説明

エンジン始動装置

【課題】ノブロック機構及びインターロック機構に用いるソレノイドの省スペース化及び省エネルギー化を実現することができるエンジン始動装置を提供する。
【解決手段】本実施形態のエンジン始動装置1においては、1個の保持ソレノイド13のプランジャ13aにリンク13bしたロックピン押込部11がロックピン7の一端7aを押込動作を行い、それに応じて、ロックピン7の一端7a若しくは他端7bをノブロック突部9若しくはインターロック突部10に当接させるか否かを制御する。それらが当接すると、ノブロック若しくはキーインターロックが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動装置に係り、特に、ノブロック機構及びキーインターロック機構を備える装置に好適に利用できるエンジン始動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジン始動装置は、その一例として、その内部にノブロック機構及びインターロック機構を備えている。
【0003】
ノブロック機構は、IDコードによる電子照合が正規に行われない状態において電子キー又は回転ノブの不正回転操作を防止するための機構である。このノブロック機構は、その一例として、図13(a)に示すように、電子キーが挿入されるロータ103、ノブロック溝106aを有するロータハウジング106、ノブロック溝106aに係合するノブロックピン107、ノブロックピン107をノブロック溝106aに係合させる第1のコイルばね105、電子照合の結果に基づいて通電時にノブロックピン107をノブロック溝106aに係合させる第1の吸引ソレノイド112、及び、ノブロックピン107に第1のプランジャ112aを当接させる第2のコイルばね111を有している。
【0004】
ノブロック機構において、電子照合が正規に行われなかった場合、図13(a)に示すように、第1の吸引ソレノイド112に第1のプランジャ112aを駆動するための通電がなされず、ノブロックピン107が第1のコイルばね105及び第2のコイルばね111の弾性力を利用してノブロック溝106aに係合するため、電子キーまたは回転ノブはロータ103を回転操作させることができない。一方、電子照合が正規に行われた場合、図13(b)に示すように、第1の吸引ソレノイド112に第1のプランジャ112aを駆動するための通電がなされ、第1のプランジャ112aが第1のコイルばね105及び第2のコイルばね111の弾性力に抗してノブロックピン107を駆動するため、ノブロックピン107とノブロック溝106aとの係合が解除される。これにより、電子キーまたは回転ノブはロータ103を回転操作させることができる。
【0005】
また、インターロック機構は、シフトレバーがパーキングレンジ(駐車時選択位置)を選択していない状態において電子キー又は回転ノブの逆回転(電子キー又は回転ノブによるアクセサリ位置からオフ位置への回転)の誤操作を防止するための機構である。このインターロック機構は、その一例として、図14(a)に示すように、ロータ103の回転操作に連動する回転防止ディスク110、及び、シフトレバーがパーキングレンジを選択した際に通電により回転防止ディスク110の係合段部110cに第2のプランジャ113aを係合させる第2の吸引ソレノイド113、及び、回転防止ディスク110の係合段部110cから第2のプランジャ113aを離間させる第3のコイルばね114を有している。
【0006】
インターロック機構において、シフトレバーがパーキングレンジ以外のレンジを選択した場合、図14(a)に示すように、第2の吸引ソレノイド113への通電により第2の吸引ソレノイド113が第3のコイルばね114の弾性力に抗して第2のプランジャ113aを駆動するため、第2のプランジャ113aが回転防止ディスク110の係合段部110cに係合する。これにより、電子キーまたは回転ノブはロータ103を逆回転操作させることができない。一方、シフトレバーがパーキングレンジを選択した場合、図14(b)に示すように、第2の吸引ソレノイド113に第2のプランジャ113aを駆動するための通電がなされず、第3のコイルばね114の弾性力により第2のプランジャ113aと回転防止ディスク110の係合段部110cとの係合が解除される。これにより、電子キー2Aまたは回転ノブ2Bはロータ103を逆回転操作させることができる。
【0007】
なお、ノブロック機構及びインターロック機構のいずれの機構においても、電気系統の故障時に自動車のエンジンの停止状態を確保することができるようになっている。つまり、電気系統の故障による第1の吸引ソレノイド112の非通電時においてはノブロック機構が働いてキーの回転ができずエンジンが始動できないようになっており、電気系統の故障による第2の吸引ソレノイド113の非通電時においてはインターロック機構が働かずにキーが抜けるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−343406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来のエンジン始動装置においては、吸引ソレノイドが2個必要であるため、ソレノイド112、113の省スペース化が困難であった。また、いずれの吸引ソレノイドにおいても第2のコイルばね111又は第3のコイルばね114の弾性力に抗してプランジャを駆動しなければならないため、吸引ソレノイド112、113の消費電力が大きくなり、ソレノイド112、113の省エネルギー化が困難であった。
【0010】
従って、本発明の目的は、ノブロック機構及びインターロック機構に用いるソレノイドの省スペース化及び省エネルギー化を実現することができるエンジン始動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明は上記目的を達成するため、電子キー又は回転ノブを用いて押込操作及び回転操作がなされるロータと、前記ロータの押込方向に配置されており、前記ロータの押込操作がなされたときに前記ロータと係合すると共に、前記係合した前記ロータに連動して回転操作がなされることによりイグニッションスイッチをオン・オフにするシャフトと、前記シャフトから前記ロータを引き離す方向に付勢する第1の弾性部材と、前記ロータにおいて前記ロータの押込方向の直交方向に延在する部品配置孔に配置されており、少なくともその両端のうちの一方が前記部品配置孔から突出する長さに形成されているロックピンと、前記部品配置孔から前記ロックピンの一端が突出する方向に前記ロックピンを付勢する第2の弾性部材と、前記ロータの押込操作の際に前記ロックピンの一端に当接することにより前記ロータと前記シャフトとの係合を阻止するノブロック突部と、前記所定の回転位置から初期位置に向かうロータの逆回転操作の場合のみにおいて前記部品配置孔から突出した前記ロックピンの他端に当接して前記ロックピンの他端の通過を阻止することにより前記ロータの逆回転操作を防止するインターロック突部と、前記ロータの押込方向の直交方向の内側及び外側に移動自在に形成されていると共に、前記ロータの押込操作の際に前記ロックピンの一端が前記ノブロック突部に当接することを防ぐ第1の傾斜部と、前記ロータの逆回転操作の際に前記ロックピンの一端を前記部品配置孔に押し込む第2の傾斜部とを有するロックピン押込部と、前記第2の弾性部材の弾性力よりも弱い弾性力をもって前記ロックピン押込部を前記ロータの押込方向の直交方向の内側に付勢する第3の弾性部材と、通電時において前記ロックピン押込部にリンクしたプランジャを保持すると共に、前記ロータの押込操作の際に所望の電子照合が行われたとき又は前記ロータの逆回転操作の際にトランスミッションの操作レバーが駐車時選択位置以外の位置にあるときに前記通電による前記プランジャの保持がなされる保持ソレノイドと、を有することを特徴とするエンジン始動装置を提供する。
【0012】
このエンジン始動装置によれば、1個の保持ソレノイドを用いてノブロック及びキーインターロックを行うことができる。
【0013】
[2]前記ロックピン押込部は、平面視L字状に移動する前記ロックピンの軌跡上のL字区間に重なる平面視L字形状に形成されたスライドプレートであって、前記ロータの押込操作の際における前記ロックピン対向側に前記第1の傾斜部と、前記ロータの逆回転操作の際における前記ロックピン対向側に前記第2の傾斜部とを有していることを特徴とする上記[1]に記載のエンジン始動装置であってもよい。
【0014】
このエンジン始動装置によれば、ロックピン押込部がロックピンの軌跡上に配置されているので、ノブロック及びキーインターロックを滑らかに行うことができる。
【0015】
[3]前記ノブロック突部は、前記ロックピンの進行方向から見て前記ロックピン押込部の外側を囲む平面視L字状であってその各辺が前記ロックピン押込部の各辺よりもそれぞれ短くなる形状に形成されていると共に、前記ロータの逆回転操作の際における前記ロックピン対向側において前記ロックピンの他端が前記インターロック突部を通過してから前記ロックピンの一端を押し込む第3の傾斜部を有しており、前記ロックピンは、その一端が前記ロックピン押込部と前記ノブロック突部との境界線上かつ前記ロックピン押込部及び前記ノブロック突部のいずれにも当接する直線上を通過する位置に配設されていることを特徴とする上記[2]に記載のエンジン始動装置であってもよい。
【0016】
このエンジン始動装置によれば、ロータの逆回転時にノブロック突部がキーインターロック機構を阻害せず、かつ、ロータの押込操作の際にノブロック突部がロックピンの押し込みを一時負担するので、ロックピン押込部を保持する保持ソレノイドの消費電力を抑えることができる。
【0017】
[4]前記インターロック突部は、その突出方向に付勢する第4の弾性部材と、前記初期位置から前記所定の回転位置に向かう前記ロータの正回転方向において前記ロックピンの他端と対向する第4の傾斜面と、前記所定の回転位置から前記初期位置に向かう前記ロータの逆回転方向において前記ロックピンの他端と対向する垂直面とを有するピン形状であって、前記ロックピンの他端が前記第4の傾斜面と当接した際に前記ロックピンの他端により前記突出方向の反対方向に前記第4の弾性部材の弾性力に抗して押下されることにより前記ロックピンの他端の通過を許容するように形成されていることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれか1に記載のエンジン始動装置であってもよい。
【0018】
このエンジン始動装置によれば、インターロック突部の形状及び構造を簡素化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエンジン始動装置によれば、ノブロック機構及びインターロック機構に用いるソレノイドの省スペース化及び省エネルギー化を実現することができるエンジン始動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のエンジン始動装置における位置実施形態を示す斜視図
【図2】本実施形態のエンジン始動装置をロータの押込方向と平行に切断した断面図
【図3】本実施形態のノブロック突部及びロックピン押込部を示す斜視図
【図4】本実施形態のノブロック突部及びロックピン押込部を示す平面図
【図5】本実施形態のノブロック非作動モードを示す断面図
【図6】本実施形態のノブロック非作動モードを示す平面図
【図7】本実施形態のノブロック作動モードを示す断面図
【図8】本実施形態のノブロック作動モードを示す平面図
【図9】本実施形態のキーインターロック作動モードを示す断面図
【図10】本実施形態のキーインターロック作動モードを示す平面図
【図11】本実施形態のキーインターロック非作動モードを示す断面図
【図12】本実施形態のキーインターロック非作動モードを示す平面図
【図13】従来のノブロック・モードを示す断面図;(a)はノブロック作動モードであり、(b)はノブロック非作動モードである。
【図14】従来のキーインターロック・モードを示す断面図;(a)はキーインターロック作動モードであり、(b)はキーインターロック非作動モードである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のエンジン始動装置をその一実施形態により説明する。
【0022】
本実施形態のエンジン始動装置1は、図1及び図2に示すように、主に、ロータ3、シャフト4、第1の弾性部材5、ロックピン7、第2の弾性部材8、ノブロック突部9、インターロック突部10、ロックピン押込部11、第3の弾性部材12及び保持ソレノイド13を備えている。
【0023】
ロータ3は、図1及び図2に示すように、部品配置孔3b、係合凸部3c及びキーシリンダ3aを有する円柱形状に形成されている。また、このロータ3は、ロータシリンダ6の円筒内面6cに沿ってキー挿入方向(図2においては右方向。この方向はロータ3の押込方向でもある。)を軸に回転操作がなされるため、円柱側面3dを有している。
【0024】
ロータ3の部品配置孔3bは、図3に示すように、キーシリンダ3aよりもキー挿入方向の前方に位置している。この部品配置孔3bは、図3に示すように、ロータ3においてロータ3の押込方向の直交方向に延在するように形成されている。
【0025】
ロータ3の係合凸部3cは、ロータ3の押込方向(ロータ3のキー挿入方向)の先端面からその押込方向に突出している。このロータ3の係合凸部3cは、図1に示す電子キー2A又は図2に示す回転ノブ2Bを用いてロータ3を押込操作した際、シャフト4の係合凹部4aと係合するようになっている。
【0026】
ロータ3のキーシリンダ3aは、図1及び図2に示すように、そのロータ3の内部に電子キー2Aが部分的に挿入されるように形成されている。電子キー2Aが直方体形状であれば、キーシリンダ3aは方形穴となる。
【0027】
電子キー2Aは、例えば、キーレスエントリーシステム(いわゆる、スマートエントリーシステム)、ワイヤレスキーシステム等に対応するフォブ型の電子キーであり、電子照合のためのIDコードを内蔵している。また、本実施形態の電子キー2Aは、図1に示すように、利便性向上に伴うドアロックなどのリモートボタンの配設個数の増加の観点から、直方体形状に形成されていることが好ましい。
【0028】
なお、キーシリンダ3aの名称は図1に示した電子キー2Aを用いる場合の名称であり、回転ノブ2Bを用いる場合のその名称は正確に言うとノブ係合部となる。ただし、それらの名称や細かな形状は異なっても、ロータ3を回転操作するために電子キー2A又は回転ノブ2Bが挿入される部分であり、ロータ3の回転操作時におけるそれらの主な作用は同様である。したがって、本実施形態においては、電子キー2A及び回転ノブ2Bのいずれを採用した場合であってもキーシリンダ3aの名称で統一する。
【0029】
シャフト4は、ロータ3の押込方向(キー挿入方向)に配置されている。このシャフト4は、ロータ3の押込方向の後方(ロータ3配設側)に係合凹部4aを有している。この係合凹部4aは、ロータ3の押込操作がなされた際、ロータ3の係合凸部3cに係合する。これにより、ロータ3の回転操作においてロータ3及びシャフト4が連動するので、その回転操作によりイグニッションスイッチがオン又はオフになる。
【0030】
第1の弾性部材5は、図2に示すように、ロータ3の押込方向においてロータ3とシャフト4との間に配設されており、シャフト4からロータ3を引き離す方向に付勢している。第1の弾性部材5としては、経済性と弾性力との関係から、コイルばねが好ましい。
【0031】
ロックピン7は、ロータ3の押込方向の直交方向に延在するロータ3の部品配置孔3bに配置されている。このロックピン7は、その一端7aが太くかつ面取りされていると共にその他端7bが細くなるように2本の棒を組み合わせた形状に形成されていることが好ましい。
【0032】
また、このロックピン7は、少なくともその両端のうちの一方が部品配置孔3bから突出する長さに形成されている。本実施形態においては、ロータ3の初期位置においてロックピン7の一端7aが部品配置孔3bから突出しており、ロックピン7の一端7aを部品配置孔3bに押し込むことによりロックピン7の他端7bが部品配置孔3bから突出するように設定されている。
【0033】
また、このロックピン7は、図2から図4に示すように、その一端7aがロックピン押込部11とノブロック突部9との境界線上であってロックピン押込部11及びノブロック突部9のいずれにも当接する直線上を通過する位置に配設されていることが好ましい。これにより、ロックピン7の一端7aの軌跡Lは、図4に示した通り、平面視L字状になる。
【0034】
第2の弾性部材8は、図2に示すように、部品配置孔3bに内在しており、部品配置孔3bからロックピン7の一端7aが突出する方向にロックピン7を付勢している。この第2の弾性部材8は、経済性とスペース制約との関係から、コイルばねが好ましい。
【0035】
ノブロック突部9は、図2から図4に示すように、ロータシリンダ6の内部において、ロックピン7の一端7aからみたロータ3の押込方向の前方に配置されている。このノブロック突部9は、ロータ3の押込操作の際、ロックピン7の一端7aに当接することによりロータ3とシャフト4との係合を阻止する部材である。
【0036】
ここで、ロックピン押込部11が平面視L字状に形成された場合、ノブロック突部9は、図3及び図4に示すように、ロックピン7の進行方向(ロックピン7の一端7aからみたロータ3の押込方向)から見てロックピン押込部11の外側を囲む平面視L字状に形成されていることが好ましい(ロックピン押込部11はロータシリンダ6の円筒内面6cに配置されるため、実際には図4に示す通り湾曲したL字形状になる。)。
【0037】
この場合、このノブロック突部9は、その各辺がロックピン押込部11の各辺よりもそれぞれ短くなる形状に形成されていることが好ましい。また、このノブロック突部9は、ロータ3の逆回転操作の際のロックピン7対向側(図4ではノブロック突部9の左端)に、第3の傾斜部9aを有していることが好ましい。この第3の傾斜部9aは、ロックピン7の他端7bがインターロック突部10を通過してから、ロックピン7の一端7aを部品配置孔3bに押し込む形状になっている。
【0038】
インターロック突部10は、ロータシリンダ6の内部において、ロックピン7の他端7bからみたロータ3の逆回転操作(ロータ3を所定の回転位置(通常、アクセサリ位置、オン位置、スタート位置のいずれかの位置)から初期位置(通常、オフ位置)に回転させる操作。図5、図7、図9、図11ではロータ3の反時計回り方向の操作。)の前方に配置されている。このインターロック突部10は、図9に示すように、ロータ3の逆回転操作の場合のみにおいて、部品配置孔3bから突出したロックピン7の他端7bに当接し、ロックピン7の他端7bの通過を阻止することにより、ロータ3の逆回転操作を防止する部材である。
【0039】
ここで、インターロック突部10は、図5に示すように、第4の弾性部材10a、第4の傾斜面10b、垂直面10cを有するロックピン7であることが好ましい。この場合、第4の弾性部材10aは、ロータシリンダ6の円筒内面6cにおいてその径方向に設けられた穴6bに内在しており、インターロック突部10をその突出方向に付勢している。
【0040】
第4の傾斜面10bは、図5に示すように、ロータ3の正回転方向(ロータ3が初期位置から所定の回転位置に向かう方向。図5、図7、図9、図11ではロータ3の時計回り方向。)においてロックピン7の他端7bと対向する面である。この第4の傾斜面10bにロックピン7の他端7bが当接すると、インターロック突部10は第4の弾性部材10aの弾性力に抗してその突出方向の反対方向に押下される。その結果、ロックピン7の他端7bは、インターロック突部10を通過することができる。なお、この作用を生じる限りにおいて、第4の傾斜面10bは、平面であっても湾曲面であってもよい。
【0041】
垂直面10cは、図9に示すように、ロータ3の逆回転方向において、ロックピン7の他端7bと対向する面である。この垂直面10cは、ロックピン7の他端7bの側面に当接することにより、ロータ3の逆回転操作を防止する。その作用を生じる限り、垂直面10cにおいて厳密な垂直は要求されない。
【0042】
ロックピン押込部11は、図2に示すように、ロータシリンダ6の内部に配設されている。このロックピン押込部11は、図2から図4に示すように、ロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)及び外側(図2の下方向)に移動自在に形成されている。また、このロックピン押込部11は、第1の傾斜部11a及び第2の傾斜部11bを有している。
【0043】
ロックピン押込部11の第1の傾斜部11aは、図2から図4に示すように、ロータ3の押込操作の際におけるロックピン7の一端7aとの対向側(図4の下端)に形成される要素である。この第1の傾斜部11aは、ロータ3の押込操作の際、ロックピン7の一端7aを部品配置孔3bに対してノブロック突部9の高さ以上に押し込むことにより、ロックピン7の一端7aがノブロック突部9に当接することを防ぐ作用を生じさせる。ただし、この作用を生じさせるためには、ロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)に位置することが条件となる。つまり、ロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の外側(図2の下方向)に位置する場合、その作用は生じず、ロックピン7の一端7aがノブロック突部9に当接することになる。
【0044】
一方、ロックピン押込部11の第2の傾斜部11bは、図4に示すように、ロータ3の逆回転操作の際におけるロックピン7の一端7aとの対向側(図4の左端)に形成される要素である。この第2の傾斜部11bは、ロータ3の逆回転操作の際、ロックピン7の他端7bが部品配置孔3bから突出する程度にロックピン7の一端7aを部品配置孔3bに押し込む作用を生じさせる。ただし、この作用を生じさせるためには、ロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)に位置することが条件となる。また、この作用が生じた場合、ロックピン7の他端7bがインターロック突部10の垂直面10cに当接し、ロータ3の逆回転操作が阻止される。上記の作用、すなわち、ロータ3の逆回転操作の阻止を望まない場合、ロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の外側(図2の下方向)に位置することが条件となる。
【0045】
ここで、ロックピン押込部11は、図3及び図4に示すように、平面視L字形状に形成されたスライドプレートであることが好ましい。この場合、ロックピン押込部11は、図4に示すように、第1の傾斜部11a及び第2の傾斜部11bを有して一体形成されており、ロックピン7の軌跡L上のL字区間に重なるように配置されていることが好ましい。
【0046】
第3の弾性部材12は、図2に示すように、ロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)にロックピン押込部11を付勢する部材である。この第3の弾性部材12の弾性力は第2の弾性部材8の弾性力よりも弱く設定されている。そのため、第3の弾性部材12の弾性力のみによってロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)に位置している場合、ロックピン7の一端7aがロックピン押込部11の第1の傾斜部11a若しくは第2の傾斜部11bに当接した際にロックピン押込部11がロータ3の押込方向の直交方向の外側(図2の下方向、図5、図7、図9、図11では下方向、図6、図8、図10、図12では図面奥に向かう方向)に移動する。その結果、ロックピン7の一端7aはロックピン押込部11から何ら影響を受けない。
【0047】
保持ソレノイド13は、図2に示すように、プランジャ13aを有している。この保持ソレノイド13は、通電によりプランジャ13aを固定し、非通電によりプランジャ13aを自由に移動させるように形成されている。プランジャ13aの保持力は、そのプランジャ13aの保持力と第3の弾性部材12の弾性力とを加えて得た総合保持力が第2の弾性部材8の弾性力よりも強くなるように、設定されている。総合保持力はロックピン押込部11をロータ3の押込方向の直交方向の内側(図2の上方向)に保持する力となり、第2の弾性部材8の弾性力はロックピン7をロータ3の押込方向の直交方向の外側(図2の下方向)に駆動する力となる。
【0048】
また、プランジャ13aは、以下の2つの条件のいずれかの条件を満たしたときに、通電されるように制御されている。上記2つの条件のうちの第1の条件は、ロータ3の押込操作の際に所望の電子照合が行われたときである。すなわち、IDコードによる電子照合が所望の結果になったときである。また、上記2つの条件のうちの第2の条件は、ロータ3の逆回転操作の際にトランスミッションの操作レバーが駐車時選択位置以外の位置にあるときである。
【0049】
なお、駐車時選択位置とは、AT(オートマティック・トランスミッション)車ではP(パーキング)レンジであり、一方、駐車時選択位置以外の位置とは、例えばD(ドライブ)レンジである。
【0050】
次に、図5から図12を用いて、本実施形態におけるノブロックとキーインターロックを説明する。
【0051】
はじめに、ノブロック・モードを説明する。
【0052】
ノブロック非作動モードは電子照合が正規に行われた場合に生じる。ノブロック非作動モードにおいては、図5及び図6に示すように、保持ソレノイド13の通電により、保持ソレノイド13がロックピン押込部11をロータ3の押込方向の直交方向の内側(図5の上方向、図6の手前方向)に固定する。図6に示すように、太線で示すロックピン押込部11の方が細線で示すノブロック突部9よりも高くなっている。電子キー2A又は回転グリップによりロータ3の押込操作がなされると、ロックピン7の一端7aがロックピン押込部11の第1の傾斜部11aを登り、ロックピン押込部11若しくはノブロック突部9の上面に沿って移動する。その結果、ロータ3の係合凸部3cはシャフト4の係合凹部4aまで押し込まれる。そして、ロータ3の係合凸部3cがシャフト4の係合凹部4aに係合すると、ロータ3とシャフト4とが連結し、ロータ3を介してシャフト4に回転操作を与えることができる。
【0053】
なお、インターロック突部10は第4の傾斜面10bを有しているので、ロータ3の正回転操作の際にロックピン7の他端7bがインターロック突部10に引っかからないようになっている。
【0054】
一方、ノブロック作動モードは電子照合が正規に行われない場合に生じる。ノブロック作動モードにおいては、図7及び図8に示すように、保持ソレノイド13が非通電により、ロックピン押込部11は固定されず、ロータ3の押込方向の直交方向の外側(図7の下方向、図8の奥方向)に移動自在の状態になる。図8に示すように、太線で示すノブロック突部9の方が細線で示すロックピン押込部11よりも高くなっている。電子キー2A又は回転グリップによりロータ3の押込操作がなされても、ロックピン7の一端7aがロックピン押込部11をロータ3の押込方向の直交方向の外側(図5の下方向、図6の奥方向)に押込むので、ロックピン7がノブロック突部9に衝突し、ロータ3の押込操作が阻止される。その結果、ロータ3の係合凸部3cがシャフト4の係合凹部4aに係合することができず、シャフト4に回転操作を与えることができないので、シャフト4を介してイグニッションスイッチをオンにすることが不可能になる。
【0055】
次に、キーインターロック・モードを説明する。
【0056】
キーインターロック作動モードはAT車であればPレンジ以外のレンジの場合に生じる。キーインターロック作動モードにおいては、図9及び図10に示すように、保持ソレノイド13が通電状態になり、ロックピン押込部11をロータ3の押込方向の直交方向の内側(図9の上方向、図10の手前方向)に固定する。図10に示すように、太線で示すロックピン押込部11の方が細線で示すノブロック突部9よりも高くなっている。この場合、ロータ3が逆回転操作されると、ロックピン7の一端7aはロックピン押込部11の第2の傾斜部11bを登りながら押し上げられるので、ロックピン7の他端7bがインターロック突部10の垂直面10cに引っかかる。その結果、ロータ3の逆回転操作が阻止される。
【0057】
一方、キーインターロック非作動モードはAT車であればPレンジの場合に生じる。キーインターロック非作動モードにおいては、図11及び図12に示すように、保持ソレノイド13が非通電状態になり、ロックピン押込部11はロータ3の押込方向の直交方向の外側(図11の下方向、図12の奥方向)に移動自在になる。図12に示すように、太線で示すノブロック突部9の方が細線で示すロックピン押込部11よりも高くなっている。この場合、ロータ3が逆回転操作されると、ロックピン7の一端7aはロックピン押込部11の第2の傾斜面を登ることができずにそのロックピン押込部11をロータ3の押込方向の直交方向の外側(図11の下方向、図12の奥方向)に押し下げるので、ロックピン7の他端7bがロータ3の部品配置孔3bの内部に移動し、インターロック突部10に引っかからずに通過する。その結果、ロータ3が正常に行われ、電子キー2A又は回転ノブ2Bをオフ位置まで逆回転操作することができる。
【0058】
次に、本実施形態のエンジン始動装置1の作用を説明する。
【0059】
本実施形態のエンジン始動装置1においては、図2及び図5から図12に示すように、1個の保持ソレノイド13のプランジャ13aにリンク13bしたロックピン押込部11がロックピン7の一端7aを押込動作を行い、それに応じて、ロックピン7の一端7a若しくは他端7bをノブロック突部9若しくはインターロック突部10に当接させるか否かを制御する。それらが当接すると、ノブロック若しくはキーインターロックが実行される。つまり、本実施形態のエンジン始動装置1においては、1個の保持ソレノイド13を用いてノブロック及びキーインターロックを行うことができる。
【0060】
また、本実施形態のエンジン始動装置1においては、図4に示すように、ロックピン押込部11が上記した平面視L字状の所定のスライドプレートになっている。そのため、ロックピン押込部11がロックピン7の軌跡L上に配置されているので、ノブロック及びキーインターロックを滑らかに行うことができる。
【0061】
また、本実施形態のエンジン始動装置1においては、図4に示すように、ノブロック突部9が、平面視L字状のロックピン押込部11の外側を囲む平面視L字状になっており、所定の第3の傾斜部9aを有している。また、ロックピン7の一端7aがロックピン押込部11とノブロック突部9との境界線上かつロックピン押込部11及びノブロック突部9のいずれにも当接する直線上を通過するようになっている。
【0062】
また、本実施形態のエンジン始動装置1においては、インターロック突部10の第4の傾斜面10b等によりインターロック突部10が突出方向の反対方向に押し込まれ、ロックピン7の他端7bがインターロック突部10を通過するようになっている。これにより、インターロック突部10の形状及び構造を簡素化しつつ、ロータ3の逆回転操作時のみキーインターロックを行うことができる。
【0063】
すなわち、本実施形態のエンジン始動装置1によれば、ソレノイドの個数減少や消費電力の低下等の種々の作用が得られるので、ノブロック機構及びインターロック機構に用いるソレノイドの省スペース化及び省エネルギー化を実現することができるという効果を奏する。
【0064】
なお、本発明は、前述した実施形態などに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…エンジン始動装置
2A…電子キー
2B…回転ノブ
3…ロータ
3b…部品配置孔
4…シャフト
5…第1の弾性部材
6…ロータシリンダ
7…ロックピン
8…第2の弾性部材
9…ノブロック突部
10…インターロック突部
11…ロックピン押込部
12…第3の弾性部材
13…保持ソレノイド
L…ロックピンの一端の軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子キー又は回転ノブを用いて押込操作及び回転操作がなされるロータと、
前記ロータの押込方向に配置されており、前記ロータの押込操作がなされたときに前記ロータと係合すると共に、前記係合した前記ロータに連動して回転操作がなされることによりイグニッションスイッチをオン・オフにするシャフトと、
前記シャフトから前記ロータを引き離す方向に付勢する第1の弾性部材と、
前記ロータにおいて前記ロータの押込方向の直交方向に延在する部品配置孔に配置されており、少なくともその両端のうちの一方が前記部品配置孔から突出する長さに形成されているロックピンと、
前記部品配置孔から前記ロックピンの一端が突出する方向に前記ロックピンを付勢する第2の弾性部材と、
前記ロータの押込操作の際に前記ロックピンの一端に当接することにより前記ロータと前記シャフトとの係合を阻止するノブロック突部と、
前記所定の回転位置から初期位置に向かうロータの逆回転操作の場合のみにおいて前記部品配置孔から突出した前記ロックピンの他端に当接して前記ロックピンの他端の通過を阻止することにより前記ロータの逆回転操作を防止するインターロック突部と、
前記ロータの押込方向の直交方向の内側及び外側に移動自在に形成されていると共に、前記ロータの押込操作の際に前記ロックピンの一端が前記ノブロック突部に当接することを防ぐ第1の傾斜部と、前記ロータの逆回転操作の際に前記ロックピンの一端を前記部品配置孔に押し込む第2の傾斜部とを有するロックピン押込部と、
前記第2の弾性部材の弾性力よりも弱い弾性力をもって前記ロックピン押込部を前記ロータの押込方向の直交方向の内側に付勢する第3の弾性部材と、
通電時において前記ロックピン押込部にリンクしたプランジャを保持すると共に、前記ロータの押込操作の際に所望の電子照合が行われたとき又は前記ロータの逆回転操作の際にトランスミッションの操作レバーが駐車時選択位置以外の位置にあるときに前記通電による前記プランジャの保持がなされる保持ソレノイドと、
を有することを特徴とするエンジン始動装置。
【請求項2】
前記ロックピン押込部は、平面視L字状に移動する前記ロックピンの軌跡上のL字区間に重なる平面視L字形状に形成されたスライドプレートであって、前記ロータの押込操作の際における前記ロックピン対向側に前記第1の傾斜部と、前記ロータの逆回転操作の際における前記ロックピン対向側に前記第2の傾斜部とを有していることを特徴とする請求項1に記載のエンジン始動装置。
【請求項3】
前記ノブロック突部は、前記ロックピンの進行方向から見て前記ロックピン押込部の外側を囲む平面視L字状であってその各辺が前記ロックピン押込部の各辺よりもそれぞれ短くなる形状に形成されていると共に、前記ロータの逆回転操作の際における前記ロックピン対向側において前記ロックピンの他端が前記インターロック突部を通過してから前記ロックピンの一端を押し込む第3の傾斜部を有しており、
前記ロックピンは、その一端が前記ロックピン押込部と前記ノブロック突部との境界線上かつ前記ロックピン押込部及び前記ノブロック突部のいずれにも当接する直線上を通過する位置に配設されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジン始動装置。
【請求項4】
前記インターロック突部は、その突出方向に付勢する第4の弾性部材と、前記初期位置から前記所定の回転位置に向かう前記ロータの正回転方向において前記ロックピンの他端と対向する第4の傾斜面と、前記所定の回転位置から前記初期位置に向かう前記ロータの逆回転方向において前記ロックピンの他端と対向する垂直面とを有するピン形状であって、前記ロックピンの他端が前記第4の傾斜面と当接した際に前記ロックピンの他端により前記突出方向の反対方向に前記第4の弾性部材の弾性力に抗して押下されることにより前記ロックピンの他端の通過を許容するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジン始動装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−17076(P2012−17076A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157162(P2010−157162)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】