説明

エンジンの停止時および始動時に車両の温度快適性を調節する方法

本発明は、エンジンの停止時および始動時に車両の温度快適性を調節するための方法に関する。本方法は、基本的に、エンジン水温、車両内の温度、フロントガラスが曇る危険性、及び空気調和回路の蒸発器が臭う危険性に関する主要条件を定めることを含む。これらの条件に基づいてエンジン停止時間を制限する。この制限は、エンジンの停止を禁止することによって、又はエンジンを再始動させることによって実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来の車両の場合、車両が走行していようと、例えば赤信号で停止していようと、エンジンは走行の間中は作動したままである。従って、暖房回路と冷房回路のような公知の手段により、温度が快適に保たれる。
【0002】
エンジン停止機能および始動機能を有する車両では、速度がゼロまたはほぼゼロであるとき、エンジンのスイッチが切られる。車両のほとんどの働きはスイッチが切れるかまたは低下する。しかしながら、これらの働きの一部、例えばフロントガラスの曇り取りは、維持することが重要であり、場合によっては不可欠である。
【0003】
車両のエンジンが停止している間に温度を快適に保つための一つの解決策は、簡単なキロカロリー蓄熱蒸発器から、バッテリで動く電気式コンプレッサのような複雑な解決策に及ぶ付加的な空気調和/暖房システムを取付けることである。しかしながら、このような解決策はコストが高くつく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主題は、余分な空気調和/暖房機器の追加を必要としない、エンジンの停止時および始動時に(ストップアンドスタートと呼ばれることもある)車両の温度を快適なものに調節するための方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、本発明に従い、特にエンジン水温、車両乗員室内の温度、フロントガラスが曇る危険性、および空気調和回路の蒸発器が臭う危険性に関する主要条件を定めることと、これらの条件に基づいてエンジン停止時間を制限することによって達成される。
【0006】
有利には、エンジンの再始動によってエンジン停止時間を制限し、且つ走行中のエンジン停止の禁止によって停止の発生(時間および回数)を低減する。これらの2つの動作は、停止と始動の機能を有する監視論理制御装置で生成される。
【0007】
好ましくは寒い天候で使用されるエンジン冷却水の温度に関する第1条件に従って、エンジン冷却水の温度の測定値が閾値S1(S1は50℃から60℃の間)よりも低い間は、エンジンのスイッチを切ることを禁止する。
【0008】
空気調和コンピュータはエンジンの水温測定値にアクセスでき、エンジンのスイッチが切られる度に停止時間を決定するために条件が適用される。エンジンが停止している間に条件が満たされなければ、エンジンが再始動される。
【0009】
乗員室内の温度に関する第2条件に従って、乗員室内の温度を測定し、この温度と目標温度の差が所定の差異を超えるとすぐにエンジンを再始動させる。
【0010】
乗員室内の目標温度と測定された温度との差を、aを1℃から5℃の間とした差異〔−a;+a〕内に維持する。この値は燃料/公害防止と快適性/費用効果のバランスによって決定される。十分に試行された適切な大きさは1℃から5℃の間である。
【0011】
この条件は、乗員室内の快適な温度の決定において基本的なものである。温度を快適に保つ働きと、エンジンの停止および始動とのバランスは、快適性エラーパラメータを考慮に入れた公差範囲に依存する。もしこの範囲が大きければ、大きな快適性低下が容認され、そうでなければ少数のまたは短いエンジンスイッチオフが受け入れられる。
【0012】
有利には、差異〔−a;+a〕を外部状態に応じて動的に変化させる。例えばエンジンの始動時に、エンジンを停止できるようにするために、差異を拡大する。この差異は乗員の快適性にできるだけ密接に適合させるために安定状態では狭められる。
【0013】
フロントガラスが曇る危険性に関する第3条件に従い、車両が相対湿度センサを備えている場合は相対湿度センサを用いて自動車の乗員室内の空気の相対湿度を測定し、相対湿度センサがフロントガラスが曇る危険性を感知するとエンジンを再始動させる。
【0014】
車両が相対湿度センサを備えていない場合、運転者は、フロントガラスの曇りに気づいたら急速曇り取り制御ボタンを押すことにより、車両エンジンを再始動させる。曇る危険性が持続する場合、所定の時間内に行われる第2動作は、決定された時間に亘りエンジンのスイッチオフを禁止する。一実施形態では、使用者は、停止/始動モードを作動不能にするボタンを押すことにより再始動するという最後の手段を有する。
【0015】
最後に、悪臭の危険性に関する第4条件に従い、プローブを使用して空気調和回路の蒸発器の温度を測定することにより、あるいは空気調和コンピュータでこの温度を計算することにより、蒸発器の温度が閾値を超えるとエンジンを再始動させる。
【0016】
この条件は外気温度条件なしに導入することも、特定の外気温度に基づいて導入することもできる。この場合、外気温度が閾値を超え、第4条件が満たされるとき、エンジンを再始動させる。
【0017】
これらの方策は、空気調和/暖房パルサの音を特別に管理することによって補完することができる。実際には、エンジンのスイッチが切れていれば、パルサの騒音はエンジンの騒音によって遮られることがなく、不快な音が生じ得る。この場合、エンジンのスイッチが切られているとき、空気調和/暖房パルサの回転速度を低下させる。従って、通気による不快な音は小さくなるが、乗員にかかる吹き出し空気の速度も低下し、この吹き出し空気速度は吹き出し空気温度上昇が鈍化するという事実によって相殺される。換言すると、空気の速度は低下するが、吹き出し空気は冷たくなる。
【0018】
乗員にかかる吹き出し空気速度が低下する。外気温度が20℃から40℃の間であるとき(夏季)、この吹き出し空気速度は吹き出し空気温度上昇の鈍化によって相殺され、反対に、外気温度が−10℃から20℃の間であるとき(冬季)、この吹き出し空気速度は吹き出し空気温度低下の鈍化によって相殺される。換言すると、空気速度は低下するが、吹き出し空気は長時間冷たいままである(20℃から40℃の間の条件)か、あるいは長時間温かいままである(−10℃から20℃の間の条件)。
【0019】
車両が冷却回路に付加的な電気式ウォーターポンプを備えている場合(停止機能と始動機能が独立している場合:例えば、快適な温度が極端に低いか、またはターボ軸受が冷却される)、空気冷却器内の水の流量を維持してエンジンの停止時に暖房働きを長時間維持するために、有利にはエンジン停止時にウォーターポンプを再始動させる。第1条件は、停止中にエンジンの水の温度の測定を続けることによって高めることができる:この水の温度が結果的に閾値S1を下回ったら、エンジンを再始動させる(この時間は通常の停止時間よりもはるかに長い)。
【0020】
これらの様々な条件は、自動式空気調和装置を備えた車両に完全に適用可能である。この空気調和装置は多数のセンサとコンピュータを用いて、車両内の温度快適性と可視性条件を知る方法を提供し、従ってエンジンの停止および始動と、温度快適性とのバランスを良好に管理する。
【0021】
車両が手動式空気調和装置を備えている場合には、2つの働きの間のバランスは運転者に一層依存する。運転者は自分の思うままに2つの働きのうちの一方を優先する。エンジンの停止と始動を不能にするボタンは、エンジンの停止および始動の間、運転者に温度快適性を優先させる。エンジンが停止している場合、運転者はエンジンを再始動させようとし、この制御の続行は運転者が車両を再始動させることを可能にする。
【0022】
第1条件と第4条件は有効に維持される。コンピュータと関連するセンサの欠如は、外気温度にのみ基づく簡単な法則によって、および停止時間と2回の停止の間の時間を管理するタイマによって、相殺される。停止の発生は、外気温度が特に25℃を超える場合さらに制限される。周囲温度が25℃よりも高いとき、概ね1分であった停止の最大時間(ts)は短くなってゆき、例えば35℃の周囲温度ではゼロになる。走行時に停止を再許可する前に経過しなければならない最小停止禁止時間(ti)は、外気温度と共に長くなる(例:25℃のとき0秒であったtiは、35℃のとき1分となるまで変化する;これらは表示値である)。
【0023】
例えば走行を開始するとき、乗用車の快適性を一層迅速に達成できるようにするため、停止が制限される。この順応相の間、空気調和が調整される場合と同様に、乗員室の状態に関する実際の情報が入手できない場合には制御アルゴリズムが予防的に作用する。例えば走行開始時に、外気温度を人工的に補正し、エンジン停止制限領域内に意図的に配することができる。
【0024】
本発明の他の特徴は添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の方法のプロセスを示すチャートである。
【図2】手動式空気調和モードにおける停止時間と、2回の停止の間の時間とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2において、Tiは許可された2回の停止の間の最小時間を示し、Tsは停止のために許可された最大時間を示す。図から分かるように、最大許可停止時間は概ね直線的に低下し、35℃の温度で無くなる。これに対し、2回の停止の間の最小時間は20℃から25℃の間で一定であり、そして25℃を超えると直線的に増大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの停止時および始動時に車両の温度快適性を調節するための方法であって、特に、エンジン水温、車両乗員室内の温度、フロントガラスが曇る危険性、及び空気調和回路の蒸発器が臭う危険性に関する主要条件を定めることと、これらの条件に基づいてエンジン停止時間を制限することとを特徴とする方法。
【請求項2】
一方でエンジン再始動によってエンジン停止時間を制限し、他方で走行中のエンジン停止を禁止することによって停止回数を低減することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
エンジン冷却水の温度を測定することと、この温度が閾値S1よりも低くなるとすぐにエンジンを再始動させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
乗員室内の温度を測定することと、この温度と目標温度との差が所定の差異を超えるとすぐにエンジンを再始動させることとを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
車両の乗員室内の目標温度と測定された温度との差を、差異〔−a;+a〕(aは1℃〜5℃)内に維持することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
差異〔−a;+a〕を外部状態に応じて動的に変化させ、車両の始動時に差異を拡大し、安定した状態では差異を狭めることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
相対湿度センサを用いて、車両の乗員室内の空気の相対湿度を測定することと、相対湿度センサがフロントガラスが曇る危険性を感知すると、エンジンを再始動させることとを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
フロントガラスが曇ったとき、急速に曇り取り制御ボタンを押すことによって自動車のエンジンを再始動させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
測定プローブを使用して空気調和回路の蒸発器の温度を測定すること又は空気調和コンピュータでこの温度を計算することと、蒸発器の温度が閾値を超えたらエンジンを再始動させることとを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
外気温度が閾値を超えるとエンジンを再始動させることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
エンジンのスイッチが切られたとき、空気調和/暖房パルサの回転速度を低下させることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
車両が冷却回路に電気式ウォーターポンプを備えている場合、エンジン停止時に、ユニットヒータ内の水の流量を維持し、それによってエンジンの停止時に暖房の働きが維持される時間を延ばすために、ウォーターポンプを始動させることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−519096(P2010−519096A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549447(P2009−549447)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050144
【国際公開番号】WO2008/104661
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(507308902)ルノー・エス・アー・エス (281)
【Fターム(参考)】