説明

エンジンの再始動制御装置

【課題】エンジンを自動的に停止及び再始動を行うアイドリングストップ機能を有するエンジンの再始動制御装置において、エンジンを自動的に再始動する際に、エンジンの再始動の時間短縮を図るとともに、再始動性や即時発進性に弊害が生じないようにすることにある。
【解決手段】制御手段(6)は、第1のクラッチスイッチ(9)がオンであることを検出し且つニュートラルスイッチ(11)により変速機(2)のレンジが中立(ニュートラル)レンジであることを検出した時、あるいは、第2のクラッチスイッチ(10)がオンであることを検出した時に、エンジン(1)を再始動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの再始動制御装置に係り、特にエンジンを自動的に停止及び再始動を行うアイドリングストップ機能を有するエンジンの再始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、燃料消費量の低減を目的として、車両が停止し、且つ所定のエンジン自動停止条件が成立した時に、エンジンを自動的に停止させるようにアイドリングストップ機能を有するエンジンの再始動制御装置を備えた車両においては、マニュアル変速機を搭載している場合に、シフトが中立(ニュートラル)でクラッチペダルを離したときに自動停止するものがある。このような車両においては、中立(ニュートラル)のままクラッチペダルを踏み込んだ状態で、エンジンを再始動させることが一般的であり、そして、車両を発進させようとする際で、クラッチペダルを踏み込んだ時には、シフトを前進の1速に投入していることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3748407号公報
【特許文献2】特開2002−364404号公報
【0004】
特許文献1に係るアイドルストップ装置は、シフトレバーの操作がクラッチペダルの踏み込みよりもわずかに早く又は略同時に行われて、シフトレバーがニュートラル位置にあることを検出するセンサの出力が消滅しても、所定の短い時間だけ非ニュートラル位置になったことについての認識を遅延させるものである。
特許文献2に係るエンジンの再始動制御装置は、ニュートラル状態において、第1のクラッチスイッチがオンになると、その後、ニュートラルセンサからの検出情報に関わらず、第1のクラッチスイッチがオンになったことを条件に、エンジンを再始動させるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、エンジンの再始動制御装置においては、運転者が車両を発進させようとする際で、クラッチペダルを踏み込んだ時に、既に前進レンジに切り換えている場合があり、このような場合には、エンジンの再始動が困難になるという不都合があった。
また、上記の特許文献1にあっては、非ニュートラル位置になったことの認識を一定時間だけ遅らせることによって対応しているが、この場合、実際の状態と認識とにズレが生じているため、再始動性や即時発進性に弊害が生ずるおそれがあった。
更に、上記の特許文献2にあっては、ニュートラル状態で第1のクラッチスイッチがオンしていることを検出することは冗長になるという不都合があった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、エンジンを自動的に再始動する際に、エンジンの再始動の時間短縮を図るとともに、再始動性や即時発進性に弊害が生じないようにするエンジンの再始動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、所定のエンジン自動停止条件が成立した時にエンジンを自動的に停止させ、このエンジンの自動停止中に前記エンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立した時には前記エンジンを自動的に再始動させる制御手段を設けたエンジンの再始動制御装置において、半クラッチ状態になるクラッチペダルの踏み込み位置を検出する第1のクラッチスイッチを設け、前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置を検出する第2のクラッチスイッチを設け、変速機のレンジが中立レンジかどうかを検出するニュートラルスイッチを設け、前記制御手段は、前記第1のクラッチスイッチがオンであることを検出し且つ前記ニュートラルスイッチにより前記変速機のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、前記第2のクラッチスイッチがオンであることを検出した時に、前記エンジンを再始動することを特徴とする。
また、この発明は、所定のエンジン自動停止条件が成立した時にエンジンを自動的に停止させ、このエンジンの自動停止中に前記エンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立した時には前記エンジンを自動的に再始動させる制御手段を設けたエンジンの再始動制御装置において、クラッチペダルの踏み込み量を検出するクラッチストロークセンサを設け、変速機のレンジが中立レンジかどうかを検出するニュートラルスイッチを設け、前記制御手段は、前記クラッチペダルの遊びを越えた位置から前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置までの間で第1のしきい値を予め設定し、前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置を第2のしきい値として予め設定し、前記クラッチストロークセンサにより前記クラッチペダルの踏み込み位置が前記第1のしきい値を越えていることを検出し且つ前記ニュートラルスイッチにより前記変速機のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、前記クラッチストロークセンサにより前記クラッチペダルの踏み込み位置が前記第2のしきい値を越えていることを検出した時に、前記エンジンを再始動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のエンジンの再始動制御装置は、エンジンを自動的に再始動する際に、エンジンの再始動の時間短縮を図るとともに、再始動性や即時発進性に弊害が生じないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はエンジンの再始動制御のフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2はニュートラル且つ半クラッチ状態のタイムチャートである。(実施例1)
【図3】図3はクラッチ完全踏み込み状態のタイムチャートである。(実施例1)
【図4】図4はエンジンの再始動制御装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図5】図5はクラッチペダルの踏み込み位置を検出する二つのクラッチスイッチを配設した構造の概略構成図である。(実施例1)
【図6】図6はエンジンの再始動制御のフローチャートである。(実施例2)
【図7】図7はニュートラル且つ半クラッチ状態のタイムチャートである。(実施例2)
【図8】図8はクラッチ完全踏み込み状態のタイムチャートである。(実施例2)
【図9】図9はエンジンの再始動制御装置のシステム構成図である。(実施例2)
【図10】図10はクラッチペダルの踏み込み量をアナログ的に検出するクラッチストロークセンサを配設した構造の概略構成図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、エンジンを自動的に再始動する際に、エンジンの再始動の時間短縮を図るとともに、再始動性や即時発進性に弊害が生じないようにする目的を、エンジンを再始動するタイミングを早くして実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図5は、この発明の実施例1を示すものである。
図4において、1は車両に搭載されるエンジン、2はこのエンジン1に連結したマニュアル変速機(以下「変速機」という)、3はエンジン1の再始動制御装置である。エンジン1と変速機2との間には、エンジン1からの動力を断続する機械式クラッチ(以下「クラッチ」という)4が介設されている。また、車両には、図5に示すように、クラッチ4を接続・切り離し作動するクラッチペダル5が設けられている。
再始動制御装置3は、制御手段6としてのエンジン制御手段7と自動停止再始動制御手段8とを備え、自動停止再始動制御手段8がエンジン制御手段7にエンジン停止信号又はエンジン再始動信号を送信し、そして、所定のエンジン自動停止条件が成立した時にエンジン1を自動的に停止させ、エンジン1の自動停止中にエンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立した時にはエンジン1を再始動させる、いわゆるアイドリングストップ機能を有する。ここで、上記の所定のエンジン自動再始動条件とは、クラッチペダル5の操作状態とシフト操作(ニュートラル)状態とである。
エンジン制御手段7は、エンジン1に連絡し、自動停止再始動制御手段8からの信号に基づいてエンジン1を駆動制御する。
自動停止再始動制御手段8は、第1のクラッチスイッチ(図面上では「クラッチSW1」と記す)9と第2のクラッチスイッチ(図面上では「クラッチSW2」と記す)10とニュートラルスイッチ(図面上では「ニュートラルSW」と記す)11とその他情報検知手段12とに連絡し、各種の運転状態を入力する。
【0012】
第1のクラッチスイッチ9は、図5に示すように、クラッチペダル5を少しだけ踏み込んだ半クラッチ状態(例えば、約20%程度のクラッチペダル5の踏み込み量)になるクラッチペダル5の踏み込み位置を検出するような箇所に配設され、半クラッチ状態でオンする一方、それ以外ではオフになる。
第2のクラッチスイッチ10は、図5に示すように、クラッチペダル5を完全に踏み込んだ位置を検出するように車体壁部13に配設され、クラッチペダル5が完全に踏み込まれている時にオンする一方、それ以外ではオフになる。
ニュートラルスイッチ11は、変速機2のレンジが中立(ニュートラル)レンジかどうかを検出するものであり、変速機2のレンジが中立(ニュートラル)レンジでオンになり、それ以外ではオフになる。
制御手段6においては、自動停止再始動制御手段8で、第1のクラッチスイッチ9がオンであることを検出し且つニュートラルスイッチ11により変速機2のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、第2のクラッチスイッチ10がオンであることを検出した時に、この自動停止再始動制御手段8がエンジン制御手段7にエンジン1の再始動の要求信号を送り、そして、このエンジン制御手段7がエンジン1を再始動する。
このように、クラッチペダル5の操作やシフト操作の判定を第1のクラッチスイッチ9等の各種スイッチ類によって行うことにより、安価にできる。
【0013】
次に、この実施例1に係るエンジン再始動制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段6のプログラムがスタートすると(ステップA01)、先ず、エンジン自動停止条件が成立したか否かを判断し(ステップA02)、このステップA02がYESの場合には、エンジン1の停止制御が実行される(ステップA03)。
そして、エンジン1が自動停止中か否かを判断し(ステップA04)、このステップA04がYESの場合には、エンジン1の再始動のために、第1のクラッチスイッチ9がオン且つニュートラルスイッチ11がオンか否かを判断し(ステップA05)、このステップA05がYESの場合には、スタータ駆動制御が実施され(図2参照)、エンジン1が再始動される(ステップA06)。
一方、前記ステップA05がNOの場合には、第2のクラッチスイッチ10がオンか否かを判断し(ステップA07)、このステップA07がYESの場合には、前記ステップA06に移行し、ニュートラルスイッチ11の条件を不要として、スタータ駆動制御が実施され(図3参照)、エンジン1が再始動される。
前記ステップA06の処理後、前記ステップA02がNOの場合、前記ステップA04がNOの場合、又は前記ステップA07がNOの場合には、プログラムをリターンする(ステップA08)。
【0014】
次いで、この実施例1におけるニュートラル且つ半クラッチ状態について、図2のタイムチャートに基づいて説明する。
図2に示すように、車両の走行中で減速が開始することに伴い、エンジン回転速度が低くなり始め、ニュートラルスイッチ11がオンになり(時間t1)、第2のクラッチスイッチ10がオフになり(時間t2)、そして、第1のクラッチスイッチ9がオフとなった時に(時間t3)、エンジン1への燃料供給が停止され、その後、エンジン回転速度が零になる(時間t4)。
そして、車両の発進の際には、第1のクラッチスイッチ9がオンになると(時間t5)、スタータ駆動判定がオンになり、スタータ駆動制御が実行され、エンジン回転速度が高くなり始め、その後、スタータ駆動判定もオフになり(時間t6)、第2のクラッチスイッチがオンとなる一方、ニュートラルスイッチ11がオフになる(時間t7)。
この結果、半クラッチ状態になるクラッチペダル5の踏み込み位置を検出する第1のクラッチスイッチ9と変速機2のレンジが中立レンジかどうかを検出するニュートラルスイッチ11とを設け、そして、制御手段6は、第1のクラッチスイッチ9がオンであることを検出し且つニュートラルスイッチ11により変速機2のレンジが中立レンジであることを検出した時に、エンジン1を再始動することにより、エンジン1を再始動するタイミングを早くして、エンジン1が再始動しない可能性を減らすことができ、エンジン再始動時の始動時間の短縮を図るとともに再始動性を向上し、また、エンジン1の再始動時には、中立レンジであるので、クラッチ4がどのような状態であっても、車両が発進することはなく、即時発進性の弊害が生ずることがない。従って、上述の特許文献1では、中立レンジ以外になったことの認識を遅らせていたので、実際の状態と認識にズレが生じて再始動性や即時発進性に弊害が出ていたが、この実施例1では、エンジン1を再始動するタイミングを早くすることにより、再始動性や即時発進性に弊害が生ずるおそれがない。
上記の再始動時間の短縮とは、クラッチペダル5の操作の判定をクラッチ4が切り離れた直後に再始動させることとする。この場合、シフトがニュートラルであることが望ましい。これにより、クラッチペダル5を踏み込んだ途中から再始動することにより再始動時間を短縮することができる。
また、上記の再始動性を向上とは、クラッチペダル5の操作の判定をクラッチ4が切り離れた直後に再始動させる場合、クラッチペダル5を踏み込む途中でシフトを非ニュートラルにする場合が考えられるため、クラッチ4が完全に切り離された状態において全シフト位置でも始動できるようにする。この場合、クラッチペダル5を最大まで踏み込んだ位置付近に設定することが望ましい。これにより、クラッチペダル5を踏み込む途中でシフト操作をした場合にも再始動が可能となる。
【0015】
また、この実施例1におけるクラッチ完全踏み込み状態について、図3のタイムチャートに基づいて説明する。
図3に示すように、車両の走行中で減速が開始することに伴い、エンジン回転速度が低くなり始め、ニュートラルスイッチ11がオンになり(時間t1)、第2のクラッチスイッチ10がオフになり(時間t2)、そして、第1のクラッチスイッチ9がオフとなった時に(時間t3)、エンジン1への燃料供給が停止され、その後、エンジン回転速度が零になる(時間t4)。
そして、ニュートラルスイッチ11がオフになり(時間t5)、第1のクラッチスイッチ9がオンになった時でも(時間t6)、スタータ駆動判定がオフのままであり、その後、第2のクラッチスイッチ10がオンになると(時間t7)、スタータ駆動判定がオンになり、ニュートラルスイッチ11を不要として、スタータ駆動制御が実行され、エンジン回転速度が高くなり始まり、その後、スタータ駆動判定がオフになる(時間t8)。
この結果、クラッチペダル5を完全に踏込んだ位置を検出する第2のクラッチスイッチ10を設け、制御手段6は、第2のクラッチスイッチ10がオンであることを検出した時に、エンジン1を再始動することにより、第2のクラッチスイッチ10のオンだけに基づいてエンジン1を再始動させることができる。なお、このエンジン再始動時には、クラッチ4は切り離されているので、変速機2のレンジがどのような状態であっても、車両が発進することがない。従って、上述の特許文献2では、ニュートラルセンサからの検出情報に基づいて中立レンジの状態で、第1のクラッチスイッチがオンになると、その後、ニュートラルセンサからの検出情報に関係なく第2のクラッチスイッチがオンになったことを条件にエンジンを再始動しており、中立レンジの状態で第1のクラッチスイッチがオンしていることを検出することが冗長であったが、この実施例1では、第2のクラッチスイッチ10のオンだけに基づいてエンジン1を再始動させることにより、第1のクラッチスイッチ9がオンしていることを検出することの冗長をなくすることができる。
【実施例2】
【0016】
図6〜図10は、この発明の実施例2を示すものである。
図9において、1は車両に搭載されるエンジン、2はこのエンジン1に連結したマニュアル変速機(以下「変速機」という)、3はエンジン1の再始動制御装置である。エンジン1と変速機2との間には、エンジン1からの動力を断続する機械式クラッチ(以下「クラッチ」という)4が介設されている。また、車両には、図10に示すように、クラッチ4を接続・切り離し作動するクラッチペダル5が設けられている。
再始動制御装置3は、制御手段6としてのエンジン制御手段7と自動停止再始動制御手段8とを備え、自動停止再始動制御手段8がエンジン制御手段7にエンジン停止信号又はエンジン再始動信号を送信し、そして、所定のエンジン自動停止条件が成立する時にエンジン1を自動的に停止させ、エンジン1の自動停止中にエンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立する時にエンジン1を再始動させる、いわゆるアイドリングストップ機能を有する。ここで、上記の所定のエンジン自動再始動条件とは、クラッチペダル5の操作状態とシフト操作(ニュートラル)状態とである。
エンジン制御手段7は、エンジン1に連絡し、自動停止再始動制御手段8からの信号に基づいてエンジン1を駆動制御する。
自動停止再始動制御手段8は、ニュートラルスイッチ(ニュートラルSW)11とその他情報スイッチ類12とクラッチストロークセンサ14とに連絡し、各種車両運転状態を入力する。
【0017】
ニュートラルスイッチ11は、変速機2のレンジが中立(ニュートラル)レンジかどうかを検出するものであり、変速機2のレンジが中立(ニュートラル)レンジでオンになる一方、それ以外ではオフとなる。
クラッチストロークセンサ14は、図10に示すように、クラッチペダル5の踏み込み量(ストローク)をアナログ値で出力するものであり、車体壁部13に配設されている。
制御手段6においては、自動停止再始動制御手段8で、クラッチペダル5の遊びを越えた位置からクラッチペダル5を完全に踏み込んだ位置までの間で第1のしきい値L1(図7、図8参照)を予め設定し、また、クラッチペダル5を完全に踏み込んだ位置を第2のしきい値L2(図7、図8参照)として予め設定し、クラッチストロークセンサ14によりクラッチペダル5の踏み込み位置が前記第1のしきい値L1を越えていることを検出し且つニュートラルスイッチ11により変速機2のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、クラッチストロークセンサ14によりクラッチペダル5の踏み込み位置が前記第2のしきい値L2を越えていることを検出した時に、エンジン制御手段7でエンジン1を再始動する。
図7、図8、図10に示すように、前記第1のしきい値L1は、クラッチ判定をクラッチ4の締結前(切り離される側)にするように設定されている。前記第2のしきい値L2は、クラッチ判定をクラッチ4が完全に切り離されたことを判定するために、クラッチペダル5の踏み込みの最も深い位置に近い側に設定されている。
【0018】
次に、この実施例2に係るエンジン再始動制御を、図6のフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、制御手段6のプログラムがスタートすると(ステップB01)、先ず、エンジン自動停止条件が成立したか否かを判断し(ステップB02)、このステップB02がYESの場合には、エンジン1の停止制御が実行される(ステップB03)。
そして、エンジン1が自動停止中か否かを判断し(ステップB04)、このステップB04がYESの場合には、エンジン1の再始動のために、クラッチペダル踏み込み量>第1のしきい値L1且つニュートラルスイッチ11がオンか否かを判断し(ステップB05)、このステップB05がYESの場合には、スタータ駆動制御が実施され(図7参照)、エンジン1が再始動される(ステップB06)。
一方、前記ステップB05がNOの場合には、クラッチペダル踏み込み量>第2のしきい値L2か否かを判断し(ステップB07)、このステップB07がYESの場合には、前記ステップB06に移行し、ニュートラルスイッチ11の条件を不要として、スタータ駆動制御が実施され(図8参照)、エンジン1が再始動される。
前記ステップB06の処理後、前記ステップB02がNOの場合、前記ステップB04がNOの場合、又は前記ステップB07がNOの場合には、プログラムをリターンする(ステップB08)。
【0019】
次いで、この実施例2におけるニュートラル且つ半クラッチ状態について、図7のタイムチャートに基づいて説明する。
図7に示すように、車両の走行中で減速が開始するのに伴い、エンジン回転速度が低くなり始め、ニュートラルスイッチ11がオンになり(時間t1)、そして、クラッチペダル5の踏み込み量が第1のしきい値L1になると(時間t2)、エンジン1への燃料供給が停止され、その後、クラッチペダル5の踏み込み量が零になり(時間t3)、エンジン回転速度が零になる(時間t4)。
そして、車両を発進しようとする際に、クラッチペダル5の踏み込みを開始し(時間t5)、そして、クラッチペダル5の踏み込み量が第1のしきい値L1になると(時間t6)、スタータ駆動判定がオンになり、スタータ駆動制御が実行され、また、エンジン回転速度が高くなり始め、その後、クラッチペダル5の踏み込み量が第2のしきい値L2を越え、スタータ駆動判定もオフになり(時間t7)、そして、ニュートラルスイッチ11がオフになり(時間t8)、そして、クラッチペダル5の踏み込み量が零になる(時間t9)。
この結果、クラッチペダル5の遊びを越えた位置からクラッチペダル5を完全に踏み込んだ位置までの間で第1のしきい値L1を予め設定し、クラッチストロークセンサ14によりクラッチペダル5の踏み込み位置が第1のしきい値L1を越えていることを検出し且つニュートラルスイッチ11により変速機2のレンジが中立レンジであることを検出した時に、エンジン1を再始動することにより、エンジン1を再始動するタイミングを早くし、エンジン1が再始動しない可能性を減らすことができる。なお、エンジン再始動時には、中立レンジであるので、クラッチ4がどのような状態であっても車両が発進することはない。従って、上述の特許文献1では、中立レンジ以外になったことの認識を遅らせていたので、実際の状態と認識にズレが生じて再始動や即時発進に弊害が出ていたが、この実施例2では、エンジン1を再始動するタイミングを早くすることにより、再始動性や即時発進性に弊害が生ずるおそれがない。
【0020】
また、この実施例2におけるクラッチ完全踏み込み状態について、図8のタイムチャートに基づいて説明する。
図8に示すように、車両の走行中で減速が開始するのに伴い、エンジン回転速度が低くなり始め、ニュートラルスイッチ11がオンになり(時間t1)、そして、クラッチペダル5の踏み込み量が第1のしきい値L1になると(時間t2)、エンジン1への燃料供給が停止され、その後、クラッチペダル5の踏み込み量が零になり(時間t3)、エンジン回転速度が零になる(時間t4)。
そして、車両を発進しようとする際に、クラッチペダル5を踏み込み(時間t5)、ニュートラルスイッチ11がオフになり(時間t6)、クラッチペダル5の踏み込み量が第1のしきい値L1になった時でも(時間t7)、スタータ駆動判定がオフであり、その後、クラッチペダル5の踏み込み量が第2のしきい値L2になると(時間t8)、スタータ駆動制御が実行され、エンジン回転速度が高くなり始め、さらに、クラッチペダル5の踏み込み量が第2のしきい値L2を越え、その後、スタータ駆動がオフになり(時間t9)、クラッチペダル5の踏み込み量が零になる(時間t10)。
この結果、クラッチペダル5を完全に踏み込んだ位置を第2のしきい値L2として予め設定し、クラッチストロークセンサ14によりクラッチペダル5の踏み込み位置が第2のしきい値L2を越えていることを検出した時に、エンジン1を再始動することにより、クラッチペダル5の踏み込み量だけに基づいてエンジン1を再始動させることができる。なお、エンジン再始動時には、クラッチ4は切り離されているので、変速機2のレンジがどのような状態であっても車両が発進することはない。また、クラッチストロークセンサ14を用いることにより、第1のしきい値L1あるいは第2のしきい値L2の設定を変更するだけで、エンジン1が再始動するクラッチペダル5の踏み込み位置を調整することが可能になる。従って、上述の特許文献2では、ニュートラルセンサからの検出情報に基づいて中立レンジの状態で、第1のクラッチスイッチがオンになると、その後、ニュートラルセンサからの検出情報に関係なく第2のクラッチスイッチがオンになったことを条件にエンジンを再始動していたので、中立レンジの状態で第1のクラッチスイッチがオンしていることを検出することは冗長であったが、この実施例2では、クラッチペダル5の踏み込み量だけに基づいてエンジン1を再始動させることから、冗長をなくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明に係る再始動制御装置を、各種エンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 エンジン
2 変速機
3 エンジンの再始動制御装置
4 クラッチ
5 クラッチペダル
6 制御手段
7 エンジン制御手段
8 自動停止再始動制御手段
9 第1のクラッチスイッチ(クラッチSW1)
10 第2のクラッチスイッチ(クラッチSW2)
11 ニュートラルスイッチ(ニュートラルSW)
14 クラッチストロークセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンジン自動停止条件が成立した時にエンジンを自動的に停止させ、このエンジンの自動停止中に前記エンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立した時には前記エンジンを自動的に再始動させる制御手段を設けたエンジンの再始動制御装置において、半クラッチ状態になるクラッチペダルの踏み込み位置を検出する第1のクラッチスイッチを設け、前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置を検出する第2のクラッチスイッチを設け、変速機のレンジが中立レンジかどうかを検出するニュートラルスイッチを設け、前記制御手段は、前記第1のクラッチスイッチがオンであることを検出し且つ前記ニュートラルスイッチにより前記変速機のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、前記第2のクラッチスイッチがオンであることを検出した時に、前記エンジンを再始動することを特徴とするエンジンの再始動制御装置。
【請求項2】
所定のエンジン自動停止条件が成立した時にエンジンを自動的に停止させ、このエンジンの自動停止中に前記エンジン自動停止条件とは異なる所定のエンジン自動再始動条件が成立した時には前記エンジンを自動的に再始動させる制御手段を設けたエンジンの再始動制御装置において、クラッチペダルの踏み込み量を検出するクラッチストロークセンサを設け、変速機のレンジが中立レンジかどうかを検出するニュートラルスイッチを設け、前記制御手段は、前記クラッチペダルの遊びを越えた位置から前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置までの間で第1のしきい値を予め設定し、前記クラッチペダルを完全に踏み込んだ位置を第2のしきい値として予め設定し、前記クラッチストロークセンサにより前記クラッチペダルの踏み込み位置が前記第1のしきい値を越えていることを検出し且つ前記ニュートラルスイッチにより前記変速機のレンジが中立レンジであることを検出した時、あるいは、前記クラッチストロークセンサにより前記クラッチペダルの踏み込み位置が前記第2のしきい値を越えていることを検出した時に、前記エンジンを再始動することを特徴とするエンジンの再始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−106280(P2011−106280A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258992(P2009−258992)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】