説明

エンコーダ、エンコーダの取り付け方法、及びモータ装置

【課題】インロー構造を不要とすることでモータに対する取り付け、或いは取付作業を簡略化できるエンコーダ、エンコーダの取り付け方法、及び該エンコーダを備えるモータ装置を提供する。
【解決手段】所定のパターンが形成された回転符号板および測定対象の回転軸に固定するための固定孔を有し、回転軸に固定可能な円板部と、所定のパターンを検出する検出部を含む基板部と、基板部を保持するとともに、円板部の一部と嵌合して円板部を収容する本体部と、回転符号板および検出部が固定孔に対して同心が取れた状態で円板部を基板部に対して一体に保持する保持部材と、を備えるエンコーダに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ、エンコーダの取り付け方法、及びモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばモータの回転軸など回転体の回転数や回転角度を検出する装置として、エンコーダが知られている(特許文献1)。エンコーダは、例えばモータ(測定対象)の回転軸などに取り付けられて用いられる。エンコーダの一例として、所定の光反射パターン及び磁気パターンが形成された回転部を回転軸と一体的に回転させ、光反射パターンに光を照射して反射光を読み取ると共に、例えば磁気パターンの変化を検出することで、モータの回転軸の回転数や回転角度を検出できるようになっている。
従来、このようなエンコーダをモータ等に固定する手段として、モータ側にモータ軸と同心の取れているインロー構造を設け、該インロー構造を用いてエンコーダがモータに固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−20548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、モータ側にインロー構造を設ける場合、モータの加工に工数が掛かるとともに、モータ軸とインロー構造との同心度を精度良く構成することが難しいといった問題があった。
【0005】
本発明の態様は、上述のようなインロー構造を不要とすることでモータに対する取り付け、或いは取付作業を簡略化できるエンコーダ、エンコーダの取り付け方法、及び該エンコーダを備えるモータ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエンコーダは、所定のパターンが形成された回転符号板および測定対象の回転軸に固定するための固定孔を有し、前記回転軸に固定可能な円板部と、前記所定のパターンを検出する検出部を含む基板部と、前記基板部を保持するとともに、前記円板部の一部と嵌合して前記円板部を収容する本体部と、前記回転符号板および前記検出部が前記固定孔に対して同心が取れた状態で前記円板部を前記基板部に対して一体に保持する保持部材と、を備える。
【0007】
本発明に係るエンコーダの取り付け方法は、本発明に係るエンコーダを測定対象の回転軸に取付けるエンコーダの取付方法であって、前記固定孔に前記回転軸を挿入した状態で前記本体部を前記測定対象上に配置する工程と、前記円板部の一部が前記本体部に嵌合した状態で当該本体部を前記測定対象に固定する工程と、前記保持部材を取り外すことで前記円板部及び前記本体部の嵌合状態を解消させる工程と、前記円板部と前記回転軸とを固定する工程と、を有する。
【0008】
本発明に係るモータ装置は、本発明に係るエンコーダを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、エンコーダの取り付け、或いは交換作業を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一実施形態に係るエンコーダの全体構成を示す断面図。
【図2】本実施形態に係るモータ装置の全体構成を示す断面図。
【図3】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を説明するための図。
【図4】本実施形態に係る回転軸から回転部を取り外す工程を説明するための図。
【図5】(a)は第ニ実施形態に係るエンコーダの平面図、(b)はその断面構成図。
【図6】第ニ実施形態に係るモータ装置の全体構成を示す断面図。
【図7】本実施形態に係るエンコーダの取り付け工程を説明するための図。
【図8】図7に続く取り付け工程説明図。
【図9】図8に続く取り付け工程説明図。
【図10】図9に続く取り付け工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
(第一実施形態)
エンコーダは、モータなどの回転体(モータ装置)の回転数や回転速度を検出する装置である。図1は、第一実施形態に係るエンコーダ100の全体構成を示す断面図であり、モータに取り付けられる前の状態を示す図である。図1に示すように、エンコーダ100は、筐体(本体部)4、検出部(基板部)30、及び回転部(円板部)15を有している。
【0012】
検出部30は、検出基板5及び光センサ(検出部)8を有している。検出基板5は、例えば平面視円形に形成された板状部材である。検出部30は、回転部15に形成された光反射パターン10に光を照射し、光センサ8が反射光を検出することで光反射パターン10の移動角度を検出することができる。検出部30(検出基板5)は、筐体4に取り付けられている。
【0013】
また、筐体4及び検出部30には、エンコーダ100とモータ本体1aとを固定するための固定ネジ40(図2参照)を挿通させるための貫通孔41がそれぞれ形成されている。エンコーダ100は、固定ネジ40を介してモータ本体1aに一体的に接合可能となっている(図2参照)。
【0014】
回転部15は、回転本体部31、円板部(回転符号板)9、及び、凸部32を有している。円板部9は回転本体部31の一端側に設けられた円板形状からなるものであり、表面に光反射パターン10が形成されている。凸部32は回転本体部31の他端側に設けられた円柱形状からなるものであり、回転部15が検出基板5に固定された状態において、筐体4に嵌合されている。
【0015】
回転部15には、中央に貫通孔33が設けられている。貫通孔33の一端部は、モータ本体1aの回転軸2を固定するための回転軸固定孔33aを構成しており、他端側は回転部15をモータ本体1aの回転軸2に固定するためのボルト(図2参照)3が配置されるボルト配置孔33bを構成している。また、貫通孔33における回転軸固定孔33aとボルト配置孔33bとの間は、タップ部33cを構成している。タップ部33cはタップによって形成された雌ネジからなる。なお、タップ部33cの内径は、ボルト3の軸部3bの外径よりも大きく構成されている。すなわち、ボルト3の軸部3bは、タップ部33cに対して螺合しない構成となっている(図2参照)。
【0016】
回転部15は、ボルト42(保持部材)を介して検出基板5に固定されている。検出基板5には、ボルト42を挿通させるための開口部5aが形成されている。ボルト42は、頭部42aと軸部42bとを含んでいる。上記開口部5aは、ボルト42の頭部42aよりも小さく設定されている。一例として、ボルト42は、回転部15のタップ部33cに螺合することで回転部15を検出基板5に固定している。
【0017】
筐体(本体部)4は、平面視円形に形成された円筒状からなるものであり、モータ本体1aの外径と略同じ大きさを有するものである。筐体4は、第1の凹部4a、第2の凹部4b、及び嵌合部4cと、を含み、内部空間において回転部15を収容している。第1の凹部4aは、検出基板5との間で回転部15(回転本体部31および円板部9)を収容する空間を構成している。また、第2の凹部4bは、回転部15が回転軸2に固定された際、モータ本体1aとの間で回転部15の凸部32を収容する空間を構成するためのものである(図2参照)。
【0018】
本実施形態に係るエンコーダ100は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態(同心状態)で、ボルト42により回転部15と検出基板5とが一体に保持された状態で組み立てられたものとなっている。
【0019】
ここで、エンコーダ100において円板部9と検出部30との同心を取った状態で組み立てる方法について説明する。
回転部15は、エンコーダ100を取り付けるモータの回転軸2と同じ外径の基準軸に同心を取った状態で加工されたものとなっている。さらに、回転部15は、凸部32の外径と貫通孔33(又は回転軸固定孔33a)とが基準軸と同軸になるように加工されたものとなっている。また、円板部9の光反射パターン10も偏心取り作業により、基準軸と同軸加工が施された回転軸固定孔33aに対して同心が取られた状態で形成されたものとなっている。
【0020】
嵌合部4cは、上記回転部15における凸部32を嵌合させる円形状の開口をなすものである。また、嵌合部4cは、凸部32に嵌合する回転部15と同心が取れた状態となるように上記開口が構成されている。上述のように回転部15は凸部32の外径と回転軸固定孔33aとが同心状(同心状態)となっているため、回転部15と同心が取られた筐体4(嵌合部4c)は回転軸固定孔33aに対しても同心が取られた状態となっている。
【0021】
検出部30は、ボルト42(保持部材)を介して検出基板5と回転部15とが固定されている。検出部30は、光センサ8が嵌合部4cと同心がとれた状態となっている。すなわち、光センサ8は、上記の同心状態を満たすように検出基板5上に配置されている。この開口部5aは、回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態となっている。上述のように嵌合部4cは回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態で加工されているため、嵌合部4cと同心が取られた検出部30は回転軸固定孔33aに対しても同心が取られた状態となっている。
【0022】
回転部15は、凸部32が筐体4の嵌合部4cに嵌合した状態で、検出基板5の開口部5a及び貫通孔33に挿通されたボルト42がタップ部33cに螺合することで検出基板5に固定されている。なお、ボルト42は、その先端部が回転軸固定孔33a内に突出するようにタップ部33cに螺合している。
【0023】
このように、本実施形態に係るエンコーダ100は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態で、ボルト42により回転部15と検出基板5とが一体に保持された状態で組み立てられたものとなっている。
【0024】
図2は、エンコーダ100がモーター装置1の回転軸2に取り付けられたモータ装置1の全体構成を示す断面図である。
図2に示すように、エンコーダ100は、固定ネジ40を介して筐体4がモータ本体1aに固定されている。モータ本体1aには、回転軸2側の上端部に固定ネジ40を取り付けるための雌ねじ部1Aが形成されており、上記固定ネジ40が雌ねじ部1Aに螺合することで筐体4とモータ本体1aとが一体に保持されている。
【0025】
モータ装置1は、回転部15がボルト3により回転軸2に固定され、回転軸2と一体的に回転するようになっている。ボルト3は、頭部3aと軸部3bとを含み、軸部3bに形成されたネジ部3bbが回転軸2に形成された雌ねじ2aに螺合することで回転部15を回転軸2に固定している。
【0026】
回転部15は、光反射パターン10を所定の距離で検出部30の光センサ8に対向させて保持している。回転部15が回転軸2に固定された状態においては、円板面9aが回転軸2に垂直となり、回転部15の回転軸R方向は回転軸2の延在方向と同一方向となっている。回転部15は、回転軸2に固定された状態において、筐体4に接触しないように収容されている。
【0027】
ここで、モータ装置1に取り付けられたエンコーダ100の動作について説明する。
回転軸2が回転すると、当該回転軸2に一体的に取り付けられた回転部15及び光反射パターン10が回転軸2と一体的に回転する。検出部30については、回転軸2には接続されていないため、回転せずに静止した状態となる。
【0028】
回転部15が回転すると、当該回転部15に形成された光反射パターン10が回転方向に移動する。上述の光センサ8は、光源から射出された光のうち光反射パターン10を介した反射光を読み取ることで光反射パターン10の移動角度等に基づいて回転軸2の回転情報(例、回転角度や回転数)を検出することができる。
【0029】
このようにして、エンコーダ100は、回転軸2の回転情報を検出可能となっている。本実施形態に係るモータ装置1は、上記エンコーダ100が取り付けられているので、回転軸2と円板部9及び検出部30とが精度良く位置出しされたものとなっており、回転軸2の回転制御を精度良く行うことができる。
【0030】
次に、図3に示す構成のモータ装置1に図1に示したエンコーダ100を取り付ける手順について説明する。
まず、図3(a)に示すように、回転軸固定孔33aに回転軸2を挿入させつつ、モータ本体1a上にエンコーダ100を配置する。本実施形態に係るエンコーダ100は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態で組み立てられているため、回転軸固定孔33aに挿入された回転軸2は円板部9及び検出部30に対して位置出しされたものとなる。なお、回転軸2は回転軸固定孔33aの途中まで挿入された状態となっている。ボルト42は、タップ部33cに螺合した状態にて、その先端部が回転軸固定孔33a内に突出しているが、先端部は回転軸2に当接していても構わない。
【0031】
本実施形態に係るエンコーダ100は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態となっているので、回転軸固定孔33a内に挿入された回転軸2は円板部9および検出部30に対して同心状(同心状態)に配置されたものとなる。
【0032】
続いて、図3(b)に示すように回転部15の凸部32が筐体4の嵌合部4cに嵌合した状態で、貫通孔41に固定ネジ40を挿通し、該固定ネジ40を用いて筐体4とモータ本体1aとを固定する。
【0033】
続いて、図3(c)に示すように、検出基板5と回転部15とを固定するボルト42を取り外す。これにより、回転部15と筐体4との嵌合状態が解消されることとなる。
一例として、ボルト42がタップ部33cから外れるに従って、回転部15が下方に移動して回転軸2が回転軸固定孔33aに完全に挿入された状態となる。また、回転部15が下方に移動するに従って、凸部32が嵌合部4cから外れた状態となる。
【0034】
続いて、図3(d)に示すように、回転部15を回転軸2にボルト3によって固定する。なお、ボルト3は、頭部3aの外径が検出基板5に形成された開口部5aの内径よりも小さいため、開口部5aを挿通し、ボルト配置孔33bに確実に配置されるようになる。よって、ボルト3は、軸部3bが回転軸2の雌ねじ2aに螺合することで回転部15と回転軸2とを確実に固定できる。
【0035】
以上述べたように本実施形態に係るエンコーダの取り付け方法によれば、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れたエンコーダ100を組み込むため、インロー構造をモータ本体1aに設ける事無く、回転軸2を回転軸固定孔33aに挿入した後、固定することで回転軸2と円板部9及び検出部30とが精度良く位置出しされたモータ装置1を容易に組み立てることができる。
【0036】
このモータ装置1によれば、回転軸2と円板部9及び検出部30とが精度良く位置出しされているので、回転軸2の回転制御を精度良く行うことが可能であり、信頼性の高いものとなる。
【0037】
なお、回転部15と検出基板5とを固定していた上記ボルト42は、回転軸2から回転部15を取り出す際の抜きネジとして使用することができる。一例として、回転軸2から回転部15を取り出す場合、はじめにボルト3を回転軸2から取り外す。その後、検出基板5の開口部5a内にボルト42を挿通させ、ボルト42をタップ部33cに螺合させる。
【0038】
図4に示すように、ボルト42がタップ部33cに入り込んでいくと、ボルト42は、その先端部が回転軸固定孔33a内に突出する。なお、図4では、検出基板5の図示を省略している。このようにボルト42をタップ部33cに螺合させることで、ボルト42の先端部を回転軸固定孔33a内に突出させることができる。これにより、回転部15の回転軸固定孔33a内から回転軸2を引く抜くことができる。なお、図4においては検出基板5の図示を省略している。
【0039】
回転部15を回転軸2から引き抜いた後、筐体4とモータ本体1aとを固定している固定ネジ40を取り外すことで、エンコーダ100をモータ本体1aから取り外すことができる。
【0040】
このように本実施形態に係るエンコーダ100によれば、回転軸2に対する回転部15の取り外し工程を含む、モータ本体1aに対する取付或いは取り外し作業を簡便に行うことができる。よって、エンコーダ100は、モータ本体1aに対する着脱性に優れたものとなる。
【0041】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る構成について説明する。なお、本実施形態と第一実施形態との違いは、エンコーダにおける検出基板と回転部とが複数の保持部材で固定されること、及びエンコーダとモータ本体とを固定する手段として保持部材を利用することであり、それ以外の構成については同一である。そのため、以下の説明では第一実施形態と同一の部材及び構成については、説明を省略もしくは簡略化するものとする。
【0042】
図5は本実施形態に係るエンコーダの全体構成を示す図であり、図5(a)はエンコーダの平面図であり、図5(b)はエンコーダの断面構成図である。
エンコーダ200は、図5(a),(b)に示すように、第一実施形態に係る構成と同様、筐体4、検出部30、及び回転部15を有している。筐体4には、エンコーダ200とモータ本体1aとを固定するためのボルト(保持部材)142(図6参照)を挿通させるための貫通孔141が設けられた固定部143が形成されている。固定部143は、筐体4の周囲を囲む鍔形状からなるものである。このようにエンコーダ200は、ボルト142を介してモータ本体1aに固定されることでモータ本体1aに一体的に接合可能となっている(図6参照)。
【0043】
回転部15には、中央に貫通孔33が設けられている。貫通孔33の一端部は、回転軸2を固定するための回転軸固定孔33aを構成しており、他端側は回転部15を回転軸2に固定するためのボルト3が配置されるボルト配置孔33bを構成している。本実施形態では、貫通孔33における回転軸固定孔33aとボルト配置孔33bとの間には、タップ部が設けられない構成となっている。
【0044】
検出部30は、複数(本実施形態では、4本)のボルト142(保持部材)を介して検出基板5と回転部15とが固定されている。検出基板5には、上記貫通孔33を内部に臨ませる開口部5aが形成されている。この開口部5aは、回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態となっている。また、この開口部5aの外周を囲むように、上記ボルト142を挿通させる開口5bが形成されている。この開口5bも、回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態となっている。
【0045】
回転部15は、凸部32が筐体4の嵌合部4cに嵌合した状態にて、複数のボルト142が回転部15に設けられたネジ孔(雌ねじ)に螺合することで検出基板5に固定されている。
【0046】
本実施形態においても、検出部30は、光センサ8が嵌合部4cと同心がとれた状態となっている。すなわち、光センサ8は、上記の同心状態を満たすように検出基板5上に配置されている。検出基板5は、筐体4にネジ150を介して固定されている。本実施形態においても、嵌合部4cは回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態で加工されているため、嵌合部4cと同心が取られた検出部30は回転軸固定孔33aに対しても同心が取られた状態となっている。
【0047】
このように、本実施形態に係るエンコーダ200は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態で、ボルト142により回転部15と検出基板5とが一体に保持された状態で組み立てられたものとなっている。
【0048】
図6は、エンコーダ200がモータ装置1の回転軸2に取り付けられたモータ装置1´の全体構成を示す図であり、同図における上面図はモータ装置の平面構成を示し、下面図はモータ装置の断面構成を示している。図6に示すように、エンコーダ200は、回転部15と検出基板5とを固定していた複数のボルト142を介して筐体4がモータ本体1aに固定されている。
【0049】
モータ本体1aには、回転軸2側の上端部にボルト142を取り付けるための雌ねじ部1Aが形成されており、上記ボルト142が雌ねじ部1Aに螺合することで筐体4とモータ本体1aとが一体に保持されている。
【0050】
モータ装置1´は、回転部15がボルト3により回転軸2に固定され、回転軸2と一体的に回転するようになっている。ボルト3は、軸部3bに形成されたネジ部が回転軸2に形成された雌ねじ2aに螺合している。
【0051】
次に、図6に示す構成のモータ装置1´に図5に示したエンコーダ200を取り付ける手順について図7乃至10を参照しながら説明する。なお、各同図における上面図はモータ装置の平面構成を示し、下面図はモータ装置の断面構成を示している。
まず、図7に示すように、回転軸固定孔33aに回転軸2を挿入させつつ、モータ本体1a上にエンコーダ200を配置する。このとき、エンコーダ200は、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れた状態となっているため、回転軸固定孔33aに挿入された回転軸2は円板部9及び検出部30に対して位置出しされたものとなる。このとき、回転軸2は回転軸固定孔33aの途中まで挿入された状態とされている。
【0052】
続いて、回転部15の凸部32が筐体4の嵌合部4cに嵌合した状態で、筐体4をモータ本体1aに固定する。本実施形態では、図8に示すように、回転部15と検出基板5とを固定している4本のボルト142のうち、対角に配置される2本を外し、外したボルト142を筐体4の固定部143に設けられた貫通孔141を挿通させ、該ボルト142を用いて筐体4をモータ本体1aに固定する。このとき、回転部15は、2本のボルトで検出基板5に固定されているため、凸部32は筐体4の嵌合部4cに嵌合したままの状態となっている。
【0053】
そして、図9に示すように、残りの2本のボルト142を外し、外したボルト142を用いて筐体4をモータ本体1aに固定する。2本のボルト142が外れると、回転部15は下方に移動することで回転軸2が完全に回転軸固定孔33aに挿入された状態となる。また、回転部15は下方に移動するに従って、凸部32が嵌合部4cから外れた状態となる。
【0054】
このように本実施形態においては、取り外したボルト142を用いて筐体4とモータ本体1aとを順次固定することで、筐体4とモータ本体1aとを固定する工程と、ボルト142を取り外すことで回転部15及び筐体4の嵌合状態を解消させる工程と、を同時に(同期させて)行うことができる。
【0055】
続いて、図10に示すように、回転部15を回転軸2にボルト3によって固定する。ボルト3は、軸部3bが回転軸2の雌ねじ2aに螺合することで回転部15と回転軸2とを確実に固定することができる。
【0056】
以上述べたように本実施形態に係るエンコーダの取り付け方法によれば、円板部9および検出部30が回転軸固定孔33aに対して同心が取れたエンコーダ200を組み込むため、インロー構造をモータ本体1aに設ける事無く、回転軸2を回転軸固定孔33aに挿入した後、固定することで回転軸2と円板部9及び検出部30とが精度良く位置出しされたモータ装置1´を容易に組み立てることができる。また、筐体4とモータ本体1aとを固定する手段として、回転部15と検出基板5とを固定するボルト142を再利用できるので、筐体4及びモータ本体1aを固定するためのネジ等を別途用意する必要を無くすことができる。従って、本実施形態に係るエンコーダ又はエンコーダの取り付け方法によれば、モータ装置の組み立てを低コストで短時間に行うことができる。
【0057】
本発明は上述した実施形態に係る構成に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、1´…モータ装置、2…回転軸、3…ボルト(固定ねじ)、5…検出基板(基板部)、8…光センサ(検出部)、9…円板部(回転符号板)、15…回転部(円板部)、30…検出部(基板部)、31…本体部、33a…回転軸固定孔(固定孔)、33b…ボルト配置孔(取付孔)、33c…タップ部、42…ボルト(保持部材)、100,200…エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成された回転符号板および測定対象の回転軸に固定するための固定孔を有し、前記回転軸に固定可能な円板部と、
前記所定のパターンを検出する検出部を含む基板部と、
前記基板部を保持するとともに、前記円板部の一部と嵌合して前記円板部を収容する本体部と、
前記回転符号板および前記検出部が前記固定孔に対して同心が取れた状態で前記円板部を前記基板部に対して一体に保持する保持部材と、
を備えることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記保持部材は前記本体部に対して着脱可能とされることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記円板部は、前記固定孔に連通し前記保持部材が取り付けられる取付孔を有し、
前記保持部材は、前記取付孔に設けられたタップ部を用いて前記基板部と前記円板部とを一体に保持する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記取付孔の径は、前記固定孔の径よりも小さいことを特徴とする請求項3に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記取付孔は、前記回転軸に前記円板部を固定する固定ねじを取り付けるための孔を兼ねることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記保持部材は前記本体部を前記測定対象に固定する固定部材を兼ねることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記本体部は、前記検出部からの検出信号を処理する処理部を実装した基板部を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンコーダを測定対象の回転軸に取付けるエンコーダの取付方法であって、
前記固定孔に前記回転軸を挿入させつつ、前記本体部を前記測定対象上に配置する工程と、
前記円板部の一部が前記本体部に嵌合した状態で当該本体部を前記測定対象に固定する工程と、
前記保持部材を取り外すことで前記円板部及び前記本体部の嵌合状態を解消させる工程と、
前記円板部と前記回転軸とを固定する工程と、
を有することを特徴とするエンコーダの取り付け方法。
【請求項9】
複数の前記保持部材を介して前記円板部が前記基板部に保持される場合において、取り外した前記保持部材を用いて前記本体部と前記測定対象とを順次固定することを特徴とする請求項8に記載のエンコーダの取り付け方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のエンコーダを備えるモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−141248(P2012−141248A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−743(P2011−743)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】