説明

エンボスキャリアテープおよびその製造方法

【課題】 微細部品を所定の配置で収納でき、しかも配置がずれにくいエンボスキャリアテープおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明のエンボスキャリアテープ10は、微細部品11を収納するための凹状の部品収納部12が形成され、エンボスキャリアテープ10の表面10aの垂直方向に対して部品収納部12の側面12aが傾斜角θ0°〜2°で傾斜し、エンボスキャリアテープ10の表面10aから部品収納部12の側面12aにかけた部分が曲率半径R0mm超0.13mm以下で曲げられており、微細部品11の短辺寸法をW、厚み寸法をTとし、部品収納部12の短辺寸法をA、深さ寸法をKとした際に、下記(a),(b)を満たす。(a)0.80≦W/A<1.00、(b)0.77≦T/K<1.00。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細部品の搬送に用いられるエンボスキャリアテープおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品等を実装機に搬送する際には、部品収納部となる凹部が形成されたキャリアテープが用いられている。
キャリアテープとしては、(1)基材の一部を打抜き加工により取り除いた後、基材裏面にボトムテープを装着して部品収納部を形成したパンチドキャリアテープ、(2)基材の一部を凹形に加工して部品収納部を形成したエンボスキャリアテープ、(3)基材の一部を圧縮加工することによって凹状の部品収納部を形成したプレスキャリアテープ等が一般的である。
【0003】
基材としては紙を用いることができる。しかし、部品収納部を形成するために、紙基材を打ち抜き加工または圧縮加工した場合には、ケバやバリが発生し、これにより実装率の低下を招くことがある。また、紙基材を用いた場合には吸湿して寸法が変化したり、紙同士または紙基材と実装機のガイドとが擦れて紙粉が発生したり、剥離帯電により実装ミスが生じたりすることがある。そのため、基材としては、導電性プラスチック基材が用いられるようになってきている。
【0004】
上記(1)〜(3)の中では、コストおよび寸法精度の点から、エンボスキャリアテープが広く使用されている。これに対して、コストの点から、(1)パンチドキャリアテープはあまり使用されず、また、プラスチック基材を圧縮成形しても所定の形状を得にくいことから、(3)プレスキャリアテープもあまり使用されない。
【0005】
従来、エンボスキャリアテープは、基材を熱成形する際の金型への追従性が低いことや成形後の戻り等から、一般に、基材表面から部品収納部の側面にかけた部分が、0.30mm程度の曲率半径で曲げられて形成されている。あるいは、部品の充填や取り出しの操作性を考慮して開口部側が広がるような形状に部品収納部が形成されることもあった。従来のエンボスキャリアテープでは、部品収納部の側壁の傾斜角をテープ表面の垂直方向に対して3°〜10°に形成することが知られていた(特許文献1参照)。
また、エンボスキャリアテープは、ロータリータイプの凸部が設けられた金型を用いた真空成形方法により製造されていた。この方法では、回転する金型の凸部に、プラスチック基材を接触させ、金型の内側から真空引きすることにより、凸部にプラスチック基材を密着させて部品収納部を形成していた。この製造方法では、回転する金型凸部を部品収納部から抜くために、部品収納部の側面にプラスチック基材の表面の垂直方向に対して十分に大きな傾斜角度(5°程度)が必要であった(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−240851号公報
【特許文献2】特開平7−88949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、微細部品のサイズはますます小さくなっており、その実装性の低下を防ぐために、微細部品を部品収納部に所定の配置で収納することが重要になっている。しかし、上記のような形状の部品収納部では、微細部品を収納した際、部品収納部の内面と微細部品との隙間が大きく、微細部品の配置に制限が少ないため、所定の配置で収納することが困難であった。また、部品収納部内で微細部品が動きやすいため、当初は所定の配置で収納されても、振動や衝撃等により配置がずれることがあった。
このように、微細部品が所定の配置で収納されていない場合には、テーピング機の高速化および実装工程における高実装密度化、狭隣接実装化が妨げられ、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率を低下させることがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微細部品を所定の配置で収納でき、しかも配置がずれにくいエンボスキャリアテープおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエンボスキャリアテープは、微細部品を収納するための凹状の部品収納部が形成されたエンボスキャリアテープにおいて、
該エンボスキャリアテープの表面の垂直方向に対して部品収納部の側面が傾斜角0°〜2°で傾斜し、該エンボスキャリアテープの表面から部品収納部の側面にかけた部分が曲率半径R0mm超0.13mm以下で曲げられており、
微細部品の短辺寸法をW、厚み寸法をTとし、部品収納部の短辺寸法をA、深さ寸法をKとした際に、下記(a),(b)を満たすことを特徴とする。
(a)0.80≦W/A<1.00
(b)0.77≦T/K<1.00
本発明のエンボスキャリアテープにおいては、微細部品は、部品サイズが1005サイズ以下のサイズであり、コーナーの曲率半径Rが(W×0.15)mm以下であることが好ましい。
本発明のエンボスキャリアテープの製造方法は、平滑面に凸部が垂直に設けられた金型にプラスチック基材を移送し、前記金型の凸部にプラスチック基材の一部を密着させるエンボスキャリアテープの製造方法であって、
プラスチック基材における金型の凸部に接する部分を、予備加熱後に、前記金型の反対側から再度加熱して成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のエンボスキャリアテープは、微細部品を所定の配置で収納でき、しかも配置がずれにくい。したがって、テーピング時の部品収納率、マウント時の実装精度や実装率の低下が防がれている。
本発明のエンボスキャリアテープは、微細部品の部品サイズが1005サイズ以下のサイズであっても、微細部品を所定の配置で収納でき、しかも配置がずれにくい。
本発明のエンボスキャリアテープの製造方法によれば、微細部品を所定の配置で収納でき、しかも配置がずれにくいエンボスキャリアテープを容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のエンボスキャリアテープの一実施形態例について説明する。
図1(a)に、本実施形態例のエンボスキャリアテープの上面図を示し、図1(b)に、本実施形態例のエンボスキャリアテープを長さ方向に沿って切断した際の断面図を示す。このエンボスキャリアテープ10は、略直方体状の微細部品11を収納するための凹状の部品収納部12,12・・・が形成されたものである。
このエンボスキャリアテープ10の部品収納部12に収納される微細部品11としては、例えば、セラミックコンデンサ、抵抗、ICチップなどが挙げられる。
【0010】
このエンボスキャリアテープ10においては、部品収納部12の側面12aが、エンボスキャリアテープの表面10aの垂直方向Vに対して、傾斜角θが0°〜2°で開口部が広がるように傾斜している。部品収納部12の側面12aが、エンボスキャリアテープの表面10aの垂直方向Vに対して、傾斜角θが0°〜2°で傾斜していることにより、部品収納部12内に微細部品11を所定の配置で収納でき、しかも収納した微細部品11を動きにくくすることができる。これに対し、傾斜角θが2°を超えると微細部品11を所定の配置で収納できず、しかも収納した微細部品11が動きやすくなり、配置がずれやすくなるため、テーピングおよび実装が困難になる。
【0011】
また、このエンボスキャリアテープ10は、その表面10aから部品収納部12の側面12aにかけた部分13(以下、曲がり部13という。)が曲率半径R0mm超0.13mm以下で曲げられている。曲がり部13において曲率半径が0.13mm以下で曲げられていることにより、部品収納部12内に微細部品11を所定の配置で収納でき、しかも収納した微細部品11を動きにくくすることができる。曲率半径Rが小さいほど、その効果は大きくなる。これに対し、曲がり部13にて、0.13mmを超える曲率半径で曲げられている場合には、微細部品11を所定の配置で収納しにくくなり、しかも収納した微細部品11が動きやすくなるため、テーピングおよび実装が困難になる。
【0012】
さらに、本発明のエンボスキャリアテープ10は、微細部品11の短辺寸法をW、厚み寸法をTとし、部品収納部12の短辺寸法をA、深さ寸法をKとした際に、下記(a),(b)を満たすものである。
(a)0.80≦W/A<1.00
(b)0.77≦T/K<1.00
これらの(a),(b)は部品収納部12の寸法と微細部品11の寸法との関係を表しており、(a),(b)を満たすことで部品収納部12内に微細部品11を所定の配置で収納でき、しかも収納した微細部品11を動きにくくすることができる。
【0013】
これに対し、W/Aが0.80未満またはT/Kが0.77未満であると、微細部品11に対して部品収納部12が大きくなりすぎて、部品収納部12と微細部品11との隙間が大きくなる。その結果、微細部品11が部品収納部12内で動きやすくなり、所定の配置で収納することが困難になる。また、W/AまたはT/Kが1.00以上では、部品収納部12に微細部品11を収納することはできない。
【0014】
エンボスキャリアテープ10の材質としては特に限定されず、紙製のもの、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂製のもの等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂およびこれら2種以上を混合したポリマーアロイ等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂等が挙げられる。これらの中でも、高耐熱性を有するポリイミド等が成形上好ましい。
また、これらの樹脂やこれらの樹脂を含むポリマーアロイに、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤等の帯電防止剤、導電性カーボン、カーボンやステンレス等の導電性繊維、酸化スズや酸化チタン等の導電性金属酸化物、アニリン、ピロール、チオフェン等の有機導電性物質等の導電剤を添加して、帯電防止や導電性を付与してもよい。
あるいは、プラスチック基材の表面に帯電防止剤や導電性物質を塗布することで、帯電防止層や導電層を設けることもできる。
さらに、プラスチック基材は、同じ材料や異なる材料を積層したものであってもよい。
【0015】
部品サイズが小さくなると、部品収納部12からの取り出しやすさより所定の配置で収納されていることが求められるようになる。したがって、本発明のエンボスキャリアテープ10は、部品サイズが1005サイズ(長辺寸法;1.0mm、短辺寸法;0.5mm、厚さ寸法;0.5mm)以下の微細部品11を収納するのに適している。ここで、1005サイズ以下のサイズとは、1005サイズの他に、例えば、0402サイズ(長辺寸法;0.4mm、短辺寸法;0.2mm、厚さ寸法;0.2mm)、0603サイズ(長辺寸法;0.6mm、短辺寸法;0.3mm、厚さ寸法;0.3mm)などが挙げられる。
また、微細部品は、コーナー11aの曲率半径Rが(W×0.15)mm以下であることが好ましい。微細部品11のコーナー11aの曲率半径Rが(W×0.15)mmを超えた場合には、収納した微細部品11が動きやすくなり、配置がずれやすくなる傾向にある。
【0016】
以上説明したエンボスキャリアテープ10は、微細部品11の形状に応じた部品収納部12が形成されているため、微細部品11を部品収納部12内に所定の配置で収納することができる。また、部品収納部12の内面と微細部品11との隙間が小さいため、収納後に微細部品11が動きにくく、振動や衝撃等があっても配置がずれにくい。例えば、図2に示すように、微細部品11が回転しようとしても、部品収納部12の内面(側面)12aに引っ掛かるため回転しない。
【0017】
次に、本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の一実施形態例について説明する。
この実施形態例のエンボスキャリアテープの製造方法は、真空成形機を用いる方法であって、金型として、図3に示すような、平滑面21に凸部22が垂直に設けられ、空気吸引口23が形成されたものを用いる方法である。ここで、「平らな表面に凸部が垂直に設けられ」とは、金型20の平滑面21に対して凸部22の側面22aが垂直(約90°)になっていることを意味する。
【0018】
具体的には、まず、プラスチック基材を予備加熱する。ここで、プラスチック基材としては、上述したエンボスキャリアテープを構成する樹脂からなるシートが用いられる。プラスチック基材の厚みとしては、曲がり部の曲率半径を0超0.13mm以下に保つためには、0.2mm以下であることが好ましい。
予備加熱における加熱手段としては、マスキングプレートを使用したインフラヒータ(赤外線ヒータ)、熱風ブロー等の間接加熱方式、ヒートバーをプラスチック基材に接触させる直接加熱方式などが挙げられる。このような加熱手段によれば、所定とする場所のみを加熱することができる。
【0019】
次いで、プラスチック基材を真空成形機に一定量移送する。プラスチック基材の移送方法としては、例えば、エアフィーダ、グリッパーフィーダ、ロールフィーダなどを用いる方法が挙げられる。
真空成形機内では、図3に示すように、金型20の表面の上方にプラスチック基材30を配置させ、金型20の凸部22の形成方向(金型表面に対して垂直方向)に対してプラスチック基材30の表面を垂直に配置させる。この際、プラスチック基材30は、シートクランプ31により保持することができる。
【0020】
次いで、プラスチック基材30における金型の凸部に接する部分(以下、金型接触部という。)を、加熱手段40を用いて、金型20の反対側から再度、成形直前まで加熱する。その加熱手段40としては、上記予備加熱と同じ加熱手段を用いることができる。
次いで、図4に示すように、金型20を上昇させるとともにプラスチック基材30を下降させ、金型20の空気吸引口23を介して真空引きして、プラスチック基材30の一部を金型20の凸部22に密着させる。そして、プラスチック基材30を、材料となる樹脂の二次転移点以下の温度まで冷却し、凹状の部品収納部12を形成し、図5に示すように、金型20を下降させるとともにプラスチック基材30を上昇させ、プラスチック基材30を一定量移送する。これを順次繰り返すことにより、凹状の部品収納部が長さ方向に沿って多数形成されたエンボスキャリアテープを得ることができる。
【0021】
上述したエンボスキャリアテープの製造方法では、平滑面21に凸部22が垂直に設けられた金型20を用い、金型20の凸部22をプラスチック基材30に密着させるため、形成される部品収納部の側面に傾斜をつけなくてもプラスチック基材30から凸部22を抜くことができる。また、予備加熱後に、プラスチック基材30における金型接触部を、金型20の反対側から成形直前まで加熱するため、プラスチック基材30が冷却しにくく、加熱不足によるプラスチック基材30の延伸不足を防ぐことができる。したがって、プラスチック基材30を金型20の形状に忠実に成形できる。
これらのことから、このエンボスキャリアテープの製造方法によれば、部品収納部内に微細部品を所定の配置で収納でき、しかも収納した微細部品の配置がずれにくいエンボスキャリアテープを得ることができる。
【0022】
なお、上述した実施形態例のエンボスキャリアテープの製造方法においては、金型に凸部が一つ設けられていたが、金型に複数の凸部が設けられていても構わない。その場合、プラスチック基材に複数の部品収納部を一度に形成することができる。
また、真空成形法以外の方法、例えば、プレス成形法などによっても本発明のエンボスキャリアテープを製造できる。
【0023】
プレス成形による具体的製造方法としては、まず、プラスチック基材を、先端の押圧面が平面である成形パンチと、成形パンチが挿入される角穴が形成されたダイプレートとを備えたプレス成形機に移送し、成形パンチとダイプレートの間に配置する。
次いで、加熱下で、成形パンチをダイプレートの角穴内に挿入して、プラスチック基材を成形パンチとダイプレートとで挟み込む。その後、ダイプレートの角穴から成形パンチおよびプラスチック基材を抜き、プラスチック基材を一定量移送する。これを順次繰り返すことにより、凹状の部品収納部が長さ方向に沿って多数形成される。次いで、このようにして部品収納部が形成され冷却されたプラスチック基材の幅方向の一端又は両端を、部品収納部の間隔を基準にして、長手方向に所定の間隔でプレス加工により穿孔する。このようにして、長手方向に所定の間隔で送り孔14が形成されたエンボスキャリアテープ10(図1(a)参照)を得ることができる。
【0024】
上記プレス成形による製造方法において、成形パンチとダイプレートの角穴内面との隙間は、プラスチック基材の厚みの10〜50%であることが好ましい。隙間がプラスチック基材の厚みの10%未満であると、剪断作用が強くなってプラスチック基材が切断したり、クラックが発生したりする。50%を超えると所定の形状に成形することが困難になる傾向にある。
また、エンボスキャリアテープの表面の垂直方向Vに対する部品収納部の側面の傾斜角θを0°〜2°にするためには、成形パンチとダイプレートの角穴内面との隙間が、プラスチック基材の厚みの10〜50%であることがより好ましい。
【0025】
成形パンチの先端の押圧面は曲面であってもよい。その場合、押圧面の曲率半径は、W×0.15mm以下であることが好ましく、W×0.05〜W×0.15mmであることがより好ましい。成形パンチの先端がこのような形状になっていれば、成形の際、プラスチック基材に成形パンチが引っ掛かることなくダイプレートの角穴の中に挿入され、プラスチック基材が角穴の中に引きずり込まれることを防止する。その結果、ダイプレートの角穴の形状に沿って忠実に成形でき、安定に、エンボスキャリアテープの表面の垂直方向に対する部品収納部の側面12aの傾斜角θを0°〜2°にし、曲がり部の曲率半径Rを0mm超0.13mm以下にすることができる。
【0026】
また、成形パンチの先端は、ダイヤモンドライクコーティング(DLC)、チタンコーティング、フッ素コーティング等のコーティング処理が施されていることが好ましい。成形パンチの先端にコーティング処理を施して摩擦係数を小さくすることにより、安定に、エンボスキャリアテープの表面の垂直方向Vに対する部品収納部の側面の傾斜角θを0°〜2°にし、曲がり部の曲率半径Rを0mm超0.13mm以下にすることができる。
【実施例】
【0027】
(製造例1)
0402サイズのセラミックコンデンサ(短辺寸法W;0.20mm、厚み寸法T;0.20mm、コーナーの曲率半径;0.03mm)用のエンボスキャリアテープを以下のようにして製造した。
まず、プラスチック基材であるカーボン練り込みタイプの導電性ポリスチレンシート(厚み;0.15mm)を、熱風ブロー(温度;700℃、時間;1.0秒)で予備加熱した。次いで、予備加熱したポリスチレンシートを、平滑面に凸部が垂直に設けられた金型(凸部の傾斜角;1.0°)を備えた真空成形機に移送し、ポリスチレンシートにおける金型接触部を、該金型の反対側から熱風ブローにより再度加熱した(温度;600℃、時間;0.4秒)。その後、金型の空気吸引口を介して真空引きしながら、金型の凸部とポリスチレンシートとを密着させ、30ショット/分で部品収納部を形成して、エンボスキャリアテープを得た。
得られたエンボスキャリアテープの部品収納部における短辺寸法Aは0.25mm、深さ寸法Kは0.26mm、側面の傾斜角は0.6°、曲がり部の曲率半径は0.09mmであった。すなわち、W/A=0.80、T/K=0.77であった。また、部品収納部同士の間隔は1mmとした。
【0028】
得られたエンボスキャリアテープを以下のようにして評価した。
(1)テーピングエラー率
テーピング機(角チップ用高速タイプ、テーピング速度;1,000チップ/分)を用い、エンボスキャリアテープの部品収納部に0402サイズのセラミックコンデンサを収納した。その際のテーピングエラー率を下記の式から求めたところ、テーピングエラー率は100ppmであった。
(テーピングエラー率)=[(部品収納部に収納されなかったセラミックコンデンサ数)/(全セラミックコンデンサ数)]×1000000(ppm)
(2)実装エラー率
実装機(高速モジュラータイプ、装着精度±0.05mm/チップ)を用い、装着タクト0.15秒/チップで、エンボスキャリアテープの部品収納部に収納したセラミックコンデンサ0402を実装した。その際の実装エラー率を下記の式から求めたところ、実装エラー率は220ppmであった。ここで、実装されなかったセラミックコンデンサは、部品収納部に所定の配置で収納されていなかったものである。したがって、実装エラー率は、エンボスキャリアテープの部品収納部に、所定の配置で収納されていなかったセラミックコンデンサ数を表す。
(実装エラー率)=[(実装されなかったセラミックコンデンサ数)/(全セラミックコンデンサ数)]×1000000(ppm)
【0029】
(製造例2)
0402サイズのセラミックコンデンサ(短辺寸法W;0.20mm、厚み寸法T;0.20mm、コーナーの曲率半径;0.03mm)用のエンボスキャリアテープを以下のようにして製造した。
まず、プラスチック基材であるカーボンコーティングA−PETシート(厚み;0.20mm)をプレス成形機に移送した。このプレス成形機は、先端の押圧面が曲面の成形パンチと、角穴が形成されたダイプレートとを備え、ダイプレートの角穴に成形パンチを挿入した際の成形パンチとダイプレートの角穴内面との隙間が0.04mmのものである。
そして、成形パンチを上記A−PETシートに押圧しながらダイプレートに挿入して部品収納部を形成して(200ショット/分)、エンボスキャリアテープを得た。
得られたエンボスキャリアテープの部品収納部における短辺寸法Aは0.25mm、深さ寸法Kは0.26mm、側面の傾斜角は1.8°、曲がり部の曲率半径は0.11mmであった。また、部品収納部同士の間隔は1mmとした。
製造例2のエンボスキャリアテープを製造例1と同様にして評価したところ、テーピングエラー率は300ppmであり、実装エラー率は540ppmであった。
【0030】
(製造例3)
プレス成形機において、成形パンチの押圧面を平面とし、成形パンチとダイプレートの角穴内面との隙間を0.12mmとしたこと以外は製造例2と同様にしてエンボスキャリアテープを得た。
得られたエンボスキャリアテープの部品収納部における短辺寸法Aは0.25mm、深さ寸法Kは0.26mm、側面の傾斜角は5.0°、曲がり部の曲率半径は0.3mmであった。また、部品収納部同士の間隔は1mmとした。
製造例3のエンボスキャリアテープを製造例1と同様にして評価したところ、テーピングエラー率は4,700ppmであり、実装エラー率は2,500ppmであった。
【0031】
製造例1,2のエンボスキャリアテープは、テーピングエラー率および実装エラー率がともに低かった。したがって、部品収納部に所定の配置で微細部品を収納することができ、しかも微細部品の配置がずれにくい。
部品収納部の側面の傾斜角が2.0°を超え、曲がり部の曲率半径が0.13mmを超えていた製造例3のエンボスキャリアテープは、テーピングエラー率および実装エラー率が高かった。したがって、部品収納部に所定の配置で微細部品を収納することが困難で、しかも部品収納部内で微細部品が動きやすい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のエンボスキャリアテープの一実施形態例を示す図であって、(a)は上面図、(b)はA−A’断面図である。
【図2】図1のエンボスキャリアテープの部品収納部の拡大図であって、微細部品が動きにくいことを説明する図である。
【図3】本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の一実施形態例における一工程を模式的に示す図である。
【図4】本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の一実施形態例における一工程を模式的に示す図である。
【図5】本発明のエンボスキャリアテープの製造方法の一実施形態例における一工程を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 エンボスキャリアテープ
10a 表面
11 微細部品
11a コーナー
12 部品収納部
12a 側面
13 エンボスキャリアテープの表面から部品収納部の側面にかけた部分(曲がり部)
20 金型
21 平滑面
22 凸部
30 プラスチック基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細部品を収納するための凹状の部品収納部が形成されたエンボスキャリアテープにおいて、
該エンボスキャリアテープの表面の垂直方向に対して部品収納部の側面が傾斜角0°〜2°で傾斜し、該エンボスキャリアテープの表面から部品収納部の側面にかけた部分が曲率半径R0mm超0.13mm以下で曲げられており、
微細部品の短辺寸法をW、厚み寸法をTとし、部品収納部の短辺寸法をA、深さ寸法をKとした際に、下記(a),(b)を満たすことを特徴とするエンボスキャリアテープ。
(a)0.80≦W/A<1.00
(b)0.77≦T/K<1.00
【請求項2】
微細部品は、部品サイズが1005サイズ以下のサイズであり、コーナーの曲率半径Rが(W×0.15)mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のエンボスキャリアテープ。
【請求項3】
平滑面に凸部が垂直に設けられた金型にプラスチック基材を移送し、前記金型の凸部にプラスチック基材の一部を密着させるエンボスキャリアテープの製造方法であって、
プラスチック基材における金型の凸部に接する部分を、予備加熱後に、前記金型の反対側から再度加熱して成形することを特徴とするエンボスキャリアテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−160369(P2006−160369A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281574(P2005−281574)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】