説明

エンジンフードシール構造

【課題】エンジンフードシール部の構造を、フェンダーパネルおよびエンジンフードの見切り部構造により前方からの気流が乱れることを低減させる構造とすることで、ドアミラー部から発生する風切り音を低減させる。
【解決手段】エンジンフード1のフード縁部13とフード縁部13に対向するフロントフェンダーパネル2のフェンダーパネル縁部22との間に取り付け、フード縁部13とフェンダーパネル縁部22との見切り部をシールするために、楕円形状且つ弾性軟質材であるシール部材3を、エンジンフード1開状態時に、シール部材3の一部が見切り部から外方へ位置するようにフェンダーパネル縁部22に配置させる。そして、フード縁部13はエンジンフード1閉状態時にフード縁部13によって圧縮され、フード縁部13とフェンダーパネル縁部22との間に形成される見切り部間隙Xを埋めるように該間隙Xに入り込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンルームを被覆して開閉可能にしているエンジンフードを取付ける際のシール構造であるフードシールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームは、開口を被覆するためのフードが取付けられている。このエンジンフードは、エンジンルーム内で発生する熱気がフードリッジパネルとフェンダーパネルで囲繞された車側空間中に流入しないような構造が望まれており、エンジンフードを閉めた際のシール構造等を考慮する必要が有る。また、エンジンフードは、エンジンルーム開口部との境やフロント側縁部などによる風切り音の発生を考慮する必要が有る。
【0003】
そこで、従来のエンジンフードのフードシールには、例えば、『エンジンフードの側部シール構造』(特開平08−011647)(以下、従来例1という。)があった。
従来例1は、『エンジンルーム内に配置されたエアクリーナの吸気ダクトの取入れ端をフードリッジパネルとフェンダパネルで囲まれた車側空間内に導入し、エンジンフードの閉鎖時にフードインナパネルの側部に固定したフードサイドシールのシール部を、フードリッジパネルの肩部に固定するフェンダパネルの上部取付フランジに弾力的に当接してエンジンルーム中の熱気の前記車側空間中への流入を防止するエンジンフードの側部シール構造において、エンジンフードの閉鎖時に前記フードリッジパネルの車内側面に当接されるシールリップを前記シール部に一体成形したことを特徴とするエンジンフードの側部シール構造』であり、フードリッジパネルとフェンダパネルで囲まれた車側空間中にエンジンルーム中の熱気が流入することのないようにした構造を得るものである。
【0004】
そして、図6乃至図8にあるように、エンジンルームA内に配置されたエアクリーナ101の吸気ダクト102の取入れ端をフードリッジパネル103とフェンダパネル104で囲まれた車側空間B内に導入し、フードアウタパネル105で構成されるエンジンフード105Aの閉鎖時にフードインナパネル106の側部に固定したフードサイドシール107のシール部107aを、フードリッジパネル103の肩部103aに固定するフェンダパネル104の上部取付フランジ104aに弾力的に当接してエンジンルームA中の熱気の前記車側空間B中への流入を防止するエンジンフードの側部シール構造において、エンジンフード108の閉鎖時に前記フードリッジパネル103の車内側面103bに当接されるシールリップ107bを前記シール部107aに一体成形していた。
【0005】
従来例1では、フードサイドシール107のシール部107aにシールリップ107bを一体成形することで、吸気ダクト102が組み込まれた車側空間Bの内部にエンジンルームAからの熱気が流入するのを防止できる構成となっていた。
また、フードリッジパネル103の拝みフランジ103cにシール部材110を設け、このリップ部110aが、拝みフランジ103cに対向するフェンダパネル104面に密着することで、エンジンルームAからの熱気の流入防止効果を更に確実にしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−011647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来例1では、エンジンルームAからの熱気が車側空間Bの内部へ流入することを防止可能とはなるが、シール部材110が見切り部の奥の方に位置しているため、走行時に見切り部により風の流れに乱れが生じ、これにより車輌外側や上方への風の流によってドアミラー部に風切り音が発生するが、この風切り音を低減させるように考慮したシール部材100はなかった。
【0008】
そこでこの発明は、上記問題点に鑑み、フェンダーパネルおよびエンジンフードの見切り部構造により前方からの気流が乱れることを低減することで、ドアミラー部から発生する風切り音を低減させるエンジンフードシール構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明では、自動車のエンジンルーム上面を開閉可能なエンジンフードのフード縁部と該縁部に対向するフロントフェンダーパネルのフェンダーパネル縁部との間に取り付け、フード縁部とフェンダーパネル縁部とが対向する見切り部をシールするエンジンフードシール部において、弾性軟質材からなるシール部材を、エンジンフードを開状態とした時に、シール部材の一部が閉状態時の見切り部より外方へ位置するようにフェンダーパネル縁部に沿って配置させ、シール部材がエンジンフードを閉状態とした際にフード縁部に圧縮され、エンジンフード縁部とフェンダーパネル縁部との間に形成される見切り部間隙を埋めるように該間隙に入り込む事を特徴とするエンジンフードシール構造を提供する。
【0010】
従って、この発明では、エンジンフードを閉状態とする際に、フェンダーパネル縁部とフード縁部との間に位置するシール部材の一部が見切り部より外方へ突出した状態で取付けられているので、フード縁部によって圧縮されエンジンフードが閉状態となった時に、フード縁部とフェンダーパネル縁部との間にできる見切り部間隙に入り込み、該間隙を埋めることとなる。見切り部間隙に入り込んだシール部材は、フェンダーパネルとエンジンフードとが連続した1つの面を形成するようにフェンダーパネル面およびエンジンフード表面をより平滑にする。
【0011】
そしてこのシール部材は、断面楕円形状を成す長尺からなり、エンジンフード開閉方向が長径となるように取付けられる構成する。
【0012】
このようにシール部材を構成すると、例えばフェンダーパネル縁部に取付けた場合では、エンジンフードを閉状態とする際に、長径方向が潰されることとなり、見切り部間隙に容易に入り込み、該間隙を埋めることとなる。
【発明の効果】
【0013】
従って、この発明によれば、エンジンフードが閉状態となったときに、フェンダーパネル表面とエンジンフード表面とが見切り部間隙に入り込んだシール部材によって平滑な面となるため、走行時等に風を受けても風切り音が発生しにくいという効果を有する。
また、シール部材をエンジンフード側へ取付けることで、エンジンフードを開状態とした時に、フェンダーパネル縁部にはシール部材が存在しないので、フェンダーパネル縁部にシール部材を固定した場合にシール部材がフェンダーパネル表面より突出してしまうのに比べ見栄えが良くなるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施例を表す平面説明図
【図2】図1のA−A線断面説明図であり、(a)は閉状態を表し(b)は開状態を表す
【図3】図2の部分拡大説明図
【図4】取り付け状態を表す説明図
【図5】図4のB−B線端面説明図
【図6】従来例を表す部分断面説明図
【図7】ルーフサイドシールを表す斜視断面説明図
【図8】図6の全体断面説明図
【実施例1】
【0015】
以下にこの発明の実施例を、図面に基づき説明する。図1はこの発明の実施例を表す平面説明図であり、図2は図1のA−A線断面説明図であり、図3は図2の部分拡大説明図であり、図4は取り付け状態を表す説明図であり、図5は図4のB−B線端面説明図である。
【0016】
図1は乗用車のエンジンルームを上部から見た説明図であり、エンジンルームの右半分を表している。1はエンジンフードであり、2はフェンダーパネルである。エンジンフード1およびフェンダーパネル2は通常の乗用車と同様であり、特別な構造を有しているわけではない。そして、エンジンフード1を閉状態とした際には、エンジンフード1とフェンダーパネル2との間に隙間となる見切り部間隙Xが存在する。見切り部間隙Xは、平面視でのエンジンフード1とフェンダーパネル2との間隙であり、エンジンフードシール部である。
エンジンフード1は、図2および図3に表すように、平面視で外部から見えるフードアウタパネル11と、フードアウタパネル11の内側でエンジンフード1を形成するフードインナパネル12とからなり、フードアウタパネル11とフードインナパネル12との間には、必要に応じてリンフォースメント(図示せず)が設けられており、機械的強度を保っている。
【0017】
フードアウタパネル11の見切り部間隙Xに位置するフード縁部13は、図3に表すように、フードアウタパネル11とフードインナパネル12とが接合部される端部であり、フードアウタパネル11がフードインナパネル12の端部を包むように折り返されてなる。フード1は通常の乗用車に用いられているものと特に変わりはない。
フェンダーパネル2は、車体の外装となるパネル本体部21と、パネル本体部21から折曲されてエンジンフード1のフード縁部13が上部に位置するようにエンジンルーム側に段差を設けたフェンダーパネル縁部22とからなる。勿論フェンダーパネル2のパネル本体部21は、自動車側部で下方へ湾曲され自動車側部の形状を作っている。
フェンダーパネル2も通常の乗用車と何ら変わらない構造である。
フェンダーパネル2のフェンダーパネル縁部22は、エンジンフード1の開閉方向でフード縁部13と対向する対向面23と、この対向面23から折曲されてパネル本体部21へと連結する側壁部24とを有している。そして、フェンダーパネル2は、エンジンフード1が閉状態となると、エンジンフード1のフード縁部13と対向面23との間には見切り部を形成し、この見切り部の自動車外面に形成される隙間が見切り部間隙Xとなる。
見切り部および見切り部間隙Xを形成するフェンダーパネル2とエンジンフード1の位置関係も、通常の乗用車と何ら変わりない。
【0018】
3は、シール部材である。シール部材3は、フェンダーパネル2のフード縁部13と対向する位置に設置される長尺のシール材である。シール部材は、この実施例では弾性を有する軟質な素材であるゴム素材からなるが、軟質な樹脂素材等他の素材からなっても良く、弾性軟質素材を適宜選択すれば足りる。
【0019】
シール部材3は、図4および図5に表すように、断面形状が楕円形状を成し、見切り部間隙Xのあるフェンダーパネル2へエンジンフード1のある自動車前後方向に設置される。そしてシール部材3は、長尺長手方向のに、適宜間隔を持って固定孔31が穿設されている。この固定孔31は、固定クリップ4との係止時に固定クリップが入り込むためのものである。
【0020】
シール部材3は、楕円断面形状の長径r1方向がフェンダーパネル2の対向面23からフードインナパネル12開閉後方へとなる車輌上下方向となるよう対向面23に設置される。そしてシール部材3は、断面楕円形状の長径r1がフェンダーパネル2の側壁部24の高さより稍高く形成される。このシール部材3の楕円形状は、エンジンフード1が開状態では、長径r1の一端が対向面23に接し、対向端がパネル本体部21から外方(上方)へやや突出した状態であり、エンジンフード1が閉状態となりエンジンフード1のフード縁部13によって楕円長径方向へ圧縮されると変形され、その一部が見切り部間隙Xに入り込めるような形状を成していればよい。
なお、この実施例ではシール部材3の断面形状を楕円形状としたが、断面形状を円形や四角形等の多角形など適宜選択すれば良く、エンジンフード1が閉状態となりエンジンフード1のフード縁部13によって楕円長径方向へ圧縮されて変形された際にその一部が見切り部間隙Xに入り込めるような断面形状であればよい。
【0021】
また、フェンダーパネル2の側壁部24には、適宜間隔を持って固定クリップ4が設けられる。この固定クリップ4を設ける間隔は、シール部材3に穿設した固定孔31と同じ間隔とするのが望ましい。
固定クリップ4は、側壁部24に穿設された孔25に取付けられ、エンジンルーム側となるフードインナパネル12側に鍔状の係止突部71を形成してなる。この係止突部41は、シール部材3との係止時に、シール部材3内に入り込む。
【0022】
このように、シール部材3をフェンダーパネル2に固定する際には、この実施例ではシール部材3のフェンダーパネル2の側壁部24側に両面接着テープ5を予め貼付しておき、クリップ4の係止突部41をシール部材3の固定孔31に嵌入させるときに同時に側壁部24へ貼付していくことで、シール部材3のフェンダーパネル2の側壁部24への取り付けをより確実にしている。
【0023】
上記のように、見切り部間隙Xにシール部材3が入り込んでフェンダーパネル2とエンジンフード1との見切り部をより平滑に構成することで、自動車のフロント側から、フロントウィンドーを通ってルーフ部への風の流れや、車輌側面への風の流れが平滑となると推測され、シール部材3を施した構造と従来の構造とのドアミラー風切り音の音圧レベルが、実測では、2.5[dB]低減した。
【0024】
なお、この実施例では、シール部材3をフェンダーパネル2側へ取付けて、エンジンフード1によるエンジンルーム閉塞時にフード縁部13によって変形させられるように構成した。しかしながら、シール部材3の取り付けは、フェンダーパネル2側に限定されるものではなく、エンジンフード1側に取り付けるようにしても良く、この場合には、エンジンフード1を開状態とした場合には、シール部材3がエンジンフード1と共に上方へと移動するので、見切り部の見栄えを良くすることが可能となる一方で、エンジンフード1の形状を、シール部材3を取り付け可能な形状とすることが必須となる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この発明は、自動車のエンジンフードや、トランクルームのトランクフード、ルーフウィンドー等見切り部に隙間が発生してしまう開閉箇所への利用が可能である。
【符号の説明】
【0026】
r1 長径
1 エンジンフード
11 フードアウタパネル
12 フードインナパネル
13 フード縁部
2 フェンダーパネル
21 パネル本体部
22 フェンダーパネル縁部
23 対向面
24 側壁部
25 孔
3 シール部材
31 固定孔
4 固定クリップ
41 係止突部
5 両面接着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルーム上面を開閉可能なエンジンフードのフード縁部と該縁部に対向するフロントフェンダーパネルのフェンダーパネル縁部との間に取り付け、フード縁部とフェンダーパネル縁部とが対向する見切り部をシールするエンジンフードシール部において、
弾性軟質材からなるシール部材を、エンジンフードを開状態とした時に、シール部材の一部が閉状態時の見切り部より車輌の外方へ位置するようにフェンダーパネル縁部に沿って配置させ、シール部材がエンジンフードを閉状態とした際にフード縁部に圧縮され、エンジンフード縁部とフェンダーパネル縁部との間に形成される見切り部間隙を埋めるように該間隙に入り込む事を特徴とするエンジンフードシール構造。
【請求項2】
前記シール部材は、断面楕円形状を成す長尺からなり、エンジンフード開閉方向が長径となるように取付けられる請求項1に記載のエンジンフードシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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