説明

エレベータ装置

【課題】 火災発生時に的確に情報を提供することのできるエレベータ装置を提供する。
【解決手段】 火災検知部5からの情報に基づいて火災発生位置を判定する火災位置判定部10と、かごの運行状態を制御する運行制御部4と、火災位置判定部及び運行制御部からの情報に基づいて、火災発生位置情報及び運行情報に関する画像情報を作成する画像情報作成部11と、乗場に設けられ、画像情報作成部で作成された画像情報に基づく表示を行う画像表示部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の高層化に伴い、火災発生時にエレベータを積極的に利用することが提案されている。例えば、携帯情報機器に避難情報を通知し、エレベータを利用して避難するといった提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−62861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯情報機器を利用して避難情報を提供するためには、携帯情報機器が必要である等の問題があり、必ずしも的確な方法であるとは言えない。
【0005】
したがって、火災発生時に的確に情報を提供することのできるエレベータ装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るエレベータ装置は、火災検知部からの情報に基づいて火災発生位置を判定する火災位置判定部と、かごの運行状態を制御する運行制御部と、前記火災位置判定部及び前記運行制御部からの情報に基づいて、火災発生位置情報及び運行情報に関する画像情報を作成する画像情報作成部と、乗場に設けられ、前記画像情報作成部で作成された画像情報に基づく表示を行う画像表示部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るエレベータ装置の構成を示したブロック図である。
【図2】各階の設備の配置を模式的に示した図である。
【図3】各階の設備の位置等のデータテーブルを示した図である。
【図4】乗場表示部に表示される画像の一例を示した図である。
【図5】エレベータの予測運行曲線の一例を示した図である。
【図6】エレベータの予測運行曲線の他の例を示した図である。
【図7】乗場表示部に表示される画像の他の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係るエレベータ装置の構成を示したブロック図である。
【0010】
かご制御部1は、モータ制御やドア制御といったかご2の制御を行うものである。各階の乗場には乗場呼び登録装置3が設けられており、乗場呼び登録装置3の呼び登録釦を操作することで乗場呼びが登録される。乗場呼び登録装置3によって乗場呼びが登録されると、呼び登録階及び方向を1つの組にした乗場呼び情報が群管理制御部4へ出力される。群管理制御部4では、乗場呼び情報及びかご制御部1から定期的に出力されている各かごの状態情報(位置、方向、戸開閉状態、登録済みの呼び情報等)を基に、割当かごを選定している。割当かごが選定されると、群管理制御部4からかご制御部1に乗場呼び情報が送信され、かご制御部1は呼び登録階に向かってかごを運転する。
【0011】
群管理制御部4は、登録情報保存部6、予測到着時間算出部7及び割当制御部8を備えており、かご2の運行状態の制御等を行う。登録情報保存部6、予測到着時間算出部7及び割当制御部8の機能は、群管理制御部4が有するマイクロプロセッサ上のソフトウェアによって実現される。なお、本実施形態では、登録情報保存部6、予測到着時間算出部7及び割当制御部8の全てを群管理制御部4に設けたが、必ずしも同一装置内に設ける必要はなく、別々の装置内に設けてもよい。
【0012】
登録情報保存部6には、乗場呼び登録装置3で登録された乗場呼び情報及びその呼び情報に対する割当かご情報が登録される。
【0013】
予測到着時間算出部7では、登録情報保存部6に新規に登録された乗場呼びに対し、各かごが乗場呼びに応答するまでの予測到着時間を算出する。予測到着時間は、すでに登録されている乗場呼びの割当情報、かご呼び情報、現在のかごの位置、方向、戸開閉状態、定格速度、加速度等を基に算出される。また、予測到着時間算出部7は、あるかごにすでに割り当てられた乗場呼び(以下、既割当乗場呼びという)にかごが応答して出発した直後に、再び同じ階に仮想的な乗場呼び(以下、仮想乗場呼びという)が登録されることを想定し、その仮想乗場呼びに対するかごの予測到着時間の算出も行う。これらの予測到着時間の算出は、火災検知部5の動作の有無にかかわらず、周期的に(例えば1秒毎に)行われる。
【0014】
割当制御部8は、登録情報保存部6に新規に登録された乗場呼びに対し、予測到着時間算出部7での算出結果を基に各かごの評価値を算出し、その評価値に基づいて最適かごを選定し、選定した最適かごを乗場呼びに応答させるための乗場呼び割当をかご制御部1に出力する。また、このとき、割当かご情報を登録情報保存部6にも出力するとともに、割当かごの予測到着時間を先発かご予測到着時間として、後述する先発次発予測到着時間通知部9に出力する。また、割当制御部8は、予測到着時間算出部7によって算出された仮想乗場呼びの予測到着時間についても各かごの評価値を算出し、その評価値に基づいて仮想乗場呼びに対する最適かごを選定するとともに、その予測到着時間を次発かご予測到着時間として先発次発予測到着時間通知部9に出力する。
【0015】
先発次発予測到着時間通知部9では、後述する画像情報作成部11から群管理運行情報要求信号を受信すると、乗場呼びが登録されている全ての階についての先発かご予測到着時間と次発かご予測到着時間を画像情報作成部11に送信する。これらの予測到着時間の画像情報作成部11への送信は、周期的に(例えば5秒毎に)行われ、全ての既割当乗場呼びにかごが応答するまで継続される。全ての既割当乗場呼びにかごが応答し終わったら、送信停止信号を画像情報作成部11に送信する。
【0016】
火災検知部5は、煙センサや熱センサ等によって構成され、煙や熱を検知すると検知信号を送信する。この火災検知部5は、建物の各階それぞれに少なくとも1箇所以上配置されている。
【0017】
火災位置判定部10は、火災検知部5からの情報に基づいて火災発生位置を判定する。この火災位置判定部10には、建物内の設備の設置位置情報が記憶されている。例えば、図2に示すように、各階における火災検知部5の位置情報や、エレベータ昇降路の位置情報が記憶されている。これらの位置情報は、火災位置判定部10内のROMやハードディスク等の記憶装置に予め登録されている。本実施形態では、水平方向(XY方向)の位置情報はX座標及びY座標の平面座標で表し、垂直方向(Z方向)の位置情報は「階」で表すものとする。また、各火災検知部5からエレベータ乗場までの水平距離も予め登録されているものとする。これらの情報は、図3に示すように、データテーブルとして記憶装置に予め登録されている。
【0018】
火災位置判定部10では、火災検知部5から煙や熱の検知信号を受信すると、煙や熱を検知した火災検知部5の位置情報(水平方向の座標と階床)と、煙や熱を検知した火災検知部5からエレベータ乗場までの水平距離情報を、画像情報作成部11に送信する。
【0019】
画像情報作成部11は、火災位置判定部10及び群管理制御部4からの情報に基づいて、火災発生位置情報及び運行情報に関する画像情報を作成する。画像情報には文字情報も含まれる。具体的には、画像情報作成部11では、火災位置判定部10から、煙や熱を検知した火災検知部5の位置情報と該火災検知部5からエレベータ乗場までの水平距離情報を受信すると、先発次発予測到着時間通知部9に対して群管理運行情報要求信号を送信する。そして、画像情報作成部11では、乗場呼びが登録されている全ての階について、先発かご予測到着時間と次発かご予測到着時間を先発次発予測到着時間通知部9から周期的に受信する。
【0020】
また、画像情報作成部11は、受信した火災検知部5の位置情報とエレベータ乗場までの水平距離情報とに基づき、火災発生位置情報表示メッセージを作成し、各階の乗場表示部12に送信する。火災発生位置情報表示メッセージには、煙や熱を検知した火災検知部5の設置階床情報(火災発生階に関する情報)の他、該火災検知部5からエレベータ乗場までの水平距離に基づく情報が含まれる。例えば、エレベータ乗場までの水平距離が100m以上であれば「十分な距離があります」、50m以上100m未満であれば「やや離れています」、50m未満であれば「やや近い場所です」といったメッセージを作成する。
【0021】
また、乗場呼びが登録されている階については、運行情報表示メッセージが作成される。運行情報表示メッセージにはかごが到着するまでの時間に関する情報が含まれる。具体的には、乗場呼びが登録されている各階について、先発かご予測到着時間及び次発かご予測到着時間を含む運行情報表示メッセージが作成され、各階の乗場表示部12に送信される。
【0022】
なお、先発次発予測到着時間通知部9から送信停止信号を受信した場合には、火災発生位置情報表示メッセージ及び運行情報表示メッセージの作成を停止するとともに、乗場表示部12に対して火災発生位置情報表示メッセージ及び運行情報表示メッセージの消去指令を送信する。
【0023】
乗場表示部12は、各階のエレベータ乗場に設けられ、画像情報作成部11で作成された画像情報に基づく表示を行う。この乗場表示部12は、LCDや有機EL等を用いたディスプレイと該ディスプレイの表示制御を行うマイクロコンピュータを備えている。乗場表示部12では、画像情報作成部11で作成された火災発生位置情報表示メッセージ及び運行情報表示メッセージに基づく画像を、図4に示すようにディスプレイ上に表示する。すなわち、乗場呼びの登録階に先発かごが到着するまでの時間及び次発かごが到着するまでの時間や火災発生階の情報等が表示される。なお、画像情報作成部11から運行情報表示メッセージの消去指令を受信した場合には、これらのメッセージは消去される。
【0024】
次に、予測到着時間算出部7における予測到着時間の算出方法について説明する。
【0025】
予測到着時間算出部7は、かごが既登録の呼びに応答しながら、新規に登録された乗場呼び登録階に到着するまでの時間を、各かごについて算出する。予測到着時間の算出は、予測運行曲線に基づいて行われる。一例として、A号機に関する情報が以下のようなものであった場合について説明する。
【0026】
現在のA号機の位置:4階
現在のA号機の方向:上方向
A号機のかご呼び登録階:8階、10階
A号機に割り当てられた乗場呼び登録階:6階、8階、10階、14階
上記の情報と、エレベータの定格速度、加速度及び戸開時間を考慮すると、A号機の予測運行曲線は図5に示すようになる。この予測運行曲線から各停止階への予測到着時間を算出する。図5の例では、例えば14階への予測到着時間は65秒となる。
【0027】
現時点において、12階で下方向の乗場呼びが新たに発生した場合を考える。A号機は14階で方向反転して12階に向かうので、図5に示すように、A号機の12階下方向への乗場呼びに対する予測到着時間は80秒となる。同様にして、群中の各号機について、新たに発生した12階下方向への乗場呼びに対する予測到着時間を算出することが可能である。
【0028】
次に、図6の予測運行曲線を参照して、仮想乗場呼びに対する各かごの予測到着時間の算出方法について説明する。ここでは、説明の簡単のため、A号機及びB号機についてのみ示している。
【0029】
A号機は、10階を上方向に走行中で、すでに15階下方向の乗場呼びと13階下方向の乗場呼びが割り当てられている。B号機は、8階を下方向に走行中で、すでに6階下方向の乗場呼びと5階下方向の乗場呼びが割り当てられている。また、ここでは火災が発生している状況を想定しているので、A号機及びB号機ともに、かご呼びは避難階である1階のみが登録されている。
【0030】
以下では、A号機に割り当てられた13階下方向の乗場呼びに対してA号機が応答して出発した直後の13階下方向の仮想乗場呼びに対する、B号機の予測到着時間を算出する場合を例に説明する。
【0031】
図6において、実線で示されている運行曲線は既割当乗場呼びに対する運転経路を表し、点線で示されている運行曲線は仮想乗場呼びに対する運転経路を表している。
【0032】
13階下方向の既割当乗場呼びに対する予測到着時間は28秒であり、これが13階下方向の乗場呼びに対する先発かごの予測到着時間である。A号機が13階を出発した直後に13階下方向の仮想乗場呼びが登録されたとき、B号機は1階に停止していることが予想される。B号機が13階下方向の仮想乗場呼びに応答するための予測到着時間は75秒後となる。同様にして、群中の各号機について、仮想乗場呼びに対する予測到着時間を算出することが可能である。
【0033】
以上説明したように、本実施形態では、火災発生位置情報(火災発生階等の情報等)及び運行情報(エレベータの予測到着時間等の情報等)に関する画像情報に基づく表示を画像表示部(乗場表示部)によって行う。そのため、火災発生時に画像表示部(乗場表示部)によって的確に情報を提供することができ、避難者は提供された情報に基づいて的確な判断を行うことができる。その結果、避難者はパニックに陥ることなく冷静な行動を行うことが可能であり、的確な避難を行うことが可能となる。
【0034】
なお、上述した実施形態は各種の変更が可能である。
【0035】
上述した実施形態では、図4に示したように乗場表示部12では画像表示としてテキスト表示を行うようにしたが、図7に示すようにテキスト表示以外の表示も行うようにしてもよい。
【0036】
図7の例では、建物平面図上に火災発生位置(出火場所)及びエレベータ乗場位置を表示している。この場合、画像情報作成部11では、エレベータ乗場位置を含む建物平面図の画像データも予め記憶している。そして、画像情報作成部11では、火災位置判定部10から送信された煙や熱を検知した火災検知部5の設置位置を火災発生位置(出火場所)として、建物平面図の画像データに火災発生位置データを合成している。このような表示を行うことで、より的確な判断を行うことが可能となる。
【0037】
また、図7の例では、火災発生位置情報表示及び運行情報表示に加えてさらに、インストラクション表示を行っている。このインストラクション表示の画像は、煙や熱を検知した火災検知部5のエレベータ乗場までの水平距離情報と、次発かご予測到着時間とから作成される。このインストラクション表示では、避難者へのインストラクションに関する情報が表示され、例えば、煙や熱を検知した火災検知部5のエレベータ乗場までの水平距離情報が100m以上で、次発かご予測到着時間80秒以内であれば、「次発エレベータを利用して十分に避難可能です。冷静に行動してください。」といった表示が行われる。このようなインストラクション表示を行うことにより、避難者はパニックに陥ることなく的確な行動をとることができ、的確な避難を行うことが可能となる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1…かご制御部 2…かご 3…乗場呼び登録装置
4…群管理制御部 5…火災検知部 6…登録情報保存部
7…予測到着時間算出部 8…割当制御部
9…先発次発予測到着時間通知部 10…火災位置判定部
11…画像情報作成部 12…乗場表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災検知部からの情報に基づいて火災発生位置を判定する火災位置判定部と、
かごの運行状態を制御する運行制御部と、
前記火災位置判定部及び前記運行制御部からの情報に基づいて、火災発生位置情報及び運行情報に関する画像情報を作成する画像情報作成部と、
乗場に設けられ、前記画像情報作成部で作成された画像情報に基づく表示を行う画像表示部と、
を備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記火災発生位置情報は、火災発生階に関する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記運行情報は、乗場呼びの登録階にかごが到着するまでの時間に関する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記運行情報は、乗場呼びの登録階に先発かごが到着するまでの時間及び次発かごが到着するまでの時間に関する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記画像情報作成部は、避難者へのインストラクションに関する画像情報をさらに作成する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−35923(P2012−35923A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174754(P2010−174754)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】