説明

エンジンの取付構造

【課題】ラジエータ支持部材を容易に共締めにより取り付けることが可能なエンジンの取付構造を提供する。
【解決手段】下部ラジエータブラケット19は、一対の第一ボルト111がねじ込んで入れられる一対の第一ボルト孔191Aと、一対の第二ボルト112がねじ込んで入れられる一対の第二ボルト孔191Bと、を有し、前エンジンマウント15は、一対の第一ボルト孔と重なる位置に設けられ、一対の第一ボルトの頭部111Aを収容する切欠部151Aおよび収容孔151Bと、一対の第二ボルト孔と重なる位置に設けられ、一対の第二ボルト孔と共に一対の第二ボルト112がねじ込んで入れられる一対の第三ボルト孔151Cと、を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータを支持するラジエータ支持部材が共締めにより取り付けられるエンジンの取付構造に関する。より好ましくは、ラジエータ支持部材と、エンジンを支持するエンジン支持部材とが共締めにより取り付けられるエンジンの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラジエータ支持部材等に係るエンジンの取付構造は公知となっている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている自動車のラジエータコアサポート(ラジエータ支持部材)は、サイドメンバ取付部アッパと、サイドメンバ取付部ロアと、を有している。サイドメンバ取付部アッパとサイドメンバ取付部ロアは、車体のサイドメンバにボルトによって共締めにより取り付けられる。特許文献1に記載されている自動車のラジエータコアサポートは、サイドメンバ取付部アッパおよびサイドメンバ取付部ロアを、一の取付作業によってサイドメンバに取り付けることができるため、取付作業工数を削減することが可能である。
【0003】
しかし、特許文献1に記載されている自動車のラジエータコアサポートは、サイドメンバ取付部アッパおよびサイドメンバ取付部ロアを、ボルトで共締めによりサイドメンバに取り付けるに際して、サイドメンバ取付部アッパやサイドメンバ取付部ロアといった重量物を作業者が同時に持ち上げる等の作業が必要となって、取付作業に労力がかかる、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、ラジエータ支持部材を容易に共締めにより取り付けることが可能なエンジンの取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
すなわち、エンジンを支持するエンジン支持部材と、ラジエータの下部を支持する下部ラジエータ支持部材とが、共締めにより取り付けられるエンジンの取付構造であって、前記下部ラジエータ支持部材は、一対の第一ボルトがねじ込んで入れられる一対の第一ボルト孔と、一対の第二ボルトがねじ込んで入れられる一対の第二ボルト孔と、を有し、前記エンジン支持部材は、前記一対の第一ボルト孔と重なる位置に設けられ前記一対の第一ボルトの頭部を収容する一対の収容部と、前記一対の第二ボルト孔と重なる位置に設けられ前記一対の第二ボルト孔と共に前記一対の第二ボルトがねじ込んで入れられる一対の第三ボルト孔と、を有するものである。
【0008】
請求項2においては、前記一対の収容部の内周と前記一対の第一ボルトの頭部の外周との間に、所定の隙間が形成されるものである。
【0009】
請求項3においては、前記一対の収容部は、切欠または貫通孔とされるものである。
【0010】
請求項4においては、前記ラジエータの外周を覆うシュラウド部材と、前記ラジエータの上部を支持する上部ラジエータ支持部材と、を備え、前記シュラウド部材の上部に一対の前記上部エンジン支持部材が取り付けられ、前記シュラウド部材の下部に一対の前記下部エンジン支持部材が取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、先に下部ラジエータ支持部材を一対の第一ボルトによって取り付けても、一対の第一ボルトをエンジン支持部材の収容部に収容できるため、エンジン支持部材を一対の第一ボルトに干渉させずに下部ラジエータ支持部材とエンジン支持部材とを一対の第二ボルトによって共締めにより取り付けることが可能である。つまり、下部ラジエータ支持部材およびエンジン支持部材を共締めにより取り付ける場合でも、先に下部ラジエータ支持部材を取り付けてから次にエンジン支持部材を取り付けることができるため、下部ラジエータ支持部材およびエンジン支持部材を同時に持って取付作業をする必要がなく、下部ラジエータ支持部材を容易に共締めにより取り付けることが可能である。
【0013】
請求項2においては、収容部の内周と第一ボルトの頭部の外周との間の隙間に、第一ボルトを締緩するための工具(インパクトレンチ等)を入れることができるため、第一ボルトの締緩作業を容易にすることが可能である。
【0014】
請求項3においては、収容部の加工が簡単であるため、製造コストを低減することが可能である。
【0015】
請求項4においては、シュラウド部材を介して上下合わせて四箇所でラジエータをラジエータ支持部材によって支持できるため、ラジエータを確実に支持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】エンジンを示す側面図。
【図2】下部ラジエータブラケットを示す斜視図。
【図3】(a)シリンダブロックの左側面に取り付けられる前エンジンマウントを示す側面図(b)シリンダブロックの右側面に取り付けられる前エンジンマウントを示す側面図。
【図4】前エンジンマウントを示す斜視図。
【図5】前エンジンマウントを示す側面図。
【図6】上部ラジエータブラケットを示す平面図。
【図7】前エンジンマウントと下部ラジエータブラケットとがと共締めにより取り付けられる状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
図1に示すエンジン1は、シリンダブロック11を備え、シリンダブロック11の下部にはオイルパン12が設けられる一方、シリンダブロック11の上部にはシリンダヘッド13が設けられる。シリンダブロック11内には、クランク軸14が水平方向に架設される。
【0019】
なお、以下の説明では、エンジン1のクランク軸14の軸方向を「前後方向」と定義し、重力が作用する方向を下方として「上下方向」を定義し、上下方向および前後方向に対して垂直な方向を「左右方向」と定義し、これら定義された方向を用いて説明を行う。
【0020】
シリンダブロック11下部の前部には、左右一対の前エンジンマウント15・15が取り付けられる一方、シリンダブロック11下部の後部には、左右一対の後エンジンマウント16・16が取り付けられる。エンジン1は、左右一対の前エンジンマウント15・15および左右一対の後エンジンマウント16・16によって、車両フレーム(図示省略)等に組み付けられる。
【0021】
シリンダブロック11の後側には、フライホイル17がクランク軸14の後端部に設けられる一方、シリンダブロック11の前側には、ラジエータ18が設けられる。ラジエータ18とシリンダブロック11との前後間には、冷却ファン21が設けられる。冷却ファン21とクランク軸14との間には、クランク軸14の動力を冷却ファン21のファン軸(図示省略)に伝達する伝達ベルト22が設けられる。
【0022】
ラジエータ18の外周(左右両側および下側)は、冷却ファン21の風を効率よくラジエータ18に導くためのシュラウド23によって覆われる。シュラウド23は、ラジエータ18にボルト(図示省略)等によって取り付けられる。シュラウド23の左右両側上部には、左右一対の上部ラジエータブラケット24・24が取り付けられ、シュラウド23の下側左右両側には、左右一対の下部ラジエータブラケット19・19が取り付けられる。
【0023】
図2に示す左右一対の下部ラジエータブラケット19・19は、本発明に係る「下部ラジエータ支持部材」の実施の一形態である。左右一対の下部ラジエータブラケット19・19は、ラジエータ18の下部を支持するものである。なお、左右一対の下部ラジエータブラケット19・19は、左右対称構造である。
【0024】
したがって、ここでは左右一対の下部ラジエータブラケット19・19のうち、右方の下部ラジエータブラケット19を中心に説明し、左方の下部ジエータブラケット19については必要な場合にのみ説明する。
【0025】
下部ラジエータブラケット19は、エンジン側取付部191と、ラジエータ側取付部192と、連結部193と、を有する。下部ラジエータブラケット19は、次のような形状の板状部材(例えば金属板)によって構成される。
【0026】
下部ラジエータブラケット19の具体的な形状は、垂直な板面を有する一枚の金属板が、シリンダブロック11の側面からラジエータ18の下側に至るまで延び出る。この延び出た端部(ラジエータ18側の端部)は、垂直な板面部分に対して略直角に折れ曲がる。この折れ曲がり部分は、水平な板面とされる。
【0027】
そして、下部ラジエータブラケット19において、垂直な板面部分はエンジン側取付部191とされ、水平な板面部分はラジエータ側取付部192とされる。エンジン側取付部191の板面(右側面)とラジエータ側取付部192の板面(下面)とは、連結部193によって接合される。なお、エンジン側取付部191およびラジエータ側取付部192と、連結部193とは、例えば溶接によって接合される。
【0028】
エンジン側取付部191は、エンジン1側に取り付けられる部分であり、エンジン側取付部191後部の側面がシリンダブロック11の側面に取り付けられる。エンジン側取付部191の後部には、一対の第一ボルト孔191A・191Aおよび一対の第二ボルト孔191B・191Bが貫通して設けられる。
【0029】
エンジン側取付部191の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において、一の第一ボルト孔191Aと他の第一ボルト孔191Aとは、斜め(対角方向)に並ぶ関係にあり、一の第二ボルト孔191Bと他の第二ボルト孔191Bとは、斜め(対角方向)に並ぶ関係にある。そして、一対の第一ボルト孔191A・191Aと一対の第二ボルト孔191B・191Bとは、互いの中間を挟んで対称である。
【0030】
ラジエータ側取付部192は、ラジエータ18に取り付けられる部分であり、ラジエータ側取付部192の上面にラジエータ18が載置される。ラジエータ側取付部192には、差込孔192Aが貫通して設けられ、差込孔192Aには、ラジエータ18の下側から突起する軸部181(図1参照)が差し込まれる。ラジエータ18は、ラジエータ側取付部192の上面に載置されて軸部181が差込孔192Aに差し込まれ、軸部181がナット(図示省略)によって固定される。
【0031】
図3に示す左右一対の前エンジンマウント15・15は、エンジン1を支持するものである。左右一対の前エンジンマウント15・15は、左右対称構造(同一構造含む)である。つまり、右方の前エンジンマウント15(図3(a)参照)の形状と、左方の前エンジンマウント(図3(b)参照)の形状とは、シリンダブロック11を挟んで対称である。また、左右一対の後エンジンマウント16・16(図1参照)は、左右対称構造(同一構造含む)であり、かつ左右一対の前エンジンマウント15・15と同一構造である。
【0032】
したがって、ここでは左右一対の前エンジンマウント15・15および左右一対の後エンジンマウント16・16のうち、右方の前エンジンマウント15を中心に説明し、左方の前エンジンマウント15および左右一対の後エンジンマウント16・16については必要な場合にのみ説明する。
【0033】
図4に示す前エンジンマウント15は、本発明に係る「エンジン支持部材」の実施の一形態である。前エンジンマウント15は、エンジン側取付部151と、車両側取付部152と、連結部153と、連結部154と、を有する。前エンジンマウント15は、次のような形状の板状部材(例えば金属板)によって構成される。
【0034】
前エンジンマウント15の具体的形状は、垂直な板面を有する一枚の金属板が、シリンダブロック11の側面から下方に延び出る。この延び出た端部は、垂直な板面部分に対して略直角に水平方向(右方の前エンジンマウント15では右方、左方の前エンジンマウント15では左方)に折れ曲がる。この折れ曲がり部分は、水平な板面とされる。
【0035】
そして、前エンジンマウント15において、垂直な板面部分はエンジン側取付部151とされ、水平な板面部分は車両側取付部152とされる。エンジン側取付部151の前側辺と車両側取付部152の前側辺とは、連結部153によって接合され、エンジン側取付部151の後側辺と車両側取付部152の後側辺とは、連結部154によって接合される。なお、エンジン側取付部151および車両側取付部152と、連結部153、連結部154とは、例えば溶接によって接合される。
【0036】
エンジン側取付部151は、エンジン1側に取り付けられる部分であり、エンジン側取付部151上部の側面がシリンダブロック11の側面に取り付けられる。エンジン側取付部151の上部には、切欠部151Aが切り欠かれて設けられるとともに、収容孔151Bおよび一対の第三ボルト孔151C・151Cが貫通して設けられる。
【0037】
切欠部151Aと収容孔151Bとを合わせたものは、本発明に係る「一対の収容部」の実施の一形態である。切欠部151Aおよび収容孔151Bは、一対の第一ボルト111・111(図6参照)の頭部111A・111Aを収容するものである。
【0038】
図5に示すように、切欠部151Aは、エンジン側取付部151の上側辺と、エンジン側取付部151の後側辺および連結部154の上端部とが成す角部が切り欠かれて設けられる。切欠部151Aは、エンジン側取付部151の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において「略円弧状」の円弧部151Aaを有する。切欠部151Aの内周と第一ボルト111の頭部111Aの外周との間には、隙間Dが形成される。隙間Dは、第一ボルト111を締緩するための工具(インパクトレンチ等)が入る隙間とされる。
【0039】
収容孔151Bの形状は、エンジン側取付部151の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において「略円形状」である。収容孔151Bの内周と第一ボルト111の頭部111Aの外周との間には、隙間Dが形成される。隙間Dは、第一ボルト111を締緩するための工具(インパクトレンチ等)が入る隙間とされる。
【0040】
切欠部151A(円弧部151Aa)および収容孔151Bの中心は、エンジン側取付部151の板面に対して略垂直な方向から見たとき(側面視)において、下部ラジエータブラケット19の一対の第一ボルト孔191A・191Aの中心と重なる位置に設けられる(図6参照)。つまり、エンジン側取付部151の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において、切欠部151Aおよび収容孔151Bの投影範囲内に一対の第一ボルト孔191A・191Aが配置される。
【0041】
一対の第三ボルト孔151C・151Cの中心は、エンジン側取付部151の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において、下部ラジエータブラケット19の一対の第二ボルト孔191B・191Bの中心と重なる位置に設けられる(図6参照)。一対の第三ボルト孔151C・151Cの形状は、エンジン側取付部151の板面に直交する方向から見たとき(側面視)において「略円形状」である。
【0042】
車両側取付部152は、前記車両フレーム等に取り付けられる部分であり、車両側取付部152の下面が前記車両フレーム等の上面に取り付けられる。車両側取付部152には、第四ボルト孔152Aが貫通して設けられる。
【0043】
第四ボルト孔152Aには、前エンジンマウント15を前記車両フレーム等に固定するためのボルト(図示省略)がねじ込んで入れられる。第四ボルト孔152Aは、車両側取付部152板面に直交する方向から見たとき(平面視)において、左右方向(エンジン側取付部151の板面に直交する方向)に長い孔である。
【0044】
このような構成により、前エンジンマウント15の左右方向の位置と、後エンジンマウント16の左右方向の位置とが異なる場合であっても、前エンジンマウント15の第四ボルト孔152A内および後エンジンマウント16のボルト孔(図示省略)内で各ボルトの左右方向の位置を調整することにより、前記車両フレーム等に設けられる各ボルト孔(前記各ボルトがねじ込んで入れられるもの)の左右方向の位置が同じであっても、エンジン1を前記車両フレームに組み付けることが可能である。
【0045】
図6に示す左右一対の上部ラジエータブラケット24・24は、本発明に係る「上部ラジエータ支持部材」の実施の一形態である。左右一対の上部ラジエータブラケット24・24は、ラジエータ18の上部を支持するものである。なお、左右一対の上部ラジエータブラケット24・24は、左右略対称構造である。
【0046】
したがって、ここでは左右一対の上部ラジエータブラケット24・24のうち、右方の上部ラジエータブラケット24を中心に説明し、左方の上部ジエータブラケット24については必要な場合にのみ説明する。
【0047】
上部ラジエータブラケット24は、ラジエータ側取付部241と、エンジン側取付部242と、を有する。上部ラジエータブラケット24は、次のような形状の棒状部材(金属パイプ等の中空部材を含む)によって構成される。
【0048】
上部ラジエータブラケット24の具体的な形状は、図6に示す平面視においてラジエータ18の右側(左方の上部ジエータブラケット24では左側)からエンジン1の中心側に向かって斜めに延びる。上部ラジエータブラケット24において、ラジエータ18側の端部はシュラウド23の後面に沿うように折れ曲がってラジエータ側取付部241とされ、エンジン1側の端部はエンジン1の側面に沿うように折れ曲がってエンジン側取付部242とされる。
【0049】
ラジエータ側取付部241には、取付板241Aが固定される。ラジエータ側取付部241は、取付板241Aとシュラウド23の後面との間に防振ゴム241Bを挟んだ状態で、取付板241Aを介してシュラウド23にボルト241Cによって取り付けられる。
【0050】
エンジン側取付部242には、取付板242Aが固定される。エンジン側取付部242は、取付板242Aを介してエンジン1の上部に一対のボルト242B・242Bによって取り付けられる。
【0051】
なお、本実施例では右方の上部ラジエータブラケット24のエンジン側取付部242は、エンジン1の吸気マニホールド25に取り付けられ、左方の上部ラジエータブラケット24のエンジン側取付部242は、エンジン1のシリンダヘッドカバー26に取り付けられる。
【0052】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0053】
図7に示すように、先ず、作業者は下部ラジエータブラケット19を持って、下部ラジエータブラケット19をシリンダブロック11(図1参照)の側面に沿わせた状態で、一対の第一ボルト孔191A・191Aに一対の第一ボルト111・111をねじ込んで入れる。これにより、下部ラジエータブラケット19がシリンダブロック11に取り付けられる。
【0054】
続いて、作業者は前エンジンマウント15を持って、一対の第一ボルト111・111の頭部111A・111Aを前エンジンマウント15の切欠部151Aおよび収容孔151Bに収容するようにして、前エンジンマウント15を下部ラジエータブラケット19の側面に沿わせる。
【0055】
ここで、下部ラジエータブラケット19は、先にシリンダブロック11に取り付けられているため、前エンジンマウント15を取り付けるに際して、作業者が下部ラジエータブラケット19を手で支える必要がない。
【0056】
さらに、切欠部151Aの円弧部151Aaが第一ボルト111の頭部111Aに外接され、収容孔151Bが第一ボルト111の頭部111Aに外接されることにより、前エンジンマウント15が位置決めされる。
【0057】
そして、作業者は前エンジンマウント15の一対の第三ボルト孔151C・151Cおよび下部ラジエータブラケット19の一対の第二ボルト孔191B・191Bに、一対の第二ボルト112・112をねじ込んで入れる。
【0058】
こうして、前エンジンマウント15と下部ラジエータブラケット19とが共締めによりシリンダブロック11に取り付けられる。
【0059】
なお、ここでは左右一対の下部ラジエータブラケット19・19および左右一対の前エンジンマウント15・15のうち、右方の下部ラジエータブラケット19および右方の前エンジンマウント15の取付手順について説明したが、左方の下部ラジエータブラケット19および左方の前エンジンマウント15の取付手順もこれと同様である。
【0060】
以上のように本発明の実施の一形態に係るエンジンの取付構造は、エンジン1を支持する左右一対の前エンジンマウント15・15と、ラジエータ18を支持する左右一対の下部ラジエータブラケット19・19とが、共締めにより取り付けられるエンジン1の取付構造であって、下部ラジエータブラケット19は、一対の第一ボルト111・111がねじ込んで入れられる一対の第一ボルト孔191A・191Aと、一対の第二ボルト112・112がねじ込んで入れられる一対の第二ボルト孔191B・191Bと、を有し、前エンジンマウント15は、一対の第一ボルト孔191A・191Aと重なる位置に設けられ、一対の第一ボルト111・111の頭部111A・111Aを収容する切欠部151Aおよび収容孔151Bと、一対の第二ボルト孔191B・191Bと重なる位置に設けられ、一対の第二ボルト孔191B・191Bと共に一対の第二ボルト112・112がねじ込んで入れられる一対の第三ボルト孔151C・151Cと、を有するものである。
【0061】
このような構成により、先に下部ラジエータブラケット19を一対の第一ボルト111・111によって取り付けても、一対の第一ボルト111・111を前エンジンマウント15の切欠部151Aおよび収容孔151Bに収容できるため、前エンジンマウント15を一対の第一ボルト111・111に干渉させずに下部ラジエータブラケット19と前エンジンマウントとを一対の第二ボルト112・112によって共締めにより取り付けることが可能である。つまり、下部ラジエータブラケット19および前エンジンマウント15を共締めにより取り付ける場合でも、先に下部ラジエータブラケット19を取り付けてから次に前エンジンマウント15を取り付けることができるため、下部ラジエータブラケット19および前エンジンマウント15を同時に持って取付作業をする必要がなく、下部ラジエータブラケット19を容易に共締めにより取り付けることが可能である。
【0062】
そして、切欠部151Aおよび収容孔151Bの内周と一対の第一ボルト111・111の頭部111A・111Aの外周との間に、隙間Dが形成されるものである。
【0063】
このような構成により、切欠部151Aおよび収容孔151Bの内周と一対の第一ボルト111・111の頭部111A・111Aの外周との間の隙間Dに、一対の第一ボルト111・111を締緩するための工具(インパクトレンチ等)を入れることができるため、一対の第一ボルト111・111の締緩作業を容易にすることが可能である。
【0064】
また、切欠部151Aおよび収容孔151Bは、切欠または貫通孔とされるものである。
【0065】
このような構成により、切欠部151Aおよび収容孔151Bの加工が簡単であるため、製造コストを低減することが可能である。
【0066】
さらに、ラジエータ18の外周を覆うシュラウド23と、ラジエータ18の上部を支持する上部ラジエータブラケット24と、を備え、シュラウド23の上部に一対の上部ラジエータブラケット24・24が取り付けられ、シュラウド23の下部に一対の下部ラジエータブラケット19・19が取り付けられるものである。
【0067】
このような構成により、シュラウド23を介して上下合わせて四箇所でラジエータ18をラジエータブラケット19・19、24・24によって支持できるため、ラジエータ18を確実に支持することが可能である。
【0068】
そして、エンジン1は、シリンダブロック11の左右両側面にそれぞれ取り付けられる左右一対の下部ラジエータブラケット19・19を備え、左右一対の下部ラジエータブラケット19・19は、対称構造とされるものである。
【0069】
このような構成により、対称構造の左右一対の下部ラジエータブラケット19・19は成形が容易であるため、製造コストを低減することが可能である。
【0070】
また、左右一対の前エンジンマウント15・15と、左右一対の後エンジンマウント16・16とは、同一構造とされるものである。
【0071】
このような構成により、同一構造の左右一対の前エンジンマウント15・15および左右一対の後エンジンマウント16・16は成形が容易であるため、製造コストを低減することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
11 シリンダブロック
15 前エンジンマウント(エンジン支持部材)
18 ラジエータ
19 下部ラジエータブラケット(下部ラジエータ支持部材)
23 シュラウド(シュラウド部材)
24 上部ラジエータブラケット(上部ラジエータ支持部材)
111 第一ボルト
111A 頭部
112 第二ボルト
151A 切欠部(収容部)
151B 収容孔(収容部)
151C 第三ボルト孔
191A 第一ボルト孔
191B 第二ボルト孔
D 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを支持するエンジン支持部材と、ラジエータの下部を支持する下部ラジエータ支持部材とが、共締めにより取り付けられるエンジンの取付構造であって、前記下部ラジエータ支持部材は、一対の第一ボルトがねじ込んで入れられる一対の第一ボルト孔と、一対の第二ボルトがねじ込んで入れられる一対の第二ボルト孔と、を有し、前記エンジン支持部材は、前記一対の第一ボルト孔と重なる位置に設けられ前記一対の第一ボルトの頭部を収容する一対の収容部と、前記一対の第二ボルト孔と重なる位置に設けられ前記一対の第二ボルト孔と共に前記一対の第二ボルトがねじ込んで入れられる一対の第三ボルト孔と、を有する、エンジンの取付構造。
【請求項2】
前記一対の収容部の内周と前記一対の第一ボルトの頭部の外周との間に、所定の隙間が形成される請求項1に記載のエンジンの取付構造。
【請求項3】
前記一対の収容部は、切欠または貫通孔とされる請求項1または請求項2に記載のエンジンの取付構造。
【請求項4】
前記ラジエータの外周を覆うシュラウド部材と、前記ラジエータの上部を支持する上部ラジエータ支持部材と、を備え、前記シュラウド部材の上部に一対の前記上部ラジエータ支持部材が取り付けられ、前記シュラウド部材の下部に一対の前記下部ラジエータ支持部材が取り付けられる請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエンジンの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−215130(P2010−215130A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65149(P2009−65149)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】