説明

エレベータ

【課題】乗りかごの昇降中における昇降路側の送電側コイルと乗りかご側の受電側コイルとの間の非接触給電の伝送効率を、乗りかご側の機器が正常に動作可能な効率とする。
【解決手段】実施形態によれば、乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、乗りかごの機器へ供給するための電力を非接触給電方式にて受電するために当該乗りかごに取り付けられる受電側コイルと、乗りかごへ供給するための電力を昇降路側から非接触給電方式にて受電側コイルに送電し、かつ、受電側コイルに対する傾きを調整可能である送電側コイルと、送電側コイルから当該受電側コイルへ送電される電力の伝送効率が前記機器が正常に動作可能な効率となるように、受電側コイルに対する当該送電側コイルの傾きを調整する制御手段とをもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、昇降路側から乗りかごへの非接触給電を行なうエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの乗りかごへ電源を供給するために、電力給電用の電線ケーブルであるテールコードを用いてエレベータ制御装置から乗りかごに給電していた。
このテールコードは、昇降路の高さが高くなるほど長くなり、例えば高層ビルのエレベータでは数百m以上と長く、その重量が、乗りかご移動時の負荷の増大の原因となり、保守面でも問題になっている。また、震度の非常に強い地震などでは、その揺れによってテールコードが昇降路内の器材に引っ掛かることも懸念される。
【0003】
このため、乗りかご側に蓄電池を搭載してテールコードを無くし、昇降路側から乗りかごへ非接触により給電を行ない、この給電された電力を蓄電池に蓄電し、この蓄電池から乗りかごに搭載された空調機や照明機器などの電気機器に電力を供給するテールコードレスエレベータに関する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−260620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テールコードレスエレベータにおける、昇降路側と乗りかごとの間の非接触給電では、乗りかごの昇降に伴って昇降路側の送電側コイルと乗りかご側の受電側のコイルとの間の距離が離れるほど送電側コイルと受電側コイルとの伝送効率が低下してしまい、距離が近くても、送電側コイルと受電側コイルとの向かい合う角度がずれたりすると伝送効率がやはり低下してしまい、給電が行えなくなるため、乗りかごの停止時に停止階床の送電側コイルから受電側コイルへの非接触方式による給電を行なって、この給電された電力を乗りかごのバッテリに供給して運用している。
【0006】
しかし、この方式だと、乗りかごが階床に着床した場合以外は給電を行なえず、送電側コイル、受電側コイルおよびバッテリの性能によっては、一度の着床に伴う給電により、バッテリの満容量までの蓄電が行えないので、連続運転を行なっても乗りかご側の電力不足が生じないように、大容量のバッテリを搭載するなどしなければならず、コストが増大する原因となってしまうので、エレベータ昇降中における昇降路側の送電側コイルと乗りかご側の受電側コイルとの間の非接触給電の伝送効率を向上させる必要がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの昇降中における昇降路側の送電側コイルと乗りかご側の受電側コイルとの間の非接触方式の給電の伝送効率を、乗りかご側の機器が正常に動作可能な効率とすることが可能になるエレベータをすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、乗りかごの機器へ供給するための電力を非接触給電方式にて受電するために当該乗りかごに取り付けられる受電側コイルと、乗りかごへ供給するための電力を昇降路側から非接触給電方式にて受電側コイルに送電し、かつ、受電側コイルに対する傾きを調整可能である送電側コイルと、送電側コイルから当該受電側コイルへ送電される電力の伝送効率が機器が正常に動作可能な効率となるように、受電側コイルに対する当該送電側コイルの傾きを調整する制御手段とをもつ。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図。
【図2】第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャート。
【図4】第2の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図。
【図5】第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図。
【図6】第2の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャート。
【図7】第3の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図。
【図8】第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図。
【図9】第3の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。
この実施形態では、昇降路側に送電側コイルを設置し、乗りかご側に受電側コイルを設置し、昇降中における送電側コイルと受電側コイルとの間の磁気結合による非接触給電の伝送効率が、乗りかご側の機器が正常に動作可能な効率となるように、受電側コイルに対する送電側コイルの傾きを調整することを特徴としている。
【0011】
図1は、第1の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図である。
このエレベータは、昇降路側のエレベータ制御装置1と、所定の駆動電力を受けて回転動作する電動機の回転軸に取り付けられて回転するシーブ3と、このシーブ3に巻き掛けられたロープの両端に吊り下げられた乗りかご2とカウンタウェイトを備え、電動機の回転駆動に伴いシーブ3が回転し、そこに巻き掛けられたロープを介して乗りかご2とカウンタウェイトが昇降路内をつるべ式に昇降動作する。
【0012】
そして、乗りかご2における乗り場との対向部分にはかごドア5が設けられ、昇降路との対向部分には受電側コイル6が設けられ、乗りかご2の天井部分には給電装置7が設けられる。
【0013】
エレベータ制御装置1は、かご位置検出部11、電源供給制御部12、モータ制御部13を有する。
昇降路における乗りかご2の昇降方向に沿って電源供給ケーブル20が設けられ、この電源供給ケーブル20は外装体20aに覆われている。
【0014】
同じく昇降路における乗りかご2の昇降方向に沿って、第1ワイヤ22、第2ワイヤ23が設けられる。これらのワイヤは、昇降路側のコイル位置調整用モータ21に取り付けられ、当該コイル位置調整用モータ21の回転駆動により前述した昇降方向に沿って移動する。
【0015】
また、このエレベータは、乗りかご側の受電側コイル6に非接触方式により電力を供給するための送電側コイル24a,24bを備える。
送電側コイル24aは、アームと、当該アームの一端部に取り付けられる送電部とを有する。送電部は、所定範囲内に位置する受電側コイル6に対向した状態で、電源供給ケーブル20からの電力を非接触給電方式により受電側コイル6に給電する。アームの中央部分は、電源供給ケーブル20の外装体20aに回動可能に取り付けられ、アームの他端部は第2ワイヤ23に固定されており、第2ワイヤ23の上下移動により、外装体20aの取り付け部分が回動して送電部の位置が上下に移動することで、受電側コイル6に対する送電側コイル24aの傾きを調整可能となっている。
【0016】
具体的には、第2ワイヤ23が上方向に沿って移動した場合は、送電側コイル24aのアームの一端部が下方向に移動するので送電部の位置が下方向に移動し、第2ワイヤ23が下方向に沿って移動した場合は、アームの一端部が上方向に移動するので送電部の位置が上方向に移動する。
【0017】
送電側コイル24bは、送電側コイル24aと同じく、アームと、当該アームの一端部に取り付けられる送電部とを有する。送電部は、所定範囲内に位置する受電側コイル6に対向した状態で、電源供給ケーブル20からの電力を非接触給電方式により受電側コイル6に給電する。アームの中央部分は、電源供給ケーブル20の外装体20aに回動可能に取り付けられ、アームの他端部は第1ワイヤ22に固定されており、第1ワイヤ22の上下移動により、外装体20aの取り付け部分が回動して送電部の位置が上下に移動することで、受電側コイル6に対する送電側コイル24bの傾きを調整可能となっている。
【0018】
具体的には、第1ワイヤ22が上方向に沿って移動した場合は、送電側コイル24bのアームの一端部が下方向に移動するので送電部の位置が下方向に移動し、第1ワイヤ22が下方向に沿って移動した場合は、アームの一端部が上方向に移動するので送電部の位置が上方向に移動する。
【0019】
本実施形態では、送電側コイル24a,24bが昇降路側に複数設けられており、送電側コイル24aと送電側コイル24bとが乗りかご昇降方向に沿って交互に取り付けられる。以下、必要に応じて、送電側コイル24aと送電側コイル24bを総称して単に送電側コイル24と称する。
【0020】
また、シーブ3には乗りかご移動量検出装置であるパルスジェネレータ(PG)4が取り付けられる。パルスジェネレータ4はシーブ3の回転角度に応じたパルス信号をエレベータ制御装置1に出力する。
【0021】
エレベータ制御装置1のかご位置検出部11は、パルスジェネレータ4からのパルス信号のアップダウンカウントの結果得た積算パルス数の大小をもとに、乗りかご2の位置を検出する。
【0022】
電源供給制御部12は、商用電源からの電力を受電して、この受電した電力を電源供給ケーブル20に供給する。この供給により、この電力が送電側コイル24a,24bを介して乗りかご側の受電側コイル6に給電される。
【0023】
コイル位置調整用モータ21は、第1ワイヤ22用の第1の回転軸と第2ワイヤ23用の第2の回転軸とを有し、第1の回転軸を回転させることで第1ワイヤ22を上下方向に移動させ、また、第2の回転軸を回転させることで第2ワイヤ23を上下方向に移動させる。
【0024】
ここでは、コイル位置調整用モータ21を2つの回転軸を有する形態としたが、これに限らず、コイル位置調整用モータ21を2つ設け、一方のコイル位置調整用モータ21の駆動により第1ワイヤ22を上下方向に移動させ、他方のコイル位置調整用モータ21の駆動により第2ワイヤ23を上下方向に移動させるようにしてもよい。
【0025】
モータ制御部13は、昇降路側のコイル位置調整用モータ21を回転駆動させることで、当該コイル位置調整用モータ21に取り付けられる第1ワイヤ22および第2ワイヤ23のそれぞれを上下方向に移動させる。
【0026】
図2は、第1の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図である。
乗りかご2の給電装置7は、コンバータ装置71、インバータ装置72、給電制御部73、例えばニッケル水素電池などの二次電池であるバッテリ74を有する。
コンバータ装置71は、受電側コイル6により受電した電力である交流電力を直流電力に変換する。インバータ装置72は、変換後の直流電力を、給電先のかごドア駆動装置、かご操作盤、かご内照明といったかご内機器に適合する周波数の交流電力に変換する。給電制御部73は、インバータ装置72により変換された電力をバッテリ74に蓄電して、この蓄電した電力をかご内機器に供給する。
【0027】
図3は、第1の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャートである。
エレベータ制御装置1のかご位置検出部11は、パルスジェネレータ4による検出結果をもとに、かご位置を検出する(ステップS1)。
【0028】
モータ制御部13の内部メモリには、各箇所の送電側コイル24に固有の識別番号、当該送電側コイル24の設置高さ、当該の接続先のワイヤが第1ワイヤ22および第2ワイヤのいずれであるかを示すワイヤ種別を示すコイル設置情報が記憶されている。モータ制御部13は、このコイル設置情報の設置高さとステップS1で検出済みのかご位置とを照合することで、電源供給ケーブル20への取り付け部分が、かご位置検出部11により検出したかご位置と同じ高さもしくは当該かご位置の上方かつ最も近い位置に位置する送電側コイル24の識別番号、および当該送電側コイル24に接続されるワイヤのワイヤ種別を検出する(ステップS2)。
【0029】
モータ制御部13は、コイル位置調整用モータ21の駆動方向および駆動量をもとに、各箇所の送電側コイル24におけるワイヤ取り付け部分の高さを逐次計算して当該コイルの識別番号と対応付けて内部メモリに記憶している。モータ制御部13は、この計算結果とステップS2で検出した送電側コイル24の識別番号とを照合することで、当該検出した送電側コイル24のワイヤ取り付け部分の高さを計算して、この高さとステップS1で検出済みのかご位置との関係に基づいて、接続先のワイヤの移動させるべき方向を判別し、当該ワイヤを当該判別した移動方向に沿って移動させるためにコイル位置調整用モータ21を駆動させて(ステップS3)、第1ワイヤ22、第2ワイヤ22のうち、ステップS2で検出した送電側コイル24に接続されるワイヤを上方または下方に移動させ(ステップS4)、このワイヤに接続される送電側コイル24の送電部と受電側コイル6との距離が最短もしくはかご内機器が正常に動作可能となる給電を行なえる距離となるように、受電側コイル6に対する送電側コイル24の傾きを調整する(ステップS5)。これにより、乗りかご2の移動に応じて高さが変化する受電側コイル6に対して、かご位置と同じ高さ、もしくは、かご位置の上方かつ最も近い位置に位置する送電側コイル24の傾きを追従させることができ、送電側コイル24の送電部と受電側コイル6との間の電力の伝送効率を最大もしくは、かご内機器が正常に動作可能な効率となるように向上させることができるので、乗りかごの移動中でも昇降路側から乗りかご2への非接触給電方式による必要十分な電力供給を行なうことができる。
【0030】
次に、モータ制御部13は、前述したコイル設置情報の設置高さとステップS1で検出済みのかご位置とを照合することで、電源供給ケーブル20への取り付け部分が、かご位置検出部11により検出したかご位置の下方かつ最も近い位置に位置する送電側コイル24の識別番号、および当該送電側コイル24に接続されるワイヤのワイヤ種別を検出する(ステップS6)。
【0031】
モータ制御部13は、内部メモリに記憶される、各種の送電側コイル24のワイヤ取り付け部分の高さの計算結果と、ステップS6で検出した送電側コイル24の識別番号とを照合することで、当該検出した送電側コイル24のワイヤ取り付け部分の高さを計算して、この高さとステップS1で検出済みのかご位置との関係に基づいて、接続先のワイヤの移動させるべき方向を判別し、当該ワイヤを当該判別した移動方向に沿って移動させるためにコイル位置調整用モータ21を駆動させる(ステップS7)。
【0032】
さらに、モータ制御部13は、第1ワイヤ22、第2ワイヤ22のうちステップS6で検出した送電側コイル24に接続されるワイヤを上方または下方に移動させ(ステップS8)、このワイヤに接続される送電側コイル24の送電部と受電側コイル6との距離が最短もしくは最短に近くなるように、受電側コイル6に対する送電側コイル24の傾きを調整する(ステップS9)。
【0033】
これにより、乗りかご2の移動に応じて高さが変化する受電側コイル6に対して、かご位置の下方かつ最も近い位置に位置する送電側コイル24の傾きを追従させることができ、送電側コイル24の送電部と受電側コイル6との間の電力の伝送効率を、かご内機器が正常に動作可能な効率となるように向上させることができるので、乗りかごの移動中でも昇降路側から乗りかご2への非接触給電方式による必要十分な電力供給を行なうことができる。
【0034】
以上のように、第1の実施形態におけるエレベータでは、乗りかご2の移動に応じて高さが変化する受電側コイル6に対して、かご位置から最も近い位置に位置する送電側コイル24の傾きを追従させることができ、送電側コイル24の送電部と受電側コイル6との間の電力の伝送効率を、かご内機器が正常に動作可能な効率となるように向上させることができるので、乗りかごの昇降中でも昇降路側から乗りかご2への非接触給電方式による必要十分な電力供給を行なうことができ、大容量のバッテリなどを乗りかごに搭載しなくとも、乗りかご側の電力不足が生じないようにすることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態におけるエレベータの構成のうち図1に示したものと同一部分の説明は省略する。
この実施形態では、乗りかご側の給電状況の確認のためのカレントセンサを設置し、必要十分な給電が行えているか監視し、必要十分な給電が行えていない場合は、異常元の可能性のあるコイルを特定して、当該コイルの点検を促す表示を行なうことを特徴としている。
【0036】
図4は、第2の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図である。
本実施形態では、乗りかご2の天井部分には、エレベータ制御装置1との間で無線送受信を行なうための無線送受信装置31が設けられる。また、エレベータ制御装置1は、第1の実施形態で説明した、かご位置検出部11、電源供給制御部12、モータ制御部13に加え、無線送受信部32、異常発生元検出部33、異常発生元報知部34、表示装置35をさらに有する。
【0037】
図5は、第2の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、乗りかご2の給電装置7は、第1の実施形態で説明した、コンバータ装置71、インバータ装置72、給電制御部73、バッテリ74に加え、インバータ装置72により変換した電力から示される電流値を検出することで乗りかご2への給電状況を検出してエレベータ制御装置1に出力するためのカレントセンサ75をさらに有する。
【0038】
無線送受信部32は、給電装置7のカレントセンサ75から無線で送信された検出結果を受信する。異常発生元検出部33は、給電装置7のカレントセンサ75からの検出結果が、乗りかご2側に必要十分な給電がなされていない事を示す場合に、かご位置検出部11により検出するかご位置をもとに、異常発生元の可能性のあるコイルを特定する。
異常発生元報知部34は、異常発生元検出部33により検出した、異常発生元のコイルの点検を促すメッセージなどを表示装置35に表示させる。
【0039】
図6は、第2の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャートである。
第1の実施形態で説明したような非接触給電を伴う運転中において、乗りかご2の給電装置7のカレントセンサ75は、インバータ装置72から給電制御部73に供給される電流値を検出して、この検出結果を無線送受信装置31を介してエレベータ制御装置1に出力する(ステップS11)。
【0040】
エレベータ制御装置1の無線送受信部32は、給電装置7からの検出結果を受信すると、異常発生元検出部33に出力する。異常発生元検出部33は、この検出結果の電流値が、乗りかご側への給電が必要十分になされていない事を示す一定値以下である場合は(ステップS12のYES)、かご位置検出部11により検出したかご位置を取得し(ステップS13)、検出時の給電元の送電側コイル24もしくは受電側コイル6に異常が発生している可能性があると判断する。
【0041】
すると、異常発生元検出部33は、この検出時において、第1の実施形態で説明した、モータ制御部13の内部メモリに記憶される、コイル設置情報中の、各箇所の送電側コイル24に固有の識別番号および当該送電側コイル24の設置高さ、およびステップS13で取得済みのかご位置をもとに、かご位置と同じ高さにある送電側コイル24、かご位置の上方で最も近い送電側コイル24、かご位置の下方で最も近い送電側コイル24、および受電側コイル6を、異常発生している可能性のあるコイルとして特定する(ステップS14)。
【0042】
異常発生元報知部34は、異常発生元検出部33により検出した、異常発生元の可能性のある送電側コイルの設置位置、および当該送電側コイル24および受電側コイル6の点検を促すメッセージなどを表示装置35に表示させる(ステップS15)。これにより、保守員は、乗りかご2への給電状況が必要十分でない場合に、点検すべきコイルを容易に把握することができる。
【0043】
前述した、点検を促すメッセージは、エレベータ制御装置1側の表示装置35に限らず、建物内の管理室内の表示装置に表示させてもよいし、建物外の遠隔監視センタなどの表示装置に表示させてもよい。また、メッセージとあわせて点検を促す音声を音声出力装置を用いて出力してもよい。
【0044】
また、乗りかご2の給電装置7のカレントセンサ75による検出結果をエレベータ制御装置2に送信する際は、上述した無線通信に限らず、信号伝送を行なうためのケーブルを乗りかご2とエレベータ制御装置2の間に接続し、このケーブルによりカレントセンサ75による検出結果を乗りかご2からエレベータ制御装置2に送信するようにしてもよい。
【0045】
以上のように、第2の実施形態におけるエレベータでは、乗りかご側の給電装置7へ供給される電流値が、乗りかご2側に必要十分な給電がなされていない事を示す場合に、かご位置検出部11により検出するかご位置をもとに、異常発生元の可能性のあるコイルを特定し、このコイルの点検を促すメッセージなどを表示させるので、保守員は、複数設置される送電側コイル24のうち点検すべきコイルを容易に把握することができるので、点検作業にかかる負担が大幅に軽減される。
【0046】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
この実施形態では、停電などにより、乗りかご側への電源供給不足の状態となった場合に、乗りかご2に設置した非常用バッテリから一時的に電源供給を行なうことを特徴としている。
【0047】
図7は、第3の実施形態における非接触給電方式のエレベータの構成例を示す図である。
本実施形態では、乗りかご2の天井部分には、非常時にかご内機器に供給するための電力を蓄電する非常用バッテリ41が設けられる。
図8は、第3の実施形態におけるエレベータの乗りかごの給電装置の機能構成例を示すブロック図である。
本実施形態では、乗りかご2の給電装置7は、第1の実施形態で説明した、コンバータ装置71、インバータ装置72、給電制御部73、バッテリ74に加え、バッテリ74の蓄電状態を検出する蓄電状態検出部76と、非常用バッテリ41に対する充放電制御を行なうための充放電制御部77とをさらに有する。
【0048】
この充放電制御部77は、通常時は、給電制御部73に供給される電力を非常用バッテリ41に対して満容量まで蓄電し、停電などにより、乗りかご側への電源供給不足の状態となった場合に、この蓄電された電力をかご内機器に供給する。
【0049】
図9は、第3の実施形態におけるエレベータの非接触給電に係る処理動作の一例を示すフローチャートである。
第1の実施形態で説明したような非接触給電を伴う運転中において、乗りかご2の給電装置7の蓄電状態検出部76は、給電装置7内のバッテリ74の満容量に対する現在の蓄電容量を検出し(ステップS21)、この充電容量が、停電などにより、かご内機器への正常な電力供給が行えなくなる可能性のあり、非常用バッテリ41からの放電を要する基準値以下である場合(ステップS22のYES)、非常用バッテリ41からの電源供給の指示信号を充放電制御部77に出力する。
充放電制御部77は、電源供給の指示信号を入力すると、乗りかご2の非常用バッテリ41に蓄電される電力をかご内機器に供給する(ステップS23)。
【0050】
以上のように、第3の実施形態におけるエレベータでは、停電などにより、乗りかご側への電源供給不足の状態となった場合に、乗りかご2に設置した非常用バッテリから一時的に電源供給を行なうので、乗りかごへの電力供給を維持することができる。
【0051】
これらの各実施形態によれば、乗りかごの昇降中における昇降路側の送電側コイルと乗りかご側の受電側コイルとの間の非接触方式の給電の伝送効率を、乗りかご側の機器が正常に動作可能な効率とすることが可能になるエレベータを提供することができる。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…エレベータ制御装置、2…乗りかご、3…シーブ、4…パルスジェネレータ、5…かごドア、6…受電側コイル、7…給電装置、11…かご位置検出部、12…電源供給制御部、13…モータ制御部、20…電源供給ケーブル、20a…外装体、21…コイル位置調整用モータ、22…第1ワイヤ、23…第2ワイヤ、24a,24b…送電側コイル、31…無線送受信装置、32…無線送受信部、33…異常発生元検出部、34…異常発生元報知部、35…表示装置、41…非常用バッテリ、71…コンバータ装置、72…インバータ装置、73…給電制御部、74…バッテリ、75…カレントセンサ、76…蓄電状態検出部、77…充放電制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごの位置を検出するかご位置検出手段と、
前記乗りかごの機器へ供給するための電力を非接触給電方式にて受電するために当該乗りかごに取り付けられる受電側コイルと、
前記乗りかごへ供給するための電力を昇降路側から非接触給電方式にて前記受電側コイルに送電し、かつ、前記受電側コイルに対する傾きを調整可能である送電側コイルと、
前記送電側コイルから当該受電側コイルへ送電される電力の伝送効率が、前記機器が正常に動作可能な効率となるように、前記受電側コイルに対する当該送電側コイルの傾きを調整する制御を行なう制御手段と
を備えたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記送電側コイルは、前記乗りかごの昇降方向に沿って前記昇降路側に複数取り付けられ、
前記制御手段は、
前記かご位置検出手段により検出したかご位置と同じ位置の前記送電側コイルの傾き、当該かご位置より高い前記送電側コイルのうち当該かご位置に最も近い前記送電側コイルの前記傾き、および前記かご位置検出手段により検出したかご位置より低い前記送電側コイルのうち当該かご位置に最も近い前記送電側コイルの前記傾きをそれぞれ調整する制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記送電側コイルの送電部からみて前記昇降路側の取り付け部分より先の部分を取り付け、かつ、調整モータの所定の回転方向にしたがった回転駆動により前記昇降方向に沿って移動する第1のワイヤと、
前記第1のワイヤに取り付けられる前記送電側コイルに対する、前記昇降方向に沿った1つ上方または下方に位置する前記送電側コイルの送電部からみて前記昇降路側の取り付け部分より先の部分を取り付け、かつ前記調整モータの所定の回転方向にしたがった回転駆動により前記昇降方向に沿って移動する第2のワイヤとをさらに備え、
前記制御手段は、
前記調整モータを駆動させることで、前記第1のワイヤに取り付けられた前記送電側コイルから前記受電側コイルへの電力の伝送効率および前記第2のワイヤに取り付けられた前記送電側コイルから前記受電側コイルへの電力の伝送効率が、前記機器が正常に動作可能な効率となるように、前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤをそれぞれ移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記乗りかごの前記受電側コイルへの給電状況を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果が、前記送電側コイルのいずれかの異常を示す場合に、当該異常を示した際の前記かご位置検出手段により検出したかご位置と前記送電側コイルの設置高さとをもとに、異常にある前記送電側コイルを検出する異常検出手段と、
前記異常にある前記送電側コイルを報知する報知手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記受電側コイルにより受電した電力を前記乗りかごの機器の非常用電力として蓄電する非常用蓄電装置と、
前記乗りかごにおける受電状態を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出結果が、前記乗りかごの機器の正常な動作を行なうための前記非常用蓄電装置からの放電を要する検出結果である場合に、前記非常用蓄電装置から前記乗りかごの機器への電源供給のための放電を制御する放電制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−60262(P2013−60262A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199990(P2011−199990)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】