説明

エンドグルカナーゼSTCEおよびそれを含むセルラーゼ調製物

スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)由来の新規エンドグルカナーゼ、前記エンドグルカナーゼをコードするポリヌクレオチド、及び前記エンドグルカナーゼを含むセルラーゼ調製物を開示する。
前記エンドグルカナーゼ又はセルラーゼ調製物は、セルロース含有繊維の色の澄明化、毛羽立ちの低減、肌触り及び外観の改善、色の局所的変化、ごわつきの低減などを目的とした洗剤用、並びに繊維加工用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドグルカナーゼSTCE(Endoglucanases STCE)及びそれを含むセルラーゼ調製物、並びにそれらを利用したセルロース含有繊維の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、セルロース含有繊維を、その繊維に所望の特性を与えるためにセルラーゼで処理することが行われている。例えば、繊維業界においては、セルロース含有繊維の肌触り及び外観を改善するために、又は着色されたセルロース含有繊維にその色の局所的な変化を提供する「ストーンウォッシュ」の外観を与えるために、セルラーゼによる処理が行われている[欧州特許第307,564号明細書(特許文献1)]。
【0003】
また、着色されたセルロース含有繊維は繰り返し洗濯をすることによって毛羽が生じ、着色生地の色を不鮮明にすることが知られている。そこで、洗剤中にセルラーゼを含ませることによって、毛羽を除去する、もしくは毛羽が生じないようにすることによって着色生地の色を鮮明にする、すなわち澄明化することから[欧州特許第220,016号明細書(特許文献2)、国際公開第95/02675号パンフレット(特許文献3)、国際公開第97/30143号パンフレット(特許文献4)、国際公開第98/08926号パンフレット(特許文献5)]、セルラーゼを含んだ洗剤が欧米を中心に市販されている。
【0004】
洗剤に用いられるセルラーゼとして、洗剤中において、フミコーラ(Humicola)属由来の精製された43kDエンドグルカナーゼ成分(EGV)が従来の複数のセルラーゼ成分の混合物であるセルラーゼ調製物に対して約30倍もの澄明化活性(生地に生ずる毛羽を取り、生地の色を鮮やかにする活性)があることが知られている[国際公開第91/17243号パンフレット(特許文献6)]。また、フミコーラ属由来のエンドグルカナーゼNCE5(以下「NCE5」と略記することもある。)を洗剤中で反応させることによって、着色生地の澄明化をもたらすことが知られている[国際公開第01/90375号パンフレット(特許文献7)]。更には、洗剤中において、リゾプス(Rhizopus)属由来のエンドグルカナーゼRCEI(以下「RCEI」と略記することもある。)をフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)にて増強発現させた培養液が、RCEIを増強発現させていないフミコーラ・インソレンス培養液の20倍以上もの澄明化活性があることが知られている[国際公開第00/24879号パンフレット(特許文献8)]。
【0005】
このように、様々なエンドグルカナーゼが着色生地の澄明化活性をもつことは知られているものの、実際に、欧米の洗剤に配合された場合、十分に活性を発揮できるエンドグルカナーゼは少ない。これは、欧米の洗剤に含まれている多量のアニオン界面活性剤やビルダーなどが活性を阻害するためと考えられる。
【0006】
また、洗濯に用いられる欧米の水道水は一般的に硬度が高く、Ca2+やMg2+などの2価のカチオンが多量に含まれている。この2価のカチオンは洗剤中の界面活性剤による洗浄能力を著しく低下させるため、洗剤にはこの2価のカチオンを吸着させるためにビルダーが配合されている[“Fragrance Journal”,1995年,11巻,p.33−55(非特許文献1)]。また、地域によって水道水の硬度はかなり違うため、洗剤に配合するビルダーの種類や添加量には地域別に工夫が凝らされている。また、洗剤による洗浄能力だけでなく、セルラーゼ活性もこれら2価のカチオンの影響を受ける事が知られている[Mansfield,S.D.et al.,“Enzyme Microb.Technol.”23,1998年,p.133−140(非特許文献2)、Jenkins,C.C.AND Suberkropp,K.,“Freshwater Biology”,33巻第2号,1995年,p.245−253(非特許文献3)]。従って、水の硬度によっては、セルラーゼ活性が阻害され、満足な澄明化効果が得られない問題や、反対に、セルラーゼ活性が増強され、生地の強度低下をおこす問題が発生する。
【0007】
ビルダー自体がセルラーゼ活性に影響を与えるため、セルラーゼの澄明化活性に対して水の硬度が及ぼす影響を、ビルダーの添加によって緩和することは難しい。そこで、水道水の硬度の影響を受けにくく、安定した澄明化活性を有するセルラーゼが求められている。
【0008】
従来、セルロース含有繊維の処理には、複数のセルラーゼ成分の混合物が使用されてきたが、その実用化は、セルロース含有繊維に対して所望の効果を得るには多量のセルラーゼ調製物を使用する必要から生じる困難性によって妨げられてきた。そこで多くの場合、セルラーゼ調製物は、多量の高活性エンドグルカナーゼを含む調製物として提供されている。その製造方法としては、遺伝子組換えの技術を用いて、目的の高活性エンドグルカナーゼ成分を宿主細胞において大量に発現させる方法が知られている[国際公開第91/17243号パンフレット(特許文献6)、国際公開第98/03667号パンフレット(特許文献9)、国際公開第98/11239号パンフレット(特許文献10)]。
【0009】
そして、これらの方法において好ましい宿主細胞としては、不完全菌類に属する糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属の糸状菌などが挙げられている。更に、洗剤に用いるセルラーゼを生産させる場合、洗剤中のpHがアルカリ性であるため、酸性セルラーゼを生産するトリコデルマ属の糸状菌よりも、中性セルラーゼを生産するアスペルギルス属やフミコーラ属の糸状菌を宿主とする方が適している。特に、工業レベルでの酵素の生産を考慮した場合、生産性の高いフミコーラ属の菌は極めて優良な宿主となる[国際公開第01/90375号パンフレット(特許文献7)、国際公開第98/03640号パンフレット(特許文献11)]。
【0010】
しかしながら、異種由来の遺伝子を、フミコーラ属の糸状菌において発現させる際、その塩基配列上の特性が異なる(遺伝子のコドン使用頻度が違う)などの理由で、発現が妨げられる場合が多い。そのため、異種由来の遺伝子に対して改変操作を行うことが必要となる。例えば、接合菌類に属するリゾプス属由来のエンドグルカナーゼRCEIをフミコーラ・インソレンスにおいて大量発現させるためには、RCEIをコードする遺伝子を宿主細胞のコドン使用頻度に合わせて最適化しなければならない[国際公開第00/24879号パンフレット(特許文献8)]。しかし、このように最適化されたとしても、通常、同種遺伝子の発現量と同程度の発現量を得ることは難しいことが予想されている。また、実際に発現し、宿主により生産されてきた目的の酵素が、培養中に培養液中のプロテアーゼなどによる分解を受け、分解物もしくは部分分解物として得られてくる場合も予想される。
【0011】
【特許文献1】欧州特許第307,564号明細書
【特許文献2】欧州特許第220,016号明細書
【特許文献3】国際公開第95/02675号パンフレット
【特許文献4】国際公開第97/30143号パンフレット
【特許文献5】国際公開第98/08926号パンフレット
【特許文献6】国際公開第91/17243号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/90375号パンフレット
【特許文献8】国際公開第00/24879号パンフレット
【特許文献9】国際公開第98/03667号パンフレット
【特許文献10】国際公開第98/11239号パンフレット
【特許文献11】国際公開第98/03640号パンフレット
【非特許文献1】“Fragrance Journal”,1995年,11巻,p.33−55
【非特許文献2】Mansfield,S.D.et al.,“Enzyme Microb.Technol.”23,1998年,p.133−140
【非特許文献3】Jenkins,C.C.AND Suberkropp,K.,“Freshwater Biology”,33巻第2号,1995年,p.245−253
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでに、繊維用・洗剤用途に使用するために、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、リゾプス(Rhizopus)属、ムコール(Mucor)属、ファイコマイセス(Phycomyces)属などの様々な糸状菌からセルラーゼが単離され、それらセルラーゼをコードする遺伝子が単離されている。しかしながら、アニオン界面活性剤及びビルダーを多量に含有する欧米タイプの洗剤中において高い澄明化活性を有し、なおかつ、水道水の硬度の影響を受けにくく、安定した澄明化活性を有するセルラーゼはいまだ報告されていない。
【0013】
更に、優良な宿主であるフミコーラ属の糸状菌において、遺伝子改変操作なしで大量に発現させることができるような異種糸状菌由来のセルラーゼ遺伝子があれば、その産業上の価値は計り知れないが、まだそのような遺伝子の報告もない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、今般、セルラーゼ酵素やセルラーゼ遺伝子を単離した報告は全くされていなかったスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物から、新規な高いエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質及びその遺伝子を見出し、これらを提供するものである。
【0015】
本発明者は、本発明のスタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物から単離された新規な高いエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質が、欧米の洗剤中において、セルロース含有着色生地に対して極めて強い澄明化活性を示すことを見出した。例えば、スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)由来の本発明のエンドグルカナーゼ、特にその一例であるエンドグルカナーゼSTCE1(以下「STCE1」と略記することもある)は、代表的なヨーロッパ洗剤中において、洗剤用セルラーゼとして澄明化活性を有することが知られているエンドグルカナーゼNCE5(以下「NCE5」と略記することもある)(国際公開第01/90375号パンフレット)に比べて約16倍、エンドグルカナーゼRCEI(国際公開第00/24879号パンフレット)に比べて約80倍以上もの高い澄明化活性を有していた。
【0016】
更に、そのエンドグルカナーゼSTCE1は、水道水の硬度によらず、安定した澄明化活性を有するという驚くべき知見を得た。例えば、セルロース含有繊維に対して高い毛羽除去活性を有することが知られているエンドグルカナーゼNCE4(国際公開第98/03640号パンフレット)やNCE5(国際公開第01/90375号パンフレット)は、水道水中の硬度が上がると澄明化活性が上がるのに対して、エンドグルカナーゼRCEI(国際公開第00/24879号パンフレット)は、水道水中の硬度が上がると澄明化活性が下がる。しかしながら、本発明のエンドグルカナーゼSTCE1は、水道水の硬度によらず、安定した澄明化活性を有していた。このように、欧米の洗剤中において高い澄明化活性を有し、しかも、水道水の硬度によらず、安定した活性を有するセルラーゼに関する知見は今までに全くない。
【0017】
更に驚くべきことに、スタフィロトリクム・ココスポラム由来エンドグルカナーゼSTCE1は、スタフィロトリクム・ココスポラムとは異種菌株であるフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)を宿主として用いた形質転換において、エンドグルカナーゼSTCE1遺伝子の改変操作を全く行わないで大量発現することを見出した。
【0018】
従って、本発明は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物由来のエンドグルカナーゼ活性を有する新規なタンパク質及びその遺伝子、並びに前記タンパク質を含有し、良好な特性を有するセルラーゼ調製物を提供するものである。また、本発明は、前記タンパク質をコードする遺伝子によって形質転換された宿主細胞、及び前記宿主細胞を培養して目的タンパク質を採取する方法を提供するものである。更に、本発明のタンパク質又は本発明のセルラーゼ調製物によりセルロース含有繊維を処理する方法を提供するものである。
【0019】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物由来であって、エンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質。
(2)以下の(A)及び(B)の特性を有する、(1)に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列である。
(3)以下の(A)、(B)、及び(C)の特性を有する、(2)に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により測定した平均分子量が49kDである。
(4)以下の(A)、(B)、及び(C)の特性を有する、(2)に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により測定した平均分子量が45kDである。
(5)スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)由来である、(1)〜(4)のいずれか一項に記載のタンパク質。
(6)下記からなる群より選択される、タンパク質:
(a)配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含む、タンパク質、
(b)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有する改変タンパク質、及び
(c)配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有する相同タンパク質。
(7)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(8)下記からなる群より選択される、ポリヌクレオチド:
(i)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列を含むポリヌクレオチド、
(ii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列において、1個又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(9)(7)又は(8)に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(10)(9)に記載の発現ベクターにより形質転換された、宿主細胞。
(11)宿主が酵母又は糸状菌である、(10)に記載の宿主細胞。
(12)酵母が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属又はピキア(Pichia)属に属する微生物である、(11)に記載の宿主細胞。
(13)糸状菌が、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、又はアクレモニウム(Acremonium)属に属する微生物である、(11)に記載の宿主細胞。
(14)糸状菌が、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma
viride)である、(13)に記載の宿主細胞。
(15)(10)〜(14)のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養する工程、及び前記培養によって得られる宿主細胞又はその培養物から(1)〜(6)のいずれか一項に記載のタンパク質を採取する工程を含む、タンパク質の製造方法。
(16)(15)に記載の方法で生産されたタンパク質。
(17)(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質を含む、セルラーゼ調製物。
(18)(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、又は(17)に記載のセルラーゼ調製物を含む、洗剤組成物。
(19)セルロース含有繊維の処理方法であって、セルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(20)セルロース含有繊維が毛羽立ち始める速度を低減させるか又はセルロース含有繊維の毛羽立ちを低減する方法であって、セルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(21)セルロース含有繊維の肌触り及び外観の改善を目的として減量加工する方法であって、セルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(22)着色されたセルロース含有繊維の色を澄明化する方法であって、着色されたセルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(23)着色されたセルロース含有繊維の色の局所的な変化を提供する方法であって、着色されたセルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(24)セルロース含有繊維がごわつき始める速度を低減させるか又はセルロース含有繊維のごわつきを低減する方法であって、セルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、(17)に記載のセルラーゼ調製物、又は(18)に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
(25)繊維の処理がその繊維の浸漬、洗濯、又はすすぎを通じて行われる、(19)〜(24)のいずれか一項に記載の方法。
(26)古紙を脱インキ薬品により処理して脱インキを行う工程において、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、又は(17)に記載のセルラーゼ調製物を用いることを特徴とする、古紙の脱インキ方法。
(27)紙パルプのろ水性の改善方法であって、紙パルプを、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、又は(17)に記載のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む、方法。
(28)動物飼料の消化能を改善する方法であって、セルロース含有繊維を、(1)〜(6)及び(16)のいずれか一項に記載のタンパク質、又は(17)に記載のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む、方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のタンパク質、特にはエンドグルカナーゼSTCE1は、セルロース含有繊維の色の澄明化、毛羽立ちの低減、肌触り及び外観の改善、色の局所的変化、ごわつきの低減などを目的とした洗剤用、並びに繊維加工用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
エンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質
本明細書において「エンドグルカナーゼ」とは、エンドグルカナーゼ活性を有する酵素、すなわちエンド−1,4−β−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)を意味し、前記酵素は、β−1,4−グルカンのβ−1,4−グルコピラノシル結合を加水分解する。また、本明細書の「エンドグルカナーゼ活性」とは、CMCアーゼ活性を意味する。更に、「CMCアーゼ活性」とは、カルボキシメチルセルロース(CMC、東京化成工業株式会社製)を加水分解する活性を意味し、被験タンパク質とCMC溶液を一定時間インキュベーションした後に遊離してくる還元糖量を測定して、1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量を1単位と定義する。
【0022】
エンドグルカナーゼ活性は、例えば、次のような手順により測定することができる。まず、被験タンパク質を含む溶液0.5mLを、2%のCMCを溶解させた50mmol/L酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)0.5mLに添加し、50℃で30分間インキュベーションする。次いで、得られる反応液の生成還元糖濃度を、3,5−ジニトロサリチル酸法(DNS法)で定量する。すなわち、反応30分後の反応液1.0mL中にDNS試薬3.0mLを添加し、沸騰水浴中で5分間インキュベーションした後、蒸留水8.0mLで希釈し、540nmの吸光度を測定する。段階的に希釈したグルコース溶液を用いて検量線を作成し、酵素反応液中の生成還元糖量をグルコース換算で決定する。1分間に1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量を1単位として活性を算出する。なお、DNS試薬は文献(例えば、「生物化学実験法1−還元糖の定量法」、p.19〜20、福井作蔵著、学会出版センター)の記載に従って調製することができるが、例えば、次のような手順で調製することができる。まず、4.5%水酸化ナトリウム水溶液300mLに、1%3,5−ジニトロサリチル酸溶液880mL、及びロッセル塩255gを添加する(溶液A)。別に、1.0%水酸化ナトリウム水溶液22mLに結晶フェノール10gを加え、更に水を加えて溶解して100mLとする(溶液B)。溶液B69mLに炭酸水素ナトリウム6.9gを加えて溶解させ、溶液Aを注いでロッセル塩が十分に溶解するまで攪拌混合し、2日間放置した後に濾過する。
【0023】
本発明によるタンパク質は、糸状菌類、具体的には、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物、好ましくは、スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)、より好ましくはスタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum
coccosporum)IFO 31817株から取得することができる。また、これらはその変異株であってもよい。
【0024】
更に、本発明によるタンパク質は、典型的には、そのN末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有する。N末端のアミノ酸配列は、例えば後述の実施例2で示した方法により決定することができる。
【0025】
本発明によれば、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属由来の、下記の特性を有するタンパク質が提供される:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)SDS−PAGEにより測定した平均分子量が49kDである。
【0026】
更に、下記の特性を有するタンパク質が提供される:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)SDS−PAGEにより測定した平均分子量が45kDである。
ここで、SDS−PAGEによる平均分子量は、実施例1に示した方法によって決定することができる。
【0027】
本発明の別の態様では、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、並びにその改変タンパク質又はその相同タンパク質が提供される。
【0028】
「配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質」には、例えば、配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質、配列番号3で表わされるアミノ酸配列にシグナルペプチドが付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質、並びに配列番号3で表されるアミノ酸配列のN末端及び/又はC末端に、適当なマーカー配列が付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質が含まれる。
シグナルペプチドは、例えば、配列番号2で表わされる塩基配列において、1〜3位のATGで始まり、61〜63位で終了するヌクレオチド配列からコードされる21アミノ酸残基からなるアミノ酸配列(配列番号33)である。前記マーカー配列としては、例えば、ポリペプチドの発現の確認、細胞内局在の確認、あるいは、精製などを容易に行なうための配列を用いることができ、例えば、FLAGタグ、ヘキサ−ヒスチジン・タグ、ヘマグルチニン・タグ、又はmycエピトープなどを用いることができる。
【0029】
本発明における「改変タンパク質」とは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1個又は複数個(好ましくは、1又は数個)のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質である。ここで、「欠失、置換、挿入、又は付加」などの改変に係るアミノ酸の数は、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜10個、更に好ましくは1〜6個である。また、改変を行うアミノ酸は、エンドクルカナーゼ活性を維持又は向上させることができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、触媒領域、リンカー領域、又はセルロース結合領域に含まれるアミノ酸を改変することができる。
【0030】
更に、改変タンパク質には、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸残基が、保存的置換されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質を包含する。ここで、「保存的置換」とは、タンパク質の活性を実質的に改変しないように1個又は複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。
このような保存的置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体的には、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0031】
本発明における「相同タンパク質」とは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と少なくとも85%、好ましくは90%、最も好ましくは95%以上の相同性(配列同一性)を有するアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質である。ここで示した相同性の数値は、当業者に公知の相同性検索プログラムであるFASTA3〔Science,227,1435−1441(1985);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,2444−2448(1988);http://www.ddbj.nig.ac.jp/E−mail/homology−j.html〕においてデフォルト(初期設定)のパラメータを用いて算出される数値(同一性;identity)を示す。
【0032】
本発明のタンパク質の具体例として、エンドグルカナーゼSTCE1又はエンドグルカナーゼSTCE3が挙げられる。本発明では、これらを総称して、「エンドグルカナーゼSTCE」とする。
【0033】
本発明のエンドグルカナーゼSTCEは、後述の実施例2に示すように、ファミリー45に属するエンドグルカナーゼである。ファミリー45に属する公知のエンドグルカナーゼとしては、例えば、フミコーラ属由来のエンドグルカナーゼNCE4(国際公開第98/03640号パンフレット)若しくはNCE5(国際公開第01/90375号パンフレット)、又はリゾプス(Rhizopus)属由来のエンドグルカナーゼRCEI(国際公開第00/24879号パンフレット)を挙げることができる。
【0034】
図1及び図2に、本発明のエンドグルカナーゼSTCE1のアミノ酸配列[シグナルペプチド(配列番号33)及び成熟タンパク質(配列番号3)]と、ファミリー45に属する公知のエンドグルカナーゼであるNCE4[シグナルペプチド(配列番号34)及び成熟タンパク質(配列番号35)]及びNCE5[シグナルペプチド(配列番号36)及び成熟タンパク質(配列番号37)]の各アミノ酸配列とを比較した結果を示す。
図1は前半部(N末端側)の結果を示し、図2は後半部(C末端側)の結果を示す。図1及び図2において、記号「*」は、STCE1と共通するアミノ酸であることを示す。
【0035】
図1及び図2に示すとおり、ファミリー45に属するエンドグルカナーゼは、共通するドメインとして触媒領域(catalytic domain)(1番〜207番)を有し、場合により、更に、リンカー領域(Linker)(208番〜258番)及び/又はセルロース結合領域(cellulose−binding domain;CBD)(259番〜295番)を有することがある。なお、各ドメインの後の括弧内に示す番号は、エンドグルカナーゼSTCE1のアミノ酸配列(配列番号3)におけるアミノ酸番号である。
【0036】
前記各領域の内、触媒領域及びセルロース結合領域では、各エンドグルカナーゼ間で多くの保存アミノ酸が認められるのに対して、リンカー領域では顕著な保存領域は認められない。保存アミノ酸を多く含む領域(例えば、触媒領域又はセルロース結合領域、特には触媒領域)、あるいは、その領域に含まれる共通アミノ酸は、本発明のエンドグルカナーゼ(例えば、STCE1)の酵素活性に重要な領域又はアミノ酸と考えられるため、それ以外の領域又はアミノ酸においてアミノ酸改変(例えば、欠失、置換、挿入、及び/又は付加、特には保存的置換)を行うことにより、その酵素活性を維持した改変タンパク質又は相同タンパク質を、過度の実験を必要とすることなく、高い確率で取得することができる。
【0037】
また、保存アミノ酸を多く含む領域であっても、各エンドグルカナーゼ間で非共通のアミノ酸は、別のアミノ酸(好ましくは、保存的置換可能な類似アミノ酸)に改変してもその酵素活性を維持する可能性が高く、このようなアミノ酸改変を行うことによっても、その酵素活性を維持した改変タンパク質又は相同タンパク質を、過度の実験を必要とすることなく、高い確率で取得することができる。
なお、保存アミノ酸を多く含む領域における共通アミノ酸であっても、別のアミノ酸に改変してもその酵素活性が維持されることがあり、特に保存的置換可能な類似アミノ酸に改変した場合、その可能性は高くなる。本発明の改変タンパク質又は相同タンパク質には、エンドグルカナーゼ活性を有する(すなわち、改変前のエンドグルカナーゼ活性が維持又は向上される)限り、任意の領域、例えば、触媒領域、リンカー領域、又はセルロース結合領域に含まれるアミノ酸を改変したタンパク質が含まれる。
【0038】
本発明のタンパク質は、例えば実施例1に記載のように微生物から単離、精製することにより得ることができる。また、後述のように遺伝子組換え技術により本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを適当な宿主において発現させ、生産されたタンパク質を単離、精製することによっても得ることができる。
【0039】
エンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明によれば、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、その改変タンパク質、及び相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。タンパク質のアミノ酸配列が与えられれば、それをコードする塩基配列は容易に定まり、よって、本発明のタンパク質をコードする種々の塩基配列を選択することができる。なお、本明細書において、用語「ポリヌクレオチド」には、DNA及びRNAの両方が含まれ、DNAが好ましい。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、典型的には、下記からなる群より選択されるものである:
(i)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列を含むポリヌクレオチド、
(ii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列において、1個又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0041】
配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列において、欠失、置換、挿入、又は付加されてもよい塩基の数は、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜18個、更に好ましくは1〜9個である。
【0042】
ここで、前記(iii)における「ストリンジェントな条件下」とは、配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列を含むプローブと、相同タンパク質をコードするポリヌクレオチドとがハイブリダイズする一方で、このプローブが、エンドグルカナーゼNCE5遺伝子(国際公開第01/90375号パンフレット)とはハイブリダイズしない程度に制御された条件を意味する。
【0043】
より具体的には、例えば、プローブとして標識化したエンドグルカナーゼSTCE1のアミノ酸配列をコードする塩基配列の全長を有するものを用い、ECLダイレクトDNA/RNAラベリング検出システム(アマシャム社製)の添付の操作方法に従って、42℃で1時間のプレハイブリダイゼーションの後、前記プローブを添加し、42℃で15時間のハイブリダイゼーションを行った後、0.4%SDS及び6mol/L尿素添加0.4倍以下の濃度のSSC(1倍濃度のSSC;15mmol/Lクエン酸三ナトリウム、150mmol/L塩化ナトリウム)で42℃にて20分間の洗浄を2回繰り返し、次に5倍濃度のSSCで室温にて10分間の洗浄を2回行うような条件が挙げられる。
【0044】
本発明によるポリヌクレオチドは、天然由来のものであっても、全合成したものであってもよく、また、天然由来のものの一部を利用して合成を行ったものであってもよい。本発明によるポリヌクレオチドの典型的な取得方法としては、スタフィロトリクム・ココスポラムのゲノミックライブラリーから、遺伝子工学の分野で慣用されている方法、例えば、部分アミノ酸配列の情報を基にして作製した適当なDNAプローブを用いて、スクリーニングを行う方法などが挙げられる。
【0045】
本発明による、エンドグルカナーゼSTCE1のアミノ酸配列をコードする、典型的塩基配列は、配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列を有するものである。配列番号2で表わされる塩基配列は、1〜3位のATGで始まり、949〜951位のTAAで終了するオープンリーディングフレームを有する。また、64〜66のヌクレオチド配列は、295アミノ酸残基からなるエンドグルカナーゼSTCE1の成熟タンパク質のN末端アミノ酸に対応する。
【0046】
発現ベクター及び形質転換された微生物
本発明においては、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、その改変タンパク質及び相同タンパク質をコードする塩基配列(以下「本発明によるポリヌクレオチド」という)を、宿主微生物内で複製可能で、かつ、その塩基配列がコードするタンパク質を発現可能な状態で含む発現ベクターが提供される。本発現ベクターは、自己複製ベクター、すなわち、染色体外の独立体として存在し、その複製が染色体の複製に依存しない、例えば、プラスミドを基本に構築することができる。また、本発現ベクターは、宿主微生物に導入されたとき、その宿主微生物のゲノム中に組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。本発明によるベクター構築の手順及び方法は、遺伝子工学の分野で慣用されているものを用いることができる。
【0047】
本発明による発現ベクターは、これを実際に宿主微生物に導入して所望の活性を有するタンパク質を発現させるために、前記の本発明によるポリヌクレオチドの他に、その発現を制御する塩基配列や形質転換体を選択するための遺伝子マーカーなどを含んでいるのが望ましい。発現を制御する塩基配列としては、プロモーター、ターミネーター及びシグナルペプチドをコードする塩基配列などがこれに含まれる。プロモーターは宿主微生物において転写活性を示すものであれば特に限定されず、宿主微生物と同種もしくは異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子の発現を制御する塩基配列として得ることができる。また、シグナルペプチドは、宿主微生物において、タンパク質の分泌に寄与するものであれば特に限定されず、宿主微生物と同種もしくは異種のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子から誘導される塩基配列より得ることができる。また、本発明における遺伝子マーカーは、形質転換体の選択の方法に応じて適宜選択されてよいが、例えば薬剤耐性をコードする遺伝子、栄養要求性を相補する遺伝子を利用することができる。
【0048】
更に、本発明によれば、この発現ベクターによって形質転換された微生物が提供される。この宿主−ベクター系は特に限定されず、例えば、大腸菌、放線菌、酵母、糸状菌などを用いた系、及び、それらを用いた他のタンパク質との融合タンパク質発現系などを用いることができる。また、この発現ベクターによる微生物の形質転換も、この分野で慣用されている方法に従い実施することができる。
【0049】
更に、この形質転換体を適当な培地で培養し、その宿主細胞又は培養物から前記の本発明によるタンパク質を単離して得ることができる。従って、本発明の別の態様によれば、前記の本発明による新規タンパク質の製造方法が提供される。形質転換体の培養及びその条件は、使用する微生物についてのそれと本質的に同等であってよい。また、形質転換体を培養した後、目的のタンパク質を回収する方法は、この分野で慣用されているものを用いることができる。
【0050】
また、本発明における好ましい態様によれば、本発明によるポリヌクレオチドの塩基配列によってコードされる、エンドグルカナーゼを発現させ得る酵母細胞が提供される。本発明における酵母細胞としては、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、又はピキア(Pichia)属に属する微生物、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
【0051】
また、本発明における新規タンパク質の最も好適な製造方法として、不完全菌類に属する糸状菌における発現方法が提供される。本発明における好適な宿主糸状菌として、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属又はアクレモニウム(Acremonium)属に属するものが挙げられるが、より好ましくは、フミコーラ(Humicola)属、又はトリコデルマ(Trichoderma)属が挙げられる。より具体的には、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコーラ・サーモイデア(Humicola
thermoidea)、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ・レーセイ(Trichoderma
reesei)、トリコデルマ・ロンジブラシアトウム(Trichoderma longibrachiatum)、スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum
coccosporum)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus
oryzae)、フザリウム・オキシスポーラム(Fusarium oxysporum)、又はアクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium
cellulolyticus)が挙げられるが、更により好ましくは、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma
viride)が挙げられる。
【0052】
セルラーゼの用途/セルラーゼ調製物
本発明は、本発明のタンパク質(例えば、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質、又はその改変タンパク質若しくは相同タンパク質、あるいは、本発明の宿主細胞を培養することにより得られるタンパク質)を含むセルラーゼ調製物にも関する。
【0053】
一般に、セルラーゼ調製物とは、セルラーゼ酵素の他に、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、塩化ナトリウム、ソルビトールなど)、防腐剤、及び/又は非イオン系界面活性剤などを含有させることができる。また、セルラーゼ調製物の形態は、固形状であっても液体状であってもよく、具体的には、粉剤、粒剤、顆粒剤、非粉塵化顆粒、又は液体製剤が挙げられる。本発明のセルラーゼ調製物には、本発明のタンパク質に加えて、他のセルラーゼ酵素、例えば、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼ、及び/又は本発明のエンドグルカナーゼ以外のエンドグルカナーゼを含めてもよい。
【0054】
セルラーゼ調製物の1種である非粉塵化顆粒(好ましくは、飛散性のない顆粒状)は、通常の乾式造粒法を用いて製造することが可能である。すなわち、粉末状態の本発明のタンパク質を、中性でエンドグルカナーゼ活性に影響を及ぼさない無機塩(例えば、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム)、エンドグルカナーゼ活性に影響を及ぼさない鉱物(例えば、ベントナイト、モンモリナイト)、及び中性の有機物(例えば、澱粉又は粒状セルロースなど)などから選ばれる1種又は複数種に混合した後、非イオン界面活性剤の1種又は複数種の粉末、あるいは微細に懸濁された懸濁液を加え、充分に混合又は混練する。状況に応じ、固形物を結着させる合成高分子(例えば、ポリエチレングリコールなど)又は天然高分子(例えば、スターチなど)を適宜添加し、更に混練した後、ディスクペレッターなどの押し出し成形造粒を行い、成形物をマルメライザーにより球状に成形後、乾燥させることで非粉塵化顆粒を製造することが可能である。非イオン界面活性剤の1種又は複数の添加量は特に限定されないが、本発明のセルラーゼ調製物の全体に対して、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%とする。また、顆粒表面をポリマーなどでコーティングすることにより、酸素透過や水分透過をコントロールすることも可能である。
【0055】
一方、セルラーゼ調製物の1種である液状製剤(好ましくは、安定化された液体状)は、本発明のタンパク質を含む溶液に、エンドグルカナーゼの安定化剤(例えば、合成高分子、天然高分子など)を配合し、必要に応じて無機塩類及び/又は合成防腐剤を添加して調製することが可能である。このとき、非イオン界面活性剤の1種又は複数種を配合することも可能である。非イオン界面活性剤の1種又は複数種の添加量は特に限定されないが、本発明のセルラーゼ調製物の全体に対して、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは1〜10重量%とする。
【0056】
更に、本発明は、本発明のタンパク質又は本発明のセルラーゼ調製物を含む洗剤組成物を提供する。本発明の洗剤組成物は、界面活性剤(アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両性又は双性イオン性あるいはそれらの混合物であり得る)をも含有し得る。また、本発明の洗剤組成物は、当分野で既知の他の洗剤成分、例えば、ビルダー、漂白剤、漂白活性剤、腐食防止剤、金属イオン封鎖剤、汚れ解離ポリマー、香料、他の酵素(例えばプロテアーゼ、リパーゼ、アミラ−ゼなど)、酵素安定剤、製剤化補助剤、蛍光増白剤、及び/又は発泡促進剤などをも含有し得る。代表的なアニオン性界面活性剤は、直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、アルファーオレフィンスルホン酸塩(AOS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、α−スルホ脂肪酸エステル塩(α−SFMe)、及び天然脂肪酸のアルカリ金属塩などがある。ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、アルキルポリエチレングリコールエーテル、ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、スクロース、及びグルコースの脂肪酸エステル、並びにアルキルグルコシド、ポリエトキシル化アルキルグルコシドのエステルなどがある。
【0057】
本発明のセルロース含有繊維の処理方法は、本発明のタンパク質、本発明のセルラーゼ調製物、又は本発明の洗剤組成物を、セルロース含有繊維と接触させることにより行う。本発明の繊維処理方法により改善されうる、セルロース含有繊維の性質としては、以下のものが含まれる。
(1)毛羽の除去(毛羽立ち始める速度の低減、毛羽立ちの低減)
(2)減量による繊維の肌触り及び外観の改善
(3)着色セルロース含有繊維の色の澄明化
(4)着色セルロース含有繊維の色の局所的な変化の付与、すなわち、着色セルロース含有繊維、代表的にはジーンズへのストーンウォッシュ様の外観及び風合いの付与
(5)柔軟化(ごわつき始める速度の低減、ごわつきの低減)
本発明の繊維処理方法は、具体的には、繊維が浸漬されているか又は浸漬されうる水に、本発明のタンパク質、本発明のセルラーゼ調製物、又は本発明の洗剤組成物を添加することにより行うことができ、例えば、繊維の浸漬工程、洗濯工程、又はすすぎ工程で行うことができる。
【0058】
接触温度、又は本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、若しくは洗剤組成物の添加量などの条件は、他の種々の条件を勘案して適宜決定されてよいが、例えば、セルロース含有繊維の毛羽立ち始める速度を低減するか又はセルロース含有繊維の毛羽立ちを低減する場合、10〜60℃程度の温度で、0.01〜20mg/Lのタンパク質濃度の本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、又は洗剤組成物を使用することが好ましい。
【0059】
更に、セルロース含有繊維の肌触り及び外観の改善を目的とした減量加工の場合、10〜60℃程度の温度で、0.1〜50mg/Lのタンパク質濃度の本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、又は洗剤組成物を使用することが好ましい。
【0060】
また、着色されたセルロース含有繊維の色を澄明化することを目的とした場合、10〜60℃程度の温度で、0.01〜20mg/Lのタンパク質濃度の本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、又は洗剤組成物を使用することが好ましい。
【0061】
また、着色されたセルロース含有繊維の色の局所的な変化を提供するために用いる場合、20〜60℃程度の温度で、0.1〜100mg/Lのタンパク質濃度の本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、又は洗剤組成物を使用することが好ましい。
【0062】
また、上記の方法は、セルロース含有繊維がごわつき始める速度を低減するか又はセルロース含有繊維のごわつきを低減させる場合、10〜60℃程度の温度で、0.01〜20mg/Lのタンパク質濃度の本発明のタンパク質、セルラーゼ調製物、又は洗剤組成物を使用することが好ましい。
【0063】
更に、本発明は、古紙を脱インキ薬品により処理して脱インキを行う工程において、本発明のタンパク質又は本発明のセルラーゼ調製物を用いることを特徴とする古紙の脱インキ方法に関する。
【0064】
本発明のタンパク質又はセルラーゼ調製物は、古紙に作用させると脱インキの効率を向上させるため、古紙から再生紙を製造する過程において有用である。上記脱インキ方法によれば、残インキ繊維が大幅に減少するため、古紙の白色度を向上させることができる。
【0065】
上記脱インキ薬品は、一般に古紙の脱インキに用いられる薬品であればよく、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ、硅酸ソーダ、過酸化水素、燐酸塩、アニオン系の界面活性剤、ノニオン系の界面活性剤、又はオレイン酸などの補集材などが挙げられ、助剤として、pH安定剤、キレート剤、又は分散剤などが挙げられる。
【0066】
上記脱インキ方法を適用し得る古紙は、一般に古紙と呼ばれるものであればよく、特に限定されないが、例えば、機械パルプ及び化学パルプを配合した新聞古紙、雑誌古紙、下級〜中級印刷古紙、化学パルプよりなる上質古紙、これらの塗工紙などの印刷古紙が挙げられる。更に、一般に古紙と呼ばれるもの以外であっても、インクの付着している紙であれば、上記脱インキ方法を適用することができる。
【0067】
更に、本発明は、紙パルプのろ水性の改善方法に関し、前記方法は、紙パルプを、本発明のタンパク質又は本発明のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む。
【0068】
前記方法によれば、紙パルプのろ水性が、強度の著しい低下を伴うことなく、有意に改善されるものと考えられる。前記方法を適用し得るパルプは特に限定されないが、例えば、古紙パルプ、再循環板紙パルプ、クラフトパルプ、亜硫酸パルプ、加工熱処理その他の高収率パルプなどが挙げられる。
【0069】
更に、本発明は、動物飼料の消化能を改善する方法に関し、動物飼料を、本発明のタンパク質又は本発明のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む。
【0070】
前記方法によれば、動物飼料中のグルカンが適度に低分子化されるため、動物飼料の消化能を改善することができる。
【0071】
更に、本発明によるタンパク質を動物飼料中で用いることにより、飼料中のグルカンの消化能を改善することができる。従って、本発明によれば、動物飼料の消化能を改善する方法であって、本発明のタンパク質又はセルラーゼ調製物で動物飼料を処理する工程を含む方法が提供される。
【0072】
微生物の寄託
本発明によるエンドグルカナーゼSTCEの由来であるスタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)IFO 31817株は、1985年に財団法人 醗酵研究所に国内寄託されたものであり、国内受託番号は、IFO 31817である。また、2004年(平成16年)9月28日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託され、国際受託番号はFERM BP−10135である。更に、IFO 31817株は現在、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8かずさアカデミアパーク内)にNBRC 31817として受託されている。同菌株が第三者に公開され、分譲可能な状態にあることは、同本部から交付された証明書[平成15年(2003年)11月19日付]によって明らかとなっている。
【0073】
プラスミドpUC118のBamHI部位にSTCE1遺伝子を挿入したプラスミドpUC118−STCEexで形質転換された本発明の大腸菌(Esherichia coli)DH5α/pUC118−STCEex株は、2003年(平成15年)12月1日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国内寄託(原寄託)されたものであり、2004年(平成16年)9月15日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−10127[FERM P−19602]である。
【0074】
本発明の発現ベクターの宿主となりうるフミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)MN200−1株は、1996年(平成8年)7月15日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国内寄託(原寄託)されたものであり、1997年(平成9年)6月13日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−5977[FERM P−15736]である。
【0075】
本発明の発現ベクターの宿主となりうるトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)MC300−1株は、1996年(平成8年)9月9日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国内寄託(原寄託)されたものであり、1997年(平成9年)8月11日から国際寄託に移管されている。国際受託番号(国際受託番号に続く[]内は国内受託番号)は、FERM BP−6047[FERM P−15842]である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例をもって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
《実施例1:スタフィロトリクム・ココスポラムからの脱脂綿フィブリル遊離活性を有する成分の単離精製》
スタフィロトリクム・ココスポラム IFO 31817株を、(T)培地(2.0%アビセル、2.0%酵母エキス、2.0%コーンスチープリカー、1.0%グルコース、0.2%リン酸一カリウム)中、28℃で振とう培養した。10日間培養の後、菌体を除去した培養上清液を粗精製セルラーゼ調製液とした。
この粗精製セルラーゼ調製液を最終濃度1.5mol/Lの硫酸アンモニウムの溶液になるように調製した後、1.5mol/L硫酸アンモニウム液で平衡化させたHiTrapTMPhenylHPカラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライし、脱イオン水中、硫酸アンモニウム濃度が1.5mol/L、0.9mol/L、0.75mol/L、0.6mol/L、0.15mol/L、0mol/Lのステップワイズ溶離法により溶出して、分画した。このうち硫酸アンモニウム濃度が0.75mol/Lと0mol/Lのときに溶出した画分に脱脂綿フィブリル遊離活性が強く認められた。
【0078】
次に、硫酸アンモニウム0mol/L溶出画分をウルトラフリー/Biomax−5K(ミリポア社製)を用いて脱塩した後、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)となるよう調整し、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)で平衡化させたMonoS 5/5HRカラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライした。そして、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)から50mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)中1mol/L塩化ナトリウムに対して、リニアグラジェント溶離法で溶出し、分画した。その結果、塩化ナトリウム濃度が約0.05mol/Lのときに得られた画分に脱脂綿フィブリル遊離活性が強く認められた。この画分をSTCE1として単離した。
【0079】
また、硫酸アンモニウム0.75mol/L溶出画分も同様にウルトラフリー/Biomax−5K(ミリポア社製)を用いて脱塩した後、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)となるよう調整し、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)で平衡化させたMonoS 5/5HRカラム(アマシャムバイオサイエンス社製)にアプライした。そして、50mmol/L酢酸緩衝液(pH4.0)から50mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)中1mol/L塩化ナトリウムに対して、リニアグラジェント溶離法で溶出し、分画した。その結果、塩化ナトリウム濃度が約0.05mol/Lのときに得られた画分に脱脂綿フィブリル遊離活性が強く認められた。この画分をSTCE3として単離した。これらSTCE1画分、STCE3画分は、前記カラムによる分画精製操作を何回も繰り返すことによって、大量の精製サンプルを取得した。
【0080】
このSTCE1画分及びSTCE3画分はSDS−PAGEにおいて各々単一なバンドを示し、その平均分子量(MW)は順に約49kD及び約45kDであった。SDS−PAGEは、セイフティーセルミニSTC−808電気泳動槽(テフコ社製)及びプリキャストミニゲル 10%−SDS−PAGEmini、1.0mmゲル厚(テフコ社製)を使用し、泳動及び染色は製品取扱い説明書の方法に従った。分子量マーカーはプレシジョンプロテインスタンダード(バイオラッドラボラトリーズ社製)を使用した。また、STCE1画分及びSTCE3画分はいずれもCMCアーゼ活性を有していた。
【0081】
脱脂綿フィブリル遊離活性はNeena Dinらによる方法(Neena Din et al.,“Biotechnology”,9(1991),p.1096−1099)を改良した方法で行った。すなわち、洗濯堅牢度試験機を用いて以下の条件で反応させた場合の脱脂綿から遊離される毛羽の量を600nm吸光度にて測定した。
試験機械:洗濯堅牢度試験機L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度 :40℃
時間 :120分
反応pH:pH7(50mmol/Lリン酸緩衝液)
処理液には、分画液とともにステンレスビーズと脱脂綿を適当量加えた。
【0082】
《実施例2:スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)由来エンドグルカナーゼSTCE1及びSTCE3の部分アミノ酸配列の決定》
(1)STCE1及びSTCE3のN末端アミノ酸配列の同定
実施例1において得られたSTCE1画分及びSTCE3画分をSDS−PAGEに供した後、PVDF膜プロブロットTM(アプライドバイオシステムズ社製)に電気的に写し取った。そしてCBB染色液(0.1%クマシーブルーG250、30%メタノール、10%酢酸)で染色した後、脱色し、風乾した。この膜からSTCE1画分及びSTCE3画分に該当する分子量約49kD及び約45kDのタンパク質(STCE1及びSTCE3)がブロットされた部分をそれぞれ切り出し、極少量のメタノールで湿らせ、還元用緩衝液(8mol/Lグアニジン塩酸塩、0.5mol/Lトリス、0.3%EDTA−2ナトリウム、5%アセトニトリル)でこの膜片を軽く洗浄し、それぞれの膜片をマイクロチューブ中で100μL程度の還元用緩衝液に浸漬した。そこに1mgのジチオスレイトールを添加し、窒素封入して密閉し、1時間以上静置した。更に4−ビニルピリジン(アルドリッチ社製)1.5μLを加え、遮光し、時々撹拌しながら20分以上置いてタンパク質のシステイン残基のピリジルエチル化を行った。その後、蒸留水、2%アセトニトリル水の順でSTCE1、STCE3の膜片を洗浄し、プロテインシークエンサーProcise491(アプライドバイオシステムズ社製)に供し、それぞれN末端アミノ酸配列を25残基決定した。STCE1、STCE3のN末端25残基のアミノ酸配列は同じであり、得られた配列は以下の通りであった。
STCE1及びSTCE3のN末端アミノ酸配列:Ala-Asp-Gly-Lys-Ser-Thr-Arg-Tyr-Trp-Asp-Cys-Cys-Lys-Pro-Ser-Cys-Ser-Trp-Pro-Gly-Lys-Ala-Ser-Val-Asn(25残基)(配列番号1)
【0083】
(2)STCE1及びSTCE3の内部アミノ酸の同定
実施例1において得られたSTCE1及びSTCE3をウルトラフリー/Biomax−5K(ミリポア社製)を用いて脱塩し、凍結乾燥した。凍結乾燥したSTCE1及びSTCE3約40μgを1.5mL容量のマイクロチューブに入れ、500μLの還元用緩衝液を添加して溶解した。そこに1.4mgのジチオスレイトールを添加し、窒素封入して密閉し、5時間静置した。更にモノヨード酢酸2.7mgを添加し、遮光して30分静置してタンパク質のシステイン残基のカルボキシメチル化を行った。その後、ウルトラフリー/Biomax−5K(ミリポア社製)を用いて脱塩濃縮した。この還元カルボキシメチル化したSTCE1及びSTCE3それぞれ約10μgに対し、約1/100モル量のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬社製)を添加し、50mmol/Lトリス緩衝液(pH9.0)50μL中で、37℃で72時間反応させた。この消化液を173Aマイクロブロッターシステム(アプライドバイオシステムズ社製)に供したところ、STCE1、STCE3それぞれ7種のペプチドが分離され、PVDF[poly(vinylidene difluoride)]膜にブロットされた。得られたペプチド断片のアミノ酸配列を前述のプロテインシークエンサーにより決定した。
【0084】
その結果、STCE1の内部アミノ酸配列は以下に示される通りであった。
LE-1:Pro-Ser-Cys-Ser-Trp-Pro-Gly-Lys(8残基)(配列番号4)
LE-2:Ser-Thr-Arg-Tyr-Trp-Asp-Cys-Cys-Lys(9残基)(配列番号5)
LE-3:Asn-Ala-Asp-Asn-Pro-Thr-Phe-Thr-Phe-Arg(10残基)(配列番号6)
LE-4:Ala-Ser-Val-Asn-Gln-Pro-Val-Phe-Ala-Cys(10残基)(配列番号7)
LE-5:Pro-Gly-Cys-Tyr-Trp-Arg-Phe(7残基)(配列番号8)
LE-6:Thr-Met-Val-Val-Gln-Ser-Thr(7残基)(配列番号9)
LE-7:Gln-Asn-Asp-Trp-Tyr-Ser-Gln-Cys-Leu(9残基)(配列番号10)
これらN末端アミノ酸配列及びペプチドマッピングによって得られた内部アミノ酸配列の相同性検索から、STCE1はファミリー45に属する新規なエンドグルカナーゼであることが示唆された。
【0085】
一方、STCE3の内部アミノ酸配列は以下に示される通りであった。
LE-8:Pro-Ser-Cys-Ser-Trp-Pro-Gly-Lys(8残基)(配列番号11)
LE-9:Ser-Thr-Arg-Tyr-Trp-Asp-Cys-Cys-Lys(9残基)(配列番号12)
LE-10:Asn-Ala-Asp-Asn-Pro-Thr-Phe-Thr-Phe-Arg(10残基)(配列番号13)
LE-11:Ala-Ser-Val-Asn-Gln-Pro-Val-Phe-Ala-Cys-Ser-Ala-Asn-Phe-Gln-Arg(16残基)(配列番号14)
LE-12:Ser-Gly-Cys-Asp-Gly-Gly-Ser-Ala-Tyr-Ala-Cys-Ala-Asp-Gln-Thr-Pro-Trp-Ala-Val-Asn-Asp-Asn(22残基)(配列番号15)
LE-13:Pro-Gly-Cys-Tyr-Trp-Arg-Phe-Asp-Trp-Phe-Lys(11残基)(配列番号16)
LE-14:Thr-Met-Val-Val-Gln-Ser-Thr-Ser-Thr-Gly-Gly-Asp-Leu-Gly-Thr-Asn(16残基)(配列番号17)
これらN末端アミノ酸配列及びペプチドマッピングによって得られた内部アミノ酸配列の相同性検索から、STCE3もファミリー45に属するエンドグルカナーゼであると思われた。しかしながら、STCE1とSTCE3の対応する内部アミノ酸配列が完全に一致したため、STCE3はSTCE1から生じた部分分解物である可能性が示唆された。
【0086】
《実施例3:精製エンドグルカナーゼSTCE1によるセルロース含有繊維の毛羽除去活性の評価》
実施例1で得られた粗精製セルラーゼ調製液と、精製エンドグルカナーゼSTCE1を用いて、綿ニット生地に対する毛羽除去活性を以下のように評価した。
予め染色された青色綿ニットの生地を界面活性剤及びゴムボールとともに大型ワッシャー中で毛羽立たせた。その後、この毛羽立たせた青色綿ニット生地を下記の条件で毛羽除去処理を行うことにより、形成された毛羽が目視評価でほぼ50%除去されるのに要する粗精製セルラーゼ調製液と、精製エンドグルカナーゼSTCE1のタンパク質濃度を算出した。
試験機械:洗濯堅牢度試験機 L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度:40℃
時間:60分
処理液量:40mL
反応pH:pH6(5mmol/Lリン酸緩衝液)
処理液には、エンドグルカナーゼ溶液とともにゴムボールを適当量加えた。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第1表に示した。
【0087】
【表1】

【0088】
《実施例4:精製エンドグルカナーゼSTCE1によるインデイゴ染めセルロース含有繊維の脱色活性の評価》
実施例1で得られた粗精製セルラーゼ調製液と、精製エンドグルカナーゼSTCE1を用いて、糊抜きした12オンスのブルージーンズパンツを下記の条件で脱色処理した。
試験機械:20kgワッシャー(三洋電機株式会社製 全自動洗濯機 SCW5101)
温度:55℃
時間:60分
反応pH:pH6.2(6.7mmol/Lリン酸緩衝液)
処理液量:15L
処理液には、エンドグルカナーゼ溶液とともにゴムボールを適当量加えた。
脱色度を分光測色計(ミノルタ社製、CM−525i)を用い、Lab表示系のL値(明度)を測定した。コントロール(未処理繊維)に対するL値の増加(白色度の増加)=ΔL値を求め、このΔL値により脱色の度合いを評価した。すなわち、各試験区につき10点のΔL値を測定し(n=10)、その平均値を算出した。そして、ΔL値=5となるのに必要な粗精製セルラーゼ調製液と、精製エンドグルカナーゼSTCE1のタンパク質濃度を算出した。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第2表に示した。
【0089】
【表2】

【0090】
《実施例5:洗剤として配合した場合の精製エンドグルカナーゼSTCE1、NCE4、NCE5、及びRCEIの毛羽除去活性(澄明化活性)の比較評価》
実施例1で得られた精製エンドグルカナーゼSTCE1、フミコーラ・インソレンス培養液から得られた精製エンドグルカナーゼNCE4(国際公開第98/03640号パンフレット)、フミコーラ・インソレンス培養液から得られた精製エンドグルカナーゼNCE5(国際公開第01/90375号パンフレット)、フミコーラ・インソレンスにおいて大量発現させたものから単一に精製されたエンドグルカナーゼRCEI[セルロース結合領域が欠失したRCEI−H4(25kD)(国際公開第02/42474号パンフレット)]を用いて、欧米の洗剤中における綿ニット生地に対する毛羽除去活性(澄明化活性)を以下のように評価した。
予め染色された青色綿ニットの生地を界面活性剤及びゴムボールとともに大型ワッシャー中で毛羽立たせた。その後、この毛羽立たせた青色綿ニット生地を下記の条件において洗剤中で処理することにより、形成された毛羽が目視で約50%除去されるのに要する、精製エンドグルカナーゼSTCE1、NCE4、NCE5、及びRCEIのタンパク質濃度を算出した。
試験機械:洗濯堅牢度試験機 L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度:40℃
時間:60分
処理液量:40mL
洗剤の種類:NEW Persil(Performance Tablets biological)(LEVER社製:イギリスにて2002年3月に入手したもの。)
洗剤の添加量:0.8%
処理液:人工硬度水(25FH:脱イオン水に80mmol/Lの塩化カルシウム、20mmol/Lの塩化マグネシウムを加えた1000FHの人工硬度水を脱イオン水で希釈して作製。)
処理液には、エンドグルカナーゼ溶液とともにゴムボールを適当量加えた。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第3表に示した。
【0091】
【表3】

【0092】
《実施例6:水道水中の硬度が各種精製エンドグルカナーゼの毛羽除去活性に与える影響》
実施例1で得られた精製エンドグルカナーゼSTCE1、フミコーラ・インソレンス培養液から得られた精製エンドグルカナーゼNCE5(国際公開第01/90375号パンフレット)、フミコーラ・インソレンス培養液から得られた精製エンドグルカナーゼNCE4(国際公開第98/03640号パンフレット)、フミコーラ・インソレンスにおいて大量発現させたものから単一に精製されたエンドグルカナーゼRCEI[セルロース結合領域が欠失したRCEI−H4(25kD)(国際公開第02/42474号パンフレット)]を用いて、人工硬度水中における綿ニット生地に対する毛羽除去活性を以下のように評価した。
予め染色された茶色綿ニットの生地を界面活性剤及びゴムボールとともに大型ワッシャー中で毛羽立たせた。その後、この毛羽立たせた茶色綿ニット生地を、各種硬度(0FH,5FH,10FH,20FH,40FH)の人工硬度水中において、4種の精製エンドグルカナーゼ溶液を用いて、下記の条件下で処理をした。処理後の生地において、形成された毛羽が目視で約50%除去されるのに要する精製エンドグルカナーゼSTCE1、NCE5、NCE4、RCEIのタンパク質濃度を算出し、そのタンパク質濃度の逆数値を毛羽除去活性値とした。そして、0FHの硬度における毛羽除去活性値を100としたときの、各硬度での毛羽除去活性相対値を求めた。
試験機械:洗濯堅牢度試験機 L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度:40℃
時間:60分
処理液量:100mL
反応pH:pH6(5mmol/Lリン酸緩衝液)
処理液:人工硬度水(0FH,5FH,10FH,20FH,40FH:脱イオン水に80mmol/Lの塩化カルシウム、20mmol/Lの塩化マグネシウムを加えた1000FHの人工硬度水を脱イオン水で希釈して作製。)
処理液には、エンドグルカナーゼ溶液とともにゴムボールを適当量加えた。
タンパク質濃度は、プロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第4表に示した。
【0093】
【表4】

【0094】
《実施例7:エンドグルカナーゼSTCE遺伝子のクローニング》
実施例2で明らかにしたSTCE1及びSTCE3の内部及びN末端アミノ酸配列は、同じファミリー45であるフミコーラ・インソレンス由来のエンドグルカナーゼNCE5(国際公開第01/90375号パンフレット)のアミノ酸配列と相同性を有していた。そこで、スタフィロトリクム・ココスポラムのゲノムDNA中のエンドグルカナーゼSTCE遺伝子を検索するために、NCE5遺伝子をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションによる解析を行い、更にその相同性遺伝子を単離した。
【0095】
(1)スタフィロトリクム・ココスポラム由来のゲノムDNAの単離
スタフィロトリクム・ココスポラム IFO 31817株を(T)培地(2.0%アビセル、2.0%酵母エキス、2.0%コーンスチープリカー、1.0%グルコース、0.2%リン酸一カリウム)で28℃、72時間培養し、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体を凍結乾燥し、ブレンダーにて細かく破砕した後、TE(10mmol/Lトリス塩酸(pH8.0)、1mmol/L EDTA)緩衝液8mLに溶解した。これに10%SDSを含むTE緩衝液4mLを加え、60℃、30分間保温した。その後、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール(25:24:1)を12mL加え、激しく振とうした。遠心後、水層を別の容器に移し、これに1mLの5mol/L酢酸カリウムを加え、氷中に1時間以上放置した。遠心後、水層を別の容器に移し、2.5容量のエタノールを加え、DNAを沈殿させた。沈殿物を乾燥させた後、5mLのTE緩衝液に溶解し、10mg/mLのリボヌクレアーゼA(RNase A)溶液を5μL加え、37℃で1時間保温し、更に20mg/mLプロティナーゼK(proteinase K)溶液50μLを加え、37℃で1時間保温した。その後、3mLのポリエチレングリコール溶液(20%PEG6000、2.5mol/L塩化ナトリウム)を加えてDNAを沈殿させた。沈殿物を500μLのTE緩衝液に溶解し、フェノール・クロロホルム・イソアミルアルコール抽出を2回行い、エタノール沈殿をした。沈殿物を70%エタノールで洗浄後、乾燥し、適当量のTE緩衝液に溶解してゲノムDNA試料とした。
【0096】
(2)サザンハイブリダイゼーションによるNCE5相同性遺伝子の検索
実施例7(1)で得られたスタフィロトリクム・ココスポラムのゲノムDNA約10μgを、複数の制限酵素(EcoRI、BamHI、HindIII、XhoI、NcoIなど)で各々切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。これをナイロンメンブラン(ハイボンドN+ナイロントランスファーメンブラン、アマシャム社製)に移しとり、0.4N水酸化ナトリウムでDNAを固定し、5倍濃度SSC(75mmol/Lクエン酸三ナトリウム、750mmol/L塩化ナトリウム)で洗浄し、乾燥させ、DNAを固定した。
プローブは、NCE5遺伝子のcDNAを含むプラスミドpJND−c5(国際公開第01/90375号パンフレット)をBamHIで消化した後、0.8%アガロースゲル電気泳動に供し、約700bpのDNA断片を回収することにより得た。これをECLダイレクトDNA/RNAラベリング検出システム(アマシャム社製)により標識化した。前述キット添付の説明書記載の方法に従って、ゲノムDNAを固定したナイロンメンブランを42℃で1時間のプレハイブリダイゼーションをした後、標識化したNCE5プローブを添加し、42℃で15時間、ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後のナイロンメンブランの洗浄は前述キット添付の説明書記載の方法に従った。まず、0.4%SDS、6mol/L尿素を添加した0.6倍濃度SSC(9mmol/Lクエン酸三ナトリウム、90mmol/L塩化ナトリウム)で42℃、20分間の洗浄を2回繰り返し、次に5倍濃度SSCで室温、5分間の洗浄を2回行った。洗浄処理を施したナイロンメンブランを、添付されている検出溶液に1分間浸したあと、フジメディカルX線フィルム(富士写真フィルム社製)に感光させた。
その結果、EcoRI、BamHI、XhoI、NcoIで切断した場合、それぞれ大きさの異なる2本のバンドにハイブリダイズし、スタフィロトリクム・ココスポラムのゲノムDNA上には、NCE5と相同性を有する2種類の遺伝子が存在することが推察された。ゲノムDNAをEcoRIで切断した場合のハイブリダイゼーションにおいては、約10kbpと約5kbpの2本のバンドが検出された。そこで、約10kbpのバンドとして検出される遺伝子のクローニングを行った。
【0097】
(3)ゲノムDNAライブラリーの作製
スタフィロトリクム・ココスポラムのゲノムDNAをEcoRIにより消化し、SeaKemLEアガロース(FMC社製)を用いた0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。10kbp付近を含むよう、約8〜12kbpの大きさのDNA断片を定法に従って抽出、精製した。このDNA断片をファージベクター、Lambda DASH II ベクター(ストラタジーン社製)に連結した。これをエタノール沈殿後、TE緩衝液に溶解し、この全量をギガパックIIIゴールドパッケージングキット(ストラタジーン社製)を用いて、ラムダヘッドにパッケージし、得られたファージを大腸菌XL1−Blue MRA株に感染させた。この方法により得られた5×10個のファージライブラリーを用いて目的遺伝子のクローニングを行った。
【0098】
(4)プラークハイブリダイゼーションによるNCE5相同遺伝子のスクリーニング
次に、実施例7(3)に従って得られたゲノムDNAライブラリー(EcoRI ライブラリー)をナイロンメンブラン(ハイボンドN+ナイロントランスファーメンブラン、アマシャム社製)に移しとり、0.4N水酸化ナトリウムでDNAを固定し、5倍濃度SSCで洗浄し、乾燥させDNAを固定した。キットの方法に従って、42℃で1時間のプレハイブリダイゼーションの後、実施例7(2)で標識化したNCE5遺伝子のプローブを添加し、42℃で15時間、ハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーション後のナイロンメンブランの洗浄は前述キット添付の説明書の方法に従った。まず、0.4%SDS、6mol/L尿素を添加した0.6倍濃度SSCで42℃、20分間の洗浄を2回繰り返し、次に5倍濃度SSCで室温、5分間の洗浄を2回行った。洗浄処理を施したナイロンメンブランを、添付されている検出溶液に1分間浸したあと、フジメディカルX線フィルム(富士写真フィルム社製)に感光させ、4個のファージクローンを得た。
次に、大腸菌XL1−Blue MRA株にファージを感染させ、18時間後にファージ粒子を集めた。これら粒子を、Grossbergerの方法(Grossberger,D.,“Nucleic Acids.Res.”,15,6737,1987)に準じてプロテイナーゼK及びフェノール処理を行った後、エタノール沈殿により、ファージDNAを分離した。
【0099】
(5)NCE5相同遺伝子のサブクローニング
4種のファージDNAを複数の制限酵素で切断し、0.8%アガロースゲル電気泳動に供した。DNAをSouthernの方法(Southern,E.M.,“J.Mol.Biol.”,98,p.503−517,1975)によりナイロンメンブランに移しとり、実施例7(4)と同様にハイブリダイゼーションを行った。その結果、4種のファージDNAは、複数の制限酵素の切断によっても共通のハイブリダイゼーションのパターンを示した。また、4種のファージDNAをSalIで切断し、実施例7(4)と同様にハイブリダイゼーションを行った場合、共通して約4.4kbpのバンドに強いシグナル、及び約2.5kbpのバンドに弱いシグナルを示した。そのことから、この相同遺伝子はこの約4.4kbpと約2.5kbpのDNAにまたがって存在していると考え、この2つの大きさのDNAを回収し、プラスミドpUC119のSalIサイトにそれぞれサブクローニングを行った。約4.4kbpのDNAをサブクローニングして得られたプラスミドをpSTCE−Sal4.4、約2.5kbpのDNAをサブクローニングして得られたプラスミドをpSTCE−Sal2.5とした。
【0100】
《実施例8:NCE5相同遺伝子の塩基配列の決定》
実施例7(5)にてサブクローニングしたNCE5相同遺伝子の塩基配列解析は以下の様に進めた。
塩基配列解析装置は、A.L.F.DNAシーケンサーII(ファルマシアバイオテク社製)を用いた。シーケンシングゲルは、ハイドロリンクロングレンジャー(FMC社製)として入手可能なアクリルアミド担体を使用した。ゲル作成用各種試薬(N,N,N‘,N’−テトラメチルエチレンジアミン、尿素、及び過硫酸アンモニウム)はA.L.F.グレードの試薬(ファルマシアバイオテク社製)を用いた。塩基配列解読反応は、オートリードシーケンシングキット(ファルマシアバイオテク社製)を用いた。ゲル作製条件、反応条件及び泳動条件の各々は、キットに添付の各説明書を参照し、設定した。
このようにしてプラスミドpSTCE−Sal4.4内の約4.4kbpのDNA断片とプラスミドpSTCE−Sal2.5内の約2.5kbpのDNA断片の塩基配列を常法に従い、決定した。更に、解読された塩基配列をアミノ酸配列に翻訳したところ、一つの読み枠が実施例2で示されたSTCE1のN末端アミノ酸配列、及び内部アミノ酸配列と完全に一致した。これらの結果から、このNCE5相同遺伝子がSTCE1をコードする遺伝子であることが示唆された。従って、以降においてはこのNCE5相同遺伝子をSTCE1遺伝子として記載する。また、このゲノムDNAから翻訳されたSTCE1アミノ酸配列から、STCE1は、N末端側に触媒領域(catalytic domain)、C末端側にセルロース結合領域(cellulose−binding domain)を有するファミリー45に属するエンドグルカナーゼであることが判明した。しかしながら、このDNA配列にはイントロンと考えられる領域が含まれていることが推察されたため、RT(reverse transcriptase)−PCRによるSTCE1遺伝子のcDNAの単離を行うこととした。
【0101】
《実施例9:RT−PCRによるSTCE1遺伝子のcDNAの単離と塩基配列決定》
(1)スタフィロトリクム・ココスポラムからのmRNAの単離
スタフィロトリクム・ココスポラム IFO 31817株を30mLの(T)培地(2.0%アビセル、2.0%酵母エキス、2.0%コーンスチープリカー、1.0%グルコース、0.2%リン酸一カリウム)で28℃、72時間培養し、遠心分離によって菌体を回収した。得られた菌体を凍結乾燥し、スパーテルにて細かく破砕した。全RNAはIsogen(和光純薬工業社製)を用いて単離した。
まず、菌体粉末にIsogen 5mLを入れ、30秒間Vortex ミキサーで攪拌した後、50℃で10分間保温した。その後、室温で5分間放置した。次に、0.8mLのクロロホルムを加えて、激しく振とうした。遠心分離後、水層を別の容器に移し、これに2mLの4mol/L塩化リチウムを加えて混合し、−70℃で15分放置した。その後、遠心分離し、上清液を除いた後、沈殿物を1.6mLの水で溶解し、次に1.6mLのイソプロパノールを加えて混合し、4℃で30分放置した。遠心分離後、上清液を除き、沈殿物を75%エタノールで洗浄後、沈殿物を1.6mLの水で溶解した。この液をエタノール沈殿し、沈殿物を75%エタノールで洗浄後、乾燥し、0.4mLの水に溶解し、これを全RNAとした。
次に、mRNAの調製は、mRNAアイソレ−ションキット(Stratagene社製)を用いて行った。まず前記で調製した0.2mLの全RNAに10mLのエリューションバッファーを加え、更に5mLのオリゴdT溶液を加えた。上清液を除いた後、このオリゴdTをハイソルトバッファーで3回、ロウソルトバッファーで2回洗浄した後、68℃に加温したエリューションバッファーで溶出した。この溶液をエタノール沈殿し、沈殿物を75%エタノールで洗浄後、乾燥し、15μLの水に溶解し、これをmRNA画分とした。
【0102】
(2)RT−PCRによるSTCE1遺伝子のcDNAの単離
RT−PCRによるmRNAからのSTCE1遺伝子のcDNAの調製は、Takara RNA PCR Kit(AMV)Ver.2.1を用い実施した。N末端側のプライマー配列は、STCE1のN末端アミノ酸配列と実施例8で解析したゲノム配列から翻訳されるアミノ酸を考慮して決定し、C末端側のプライマー配列は、良く保存されているセルロース結合領域の情報(Hoffren,Annna−Marja.et al.,“Protein Engineering”,8,p.443−450,1995)と実施例8で解析したゲノム配列から翻訳されるアミノ酸を考慮して決定した。すなわち、以下の配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーを作製し、前記のように調製したmRNAのうち1μLを鋳型とし、STCE1遺伝子のcDNAのみをPCR法により増幅した。
STCE1-CN: 5'-GCGGATCCATGCGTTCCTCCCCCGTC-3'(26mer)(配列番号18)
STCE1-CC: 5'-GCGGATCCTTAAAGGCACTGCGAGTACC-3'(28mer)(配列番号19)
RT−PCR反応は、以下の条件で行った。まず、C末端のプライマーを加えて、逆転写酵素によって、反応させた後、Taqポリメラーゼ(リコンビナントTaq 、宝酒造社製)、N末端のプライマーを加え、94℃・1分間、50℃・2分間、72℃・2分間の反応条件を30回繰り返すことにより増幅した。増幅された断片は、アガロースゲル電気泳動の結果、約1kbpの1断片であった。これをpUC18にサブクローニング(プラスミドpUC−STCE1)した。
【0103】
(3)STCE1遺伝子の塩基配列の決定
前記断片の塩基配列を実施例8の方法に従い決定した。更に、この塩基配列とゲノムの塩基配列を比較し、イントロンを決定した。この解析の結果、スタフィロトリクム・ココスポラム由来のSTCE1遺伝子のcDNA全塩基配列を決定した(配列番号2)。
得られたSTCE1遺伝子のcDNAの配列情報をもとに、イントロンを含んだ状態のSTCE1遺伝子翻訳領域を含むDNA断片の単離を行った。実施例7(5)で用いた4種のファージDNAを混合したものを鋳型に、プライマーSTCE−HNBam及びSTCE−HCBamを用いてPCRを行った。増幅した断片をアガロース電気泳動により分離精製し、BamHIにて切断後、再度アガロース電気泳動による分離精製を行った。
STCE-HNBam:
5'-GGG GGA TCC TGG GAC AAG ATG CGT TCC TCC CCC GTC CTC-3'(39mer)(配列番号20)
STCE-HCBam:
5'-GGG GGA TCC GCT CAA AGG CAC TGC GAG TAC CAG TC-3'(35mer)(配列番号21)
プラスミドpUC118のBamHI部位に、約1.1kbpの前記断片を挿入し、プラスミドpUC118−STCEex(FERM P−19602)を得た。更に、この挿入断片について前述の方法にて塩基配列を決定し、STCE1遺伝子のイントロン及び翻訳領域の配列(配列番号22)を確認した。なお、PCRの際に、プライマーSTCE−HCBamを使用することで、終止コドンの配列が、TAAからTGAに変わっているが、生成してくるタンパク質のアミノ酸配列に変化はない。
【0104】
《実施例10:STCE1遺伝子のフミコーラ・インソレンスでの発現》
フミコーラ・インソレンス MN200−1株(FERM BP−5977)における発現ベクターpJND−STCE1は、発現したタンパク質がNCE4のN末端16アミノ酸残基とSTCE1の残りのアミノ酸残基を融合するように作製した。すなわち、プラスミドpJD01(国際公開第00/24879号パンフレット)のBamHI部位に、NCE4遺伝子(国際公開第98/03640号パンフレット)を連結したプラスミドpJND−NCE4を利用して構築した。
この理由として、NCE4のN末端16アミノ酸残基は、STCE1のN末端16アミノ酸残基と一致しているため、NCE4のN末端16アミノ酸残基とSTCE1の残りのアミノ酸残基を融合させても、発現させたタンパク質はSTCE1と同一のものが得られるためである。
なお、プラスミドpJND−NCE4は以下のように作製した。まず、NCE4遺伝子(国際公開第98/03640号パンフレット)を、プラスミドpJD01のBamHI部位に連結できるように、開始コドンのすぐ上流の配列と終止コドンのすぐ下流にBamHIサイトを含む形で下記プライマーを設計し、国際公開第01/90375号パンフレットの実施例4(1)1)記載の方法に従って、プラスミドpCNCE4(国際公開第98/03640号パンフレット)を鋳型に、PCR法にて変異を導入し、増幅した。
NCE4-N-BamHI:
5'-GGGGATCCTGGGACAAGATGCGTTCCTCCCCTCTCCTCC-3'(39mer)(配列番号23)
NCE4-C-BamHI:
5'-GGGGATCCTGCGTTTACAGGCACTGATGGTACCAGTC-3'(37mer)(配列番号24)
増幅されたDNAをBamHIで消化後、プラスミドpJD01(国際公開第00/24879号パンフレットの実施例D1(2)(b))のBamHIサイトにサブクローニングしたプラスミドをpJND−NCE4とした。
【0105】
(1)STCE1発現プラスミドの構築
実施例9(2)で作製したプラスミドpUC−STCE1を鋳型に、STCE1−N−S9A4、STCE1−C−FokFをプライマーに用いてPCRにて増幅した断片をアガロース電気泳動により分離精製し、BamHIとFokIにて切断後、再度アガロース電気泳動により分離精製を行った。
STCE1-N-S9A4:
5'-GGGATCCTGCGTTTAAAGGCACTGCGAGTACCAG-3'(34mer)(配列番号25)
STCE1-C-FokF:
5'-GGGATGCAAGCCGTCGTGCTCGTG-3'(24mer)(配列番号26)
次に前述のプラスミドpJND−NCE4をSTCE1−N−FokR4、STCE1−C−BamFプライマーにより、PCRにて増幅した断片をアガロース電気泳動により分離精製し、BamHIとFokIにて切断後、再度アガロース電気泳動により分離精製を行った。
STCE1-N-FokR4:5'-GGGATGGGCCCAGCCGCACGAAG-3'(23mer)(配列番号27)
STCE1-C-BamF:5'-GGGATCCTGGGACAAGATGC-3'(20mer)(配列番号28)
プラスミドpJD01のBamHI部位に、上記2断片を挿入し、プラスミドpJND−STCE1を得た。更に、この挿入断片について前述の方法にて塩基配列を決定し、STCE1遺伝子(配列番号2)と同じであることを確認した。
【0106】
(2)プラスミドpJND−STCE1によるフミコーラ・インソレンスの形質転換体の作製
フミコーラ・インソレンス MN200−1株をNS培地(3.0%グルコ−ス、2.0%酵母エキス、0.1%ペプトン、0.03%塩化カルシウム、0.03%塩化マグネシウム、pH6.8)において、37℃で24時間培養し、3000r.p.m.で10分間遠心分離し、集菌した。得られた菌体を0.5mol/Lシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(3mg/mLβ−グルクロニダーゼ(β−glucuronidase)、1mg/mLキチナーゼ(Chitinase)、1mg/mLザイモリエース(Zymolyase)、0.5mol/L シュークロース)10mLに懸濁した。30℃で60〜90分間振盪し、菌糸をプロトプラスト化させた。この懸濁液を濾過した後、2500r.p.m.で10分間遠心分離してプロトプラストを回収し、SUTC緩衝液(0.5mol/Lシュークロース、10mmol/L塩化カルシウム、10mmol/Lトリス塩酸(pH7.5))で洗浄した。
このプロトプラストを1mLのSUTC緩衝液に懸濁し、この100μLに対し10μgのプラスミドpJND−STCE1が入った溶液10μLを加え、氷中に5分間静置した。次に、400μLのPEG溶液(60%PEG4000、10mmol/L塩化カルシウム、10mmol/Lトリス塩酸(pH7.5))を加え、氷中に20分間静置した後、10mLのSUTC緩衝液を加え、2500r.p.m.で10分間遠心分離した。集めたプロトプラストを1mLのSUTC緩衝液に懸濁した後、4000r.p.m.で5分間遠心分離して、最終的に100μLのSUTC緩衝液に懸濁した。
このプロトプラストを、ハイグロマイシン(200μg/mL)添加YMG培地(1%グルコース、0.4%酵母エキス、0.2%モルトエキス、1%寒天(pH6.8))上に、YMG軟寒天とともに重層し、37℃で5日間培養し、形成したコロニーを形質転換体とした。
【0107】
(3)pJND−STCE1の形質転換体の培養及び同定
(i)SDS−PAGEによる評価
プラスミドpJND−STCE1をフミコーラ・インソレンス MN200−1株に導入し、ハイグロマイシン耐性を示す株を40株選抜した。これらを(N)培地(5.0%アビセル、2.0%酵母エキス、0.1%ポリペプトン、0.03%硫酸マグネシウム、pH6.8)において、37℃で4日間培養し、得られた培養上清をSDS−PAGE電気泳動(プリキャストミニゲル 14%−SDS−PAGEmini、1.0mmゲル厚(テフコ社製))により解析した。その結果、13クローンにおいて、STCE1と推定される分子量45〜49kD付近のタンパク質が顕著に増強されていることが確認できた。
【0108】
(ii)組換えSTCE1のN末端アミノ酸残基の同定
(3)(i)で大量発現したタンパク質がSTCE1遺伝子由来であることを確認するために、N末端アミノ酸配列を決定した。まず、培養上清についてSDS−PAGE電気泳動にて分離し、実施例2の方法に従ってPVDF膜にタンパク質を電気的に写し取り、分子量45〜49kD付近のタンパク質について、プロテインシーケンサーに供した。その結果、エンドグルカナーゼSTCE1のN末端アミノ酸配列(配列番号1)と一致した。
【0109】
《実施例11:フミコーラ・インソレンスによって発現したSTCE1によるセルロース含有繊維の毛羽除去活性の評価
実施例10(3)のSDS−PAGEにおいて、分子量45〜49kD付近のタンパク質の発現が確認された13株のうち、特に発現が顕著な1株(4A−9株)の培養上清液を用いて、綿ニット生地毛羽除去活性を測定した。コントロールとして非形質転換体である親株由来の培養上清液を用いた。方法は実施例3に従い、pH6、40℃、1時間の処理条件で、予め毛羽立たせた青色綿ニット生地を各種培養上清液で毛羽除去処理を行うことにより、形成された毛羽が目視評価でほぼ100%除去されるのに要する培養上清液中のタンパク質濃度を算出した。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第5表に示した。
【0110】
【表5】

【0111】
《実施例12:フミコーラ・インソレンスによって発現したエンドグルカナーゼSTCE1によるインデイゴ染めセルロース含有繊維の脱色活性の評価》
実施例10で得られたSTCE1大量発現株(4A−9株)と非形質転換体である親株(MN200−1株)の培養上清液を用いて、糊抜きした12オンスのブルージーンズパンツを下記の条件で脱色処理をした。
試験機械:20kgワッシャー(三洋電機株式会社製 全自動洗濯機 SCW5101)
温度:55℃
時間:60分
反応pH:pH6.2(6.7mmol/Lリン酸緩衝液)
処理液量:15L
処理液には、培養上清液とともにゴムボールを適当量加えた。
【0112】
脱色度を分光測色計(ミノルタ社製 CM−525i)を用い、Lab表示系のL値(明度)を測定した。コントロール(未処理繊維)に対するL値の増加(白色度の増加)=ΔL値を求め、このΔL値により脱色の度合いを評価した。すなわち、各試験区につき10点のΔL値を測定し(n=10)、その平均値を算出した。そして、ΔL値=7となるのに必要な培養上清液中のタンパク質濃度を算出した。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第6表に示した。
【0113】
【表6】

【0114】
《実施例13:洗剤として配合した場合のフミコーラ・インソレンスによって発現されたエンドグルカナーゼSTCE1の毛羽除去活性(澄明化活性)の評価》
実施例10で得られたSTCE1大量発現株(4A−9株)と非形質転換体である親株(MN200−1株)の培養上清液を用いて、欧米の洗剤中における綿ニット生地に対する毛羽除去活性(澄明化活性)を以下のように評価した。
予め染色された茶色綿ニットの生地を界面活性剤及びゴムボールとともに大型ワッシャー中で毛羽立たせた。その後、この毛羽立たせた茶色綿ニット生地を下記の条件において洗剤中で処理することにより、形成された毛羽が目視で約50%除去されるのに要する、培養上清液量中のタンパク質濃度を求めた。
試験機械:洗濯堅牢度試験機 L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度:40℃
時間:60分
処理液量:40mL
洗剤の種類:NEW Persil (Performance Tablets biological)(LEVER社製:イギリスにて2002年3月に入手したもの。)
洗剤の添加量:0.4%
処理液:人工硬度水(25FH:脱イオン水に80mmol/Lの塩化カルシウム、20mmol/Lの塩化マグネシウムを加えた1000FHの人工硬度水を脱イオン水で希釈して作製。)
処理液には、培養上清液とともにゴムボールを適当量加えた。
タンパク質濃度は、プロテインアッセイキット(バイオラッド社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第7表に示した。
【0115】
【表7】

【0116】
《実施例14:水道水中の硬度が、フミコーラ・インソレンスにより発現された各種エンドグルカナーゼの毛羽除去活性に与える影響》
実施例10で得られたエンドグルカナーゼSTCE1大量発現株(4A−9株)、NCE5を大量発現させたフミコーラ・インソレンス形質転換株(国際公開第01/90375号パンフレット)、NCE4を大量発現させたフミコーラ・インソレンス形質転換株(国際公開第98/03640号パンフレット)、RCEI(セルロース結合領域が欠失したRCEI−H4(25kD))を大量発現させたフミコーラ・インソレンス形質転換株(国際公開第02/42474号パンフレット)の計4株の培養上清液を用いて、洗剤中の各種硬度の水における、綿ニット生地の毛羽除去活性を以下のように評価した。
予め染色された茶色綿ニットの生地を、界面活性剤及びゴムボールとともに大型ワッシャー中で毛羽立たせた。その後、この毛羽立たせた茶色綿ニット生地を、各種硬度(0FH,5FH,10FH,20FH,40FH)の人工硬度水中において、4種の培養上清液を用いて、下記の条件下で処理をした。
試験機械:洗濯堅牢度試験機 L−12(大栄科学精器製作所社製)
温度:40℃
時間:60分
処理液量:100mL
洗剤の種類:NEW Persil(Performance Tablets biological)(LEVER社製:イギリスにて2002年3月に入手したもの。)
洗剤の添加量:0.4%
処理液:人工硬度水(0FH,5FH,10FH,20FH,40FH:脱イオン水に80mmol/Lの塩化カルシウム、20mmol/Lの塩化マグネシウムを加えた1000FHの人工硬度水を脱イオン水で希釈して作製。)
処理液には、培養上清液とともにゴムボールを適当量加えた。
処理後の生地において、形成された毛羽が目視でほぼ50%除去されるのに要する培養上清液量中のタンパク質濃度を求め、そのタンパク質濃度の逆数値を毛羽除去活性値とした。そして、0FHの硬度における毛羽除去活性値を100としたときの、各種硬度での毛羽除去活性相対値を求めた。その結果を第8表に示した。
【0117】
【表8】

【0118】
《実施例15:STCE1遺伝子のトリコデルマ・ビリデでの発現》
(1)STCE1発現プラスミドSTCE1N−pCB1の構築
STCE1遺伝子は、開始コドンの上流の配列にSmaI、終止コドンの下流にXhoIを予め含む形で以下のような変異導入用プライマーを設計し、PCR法にて増幅した。
STCE1-N-SmaI:
5'-CAGCCCGGGGCGCATCATGCGTTCCTCCCCTCTCC-3'(35mer)(配列番号29)
STCE1-C-XhoI:
5'-GCCTCGAGTACCTTAAAGGCACTGCGAGTACCA-3'(33mer)(配列番号30)
PCRの反応は、プラスミドpJND−STCE1を鋳型に、STCE1−N−SmaI、STCE1−C−XhoIの2本の合成DNAをプライマーにして、TaKaRa LA Taq with GC buffer(宝酒造社製)を用いて行った。反応条件については酵素に添付の説明書の条件に従った。アガロースゲル電気泳動により反応後のサンプルを分離し、更に制限酵素SmaI及びXhoIにて切断し、約0.9kbpの遺伝子断片STCE1−Nを得た。
一方、pCB1−M2(国際公開第98/11239号パンフレット)を制限酵素StuI及びXhoIで切断し、7.3kbpの断片を回収した。これに約0.9kbpの遺伝子断片STCE1−NをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.1(宝酒造社製)を用いて連結し、プラスミドSTCE1N−M2を作製した。
更に、プラスミドSTCE1−M2のXbaIサイトにPDH25(Cullen, D.,Leong,S.A.,Wilson,L.J.AND Henner,D.J.,“Gene”,57,p.21−26、1987)由来ハイグロマイシンB耐性カセットを挿入し、プラスミドSTCE1N−pCB1を構築した。酵素などの反応条件についてはキットに添付の説明書の条件に従った。プラスミドSTCE1N−pCB1は、宿主のトリコデルマ内にて、自身の開始コドンを用いてSTCE1タンパク質を発現するように構築した。
【0119】
(2)融合STCE1発現プラスミドSTCE1M−pCB1の構築
STCE1遺伝子は、N末端をコードするアミノ酸(Ala)のコドンのすぐ上流にSphI、終止コドンの下流にXhoIを予め含む形で以下のような変異導入用プライマーを設計し、PCR法にて増幅した。
STCE1-M-SphI:
5'-CCGCATGCGCTGATGGCAAGTCCACC-3'(26mer)(配列番号31)
STCE1-C-XhoI:
5'-GCCTCGAGTACCTTAAAGGCACTGCGAGTACCA-3'(33mer)(配列番号32)
PCRの反応は、プラスミドpJND−STCE1を鋳型に、STCE1−M−SphI、STCE1−C−XhoIの2本の合成DNAをプライマーにして、TaKaRa LA Taq with GC buffer(宝酒造社製)を用いて行った。反応条件については酵素に添付の説明書の条件に従った。アガロースゲル電気泳動により反応後のサンプルを分離し、更に制限酵素SphI及びXhoIにて切断し、約0.9kbpの遺伝子断片STCE1−Mを得た。
一方、pCB1−M2(国際公開第98/11239号パンフレット)を制限酵素SphI及びXhoIで切断し、7.3kbpの断片を回収した。これに0.9kbpの遺伝子断片STCE1−MをTaKaRa DNA Ligation Kit Ver.1(宝酒造社製)を用いて連結し、プラスミドSTCE1−M2を作製した。
更に、プラスミドSTCE1−M2のXbaIサイトにPDH25(Cullen,D.,Leong,S.A.,Wilson,L.J.AND Henner,D.J.,“Gene”,57,p.21−26、1987)由来ハイグロマイシンB耐性カセットを挿入し、プラスミドSTCE1M−pCB1を構築した。酵素などの反応条件についてはキットに添付の説明書の条件に従った。プラスミドSTCE1M−pCB1は、宿主のトリコデルマ内にて、ベクター由来の開始コドンを用い、CBHIタンパク質のpre−pro配列との融合タンパク質の形でSTCE1タンパクを発現するように構築した。
【0120】
(3)プラスミドSTCE1N−pCB1、STCE1M−pCB1によるトリコデルマ・ビリデの形質転換体の作製
トリコデルマ・ビリデ MC300−1株(FERM BP−6047)をS培地(3.0%グルコース、1.0%イーストエキス、0.1%ポリペプトン、0.14%硫酸アンモニウム、0.2%リン酸カリウム、0.03%硫酸マグネシウム、pH6.8)において、28℃で24時間培養し、3000r.p.m.で10分間遠心分離し、集菌した。得られた菌体を0.5mol/Lシュークロースで洗浄し、0.45μmのフィルターで濾過したプロトプラスト化酵素溶液(5mg/mLノボザイム234、5mg/mLセルラ−ゼオノズカR−10、0.5mol/Lシュークロース)に懸濁した。30℃で60〜90分間振盪し、菌糸をプロトプラスト化させた。この懸濁液を濾過した後、2500r.p.m.で10分間遠心分離してプロトプラストを回収し、SUTC緩衝液で洗浄した。
このプロトプラストを1mLのSUTC緩衝液に懸濁し、この100μLに対し10μgのSTCE1N−pCB1、又はSTCE1M−pCB1の入ったDNA溶液10μLを加え、氷中に5分間静置した。次に、400μLのPEG溶液(60%PEG4000、10mmol/L塩化カルシウム、10mmol/Lトリス塩酸(pH7.5))を加え、氷中に20分間静置した後、10mLのSUTC緩衝液を加え、2500r.p.m.で10分間遠心分離した。集めたプロトプラストを1mLのSUTC緩衝液に懸濁した後、4000r.p.m.で5分間遠心分離し、最終的に100μLのSUTC緩衝液に懸濁した。
このプロトプラストを、ハイグロマイシンB(20μg/mL)添加ポテトデキストロース(PD)寒天培地(3.9%ポテトデキストロースアガー、17.1%シュークロース)上に、PD軟寒天(1.3%ポテトデキストロースアガー、17.1%シュークロース)とともに重層し、28℃で5日間培養後、形成したコロニーを形質転換体とした。
【0121】
《実施例16:STCE1遺伝子のトリコデルマ・ビリデ形質転換体培養液中のSTCE1の同定及び毛羽除去活性評価》
(1)HPLCによる評価
プラスミドSTCE1N−pCB1、STCE1M−pCB1をトリコデルマ・ビリデ MC300−1株に導入し、ハイグロマイシンBに耐性を示す株を50株選抜した。これらをS培地において、37℃で5日間培養し、得られた培養上清液を、TSKgel TMS−250カラム(4.6mmI.D.×7.5cm)(東ソー社製)を用いたHPLC分析により、0.05%TFA(トリフルオロ酢酸)中、アセトニトリル濃度を0%から80%までのリニアグラジエントにより流速1.0mL/minで溶出し、UV280nmでピークを検出した。その結果、STCE1N−pCB1形質転換体、STCE1M−pCB1形質転換体それぞれ3株に、野生株トリコデルマ・ビリデ MC300−1株培養上清液には見られないピークを認めたため、それらピークを分取し、N末端アミノ酸分析を実施例2の方法に従って決定した結果、STCE1のN末端アミノ酸配列(配列番号1)と一致した。
【0122】
(2)STCE1形質転換体培養液の毛羽除去活性の評価
実施例16(1)においてSTCE1が発現している2株と非形質転換体である親株(MC300−1株)の培養上清液を用いて、実施例3に従い、pH10(5mmol/L炭酸ナトリウム緩衝液)、40℃で1時間の処理条件で、予め毛羽立たせた青色綿ニット生地を各種培養上清液で毛羽除去処理を行うことにより、形成された毛羽が目視評価でほぼ50%除去されるのに要する培養上清液中のタンパク質濃度を算出した。
タンパク質濃度はプロテインアッセイキット(バイオラッドラボラトリー社製)を用い、牛血清アルブミンをスタンダードとして定量した。その結果を第9表に示した。
【0123】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明の新規エンドグルカナーゼSTCEは、例えば、セルロース含有繊維の処理、古紙の脱インキ、紙パルプのろ水性の改善、動物試料の消化能の改善などの用途に適用することができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明のエンドグルカナーゼSTCE1のアミノ酸配列[シグナルペプチド(配列番号33)及び成熟タンパク質(配列番号3)]と、ファミリー45に属する公知のエンドグルカナーゼであるNCE4[シグナルペプチド(配列番号34)及び成熟タンパク質(配列番号35)]及びNCE5[シグナルペプチド(配列番号36)及び成熟タンパク質(配列番号37)]の各アミノ酸配列とを比較した結果の内、そのN末端側配列に関する結果を示す説明図である。
【図2】図1に示す比較結果の内、そのC末端側配列に関する結果を示す説明図である。
【配列表フリーテキスト】
【0126】
以下の配列表の数字見出し<223>には、「Artificial Sequence」の説明を記載する。配列番号18〜21の配列で表される各塩基配列は、プライマーSTCE1−CN、プライマーSTCE1−CC、プライマーSTCE−HNBam、及びプライマーSTCE−HCBamであり、配列番号23〜32の配列で表される各塩基配列は、プライマーNCE4−N−BamHI、プライマーNCE4−C−BamHI、プライマーSTCE1−N−S9A4、プライマーSTCE1−C−FokF、プライマーSTCE1−N−FokR4、プライマーSTCE1−C−BamF、プライマーSTCE1−N−SmaI、プライマーSTCE1−C−XhoI、プライマーSTCE1−M−SphI、及びプライマーSTCE1−C−XhoIである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属する微生物由来であって、エンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
以下の(A)及び(B)の特性を有する、請求項1に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列である。
【請求項3】
以下の(A)、(B)、及び(C)の特性を有する、請求項2に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した平均分子量が49kDである。
【請求項4】
以下の(A)、(B)、及び(C)の特性を有する、請求項2に記載のタンパク質:
(A)エンドグルカナーゼ活性を有し、
(B)N末端のアミノ酸配列が配列番号1で表わされる配列を有し、
(C)ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した平均分子量が45kDである。
【請求項5】
スタフィロトリクム・ココスポラム(Staphylotrichum coccosporum)由来である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項6】
下記からなる群より選択される、タンパク質:
(a)配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含む、タンパク質、
(b)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1個又は複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有する改変タンパク質、及び
(c)配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むタンパク質と少なくとも85%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有する相同タンパク質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項8】
下記からなる群より選択される、ポリヌクレオチド:
(i)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列を含むポリヌクレオチド、
(ii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列において、1個又は複数個の塩基が欠失、置換、挿入、又は付加された塩基配列を含み、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、及び
(iii)配列番号2で表わされる塩基配列における第64番目〜第948番目の塩基からなる配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつエンドグルカナーゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターにより形質転換された、宿主細胞。
【請求項11】
宿主が酵母又は糸状菌である、請求項10に記載の宿主細胞。
【請求項12】
酵母が、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、又はピキア(Pichia)属に属する微生物である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
糸状菌が、フミコーラ(Humicola)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、フザリウム(Fusarium)属、又はアクレモニウム(Acremonium)属に属する微生物である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項14】
糸状菌が、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma
viride)である、請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項15】
請求項10〜14のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養する工程、及び前記培養によって得られる宿主細胞又はその培養物から請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質を採取する工程を含む、タンパク質の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法で生産されたタンパク質。
【請求項17】
請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質を含む、セルラーゼ調製物。
【請求項18】
請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、又は請求項17に記載のセルラーゼ調製物を含む、洗剤組成物。
【請求項19】
セルロース含有繊維の処理方法であって、セルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項20】
セルロース含有繊維が毛羽立ち始める速度を低減させるか又はセルロース含有繊維の毛羽立ちを低減する方法であって、セルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項21】
セルロース含有繊維の肌触り及び外観の改善を目的として減量加工する方法であって、セルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項22】
着色されたセルロース含有繊維の色を澄明化する方法であって、着色されたセルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
着色されたセルロース含有繊維の色の局所的な変化を提供する方法であって、着色されたセルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項24】
セルロース含有繊維がごわつき始める速度を低減させるか又はセルロース含有繊維のごわつきを低減する方法であって、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項17に記載のセルラーゼ調製物、又は請求項18に記載の洗剤組成物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項25】
繊維の処理がその繊維の浸漬、洗濯、又はすすぎを通じて行われる、請求項19〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
古紙を脱インキ薬品により処理して脱インキを行う工程において、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、又は請求項17に記載のセルラーゼ調製物を用いることを特徴とする、古紙の脱インキ方法。
【請求項27】
紙パルプのろ水性の改善方法であって、紙パルプを、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、又は請求項17に記載のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む、方法。
【請求項28】
動物飼料の消化能を改善する方法であって、セルロース含有繊維を、請求項1〜6及び請求項16のいずれか一項に記載のタンパク質、又は請求項17に記載のセルラーゼ調製物で処理する工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【国際公開番号】WO2005/054475
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515882(P2005−515882)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015733
【国際出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】