説明

エンジンの排気浄化装置及びこれに用いられる排気管の構造

【課題】 排気通路内に還元剤の成分が蓄積されることを抑制する。
【解決手段】 エンジンの排気管に介装され、尿素水溶液により排気中の窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、還元触媒の上流の排気管に尿素水溶液を噴射する噴射ノズルと、の間の排気通路を形成するとともに、軸線方向に沿って溶接された継ぎ目10を有する排気管2aにおいて、この継ぎ目10を、排気管2aの内壁12aがオーバハングした位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置(以下「排気浄化装置」という)及びこれに用いられる排気管の構造に関し、特に、還元剤を用いて、排気中の窒素酸化物(NOx)を還元して除去する排気浄化装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気に含まれるNOxを除去する排気浄化装置として、エンジンの排気通路に還元触媒を配設し、還元触媒の排気上流に配設した噴射ノズルから尿素水溶液等の還元剤を噴射することにより、還元触媒にて排気中のNOxと還元剤とを触媒還元反応させ、NOxを無害成分に浄化処理するものが提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開2000−27627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような排気浄化装置では、噴射ノズルと還元触媒との間の排気通路が、軸方向に沿って溶接された継ぎ目を有する排気管によって形成されるものがある。この継ぎ目では、その溶接部の強度を確保するために、排気管の内壁に溶接ビードが形成されている。
しかしながら、この継ぎ目が排気管の下部にある場合には、排気管の継ぎ目に溶接ビードが形成されていると、噴射ノズルから噴射された還元剤が、この溶接ビードの上に溜まる虞がある。このように溶接ビードの上に還元剤が溜まると、排気温度によっては還元剤からその成分が析出して、排気管内に蓄積してしまう。
【0004】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、溶接ビードの上に還元剤を溜まり難くして、排気管内での還元剤の成分の蓄積を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1記載の発明は、エンジンの排気通路に介装され、還元剤により排気中の窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、還元触媒の上流の排気通路に還元剤を噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルと還元触媒との間の排気通路を形成するとともに、軸方向に沿って溶接された継ぎ目を有する排気管と、を含んで構成されるエンジンの排気浄化装置であって、排気管は、その内壁がオーバハングした位置に継ぎ目が設けられることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明では、排気管は、更に、略円筒状であるとともに、その軸線より鉛直上方に継ぎ目が設けられることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、排気管は、更に、その断面が略矩形状であるとともに、その上壁に継ぎ目が設けられることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、還元剤は、尿素水溶液であることを特徴とする。
【0007】
請求項5記載の発明は、エンジンの排気通路の一部を形成するとともに、この排気通路内に供給された還元剤が流通する排気管の構造であって、排気管の内壁がオーバハングした位置に、軸方向に沿って溶接された継ぎ目を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1又は5記載の発明によれば、噴射ノズルから噴射されて排気管の内壁に付着した還元剤が、内壁を伝って継ぎ目まで流れ落ちてきても、溶接ビードの上に溜まることがないので、溶接ビードの上で還元剤の成分が析出して蓄積することが抑制される。
請求項2記載の発明によれば、略円筒状に形成された排気管において、その継ぎ目の溶接ビードの上に還元剤が溜まることが抑制される。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、断面が略矩形状に形成された排気管において、その継ぎ目の溶接ビードの上に還元剤が溜まることが抑制される。
請求項4記載の発明によれば、溶接ビードの上で尿素水溶液から尿素が析出して蓄積することが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置の第1の実施形態の構成図である。
エンジン1の排気通路2を形成する排気管2には、NOxを還元浄化する還元触媒3が介装されている。また、還元触媒3の排気上流には、排気管2内に開口した噴孔4から還元剤としての尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル5が配設されている。噴射ノズル5には、エンジン運転状態に応じた流量の尿素水溶液が供給される。
【0011】
還元触媒3とその上流側の排気管2とは、フランジ6を介して接続されている。また、還元触媒3の上流側の排気管2は、還元触媒3近傍の部分の排気管2aとその上流側の部分の排気管2bとに分割して形成されており、排気管2aと排気管2bとは、フランジ7を介して接続されている。
排気管2aは、図2に示すように、鋼板を円筒状に丸めてその端部同士を突き合わせ、排気管2aの軸線方向に形成された継ぎ目10で互いに溶接して形成されている。この継ぎ目10は、排気管2aの軸線11より鉛直上方に、即ち、排気管2aの内壁12aの法線(内壁12aの向きを定める。)が水平より下側に傾くオーバハングしている位置に配置されている。継ぎ目10では、排気管2aの内壁12a及び外壁12bに夫々溶接ビード13a、13bが形成されている。噴射ノズル5は、排気管2aの側方から軸線11に向かって略水平に挿入されており、噴孔4はその先端に設けられている。
【0012】
以上のような構成によれば、排気管2aの継ぎ目10は、内壁12aがオーバハングしている位置に配置されているので、噴射ノズル5から噴射された尿素水溶液のうち、排気管2aの内壁12aの上部に付着した尿素水溶液が、内壁12aを伝って継ぎ目10まで流れ落ちてきても、内壁12a側の溶接ビード13aの上に溜まることなく、重力の作用によって溶接ビード13aを乗り越えて下方に流れ落ちる。これにより、溶接ビード13aの上で尿素が析出して排気管2a内に蓄積することが抑制される。
【0013】
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
図3に示すように、本実施形態の噴射ノズル21は、エンジンの排気通路に介装された排気浄化機能付き消音装置22内で、排気に尿素水溶液を噴射する。この消音装置22は、ケース23と、排気通路を拡大する拡張室24と、排気中のNOを酸化させる酸化触媒25と、排気通路の折り返し部26と、還元触媒27と、還元触媒27を通過した余剰の還元剤を酸化して除去する還元剤酸化触媒28と、を含んで構成されている。
【0014】
ケース23の一方の側壁23aには、排気の流入口29と流出口30とが設けられている。拡張室24は、ケース23内の一方の側壁23a側の部分を仕切って形成されており、流入口29と連通している。折り返し部26は、ケース23内の他方の側壁23b側の部分を仕切って形成されている。拡張室24と折り返し部26とは、ケース23内に設けられた上流側排気管31を介して連通されるとともに、折り返し部26と流出口30とは、ケース23内に設けられた下流側排気管32を介して連通されている。
【0015】
酸化触媒25は、上流側排気管31に介装されている。還元触媒27及び還元剤酸化触媒28は、下流側排気管32に介装されている。上流側排気管31は、図4に示すように、鋼板を円筒状に丸めてその端部同士を突き合わせ、上流側排気管31の軸線方向に形成された継ぎ目33で互いに溶接して形成されている。この継ぎ目33は、上流側排気管31の軸線34より鉛直上方に配置されている。継ぎ目33では、上流側排気管31の内壁35a及び外壁35bに夫々溶接ビード36a、36bが形成されている。また、噴射ノズル21は、上流側排気管31の側方から軸線34に向かって略水平に挿入されている。
【0016】
折り返し部26には、上流側排気管31に隣接してリング部材37が設けられている。リング部材37は、図5に示すように、鋼板を円筒状に丸めてその端部同士を突き合わせ、リング部材37の軸線方向に形成された継ぎ目41で互いに溶接して形成されている。
この継ぎ目41は、リング部材37の軸線42より鉛直上方に形成されている。継ぎ目41では、リング部材37の内壁43a及び外壁43bに、夫々溶接ビード44a、44bが形成されている。更に、リング部材37には、複数の開口部45が、噴射ノズルが挿入されている側に対して反対側に偏在させて設けられている。なお、本実施形態の上流側排気管31及びリング部材37が、本発明の排気管に該当する。
【0017】
そして、このような消音装置22では、流入口29から消音装置22のケース23内に流入した排気は、拡張室24から上流側排気管31に流入し、酸化触媒25を通過して、折り返し部26のリング部材37に流入する。リング部材37に流入した排気は、開口部45から、折り返し部26の下流側を通過して下流側排気管32に流入する。そして、この排気は、還元触媒27、還元剤酸化触媒28を通過して流出口30からケース23の外に排出される。
【0018】
以上のような構成によれば、噴射ノズル21から噴射された尿素水溶液のうち、上流側排気管31やリング部材37の内壁35a、43aの上部に付着した尿素水溶液が、内壁35a、43aを伝って継ぎ目33、41まで流れ落ちてきても、溶接ビード36a、44aの上に溜まることがない。
なお、以上の実施形態では、排気管やリング部材は円筒状であるが、断面が楕円形状や略矩形状であってもよい。特に、断面が略矩形状であるときには、排気管の軸線より上方の一辺(排気管の上壁が水平に設定される場合は、その上壁)に、継ぎ目が配置されればよい。
【0019】
また、以上の実施形態では、還元剤として尿素水溶液を用いているが、これに限定されるものではなく、排気熱によって成分が析出する虞がある液体還元剤であれば同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の排気浄化装置の第1の実施形態の構成図
【図2】同上の排気管の構造を示す説明図
【図3】本発明の排気浄化装置の第2の実施形態の構成図
【図4】消音装置内の構造を示す説明図
【図5】リング部材の構造を示す説明図
【符号の説明】
【0021】
1 エンジン
2a 排気管
3、27 還元触媒
5、21 噴射ノズル
31 上流側排気管
37 リング部材
10、33、41 継ぎ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路に介装され、還元剤により排気中の窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、
前記還元触媒の上流の前記排気通路に還元剤を噴射する噴射ノズルと、
前記噴射ノズルと前記還元触媒との間の前記排気通路を形成するとともに、軸方向に沿って溶接された継ぎ目を有する排気管と、
を含んで構成されるエンジンの排気浄化装置であって、
前記排気管は、その内壁がオーバハングした位置に前記継ぎ目が設けられることを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気管は、更に、略円筒状であるとともに、その軸線より鉛直上方に前記継ぎ目が設けられることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
前記排気管は、更に、その断面が略矩形状であるとともに、その上壁に前記継ぎ目が設けられることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
前記還元剤は、尿素水溶液であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
エンジンの排気通路の一部を形成するとともに、この排気通路内に供給された還元剤が流通する排気管の構造であって、
前記排気管の内壁がオーバハングした位置に、軸方向に沿って溶接された継ぎ目を有することを特徴とする排気管の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−322343(P2006−322343A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144380(P2005−144380)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】