説明

エンジン

【課題】吸気通路に設けられた吸気センサによって吸気の性状を高精度に検出することができ且つ吸気センサの被水割れを抑制したエンジンを提供する。
【解決手段】排気通路と吸気通路14とを接続するEGR通路と、吸気通路14のEGR通路との接続部よりも下流側に設けられて吸気の性状を検出するセンサ素子30aを有する吸気検出手段30と、を具備し、吸気検出手段30は、EGR通路を介して吸気通路14に排気の一部が環流されていない期間よりも吸気通路14に排気の一部が環流されている期間において、センサ素子30aの露出の度合が高くなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、自動車等の車両に搭載されるエンジン(内燃機関)に関し、特に、吸気の性状を検出するための吸気センサを吸気通路に備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるエンジンにおいては、例えば、酸素濃度センサ(以下、Oセンサという)、全領域空燃比センサ(以下、LAFSという)、或いはNOセンサ等のガスセンサ(排気センサ)が排気通路に設けられ、これら排気センサの検出結果に基づくフィードバック制御が一般的に行われている。
【0003】
このような排気の成分を検出する排気センサの本体(センサ素子)はセラミックで形成されている。このため、排気通路内で生成された凝縮水が、加熱された状態のセンサ素子に付着すると、センサ素子がサーマルショックによる素子割れ(被水割れ)を起こす虞がある。
【0004】
このような問題を解決するために、センサ素子の外側に、凝縮水の付着を抑制するためのプロテクタを設けた構造が様々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、車両用のエンジンとしては、車両の運転状態に応じて、排気通路から排気の一部をEGRガスとして吸気通路に環流させる排気再循環(EGR)装置を備えるものが知られている。このEGR装置によって排ガスを環流させ、新気とEGRガス(排気)とを混合させて筒内に供給することで、排気の有害物質の低減を図ることができる。このようなEGR装置としては、例えば、高圧EGR通路を備えるものの他、高圧EGR通路に加えて低圧EGR通路を有するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
なお高圧EGR通路は、ターボチャージャのタービンよりも上流側の排気通路とターボチャージャのコンプレッサよりも下流側の吸気通路とを連通するものである。一方、低圧EGR通路は、タービンよりも下流側の排気通路とコンプレッサよりも上流側の吸気通路とを連通するものである。
【0007】
また、吸気通路中には、燃焼室に導かれる空気の量を多くするために、空気を冷却する冷却部としてのインタークーラが設けられている。空気は、インタークーラを通過することによって冷却されて、体積が小さくなる。この結果、より多くの空気が燃焼室に導かれるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−125332号公報
【特許文献2】特開2009−52486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
EGR装置を備えるエンジンにおいては、新気とEGRガス(排気)とを混合させた吸気の性状が燃費やNOの排出量等の排気特性に影響する。このため、例えば、OセンサやLAFS等のガス性状を検出するセンサ(ガスセンサ)を吸気通路に設け、吸気の性状を高精度に検出し、その検出結果に基づいてエンジンをフィードバック制御することが望ましい。
【0010】
ここで、新気及び燃焼室から排出される排気中には、水蒸気が含まれている。このため、新気やEGR装置によって吸気通路に戻された排気がインタークーラを通過することによって冷却されると、空気中の水蒸気が凝縮されて凝縮水となる。また、インタークーラの有無にかかわらず、EGR装置によってEGRガスを吸気通路に環流させると、それに伴って吸気の温度は外気温に比べて大幅に上昇する。その後、EGRガスの環流が停止されると、吸気は外気によって急速に冷却される。その際、吸気通路内で凝縮水が生成されてしまうことがある。
【0011】
そして、吸気通路に吸気センサが設けられている場合には、このように吸気通路内で生成された凝縮水が、例えば、吸気通路の壁面を伝って吸気センサに付着し、吸気センサのセンサ素子に割れ(被水割れ)が生じてしまう虞がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、吸気通路に設けられた吸気センサによって吸気の性状を高精度に検出することができ且つセンサ素子の被水割れを抑制したエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも下流側に設けられて吸気の性状を検出するセンサ素子を有する吸気検出手段と、を具備し、前記吸気検出手段は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間よりも前記吸気通路に排気の一部が環流されている期間において、前記センサ素子の露出の度合が高くなるように構成されていることを特徴とするエンジンにある。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様のエンジンにおいて、前記吸気検出手段は、前記センサ素子を内部に収容すると共に、吸気を内部に導入するための導入孔が形成されたカバー部材を備え、前記カバー部材は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間と、前記吸気通路に排気が環流されている期間とで、前記導入孔のサイズが変化するように構成されていることを特徴とするエンジンにある。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様のエンジンにおいて、前記カバー部材は、所定温度よりも低くなると前記導入孔のサイズが小さくなるように構成されていることを特徴とするエンジンにある。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れか一つの態様のエンジンにおいて、前記カバー部材は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間には外表面に付着した凝縮水を案内する案内溝が存在する第1の状態となり、前記吸気通路に排気の一部が環流されている期間には前記案内溝が存在しない第2の状態となるように、切り換え可能に構成されていることを特徴とするエンジンにある。
【0017】
本発明の第5の態様は、第4の態様のエンジンにおいて、前記カバー部材は、第2の所定温度以上になると前記第1の状態から前記第2の状態に切り換えられることを特徴とするエンジンにある。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜3の何れか一つの態様のエンジンにおいて、前記センサ素子は、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部に対して対向する側に設置されていることを特徴とするエンジンにある。
【発明の効果】
【0019】
かかる本発明では、凝縮水が付着することによるセンサ素子の被水割れを抑制しつつ、吸気の性状を精度良く検出することができる。EGR通路を介して吸気通路に排気の一部が環流されている期間は、吸気の温度が高く凝縮水はほとんど発生しないため、センサ素子に接触する吸気の量を増加させることで検出精度を高めることができる。一方、排気の一部が環流されていない期間においては、凝縮水が発生し易いものの、センサ素子の露出の程度を抑えることでセンサ素子の被水割れを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1に係るエンジンの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る吸気検出手段を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る導入孔部分の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る吸気検出手段の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2に係るカバー本体の形状変化を説明する図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る吸気検出手段の変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るカバー部材を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2に係るカバー部材を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2に係るカバー部材を示す図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る開閉部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(実施形態1)
図1に示すように、本実施形態に係るエンジン10は、直列4気筒のディーゼルエンジンであり、4つの気筒(燃焼室)11が形成されたエンジン本体12を備える。各気筒11の吸気ポート(図示なし)には、吸気マニホールド13が接続され、吸気マニホールド13には吸気管(吸気通路)14が接続されている。一方、各気筒11の排気ポート(図示なし)には、排気マニホールド15が接続され、排気マニホールド15には排気管(排気通路)16が接続されている。
【0023】
また燃料を噴射するためのインジェクタ(燃料噴射弁)17が各気筒11に対応して設けられており、各インジェクタ17はそれぞれコモンレール18に接続されている。コモンレール18には、図示しないがサプライポンプ(高圧ポンプ)を介して燃料タンクに接続されている。このサプライポンプによって燃料タンクから燃料が圧送され、コモンレール18内の高圧の燃料がインジェクタ17から各気筒11内に噴射されるようになっている。
【0024】
吸気管14及び排気管16の途中には、ターボチャージャ(過給機)19が設けられている。ターボチャージャ19は、エンジン本体12からの排ガスが流れ込むと、排ガスの流れによってタービンが回転し、このタービンの回転に伴ってコンプレッサが回転して吸気管14からターボチャージャ19内に空気が吸い込まれて加圧されるように構成されている。
【0025】
ターボチャージャ19の上流側の吸気管14には、エアクリーナ20と、エアフローセンサ21と、第1のスロットルバルブ22と、が設けられている。エアクリーナ20には吸気の湿度を検出する湿度センサ23が設けられている。なお第1のスロットルバルブ22は、エアクリーナ20を通過した新気の量(新気量)を調整すると共に、この調整によって、後述する低圧EGR管(低圧EGR通路)を介して吸気管14に環流される排ガス量(低圧EGRガス量)を間接的に調整する。
【0026】
ターボチャージャ19の下流側の吸気管14には、ターボチャージャ19での加圧により温度が上昇した吸気を冷却するインタークーラ24が配されている。インタークーラ24の下流側の吸気管14には、電動アクチュエータの駆動により吸気管14を開閉する第2のスロットルバルブ25が設けられている。
【0027】
第2のスロットルバルブ25は、インタークーラ24を通過した吸気量(新気量+低圧EGRガス量)を調整するとともに、この調整によって、後述する高圧EGR管(高圧EGR通路)を介して吸気管14に導入される排ガス量(高圧EGRガス量)を間接的に調整する。
【0028】
吸気管14の第2のスロットルバルブ25よりも下流側には、ターボチャージャ(タービン)19よりも上流側の排ガス(高圧EGRガス)が環流する高圧EGR管26の一端が接続されている。高圧EGR管26の他端は排気管16のターボチャージャ19よりも上流側に接続されている。高圧EGR管26には高圧EGRクーラ27が設けられ、高圧EGR管26の吸気管14との接続部分には高圧EGR弁28が設けられている。この高圧EGR弁28が開弁することで、排気管16のターボチャージャ19よりも上流側を流れる高圧の排ガスの一部が高圧EGR管26に流れ込み、高圧EGRクーラ27によって冷却された後、吸気管14に供給されるようになっている。
【0029】
また詳しくは後述するが、吸気管14の高圧EGR管26よりも下流側には、吸気の性状を検出する吸気検出手段(吸気センサ)としてのリニア空燃比センサ(LAFS)30が設けられている。さらに吸気マニホールド13には、その内部の圧力を検出するブースト圧センサ31が設けられている。
【0030】
なお排気管16のターボチャージャ19よりも下流側には、排気浄化用触媒であるディーゼル酸化触媒(以下、単に「酸化触媒」という)32と、排気浄化用フィルタであるディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter:以下、「DPF」と称する)33とが上流側から順に配されている。
【0031】
排気管16のターボチャージャ19よりも下流側、本実施形態ではDPF33の下流側には、低圧の排ガスの一部(低圧EGRガス)が環流する低圧EGR管34の一端が接続されている。低圧EGR管34の他端は、ターボチャージャ19と第1のスロットルバルブ22との間で、吸気管14に接続されている。この低圧EGR管34には、高圧EGR管26の場合と同様に、低圧EGRクーラ35及び低圧EGR弁36が設けられている。そして低圧EGR弁36が開弁することで、排気管16のターボチャージャ19よりも下流側を流れる低圧の排ガスの一部(低圧EGRガス)が低圧EGRクーラ35によって冷却されて吸気管14に供給されるようになっている。
【0032】
また低圧EGR管34の両端部には、差圧センサ37が設けられている。この差圧センサ37は、吸気管14のターボチャージャ19よりも上流側の圧力と、排気管16のターボチャージャ19よりも下流側の圧力との差圧を検出する。すなわち差圧センサ37の検出結果から低圧EGR管34を流れる低圧EGRガスの流速や流量等が求められる。
【0033】
このようなエンジン10は、ECU(電子コントロールユニット)40によって制御されている。ECU40は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等で構成され、上記の各種センサからの信号に基づいてエンジン10の総合的な制御を行う。
【0034】
ECU40の入力側には、上述したエアフローセンサ21、LAFS30、ブースト圧センサ31、湿度センサ23、差圧センサ37の他、エンジン本体12のクランク角を検出するクランク角センサ等の各種センサ類が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。一方、ECU40の出力側には、インジェクタ17、第1及び第2のスロットルバルブ22,25、高圧EGR弁28及び低圧EGR弁36等の各種出力デバイスが接続されている。これら各種出力デバイスには、上記のような各種センサ類によって検出された検出情報に基づきECU40で演算された燃料噴射量、バルブ開度等の各種情報がそれぞれ出力される。
【0035】
このようにECU40によってエンジン10は適切に制御されるが、その場合でも、車両の運転状態によって吸気管14内で凝縮水が生成され、この凝縮水がLAFS30に付着することに起因してセラミックス等からなるLAFS30のセンサ素子に割れが発生する虞がある。
【0036】
そこで本実施形態では、以下に詳しく説明するように、高圧EGRガスが環流されていない期間よりも高圧EGRガスが環流されている期間において、LAFS30のセンサ素子の露出の程度が高くなるようにすることで、センサ素子の被水割れを抑制しつつ、吸気の空燃比の検出精度を高めている。
【0037】
吸気検出手段であるLAFS30は、上述のように吸気管14の高圧EGR管26との接続部よりも下流側に設けられている。LAFS30は、図2に示すように、吸気管14に形成された装着孔14aに装着され、その本体部(センサ素子)30aが吸気管14内に突出した状態で吸気管14に固定されている。LAFS30の本体部30aは、吸気の流れ方向に対して交差する方向に突出して設けられていればよいが、吸気の流れ方向に対して略直交する方向に突出して設けられていることが好ましい。
【0038】
またLAFS30には、本体部30aを覆うカバー部材50が固定されている。カバー部材50を構成するカバー本体51には、内部に吸気を導入するための複数の導入孔52が設けられている。すなわちLAFS30の本体部30aは、カバー本体51の内部に収容されており、導入孔52を介してカバー本体51の内部に導入された吸気の空燃比を検出する。なおカバー本体51に設けられる導入孔52の数や配置は特に限定されるものではない。本実施形態では、カバー本体51には、その周方向に沿って一定間隔で8つ程度の導入孔52が形成されている。
【0039】
そしてカバー部材50は、これら複数の導入孔52のサイズ(開口径)が、高圧EGRガスが環流されていない期間よりも高圧EGRガスが環流されている期間において大きくなるように構成されている。本実施形態では、図3に示すように、カバー本体51の内面側には、各導入孔52の周縁部に、形状記憶合金で形成された開閉部材53が設けられている。この開閉部材53はリング状に形成されており、カバー部材50の温度が所定温度以上になると形状が変化して、その中央部に開口部54のサイズ(開口径)が大きくなる。つまり導入孔52のサイズ(開口径)が大きくなる。
【0040】
例えば、エンジン始動直後等、高圧EGR弁36が閉じられて高圧EGRガスが環流されていない場合、吸気の温度(各気筒11内へ流入する温度)は比較的低く、カバー部材50の温度Tも所定温度T1より低い状態となる。なお所定温度T1は、凝縮水の気化温度以下の温度に設定されている。この状態において導入孔52のサイズ(開口径)は最小径となる。本実施形態では、図3(a)に示すように、導入孔52は開閉部材53によって実質的に塞がれた状態となる。
【0041】
高圧EGRガスが環流されておらず吸気の温度が外気温以下になる場合、吸気管14内(高圧EGR管26との接続部よりも下流側)で凝縮水が特に生成されやすいため、導入孔52を実質的に塞ぐことでカバー本体51内部への凝縮水の侵入を防いでいる。例えば、吸気管14の内面を伝ってカバー本体51の表面に凝縮水が付着した場合でも、導入孔52が実質的に塞がれていることで、カバー本体51の内部に収容されているLAFS30の本体部30aへの凝縮水の付着を防ぐことができ、凝縮水に起因するLAFS30の本体部30aの被水割れの発生を防ぐことができる。
【0042】
このような状態から高圧EGR弁36が開放されて吸気管14に高圧EGRガスが環流されると、吸気の温度は急激に上昇する。それに伴いカバー部材50の温度Tが所定温度T1以上になると、図3(b)に示すように、開閉部材53が変形して開口部54が開き、カバー本体51の複数の導入孔52はほぼ全開の状態となる。なお所定温度T1は、エンジン10の特性に応じて適宜設定されればよいが、例えば、50℃程度に設定する。高圧EGRガスが環流された状態では、吸気の温度が外気に比べて大幅に高くなるため、吸気管14内において凝縮水は生成され難い。したがって、導入孔52のサイズを極力大きくすることで、吸気の空燃比を精度良く検出することができ、且つLAFS30の本体部30aの被水割れを生じさせることもない。
【0043】
以上のように本実施形態では、高圧EGRガスが環流されている期間であるか否かによってカバー部材50の導入孔52のサイズを変化させるようにしたので、吸気管14に配されたLAFS30の本体部30aの被水割れを抑制しつつ、吸気の空燃比を高精度に検出することができる。またLAFS30の被水割れを抑制できれば、例えば、吸気管14の高圧EGR管26との接続部付近等の応答性のよい場所にLAFS30を配置することができるようになる。これにより、エンジン10の制御性を向上することができ、また燃費や排気特性を向上することができる。
【0044】
なお吸気管14へのLAFS30の取付位置は、特に限定されないが、LAFS30は、吸気管14の高圧EGR管26との接続部に対向する側に設置されていることが好ましい。これにより、高圧EGRガスが慣性力によって本体部30a近傍をより通過しやすくなる。したがって、高圧EGRガスが環流されている期間と、環流されていない期間とで、カバー部材50の温度変化が起こりやすく、カバー部材50の導入孔52のサイズをより適切なタイミングで変化させることができる。
【0045】
また本実施形態では、高圧EGRガスが環流されていない期間に、開閉部材53によって導入孔52が実質的に塞がれるようにしたが、導入孔52を若干開いた状態としてもよい。何れにしても、高圧EGRガスが環流されていない期間と、環流されている期間とで、導入孔52のサイズ(開口径)を変化させることで、LAFS30の本体部30aの被水割れを抑制しつつ、吸気の空燃比を高精度に検出することができる。
【0046】
(実施形態2)
本実施形態は、吸気検出手段(LAFS)に設けられるカバー部材の変形例であり、その他の構成は実施形態1と同様である。なお同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
図4及び図5に示すように、実施形態2に係るカバー部材50Aは、高圧EGRガスが環流されている期間であるか否かによって、カバー本体51の外表面に案内溝55が存在する第1の状態と、案内溝55が存在しない第2の状態とに、切り換え可能に構成されている。
【0048】
カバー部材50Aは、本実施形態では、形状記憶合金で形成されており、その温度Tが所定温度T1以上の温度になるとカバー本体51の表面形状が変化する。例えば、エンジン始動直後等、高圧EGRガスが環流されておらず、カバー部材50Aの温度Tが所定温度T1よりも低い場合、図4に示すように、カバー部材50Aは、カバー本体51の外表面に案内溝55が存在する第1の状態となる。
【0049】
その後、高圧EGRガスが環流されてカバー部材50Aの温度Tが所定温度T1以上となると、図5に示すように、形状記憶合金で形成されたカバー本体51が変形(膨張)して案内溝55が存在しない第2の状態に切り替わる。このとき、上述したように開閉部材53も変形して導入孔52が全開の状態となる(図3参照)。
【0050】
ここで、案内溝55は、導入孔52の周囲に導入孔52とは離間して設けられていればよいが、略鉛直方向に沿って延設されていることが好ましい。本実施形態では、吸気管14が略水平方向に配され、LAFS30はこの吸気管14内に本体部30aが突出するように固定されている。このため、案内溝55が、各導入孔52間にカバー部材50Aの軸方向(略鉛直方向)に延設された複数の第1溝部55aを備えるようにした。さらに案内溝55は、カバー部材50Aの上端部付近にカバー部材50Aの周方向(略水平方向)に延設された第2溝部55bを備えている。複数の各第1溝部55aは、第2溝部55bにそれぞれ接続されている。
【0051】
このようにカバー本体51の外表面に案内溝55が存在する第1の状態では、例えば、吸気管14の内面を伝ってカバー本体51の外表面に凝縮水が付着した場合でも、この凝縮水は案内溝55に沿って案内されるため、凝縮水の導入孔52への侵入を効果的に抑制することができる。特に案内溝55が鉛直方向に延設された第1溝部55aを備えていることで、凝縮水はより確実に案内溝55(第1溝部55a)に沿って流れ落ちる。したがって、凝縮水の導入孔52への侵入をさらに効果的に抑制することができる。
【0052】
一方、カバー本体51の外表面に案内溝55が存在しない第2の状態では、カバー本体51による吸気の流れの阻害を最小限に抑えられ、第1の状態よりも吸気の流れがスムーズになるため、吸気効率が向上する。
【0053】
また吸気の温度が高い状態で案内溝55が残っていると、案内溝55内に凝縮水が発生しやすくなり、かえって逆効果になるリスクがある。またこのように案内溝55内に凝縮水が発生した状態で、EGRガスの環流が停止され吸気の温度が低下すると案内溝55に大量の凝縮水が発生して被水割れリスクが増大する虞がある。つまり、カバー本体51が第2の状態に切り替わることで、このような被水割れのリスクを抑えることもできる。
【0054】
なお本実施形態では、吸気管14が略水平方向に配されているため、案内溝55は、第1溝部55aを少なくとも備えていることが好ましいが、例えば、図6に示すように、吸気管14が略鉛直方向に配されている場合、案内溝55は、カバー本体51の周方向(略鉛直方向)に沿って延設された第2溝部55bを少なくとも備えていることが好ましい。
【0055】
ところで本実施形態では、開閉部材53とカバー本体51とが、同一温度で変化する例を説明したが、開閉部材53とカバー本体51とが、異なる温度で変形するようにしてもよい。具体的には、カバー部材50Aの温度Tが第1の所定温度T1以上になると開閉部材53の形状が変化し、カバー部材50Aの温度Tが第1の所定温度T1よりも高い温度である第2の所定温度T2以上になった場合に、カバー本体51の形状が変化するようにしてもよい。
【0056】
この場合、図7に示すように、まずカバー部材50Aの温度Tが第1の所定温度T1よりも低いと、導入孔52は開閉部材53によって塞がれ、カバー本体51はその外表面に案内溝55が存在する第1の状態となる。この第1の状態では、導入孔52からカバー本体51内部への凝縮水の侵入を確実に防止することができる。
【0057】
カバー部材50Aの温度Tが第1の所定温度T1以上になると、図8に示すように、開閉部材53の形状が変形して開口部54が形成され、導入孔52がほぼ全開となる。ただしカバー部材50Aの温度Tが第2の所定温度T2よりも低い温度であれば、カバー本体51は形状が変化することなく第1の状態に保持される。つまりカバー本体51の外表面には案内溝55が存在する。この状態では、導入孔52からカバー本体51の内部に吸気は導入されるが、カバー本体51の外表面に付着した凝縮水は案内溝55によって案内されるため、凝縮水の導入孔52への侵入は十分に抑えられる。
【0058】
そしてカバー部材50Aの温度Tが第2の所定温度T2以上となると、図9に示すように、カバー本体51は、その形状が変化して外表面に案内溝55が存在しない第2の状態となる。なお開閉部材53は形状が変化することはなく導入孔52は全開の状態に保持される。これにより、吸気の空燃比を精度良く検出することができ、また吸気の流れもスムーズになる。
【0059】
なお、このように開閉部材53とカバー本体51とが異なる温度で変形するようにした場合の第1の所定温度T1及び第2の所定温度T2は、エンジン10の特性に応じて適宜設定されればよいが、第1の所定温度T1は、例えば、50℃程度に設定し、第2の所定温度T2は、例えば、100℃程度に設定する。
【0060】
(実施形態3)
本実施形態は、開閉部材の変形例であり、その他の構成は実施形態1と同様である。なお同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0061】
図10に示すように、実施形態3に係る開閉部材53Aは、導入孔52に対向するように直線移動可能に設けられた蓋部材56と、この蓋部材56に一端が接続され他端がカバー本体51に固定された形状記憶合金からなるバネ部材57と、で構成されている。本実施形態に係る蓋部材56は、略矩形の板状部材からなり、カバー本体51の内面に沿って湾曲して設けられている。またカバー本体51の内面には、この蓋部材56の両端部をスライド可能に保持するガイド部58が設けられている。
【0062】
このような構成では、高圧EGRガスが環流されておらずカバー部材50の温度Tが第1の所定温度T1よりも低いと、図10(a)に示すように、開閉部材53Aを構成するバネ部材57が延伸した状態に保持され、導入孔52はほぼ全閉の状態となる。このよう状態から高圧EGRガスが環流されカバー部材50の温度Tが第1の所定温度T1以上になると、図10(b)に示すように、バネ部材57が変形して縮んだ状態となり、それに伴って蓋部材56がガイド部58に沿ってスライドすることで、導入孔52はほぼ全開の状態となる。
【0063】
本実施形態の構成においても、高圧EGRガスが環流されている期間であるか否かによってカバー部材50の導入孔52のサイズを確実に変化させることができる。したがって、上述の実施形態と同様に、LAFS30の本体部30aの被水割れを抑制しつつ、吸気の空燃比を高精度に検出することができる。
【0064】
なお本実施形態では、蓋部材56をスライドさせるための駆動源として形状記憶合金からなるバネ部材57を用いたが、蓋部材56の駆動源は特に限定されるものではなく、例えば、電動のアクチュエータ等を用いることもできる。この場合、例えば、高圧EGR弁28の開閉を検出し、その検出結果に応じてアクチュエータを制御して蓋部材56をスライドさせるようにしてもよい。また例えば、吸気管14に吸気の温度を検出する温度センサを設け、この温度センサの検出結果に応じて蓋部材56をスライドさせるようにしてもよい。勿論、このような構成としても、高圧EGRガスが環流されている期間であるか否かによってカバー部材50の導入孔52のサイズを確実に変化させることができる。
【0065】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、カバー部材によってセンサ素子の露出の度合を変化させるようにしたが、センサ素子の露出の度合を変化させる手段は特に限定されるものではない。
【0067】
また例えば、上述の実施形態では、高圧EGRガス及び低圧EGRガスのそれぞれを環流させるエンジンを例示したが、例えば、高圧EGRガス又は低圧EGRガスのみを環流させるエンジンにも本願発明を適用することができる。
【0068】
また上述の実施形態では、吸気検出手段の一例としてリニア空燃比センサ(LAFS)を例示したが、吸気検出手段は、吸気の性状を検出するものであればよく、例えば、吸気の空気量を検出するOセンサや、吸気の温度を検出する温度センサ等であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 エンジン
12 エンジン本体
13 吸気マニホールド
14 吸気管
14a 装着孔
15 排気マニホールド
16 排気管
17 インジェクタ
18 コモンレール
19 ターボチャージャ
20 エアクリーナ
21 エアフローセンサ
22 第1のスロットルバルブ
23 湿度センサ
24 インタークーラ
25 第2のスロットルバルブ
26 高圧EGR管
27 高圧EGRクーラ
28 高圧EGR弁
30 リニア空燃比センサ(LAFS)
30a 本体部(センサ素子)
31 ブースト圧センサ
34 低圧EGR管
35 低圧EGRクーラ
36 低圧EGR弁
37 差圧センサ
50 カバー部材
51 カバー本体
52 導入孔
53 開閉部材
54 開口部
55 案内溝
56 蓋部材
57 バネ部材
58 ガイド部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路と吸気通路とを接続するEGR通路と、
前記吸気通路の前記EGR通路との接続部よりも下流側に設けられて吸気の性状を検出するセンサ素子を有する吸気検出手段と、を具備し、
前記吸気検出手段は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間よりも前記吸気通路に排気の一部が環流されている期間において、前記センサ素子の露出の度合が高くなるように構成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
前記吸気検出手段は、前記センサ素子を内部に収容すると共に、吸気を内部に導入するための導入孔が形成されたカバー部材を備え、
前記カバー部材は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間と、前記吸気通路に排気が環流されている期間とで、前記導入孔のサイズが変化するように構成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンにおいて、
前記カバー部材は、所定温度よりも低くなると前記導入孔のサイズが小さくなるように構成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンにおいて、
前記カバー部材は、前記EGR通路を介して前記吸気通路に排気の一部が環流されていない期間には外表面に付着した凝縮水を案内する案内溝が存在する第1の状態となり、前記吸気通路に排気の一部が環流されている期間には前記案内溝が存在しない第2の状態となるように、切り換え可能に構成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載のエンジンにおいて、
前記カバー部材は、第2の所定温度以上になると前記第1の状態から前記第2の状態に切り換えられることを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項1〜3の何れか一項に記載のエンジンにおいて、
前記センサ素子は、前記吸気通路の前記EGR通路との接続部に対向する側に設置されていることを特徴とするエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−2368(P2013−2368A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134625(P2011−134625)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】