説明

エレベータ

【課題】本発明の実施形態は乗りかごの軽量化に伴う上下振動を抑制するための減衰機構を備えるエレベータを提供することを目的とする。
【解決手段】建物に設けられる昇降路内を昇降する乗りかご1に開閉自由に設けられるかごドア2と、かごドアに備えられる第1の摩擦材10と、建物側に備えられる第2の摩擦材13と、を備え、第1の摩擦材10と第2の摩擦材13とはそれぞれ対向する位置に設けられ、かごドア2の全開時には、第1の摩擦材10と第2の摩擦材13とが摺動可能に圧接されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの乗客の乗り降りにより発生する乗りかごの上下振動を減衰させる機構を有するエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごはメインロープによって吊り下げられているが、乗りかごの昇降行程が長く、メインロープが長くなると、乗客が乗りかごに乗り降りする際に発生する上下振動の振幅が大きくなり、かつ減衰しにくくなる。このような乗降の際に発生する乗りかごの上下振動は、乗客に不快感を与えてしまうことになる。
【0003】
そこで従来は、メインロープの本数を増加させることで乗りかごの上下振動の振幅を小さくする対策などさまざまな対策を講じることで乗りかごの上下振動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−42918号公報
【特許文献2】特開2008−168980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年乗りかごの軽量化が進んでおり、軽量化が進むにつれ乗りかごは上下に振動しやすくなる。そのため、乗りかごへの乗降の際の上下振動を抑えるために、簡易な構成による上下振動の減衰機構が求められている。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は乗りかごの軽量化に伴う上下振動を抑制するための減衰機構を備えるエレベータ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の実施形態に係るエレベータは、建物に設けられる昇降路内を昇降する乗りかごと、前記乗りかごに開閉自由に設けられるかごドアと、前記かごドアに備えられる第1の摩擦材と、前記建物側に備えられる第2の摩擦材と、を備え、前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材とはそれぞれ対向する位置に設けられ、前記かごドアの全開時には、前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材とが摺動可能に圧接されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るかごドアの構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成を示す上視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る板材の取り付けを簡単に示す簡略図である。
【図4】(a)本発明の第1の実施形態に係る板材のその他の取り付け例を示す上視図である。(b)本発明の第1の実施形態に係る板材のその他の取り付け例を示す一部断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る弾性体を利用した摩擦材の取り付けを示す構成図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成を示す上視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る弾性体を利用した摩擦材の取り付けを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るかごドアの構成を示す概略図である。図2は本発明の第1の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成を示す上視図である。図3は本発明の第1の実施形態に係る板材の取り付けを簡単に示す簡略図である。図4(a)は本発明の第1の実施形態に係る板材のその他の取り付け例を示す上視図であり、(b)は本発明の第1の実施形態に係る板材のその他の取り付け例を示す一部断面図である。図5は本発明の第1の実施形態に係る弾性体を利用した摩擦材の取り付けを示す構成図である。
【0011】
まず、図1を用いて本発明の第1の実施形態に係るかごドアの構成及び動作について簡単に説明する。
【0012】
図示しない昇降路内を昇降する乗りかご1には、かごドア2a、2bが設けられており、かごドア2a、2bの上部にはドアハンガ3a、3bがそれぞれ備えられている。
【0013】
また、乗りかご1の出入口上部には図示しないドアレールを備えるヘッダ4が設けられている。ドアハンガ3a、3bにはこのドアレール上を動くローラが備えられ、このローラの動きと共にかごドア2a、2bが開閉する構成となっている。
【0014】
ヘッダ4の上部にはかごドア2a、2bを戸開閉させるためのドアモータ5が設置され、ドアモータ5の駆動により乗りかご1出入口の開閉が行われる。
【0015】
具体的には、ドアモータ5の駆動により回転する駆動プーリ6がドアモータ5に直結し、駆動プーリ6にはタイミングベルト7が巻きつけられている。駆動プーリ6に巻きつけられているタイミングベルト7はヘッダ4に設けられるアイドラプーリ8を介して水平方向に設けられた一対のプーリ9a、9bに巻きつけられている。
【0016】
そして、タイミングベルト7には図示しないブラケット等によりドアハンガ3a、3bが左右それぞれの方向へ移動するように、取り付けられ、戸開閉動作を行っている。詳細には、本実施形態では戸開時にドアモータ5は時計回りに回転駆動するため、それに伴いヘッダ4に設けられた一対のプーリ9a、9bに巻きつけられたタイミングベルト7も時計回りに回転する。ドアハンガ3a、3bはプーリ9aを挟んでそれぞれ対向するタイミングベルト7の側にブラケットを介して取り付けられている。これにより、ドアモータ5が時計回りに駆動すると、かごドア2a、2bは戸開することになる。
【0017】
以上のようにしてドアモータ5の駆動により、かごドア2a、2bが戸開閉する構成となっている。
【0018】
次に、図2を用いて本発明の第1の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成について説明する。図2は乗りかご1及び減衰機構等の構成を示す上視図である。
【0019】
上述したように、乗りかご1には、かごドア2a、2bやヘッダ4が備えられている。なお、ヘッダ4内のドア駆動装置についての説明はここでは省略する。
【0020】
本実施形態におけるかごドア2a、2bの昇降路側側部すなわち、かごドア2a、2b同士が接触しあう側面とは反対の側には第1の摩擦材10(以下、摩擦材10と称す。)が備えられている。摩擦材10の材質としては特に指定しないが、一般的にはレジン系であったり合成ゴムであったりブレーキ特性の基準を満たしているものであればよい。
【0021】
一方、乗場出入口には三方枠11が設けられており、その三方枠11の両側部にはL字ブラケット12が取り付けられている。図2及び図3に示すように、L字ブラケット12は、一方の端部は三方枠11に固定されており、他方の端部は乗りかご1側方向へ伸びるようにして取り付けられている。そして乗りかご1側方向へ伸びるL字ブラケット12の端部には摩擦材10と対向する箇所に第2の摩擦材13(以下、板材13と称す。)が取り付けられている。板材13の材質は上述したような摩擦材10の材質と同様のものを用いることが可能である。そして、それらの材質を用いることにより摩擦材10と板材13は互いに圧接されると摩擦力が発生し、すべりが起きにくくなっている。
【0022】
摩擦材10と板材13については、図2(a)に示すようにかごドア2a、2bが戸閉中は、摩擦材10と板材13とが接触しないように取り付けられている。また、図2(b)に示すようにかごドア2a、2bが全開となる場合には、摩擦材10と板材13とが圧接されるように構成されている。
【0023】
ここで、摩擦材10と板材13との圧接は固定されるように圧接されるものとしてもよいが、摩擦材10と板材13との圧接状態は上下方向に摺動可能に圧接されていることが望ましい。これは、摩擦材10と板材13が圧接の際に固定される場合は、乗りかご1への乗降の際の荷重変化によって生じる上下振動の衝撃を吸収できなくなり、直接その衝撃が乗りかご1等に伝わり、乗りかご1自体や、摩擦材10、板材13またはそれらの取り付け部材等が破損する恐れがあるためである。
【0024】
一方、摺動可能に圧接される場合は、乗りかご1への乗客の乗降による荷重変化によって生じる上下振動の衝撃を吸収でき、かつ、その後の上下振動の連続的な発生を抑制することができる効果を得ることができるためである。
【0025】
なお、本実施形態においては、図3に示すように、本実施形態では板材13の取り付けに関しては、三方枠11にL字ブラケット12を取り付け、L字ブラケット12の摩擦材10と対向する箇所に板材13が設けられているものとしたが、これに限られず、L字ブラケット12や板材13は建物側設備に取り付けられるものであれば、その他の箇所に取り付けられるものとしてもよい。例えば、図4に示すように、L字ブラケット12や板材13は三方枠11に限られず、その他の建物側設備であるホールシル14などに取り付けるものとすることも可能である。
【0026】
具体的には、図4(a)の上視図に示すように、乗場に設けられる乗場ドアの開閉を案内するホールシル14にL字ブラケット12の一面を固定させ、他方の面に板材13を設ける構成とすることもできる。この場合も、板材13はかごドア2a、2bに設けられる摩擦材10と対向する箇所に設けられるものとする。具体的には、図4(b)の断面図に示すようにホールシル14の下部の軸方向全体もしくは一部に設けられる開口部にボルト15を介してL字ブラケット12の一面が固定されるものとする。L字ブラケット12の形状としては、図4に示すように、もともとL字形状である板金を折り曲げて成形するようなL字形状であり、一方の面は長手方向に沿ってホールシル14側に固定され、他方の面は長手方向がかごドア2a方向に向かうように取り付けられている。そして、このL字ブラケット12の他方の面のかごドア2aと対向する位置には板材13が設けられている。
【0027】
このようにして、ホールシル14にL字ブラケット12を取り付け、このL字ブラケット12に板材13を設けることによって、かごドア2a、2bの戸開時に乗りかご1の減衰効果を得るものとしてもよい。
【0028】
その他、L字ブラケット12や板材13を昇降路壁に設けるなど、建物側設置物のさまざまな箇所に取り付けることも可能であり、その場合であっても上記同様かご振動の減衰効果を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態においては、摩擦材10はかごドア2a、2bに取り付けられる部材として説明したが、かごドア2a、2b自体の昇降路側端部が摩擦材10からなるものとしてもよい。
【0030】
また、図5に示すように、かごドア2a、2bの昇降路側側部すなわち、かごドア2a、2b同士が接触しあう側面とは反対の側と摩擦材10の間にゴムやスプリング等の弾性体16を備えるものとしてもよい。弾性体16を備えることにより、乗りかご1への乗客の乗降の際、乗りかご1に水平方向の変位が生じた場合であっても弾性体16がその水平方向変位分を吸収または補完することができる。これにより、乗りかご1への乗客の乗降の際に摩擦材10と板材13とが離間することを防止でき、乗りかご1に発生する上下振動及びその後の上下振動の連続的な発生を抑制することができる。
【0031】
また、本実施形態においてはかごドア2a、2bに摩擦材10を取り付け、三方枠11に設けられるL字ブラケット12に板材13を取り付けるものとしたが、どちらか一方に、摩擦材10または板材13を設けるものとしてもよい。例えば、かごドア2a、2bに摩擦材10を取り付けるだけであっても、L字ブラケット12等に対して摩擦力を有するのであれば、同様の効果を得ることも可能である。これによれば、かごドア2a、2bに摩擦材10を取り付けるだけで済むことにより、コスト面でも効果を得ることができる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
【0033】
図6は本発明の第2の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成を示す上視図である。図7は本発明の第2の実施形態に係る弾性体を利用した摩擦材の取り付けを示す構成図である。
【0034】
本発明の第2の実施形態に係るかごドアの構成及び動作については、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
以下、図6を用いて本発明の第2の実施形態に係るエレベータの減衰機構の構成及び作用について説明する。
【0036】
本実施形態における乗りかご1の上面には回動軸すなわち回動中心17を有するカム18が備えられている。カム18は回動中心17から2方向にそれぞれ伸びる長手部19a、19bを有しており、長手部19aの先端部はかごドア2aの戸開閉動作の軌跡上に配置されるように図示しないばね等で回動を支持されている。一方、長手部19bの先端部には、摩擦材10が備えられている。
【0037】
また、第1の実施形態と同様、乗場出入口には三方枠11が設けられている。また、三方枠11には板材13が備えられている。
【0038】
ここで、本実施形態における摩擦材10と板材13との位置関係を説明する。
【0039】
まず、カム18は、かごドア2が戸開することによりカム18の長手部19aがかごドア2aによって押し込まれ、回動軸を中心にカム18が反時計回りに回動するようにして乗りかご1上面に設置されている。長手部19bは、カム18の回動に伴い長手部19bの先端部も三方枠11方向へ回動するようにカム18に備えられている。そして、カム18つまり長手部19bが回動することにより、長手部19bの先端部に備えられている摩擦材10が三方枠11に備えられている板材13に圧接するような箇所に、板材13が備えられている。
【0040】
すなわち、かごドア2が戸開するとともに、徐々にカム18が回動し、かごドア2が全開状態となった場合に長手部19bの先端部に備えられている摩擦材10と、三方枠11に備えられている板材13とが圧接されるようにそれぞれが構成されている。また、このとき第1の実施形態と同様に摩擦材10と板材13とが摺動可能に圧接するように構成されることが望ましい。そして、かごドア2が戸閉する際には長手部19aに備えられている図示しないばね等の復元力により、長手部19aが元のかごドア2戸開閉動作の軌跡上に配置されるようにカム10が回動するように構成されている。
【0041】
以上の構成により、第2の実施形態に係るエレベータの減衰機構は、かごドア2の戸開時には乗りかご1を摩擦材10と板材13の摩擦力によって支持することができ、これにより乗客の乗りかご1への乗り降りの際の荷重変化によって生じる上下振動の衝撃を吸収でき、かつ、その後の上下振動の連続的な発生を抑制することができる。
【0042】
また、図7に示すように本実施形態においても第1の実施形態と同様に、カム18が有する長手部19bの先端部と摩擦材10との間にゴムやスプリング等の弾性体16を備えるものとしてもよい。
【0043】
弾性体16を備えることにより、乗りかご1への乗客の乗降の際、乗りかご1に水平方向の変位が生じた場合であっても弾性体16がその水平方向変位分を吸収または補完することができる。これにより、乗りかご1への乗客の乗降の際に摩擦材10と板材13とが離間することを防止でき、乗りかご1に発生する上下振動及びその後の上下振動の連続的な発生を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、摩擦材10または板材13のどちらかのみを取り付けるものとしてもよい。例えば、摩擦材10をカム18の長手部19bの先端部に備えることで、かごドア2の戸開時に乗りかご1側と摩擦力を有する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…乗りかご
2a、2b…かごドア
3a、3b…ドアハンガ
4…ヘッダ
5…ドアモータ
6…駆動プーリ
7…タイミングベルト
8…アイドラプーリ
9a、9b…プーリ
10…摩擦材
11…三方枠
12…L字ブラケット
13…板材
14…ホールシル
15…ボルト
16…弾性体
17…回動中心
18…カム
19a、19b…長手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられる昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごに開閉自由に設けられるかごドアと、
前記かごドアに備えられる第1の摩擦材と、
前記建物側に備えられる第2の摩擦材と、
を備え、
前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材とはそれぞれ対向する位置に設けられ、前記かごドアの全開時には、前記第1の摩擦材と前記第2の摩擦材とが摺動可能に圧接されることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記第1の摩擦材は弾性体を介して前記かごドアに備えられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
建物に設けられる昇降路内を昇降する乗りかごと、
前記乗りかごに開閉自由に設けられるかごドアと、
前記乗りかごに回動中心を有し、複数の長手部を具備するカムと、
前記カムに備えられる長手部であって、前記かごドアの戸開閉軌跡上に配置される第1の長手部と、
前記カムに備えられる長手部であって、端部に第1の摩擦材を有する第2の長手部と、
前記建物側に備えられる第2の摩擦材と、
を備え、
前記かごドアの戸開により前記第1の長手部が戸開方向に押し込まれることで、前記カムとともに前記第1の長手部が回動し、前記カムの回動に伴う前記第2の長手部の回動により前記第2の長手部の端部に設けられる第1の摩擦材と前記第2の摩擦材とが摺動可能に圧接されることを特徴とするエレベータ。
【請求項4】
前記第1の長手部は前記かごドアの戸開閉軌跡上に配置されるように復元力を有することを特徴とする請求項3に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記第1の摩擦材は弾性体を介して前記第2の長手部の端部に備えられることを特徴とする請求項3に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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