がるように設置されている。つまり、かご呼びボタン7は、下から「1、2、3、4、5」という階数の配置となる。これは、階数が小さい階床を示すかご呼びボタン7を下に、階数が大きい階床を示すかご呼びボタン7を上に設置することが、階床の上下関係と連動して乗客が認識しやすいからである。これは、階床が多くなりかご呼びボタン7の配列が2列以上となった場合であっても同様である。
【0060】
但し、階数が大きくなるに従って、その階数を示すかご呼びボタン7が高い位置に設置されるということは、乗りかご5に乗車した子供にとってはかご呼びボタン7を押す際に背が届かずかご呼びボタン7を押すことが大変となることを意味する。
【0061】
そこで、本発明の第2の実施の形態におけるかご呼びボタン7は、図8に示すような配置を採用することとしている。すなわち、図8に示すかご呼びボタン7は、階数が小さい階床を示すかご呼びボタン7を上に、階数が大きい階床を示すかご呼びボタン7を下に設置されている。従って、かご呼びボタン7は、下から「5、4、3、2、1」という階数の配置となる。
【0062】
上述したように、乗場Aにおいて子供が乗場呼びボタン1Aを押し下げたということは、その階床よりも上の階床に行きたい場合であるから、必然とかご呼びボタン7も階数の大きなかご呼びボタン7が押し下げられることになる。そこで、背の低い子供であっても背伸びやジャンプ等をしなくても十分に手の届く位置にかご呼びボタン7を移動して配置することで、スムーズな操作を促すことができる。
【0063】
判断手段4bが上方向の乗場呼びボタン1Aが押し下げられたと確認すると(ST31)、かご呼びボタン7の配置を変更して、階数が小さい階床を示すかご呼びボタン7を上に、階数が大きい階床を示すかご呼びボタン7を下へと移動させる(ST32)。このような配置とすることで、子供も円滑に操作することができる。
【0064】
但し、乗りかご5に乗車している他の乗客にとってはこのような変更は戸惑う原因ともなりかねない。そこで、報知手段9を用いて、かご呼びボタン7の移動を報知する(ST33)。
【0065】
乗りかご5に乗車した子供は、その位置が上述の通り変更されたかご呼びボタン7の中から自分の行き先となる階数が表わされているかご呼びボタン7を選択、押し下げる(ST34)。高い階数を示すかご呼びボタン7ほど、下に配置されているので、背伸び等の必要がない。
【0066】
かご呼びボタン7の中から行き先となる階数が表わされているかご呼びボタン7が押し下げられられたことを判断手段4bが検知すると(ST34のYES)、かご呼びの登録がなされるとともに(ST35)、移動させたかご呼びボタン7の配置を元の位置に戻す(ST36)。この後、かご呼び登録された階床(行き先階)に向けて乗りかご5が昇降する。
【0067】
配置が変更されたかご呼びボタン7の押し下げを検知できない場合には(ST34のNO)、所定の時間の経過を待って(ST37)、乗客(子供)に対してかご呼びボタン7の押し下げを促す(ST38)のは、第1の実施の形態において説明した通りである。
【0068】
かご呼びボタン7の押し下げを促すと、かご呼びボタン7の配置はそのまま変更されたままであり、子供はそのかご呼びボタン7の中から適切な階数を示すかご呼びボタン7を選択、押し下げる。
【0069】
以上、説明したように、本発明の第2の実施の形態においては、乗りかごに乗車した後、乗場呼びボタンを押し下げた階床よりも上の階床へ移動する場合に、かご呼びボタンの配置が変更されて、階数が小さい階床を示すかご呼びボタンを上に、階数が大きい階床を示すかご呼びボタン7を下に配置されているので、子供がかご呼びボタンを無理せず押すことができるように促す。
【0070】
従って、このように新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供することができる。
【0071】
なお、子供が上向きの矢印が示されている乗場呼びボタンを押してその乗場呼びボタンが設置されている階床よりも上の階床へ移動したい、という場合を前提にしているのは、その乗場呼びボタンが設置されている階床よりも下の階床へ移動したい場合には、かご呼びボタンの配置を変更する必要はないからである。
【0072】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1、或いは第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0073】
第3の実施の形態においては、上記第1、或いは第2の実施の形態において説明した子供がエレベータを利用する際のスムーズな操作を促す仕組み、方法に加えて、さらに一層安全性に配慮したエレベータ及びエレベータの制御方法を示すものである。
【0074】
上述したとおり、乗りかご5に乗車した子供は、たとえ乗場呼び、かご呼びが上手にできたとしても、例えば、他の階から見知らぬ第三者が乗りかご5に乗車してくることに抵抗を示すこともある。これは、乗りかご5という狭い空間内において見知らぬ第三者と乗り合わせることの怖さからくるものである。第3の実施の形態においては、この点に特に配慮したエレベータ及びエレベータの制御方法を説明する。
【0075】
すなわち、乗りかご5に子供のみが乗車した場合に、他の階からの乗場呼びの登録を禁止、或いは保留することで、子供がかご呼びにおいて登録した階床まで直行する運転を行うものである。
【0076】
具体的には、図9に示すフローチャートを使用して説明する。図9に示すフローチャートは、制御手段4によって直行運転がなされる際の制御の流れを示している。
【0077】
乗客である子供によって乗場呼びの登録がなされ、この登録に応じて乗りかご5が乗場Aに到着する。乗りかご5に乗車した子供によってかご呼びの登録がなされ、判断手段4bがこのかご呼びの登録を確認する(ST41)。
【0078】
なお、以下の説明では、子供が乗りかご5に乗車する前には、乗りかご5には誰も乗車していないことを前提とする。但し、乗りかご5内が無人であることを確認するために、例えば、乗りかご5に検出手段を設置してこの検出手段が乗りかご5内の乗客の有無を検出することとしても良い。
【0079】
この確認がなされると、判断手段4bは指示作成手段4cに対して直交運転を行うよう指示を出し、直行運転が開始される(ST42)。ここで、「直行運転」とは、子供が乗りかご5に乗車した階床からかご呼びボタン7によってかご呼びの登録がなされた階床まで、それら両階床の間にあるいずれの階床にも止まらずに乗りかご5を直行させる運転のことをいう。
【0080】
直行運転が開始されると、上述したように子供が乗車した階床と降車する階床以外には止まらないことになるため、その旨を各階床の乗場において乗りかご5の到着を待っている乗客に対して報知する(ST43)。図1に示す乗場の全体を示す図には報知を行う手段は示されていないが、視覚、或いは、聴覚に訴える等、どのように乗場の乗客に対して報知しても良い。
【0081】
判断手段4bは、直行運転中に他の階床からの乗場呼びの登録の有無を判断する(ST44)。他の階床からの乗場呼びの登録があった場合には(ST44のYES)、この他の乗場呼びの登録は、直行運転が終了するまで保留とする(ST45)。
【0082】
なお、この他の階床からの乗場呼びの扱いに関しては、そもそも乗場呼びの登録も禁止しても良いし、或いは、上述したように、乗場呼びの登録は認めるもののその応答は保留する、という制御を行うこととしても良い。
【0083】
他の階床からの乗場呼びがない場合には(ST44のNO)、判断手段4bは、かご呼びボタン7によるかご呼びの登録が複数であるか否かを確認する(ST46)。ここでかご呼びが複数登録されている場合とは、例えば、エレベータが設置されている住居棟において、子供同士が同じ階から乗りかご5に乗り合わせ、それぞれが住んでいる階床に移動する、といった場合である。
【0084】
登録されたかご呼びが複数である場合には(ST46のYES)、登録されたかご呼びの全てに応答する(ST47)。この場合には、かご呼びの登録がなされた階床にそれぞれ止まることになる。全ての登録されたかご呼びに応答すると(ST47のYES)、直行運転は終了する(ST48)。
【0085】
一方、登録されたかご呼びが単数である場合には、そのかご呼びに応答して(ST49)、判断手段4bは直行運転を終了させる(ST48)。
【0086】
直行運転が終了すると、各階床に設置される報知手段における直行運転中の報知も併せて終了させる(ST50)。これにより直行運転ではない、いわば通常運転へと復帰し、保留していた乗場呼びに応答する(ST51)。
【0087】
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態においては、乗りかご5を子供が乗りかご5に乗車した階床から目的の階床までいずれの階床にも止まらせずに直行させるように制御することにより、子供が乗りかご5内において見知らぬ第三者と乗り合わせるという状態が発生することを防止する。
【0088】
従って、このように新たな機器を追加することなく子供がエレベータを利用する際の操作の迷いや不安を軽減させることにより、安心してスムーズに利用することのできるエレベータ及びエレベータの制御方法を提供することができる。
【0089】
なお、この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 乗場呼びボタン
2 子供用表示手段
3 子供用ボタン
4 制御手段
5 乗りかご
6 かご内制御板
7 かご呼びボタン
8 表示手段
9 報知手段
A 乗場
D エレベータドア
J 三方枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンと、
前記乗場呼びボタンが表わす、乗客の行き先となる方向を示す子供用表示手段と、
前記子供用表示手段を点灯させる子供用ボタンと、
前記子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、前記子供用表示手段を点灯させる制御手段と、
を備えることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記制御手段は、押し下げられた前記子供用ボタン及び前記乗場呼びボタンから送信された情報に基づいて、乗りかご内に設置されるかご呼びボタンのうち、前記子供用ボタンが設置された階床を除き上方向、或いは下方向を表わすかご呼びボタンを点滅させる制御を行うことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記制御手段は、押し下げられた前記子供用ボタン及び前記乗場呼びボタンから送信された情報に基づいて、前記子供用ボタンが設置された階床を基準に前記かご呼びボタンの配置を変更する制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記制御手段は、前記子供用ボタンが押し下げられて前記乗場呼びボタンが押し下げられたことを検知した場合に、前記乗場呼びボタンが設置された階床から前記かご呼びボタンによって登録された行き先階まで前記乗りかごを直行させる運転制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項5】
前記乗りかご内には、前記制御手段による前記かご呼びボタンに対する制御内容を報知するかご内報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項6】
前記各階床の乗場には、前記乗りかごが前記かご呼びボタンによって登録された行き先階まで直行する運転を行っていることを報知する乗場報知手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のエレベータ。
【請求項7】
制御手段において各階床の乗場に設置される子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、各階床の乗場に設置される子供用表示手段を点灯させるステップと、
各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンが押し下げられたことを検知し、乗りかご内のかご呼びボタンのうち、前記押し下げられた乗場呼びボタンが設置された階床を除く階床を示す前記かご呼びボタンであって、前記乗場呼びボタンによって示される方向にある階床を示す前記かご呼びボタンを点滅させるステップと、
前記点滅するかご呼びボタンの中から行き先階を示す前記かご呼びボタンが押し下げられたことを検知し、かご呼び登録を行うステップと、
前記かご呼びボタンの点滅を終了させるステップと、
を備えることを特徴とするエレベータの制御方法。
【請求項8】
制御手段において各階床の乗場に設置される子供用ボタンが押し下げられたことを検知し、各階床の乗場に設置される子供用表示手段を点灯させるステップと、
各階床の乗場に設置される乗場呼びボタンが押し下げられたことを検知し、前記乗場呼びボタンが設置された階床を基準に乗りかご内に設置されるかご呼びボタンの配置を変更するステップと、
前記配置が変更されたかご呼びボタンの中から行き先階を示す前記かご呼びボタンが押し下げられたことを検知し、かご呼び登録を行うステップと、
前記かご呼びボタンの配置を元に戻すステップと、
を備えることを特徴とするエレベータの制御方法。
【請求項9】
前記子供用ボタンが押し下げられて子供用乗場呼び登録がなされ、さらにかご呼び登録がなされた場合に、制御手段が、前記乗りかごを前記子供用乗場呼び登録がなされた階床から前記かご登録がなされた階床への直行運転を行うよう運転の切替を行うステップと、
前記乗場呼びボタンが設置されている各階床の乗場に、前記乗りかごが直行運転中である旨を報知するステップと、
前記子供用乗場呼び登録がなされた階床以外の他の階床からの乗場呼びの有無を確認するステップと、
前記他の階床からの乗場呼びが確認された場合に、前記乗場呼びを保留するステップと、
前記他の階床からの乗場呼びが確認できなかった場合に、前記子供用乗場呼び登録が複数存在するか否かを確認するステップと、
前記子供用乗場呼び登録の全てに応答した後、直行運転を終了するステップと、
前記乗場呼びボタンが設置されている各階床の乗場に、前記乗りかごの直行運転が終了した旨を報知させるステップと、
を備えることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のエレベータの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−51712(P2011−51712A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201658(P2009−201658)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】