説明

エンジン搭載機械

【課題】搭載エンジンの不正運転を阻止することができるエンジン搭載機械を提供する。
【解決手段】エンジンECU1aと搭載機械ECU2aのいずれかのECUを介してキースイッチ3を警告手段4とエンジン始動回路5とに連係させ、エンジンECU1aの記憶手段1bに、搭載機械ECU2aの記憶手段2bに記憶されたエンジン型式情報を記憶させ、キースイッチ3によるエンジン始動操作時に、両ECU1a・2aの各記憶手段1b・2bに記憶された各エンジン型式情報が一致しなかったことを、両ECU1a・2aのいずれかのECUが判定した場合には、両ECU1a・2aのいずれかのECUがエンジン1を始動せずに警告手段4にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン搭載機械に関し、詳しくは、搭載エンジンの不正運転を阻止することができるエンジン搭載機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンと、このエンジンを制御するエンジンECUと、このエンジンを搭載する搭載機械を制御する搭載機械ECUとを備え、エンジンECUと搭載機械ECUとの間で情報の送受信が行えるようにしたエンジン搭載機械がある(特許文献1等)。
この種のエンジン搭載機械によれば、搭載機械ECUの情報とエンジンECUの情報とを統合させて、エンジンやエンジン搭載機械を制御することができる利点がある。
【0003】
しかし、この種のエンジン搭載機械では、エンジンECUの記憶手段に、エンジン出力の出力制御特性が異なるエンジン型式毎の複数のエンジン出力制御マップを記憶させ、搭載機械ECUの記憶手段に搭載すべきエンジンのエンジン型式情報を記憶させ、搭載機械ECUから送信されたエンジン型式情報に基づいて、エンジンECUが複数のエンジン出力制御マップから対応するエンジン型式のエンジン出力制御マップを選択し、エンジンECUがこのエンジン出力制御マップに基づいて、エンジンの出力制御を行うようにした場合、搭載エンジンの不正運転を阻止する手段がないため、問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−32524号公報(図8〜図11参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、次の問題がある。
《問題》 搭載エンジンの不正運転を阻止することができない。
エンジン搭載機械の出荷後、搭載機械ECUの記憶手段に記憶されているエンジン型式情報が故意または修理時の過失等により不正に書き換えられた場合、搭載エンジンが異なるエンジン型式のエンジン出力制御マップに基づいて不正に運転されることがある。
また、エンジン搭載機械の出荷後、搭載エンジン及びエンジンECUが、他のエンジン及びエンジンECUに載せ替えられた場合、載せ替えられた搭載エンジンのエンジン型式がエンジン搭載機械に適合しない場合でも、搭載機械ECUに記憶されたエンジン型式情報に基づいて選択されたエンジン出力制御マップに基づいて搭載エンジンが不正に運転されることがある。
上記従来技術では、このような搭載エンジンの不正運転を阻止する手段がなく、これを阻止することができない。
【0006】
本発明の課題は、搭載エンジンの不正運転を阻止することができるエンジン搭載機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1に例示するように、エンジン(1)と、このエンジン(1)を制御するエンジンECU(1a)と、このエンジン(1)を搭載するエンジン搭載機械(2)を制御する搭載機械ECU(2a)とを備え、エンジンECU(1a)と搭載機械ECU(2a)とで情報の送受信が行えるようにした、エンジン搭載機械において、
図2または図4に例示するように、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン出力の出力制御特性が異なるエンジン型式毎の複数のエンジン出力制御マップを記憶させ、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に搭載すべきエンジン(1)のエンジン型式情報を記憶させ、搭載機械ECU(2a)から送信されたエンジン型式情報に基づいて、エンジンECU(1a)が複数のエンジン出力制御マップから対応するエンジン型式のエンジン出力制御マップを選択し、エンジンECU(1a)がこのエンジン出力制御マップに基づいて、エンジン(1)の出力制御を行うようにするに当たり、
図1に例示するように、両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUを介してキースイッチ(3)を警告手段(4)とエンジン始動回路(5)とに連係させ、
図1〜図3、または図1、図4、図5に例示するように、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に記憶されたエンジン型式情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《問題》 搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
図1〜図3、または図1、図4、図5に例示するように、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に記憶されたエンジン型式情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにしたので、搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
すなわち、エンジン搭載機械(2)の出荷後、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に記憶されているエンジン型式情報が故意または修理時の過失等により不正に書き換えられた場合、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しないため、エンジン(1)が始動せず、警告手段(4)でエンジンを始動しない旨の警告が行われ、搭載エンジン(1)の不正運転が阻止される。
また、エンジン搭載機械(2)の出荷後、搭載エンジン及びそのエンジンECUが、他のエンジン(1)及びエンジンECU(1a)に載せ替えられ、載せ替えられた搭載エンジン(1)のエンジン型式がエンジン搭載機械(2)に適合しない場合、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しないため、エンジン(1)が始動せず、警告手段(4)でエンジンを始動しない旨の警告が行われ、搭載エンジン(1)の不正運転が阻止される。
【0009】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 調整が異なる同じエンジン型式のエンジンを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
図2、図3に例示するように、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン搭載機械(2)の搭載機械個体識別情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された搭載機械個体識別情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにしたので、調整が異なる同じエンジン型式のエンジンを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
エンジン搭載機械(2)は個々に最大出力制限や最大トルク制限の調整を行ってから出荷されるため、各エンジン搭載機械(2)の搭載エンジン(1)はエンジン型式が同じでも調整が異なっており、あるエンジン搭載機械の搭載エンジン(1)を他のエンジン搭載機械(2)に載せ替えると、不具合が生じるる。このため、これを不正運転として阻止する必要がある。
【0010】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンECUを残してエンジンのみを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
図2、図3または図4、図5に例示するように、前記エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させ、エンジン(1)に取り付けたエンジンタグ(6)にエンジン個体識別情報を保有させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、エンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報を両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUに読み込み、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにしたので、エンジンECU(1a)を残してエンジン(1)のみを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
【0011】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 調整が異なる同じエンジン型式のエンジンを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
図4、図5に例示するように、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶されたエンジン個体識別情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにしたので、調整が異なる同じエンジン型式のエンジンを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
エンジン搭載機械(2)は個々に最大出力制限や最大トルク制限の調整を行ってから出荷されるため、各エンジン搭載機械(2)の搭載エンジン(1)はエンジン型式が同じでも調整が異なっており、あるエンジン搭載機械の搭載エンジン(1)を他のエンジン搭載機械(2)に載せ替えると、不具合が生じる。このため、これを不正運転として阻止する必要がある。
【0012】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 エンジンECUを残してエンジンのみを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
図4、図5に例示するように、エンジン(1)に取り付けたエンジンタグ(6)にエンジン個体識別情報を保有させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、エンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報を両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUに読み込み、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにしたので、エンジンECU(1a)を残してエンジン(1)のみを載せ替えた場合の搭載エンジンの不正運転を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエンジン搭載機械を説明する模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るエンジン搭載機械のエンジンECUと搭載機械ECUの各記憶手段の記憶情報とエンジンタグの保有情報を説明する図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るエンジン搭載機械のエンジン始動操作時のフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエンジン搭載機械のエンジンECUと搭載機械ECUの各記憶手段の記憶情報とエンジンタグの保有情報を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るエンジン搭載機械のエンジン始動操作時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図3は本発明の第1実施形態に係るエンジン搭載機械を説明する図、図4、図5は本発明の第2実施形態に係るエンジン搭載機械を説明する図であり、各実施形態では、農用トラクタについて説明する。
【0015】
この農用トラクタの概要は、次の通りである。
図1に示すように、エンジン(1)と、このエンジン(1)を制御するエンジンECU(1a)と、このエンジン(1)を搭載するエンジン搭載機械(2)を制御する搭載機械ECU(2a)とを備え、エンジンECU(1a)と搭載機械ECU(2a)とで情報の送受信が行えるようにしている。
エンジンECU(1a)と搭載機械ECU(2a)とは、通信ライン(7)で連係させている。この通信ライン(7)はCAN通信バスである。CAN通信バスは、CAN(コントローラ・エリア・ネットワーク)プロトコルによるデータ通信を行うための通信ラインである。ECUは、電子制御ユニットを意味する。
【0016】
エンジンECU(1a)はエンジン(1)に取り付け、搭載機械ECU(2a)はエンジン(1)を搭載したエンジン搭載機械(2)である農用トラクタのエンジン(1)以外の個所に取り付けている。各ECU(1a)(2a)は、基板にCPU(中央演算処理装置)、EEPROM(電気的消却・プログラム可能型読取専用メモリ)、フラッシュメモリー、RAM(ランダムアクセスメモリ)、CANコントローラ、入力インターフェース、出力インターフェースを組み付けて構成されている。
【0017】
図2に示すように、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン出力の出力制御特性が異なるエンジン型式毎の複数のエンジン出力制御マップを記憶させ、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に搭載すべきエンジン(1)のエンジン型式情報を記憶させ、搭載機械ECU(2a)から送信されたエンジン型式情報に基づいて、エンジンECU(1a)が複数のエンジン出力制御マップから対応するエンジン型式のエンジン出力制御マップを選択し、エンジンECU(1a)がこのエンジン出力制御マップに基づいて、エンジン(1)の出力制御を行うようにしている。両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)はいずれもフラッシュメモリーからなる。
エンジン型式はA〜Lまでの12種類のものがあり、エンジン型式毎に最大出力や最大トルク等の出力制御特性が異なる。全てのエンジン型式に対して、1種類のエンジンECU(1a)を用いる。
【0018】
図1に示すように、エンジンECU(1a)を介してキースイッチ(3)を警告手段(4)とエンジン始動回路(5)とに連係させている。エンジン始動回路(5)はエンジン(1)のスタータモータ(8)に接続されている。
図2に示すように、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に記憶されたエンジン型式情報を記憶させている。
両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン搭載機械(2)の搭載機械個体識別情報を記憶させている。搭載機械個体識別情報は、農用トラクタの製造番号である。
エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させ、エンジン(1)に取り付けたエンジンタグ(6)にエンジン個体識別情報を保有させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、エンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報をエンジンECU(1a)に読み込むようになっている。エンジン個体識別情報は、搭載エンジン(1)の製造番号である。
【0019】
図1に示す警告手段(4)は、電光表示部と音声表示部を備えている。
エンジンタグ(6)はICタグであり、エンジンECU(1a)に設けたタグリーダ(1c)でICタグに記憶されたエンジン個体識別情報を読み込む。ICタグとは、ICチップと小型のアンテナを埋め込み、直接触れずに、そこに記憶された情報を電波によってタグリーダで読み取るものである。エンジンタグ(6)はICタグに限らず、バーコードやマトリックス型二次元コードを表示したタグであってもよい。この場合には、エンジンタグ(6)にタグリーダ(1c)を接触させておく。
【0020】
エンジン始動時のエンジンECUによる処理フローは、次の通りである。
図3に示すように、ステップ(S1)ではキースイッチ(3)によるエンジン始動操作がなされたか否かが判定される。ステップ(S1)での判定が肯定である場合、すなわち、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作がなされたとエンジンECU(1a)が判定した場合には、ステップ(S2)で両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致したか否かが判定される。
【0021】
ステップ(S2)での判定が肯定である場合、すなわち、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致したと、エンジンECU(1a)が判定した場合には、ステップ(S3)で両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された搭載機械個体識別情報が一致したか否かが判定される。
【0022】
ステップ(S3)での判定が肯定である場合、すなわち、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された搭載機械個体識別情報が一致したと、エンジンECU(1a)が判定した場合には、ステップ(S4)でエンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致したか否かが判定される。
【0023】
ステップ(S4)での判定が肯定である場合、すなわち、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致したと、エンジンECU(1a)が判定した場合には、ステップ(S5)でエンジンECU(1a)がエンジン(1)を始動する。
【0024】
次の場合には、ステップ(S6)でエンジンECU(1a)がエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせる。
ステップ(S2)での判定が否定である場合、すなわち、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しなかったとことを、エンジンECU(1a)が判定した場合。
ステップ(S3)での判定が否定である場合、すなわち、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された搭載機械個体識別情報が一致しなかったと、エンジンECU(1a)が判定した場合。
ステップ(S4)での判定が否定である場合、すなわち、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致しなかったことを、エンジンECU(1a)が判定した場合。
警告手段(4)での警告は、「搭載エンジンの不正運転を防止するため、エンジンを始動しない」旨を文字で電光表示するとともに、読み上げ音で告知する。
【0025】
尚、上記第1実施形態の変更例として、搭載機械ECU(2a)を介してキースイッチ(3)を警告手段(4)とエンジン始動回路(5)とに連係させ、ステップ(S1)〜ステップ(S5)での判定処理や、ステップ(S5)、ステップ(S6)での実行処理を搭載機械ECU(2a)で行うものを挙げることができる。
【0026】
図4と図5に示す第2実施形態は、次の点が第1実施形態と異なる。
すなわち、第1実施形態では、図2に示すように、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン搭載機械(2)の搭載機械個体識別情報を記憶させたが、第2実施形態では、これに代えて、図4に示すように、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させる。そして、第5図に示すように、ステップ(S3)では、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶されたエンジン個体識別情報が一致したか否かが判定され、ステップ(S3)での判定が否定である場合、すなわち、両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶されたエンジン個体識別情報が一致なかったと、エンジンECU(1a)が判定した場合には、ステップ(S6)でエンジンECU(1a)がエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせる。
他の構成と機能は、第1実施形態と同じであり、図4、図5中、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付しておく。
【0027】
尚、上記第2実施形態の変更例として、搭載機械ECU(2a)を介してキースイッチ(3)を警告手段(4)とエンジン始動回路(5)とに連係させ、ステップ(S1)〜ステップ(S5)での判定処理や、ステップ(S5)、ステップ(S6)での実行処理を搭載機械ECU(2a)で行うものを挙げることができる。
【0028】
本発明の各実施形態の構成と機能は上記の通りであるが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。
各実施形態では、エンジン搭載機械として農用トラクタを用いたが、エンジン搭載機械は、田植え機、播種機、コンバイン、収穫機等の農業機械、バックホー等の建設機械、エンジン発電機等の産業機械、その他の分野で用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0029】
(1) エンジン
(1a) エンジンECU
(1b) 記憶手段
(2) エンジン搭載機械
(2a) 搭載機械ECU
(2b) 記憶手段
(3) キースイッチ
(4) 警告手段
(5) エンジン始動回路
(6) エンジンタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)と、このエンジン(1)を制御するエンジンECU(1a)と、このエンジン(1)を搭載するエンジン搭載機械(2)を制御する搭載機械ECU(2a)とを備え、エンジンECU(1a)と搭載機械ECU(2a)とで情報の送受信が行えるようにした、エンジン搭載機械において、
エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン出力の出力制御特性が異なるエンジン型式毎の複数のエンジン出力制御マップを記憶させ、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に搭載すべきエンジン(1)のエンジン型式情報を記憶させ、搭載機械ECU(2a)から送信されたエンジン型式情報に基づいて、エンジンECU(1a)が複数のエンジン出力制御マップから対応するエンジン型式のエンジン出力制御マップを選択し、エンジンECU(1a)がこのエンジン出力制御マップに基づいて、エンジン(1)の出力制御を行うようにするに当たり、
両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUを介してキースイッチ(3)を警告手段(4)とエンジン始動回路(5)とに連係させ、
エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、搭載機械ECU(2a)の記憶手段(2b)に記憶されたエンジン型式情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された各エンジン型式情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。
【請求項2】
請求項1に記載したエンジン搭載機械において、
前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン搭載機械(2)の搭載機械個体識別情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶された搭載機械個体識別情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したエンジン搭載機械において、
前記エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させ、
エンジン(1)に取り付けたエンジンタグ(6)にエンジン個体識別情報を保有させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、エンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報を両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUに読み込み、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。
【請求項4】
請求項1に記載したエンジン搭載機械において、
前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に、エンジン(1)のエンジン個体識別情報を記憶させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、前記両ECU(1a)(2a)の各記憶手段(1b)(2b)に記憶されたエンジン個体識別情報が一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。
【請求項5】
請求項4に記載したエンジン搭載機械において、
エンジン(1)に取り付けたエンジンタグ(6)にエンジン個体識別情報を保有させ、キースイッチ(3)によるエンジン始動操作時に、エンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報を両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUに読み込み、エンジンECU(1a)の記憶手段(1b)に記憶されたエンジン個体識別情報とエンジンタグ(6)に保有させたエンジン個体識別情報とが一致しなかったことを、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUが判定した場合には、前記両ECU(1a)(2a)のいずれかのECUがエンジン(1)を始動せずに警告手段(4)にエンジンを始動しない旨の警告を行わせるようにした、ことを特徴とするエンジン搭載機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223153(P2010−223153A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73242(P2009−73242)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】